2016年度入試直前動向②~国立大の学部再編の影響~ - Kei-Net

2016年度入試動向
2016年度入試直前動向②~国立大の学部再編の影響~
2015/12/22
前号に続き来春(2016 年度)入試の展望をお伝えする。今号では、国立大の学部再編・新設に伴う動きと
その影響について取り上げる。
■相次ぐ国立大の学部再編・新設の動き
2016 年度は国立大で学部の再編・新設が数多く行われる。国立大では、「国立大学改革プラン(2013.11 文
部科学省)」を踏まえた改革への取り組みが進められて
【図表1】2016 年度 主な学部・学科の再編・新設を行う国公立大
おり、今年はプラン内でその在り方を示されていた第
その入学定員と一般入試募集人員の変化
大学
学部
入学定員
前期
後期
3期中期目標・中期計画(2016~21 年度)の策定時期
弘前
人文社会科学
265 (-80)
170 (-50)
60 (-20)
となったためだ。特に教員養成系および人文社会科学
教育
170 (-70)
130 (-23)
30 (-18)
理工
360 (+60)
223 (+26)
80 (+22)
系学部については、6月に文部科学大臣名で各大学に
農学生命科学
215 (+30)
131 (+14)
53 (+11)
人文社会科学
200 (-15)
103 (-12)
34 (-16)
送付された通知において、組織の改廃を含めた積極的 岩手
教育
160 (-90)
102 (-34)
17 (-30)
な取り組みが改めて求められた。
理工
440 (+40)
282 (+32)
77 (+8)
農
230 (+20)
161 (+13)
35 (+4)
こうした状況を背景に、①教育学部総合科学課程の
宇都宮
地域デザイン科学
140 (+140)
93 (+93)
31 (+31)
国際
90 (-10)
40
(-4)
廃止(教員養成課程へ特化)、②地域創生・グローバル
教育
170 (-40)
103 (-26)
23 (-7)
系学部の新設、③文系学部から理系学部への入学定員
工
315 (-70)
211 (-54)
54 (-8)
農
195 (-20)
138
(-8)
18 (-6)
シフト、といった動きが目立っている。
千葉
① 教育学部総合科学課程の廃止
弘前大、岩手大、宇都宮大、千葉大、福井大、山
梨大、信州大、静岡大、三重大、和歌山大、愛媛大、
福岡教育大、佐賀大、大分大、宮崎大の 15 大学で総
合科学課程が廃止される。一部の大学では教員養成
課程の入学定員を増員するが、多くは新設を含む他
学部へ定員を振り替えることから、教育学部の定員
は縮小傾向にある。特に総合科学課程の入学定員は
2015 年度から約4割減となる。
② 地域創生・グローバル系学部の設置
①の教育学部に加え、人文社会科学系学部でも入
学定員や学科の見直しを行う大学が多い。また、こ
れに伴う学部の新設も相次いでおり、目立つのが「地
域」「国際」といった名称が付く学部の設置だ。
例えば、宇都宮大では教育学部総合人間形成課程
および工学部建設学科を募集停止し、新たに地域デ
ザイン科学部を設置する。建築技術をベースに居住
空間や社会基盤のデザインを学ぶ建築系の学科のほ
か、地域社会を構成する社会集団や制度などをデザ
インできる人材を育成するコミュニティデザイン学
科を設置し、文理融合の学科構成となっている。
このほか、千葉大(国際教養)、福井大(国際地域)、
佐賀大(芸術地域デザイン)、宮崎大(地域資源創成)
などが新たに設置される。
文
国際教養
教育
理
工
園芸
福井
国際地域
教育
山梨
教育
生命環境
信州
経法
教育
工
繊維
静岡
人文社会科学
教育
※学部別の
理
前期・後期の
工
数には地域
農
創造学環は
情報
含まない
地域創造学環※
和歌山
観光
経済
教育
徳島
理工
理工-夜
生物資源産業
総合科学
愛媛
法文
法文-夜
社会共創
教育
佐賀
教育
芸術地域デザイン
長崎県立
国際社会
地域創造
経営
情報システム
大分
福祉健康科学
教育
宮崎
地域資源創成
教育
農
170 (-10)
90 (+90)
405 (-50)
200 (-10)
620 (-10)
190 (-10)
60 (+60)
100 (-60)
125 (-20)
150 (+20)
180 (-5)
240 (-40)
485 (+15)
280 (+5)
390 (-20)
300 (-100)
240 (+25)
550 (+15)
185 (+35)
245 (+45)
120
300
165
550
45
100
170
275
90
180
160
120
110
60
250
200
80
100
135
90
120
285
(+10)
(-30)
(-5)
(-5)
(+100)
(-95)
(-120)
(-20)
(+180)
(-60)
(-120)
(+110)
(+60)
(+250)
(-250)
(-60)
(+100)
(-110)
(+90)
(-110)
(+20)
125
90
315
142
460
116
35
48
78
130
120
141
299
130
231
186
106
274
80
155
25
55
180
100
287
45
50
85
180
40
111
116
70
58
30
125
100
40
78
83
55
78
167
(-3)
(+90)
(-41)
(-5)
(+35)
(-38)
(-8)
(+20)
(-5)
(-25)
(+11)
(+3)
(-40)
(-70)
(+4)
(-5)
(+40)
(+25)
(+5)
(-20)
(-11)
(-5)
(-5)
(+50)
(-60)
(-50)
(-5)
(+111)
(-17)
(-81)
(+58)
(+30)
(+125)
(-110)
(-34)
(+78)
(-63)
(+55)
(-68)
(+15)
21
(-3)
50
160
60
15
23
28
20
30
43
70
99
53
39
86
174
45
55
5
35
80
35
93
(-3)
(-10)
(+15)
(-9)
(-4)
(+5)
(-6)
(+29)
(+4)
(-10)
(-14)
(+5)
(+10)
(+7)
(+5)
(+1)
(+1)
20 (+20)
20 (-30)
50 (-20)
20
10
22
27
6
50
25
16
16
22
20
10
73
(-20)
(-29)
(+27)
(+6)
(+50)
(-62)
(+2)
(+16)
(-26)
(+20)
(-38)
(+9)
-1© Kawaijuku Educational Institution.
