広報誌 つのぶえ vol.07

桐朋学園音楽部門広報誌
学長
桐朋学園音楽部門
梅津時比古「春に溶ける音」
VOICE
桐朋の教育とは
CLASS REPORT 「合同ゼミ」をのぞいてみよう!/ 実技に生かすソルフェージュ
桐朋のキャリア支援
INTERVIEW 久下未来さん
社会参加 コンサート一覧
SPECIAL 桐朋学園オーケストラ ~歴史と教育について語る~
冬期講習・入学試験日程・演奏会日程
COLUMN 音楽ジャーナリズムは復活するか?
Vo l .
7
2015
wINTER
E S S A Y
春に溶ける音
梅津時比古
「アーサー 王 」に、寒 さに震 え るよ
どだ。
起こり 得るかも しれないと思 うほ
第3曲︽凍った涙︾
の題名の事象も、
シューベルトの歌 曲 集︽ 冬の旅 ︾の
シューというS音 が ま じ り 合い、
や
で、乾いたカタカタした音 と、
シュー
はさらに「溶けてくるのはまず子音
している。英国の文筆家のアディソン
になると溶けてくる」と伝聞体で記
たとたんに凍ってしまい、春 から 夏
はあまりに寒くて、
言葉が口から出
有 名なプルタークも「 ある都 市で
るものが溶け始める。
ていたもの、
心の中で凝り固まってい
たてはじめる。待つうちに、凍りつい
わらかく周りを溶かし、
優しい音を
も、
2のなかほどから春の予 感がや
かに真っ白に凍 りついているけ れど
マンの︽子供のためのピアノ曲 冬の
時1,
2︾。1の音の世 界は雪のさな
させる音 楽 も ある。たとえばシュー
春に溶 けてくる音や言 葉 を 感じ
う なトレモランド 唱 法 を 取 り 入 れ
がて、
やわらかく 優しいささやき 声
ヨーロッパの冬の寒さは肌を刺す 。
ている 。第 3 幕 に 登 場 す る 凍 え る
が聞こえてくる」とまことしやかに
世紀のヘンリー・パーセルは、
歌劇
神 、人々が、短い息で声 を 震 わせて
説明している。
むけるだろう。
たら、
歩いていても、
思わず耳をかた
さやきが聞こえてきて、
宙を満たし
春になって、どこか らか 優 しいさ
だろうか。人 生で、夢がやぶれる初
衝 撃 を 覚 え た 人 も 多いのではない
ント を 置いていると 分 かった と き 、
のではなく、実 際には父 母がプレゼ
子 供のころ、サンタクロースが 来 る
冬のさなかに、
クリスマスがある。
歌 うと、凍 りつく 息が見 えるよう 。
声のトレモロと言 えるが、寒さの中
で生まれた唱法と思いたくなる。
言 葉や音 自 体が、寒さで凍 りつい
て聞こえ な く なるという 話 もヨー
いた 。雪に半 分 埋 も れていたが、表
しては、待つことしかでき ないので
と、
この少 年が持つような孤 独に対
めての体 験 か も し れ ない。そ れ だ
けに、サンタクロースが 自 身の体 験
札には明らかに、「孤児院」と書いて
ロッパには伝わっている。
を 書いた 話 を 読 んだ と き には、作
待つう ちに、少 年のなかに凝 り 固
は、
とも思う。
日
あった。
月
者の発 想の転 換に打たれた。
ヨーロッパのクリスマスは
まっているものが、
春になって溶けて、
そのサンタクロースは、
プレゼント
に終 わってし ま うのではな く 、
マリ
文化財団専門委員。横浜みなとみらいホール専門委員。横須賀芸術劇場推薦委員など。
を 置こう としたところを 、
ベッドで
スク音楽文化振興会理事。公益財団法人福田靖子賞基金理事。公益財団法人アフィニス
ささやきになったら、少 年の言 葉 を
音楽評論活動のほか、
CD、
コンサートのプロデュース、内外のコンクール審査員も務め
アの光のミサである2月2日ごろま
る。早稲田大学講師。公益財団法人三井住友火災海上文化財団理事。公益財団法人ジェ
起 き 続 け ていた 少 年 に 見つかって
へ」
「フェルメールの音」
「音と言葉のソナタ」
「耳のなかの地図」
「日差しのなかのバッハ」
聴けるかもしれない。
「非日常と日常の音楽」
「音をはこぶ風」など。
で、
クリスマス・ツリーは光 を 灯し続
上記のほか、主な著書に「神が書いた曲」
「フェルメールの楽器」
「冬の旅 24の象徴の森
し ま う 。少 年 は「 ね え 、
パパでしょ
キリストの降 誕 を 歌 うキャロルの
2010年、
「音楽評論に新しい世界を開いた」
として日本記者クラブ賞を受賞。
けている。この少 年 も、
サンタクロー
のは、本 当はパパなんだって言ってる
一つに、
ダークの「 冬の日に」と 題 し
2009年、
NHK制定「日本の100冊」に著書「〈ゴーシュ〉
という名前」が選ばれる。
う?」と言ってまるで信じてくれな
よ」と、
かたくなに信じよう としな
た ものがある。重いオルガンの響 き
部科学大臣賞および第19回岩手日報文学賞賢治賞を受賞。
スを 信じていないのに、
カレンダーか
い。少 年が自 分で作ったという 大 き
とともに、聖 歌 隊が「 雪の上に雪が
2004年、著書「〈セロ弾きのゴーシュ〉の音楽論」で第54回(平成15年度)芸術選奨文
い。
「 本 物のサンタクロースだよ。世
な靴 下に戦 車のプラモデルを 入れ、
降 り 続 け る 」と 厳 しい冬 を 歌い始
の音楽教育事情を視察・研修。
ら目をそらしながら、靴 下をいつま
サンタクロースは、本 物であ ること
め、
最後は聖歌隊の少年の声だけに
早稲田大学第一文学部西洋哲学科卒。1982~83年、
ケルン音楽大学を中心にドイツ
界 中の子 供たちにプレゼントを 配っ
を 証 明 してみせるために部 屋の壁
なる。
「 彼に何 を 与 えることができ
みんな も 、
プレゼント を 持って く る
を 通 り 抜 けて外へ出た。
「 本 当はパ
に響 き 合 う 透 きとおったアカペラを
本 物のサンタクロースですら少 年
思い浮かぶ。
聴いていると、少 年の作った 靴 下 が
るのだろう か、貧 しい私 が 」と静 か
パなんでしょう? パパだ と 言って
よ」という少年の言葉を背に。
外 は 雪 が 降っていた 。雪のなかで
持 ちにな り 、サンタクロースは門の
の夢 を 破ってしまったことを 考 える
そりを動かそうとして、
ふと妙な気
ほうに回ってみて、自 分の額 をたた
梅津時比古/桐朋学園大学学長
でもしまっていないかもしれない。
25
ているんだ」と説 明しても、「 学 校の
12
2
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tsunobue 2015
3
17
年の間に、
ピアノ専 攻の学 生
印 象 深い思い出です 。桐 朋 学 園はピアノ
桐朋の教育とは
当 時 ピアノ部 会 主 任でいらした 林 秀
専攻だけでなく、
常に弦楽器専攻の学生
いピアニストでした。先 生からいただいた
授・組織者としてだけではなく、
素晴らし
いま す 。朴 久 玲 先 生やパリで活 躍してい
