国際博覧会大阪誘致の可能性検討状況について 平成27年8月 大 阪 府

国際博覧会大阪誘致の可能性検討状況について
~国際博覧会大阪誘致構想検討会での意見・論点等の整理~
平成27年8月
大
阪
府
目
次
はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1
第 1 開催の必要性
(1)検討の背景 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2
(2)大阪の成長戦略における国際博覧会の位置づけ・・・・・ 5
(3)委員意見・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8
第2 開催の意義・テーマ
(1)BIEにおけるテーマの考え方 ・・・・・・・・・・・ 10
(2)国際博覧会の意義・テーマを検討するための調査・・・・ 12
(委託調査中間報告)
(3)有識者委員のプレゼンテーションで示されたキーワード・ 14
(4)愛知万博の意義と評価 ・・・・・・・・・・・・・・・ 16
(5)委員意見 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17
第3 開催による効果
(1)国際博覧会大阪開催による経済波及効果試算・・・・・・・・20
(委託調査中間報告)
(2)委員意見 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22
第4 開催可能地区
(1)開催可能地区調査結果(委託調査中間報告)・・・・・・・23
(2)委員意見 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 27
第5 府民・企業意識
(1) 府民・企業意識調査結果(委託調査中間報告)
・・・・・28
(2) 委員意見 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 31
第6 今後に向けて
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
32
参考資料・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 35
はじめに
2020 年の東京オリンピック・パラリンピックに続いて、2025 年に大阪で国際博覧会を開催
することは、誘致の段階から、東西二極の一極として、大阪のみならず日本の魅力を世界へ
発信し、国内外から新たな観光客やビジネスマンを呼び込み、日本の成長に資するなど、様々
な効果が期待できる。
しかし、国際博覧会は、政府主催の一大国家プロジェクトであり、その開催にあたっては、
多額の予算の他、全国的な支援の拡がりが必要であるために、誘致に向けて、国や地元が一
丸となって取り組んでいく必要がある。
大阪府では、開催のために必要となる情報や課題の整理と並行して、国や経済界との意見
交換を実施するとともに、本年度、行政、経済界、有識者からなる「国際博覧会大阪誘致構
想検討会」を設置し、オール大阪の体制で、幅広い視点から意見を聴き、大阪誘致の可能性
を探っていくこととした。
検討会では、本年 4 月から 7 月にかけて、計 4 回開催し、有識者からのプレゼンテーショ
ンに加え、ゲストスピーカーを迎え、意見聴取を行うとともに、大阪府が本年度実施してい
る委託調査の中間報告や有識者へのヒアリング結果等を検討材料として提供し、開催の必要
性、意義・テーマ、効果、開催可能地区、府民・企業の意識等について、議論が行われた。
本報告は、検討会でいただいた様々な意見や論点・各種情報・調査内容等を整理し、とり
まとめたものであり、今後、本報告において、明らかになった課題等を踏まえ、大阪府とし
て必要な対応を行っていく。
なお、本報告では、こうした意見等とともに、国際博覧会の概要、歴史、最新の動向等、
「国際博覧会とは何か」の理解が進むよう、必要な情報についても掲載した。
本報告を通じて、府民・企業・市町村・各種団体等をはじめ多くの方々が、国際博覧会に
ついて理解を深めていただき、国際博覧会大阪誘致について、共に考える契機となることを
期待する。
1
第1
開催の必要性
(1)検討の背景
〔国際博覧会とは〕
国際博覧会は、国際機関であるBIE(博覧会国際事務局)の承認のもと、国際博覧会
条約に基づき開催される博覧会である。
5 年ごとに行われる大規模の「登録博覧会」と登録博の間に 1 回開催される小規模の「認
定博覧会」がある。国際博覧会条約に基づく博覧会を行うには、開催を希望する国の政府
が、BIEに申請(立候補)し、総会で承認される必要がある。
※立候補までの国内での手続きとしては、まず、開催地となる地元において、開催意義や
テーマ、会場等の地元基本構想を策定し、国へ提案。国は、地元基本構想を受けて、国
家プロジェクトとして適切かどうかを検討したうえで、閣議了解を得て、立候補するこ
ととなる。
本年度開催されている 2015 年ミラノ国際博覧会(イタリア)は登録博である。また、認
定博として 2017 年アスタナ国際博覧会(カザフスタン)、登録博として 2020 年ドバイ国際
博覧会(アラブ首長国連邦)の開催がそれぞれ決定されている。
20 世紀までは「国威発揚型」
、
「開発型」の国際博覧会が隆盛を極めたが、2005 年「愛・
地球博(愛知万博)」を契機として、人類共通の課題の解決策を提示する「理念提唱型」の
国際博覧会へと変容を遂げた。
21 世紀型の国際博覧会では、開催国が「自然の叡智」
(愛・地球博)、
「より良い都市、よ
り良い生活」
(上海万博)
、
「地球に食料を、生命にエネルギーを」
(ミラノ万博)といった
地球規模の課題をテーマとして提示し、各国館において各々その解決の方向を示すことが
求められている。
〔検討会設置の経過〕
大阪府では、昨年 8 月から国際博覧会を所管する経済産業省等との情報交換などを通じ
て、2025 年国際博覧会の開催に向けた手続き・開催の可能性に関して調査を進めてきた。
このような状況の中、さらに調査を深めるべく、本年 4 月に、行政、経済界、有識者に
よる「国際博覧会大阪誘致構想検討会」を設置し、国際博覧会大阪誘致の可能性について、
幅広い視点から意見を聴取し、誘致する場合の課題や対応策等について検討することとし
たものである。
2
【資料】
国際博覧会について
・BIE(博覧会国際事務局)の承認のもと、国際博覧会条約に基づき開催。
・登録博覧会と認定博覧会の 2 種類がある。
登録博覧会
開催
期間
認定博覧会
6 週間以上 6 ヶ月以内
3 週間以上 3 ヶ月以内
二つの登録博覧会には、少なくとも 5 年以上の間隔 会場規模は 25ha 以内で、一つの参加国に割り
を置く。
特徴
当てられる面積は 1,000 ㎡以内。
認定博覧会は、二つの登録博覧会の間に一回
(開催の9年前から6年前までにBIEへ参加申請要)
だけ開催できる。
(開催の6年前から5年前までにBIEへ参加申請
要)
■大阪万博(1970 年・日本)
□大阪園芸博(1990 年・日本) ※
・テーマ:人類の進歩と調和
・テーマ:花と緑と人間生活のかかわりを捉え、
・会場面積:330ha
21 世紀へ向けて潤いのある豊かな社会
・来場者数:6,422 万人
の創生を目指す
・会場面積:140ha
■愛・地球博(2005 年・日本)
・来場者数:2,312 万人
・テーマ:自然の叡智
開催
・会場面積:173ha
実績
・来場者数:2,204 万人
(例)
□サラゴサ博(2008 年・スペイン)
「モリゾーと
キッコロ」
■上海博(2010 年・中国)
・テーマ:水・都市の持続可能な開発
・会場面積:25ha
・来場者数:565 万人
・テーマ:より良き都市、より良き生活
「ハフルービー」
・会場面積:328ha
□麗水(ヨス)博(2012 年・韓国)
・来場者数:7,308 万人
・テーマ:生きている海と息づく沿岸
「ハイバオ」
・会場面積:25ha
・来場者数:820 万人
「ヨニとスニ」
■ミラノ博(2015 年・イタリア)
・テーマ:地球に食料を、生命にエネルギーを
今後の
予定
(開催中
含む)
・会場面積:110ha
□アスタナ博(2017 年・カザフスタン)
・来場者数:2,000 万人(推定)
・テーマ:未来のエネルギー
・会場面積:25ha
■ドバイ博(2020 年・アラブ首長国連邦)
・来場者数:400 万人(推定)
・テーマ:心をつないで、未来を創る
・会場面積:438ha
・来場者数:2,500 万人(推定)
※1990 年大阪園芸博(国際花と緑の博覧会)は、BIEの国際園芸家協会(AIPH)認定区分の認定博
(出典)経済産業省ホームページ等
