参考資料 マイナンバー活用による社会制度改革(例) No. タイトル 現状や問題点 改革後の姿 提言2関連(行政分野) 年末調整は、現在、扶養控除申告書をはじめ、保険料 控除証明書や住宅ローン残高証明書が紙で添付さ れ、これに基づいて、企業が年末調整の事務を行って いる。企業の業務負荷も高く、家族を含めた従業員の 記入済み申告書制度の導入及び 個人情報を扱う上での漏洩リスクも抱えている。また、 各種証明書の電子データ連携によ 従業員は、その個人情報を企業に提出することによっ ① る て情報漏洩の不安を抱えている。さらに医療費の還付 年末調整事務の改革 を受けるためには、自ら医療費の領収書等を保管して おき、医療費控除の申請をする際にはこれを合算しな ければならず、領収証を紛失してしまった場合には還 付を受けられない場合もある。 徴収と給付を番号で連動させることができないため、 定額給付金の支給の際には所得制限もできず、事務 経費も850億円という高額になった。また、消費税の 給付付き税額控除制度の導入 (消費税対策だけでなく一般的政 低所得者対策として軽減税率が検討されているが、軽 ② 減税率は、諸外国では利権の温床となるケースがあ 策ツールとして) り、税法学者の間でも給付付き税額控除のほうが良い という見解がある。 ③ 戸籍制度、住民基本台帳制度の 改善 保険料控除証明書、住宅ローンの残高証明書、医療費 支払いの領収書などのデータをマイナンバー付きで税 務署に直接送付する記入済申告書制度を導入し、各種 証明書の電子データ連携ができれば、企業が従業員 の年末調整事務をする必要がなく、従業員自身が確定 申告をすれば事足りるようになる。企業は、従業員の家 族を含めたプライバシー情報を扱う必要がなくなり、企 業リスクが減少すると共に、情報漏洩に対する従業員 の不安も軽減される。また、医療費の還付ができるか 否かについても、税務署から本人に通知することがで き、医療費控除の申請を忘れることもなくなる。 世帯の所得や家族構成等が把握できるため、消費税 の低所得者対策としても、消費税にかかる金額を還付 することができ、軽減税率の課題(利権が生じる、高額 所得者が恩恵を受ける、インボイス対応などの負荷が 高いなど)を克服できる。さらに、ワーキングプア対策 (働くことに対するインセンティブが生まれ、生活保護か ら抜け出せる)、子どものいる家庭への上乗せ支援など の政策ツールとしても生かせる。 戸籍や住民基本台帳の情報が自治体毎に管理されて マイナンバーを活用して戸籍や住民基本台帳の情報が いるため、転居した血縁者の現住所や戸籍情報を確 システム的に連携されれば、正当な利用者はそれらの 認するために、大変な労力がかかっている。 確認を迅速に行うことができ、自治体としても管理コスト を大幅に削減することが期待できる。 現在の登記制度では、地番等で特定して登記簿を閲 覧することによって初めて所有者が分かるようになっ 登記制度の改革(土地・家屋の所 ている。そのため、請求権を有する者の正当な権利行 ④ 使の際に、対象者の資産を把握することができない。 有者・相続者の明確化) 不動産登記の登記名義人の登記事項にマイナンバー を追加することで、適切な権利行使ができるようにな る。但し、プライバシー等に対する適切な配慮が必要で あり、マイナンバー部分の閲覧やマイナンバーをキーに した閲覧は、現状の閲覧手続とは異なる、住民票や戸 籍の閲覧に準じた取り扱いが必要であると考えられる。 農地台帳や森林台帳(森林簿)など、農林業に関わる マイナンバーで土地の管理ができれば、その所有者・ 農地台帳・森林台帳の整備(所有 土地の管理が正確でないため、所有者または相続者 相続者などを正確に特定することができるので、土地 が特定できない場合があり、土地の有効活用や所有 の有効活用、農林業の活性化のための積極的な施策 者の明確化) 権の移転が円滑にできない。 を実施することも可能になる。 国勢調査は、5年毎に大規模調査(調査項目22項 欧州の一部で国民ID等を用いて実施しているように、マ 目)、簡易調査(調査項目17項目)が交互に実施され イナンバーを用いて、行政機関が既に保有している住 る。今年の調査ではインターネットでの回答も可能に 民情報や税金、雇用の記録を連携させれば、それらを なったが、基本的には各世帯に紙の調査票を配布し、 国勢調査の調査項目に入れた場合と同等の内容を把 一定の期間を経て調査員がそれを回収している。人手 握することができる。マイナポータルを介して、この調査 国勢調査の改善 ⑥ を介した作業負荷の軽減を図るとともに、記入の手間 方法を用いれば、回答や集計の容易さが向上し、より (効率的な調査の実施) を容易にして回収率を高め、分析結果の精度を向上さ 短い調査間隔で、きめ細かな調査を実施できる。