ル受賞者となったことを私は喜ばしく思
卒業後、
モスクワ音楽院の私のクラスに留
家に戻ったような思いがします 。桐 朋を
ここ数年は、桐朋学園に来るたび我が
たちの素晴らしい活躍もありました。
光 先 生の、常に疲れを 知らない活 動 を、
たちの芸 術 性は飛 躍 的に進 歩したと感
CDを、
私は折あるごとに聴いています。
恭平君が学んでいます。
る山本亜希子さん、
そして今現在は反田
感 謝 と共に思い出 しま す 。林 先 生は教
じます 。よく動く指だけではなく、多彩
賀和子先生、
江戸弘子先生、
松岡貞子先
などに著しい成長を実感するのです。
日 本が誇る作 曲 家 、三 善 晃 先 生が学
年代だったでしょうか、「ワルトシュタ
長で、
ピアノ部 会には寺 西 昭 子 先 生 、有
な音色、感情の表現、生き生きした解釈
生、富 本 陶 先 生、小 島 準 子 先 生、徳 丸 聡
時代から一緒に教鞭をとることができた
私が桐朋学園でマスタークラスを受け
ことを誇りに思います。
育成の一端に私も微力ながら参加できた
強をする仲間を得たということは、
非常
に身を置 くということで、
同じ分 野で勉
学生の皆さんの音楽への熱い思いは、
大変
を演 奏しました。リハーサルでの、
オケの
などを学べる機会もあり、
また、
オーケス
では、
幅広く多方面の先生方から室内楽
平 成 年 秋の外 国 人 叙 勲において 、我が国の音 楽
文 化の発 展 及び友 好 親 善に寄 与されたことで、旭
日中綬章を授与されました。
おります。
学 園の益々の繁 栄 と成 功 をお祈 りして
すべての部会の先生方に、
心から、
桐朋
学 する学 生も多 く、彼らが国 際コンクー
イン」ソナタのレッスンで、出だしのテーマ
子先生、
金澤希伊子先生などがいらした
その後
したのは1981年でした。
私が初めて桐 朋 学 園 大 学でレッスンを
VOICE
先生方の
日々の 教 えに 感 謝
モスクワ音楽院教授
ミハイル・ヴォスクレセンスキー
(特別招聘教授)
生はその話に解せない表 情で「 どうやっ
を「日の出 」に例 える話 をしました 。学
て?」と質問したものです 。しかし今は、
1 9 9 2 年には、桐 朋の学 生オーケス
事は、
感慨深い思いです。
トラとプロコフィエフの 番のコンチェルト
彼らは自覚を伴った思考を育んでいるこ
才能あるピアニスト・演奏家が育ち、
その
とが感じられます。桐朋学園から多くの
持つようになって、 数年になります。高
こしました。まず、音 楽 学 校という 環 境
年 間の日々を 思い起
た時 、懐かしさが込み上げ 、
ここで夢 中
初めて講 師 として桐 朋に足 を 踏み入れ
間 も な く 演 奏 活 動に入って久 方ぶりに
に励みました。その後 、
アメリカへ留 学 、
で学びたいと上 京し、 年 間ここで勉 学
校時代、
愛知県出身の私はこの桐朋学園
あった私に、
確実に音楽家への道を切り開
先生方に恵まれていました。アンサンブル
ながら、
アカデミック方面でも素晴らしい
は、
音楽面の著名なる教授陣もさること
る事は、
とても嬉しい事です。この学校で
にする機 会に恵 まれ、音 楽 をシェア出 来
もその頃の友 人とはアンサンブルをとも
て、
たくさんの友人を得ることができ、
今
に励みでもあり、
また、
お互い刺激し合っ
てくれるものだからです。何が自分の心
の中のあらゆることに対する感覚を育て
切だと思います。なぜなら、
それは、
自分
訪問されマスタークラスを受講する機会
海外のあらゆる学校からプロフェッサーが
す。また、
特筆すべきは、
学校には頻繁に
緊 張 感や空 気 感は今でも 思い出されま
と学校を訪問される事があり、
その時の
せな事でした。たまに小 澤 先 生がふらっ
のもとに勉 強できましたこと、
これも 幸
トラでは、
錚々たる指揮者の先生のタクト
になって過ごした
が豊 富に与 えられたことです 。私 自 身、
舞台への扉へと誘ってくれたのだと思いま
いてくれたと思いますし、
さらには、
国際
教える立場となった今、
常に蘇るこの思
ま す 。それがわからなければ、聴 く 人の
に響くのかをまず見極めてほしいと思い
とができましたが、その中で巡り 会いま
心に響く演奏はできないと思います。と
さい。桐 朋 学 園は、その機 会 を 存 分に与
にかく 幅 広 く 色々な事 を 経 験してくだ
演 奏 経 験 を 通して伝 えることができた
えてくれる場所だと思います。
どういうことなのか、という 事 を 自 分の
の出会いは、
私の運命を大きく変える出
らと思っていま すが、その中で、
いかに学
い出 を 元に、
プロの音 楽 家 を 目 指 すとは
来 事となり ました。今、改めて思い返し
生 時 代に心が揺さぶられる様な経 験 を
ルに通 用 する芸 術 性に重 点が 置かれて
桐 朋の教 育は、現 在、
インターナショナ
なからずまだ音 楽を目 指 す 事に不 安の
な表 現 をしよう とする時に子 音が強 く
説 明 してき ました 。日 本 語は強 く 大 き
たくさん積めるかということはとても大
素晴らしい導きがあってのことです。
てくれているようです 。桐 朋の先 生 方の
ています。
それ 故 、
ここ桐 朋では毎 年 、
より 難 解
形 式とは何か?皆さん、是 非 考 えてみ
でハイレベルな 話 題に触 れることが出 来
します。そういった言葉の壁がある中、
良
ましょう 。形 式はどのような曲にも あり
長くなります。イタリア語は反対に母音
日本からの要 請を受け、
イタリア外 務
い歌 唱 、良い演 奏 することは大 変 難しい
ま す 。そ れ を 敬いながら 芸 術 表 現 を し
を 豊かな音 色で音 をよく 鳴 らすように
私の日本
省から文化大使として選ばれ、
トな要 求 をし、それらを 身につけるため
ことです。その上、
私からは大変デリケー
で教 え、
コンサートを行い、そして日本か
場イタリアの形 式を、彼らに体 得するま
た 。私の使 命 は、あ らゆる 点において本
その間、常に桐 朋で教 えてまいり まし
ん私からの要 求はそれ以 外にも 山 とあ
然に出 来ることではあり ません。もちろ
段日本語を話している皆さんにとって、
自
には、相 当 集 中 力や努 力が必 要です 。普
う。
す 。形 式 は 世 界 共 通 語 と 言 え るでしょ
に世界に通 用 する芸 術 家になっていきま
なければなりません。それが成された時
学生の皆さんにお願いします。
り、
それに格闘して来た卒業生達が沢山
常に夢 を 見 続 けること、苦 労 と我 慢、
沢山勉強して下さい。
継 続 す ること、そ して 勇 気 を も ち なが
います。
毎年卒業生がいて新入生が新たにクラ
未来の文化と芸術、すなわち皆さんが
スへ参 加 するわけですが、私からの最 初
期 待 する未 来は、命の水は皆さんの手に
ら!