(参考) BIE (博覧会国際事務局 THE BUREAU INTERNATIONAL DES EXPOSITIONS)
・国際博覧会条約の成立を機に、1928 年に発足した国際機関。(本部:パリ)
・国際博覧会が、国際博覧会条約に則り開催されるよう監督を実施。
・加盟国は、168ヶ国。(2014年現在)
3
【資料】
国際博覧会条約
(1928 年 11 月 22 日にパリで署名、1948 年、1966 年、1972 年 1988 年に改正)
第一章
定義及び目的
第1条
定義
1. 博覧会とは、名称のいかんを問わず、公衆の教育を主たる目的とする催しであって、文明の必要とするものに応ずる
ために人類が利用することのできる手段又は人類の活動の一若しくは二以上の部門において達成された進歩若しくは
それらの部門における将来の展望を示すものをいう。
2. 博覧会は、二以上の国が参加するものを、国際博覧会とする。
3. 国際博覧会の参加者とは、当該国際博覧会に公式に参加している国の陳列区域にあるその国の展示者、国際機関、
当該国際博覧会に公式には参加していない国の展示者及び当該国際博覧会の規則により展示以外の活動特に場内
営業を行うことを認められた者をいう。
第2条
条約の適用範囲
1. この条約は、次のものを除くほか、すべての国際博覧会について適用する。
(a)開催期間が三週間未満である国際博覧会
(b)国際美術展覧会
(c)主として商業的な性格を有する国際博覧会
2. この条約の適用上、国際博覧会は、開催者の付する名称の如何を問わず、登録博覧会と認定博覧会に区分する。
第二章
国際博覧会の開催に関する一般的な条件
第3条
登録博覧会
次の条件を満たす国際博覧会は、第 25 条に規定する博覧会国際事務局(以下「国際事務局」という)による登録の対
象となる。
(A)開催期間が 6 週間以上 6 ヶ月以内のものであること。
(B)参加国が使用する博覧会用の建造物に関する規則が一般規則において規定されていること。不動産に課せられる租
税が招請国の 法令により要求される場合には、この租税は、開催者が負担する。国際事務局の承認した規則に従
って実際に提供された役務については、対価を求めることができる。
(C)1995 年 1 月 1 日以降は、二の登録博覧会の間には少なくとも五年の間隔を置くこと(最初の登録博覧会については、
1995 年に開催することができる。)但し、国際事務局は、国際的な重要性を有する特別な出来事を記念することができ
るようにするため、前段に規定する間隔を一年を超えない範囲で短縮することができる。もっとも、次回の登録博覧会に
ついては、五年の間隔を短縮することなく開催した場合の間隔に従って開催する。
第 4 条 認定博覧会
(A)次の条件を満たす国際博覧会は、国際事務局による認定の対象となる。
1.開催期間が三週間以上三ヶ月以内のものであること。
2.明確なテーマを掲げるものであること。
3.会場の総面積が 25 ヘクタールを超えないものであること。
4.開催者が建設する施設を参加国に割り当てるに当たって、すべての賃貸料、料金、租税及び費用(提供された役務
にかかわるもの
を除く。)を免除する者で あること(一の国に割り当てられる面積は千平方メートルを超えては
ならない。)ただし開催国の経済上及び財 政上の状況によって正当とされる場合には、国際事務局は、無償で提
供する義務の例外を認めることができる。
5.この(A)の規定による認定博覧会については、二の登録博覧会の間において一に限って開催することができる。
6.同一の年においては、登録博覧会又はこの(A)の規定による認定博覧会のいずれかに限って開催することができ
る。
(B)国際事務局は、また、次に掲げる国際博覧会を二の登録博覧会の間に開催されるものとして認定することができる。
1.装飾美術及び現代建築に関するミラノ・トリエンナーレ(以前から開催されていた伝統的なものであることを理由とし
て認定されるものであり、本来の特徴を維持していることを条件とする。)
2.国際園芸家協会が承認した A 類 1 の園芸博覧会(異なる国において開催される場合には 2 年以上の間隔を、同一
の国において開催される場合には 10 年以上の間隔を置くことを条件とする。)
第三章 登録又は認定
第 7 条 国際博覧会の登録について 2 以上の国が競合する場合の決定
1.国際博覧会の登録又は認定について二以上の国が競合する場合において合意が得られないときは、それらの国は、
国際事務局の総会の決定を求めるものとし、総会は、提出された意見並びに、特に、歴史的又は道義的な特別の理由、
最近の国際博覧会後の経過期間※及び競合する各国の既に開催した国際博覧会の数を考慮して決定を行う。
2.国際事務局は、特別の事情がある場合を除くほか、登録又は認定については、締約国の領域内において計画される
国際博覧会を優先させる。
第8条 ~ ( 省 略 )
※国際博覧会を同一国で開催する場合に必要な間隔
「博覧会の登録申請に関する規則(BIE)」において、『15年以上』と規定
4
(2)大阪の成長戦略における国際博覧会の位置づけ
大阪開催の必要性に関連する論点として、大阪府は、
「大阪の成長戦略」における国際博覧
会の位置づけについて、整理を行った。
「大阪の成長戦略」は、大阪を新たな成長軌道に乗せるため、概ね 2020 年までの成長目標
を 掲げ、それを実現するための具体的な取組方向を明らかにすることをねらいとして、2010
年 12 月に策定したものである。
前述のとおり、2025 年の国際博覧会大阪誘致は 2020 年の東京オリンピック・パラリンピ
ックに続く国家的プロジェクトであり、大阪の成長にとっても極めて大きな影響があること
から、2015 年 2 月に成長戦略を改定する際、国際博覧会についても整理を行ったところであ
る。
【大阪の成長戦略における国際博覧会の位置づけ】
・
「大阪の成長戦略」は、
「めざすべき大阪の将来像」として、
「日本の成長をけん引する東西
二極の一極として、世界で存在感を発揮する都市」を掲げ、施策展開の方向性として、
「集
客力強化」
「人材力強化」
「産業・技術の強化」「物流人流インフラの活用」「都市の再生」
という5つの柱をもって、将来像を実現することとしている。
・
「大阪の成長戦略」の目標年次は 2020 年であるが、前述のとおり、国際博覧会の 2025 年大
阪誘致は、大阪の成長にとって大きな影響をもたらすことから、成長戦略に掲げた5つの
柱に沿って国際博覧会誘致について整理を行った。その結果、国際博覧会大阪誘致は、施
策展開の方向性の5つの柱すべてに寄与し、大阪の成長を強力に後押しするものであると
いえる。
ⅰ)
「集客力強化」
・国際博覧会を開催することにより観光客は増加。愛知万博では、1 日 5,000 人以上の
外国人来場者があった。
・知名度、都市魅力についても向上。大阪の知名度は、世界の都市に比べて低いという
民間の調査結果がでているが、これらを引き上げる大きな仕掛けになる。
(森記念財
団調査:大阪は世界 40 都市中 26 位)
ⅱ)
「人材力強化」
・国際博覧会を通じて、様々な方々の市民参加や国際交流が進み、異文化理解が進む。
・大阪万博では、デザイナー、建築家、研究者等の様々な若い専門家が活躍した。国際
博覧会は、若手専門家や技術者等の活躍の場となり、人材育成につながる。
ⅲ)
「産業・技術の強化」
・様々な新技術の活用や実証実験などが国際博覧会の中で展開され、中小企業の技術発
信の場にもなる。
・愛知万博では「ものづくりランド シンフォニア」という名称で、開幕から 1 か月間、
地元中小企業 70 社・団体による合同パビリオンを出展。約 24 万人の人々がパビリオ
ンを訪れ、地域のものづくりの底力を世界にアピールした。
5
ⅳ)
「物流人流インフラの活用」
・国際博覧会を開催することで、会場周辺のアクセスが整備される。
ⅴ)「都市の再生」
・会場跡地の有効活用ということからは、環境と調和した都市の再生につながる。
・国際博覧会が大阪の成長戦略の 5 つの柱へ寄与することにより、
― 集客都市としての国際的評価を確立し、投資も促進され、経済が成長する。
― 大阪・関西が先進国・アジア諸国に先んじて人口減少や高齢化が進む中で、課題解決
に向けた先進的モデルを世界に発信する機会となる。
― 新たなイノベーションや都市再生の起爆剤となる。
・国際博覧会の開催は、集客はもとより、大阪の成長の全般的な推進力として、成長戦略が
掲げる将来像を早期に実現するための仕掛けのひとつとなる。
6
【資料】
大阪の成長戦略における国際博覧会の位置づけ
・大阪の成長戦略は 2020 年に向けたものであるが、目指すべき将来像や施策展開の方向性はそれ以降も継続されるべきもの。
・国際博覧会の開催は、集客はもとより、大阪の成長の全般的な推進力として、将来像を早期に実現するための仕掛けのひとつ。