現在 せることが課題である。 のように5年ごとではなく、例えば1年ごとに調査が実施 できれば、施策の効果や評価をタイムリーに分析する ことができる。 裁判手続で請求権が確定しても、預貯金口座への執 預貯金口座、特定口座等への付番等が始まることを契 預金口座・証券・保険の所有者・相 行に支店単位での特定が要求されるなど、権利の実 機に、当該口座の個人番号を、税務調査等の目的の ⑦ 現が困難なために不公平な事態も生じている。 みならず、裁判手続を通じた私人による権利行使にも 続者の明確化 利用できるようにし、公平・公正な社会を実現する。 いわゆる休眠口座は、所有者が明確でありながら、未 年間500億円もの利子収入があると言われる休眠口座 利用の状態になっているのか、所有者自体が実在しな に、マイナンバーを関連付けることで、所有者が実在し 休眠口座の特定 くなっているのか把握できておらず、後者の場合であっ ない休眠口座を特定する。これが活用できれば、関連 ⑧ ても有効活用ができない状況にある。 法の整備が必要ではあるが、例えばベンチャー投資等 の有効な使途が生み出せる。 ⑤ ⑨ 現金領収証制度の導入 軽減税率の検討の中で、対象者は、還付金等を申請 マイナンバー(またはマイナンバーカードの公的個人認 によって請求することになっているが、窓口での申請で 証)を購買時に利用することで、軽減税率対象の品目 は利便性が向上しない。 について、電子的に識別できる状態で保管できる環境 が整備できる。e-Tax等のオンラインで申請する際に、 それらの電子データを取り込み、容易に申請し、即時に 還付金を受けられるようになる。 行政サービスにおいて、届出や申請等を行う際には窓 口に出向いて本人確認書類等を持参すると共に、必 要な添付書類(課税証明など)を集めたり、各種申請 書を窓口別に提出するために、わざわざ職場で休暇を 行政サービスにおける対面書類の 取ってその時間を作らなければならないことがある。 ⑩ 削減 1/2 マイナポータルや、マイナンバーカードの公的個人認証 の利用によって、オンラインでの対応が可能になる。例 えば、(1)保育園入所の際に、提出する課税証明書が 不要になる、(2)出産時の「出生届、健康保険の加入、 家族に給付される乳幼児医療費助成、児童手当金、出 産育児一時金、出産手当金、育児休業給付金、高額医 療費」を一括で申請できる、(3)死亡届、年金受給停止 届、介護保険資格喪失届、住民票の抹消届、世帯主の 変更届、遺言書の検認等を一括でできるようになる。 参考資料 No. タイトル 現状や問題点 改革後の姿 提言3関連(公的個人認証の民間領域へのさらなる普及・拡大) 公的個人認証の民間領域へのさ ① らなる普及・拡大 オークションに出品する際やインターネットバンキング 口座を開設する際等,このようなサービス等を利用する 場合に、運転免許証のコピーを送る等の対応が必要 である。利用者にとり、手間のかかることだが、受け 取った事業者もその書類の真正性を確認するために、 管理コストがかかっている。 マイナンバーカードのICチップに格納されている公的個 人認証を用いれば、本人確認を正確に行うことができ るようになり、利用者が本人証明の書類を提出する必 要がなくなるだけでなく、事業者も真正性を電子的に確 認できるため管理コストが軽減できる。 提言4関連(サブカードの実現) 大規模なリコールが発生した場合、購入者に対する通 購入者が特定の機器等を購入した際に、サブカードを 知・公表をするために多額の費用がかかったり、周知 使ってマイナンバーをユーザー登録することにより、リ が困難である。 コールの対象となるような問題が発生した際に、マイナ リコール対象製品の購入者への早 ポータルを活用して現住所宛てに販売者やメーカー等 ① 期情報提供 が速やかに周知することができる。但し、この仕組み は、オプトイン(希望者のみが登録する)で行う配慮が 必要である。 軽減税率の還付手続きで、マイナンバーを活用するこ マイナンバーカードのICチップに格納される公的個人認 とも検討されたが、カードを常に持ち歩き、購買時に 証機能をサブカード(スマートフォン等)にも格納すれ マイナンバーカードと既存媒体(ポ カードリーダーで公的個人認証を受けるために、マイ ば、マイナンバーカードを持ち歩かずにすむため、マイ ② イントカード、電子マネー等)との ナンバーカードを読み取り機にかざすという行為は、 ナンバーの漏洩を未然に防ぐ手立てになる。また、この カード自体の紛失や番号の漏洩などのリスクを高め 仕組みならば、他の電子マネーやポイントカードなどと 連携 る。 