るようになってき ました。毎日の積み重
かかっています。
の要 求が段々と繰 り 返さなくても 出 来
道を残して卒業、
そこから新しく続く道
ねを 自 らのものにして、後 輩たちにその
を開 拓 すべく 下 級 生 達が引 き 継いでいっ
例えば一年目、毎回の授業で日本語と
方 法 を とるのだということを 繰 り 返 し
イタリア語の表 現においては、全 く 逆の
状況を振り返ってみます。
私が教 えはじめた 頃から現 在に至る
高いレベルが見えるようになりました。
桐朋は着実に進展し、
さらに特出した
とです。
ら世 界に羽ばたく 芸 術 家 を 輩 出 するこ
おります。
でのキャリアは、約
年になろう として
家を育てることと思っています。
てみま す と、
この桐 朋での
年 間は、少
音楽院の教授、
ドロシー・ディレイ女史と
す。
桐朋時代、
色々な先生方のマスタークラス
27
した、
その後の恩 師となったジュリアード
な角 度からたくさんの刺 激 を 受 けるこ
3
国 際 舞 台への 扉
ヴァイオリニスト
2
を 受 講、
また、聴講させていただき、色々
10
いま す 。そ れは 大変 質の高い、若い芸 術
3
竹澤恭子
(桐朋学園大学特任教授)
桐 朋の教 育 力 について
イタリア国立ローマ・サンタチェチーリア音 楽 院 教 授
ステーファノ・マストランジェロ
(桐朋学園大学特任教授)
34
4
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tsunobue 2015
5
80
3
10
Mikhail Voskressensky
Kyoko Takezawa
Stefano Mastrangelo
究 者で あ るから 、教 育にかかわるだ けでな
われる。当 然ながら、大 学 教 員 というのは研
平、
ゲスト)という具合。
るシューベルト歌 曲の発 展とその背 景 」
(堀朋
音楽学とは?
本 学には「 音 楽 学 専 攻 」というコースがあ
く、自らが研 究 者として活 動していなければ
きる。来年度もぜひ、
いつでも、
だれでも、
ごく
るわけだが、
一体なにをしているのか知らない
で、
その成 果を見せるという、
なかなかシビア
気軽に顔を出してほしい。
日時や教 室など、詳 細は大 学のサイトの
「 公 開 講 座 」というコーナーで見ることがで
音 楽 学とは「 音 楽にかかわる学 問の総 称 」だ
な場なのである。また、毎年ひとりは、学外の
ならない。
いわばこのゼミは、同 僚や学 生の前
から、音 楽に少しでも 関 係があれば、音 楽 学
「 イキのよい」研 究 者 をゲストとして招 聘 す
学 生が意 外に多いようにも 思 う 。そ も そ も
にな り 得る。実 際 、学 会での発 表 を 見ても 、
るのも特徴だ。
しかも、
このゼミは常に一般 公 開( も ちろん
すべて一般公開
大 作 曲 家の伝 記 研 究や楽 曲 分 析から、
ロック
や映 画 音 楽の研 究、
さらには腱 鞘 炎とピアノ
練 習の関 係(!)なんていう ものまで、実に多
彩な研究が並んでいる。これらはすべて、
まぎ
様々なクラスが開講されているが、
これらのほ
学概論」
「楽書講読」
「 音 楽 文 献 学 」といった
かなわれている 。
「音楽史演習」
「民族音楽
3名 を 中 心にした、多 くの講 師 陣によってま
本 学の音 楽 学 教 育 は 大 学の専 任スタッフ
ロップメント )
の必 要 性 が 強 調 されているけ
近 年、大 学 教 員にはF D(ファカルティ・ディベ
ちょっと不 思 議な雰 囲 気 を 醸し出している。
は 専 門 誌の記 者 な ど 様々な 聴 衆 が 訪 れて、
で、熱 心な音 楽マニアはもちろんのこと、時に
方 も 聞 きに来てよいという 形 を とっているの
無 料 )を 前 提にしている 。す なわ ち 、学 外の
とんどは専 攻 学 生 だ けでな く 、器 楽や声 楽
れども 、
この合 同ゼミは期せず して、高 度 な
れもない
「音楽学」なのだ。
を 専 攻 する学 生 も 履 修が可 能 。大 教 室で基
FD活動にもなっているわけだ。
よう なラインナップである 。
「 第1次 世 界 大
さて、今 年 度の合 同ゼミは、およそ 以 下の
今年度の内容
礎 的な音 楽 史 をしっかり 学ぶのもよし、そし
て少 人 数による演 習で議 論 する力 を 鍛 える
のもよし 。とも か く 相 当に幅 広い選 択 肢 が
提 供されているので、
ぜひシラバスをじっく り
と眺めてみてほしい。
戦 とアメリカの音 楽 状 況 」
( 沼 野 )、
「G.
W.
世紀
とに最 大の目 的が置かれている。
一方で、少々
通常の講義は、学生の能力を向上させるこ
芸術大学資料所 調査報告」
( 藤 村 )、「 W .
A.
モーツァルトの交響曲ト短調K.550の
後 半の作 品 流 通の一側 面 」
( 西 原 )、
「ベルリン
M a r k s という 作 曲 家 は 誰 か =
毛 色が異なるのが月に一回 開かれる「 合 同ゼ
主要主題について」(安田)、「死と眠りをめぐ
異色の存在「合同ゼミ」
ミ」。このゼミでは、教 員による研 究 発 表が行
業では、入試課題のような
桐 朋のソルフェージュの授
通して体 感 することを 目 標
ティ豊 かに、聴 音 や 演 奏 を
ることを 、
できるだ けバラエ
同 時 代の作 曲 家が考 えてい
段 階 的に表 現できるようになり ま す 。そし
注 意 してやって、よ うや く7つの音 量の差 が
ない音 量に達してしまいます 。相 当に慎 重に
めて4〜5回 目でも う それ以 上 大 き くなら
演奏に結びつける力
問 題ばかりやっているわけ
、 、 、 、 …というようにバラ
にしています。
には個 人のレヴェルによって
ストのよう なもの。その先
題はあ く まで基 礎 体 力テ
スの作 曲 家メシアン
(
き な 影 響 を 与 え た フラ ン
今 回 は 、現 代 音 楽 に 大
れば意 味があ り ません。弾 く 前に順 番 を 決
してみま す 。ここでは、
「 他の人に聴いてもら
バラの順 番で弾 き 分 けることが出 来るか、試
て、次に
では あ り ま せん 。入 試 問
分けられた様々なクラスが
1 9 9)
2を取り上げた 時のこ
と をご紹 介 し ま しょう 。彼
めて、
その順番通りの強弱が聴き取れたかど
ているつも りでも、それが聴 衆に伝わらなけ
う 」という 事が大 切です 。自 分では弾 き 分け
あ り 、各 講 師 が工 夫 を 凝
のピアノ独 奏 曲「 音 価 と 強
1908-
らし た 授 業 を 展 開 してい
うか、
クイズ形 式で当て合いをしま す 。聴 き
に理 解で き ることは、音 楽 活 動 を す る 上で
を す ぐに書 き 取る力や、複 雑な楽 譜 を 瞬 時
らいが一般 的でしょう 。ところが、
この曲は、
な
ピアノの楽 譜でしたら1ページに 〜