・また、先進国・アジア諸国に先んじて人口減少や高齢化が進む中で、課題解決に向けた先進的モデルの世界への発信にも寄与。
集客都市としての国際的評価の確立、投資促進による経済成長
・外国人観光客の増加、経済成長による就業者数の増加への期待
世界が注目する人口減少・超高齢社会への課題解決モデルの提示
・超高齢社会に対応した街づくり・システム構築
大阪の成長戦略
将来像の
早期実現
将来像:日本の成長をけん引
する東西二極の一極として、
世界で存在感を発揮する都市
(ex)スマートエイジングシティ、介護ロボット普及、ビッグデータによる健康管
理、ICT/IOT による見守り、パーソナルモビリティ活用、都市型 CCRC 等
新たなイノベーションや都市再生の起爆剤
・新技術・システム等の開発・発信、インフラのリノベーション
(ex)新技術:再生医療、遺伝子治療、BNCT、水素社会構築、蓄電池・超伝導技術、
インフラ長寿命化、植物工場、自動運転技術、人工知能 等
都市再生:リニア、関空アクセス、IR 等
*東京一極集中是正の象徴的なプロジェクトとして地方創生にも寄与
施策展開の方向性
1.集客力強化
2.人材力強化
3.産業・技術の強化
4.物流人流インフラの活用
5.都市の再生
数値目標
○ 実質成長率 年平均2%以上
○ 雇用創出 年平均 1 万人以上
○ 来阪外国人 650 万人
寄与
等
<国際博覧会の効果、期待>
・観光客の増加(愛知万博の外国人来場者数平均 5668 人/日)
・知名度、都市魅力の向上(森記念財団調査:大阪は世界 40 都市中 26 位)
・市民参加や国際交流の推進、異文化理解
・若手専門家や技術者等の活躍の場(デザイナー、建築家、研究者等)
・新技術の活用・実証実験、中小企業の技術発信の場(愛知万博は地元中小企業
による合同パビリオンを出展)
、海外展開への布石
・会場へのアクセス整備
・会場跡地の有効活用(環境との調和)
<経済効果:愛知万博における中部地域への効果>※決定から開催まで期間合計
GDP: 約 1 兆円(府内総生産の約 2.7%に相当)
雇用者: 約 11 万 3 千人
<訪日外国人>
愛知万博開催期間中は、国内の訪日外国人数は対前年比約 10%増/日
7
(3) 委員意見
検討会では、開催の意義・テーマ、効果、開催可能地区、府民・企業の意識等を議題とし
て意見交換が行われた。
その中で、それらの全般に関わるものとして、
「開催の必要性に対する疑問」
、
「国際博覧会
大阪誘致検討への期待」
、
「これからの検討において必要となる視点」に関する意見が出され
た。これらに関する具体的な意見は、次の通りである。
①
開催の必要性に対する疑問
【なぜ、万博なのかを示すことが必要】
・大阪の将来に向けて、様々なプロジェクトがある中で、なぜ万博なのかを示していただか
ないと賛同を得られないのではないか。
・
「大阪がめざすべき都市像を実現していくために、万博がなぜいるのか」という部分がきち
っと議論されていないと、民から湧き上がるような思いがでてこないだろう。経済界も腑
に落ち、理解して動くということにつながっていかないと思う。
・万博だけではなく、様々な経済振興や産業振興の取組みには、それなりに成長に寄与する
メリットもあれば、デメリットもある。有限の資源の中で「なぜ、万博なのか」というこ
とを示さないと、政策としての納得度は高くならないのではないか。
・愛知万博の際は、経済産業省と愛知県が同時に言い出したといわれており、2つの動きが
合わさり、一緒にやろうとなったとの話であったが、今、国からはそうした話はない。そ
うした中で、なぜ、万博なのか。
②
国際博覧会大阪誘致検討への期待
【大阪から世界へ新しい生活を提案できるものに】
・少子高齢化の中で、あらゆる方が豊かに生活できる空間や人間同士の心がつながる社会な
ど、大阪から世界へ新しい生活が提案できるようなものに期待。
【次世代を担う人材育成の場に】
・国際博覧会は、
「次世代を担う人材育成の場」であるということ。博覧会は、新しい若い才
能がチャレンジする場となる。大阪で国際博覧会がもう一度開催される可能性があれば、
22 世紀に向けて、21 世紀後半を担う人材が博覧会からどんどん育っていく、そういう機会
になるだろう。
・万博というのは、人文科学系から工学系に至るあらゆる分野、社会のあらゆる職業の人が、
同じ土俵で議論できるものだ。
・社会の実働層の半分の人が 70 年万博を知っていて、半分が知らないというタイミングであ
り、そうした人々が一緒になって万博を考えられるというのは、面白いタイミングだ。
【様々な形での国際的な催事検討の重要性】
・2025 年、2030 年、あるいは小規模な国際博覧会であれば 2027 年など、いくつかの可能性
もある。本年から 10 年、20 年、30 年先ぐらいまで視野に入れて、国際博覧会を含めて、
様々な国際的な催事を検討していくということは大事なことだ。
8
③
今後の検討において必要となる視点について
【経済活動の主体者が参加しやすいように】
・万博開催後の効果も含めて、経済活動の追い風となるようなグランドデザインがあり、そ
の中に万博を位置づけることによって、より経済活動の主体者が参加しやすくなる。そう
いう視点も含めて、検討することが必要。
・コンセプトを固めていく議論と、大阪の戦略にどう位置付けていくかという議論をともに
していくことで、経営者のみなさんの腹におちるものとなるのではないか。
【レガシーをどう残すか】
・70 年代は、新幹線、オリンピック、70 年万博という流れがあったが、今回も、リニア、2020
年にオリンピック、次に万博という流れであり、パーツ的には 70 年代と同じである。70
年万博が終わってからの谷の落ち込みが、大阪の衰退の原因であることから、万博をやる
だけでなく、
「あとに何を残せるか」、「レガシーをどう残すのか」が非常に大事だ。2025
年がゴールでなくて、スタートであり、その後どうするのか、その仕掛けについて、今、
問題意識をもっている。
【「世界の中でどんな大阪でありたいのか」を考える契機に】
・70 年万博の時に、
「大阪」が世界的に認知されたと聞いている。あの時には、海外のホテ
ルの枕元の電話帳に、世界の国の番号の次に「千里」の地名が書いてあったとのことだっ
た。我々これから大阪を元気にしていくために、
「国際性」というものをもう一度きっちり
掲げなおすことが必要。
・国際博覧会誘致の検討は、世界の中で大阪がどういう位置づけになるのかということを考
える重要な機会になると思う。内なる国際化、異文化と接触する機会だという点で、70
年万博は非常に意味があった。最近、日本は内向きになりがちであるが、国際博覧会は、
もう一度、
『世界の中でどんな大阪でありたいのか』ということを考える契機として、重要
な場となるのではないか。
【70 年万博との関係を考える必要性】
・70 年万博があった大阪で、万博提案がなされるとすれば、70 年万博に思いを持っていらっ
しゃる方の思いを大切にしながら、それを乗り越えるというか、いろいろな意味で 70 年万
博との関係を考えなければならない。
【府民が自ら示す手段や活動を体験してもらえるものに】
・大阪は官都である東京とは違い、いわば「民都」と呼んでもいいほど活発な市民活動が存
在する地域である。府民が自ら示す「手段や活動」をどれだけ体験してもらうことができ
るかが重要になるのではないか。
【将来の大阪における大きな事業・イベント等との関係性からの検討を】
・将来、大阪で実施される大きな事業・イベント等との関係について、整理が必要。
・2017 年、2018 年に向けた百舌鳥・古市古墳群の世界遺産登録に向けた動きや 2019 年ラグ
ビーワールドカップ、2020 年オリンピック・パラリンピック、2021 年ワールドマスターズ
ゲームズというように国際的なスポーツイベントが順次具体化されるなどの動きがあるが、
そのあとの 2025 年、2030 年などに我々がかかわるべき大きなプログラムや事業が、まだ何
も決まっていない。そういう中で、可能性のひとつとして、我々はこの国際博覧会を検討
しているということだ。
9
第2
(1)
開催の意義・テーマ
BIEにおけるテーマの考え方
国際博覧会は、近年の情報化や国際化の流れの中で、その意義が問い直されることとなり、
1994(平成6)年の第 115 回 BIE 総会での決議により、21 世紀の国際博覧会は、
「現代社会
の要請にこたえる今日的なテーマ」を有すること、さらに、テーマについては、
「自然環境保
護の必要性から諸問題を浮き彫りにするものであること」などが求められることとなった。
この BIE 総会決議は、国際博覧会は、従来の新製品や新技術を陳列する人類の営みの「到
