会社分割と試験研究費税額控除

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会社分割と試験研究費税額控除
Issue 86, December 2015
In brief
試験研究費に係る税額控除の適用にあたって、会社分割等の組織再編が行われた場合には、移転売上金
額の計算方法の認定申請等を行うか否かによって、当該会社分割後の試験研究費に係る税額控除額に影
響を及ぼすことがあります。
本ニュースレターでは、「分割等による移転売上金額の計算方法の認定申請書」及び「分割等による売上金
額の区分に関する届出書」の効力について、具体例と共に、ご説明いたします。
In detail
1.
試験研究費と税額控除
法人税法上、税額控除の対象となる試験研究費とは、製品の製造または技術の改良、考案もしくは発明に係
る試験研究のために要する費用で、次に掲げるものをいいます(租税特別措置法第 42 条の 4 第 6 項 1 号、
同施行令第 27 条の 4 第 2 項)。

その試験研究を行うために要する原材料費、人件費(専門的知識をもってその試験研究の業務に
専ら従事する者に係るものに限る)および経費

他の者に委託して試験研究を行う法人の当該試験研究のために当該委託を受けた者に対して支払
う費用

技術研究組合法第 9 条第 1 項の規定により賦課される費用
法人が試験研究費を損金処理した場合で、一定の要件を満たす場合には、以下の税額控除の適用を受け
ることができます。
(1) 試験研究費の総額に係る税額控除(租税特別措置法第 42 条の 4 第 1 項)
(2) 中小企業技術基盤強化税制(租税特別措置法第 42 条の 4 第 2 項)
(3) 特別試験研究に係る税額控除(租税特別措置法第 42 条の 4 第 3 項)
(4) 試験研究費の増加額等に係る税額控除(租税特別措置法第 42 条の 4 第 4 項)
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2.
会社分割が行われた場合における試験研究費税額控除の留意点
会社分割が行われた場合における試験研究費に係る税額控除においては、認定申請等の有無により、分
割後における税額控除額に影響を及ぼすことがあります。以下では、試験研究費の総額に係る税額控除を
例として解説します。
試験研究費の総額に係る税額控除は、青色申告書を提出する法人の各事業年度において、所得の金額の
計算上損金の額に算入される試験研究費の額がある場合に、当該事業年度の法人税の額から試験研究費
の額の一定割合の金額を控除することを認めるものです(ただし法人税額の 25%相当額が上限となります)。
ここでいう一定割合(税額控除割合)は、次のとおりです。
試験研究費割合が 10%以上の場合:
10%
試験研究費割合が 10%未満の場合:
(試験研究費割合 x 0.2)+ 8%
また、試験研究費割合は以下により算定されます。
その事業年度の損金に算入される試験研究費の額
試験研究費割合=
当期(「総額方式等適用年度」)及び当該事業年度開始の日前 3 年以内に開始した
各事業年度(「売上調整年度」)の売上金額の平均額(平均売上金額)
たとえば、内国法人Bが、X4 年 1 月 1 日にその事業の一部を A に会社分割により移管した場合には、認定
申請等の有無により、税額控除割合は以下の通りとなります(いずれも 12 月決算)。なお、分割承継法人 A
の x4 期において損金算入した試験研究費の額は 120 であり、また A 及び B の各事業年度における売上
金額はそれぞれ以下の通りとします(移転事業に係る売上金額は括弧書きに記載)。
法人 A
1/1/x2
1/1/x1
1/1/x3
1/1/x4
1,000
1,100
1,200
400(100)
450(120)
470(170)
1,500
分割
法人 B
認定申請等を行わない場合
分割承継法人 A の x4 期における平均売上金額は、以下の合計額に基づいて算定されます(同法 42 条の
4 第 6 項 10 号、同施行令第 27 条の 4 第 18 項 1 号)。
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
分割承継法人 A の総額方式等適用年度及び売上調整年度に係る売上金額

分割法人 B の売上調整事業年度に含まれる月別売上金額を合計した金額
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従って、税額控除割合は以下の通りとなります。
x1 期における売上額:1,000 + 400x12/12 = 1,400
x2 期における売上額:1,100+ 450x12/12 = 1,550
x3 期における売上額:1,200+ 470x12/12 = 1,670
平均売上金額=(1,400 + 1,550 + 1,670 + 1,500)/4 = 1,530

試験研究費割合= 120 / 1,530 = 7.84%(なお試験研究費割合が 10%未満であることから、税額控除割
合は 9.56%となります)
認定申請等を行った場合
所轄税務署長の認定を受けた合理的な方法に従って当該分割法人の各事業年度の売上金額を移転事業
に係る売上金額と当該移転事業以外の事業に係る売上金額とに区別している場合は、平均売上金額は以
下の合計額に基づいて算定されます(同施行令第 27 条の 4 第 20 項 2 号)1。

分割承継法人 A の総額方式適用事業年度及び売上調整年度に係る売上金額

分割法人 B の分割事業に係る売上調整事業年度に含まれる月別売上金額を合計した金額
従って、税額控除割合は以下の通りとなります。
x1 期における売上額:1,000 + 100x12/12 =1,100
x2 期における売上額:1,100 + 120x12/12 =1,220
x3 期における売上額:1,200 + 170x12/12 =1,370
平均売上金額=(1,100 + 1,220 + 1,370 + 1,500)/4=1,297.5

試験研究費割合= 120 / 1,297.5 = 9.24%(なお試験研究費割合が 10%未満であることから、税額控除
割合は 9.84%となります)
以上より、認定申請等を行わない場合には、分割法人が営む一部の事業のみを分割承継法人に移管する
場合であっても、当該分割法人の全ての事業に係る月別売上金額を含めて分割承継法人に係る平均売上
金額を算定し、試験研究費割合の計算を行う必要があります。一方で、認定申請等が認められる場合には、
分割事業に係る売上調整年度に含まれる月別売上金額によることができます。
当該認定申請等は、当該分割の日以後 2 か月以内に提出する必要があります(同施行規則第 20 条第 19
項及び 24 項)。
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認定申請等が認められた場合において、分割後に分割法人が試験研究費の総額に係る税額控除の適用を行う際の平均売上金額の
算定にあたっては、各売上調整年度に係る売上金額より移転売上金額を控除することができます(同施行令 27 条の 4 第 20 項 1 号)。
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