気 が 変 わる 部 分に書 かれている 程 度で す 。
つの強 弱の弾 き 分 け 」をやってみるとどう な
この作 品はピアノ曲ですが、他の楽 器で「7
れます。
大 きなアドヴァンテージです 。ただ、その力が
んと作 曲 家によってほぼすべての音 符一音一音
るでしょうか。も ちろん、すべての音 楽にこの
ま す 。そこでは、その人の音 楽 を 形 作る「 音
は、
メロディーのはじめや曲の雰 囲
実 際の「 演 奏 」に結びつかなければ何の意 味
に、
それぞれ ・ ・ ・ ・ ・ ・ の7つ
よう な「デジタルな 音 量のものさし 」が必 要
を上げる訓練になります。それは、
クラシック
を弾き分けるということは、音に対する感度
ピアニストはその強 弱をすべて正 確に弾 き 分
けなければなり ません。 〜
私は大学で現代音楽のソルフェージュの授業
の差 がつけ られるか ど う か、
やっても らいま
大 き く 、大 き くから小 さ く と7段 階の強 弱
す 。授 業では、ま ず 同 じ 鍵 盤で、小 さ くから
段 階で弾 き 分 けるということは至 難の業で
思っています。
こから 新 たな 音の楽 しみ 方 を 見つけ たいと
読み取って、実際にやってみること。そして、
そ
がたくさんあります 。まず、作曲家の意図を
現 代 音 楽には音 楽 を 捉 え直 すための刺 激
す。
の作 品 を 演 奏 する時にも 必 ず 役 立つはずで
われているのでしょうか。今 回は鷹 羽 弘 晃の
強 弱 記 号だと思いま すが、それを 実 際7つの
は見 慣れた
レポートです。
を担 当しています 。現 代 音 楽シーンはあらゆ
す 。これがなかなか大 変です 。小さくから始
fff
る音 楽のスタイルが混 在している状 況です 。
強弱の弾き分けで養われる力
音に対する感度を上げる訓練
も あ りません。
ソルフェージュの授 業 を 通して
の強 さのどれかが書かれているのです 。例 え
ということはありません。しかし、
7つの強 弱
6
fff
…というように、譜 面は強 弱 記 号だらけ 。
、
2つ目は
f
個ぐ
様々な音 楽 を 紹 介し、柔 軟で応 用 力のある、
、
3つ目は
や
手もまた「音量の差を聴き分ける耳」が養わ
pp
)」は、音 楽 史 上 、衝 撃 的な
度のモード(
1949
作 品です 。クラシックの曲では強 弱 記 号、
つま
fff
感 」を育 くみ、その力を専 攻 実 技に繋げるこ
ff
り
mf
とを 第一に考 えていま す 。難 しい課 題の聴 音
p
ば、
1つ目の音 符は
いと考えています。
mf
ppp
さて、実 際の授 業ではどのようなことが行
p
5
ff
ff
pp
ppp
ppp
ぬまの・ゆうじ/東京芸術大学博士後期課程修了。博士(音楽学)。主な研究領域は20~21世紀音楽。主な著書に
『リゲティ、ベリオ、
ブーレーズ 前衛の終焉と現代音楽の未来』
(音楽
之友社、2005年)、
『 光の雅歌 西村朗の音楽』
(春秋社、2005年、共著)、
『 日本戦後音楽史 上・下』
(平凡社、2007年、共著)など。国内外での学会発表のほか、音楽批評、演奏会・
CDライナー解説の執筆、音楽祭の企画・監修、
コンクールの審査員などを務める。2008年から2009年にかけてハーヴァード大学客員研究員。現在、桐朋学園大学教授。
たかは・ひろあき/桐朋学園大学作曲理論学科卒業。NTTドコモ奨学金受賞。作曲とピアノを三瀬和朗、作曲を権代敦彦、
ピアノをローラン・テシュネ、指揮を小泉ひろし、秋山和慶に師事
する。1999年、弦楽六重奏のための「サーキット」で第68回日本音楽コンクール作曲部門入選。
「NHK東京児童合唱団が選ぶ日本の歌50選」の編曲に携わる。これまで室内楽、声楽
を中心にした作品を多数発表。作曲の他、伴奏や室内楽また指揮活動と幅広い。現在、桐朋女子高等学校音楽科教諭・桐朋学園大学音楽学部非常勤講師。
19
音 を 感じるプロフェッショナルを 育てていきた
p
沼野雄司(音楽学専攻主任)
鷹羽弘晃(桐朋女子高等学校音楽科教諭・桐朋学園大学音楽学部非常勤講師)
6
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tsunobue 2015
7
f
mf
「合同ゼミ」
をのぞいてみよう
!
実技に生かすソルフェージュ
R E P O R T
C L A S S
R E P O R T
C L A S S
桐朋のソルフェージュの現場から①
左から安田和信、沼野雄司、西原稔 2015年度キャリア支援センターの業務・企画
卒業生交流会
特別講座
内外で活躍する
卒業生との
交流・講演会
音楽関連の仕事に
携わる各界の
スペシャリストに
よる講座
アーティストの
ための
キャリアセミナー
センター員による音楽家を
目指す学生のための
キャリアセミナー
招聘キャリアカウンセラー、
外部業者などによる
就活支援セミナー
楽器店等の
採用説明会
存の演奏団体、
教育機関︵音楽教室
に生きる場所を見出しています。既
中で、
卒業生たちはさまざまな場所
つめかけます 。そんな昨 今の事 情の
の教員採用にも、
小さな枠に大勢が
る楽器店講師の公募や地方自治体
ストラなどの団 員 募 集や、人 気のあ
てなく 厳しくなっていま す 。オーケ
ラシック音楽を取り巻く現状はかつ
と願 う 学 生が大 半 を 占める一方、
ク
「卒業後も音楽活動を続けたい」、
任に聞こえるかもしれませんが、要
いう人もいます。などと言うと無責
ま すし、「 実は、無いようで有る」と
際に仕事は、「あまり無い」ともいえ
楽の仕 事は、不 安がいっぱいです 。実
積み重ね、組み合わせで成り立つ音
データはあ り ません。細かい仕 事の
らい稼いでいるのかも、
はっきりした
日何をやっているのか、
実際にどのく
です 。卒 業 後 数 年は特に、
みんな毎
活動の仕事は、
実態が見え難いもの
は裏 腹に、演 奏 、作 曲 といった 音 楽
就 職 という 形 が 分 か り 易いのと
代だとも言えます。
レッスン室から一
たちに囲まれて過ごすのが、
学生時
になることになる友人や先輩、先生
まれるのです。人生で何度もお世話
その後何十年も続く人間関係が生
4年または7年 過ごすことにより、
います。そして、
小さい規模の学校で
野に入れて欲しいといつも 指導して
は進学や留学をする際にも、
常に視
て、意 味 あるものになり ま す 。これ
同時に、
社会のニーズと出会って初め
ののために研鑽するものであるのと
いま す 。音 楽は、自 分や音 楽 そのも
たちに自 信を持ってもらいたいと思
の音 楽 を 社 会へ届 け られる可 能 性
なども 含め︶
に頼らず、自 分 達の手
するに考 え 方 次 第です 。自 分の長
歩、
いや百歩 出たところにある実 社
機 会は、
この二年で格 段に増えまし
で活 動の場 を 創 り 出 している人 が
所や、
喜びを感じられる種類の仕事
会では、
実にさまざまな人がいて、