達点」をみせるものから、広く地球規模の諸課題に関し、世界に共通意識を普及させ、連帯
してその解決に向かう「出発点」になることを期待したもので、国際博覧会の性格を大きく
変えるものであった。
(世界共通の地球的課題の解決に向けたテーマの提示が必要)
・21 世紀の国際博覧会は、かつての「国威発揚型」、「開発型」の博覧会ではなく、
「人類共
通の課題の解決策を提示する理念提唱型」の博覧会として、地球規模の課題をテーマとし
て提示し、世界中の国々から知恵が集まり、その解決の方向を示す場となることが求めら
れている。
(21世紀になってからの国際博覧会のテーマ)
・
「自然」、
「水」
、
「都市」
、
「海」
、
「食料」、
「エネルギー」、
「つなぐ」といった世界共通の課題
となるキーワードが設定されている。
【資料】
第 115 回 BIE(博覧会国際事務局)総会決議
(1994 年 6 月 8 日)(抜粋)
【国際博覧会の目的】
― 国際博覧会は、人類の知識の向上および相互理解並びに国際協力への貢献を本質的に目的とすることに
ある。
― 目標は、諸民族、諸国家の文化的なアイデンティティに対する理解を深めること、既に達成された進歩および
未来への展望を一般大衆へ周知すること、・・・・により達成されなければならない。
(以下、略)
【今後の国際博覧会の要件(抜粋)】
― より高い価値とより広範な影響力をもつこと。
― 自然及び環境の尊重が人類にとって極めて重要であることを反映させること。
【決議第1号: 博覧会のテーマ】
― 全ての博覧会は、現代社会の要請に応えられる今日的なテーマがなくてはならない。
― テーマは、全ての参加者がそれを表現できるほどに十分大きなものであって、当該分野における科学的、技
術的及び経済的進歩の現状と、人類的、社会的な要求及び自然環境保護の必要性から諸問題を浮き彫りに
するものでなければならない。
(以下、略)
【決議第2号: 環境への会場の組み込みと跡地利用の条件】
― 会場及び会場へのアクセスに関するインフラストラクチュアの環境への組み込みの条件、公害発生の危険度
の低減、及び緑地の保護と設置、並びに不動産開発の質について。
― 博覧会閉会後の会場跡地とインフラストラクチュアの再利用について。
10
過去の国際博覧会
開催年
BIE 分類
1970
一般博
日本
日本万国博覧会(大阪万博)
人類の進歩と調和
1974
特別博
アメリカ
スポーケン国際環境博覧会
汚染なき進歩
1975‐1976
特別博
日本
沖縄国際海洋博覧会
海―その望ましい未来
1982
特別博
アメリカ
ノックスビル国際エネルギー博覧会
1984
特別博
アメリカ
1985
特別博
1986
1988
開催国
名
称
テーマ
面積
(ha)
来場者数
(万人)
期間
(日)
330
6,422
183
41
518
215
100
349
183
エネルギーは世界の原動力
29
1,113
184
ニューオーリンズ国際河川博覧会
河の世界―水は命の源
33
734
185
日本
国際科学技術博覧会(つくば博)
人間、居住、環境と科学技術
101
2,033
184
特別博
カナダ
バンクーバー国際交通博覧会
動く世界、ふれあう世界
71
2,211
165
特別博
オーストラリア
ブリスベン国際レジャー博覧会
技術時代のレジャー
40
1,857
184
140
2,312
185
215
4,182
176
6
170
93
特別博*
日本
国際花と緑の博覧会
花と緑と人間生活のかかわりを捉え、21 世紀へ向け
て潤いのある豊かな社会の創生を目指す。
一般博
スペイン
セビリア万国博覧会
発見の時代
特別博
イタリア
ジェノア国際船と海の博覧会
クリストファー・コロンブス―船と海
1993
特別博
韓国
大田(テジョン)国際博覧会
発展のための新しい道への挑戦
90
1,401
93
1998
特別博
ポルトガル
リスボン国際博覧会
海洋―未来への遺産
60
1,000
132
2000
一般博
ドイツ
ハノーバー万国博覧会
人間・自然・技術
160
1,800
153
2005
登録博
日本
2005 年日本国際博覧会(愛知万博)
自然の叡智
173
2,204
185
2008
認定博
スペイン
サラゴサ国際博覧会
水・都市の持続可能な開発
25
565
93
2010
登録博
中国
上海国際博覧会
より良き都市、より良き生活
328
7,308
184
2012
認定博
韓国
麗水(ヨス)国際博覧会
生きている海と息づく沿岸
25
820
93
2015
登録博
イタリア
ミラノ国際博覧会
地球に食料を、生命にエネルギーを
110
2,000(想定)
184
2017
認定博
カザフスタン
アスタナ国際博覧会
未来のエネルギー
25
500(想定)
93
2020
登録博
アラブ首長国
連邦
ドバイ国際博覧会
心をつなぎ、未来を創る
438
2,500(想定)
173
1990
1992
(注)「BIE 分類」の内、*は、BIE の国際園芸博覧会区分(国際園芸家協会(AIPH)が認定)の認定博
11
(2) 国際博覧会の意義・テーマを検討するための調査(委託調査中間報告)
検討会において、大阪府が本年度実施している委託調査「国際博覧会大阪誘致検討データ
収集等調査」の中から、
「国際博覧会の意義・テーマ」に関する調査状況について、中間報告
を行った。中間報告の概要は次の通りである。
(調査概要)
・国内外における「世界レベルの課題」を抽出し、「日本・大阪で取り組む意義のある課題」
と「大阪・関西のポテンシャルとしての強み」とをマッチングすることにより、
「国際博覧
会のテーマ設定」に繋げる。
①
世界的レベルの課題に対する我が国と大阪・関西の関わり
・歴史、文化、エネルギー、環境、食糧、資源、健康、経済などを基本的な課題としてあげ、
これに対する「世界な課題」と「日本国、特に大阪・関西での関わり」について、代表的
な課題の抽出による分類の例示を実施。
■主体としての「人」という観点に対して、それを支える場として「都市・農村」、
「地球・
国土」があるとして整理。
■テーマの根幹としては、人が健康で幸せに暮らしていく為に、主体の「人」、そしてそれ
を取り巻く「都市・農村」
「地球・国土」という2つの観点からテーマを絞り込んだ。
【資料】
<詳細は、大阪府HP「国際博覧会大阪誘致の検討/国際博覧会大阪誘致構想検討会資料」に掲載>
12
②
開催テーマ絞り込みのイメージ
・主体としての「人」
、場としての「都市」、
「地球・国土」をもとに、
「SWOT 分析による大阪・
関西の強み・機会の抽出」を行い、それぞれ、
「海外との認識の違い」を把握。そのうえで
「関連するテーマ」を抽出し、
「開催意義・効果」を見ている。
・こうした流れを踏まえ、テーマを検討することで、人々への意識や経済界への流れができ、
大阪の政策に繋がると考えられる。
■SWOT分析(※)では強みとして、
ⅰ)
「人」からみると、先端医療やワールドマスターズゲームズのような健康スポーツの
高まりなどが出てくる。
ⅱ)
「都市」では、優れた人工島の環境技術や様々な自然エネルギーの利用などの強みが
ある。
ⅲ)
「地球・国土」では、豊かな水資源、震災からの復興の経験・知識、先進的な水処理
技術があるという強みがある。
■これらの強みに、海外との認識の違いを踏まえ、抽出した関連するテーマの例は、
ⅰ)
「人」においては健康スポーツ、先端医療、ライフサイエンス等、
ⅱ)
「都市」としての大阪では水都(都市再生)
、都市環境、ヒートアイランド等、
ⅲ)
「地球・国土」では、安全・安心、大規模災害からの復興、おいしい水等
■これらのテーマで、開催意義としては、
ⅰ)
「人々」には健康維持の増進や感染予防などが浸透していくとともに、それらの関連
産業が活性化する。
ⅱ)
「都市」においても持続可能社会の実現、環境技術というのが振興することによって
産業が活性化する。
ⅲ)
「地球・国土」では、安全意識の普及などにより資源、防災関連産業の活性化にも繋
がる。
【資料】
<詳細は、大阪府HP「国際博覧会大阪誘致の検討/国際博覧会大阪誘致構想検討会資料」に掲載>
※SWOT 分析とは、強み(Strength)、弱み(Weakness)
、機会(Opportunity)、脅威(Threat)の 4 つの軸から評価する分析手法。
13
(3) 有識者委員のプレゼンテーションで示されたキーワード
検討会では、5 名の有識者委員から「大阪開催の意義・テーマ」について、プレゼンテー
ションを行い、
「新しい国際博覧会のモデルをつくる」、
「いのち」
、
「長寿」、
「調和」
、
「エージ
レス社会」
、
「住民参加」などのキーワードが示された。
<詳細は参考資料 52 頁で紹介>
<橋爪紳也座長>
【2020 年代の新しい国際博覧会を】
