パワーエレクトロニクス工学論 9.共振型スイッチング電源 9-1 各種共振型スイッチング方式 9-2 ZVS-PWM制御スイッチング電源 A) 降圧形ZVS-PWM電源 B) 昇圧形ZVS-PWM電源 H27 群馬大学大学院講義 パワーエレクトロニクス工学論 9-1 9.1 各種共振型スイッチング方式 (1)ソフトスイッチングの概要 ●特徴 *メリット :スイッチング損失の低減・・・効率の向上 *デメリット:回路の複雑化(共振用LCの追加等) ●動作 *出力電圧・電流を共振・・・正弦波波形(ノイズ小さい) *共振の V=0 (あるいは I =0)で スイッチを切換え ⇒ スイッチの損失がない ZVS : Zero Voltage Switching ZCS : Zero Current Switching ● 種類(多数の方式あり) *電流共振/電圧共振/複共振 *直列共振/並列共振 H27 群馬大学大学院講義 パワーエレクトロニクス工学論 9-2 (2) ソフト・スイッチングの基本回路 ●電流共振スイッチ と電圧共振スイッチ *スイッチング電源に対して、共振素子(Lr,Cr,Dr)を追加 *電流(電圧)共振時、電圧(電流)は通常のスイッチング *コンデンサの挿入位置の相違 *電流(電圧)=0 の期間にスイッチ切換え・・・スイッチ期間は限定 Lr S 負荷電流源 Dr VA S Ic D Cr Ic ON OFF S iS Vc VS iS (A) 電流共振スイッチ(半波形) Cr Dr P S Lr D Vc OFF VAP ON (B) 電圧共振スイッチ(全波形) H27 群馬大学大学院講義 パワーエレクトロニクス工学論 9-3 (参考1) 電流共振スイッチとコンバータ構成 ●動作:・共振周波数は固定:SW周波数を可変して出力電圧制御 ・半波形/全波形:半周期/一周期の電流をD で制限 A S Lr C A S Lr L C Vo Ic VAP (A) 半波形 A S Lr Vi D Cr P Cr D C P (A) 降圧形コンバータ(半波形) C L C D P Vo Ic VAP D Cr (B) 全波形 R P 電流共振スイッチ(降圧形電源) Vi Lr S Cr C R A (B) 昇圧形コンバータ(全波形) H27 群馬大学大学院講義 パワーエレクトロニクス工学論 9-4 (参考2) 電圧共振スイッチとコンバータ構成 *半波形/全波形:半周期/一周期の電圧供給を、Diで制限 S A P C Vi Cr D L Lr D S Cr (B) 全波形 VAP A 電圧共振スイッチ(昇圧形電源) C R P (A) 降圧形コンバータ P C Lr Cr VAP A (A) 半波形 Ic Vo Lr D S Ic L C C P Vo Lr D Vi S Cr C R A (B) 昇圧形コンバータ H27 群馬大学大学院講義 パワーエレクトロニクス工学論 9-5 9.2 ZVS-PWM制御スイッチング電源 (1)降圧形ZVS-PWM制御電源 ●構成 *共振コンデンサ1個のみ追加 *Vc=Vinで SW = ON ⇒ スイッチング損失 =0 ●特徴 *コイルに双方向電流 LC共振⇒Vc を立上げる *制御周波数(周期) ・SWーOFF時間:共振条件 ・SW-ON 時間 :制御条件 Vc Vin Vo PWM IL Vc Vds M1 M2 M3 M4 M5 ZVS-PWM制御スイッチ電源の構成と動作 H27 群馬大学大学院講義 パワーエレクトロニクス工学論 9-6 ● 動作説明 *モード1: t 0~t 1 ・PWM信号=OFF ⇒ SW=OFF ・IL 順方向電流により、 共振Crの電荷は放出 ⇒ Vc 低下 Vc(t)=Vin-(Io/Cr)・t (9-1) ・短時間で Vc=0V T1≒Vin・Cr/Io (9-2) Vc Vin Vo PWM IL Vc Vds M1 M2 M3 M4 M5 ZVS-PWM制御スイッチ電源の構成と動作 H27 群馬大学大学院講義 パワーエレクトロニクス工学論 9-7 *モード2: t 1~t 2 ・Vc = 0 V ⇒ Di = ON ・IL は次式により、直線的に減少 IL(t) = Ioー(Vo/L)・t (9-3) ・短時間で IL =0 A T2 = Io・L/Vo (9-4) Vc Vin Vo PWM IL Vc Vds M1 M2 M3 M4 M5 ZVS-PWM制御スイッチ電源の構成と動作 H27 群馬大学大学院講義 パワーエレクトロニクス工学論 9-8 *モード3: t 2~t 3 ・IL = 0 A ⇒ コイル電流は反転(反転電流) ⇒ D1=OFF より LC共振 (Co=電源) ⇒ Cr は充電を開始し、Vc上昇 Vin Vc= 宿題 (9-5) ・Vc は上昇し、遂には Vc=Vin T3= 宿題 (9-6) Vc Vo PWM IL Vc Vds M1 M2 M3 M4 M5 ZVS-PWM制御スイッチ電源の構成と動作 H27 群馬大学大学院講義 パワーエレクトロニクス工学論 9-9 *モード4: t 3~t 0 ・Vc = Vin ⇒ ボディ・ダイオード D2=ON Vc = Vin をコンパレータで検出 ・PWM =“H”により、SW = ON Vin ⇒ Vin の供給により、 IL の微小反転電流は すぐに順方向に流れる IL (t) ≒ t・(VinーVo)/L (9-7) ・Vo は徐々に上昇し、 遂には Vo = Vr に達する PWM ⊿Vo(t) = (1/C)∫IL・dt IL = (Vin-Vo)/2LCo・t2 (9-8) ・ Vo = Vr を検出し、PWM =“L” Vc Vc Vo Vds ・モード1 に戻る M1 M2 M3 M4 M5 ZVS-PWM制御スイッチ電源の構成と動作 H27 群馬大学大学院講義 パワーエレクトロニクス工学論 9-10 ● シミュレーション結果 *回路構成: ・出力誤差電圧とSAW信号を比較 ⇒ セット信号S を発生 ・Vc=Vin により、リセット信号R を発生 ⇒ FF出力 = PWM信号 So PWM Vc SAW PWM R S ZVS-PWM制御電源のシミュレーション回路 主要波形 H27 群馬大学大学院講義 パワーエレクトロニクス工学論 9-11 ● シミュレーション結果(動作波形) *シミュレーション波形: ・共振コンデンサCrの値により モード1の時間を制御可能 ・コイル値Lの値により モード2の時間を制御可能 PWM IL Vc Vds Vgs=ON Vds モード2 Vc 0A ZVS-PWM制御電源のシミュレーション結果 H27 群馬大学大学院講義 パワーエレクトロニクス工学論 9-12 ●シミュレーション結果(出力リプル) 条件: 結果: Vi=10V,Vout=6.0V 定常リプル Io=0.6A/1.2A, L=10uH, 過渡応答 Cr=10nF, C=1000uF Vo [V] <2mVpp @Io=0.6A <±15mV @Io=0.6/1.2A 8mVpp +15mV Vout 2mVpp -15mV Io=0.6A Io=1.2A Io=0.6A [ms] 出力リプル・過渡応答特性 13 H27 群馬大学大学院講義 パワーエレクトロニクス工学論 PWM ● 実測波形 IL *動作条件は、シミュレーション回路と同様 *実測波形は、原理波形と類似 Vc Vds ● 共振条件 *共振条件:2・Vo>Vi * Crの動作範囲:Vc=0~Vin * 起動時の出力電圧: Vo>Vi/2 に充電必要 ★起動時のチャージアップ回路必要 Vds PWM Vc IL ZVS-PWM制御電源の実測波形 H27 群馬大学大学院講義 パワーエレクトロニクス工学論 9-14 (2)昇圧形ZVS-PWM制御電源 ● 構成 *ダイオードに並列に 共振コンデンサを接続 ●動作 * 共振原理は、降圧形と同様 ・M1:SW=OFF ⇒ IL により Cr は充電 ・M2:Vsw = Vo ⇒ Di = ON IL は次式で減少 IL(t) = Io - t・(Vo-Vin)/L (9-9) ・M3:遂には IL=0 A となり反転 ⇒ Co より逆電流 Cr は充電し Vswは低下 ・M4:Vsw=0V となり、ボディD=ON ・M5:Vsw=0V をコンパレータで検出 ⇒ SW=ON し、コイルにチャージ ・Vo=Vr により、PWM=OFF PWM IL Vc Vds M1 M2 M3 M4 M5 昇圧形ZVS-PWM電源の動作 H27 群馬大学大学院講義 パワーエレクトロニクス工学論 9-15 ● シミュレーション結果 *回路条件 Vi=3.5V, Vo=6.0V, Io=0.12A L=3.9uH, Co=470uF, Cr=100nF Fop=162.5 kHz 昇圧形ZVS-PWM電源のシミュレーション結果 ● 実測波形 *動作周波数 Fop=129 kHz (< Fsim=162.5 kHz) N-MOS、OPアンプ等の遅延 により、動作周波数は低下 *スイッチング損失比較 ⊿Pzvs=0.55W ⇔ ⊿Pnor=29.3W 損失低減率=98 % 昇圧形ZVS-PWM電源の実測波形 H27 群馬大学大学院講義 パワーエレクトロニクス工学論 9-16
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