お
は沢山あります。その意味では学生
出てきたと同時に、
いろいろな仕事の
がどういうものだろうと考え、
そし
互いにいろいろな関わりを持って動い
た。
組み合わせを工夫 する中で本 当に
てそれは社 会でどう 生かせるのか、
ているのだということを、
学生たちが
クラシック音楽を取りまく
社会状況
目指すところを模索している人が数
と結びつけていく思考が鍵となりま
年目の終わりに、
桐朋の管楽器・打楽器・
ハープ
サンブルピアニストへの強い憧れがありました。幸運にも
研究生
る、
周りの人との縁を大事にして欲しいと思います。
ました。今の学生さん達には、
何気なく顔を合わせてい
や興 味 も 増 え、素 晴らしい友 人との出 会いにも 繋がり
し始めました。また、様々な音 楽に触れることで知 識
繋がりが人 生を 左 右 するほど重 要であることを 理 解
私もまだ経験が浅いですが、
音楽の世界では、
人との
付き合うことが多くなりました。
と、
今は
“憧れの”音楽家として、
時には仕事仲間として
の卵 を 育てたり ⋮ 。毎日のように会っていた友 人たち
音 楽 活 動を続けていたり、作 品を出 版したり、音 楽 家
ラ団員として活躍していたり、
何ヵ国語も操って海外で
のひとつです。当時からの知り合いが各地でオーケスト
が始まっていた時間は、
間違いなく今の音楽生活の基盤
学 生 時 代に、顔を合わせれば初 見 大 会や、音 楽 談 義
人との繋がりが何よりの宝物に
奏の公開講座を持たせて頂きました。
演などで活動しています。先日は地方の音楽高校で、
伴
ナーやコンクール、
オーディションの伴奏、
リサイタルの共
大学・同短期大学部での伴奏要員として働くほか、
セミ
て採 用して頂 き 現 在に至り ます 。そのほか、上 野 学 園
部会の嘱託演奏員の公募があり、
実技試験と面接を経
1
演奏家、
実技教員などによる
実演を含む講演
大島路子︵キャリア支援センター員︶
多くいます。これは昔も今も変わら
卒業する前に学んでほしいと切望し
にさがして行きたいと思います。
での企画や相談を通して若者と一緒
続ける方法を、
キャリア支援センター
きとした姿でこの日本の社会に伝え
なクラシック音 楽 を、本 来の生 き 生
ていま す 。そして、私たちが大 好 き
す。
賞。NHK交響楽団や東京交響楽団他などのメンバーとリサイタルや室内楽で共
就職説明会
現役教員による、
教職を志す
学生のための講座
ないことですが、
卒業後にどうやって
厳しい現状の中、
桐朋で学べることとは?
国際ピアノ音楽祭に参加。第26回愛知ピアノコンクール大学・一 般部門金賞受
招聘キャリア
カウンセラーによる
キャリア相談
音楽祭、
アウトリーチコンサート、
録音依頼などの取次
およびビジネスマナーや
ステージマナー等の
指導
就職セミナー
教職特別講座
生活するのかを考え始めれば、
おの
ずと自分と音楽との距離を確認す
ることになり ま す 。そこで、音 楽 活
桐朋できちんと学んだ演奏レベル
動は生活の糧とは分けて考えて、
就
職活動をする学生も確かにいます。
と 音 楽 その他の教 養 を もってす れ
ルの夕べ等に出演。ピアノを新谷祐子、伴場三恵子、須田真美子、雨田のぶ子の
伴奏やアンサンブルに高校時代から興味があり、
アン
キャリア支 援の企 画を通じて、在 学
学音楽学部嘱託演奏員。上野学園大学・同短期大学部伴奏要員。
ば、
考え方とアプローチ次第で、
自分
演。秋吉台ミュージックアカデミー等の公式伴奏者を務める。現在、桐朋学園大
生がそ ういった選 択 肢について知る
久下未来 さん
各氏に師事。第13回嶺南国際現代音楽祭(韓国)
に出演。第12回ニューヨーク
く げ・みらい
ノ専攻を経て、研究生修了。Student′
s Concert、卒業演奏会、管楽アンサンブ
センター員、学生支援
課員担当者による
個別のキャリア相談
INTERVIEW
8
tsunobue 2015
tsunobue 2015
9
ピアニスト
くげ・みらい/桐朋女子高等学校音楽科、桐朋学園大学音楽学部音楽学科ピア
アウトリーチ講座
会社訪問、職業体験を
含む音楽業界を
知るための講座
就職特別相談
音楽キャリア
支援講座
個別相談
桐 朋での
アンサンブルで広 がった
音 楽の世 界
フルートの神田寛明先生とみなとみらいホールの大ホールにて。
桐朋の
キャリア支援
卒業生のことば
社 会 参 加 コンサート一覧
2015年度︵ 平 成
私たちの身近な地域社会、
市町村との連携により、
様々な場における音楽活動を行っています。
﹁音楽﹂を通じて社会と関わることにより、
年 度︶
サンシティ
(老人ホーム)
調布市と調布警察、京王電鉄主催のイ
ベント が 調 布 駅 広 場 で行 わ れま し た。
調布市ゆかりの桐朋として、金管アン
サンブルによるファンファーレを行い、
イベントのオープニングを格調高い音
楽で飾りました。(6月2日)
調布警察
杏林病院コンサート
10
福島のオーケストラ
66
「桐朋学園演奏家によるサンデーコンサート」と題し、吉祥寺サンシ
ティという老人ホームの主催で2个月に1度コンサートを行ってい
ま す。このコンサート は、先 生 と 学 生の組 み 合 わ せ で行 う こ と を 主
旨としており、第1回のコンサートには、ヴァイオリンの久保田巧先
生、ピアノの青木ゆりさんのデュオで第2回はソプラノの松島理紗
さ ん、岡 崎 陽 香 さ ん、ピアノの萩 原 萌 子 さ んに世 界の歌 メ ド レーを
楽しんでいただきました。(5月 日)、(6月2日)
参加している学生たちの想像力と感性豊かな人間性の育成を願っています。
27
桐朋学園では、1999年7月から年
4 回 の コ ンサ ー ト を 杏 林 大 学 医 学 部
付属病院の外来棟ロビーで行っていま
す。入院患者さんだけでなく地域の人
たちはじめ、どなたでも入場できるコ
ンサート と し て評 判 です。第 回 のコ
ン サ ー ト に は 、フ ル ー ト 下 村 啓 輔 さ
ん 、篠 山 実 優 さ ん 、ピ ア ノ 宮 田 果 奈 さ
ん に よ る ビ ゼ ー や ドップ ラ ー な ど フ
ルート の 名 曲 を 演 奏 し ま し た 。( 月
日)
8
桐朋学園の理事からのご紹介
で 、イ ギ リ ス の 団 体 Key s
of Japanが主催する福島
の 中 高 生 の 子 供 達 と一緒 に「大
舞 台 で″ 演 奏 す る ボ ラ ン テ ィ
ア"
」活動に参加し ま し た。この
団体は2011年8月以降こ
れ ま でに6 回に渡 り 来日、東日
本大震災の被災地でクラシック
音 楽 の 演 奏、学 生 と の 合 同コン
サートを行っています。 ( 月
日 福 島 市 音 楽 堂、8 月 日 東
京オペラシティ)
18
20
17
調布音楽祭より
キッズ公演
「たたいてあそぼう 」
3.0
調 布 市 文 化・コミュニ ティ振 興 財 団 主
催の調布音楽祭にて、桐朋学園大学の