・世界規模の人口爆発や超高齢化社会がもたらす諸課題等を踏まえ、1970 年の大阪万博の理
念を継承し、2005 年の愛・地球博を発展継承させるような国際博覧会を 2020 年代の新しい
モデルとすべき。
・将来、どういう事業やイベントが実施されるかを押さえ、次の大阪での盛り上がりを考え
ていく必要がある。開催年が、節目としてターゲットとして考える年次なのかどうかとい
うことを議論していかなければいけない。
・大規模なイベントを誘致する意義として、多くの人たちの価値観や生活に係る様々なスタ
イルなどが、イベントの前後で切り替わるくらいの強いメッセージを受けるような場を作
らないといけない。
・国際博覧会は、社会実験の場である。仮設の空間の中に毎日数万人もの人が入って、様々
な行動をし、様々な営みがある半年間の社会実験都市だ。
・20 世紀後半の万国博覧会は、巨大映像や情報装置を活用し、世界の多様さと未来の可能性
を最先端技術で見せるものであった。2020 年代の博覧会は、これまでのものをいかに超え
るのかということが非常に重要であり、ICT技術の活用など新機軸が必要だ
<中牧弘允委員>
【人類の長寿と調和】
・国威発揚、科学振興、経済発展の大阪万博が残した課題は「調和」。地域振興の「引き金」
ではなく「追い風」としての博覧会開催を。例えば、「人類の長寿と調和」など。
・日本が開催するとしたら、成熟した社会で開催するという意義を探っていく必要がある。
もはや国威発揚、科学技術の謳歌ではなく、精神文化も含めた成熟した社会のあるべき未
来像が重要なテーマになってくる。
・日本は、長寿・健康、快適などに焦点をあてていくべきだ。万博は、こうしたプラス面を
整備する「追い風」となる。また、日本は、災害や格差の問題も抱えており、万博とは、
プラス面と、こうしたマイナスからの回復の両面を考えながら展開していくものだろう。
・万博は日本だけが参加するわけでなく、各国が参加して万博を作るということを考えるこ
とが必要だ。開催都市決定の投票などで、各国がどの都市の支持に回るかなども十分に考
えておかなければならない。
<田口隆久委員>
【楽しいエージレス社会】
・経済や社会の質が大きく変化している中で、新しい未来社会像をトータルで具体的に提示
できる能力を有するのは日本。
「楽しいエージレス社会」というテーマで発信し、年齢に関
14
係なく社会に関わり合い、充実したコミュニケーションができる社会像を提案するのはど
うか。
・大阪万博は科学技術中心だったが、これからの生活や社会などを考える上では、心や精
神、文化の問題なども重要。人文科学系の考え方を十分に取り入れる必要があるだろう。
・庶民の文化が早くから発達し、幅広い
【資料】 田口委員提出資料
産業がバックにあることが、大阪の特
徴だ。そういうメリットを生かして、
21世紀型の社会において、個人が楽
しく生活でき、お互いに連携し、コミ
ュニケーションのできる生活のスタ
イルやそれを支える社会のシステム
を提示する万博を大阪から提案でき
るのではないか。
・個々の成果発表ではなくて、システム
的な街づくりや社会づくりの提案で
あれば、日本・大阪で開催する意義が
あるだろう。
<佐野真由子委員>
【いのち/LIFE】
・生命科学や気候変動などのほか、異文化理解や他者との共生といった、文化も含めた人間
の生きる環境について、
「いのち/LIFE」の問題として考えるべき。民の都として日本
中の多様な声を巻き込み、
「対話」の実体験を積み重ねる場としての21世紀型の新しい万
博のスタイルを提案したい。
・
『いのち』というテーマは、日本の強みである生命科学に焦点を当てることができ、また関
西にその知識が集結している。現代の世界の喫緊の課題である「気候変動」や「生物多様
性」の問題、異文化理解や共生にもアプローチすることができる。
・
「大阪の声をどう世界へ伝えるか」ということに視点が向きがちであるが、そこに留まるの
ではなくて、歴史的な民の都である大阪が、
「日本中の多様な声を巻き込んで盛り上げてい
く」という心意気で推進していただきたい。
・万博会場から大阪の街へ、大阪から日本、世界の各地へと溢れ出すような万博のあり方を
追求してはどうか。地球をまるごと繋いでしまう、そのハブとしての万博。そういう交流
の一大場面にするということであれば、これからの世界に、なお万博は必要なものとして
注目されるだろう。
<山崎亮委員>
【地域住民の主体性をつくる場に】
・市民の方々は楽しい、美しい、ワクワク感がないと参加しない。国際博覧会には、
「美しさ」
や「楽しさ」
、
「わくわくする気持ち」を生み出す力があり、これまでとは違った「地域住
民の主体性をつくる場」にできるのではないか。
・重要なことは、
「これから企画される万博が、地域住民にとってどういう意味があるか」
。
愛知万博では多くの地元の人がボランティアに参加し、愛知県の医療費が一時的に下がっ
たとのことだが、国際博覧会が終わった後も、みんながまちづくりに参加し続けて、そし
て医療費が下がっていくということになればいい。
15
・先進医療などの分野から人間の生活をサポートする技術を世界へ発信するようなことも、
高齢社会である日本ができることであるが、それと同時に、国際博覧会に住民が多く参加
しており、
「この人たち、なにか健康そうだね。
」
「幸せそうだね」
「笑っているね」という
ようなものを大阪から世界に示すことができるのではないか。
・大阪での国際博覧会を契機に、多くの地域の人たちが繋がり、万博が終わった後の大阪の
まちづくりの力にもなってくれるものとなれば、ひとつのレガシーをつくることになるの
ではないか。
(4) 愛知万博の意義と評価
検討会では、ゲストスピーカーとして、愛知万博の前後 3 年間にわたり、経済産業省大
臣官房審議官国際博覧会担当として、政府側の実務的責任者を務められた宮本武史氏を招
き、「愛・地球博(愛知万博)の意義と評価」について聴取し、意見交換を実施した。
<詳細は参考資料 38 頁で紹介>
〔講演の概要〕
・愛・地球博は、21 世紀の新しい万博の雛形として、地球規模の問題解決に向けてのメッセ
ージを伝える場を実現。開催を通じて、知名度の向上、市民を中心とした新しい社会シス
テムの定着、博覧会を支えた地元企業の貴重な経験など、数字に表れない地元への効果が
あった。
・実証実験事業の実施では、博覧会関係者は、愛・地球博の成功のために事業を会場で行う
ことだけに躍起となっていたが、地元企業の方々は、もっと長い目で、愛・地球博を契機
に、持続可能な社会つくりのために自分たちでできることを真剣に考えていただいていた
ように思う。
・これからの企業には、地球の持続可能性の責任を分担し合うことが期待されている。そう
した中で、企業が地球的課題の解決への貢献をめざす万博と共通の利益を見出すことは十
分に可能であり、そのことは、企業が万博から長期的な経済効果を獲得するということで
はないか。特に、企業が当事者として、万博に積極的に参加できる仕組みと意思があれば、
その効果はさらに大きくなるのではないか。
・愛知万博を契機として、愛知では、様々な面で外との交流ということを真面目に考えるこ
ととなった。
・事前の様々なプロセスや会期中を通して、市民も「当事者」として主体的に愛・地球博に
参画し、あの大成功の中で、自分たちが支えた万博というイメージができてきて、そこで
生まれた新しい社会システムやメッセージなどを大切にしていこうという思いが強くある
と思っている。
【資料】宮本氏提供資料
<愛・地球博> 会場全景
NGO・市民の参加
16
新エネルギーシステム
(5)
委員意見
「開催の意義とテーマ」については、
「国民や企業の共感を得るために重要となる」と指摘
する意見や「検討にあたって必要となる視点」に関する意見などが多く、具体的なテーマに
関わるキーワードとしては、
「ライフ」「高齢化」
「心」「民の力」などに関する意見が出され
た。具体的な意見の内容は次の通りである。
①
意義・テーマ検討に係る総括的意見
【最優先での検討事項に】
・様々な主体の共感を得るということが、まず第 1 歩であり、そういう意味で、意義やメッ
セージは、最優先の検討事項だろう。
【企業が関心をもてるテーマを】
・今は、
「やることとなったから企業協力を」という時代ではなく、企業の方が本当に関心や
ニーズをもてるようなテーマ設定が必要だ。
【総合的な検討を】
・日常性を突き抜けるようなワクワク感があるならいいかもしれないが、理念だけではなか
なか難しい。資金、国の支援、府の覚悟、開催効果など、フィージビリティを総合的に検
討すべき。
・今後、つめられていく資金計画やフィージビリティと理念的な理想とを両睨みでの検討が
必要。
【「どのような文明を築きあげるか」での枠組みを】
・意義・テーマの検討では、
