インターシステムズ イン ヘルスケアセミナー

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先端医療とIT活用:現状と将来展望
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戸塚
島森
り、真の意味で医療の基軸になりつつあ
におけるITの重要性は増大し続けてお
国家レベルの医療政策に至るまで、医療
いわゆる﹁ビッグデータ時代﹂を迎え、
非常に細かい分子レベルの医学研究から、
病因未知の先天的な遺伝病の原因遺伝子
ム医療がスタートしています。1つは、
米国では、すでに2010年頃からゲノ
に合わせて医療を行うということです。
これは個人の遺伝的な資質や環境の特性
日本語で精密医療とよく訳されますが、
﹂宣 言 に つ な が っ て い る と 考
Medicine
えています。
が、 オ バ マ 大 統 領 に よ る﹁ Precision
ビッグデータ﹂の利活用です。この成果
段階が2013年頃より始まった﹁医療
た﹁ゲノム医療の開始と発展﹂で、第2
す。第1段階が、2010年から始まっ
初です。もう1つは、先制ゲノム薬理に
よ る 薬 剤 の 代 謝 酵 素 の 多 型 性 検 査 で、
大学病院で始まりました。そ
Vanderbilt
の後、少し経ってがんのドライバー変異
画が2013年からスタートしています。
翻って、我が国では従来型の日本版セ
ンチネル計画やレセプト情報、400万
新 医 療 2016年1月号 ( 64 )
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MAC制作課 9J
剤を選択するゲノム医療に
加わりました。 Mayo Clinic
の Center for Individualized
︵個別化医療セン
Medicine
ター︶は、この3つのゲノム
オミックス医療の臨床実装
全てを行っています。
ります。本日はゲノムオミックス医療と
を 臨 床 の 現 場 で 同 定 す る 医 療 で す。
ス医療の最先端事情から紹介します。
米国では、すでにゲノムオミックス医
療が実用段階に入っています。オバマ大
統領は、2015年1月の大統領一般年
遺伝子を同定して適切な分子標的抗がん
NIHでは、
﹁
Big
Data
to
Knowledge
︵BD2K ︶︵ビッグデータから知識へ︶
﹂計
モバイルヘルス、そして日本のEHRに
到来を、2段階に分けていま
さて、私は、米国における
〝医療ビッグデータ〟時代の
のです。
が興ってくることになった
用すればよいかという議論
まれ、それをどのように利活
ッグデータ〟という概念が生
の膨大なデータによって〝ビ
膨大なものとなりました。こ
このゲノム医療の進展に
伴い、得られた診療データは
田中 博氏
ついて話します。まず、ゲノムオミック
東京医科歯科大学 名誉教授
東北大学 東北メディカル・メガバンク機構 機構長特別補佐・特任教授
NPO 法人 次世代生命医学研究所 所長・理事長
アメリカでは、国家戦略として医療ビ
ッグデータの利活用が始まっています。
行った。セミナーでの講演内容の抄録を紹介する。
医科大学で、原因未知の炎症
Wisconsin
性大腸疾患の 歳の男児を救った例が最
∼ゲノムオミックス医療・
モバイルヘルス・EHR ∼
を行う
頭教書演説で
Precision
Medicine
とは、
と述べました。 Precision Medicine
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下版戸塚1601_インターシステムス
先端医療にITは
どう寄与できるか [特別講演]
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献について考える」をテーマに、3部構成にて医療ITの碩学とエキスパート、システムベンダ、そして同社社長が計4講演を
色 数
4
Seminar 2015」を開催した。同セミナーは12回目。今回は「先端医療とIT活用:現状と将来展望∼ ITによる医療への貢
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医療ITの権威と練達のシステム担当者が
ゲノムオミックス医療やESB、DWH等、
ITの先端医療への貢献と将来展望を語る
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インターシステムズジャパンは、10月22日、東京コンファレンスセンター・品川にて「InterSystems in Healthcare
月刊新医療2016年1月号
InterSystems in Healthcare Seminar 2015
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めには生涯継続的な健康状態の日常的セ
て地域医療連携システムの普及が進み、
これまで取り組んできた地域医療連携
が広域化することで、長い間出来なかっ
本では地域医療再生基金の活用等によっ
15
パラダイム変換が起きています。そのた
件 に 上 る﹁ National Clinical Database
︵症例データベース︶
﹂は存在しますが、
た日本版EHRも可能になるのではない
これからの生命・医療情報のITは、
精密医学、生涯健康モニタによって個別
年では168もの地域医療連携が行わ
化し、そしてビッグデータを活用して知
ンシングが欠かせません。そこで、健康
これらの連携に対して、私は共通ミニ
マム情報と共通IDがあれば各地の地域
識化され、さらに全国医療連携とEHR
でしょうか。
医療連携をつなぎ、日本版EHRの実現
の進展によって広域化していくでしょう。
れるようになりました。
につながるのではと期待しています。安
ゲノムオミックス情報に関してはこれか
情報や医療情報の一体化・一元管理に向
け、モバイルシステムを活用して健康・
医療サービスをシームレスに連携する世
倍内閣も、 年までに400床以上の中
そして、その変革の胎動はもう既に始ま
20
らです。
私たちが取り組んでいる東北メディカ
ル・メガバンク事業がまさにその1つで
す。欧米では、ゲノム医療の進展に伴い、
﹂が注目されている
界である﹁ mHealth
のです。
核病院の %に電子カルテを導入する、