学 生 が 演 奏 し ま し た 。キッズ 公 演「た
たいて あ そ ぼ う 」で は、本 学 打 楽 器
専攻生によるアンサンブルYTEが、
親子参加型のキッズプログラムを熱演
し、多くの方から好評を博しました。
南相木村交流事業
3.0
当 時 の 桐 朋 学 園 理 事 長 の ご 紹 介 で、
長 野 県 南 相 木 村 小 学 校 等 で 毎 年コン
サートを行っています。
第 回 小 さ な 村 の 素 敵 な 音 楽 の 夕べ
に出演したのは、フルート、オーボエ、
クラ リ ネット 、ピ ア ノの 4 名 、毎 回工
夫 を 凝 ら し た ア ンサ ンブ ル で 、子 供
から大人まで楽しんで頂いています。
( 月 日)
21
調布市、木島平村
姉妹都市
周年記念事業
31
10
tsunobue 2015
tsunobue 2015
11
調 布 市 、木 島 平 村 と 友 好 相
互 協 定 を 結 ん でいる 桐 朋 学
園 大 学 が 記 念 事 業 に参 加 し
ま し た。後 半には、木 島 平の
誇 る 鬼 島 太 鼓 と 桐 朋 学 園の
打 楽 器 科 によ る そ れ ぞ れ の
熱 い 演 奏 を 披 露 し た 後 、両
者 で「木 曽 節」をコラ ボ レー
ションし、調布グリーンホー
ル は 大いに盛 り 上 が り ま し
た。( 月3日)
10
15
10
30
T
R
O
P
E
R
T
R
E
C
N
O
C
桐朋学園オーケストラ
オーケストラで行っているシステムに近い練
ルネ・オ・ジャポン
「熱狂の日」音楽祭(東
「ヴィオ ラ・スペース」、「ラ・フォル・ジュ
ます。また、「別府アルゲリッチ音楽祭」、
著 名 な 指 揮 者 の 指 揮 、指 導 を 受 け てい
マキシム・ヴェンゲーロフなど、国内外の
ユベール・スダーン、ラデク・バボラーク、
チ、チョン・ミョンフン、
ロリン・マゼール、
D・バレンボイム、M・ロストロポーヴィ
道義、尾高忠明、高関健、ジャン・フルネ、
秋 山 和 慶、飯 守 泰 次 郎、黒 岩 英 臣、井 上
演奏旅行も多数行っています。小澤征爾、
創立100周年記念演奏会など海外への
をはじめ、1991年カーネギーホール
カ、1970年ヨーロッパへの演奏旅行
きました。これまでに1964年アメリ
の中心として、高度な合奏教育を行って
園オーケストラは、以来桐朋の音楽教育
楽教室」創設当初から始められた桐朋学
故齋藤秀雄教授による「子供のための音
演奏の現場に直 結しているわけですから、
を通じて自分を磨くこと。それらがすべて
室の中の教育だけでなく、
外との交流など
な自覚”を身につけるよう伝えています。教
という 意 味においての
“ 演 奏 家として必 要
れば、
お金を払ったお客様から注目される
合 田 香 :さらには、
コンサートの本 番とな
規則を徹底して教育しています。
休みの連絡など、
社会人として当たり前の
も 身につけるべき 事 、例 えば時 間 厳 守や、
ることも大きなメリットです。演奏以外に
神 谷 敏 :また現 役の奏 者が直 接 教 えてい
く通用するレヴェルのものだと思います。
は、
プロの世 界に入ったとしても 違 和 感な
ますが、
このリハーサルの緊張感というもの
オケに比べれば4倍 近い時 間は費やしてい
緊張感と雰囲気で練習します。勿論、
プロ
いるプログラムを、本 番のリハーサルに近い
の指 導の下に、
プロのオーケストラが行って
オーケストラを指 揮 するレヴェルの指 揮 者
習方法を取っているということです。プロの
京 国 際 フォーラ ム)」にも 出 演 し ている
その中で学んでいくことは沢 山 あ り ま す
桐朋学園オーケストラの歴史
ほか、2014年には調布市と提携を結
ね。
るという状況を作ります。これは桐朋の特
ブラームスの主要作品は練習したことがあ
るために、モーツァルト、ベートー ヴェン、
番を迎えるようなことにならないようにす
ラに入って、
いきなり1回のリハーサルで本
交響曲第5番「運命」を、
プロのオーケスト
るカリキュラムです。例えばベートーヴェンの
す 。このような特定オーケストラがあるか
焦 点 を あてたプログラムにも 対 応でき ま
「ヴィオラ・スペース」のようにある楽 器に
ジュルネ音楽祭」
のようにテーマがあったり、
トラです 。例 えば現 代 音 楽や、「ラ・フォル・
うに集 中して行われるシステムのオーケス
サルスケジュールがプロのオーケストラのよ
る演 奏 会のために、本 番に向 けてのリハー
に、
まさにホールの取り 合い状態になってい
演奏旅行の時などは、
セクション練習のため
ホールに入るとすぐに分奏が始まります。
れて行っても、会 場である大 分に到 着して
す。例えば、
別府アルゲリッチ音楽祭に呼ば
よって、
そこから自発的な音楽が生まれま
練 習ではな く 、自 主 的に分 奏 することに
合田:誰かに言われて、「うんうん」という
す。
蠣崎耕三:まず言えることは、
在来プロの
ることとは、どんなことなのでしょう?
が、普 段 オー ケストラの授 業で教 えてい
な演奏家たちから高く評価されています
桐 朋 学 園 オ ー ケス ト ラ は 共 演 し た 著 名
最後に桐朋学園オーケストラのこれから
ね。
との大切さを知るすべてがここにあります
の音を聴く 体 験など、
一緒に
“ 音”を作るこ
とによって学ぶ経 験や、人の音や他の楽 器
く弾ける若い子でも、
上級生と演奏するこ
えて勉強ができるところにあります。物凄
神 谷:この学校の良いところは、学年を超
だと思って頑張ってもらいたいものです。
学ぶべき曲、
勉強させたい曲を丁寧に教え
定 時オーケストラというのは、学 生の間に
定オーケストラの2種類があります。
蠣崎:この学校には定時オーケストラと特
ングについてお聞かせください。
~歴史と教育について語る~
び、年に2回の定期公演を調布グリーン
色ともいうべき 手 厚い教 育のひとつなのだ
らこそ、依 頼 主の希 望に応 えられるプログ
ますからね。
について。
ホールで行っています。
と思います。
ラムが出来るのだと思います。このスタイル
蠣崎:学生のうちに、
よい指揮者や共演者
年 間のスケジュールの中でのプログラミ
合田:在学中に必ず勉強させたい曲はあ
は5,
6年 前から始まったもので、
これまで
それが後回しになるくらい、外部からの依
り ま すが、全 部は勿 論 無 理ですので、その
大切なことだと思います。オーケストラ作
頼 公 演の勉 強が忙しくなっています 。さら
神 谷 : 今 後 も 桐 朋 学 園オーケストラの自
品には、すべての分 野の中で最 も 素 晴らし
には、海 外の音 大 とのオーケストラによる
とのコンサートをたくさん行い、
その達成感
い作 品が数 多 く 残っていま す 。その意 味で
交流も積極的に行っていきたいと思っていま
の歴 史の中ではさまざまな紆 余 曲 折があ
もオーケストラを志す桐朋生の比率は高い
普段のオーケストラの授業は和気あいあ
いといった雰囲気なのでしょうか?