「どの分野において、これからどのような文明を築き上げるべき
なのか」ということが一番上位の枠組みとなる。例えば、食がテーマとなる場合も、
「文明
における食の問題」と高く課題を掲げてから、具体的な主題や解決策にブレークダウンを
していくこととなる。
②
開催の意義について
【「何の出発点に立つのか」の検討を】
・国際博覧会は、到達点ではなく、出発点だということであるので、
「何の出発点に立つのか」
について、整理する必要がある。
【「科学技術・産業の進歩によって、世界の課題に応じる」という視点を】
・世界各国で共通している課題に対して、いかに科学技術、あるいは産業の進歩によってそ
の課題に応じるのかというところがまず掲げられないと、他の国々の心を打つような博覧
会にならないのではないか。
【国家プロジェクトとしての認識】
・国際博覧会は、国際条約に基づくものであり、
『国家プロジェクト』であるという認識が必
要。大阪、あるいは関西が、今後、いかなる国家プロジェクトを誘致していくのかという
点から考えることが大前提となる。
17
【大阪・日本にとっての意義が、世界的な意義ともなる「WIN-WIN」関係を】
・大阪にとっての意義、日本にとっての意義が、同時に世界的な意義ともなる「WIN-WI
N」関係を目指す。今回の検討は、そういったものを考える素晴らしい機会となる。
【オリンピックとは違う意義】
・
「西洋が始めたことを私たちも出来るようになった」というのが大阪万博までだった。今度
は、これからの世界のあり方を、同じ万博というツールで見せてみてこそ、世界史的な意
義がある。元々普遍的なものであるスポーツを行うオリンピックとはまた違う意義を持た
せることができる。
【地域の主体的な参加・対話・連携】
・開催意義などを具体化していくスキームなどで、地域の主体的な参加や対話、あるいは調
和や連携といったものをどういう形で打ち出せるかということも共感と共鳴を得る大きな
要素のひとつとなるので、こうした点もあわせて考えることが必要。
【人材育成の場】
・開催の意義が変わってきたといいながら、国際博覧会はこれからの可能性を示すショーケ
ース的役割を果たすものであり、次世代の人材育成の場でもある。
【民の力】
・大阪では、生活に密着した考え方や「民の力」という伝統が江戸期からずっと続いている
訳であるから、愛・地球博の成果を引き継ぐ意味でも、府民の活力を引き出すことは十分
可能だろう。
・世界でも早い時期に人口減少を経験し、政府の財源が逼迫することを経験した日本だから
こそ、社会課題を市民参加で解決していくんだという気概を示す必要がある。
【万博というソフトパワーを使った施策がもつ世界的な意味を考える必要性】
・万博は最大規模の国際的な文化イベントであり、一極集中是正や自然災害への安全保障な
どの面からも、関西の戦略として、万博というソフトパワーを使った施策がもつ世界的な
意味を考える必要があるのではないか。
③
テーマについて
【ライフ、いのち】
・
「ライフ」、
「ヘルス」といった2つの言葉がしばしば出てきていた。これらは、技術的、科
学的な研究の分野でもあり、国家の政策の中でも、関西でこの分野を重点化するとして、
医療特区などの動きがでてきている。関西が医療の分野で世界的な中心地であるというこ
とをプレゼンテーションしていくひとつの手段として万博があるのではないか。
・スペインのサラゴサ万博(2008 年)は川の博覧会、韓国のヨス万博(2012 年)は海の博覧
会、カザフスタンのアスタナ万博(2017 年)がエネルギー問題を主題とした博覧会であり、
水資源や海洋資源、また資源の面などから、持続可能な開発に対して問題提起がなされて
いる。この大きな流れから考えると万博は、持続可能性、すなわち地球全体における大き
な意味での「いのち」の問題を考える場となっている。
18
【楽しく生きられる高齢化社会】
・日本的な課題としては、少子高齢化社会にどう対応するのか。暗いイメージではなく、お
年寄りだけじゃなく、いろんな方が楽しく、大阪であるので、笑いながら、楽しく生きら
れる社会生活。それを実現するには単に新製品、新技術だけでは駄目であり、地域をどう
設計するかとか、そういうことまで含めた提案が、大阪から、そして日本から出るような
ものとなればいい。
・高齢化は日本だけの課題ではない。人生を全うするまで楽しく生きられるような仕組みの
ようなものを、産業界を交えながら、検討できたらいい。
【心がつながる社会】
・心の問題が大事になる。単に新製品やロボットをつくるということだけではなく、
「人間同
士、心はどうやったら繋がるのか」
。「心が繋がる社会」というのは重要なテーマ。検討の
中で、産業界や地域の自治体の方々と協力して新しい生活を提示できるような万博だった
ら、やる意義があるんじゃないか。
19
第3
開催による効果
(1)
国際博覧会大阪開催による経済波及効果試算(委託調査中間報告)
検討会において、大阪府が本年度実施している委託調査「国際博覧会大阪誘致検討データ
収集等調査」の中から、
「経済波及効果」に関する調査状況について、仮の試算等として、中
間報告を行った。中間報告の概要は次の通りである。
(調査概要)
・開催地やテーマ等が決まっていない段階であるため、愛知万博(愛・地球博)相当の国際
博覧会を府内で開催した場合の経済波及効果の試算を「標準的な試算」として実施。
・大阪開催による効果の可能性を探るため、経産省レポート「大阪府の地域経済構造」を活
用して、万博開催による経済効果をもっと向上させるための検討を実施し、オプションとし
ての試算を実施。
1)
経済効果の標準試算結果
愛知万博相当の国際博覧会を大阪で開催した場合の経済効果を標準試算として算定した。
・①は、会場建設に 1,780 億円を入れると、会場運営・消費支出によるフローとしての 6,910
億円のお金が動くということであり、比率にすると、約 3.9 倍のお金が動いたという効果
が出る。
・②は、万博開催による経済波及効果を、大阪府の産業連関表を基に計算したもの。合計 8,690
億円を入れると、府内への経済波及効果 1 兆 1,279 億円であり、約 1.3 倍の動きになる。
・参考として、インフラ投資に対してどれだけお金が動くのかという見方をすると、会場建
設費 1,780 億円に対して、1 兆 1,279 億円が動くということで、約 6.3 倍の投資効果が出て
いるといえる。
【資料】
<詳細は、大阪府HP「国際博覧会大阪誘致の検討/国際博覧会大阪誘致構想検討会資料」に掲載>
20
20
2)
地域経済構造から検討のポイント
・域外から資金を流入させる域外市場産業(製造業、情報通信、観光等)は、地域経済の心
臓部ともいえ、域外から資金を稼いでくる産業の集積を促進し、競争力を強化することが
重要であるといえる。
・特に大阪産業の成長に影響が大きい分野としては、化学工業である。これには医薬品が含
まれている。それ以外に生産用機器、電気機器などがある。サービス業的な産業をみると、
情報通信業とか宿泊業などがあげられる。
【資料】
<詳細は、大阪府HP「国際博覧会大阪誘致の検討/国際博覧会大阪誘致構想検討会資料」に掲載>
3)
国際博覧会開催による直接・間接効果を加味した経済波及効果
・以上の検証結果を踏まえ、開催による直接・間接効果等の向上策を検討。
・標準試算での経済波及効果 1 兆 1 千億円に加えて、万博開催による直接・間接効果をオプ
ション試算として算定すると、経済効果として、さらにプラス 1 兆 7 千億円位のポテンシ
ャルがあるといえる。
・標準試算とオプション試算を足すと、結果として、約 2 兆 8,859 億円の効果となる。
21
【資料】
<詳細は、大阪府HP「国際博覧会大阪誘致の検討/国際博覧会大阪誘致構想検討会資料」に掲載>
(2)
委員意見
「開催による効果」については、
「何を効果としてとらえるか」との観点からの意見ととも
に、「意義・テーマの検討の必要性」を指摘する意見などがだされた。
具体的な意見の内容は次の通りである。
【「持続性」と「レガシー」を考える必要性】
・国際博覧会開催による腹の足し(経済効果)のほか、それをどのように持続させるのか、
レガシーをどうするかも考える必要がある。
【実証実験のようなものを】
・半年間の期間を終えたときに、単に跡地活用や何万人が来られたということではなくて、
半年間の万博を通じて、次の何がみえてきたのか、次のどういう技術開発につながるもの
がみえてきたとか、そういった大きな実証実験のようなものがあればいい。
【世の中を変える、驚きを与えるものを】
・経済効果もわかるが、大阪府民が賛同し、感動をもたらすような意義やテーマを深く慎重
に議論し、まとめていく必要があるのではないか。博覧会を通じて、世の中を変える、驚
きを与えるようなものでないと難しいのではないか。
22