の連携もできるようになることから、新たなサービスの 創出等、経済の活性化にも寄与することができる。 提言5関連(医療等分野における番号制度) 医療機関相互で患者の健康医療情報の共有化が出 来ず、患者自身も生涯に亘る健康医療情報を自由に 閲覧したり、コメントする立場にないため、医療機関が EHR/PHRの構築 ① (健康医療情報の共有化による医 変わるたびに、同じ情報を問診時に伝えなければなら ない。また、的確な情報を伝えもらしたり、誤った情報 療の質の向上など) を伝たりすることによって、医師は正確、迅速な判断が 出来ず、医療事故につながることもありうる。 医療等分野における番号制度を導入することにより、 健康医療情報を集積したEHRやPHRが構築できる。こ れにより医療等関係者は的確な情報が把握でき、適正 な診断ができる。また、患者は自身の生涯に亘る健康 医療情報を参照することができるので、健康でいようと する高いモチベーションを積極的に持続させることがで きる。 検査情報や診療情報は、各医療機関ごとに保有して いるため、別の医療機関で同じ検査をしていても、本 人からの申し出がない限り、同じ検査が繰り返される。 二重検査や二重投薬は、レセプト等を分析しても事後 にしか把握できない。 医療等分野における番号制度を導入することにより、 個人の検査情報・診療情報を紐づけすることができる ため、同じ検査を何度も受けたり、同じ薬を二重に処方 するといった行為を事前にチェックすることができ、医療 等の効率化、重点化や不適切な薬の処方を防げる。 現行の紙のお薬手帳は、医療機関に行く際に携帯し ていかなければならないが、実際には自宅に忘れ置い てしまったり、取得時には有料であるにも関わらず、知 らず知らずのうちに何冊も持っていたり、紛失してし まったりと有効に活用されていないケースがある。ま た、現在でも電子お薬手帳を活用している事例はある が、運営主体によって対応可能な薬局が限定されるこ とがあり、すべての投薬情報が記録されているとは限 らないので、多剤・重複投薬による相互作用のチェック が行えない場合がある。 医療情報連携ネットワークの全国への普及・展開(厚生 労働省は、産業競争力会議において「全ての二次医療 圏が地域の実情に応じて医療情報連携ネットワークを 活用できる基盤を2018年度までに整備する」としてい る)で情報が連携され、さらに、すべての医療機関が処 方箋を電子的に発行し、すべての薬局が電子処方箋に 対応できるようになれば、薬局の端末にマイナンバー カードをかざして公的個人認証を受けることで、すべて の投薬記録が確認できるようになる。 処方箋の発行から患者の薬剤購入までの一連のフ ローが電子化されていないため、患者が実際に薬剤を 購入したかどうかについては、医師等が管理できてい 処方箋情報の電子化並びにネット ない。また、医師側のシステムで作成した紙処方箋を ④ ワーク化(医療機関:薬局:患者) 元に、薬局が再び別システムに入力するという無駄が ある。さらに災害発生時、被災者に必要な薬剤を渡し たくても、氏名、住所だけでは誤って別人に手渡してし まうような事故も起こりかねない。 緊急時や災害時には、患者や被災者に対して迅速な 対応が求められるが、現状においては、自治体、病院 や診療所、健診機関、調剤薬局や介護施設などが個 別に保有している患者や利用者の情報をシームレス 新たな地域医療等情報連携ネット に共有することが困難であり、情報の質・量に課題が ⑤ ワークの構築・普及 ある。 医師の処方箋発行から薬局による処方までの一連のフ ローを電子化することにより、薬局で処方情報を再入力 する業務を省力化できたり、誤入力を防止することがで きるようになる。また、万が一災害が起きた場合でも、 被災者に対して必要な医薬品等を的確に届けることが できる。 ② 二重検査・二重投薬の防止 ③ お薬手帳の電子化 医療等分野における番号制度を導入することを始め、 自治体、病院や診療所、健診機関、調剤薬局や介護施 設などを相互に結ぶ地域医療等情報連携ネットワーク を構築し、共有する情報を質的・量的にも向上させれ ば、患者や利用者に対して緊急時や災害時でも、迅速 に対応することができる。但し、スタート時には情報連 携させることの可否について、オプトイン(希望者のみ が登録する)方式をとることにより、納得感を持ってもら うような配慮がされるべきである。 出所:平成27年度情報化推進国民会議 マイナンバー検討特別委員会での議論をベースに事務局が作成 2/2
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