す。
合 田 :この仙 川にあ る「 4 0 2 」という
ようです。
をしますよ。そういう 時はリハーサル終 了
オーケストラの練習場所は、 年以上使わ
てきているのです 。それは齋 藤 先 生の時か
トラなどが、
全てそのシステムの中で勉強し
なアンサンブル、そしてフル編 成のオーケス
や、
ウィンドオーケストラのような少し大き
す 。カルテットのような小さなアンサンブル
い部 分 までを 練 習 出 来るようになるので
を理解し、
自分たちの音を聴きながら細か
習の中から自 分たちが一緒にやるべきこと
ションで分奏がはじまったりします。その練
前のことですからそれも勉強です。学生の
す け れど も 、
プロになった場 合には当たり
打楽器奏者は、
出ずっぱりで本当に大変で
でオーケストラが成り立ちます。逆に、管・
蠣 崎 : 桐 朋の場 合は弦の学 生 数が多いの
強のひとつです。
タイム・マネージメントを覚える。それも勉
合 田 : 忙しい時 間 を 過ごすことによって、
が、その中で学ぶ良さは何でしょう?
オー ケストラ、授 業 と 本 当に忙しいです
園で学んで頂きたいと思います。
学校があるわけですから、
是非この桐朋学
いという ものです 。将 来の音 楽 界のために
内外で演奏出来る優れた人材を育成した
蠣崎:桐朋学園オーケストラの原点は、
国
です。期待していてください。
とで、
来年建設される新しい校舎が楽しみ
んせん響かない! も う 少し良いリハーサ
ル場所があるに越したことはないというこ
れている由緒 あるスペースなのですが、
いか
後や、授業以外の時間にもそれぞれのセク
らの伝統ですね。金管も木管も打楽器も、
うちの
“ 今 ”というのは、将 来のための勉 強
学 生 た ち は 、ソ ロ の レッスン 、室 内 楽 、
神谷:それはもう厳しいですね。ダメ出し
作 曲 家のエッセンスを 少 しでも 知っても ら
マキシム・ヴェンゲーロフ指揮 @サントリーホール
主定期公演を続けていきたいですね。今は
合田 香
を 感 じてそれを 志 していくことがとても
(オーケストラ・アドミニストレーター)
りましたが、
今はこのスタイルがベストでは
神谷 敏
い、
それが他の場面で応用出来るような状
(管・打・ハープ部会主任)
ないかと思っています。
蠣崎耕三
態にしたいと考えています。
(オーケストラ運営委員長)
全てそういう環境の中で勉強しているので
50
神谷:一方、特定オーケストラというのは、
毎週同じ曜日に授業があるのではなく、
あ
ラデク・バボラーク指揮 @東京芸術劇場
12
tsunobue 2015
tsunobue 2015
13
Orchestra
これから音楽を
志す皆さまへ 2015年度(平成27年度)演奏会日程
日 時
演奏会
10月
10/27(火)19:00
オーケストラ演奏会
(作曲家の個展2015 原田敬子)
サントリーホール
11月
11/1(日)14:00
11/18(水)13:30
ファカルティ
・コンサート Vol.2
~教員による~
ファカルティ
・コンサート
~教員演奏と学生演奏による~(作曲理論部会)
オーケストラ演奏会(女子部)
11/26(木)12:15
ランチタイムコンサート Vo.18
11/28(土)15:00
音楽大学オーケストラ・フェスティバル
with 昭和音楽大学
桐朋学園大学調布キャンパス
11/14(土)19:00
桐朋学園大学調布キャンパス
ベーゼンドルファー東京展示サロン
ミューザ川崎シンフォニーホール
12月
042-444-7055
桐朋学園調布キャンパス事務局
042-444-7055
桐朋学園調布キャンパス事務局
クローズド
03-6681-5189
ベーゼンドルファー東京
03-3307-4158
12/11(金)18:30
第34回パーカッションの夕べ
03-3307-4158
12/16(水)19:00
チェロアンサンブル
03-3307-4158
12/17(木)19:00
第25回 SymphonicWinds演奏会
03-3307-4158
12/24(木)12:15
ランチタイムコンサート Vol.19
府中の森芸術劇場ウィーンホール
調布・
くすのきホール
ベーゼンドルファー東京展示サロン
2016年1月
桐朋学園音楽部門演奏課
桐朋学園音楽部門演奏課
2/9(火)18:30
合唱の夕べ
03-3307-4158
2/26(金)17:30
オペラ試演会
03-3307-4158
調布・
くすのきホール
府中の森芸術劇場ウィーンホール
2016年3月
3/12(土)15:30
大学ピアノ専攻卒業演奏会
3/25(金)19:00
音楽大学オーケストラフェスティバル合同オケ①
浜離宮朝日ホール
ミューザ川﨑
3/26(土)15:00
東京芸術劇場
ソルフェージュ
〔全専攻〕
楽典〔大学受験コース 作曲・指揮は除く〕
桐朋学園音楽部門演奏課
12月24日に模擬試験を実施し、
その成績によってク
ラス分けを行い、
25日に授業を実施します。
b
〔大学受験コース 作曲・指揮専攻〕
和声・作曲授業
入試レベルの四声体和声(バス・ソプラノ各課題)
の実施法解説およびモティーフによる作曲法の授
業を行います。
c
副科ピアノ
(演奏と講評)
演奏終了後、
その場で講評があります。
〔大学・高校受験コース 管楽器・打楽器・ハープ・声楽専攻〕
専攻実技レッスン
(1回30分)
個人レッスン形式で行います。
レッスンを担当する教師については、
10月1日以降
に冬期講習のホームページに掲載します。
注:
レッスン希望教師は第2希望まで記入することができますが、希望どおりにな
らない場合もありますのでご了承ください。
※c)
「副科ピアノ」, d)
「作曲理論ピアノ」, e)
「専攻実技レッスン」は別
途受講料が必要となります。
本学の入試科目等については、ホームページや入試要項でご確認ください。
2016年度(平成28年度)入学試験日程
種 別
大学(一般推薦)
音楽学科:
15名
大学(一般・編入)
音楽学科:
90名
03-3307-4158
高校(一般)
音楽科:
90名
指揮:尾高忠明
ミューザ川崎チケットセンター
044-520-020
ソリスト
・ディプロマ
(新規)
音楽大学オーケストラフェスティバル合同オケ②
0570-010-296
カレッジ・ディプロマ
(新規)
指揮:尾高忠明
e
作曲理論ピアノ
(演奏と講評)
〒182-0021 東京都調布市調布ヶ丘1-10-1 TEL 042-444-705 http://www.tohomusic.ac.jp/
高校(一般推薦)
音楽科:
10名
東京芸術劇場ボックスオフィス
〔大学受験コース 作曲・指揮専攻、高校受験 コース 作曲専攻〕
受講申し込みおよび問い合わせ先 桐朋学園音楽部門事務局
「冬期講習係」
桐朋学園音楽部門演奏課
桐朋学園音楽部門演奏課
d
模擬試験および授業
桐朋学園音楽部門演奏課
調布市グリーンホール
2016年2月
a
03-3307-4158
指揮:飯守泰次郎
2015年12月1日
(火)
~12月9日(水)
(郵送必着)
高校受験生(中1以上)
および大学受験生(高1以上)
03-6681-5189
オーケストラ演奏会「第九とみんなでわが町調布」 042-481-7222
調布市グリーンホール
受付期間
ベーゼンドルファー東京
1/16(土)14:00
指揮:清水大貴