第4
(1)
開催可能地区
開催可能地区調査結果(委託調査中間報告)
検討会において、大阪府が本年度実施している委託調査「国際博覧会大阪誘致検討データ
収集等調査」の中から、
「開催可能地区」に関する調査状況について、中間報告を行った。
中間報告の概要は次の通りである。
(調査概要)
・今後の国際博覧会の大阪誘致の可能性を検討する材料とするため、一定面積の用地確保や
交通アクセス等の観点から、大阪府内の北部・中部・南部エリアごとに例示地区を抽出し、
それらを開催可能地(例示)として設定し、それぞれ調査を実施。
(例示のポイント)
例示するにあたって、着目した項目は、「会場用地の確保」と「交通基盤」である。
・「会場用地の確保」については、これまで開催された大阪万博や花博、愛知万博、ミラノ
国際博覧会などを踏まえ、100ha 以上という条件を設定して例示地区を抽出し、実際に開
催できる規模の用地が確保できるのか、用地確保にあたってどのような課題があるのか等
について調査し、検討している。
・
「交通基盤」については、現状における交通アクセスに着目して、
「空港とのアクセスの良
好さ」、
「アクセス手段としての鉄道の状況」
「アクセス手段としての道路の状況」
「アクセ
ス手段としての会場の状況」の4つの切り口から、それぞれの例示地区を調査し、現状で
の交通基盤活用における課題や今後の可能性などについて検討している。
・今回提示した地区については、候補地ではなく、あくまで例示であり、今後、当該地区か
ら選定されというものではない。
①開催可能地の例示場所
北部エリアから「彩都東部と万博記念公
園」、「服部緑地」、中部エリアから「鶴見緑
地」、「舞洲」、南部エリアから「大泉緑地」、
「りんくう公園とりんくうタウン」を例示地
区として抽出し、現状を調査している。
地域
北部
場
所
万博跡地(20ha)+彩都東部地区(130ha)
服部緑地公園(126ha)
中部
花博跡地(鶴見緑地)(117ha)
舞洲(138ha)
南部
りんくう公園+りんくうタウン(116ha)
大泉緑地(101ha)
23
・北部ブロックとしては、例えば、
「彩都東部・万博記念公園」では、万博記念公園だけでは
258ha のうちの 20ha しか利用できず、単独では設定することは難しいと考えらえることか
ら、今開発中の「彩都東部」367ha のうちの 130ha とパッケージでの活用を想定。
「服部緑
地」では、全てを活用すると想定すると 126ha となる。
・中部ブロックとしては、例えば、「鶴見緑地」では、全てを活用できるとすれば約 118ha。
「舞洲」については、西側部分の約 138ha の活用を想定。
・南部ブロックとしては、例えば、「大泉緑地」では、すべてを活用して、101.5ha を想定。
「りんくう公園+りんくうタウン」では、海外沿いに非常に細長い形で、138ha の土地を確
保できるのではないかと想定。
24
②例示地区の検討項目比較
それぞれの例示地区について、次頁のとおり、項目ごとに検討内容を比較し、留意しな
ければいけないと考えられる点をまとめた。
(検討内容)
1)会場用地の確保
・会場規模にあった用地が確保できるか。
2)交通基盤
・
「空港アクセス」
関西国際空港や大阪国際空港とのアクセスは良好か。
・「鉄道」
アクセス手段としての鉄道の状況(既存の交通基盤施設があるか)
利用可能路線数、輸送力(列車本数、混雑状況)
、シャトルバス輸送の可能性はどうか。
・「道路」
アクセス手段としての道路の状況(既存の交通基盤施設があるか)
利用可能高速道路等の有無
アクセス道路として利用可能な既存道路の有無、現況交通量(混雑状況)はどうか。
駐車場台数の確保が可能か。
・「海上」
海上アクセスは利用可能性か。
<詳細は、大阪府HP「国際博覧会大阪誘致の検討/国際博覧会大阪誘致構想検討会資料」に掲載>
25
26
(2) 委員意見
「開催可能地区」については、今後の検討において必要な観点として、
「複数地の組み合わ
せの可能性」
、
「交通アクセスがいいというだけではなく、地元との一体感を生み出せるか」
等に関する意見がだされた。具体的な意見の内容は次の通りである。
【複数地の組み合わせ等の検討を】
・開催可能地区調査については、開催地という視点から可能性を検討するということで、例
示として、いろいろな点からご検討いただいているが、調査結果をみると、今後、1か所
で十分賄えるような開催地を府内で確保していくことは、困難かもしれないという印象を
受けた。複数地の組み合わせということも検討する必要があるだろう。
・例えば、
「けいはんな」地域は大阪市内からは遠いが、近畿の経済圏である。こうした他地
域などについても、可能性をさぐるための検討項目にいれてもいいのではないか。
【地元との一体感が生み出せるかなどの視点を】
・立地を決める際には、単に交通アクセスがいいというだけではなくて、やはり物理的にも
「まちなかとの一体感」が生み出せるかということや、「地元が一緒に盛り上がっている」
という雰囲気をどうやって作っていくかということなども、おそらく今後の重要な検討要
素であろう。
・
「地元との連携をどのようにしていくか」ということについては、開催地だけでなく、府県
境や海辺などにあるような人口規模が小さい町村にあっても、いわゆるネットワークなどを
図り、企業と行政、府民が広く連携していくような博覧会にしていくことが必要。
27
第5
(1)
府民・企業意識
府民・企業意識調査結果(委託調査中間報告)
検討会において、大阪府が本年度実施している委託調査「国際博覧会大阪誘致検討データ
収集等調査」の中から、
「府民・企業の意識」に関する調査状況について、中間報告が行った。
中間報告の概要は次の通りである。
(調査仕様)
・
「大阪府民のアンケート調査」
インターネット調査により、回答者数が 2,000 人を超えるように実施。対象者となる 2,000
人は、大阪府が示す年齢・性別・地域分布に準ずるよう割り付け、実施した。
・「大阪企業のアンケート調査」
大阪府に本社のある企業を対象として、大企業 250 社と中小 250 社の計 500 社に対して書
面送付により実施。111 社から回答(回答率 22%)
<大阪府民のアンケート結果概要>
【詳細は、参考資料 81 頁に掲載】
1 過去の国内で開催された国際博覧会について
・大阪万博開催時に生まれていた府民の 80%が大阪万博を訪れたと回答。花博については、
府民の 53%、愛・地球博については、府民の 16%が訪れたとの回答であった。
2 国際博覧会の開催意義について
・1994 年のBIE総会決議によって、それまでの国威発揚型の万博から理念提唱型へと国際
博覧会の意義やテーマが大きく変わったことについて、府民の 15%が「知っている」との
回答であった。
3 国際博覧会(全般)について
・国際博覧会のイメージは、
「国際交流」31%が最も多く、次いで「最先端科学技術の披露」
28%、「海外への情報発信」22%の順となっている。
・世界が抱える課題は、
「資源やエネルギー問題への対応」
・
「環境破壊・気候変動への対応」・
「人口変動と水・食糧問題への対応」・「少子高齢化社会と社会保障への対応」が、概ね各
15%の回答となっている。
4 国際博覧会が大阪で開催される場合について
・国際博覧会の大阪開催に相応しいテーマとしては、
「水と安全な食に関する技術の進展」21%
が最も多い。次いで「未来の都市像とライフスタイル」14%、
「多種多様なエネルギーの実
現と活用」11%、
「未来技術(ロボット・IT 他)産業の高度化と集積」10%の順となって
いる。
28
・国際博覧会が大阪で開催された場合、どのような参加形態を望むかという設問に対しては、
「一般観覧」が 61%。その一方で、「開催期間中のボランティア」10%、「開催前の企画・
提案参加」9%、
「市民参加型出展」9%と積極的参加が約 3 割を占めた。
・将来、大阪で国際博覧会が開催された場合、訪れてみたいですかという来訪意向について
の設問に対しては、
「訪れたい」が 46%、
「どちらかといえば訪れたい」が 30%を占め、府
民の約 76%が訪れてみたいとの回答であった。
【図】将来、大阪で国際博覧会が開催された場合、
訪れてみたいですか
【図】国際博覧会が大阪で開催された場合、
どのような参加形態を望むか
<企業のアンケート結果概要>
【詳細は、参考資料 84 頁に掲載】
1 過去の国内で開催された国際博覧会について
・大阪万博には、開催時に創業していた企業の 12%が出展・協賛参加していた。花博には
15%、愛・地球博には 5%の企業が出展・協賛参加していた。
2 国際博覧会の開催意義について
・1994 年のBIE総会決議によって、それまでの国威発揚型の万博から理念提唱型へと国際