③ 文系学部から理系学部への入学定員シフト
教育、人文社会科学系の見直しに伴い、理系学部に入学定員をシフトする動きも目立つ。また、あわせて
理系学部の学部・学科再編を行う大学もある。岩手大、徳島大は工学部を理工学部に改組する。徳島大では
新たに農学系の生物資源産業学部(入学定員 100 名)を設置する。このほか、弘前大(理工*、農学生命科
学*)、岩手大(農*)、福井大(工)
、信州大(工*、繊維*)
、静岡大(理*、農*、情報*)、愛媛大(農)など
では学科の再編や新設を行う。このうち*を付した学部では、学部全体の入学定員が増加する。
これら①~③の大学では既存の学部・学科を含めて募集人員が大きく変更されているため注意が必要だろう。
【図表1】は主な学部再編大の一般入試の募集人員の変化をまとめたものである。
■学部再編に伴う志望動向への影響
こうした学部再編・新設や入学定員の変更に伴い、志望動向も大きく変化することが予想される。
【図表2】は、募集停止が相次いでいる教育学部総合科学
【図表2】第3回全統マーク模試
教育学部総合科学課程志望者分布
課程志望者の第3回全統マーク模試における成績分布の変化 (人)
300
である。募集停止大の影響により、志望者数は前年比 76%と
今年
250
大幅に減少している。こうした受験者層が他の学部系統へ流
昨年
200
れることが予想されるが、模試の時点では「法・政治」の政
150
策系や「芸術・スポーツ科学」
「学際」系で志望者の増加が見
100
られた。大学別では近隣の公立大などセンター試験の科目数
50
が少ない大学で人気を集めている様子がうかがえた。
0
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
個々の大学でみると、募集人員の変化と受験生の志望動向
(得点率)
が一致していないケースが見られる。
【図表3-A】は、例と
して岩手大の前期日程の募集人員と志望者数の変化 【図表3】第3回全統マーク模試 学部再編・新設大の志望動向例
を見たもの。人文社会科学部は募集人員が1割減少す A:岩手大(前期日程)
募集人員
志望者数
学部・学科
るにもかかわらず、前号でお伝えした通り文系学部の
昨年 今年 前年比 昨年 今年 前年比
115 103 90%
228 301 132%
人気上昇もあり、志望者数は3割以上増加している。 人文社会科学部
教育学部
学校教育
95 102 107%
87 104 120%
一方、募集人員が増加する理工学部、農学部では志望
生涯教育
25 25 芸術文化
16 19 者が増加しているものの、募集人員の増加率を下回っ
理工学部(旧:工学部)
250 282 113%
265 271 102%
ている。
農学部
148 161 109%
322 338 105%
また、多くの大学で新学部が設置されるが、模試時
B:千葉大(前期日程)
点では受験生に認知されていないためか志望者が集
募集人員
志望者数
学部・学科(方式)
昨年 今年 前年比 昨年 今年 前年比
まっていないところも少なくない。【図表3-B】は
文学部
日本・ユーラシア
28
28 100%
94
93 99%
千葉大に新設される国際教養学部と他の文系学部と
国際言語文化
26
25 96%
163 156 96%
80
148
の志望者数を比較したもの。国際教養学部の志望者数 国際教養学部 通常型
特色型
10
4
は模試の回数を追うごとに増加しており、徐々に認知 法政経学部
272 295 108%
639 773 121%
されてきている様子がうかがえる。しかし、文学部内
にある国際文化系の2学科と志望者数を比較すると、国際言語文化学科よりも志望者数は少ない。国際教養学
部の募集人員は、国際言語文化学科の3倍以上となっていることを考えると、志望者が集まっているとは言い
難い状況である。
以上のように、これら再編大の変化に対して受験生の志望動向が連動していない様子も見られ、出願を検討
している受験生にとっては悩ましい状況といえるだろう。志望動向は、出願直前期まで変化することが予想さ
れることから、周辺大を含めてセンター試験後の志望動向を集計する河合塾「センター・リサーチ」の状況を
参考に出願を検討してほしい。
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