調布キャンパス
対象
桐朋学園音楽部門演奏課
弦楽オーケストラ演奏会
場所
2015年12月24日
(木)
・25日
(金)
桐朋学園音楽部門演奏課
1/13(水)18:30
調布・
くすのきホール
るよう、全学をあげて取り組んでおります。魅力あるカリキュラム作り、
そして卒業後までを見極められ
期間
ミューザ川崎チケットセンター
ハープアンサンブルの夕べ
調布・
くすのきホール
かつての私がそうであったように、
多くの受験生の皆さんにとっての憧れの桐朋学園大学であり続け
冬 期 講 習
044-520-0200
12/8(火)18:30
調布・
くすのきホール
に、
新校舎における最新の設備で将来の音楽家を迎え入れることに大いに胸はずんでおります。
サントリーホールチケットセンター
指揮:高関健
ち、別格の輝きを放っている本学を常に誇りとしているところであります。今後ますます輝を増すと共
る体制作りを進めているところでもあります。
0570-55-0017
指揮:井田勝大 調布市グリーンホール
大島幾雄(学部長)
お問い合わせ
私は桐朋学園大学に憧れをもって入学いたしました。
その当時から現在に至るまで、
同じ風格を保
要項配付開始
出願期間
7月26日
(日)
10月1日
(木)
7月26日
(日)
試験日
合格発表日
(予定)
11月2日
(月)
~11月6日
(金)
郵送必着
11月15日
(日)
11月17日
(火)
18:00予定
1月5日
(火)
~1月14日
(木)
消印有効
2月10日
(水)
~
2月14日
(日)
2月19日
(金)
16:00予定
1月18日
(月)
郵送必着
1月22日
(金)
1月22日
(金)
19:00予定
1月25日
(月)
~2月3日
(水)
郵送必着
2月15日
(月)
~
2月17日
(水)
2月19日
(金)
16:00予定
11月20日
(金)
~11月27日
(金) ピアノ
:12月19日
(土)
12月21日
(月)
郵送必着
ピアノ以外:12月17日
(木) 11:00予定
2月17日
(水)
~2月23日
(火)
郵送必着
3月4日
(金)
3月7日
(月)
17:00予定
問い合わせ先 桐朋学園音楽部門事務局入試係
桐朋学園音楽部門事務局演奏課 http://www.tohomusic.ac.jp/concert/
15
tsunobue 2015
〒182-8510 東京都調布市若葉町1-41-1 TEL 03-3307-4122(ダイヤルイン) http://www.tohomusic.ac.jp/
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COLUMN
ミュージックなどガムラン音楽の変形にすぎ
文=三浦雅士
音楽ジャーナリズムが消えた。ここ二十年
ない。音楽批評以上に音楽学のほうがひどい
音楽ジャーナリズムは復活するか?
ほどの印象である。音楽だけではない。美術
が、民族音楽の隆盛は音楽社会学をひたすら
だが、音楽が消えることはない。言葉と同
に関しても演劇に関しても、消えた。その一
否定した。この矛盾を批判するだけでも批評
じだ。人間が芸術的(宗教的)感動を必要と
増長させただけだ。音楽社会学は創造に寄与
になったのである。だがいまやその仮想敵が
するのは、言語的であると同時に身体的であ
因が共産主義の衰亡にあることは間違いな
消えた。残る標的は消費資本主義だけだが、
るほかない人間存在の矛盾からである。呪術
するわけではない。ウェーバーもアドルノも
音楽の価値もまた貨幣で計られる――金にな
は詩と芸術と批評(解釈)のすべてを含んで
い。考えれば滑稽だが、共産主義は前衛を標
るものは何であれ価値がある――というのは
いた。それはまたジャーナリズムでもあっ
新しい音楽を生みはしなかった。
まさに現実であって、これを否定したのでは
た。原始に流行があったことは類人猿に流行
ぎない。イスラム原理主義がイスラム世俗
え、宗教も民族も幻想すなわち思い込みにす
ダー、マイノリティといった問題。とはい
い。いまやそういう音楽ジャーナリズムが切
起点にまで引き返して考えなければならな
とは何か。音楽の現在を考えるためにこそ、
音楽とは何か。とりわけ人間にとって音楽
第3回
〈アリオン桐朋音楽賞〉
〈弦楽器部門〉
な お 、今 回 か ら 受 賞 し た 方 の 作 品 を 何 ら か
定です。近日中にHPで発表いたします。
第3回の評論は一つのテーマを決めて公募する予
して、
広く音楽評論作品を募集します。
貢献する音楽評論 家を育成することを目標と
音楽評論を社会に広め、
音楽文化の質の向上に
第3回
〈柴田南雄音楽評論賞 〉
一般公募
発表:2016年9月頃
補者が選ばれ、
その中で選考が行われます。
募は行いません。選考委員のノミネートにより候
歳以下の若手音楽家への助成を目的とし、公
第2回
〈アリオン桐朋音楽賞〉
〈ピアノ部門〉受賞者
の形で 公 開で き るよ うに検 討 してお り ま す 。
賞金:本賞
万円/奨励賞
万円
第2回
〈柴田南雄音楽評論賞〉該当者なし
http://www.tohomusic.ac.jp/
*選考委員:
今橋学、
梅津時比古、
江戸京子、
神谷郁代、
村上弦一郎(敬称略)
応募詳細については、
本学ホームページを
学校法人桐朋学園アリオン江戸音楽振興基金
ご参照ください。
榜したにもかかわらず芸術においては前衛を
音楽産業そのものが霧散する。共産主義の消
があることからも分かる。時事問題はつねに
あったのであり、その現われがつまり詩と芸
滅は理想の消滅だったのであり、いまやポス
トモダンの語とともに普遍的な理想などあり
術と批評であった。音楽ジャーナリズムが不
可欠であることは自明であり、その消滅が人
えないという虚しさだけが漂っている。
価値の多様化を標榜するポストモダンとと
化の前兆にすぎないことはキリスト教の歴
望されているのであり、ないものは作らなけ
間性の危機に連なることも自明である。
史を見るだけで分かる。普遍を標榜したが
ればならないのである。
もに浮上したのが宗教と民族、そしてジェン
十九世紀音楽のその内実が民族音楽にほかな
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(2016年5月末日締切予定)
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桐朋学園こそその担い手になるべきではな
いのか。
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らなかったことはいまや常識になりつつあ
る。二十世紀音楽にしても同じ。ミニマル・
三浦雅士 (1946 ~ ) 文芸評論家、舞踏評論家、日本芸術院会員。「ユリイカ」、「現代思想」「ダンスマガジン」などの編
集長を務める。1981年より文芸評論家となり『メランコリーの水脈』で サントリー学芸賞受賞。文芸・思想のみならず社会
科学やサイエンスに至るまで、多方面との知的交流を続けている。サントリー文化財団理事、日本文藝家協会理事、サントリー
学芸賞選考委員などを歴任する。毎日新聞の書評担当。桐朋学園大学特任教授。
左から菊野惇之介さん、
山口哉さん、
吉見友貴さん
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