博覧会の意義やテーマが大きく変わったことについて、企業の 15%が「知っている」との
回答であった。
3 国際博覧会(全般)について
・国際博覧会のイメージは、「国際交流」31%が最も多く、次いで「最先端科学技術の披露」
27%、「海外への情報発信」26%の順となっている。
・世界が抱える課題は、 「資源やエネルギー問題への対応」 18%が最も多く、次いで「人
口変動と水・食糧問題への対応」17%、
「環境破壊・気候変動への対応」16%の順となって
いる。
29
4 国際博覧会が大阪で開催される場合について
・国際博覧会の大阪開催に相応しいテーマとしては、
「水と安全な食に関する技術の進展」18%
が最も多く、次いで「未来技術(ロボット・IT 他)産業の高度化と集積」15%、「未来の
都市像とライフスタイル」13%の順となっている。
【図】国際博覧会が大阪で開催された場合、
参加意向について
・国際博覧会が大阪で開催される場合の参加
の意向については、
「わからない」が全体の
46%を占めた。
・一方、「参加したい」12%、
「どちらかとい
えば参加したい」6%と、参加に前向きな回
答が 18%であった。
・「どちらかといえば関心がない」9% 、「参
加しない」25%と、参加に前向きでない回
答は 34%であった。
・参加に前向きな企業が望む参加形態としては、
「寄付・協賛金の提供」27%で最も多く、次
いで「施設・設備等の提供」20%、パビリオン出展 13%の順となっている。
・参加に前向きでない企業が、参加しない理由としては、
「自社の業種と無関係」34%が最も
多く、次いで「投資効果が期待できない」21%の順となっている。
【図】国際博覧会が大阪で開催された場合、
【図】参加に前向きでない企業が参加しない理由
どのような参加形態を望むか
30
(2)
委員意見
「府民のアンケート調査結果(中間報告)
」については、「積極的な参加意向をもつ府民を
増やしていくための機運醸成」や「情報発信」の必要性に関する意見が出された。
「企業のアンケート調査結果(中間報告)」については、企業の参加意向の乏しさを指摘す
る意見などが出された。具体的な意見の内容は次の通りである。
【府民の積極的な参加意向について】
・府民の方々が「参加するとしたら能動的に参加したい」と考えているということが、アン
ケート結果ででていたということは、とても勇気づけられる点ではあるが、この数字はも
っと増やせるはずだと感覚的には思う。
・今回の3割という結果でもかなりいいなと思ったが、もっと増やして、その人たちが10
万人いるのなら、その周りにはその 10 倍、100 倍の人たちがいるので、そういう人たちに、
口づてや人と人との繋がりなどの強い関係性を通して、万博を応援してもらうような機運
を高めていくということが大切になる。
【府民への情報発信の必要性】
・本検討会や有識者ヒアリングの結果からは、
「高齢化社会」や「いのち」など、これから大
切になってくるテーマがいくつか上がっていた。一方で、府民の方々にアンケートをする
と、
「水」と「安全な食」が一番多くなっている。大阪が水都だということもあるだろうが、
これまでの国際博覧会のテーマとして既に『水』や『食』をテーマに開催されているとい
うことから考えると、府民の方々は、聞いたことがある内容から「万博やるなら、こんな
のがいいかな」と、今、思うところを出しているというようにも感じられる。
・今後は、博覧会に関する情報をしっかりと発信し、対話をしていくことや、さらには、
「本
当にこれから求められていることは何なのか」などのことを関係者や府民と、焦りながら
もゆっくり時間をかけながら、しっかり共有していくことが、機運を高めるためには重要
ではないか。
【大阪のまち全体を盛り上げていく工夫を】
・意外だったのは、多くの一般府民の方たちが過去に万博を体験しているということだ。
・もし、大阪で国際博覧会を開催するとすれば、10 年先、15 年先であっても、今からひとつ
ひとつステップを踏んで、大阪のまち全体で盛り上げていく工夫が必要。そうした意味で、
今回のアンケートは、出発点として参考になるものだ。
【企業の参加意向の低さ】
・企業のアンケート結果に関しては、この集計を持って、国際博覧会の大阪開催に賛成とい
う意向を読み取ることは出来ないのではないか。素直に読めば、
「参加しない」、
「どちらか
と言えば関心がない」
、
「わからない」という前向きではない3つの回答が、全体の8割を
占めていたという結果でしかないと思う。
・企業の側からの積極的なご意見や参加などの意向については伸び悩んでいる印象を受けた。
31
第6
今後に向けて
今後の検討のあり方について、課題として、主に「機運の醸成」、
「コンセプトづくり」、
「検
討のプロセス」の3つの観点から意見が出された。具体的な意見の内容は次の通りである。
①
気運の醸成を
アンケート調査から府民の国際博覧会に対する認識不足や企業の参加意欲の乏
しさが明らかになった。今後、国際博覧会を誘致しようという機運の醸成が不可
欠であり、そのためには、博覧会イメージの具体化などが必要。
(委員意見)
・少なくとも企業側からは、
「相応の金銭負担をしてでも、ぜひやりたい」というような機運
はまだないというのが現実かと思う。
「どのようなものを博覧会として提案しているか」と
いう具体的イメージがない中では、必然的に、企業側は、こういう受け止めになるのだろ
う。そういう意味で、企業側に具体的なイメージを示すためには、この検討会で議論して
きた『テーマ』や『意義』をもっと深堀していく必要があるだろうと考えている。
・
「関西が一丸となって万博を誘致して、万博で関西を盛り上げていこう」と思うような機運
を高めることが大切だろう。そのことは、直近でいえば、東京オリンピックの諸々の問題
で、都民、関係者の方々としっかり対話を進めていくというプロセスが必要だったという
ことを、我々は経験をしている。先を見据えて、結構時間がかかるものだと思いながら議
論をしていくことが必要だろう。
②
大阪の将来を見据えたコンセプトづくり
様々な主体がかかわる国際博覧会の検討は、大阪の将来を考えることにつなが
ることから、開催の必要性や意義をはじめとしたコンセプトづくりに、引き続き
取り組み、検討を深めていくことが必要。
(委員意見)
・
「なぜ今なのか」
、
「なぜこの大阪でやるのか」という必然性について、まだピンとくるもの
が得られてないというのが実感だ。将来に向けた課題解決という観点から将来を考え、こ
の大阪・関西という地域の「魅力を上げる」、「競争力を高める」、
「どんなブランドを発信
していきたいのか」ということを議論する中から、「なぜこの大阪でやるのか」「なぜこの
関西でやるのか」という議論に至っていくのではないか。そういう意味から考えると、検
討会を4回開催し、いろんなご意見いただいているが、引き続き、丁寧に議論を重ねた方
がいいのではないか。
・コンセプトづくりについては、じっくり時間をかけていくべきと考えている。
32
・大阪では、関東圏と違った意味合いの文化、あるいは文明的な課題を担っていくというよ
うな覚悟を、大阪だけでなく、京都や神戸なども含めた関西でもつことが必要ではないか
と思っている。万博は、それらを考える上でも非常にいい機会になるし、そうしたことを
アピールするという点でも、優れたメディアになる。今回のような検討のための会を継続
し、じっくりと取り組んでいければいいのではないかと思っている。
・万博という仕掛けは、うまくやれば、地域や経済にとって非常にプラスとなるということ
は、みなさんも間違いなくそう考えておられると思う。今後、2025 年をまずは目指すのか
もしれないが、通らなければやめてしまおうということではなくて、万博とは非常に使い
勝手のある仕組みであるので、少し長い目でみて、うまく大阪のため、あるいは関西のた
めに使えるように、大阪府を中心に、さらにこれらの検討を発展させていただきたい。
③
検討のプロセスに若者などの声を
今後の検討にあたって、国際博覧会の開催年次を踏まえ、将来を担う若者など
の意見を十分に聴く必要がある。
(委員意見)
・10 年後、20 年後を担う次の世代の若者などの声を、計画段階からもっと丁寧に拾っていく
必要があるのではないかということだ。国際博覧会はレガシーを残すものであるが、あく
までもコストがかかるものであるから、負のレガシーも残す可能性があるのであれば、次
の時代の担い手の声をじっくり聴くということなどをプロセスとしてやることも必要では
ないかと感じている。
・大阪の成長のかたち自体を今の若い世代などはどのようにみているのか。そうした声をじ
っくりときいていくことも必要。「それを提示するのが万博なんだ」ということであれば、
コンセプトの議論につながっていくのではないか。
33