っていると私は考えています。
18 90
人々のゲノム情報を集積する﹁バイオバ
ンク﹂の取り組みが盛んですが、東北メ
ディカル・メガバンクでは3世代コホー
あるいは 年までに地域医療連携を全国
患者参加型の医療にとって重要な
ことは「医師と患者は互いに大切な
パートナーである」ことです。Tom
Ferguson医 師(1943 ∼ 2006年 )
は「医師は患者に指示するのではな
く、患者との情報共有を促進しつつ、
患者の治癒努力に自ら参加すべき」
と述べています。このような患者参
加型医療を実現するために医療ITに
求められているものは何かと言うと、
単に患者情報を共有するシステムや
患者ポータルの構築だけではありま
せん。例えば、患者総数1000 万人
以上、参画医療機関総数150 以上
という米国ニューヨーク州最大の地
域医療情報交換組織Healthix(ヘル
シックス)では、当社のHealthShare
を使用した情報ネットワークが構築
されており、医療情報交換、診療情
報へのアクセスや、ケア・コーディ
ネーションに貢献しているのです。
患者参加型医療のための情報共有
を実現するには、医療に関わる全て
の組織や人との情報連携インフラ、
あらゆる医療・健康データにアクセ
スできる情報基盤は欠かせません。
インターシステムズは、医療情報シ
ステムに革新をもたらす「戦略的相
互運用性」に優れたシステム連携基
盤により、医療機関、医療従事者に
おける医療情報共有にこれからも貢
献していきたいと考えています。
で展開するという目標を掲げています。
今回のセミナーの大きなテーマは
「先端医療とIT活用」ですが、まず
当社のシステムを活用した患者情報
共有基盤に関する海外での取り組み
をいくつか紹介します。
始めに、米国Kaiser Permanente
の例を紹介します。Kaiser Permanenteは、保険部門と医療部門の
両方を持つ事業体で会員数約1000
万人、9つの州に数十の病院を有
しています。また、Massachusetts
General Hospital(MGH)では、ゲ
ノム医療を推進しており、MGH統
合診断センターでは当社のシステム
「HealthShare」ががん治療のワー
クフローを最適化し、新たな知見を
得ることに貢献しています。
このような患者情報共有基盤は
「Knowledge Platform for Learning
Health System(学習する医療シ
ステムのためのノレッジ・プラット
フォーム)
」と呼ばれ、膨大な患者
情報を収集、分析して評価し、新し
い治験や研究に活用されるサイクル
を確立しています。これらのシステ
ムに、当社の提供するソフトウェア
が活用されているのです。
もう1つのテーマである「患者参
加型医療」とは、
“医療の向上と健
康増進のためには、患者自身が自分
の治療・健康管理に積極的に関与す
る医療”のことです。
最後にEHRについてお話します。日
植松 裕史氏
地域医療連携の広域化で
EHR実現へ
インターシステムズジャパン株式会社
代表取締役社長
ト、住民コホートを合わせて計 万人分
の情報を集積しています。そのうち被験
者の全ゲノム配列まで読んでいるのは1
万人程度ですが、環境情報や生活習慣、
血液等に関する情報も十分に収集し、両
者の相互作用の解析から、疾患発症予防
や創薬の分野等での利活用が期待されて
います。
﹁ mHealth
﹂で
パラダイム変換を起こす
現在、医療ビッグデータ第2の流れと
、すな
して注目されているのが mHealth
わちモバイルヘルスです。
先述したとおり、ゲノム医療は Precis
に 向 い つ つ あ り ま す。 そ
ion Medicine
こでは、ITが重要な役割を果たします。
結果、その進展に伴い、従前行われてき
た病気になってから医療を行うという
︵対応的︶で Occational
︵機会
Reactive
︵予
的︶な医療・ケアから、 Proactive
︵ 生 涯 的 ︶ な 医 療・
見 的 ︶ で Life-long
ケアという、生涯型医療・先制医療への
患者情報共有基盤の
構築と患者参加型医療
の仕組み作り
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あります。こうした課題の解決に対して
ステム構築だけでは解決できない課題も
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続する都度、接続費用が発生していまし
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事業関連のフィールドで医療ソリューシ
技術をサポートし、コードを書かずにメ
最先端の医療ITシステム&ソリューションを一堂に展示
12595380
﹂を活用
の﹁ InterSystems Ensemble
したESBの提案を行っています。
﹂の
こ の﹁ InterSystems Ensemble
採用によって情報連携統合基盤の接続と、
そのデータ可視化・データロギングが可
能となります。これにより、システム障
害などのトラブルに際し、ログを参照す
ることで、障害発生個所が明確化される
ので、障害解決支援になります。また、
ョンのほかに文教ソリューション、ビジ
で対応が可能になるこ
たが、 Ensemble
とで、開発期間の短縮・開発コストの低
ッセージ連携を実現するなど、一般的な
は﹃共に解決できるパートナーを見つけ
◆インターシステムズジャパン株式会社
医療情報プラットフォーム
「InterSystems HealthShare」
新たにシステムを接続してデータ転送を
ではデータ
実施したい場合、 Ensemble
転送のあて先を追加するだけで対応可能
京セラ丸善システムインテグレーショ
ン社とは、書籍販売で著名な丸善と京セ
ネスソリューションなど多岐にわたって
となります。かつては、新システムを接
ラコミュニケーションシステムからの出
減につながっているのです。
いた事案も、内容によっては Ensemble
と部門システムベンダのみで対応する事
も可能になっています。当社は、これら
のメリットをご説明していった結果、自
クライアント・サーバー型アプリケーシ
ています。
そのようなときにお役に立てればと考え
られるか﹄がカギとなります。当社が、
当社においては、インターシステムズ
すものです。
ョン間の通信に敏捷性と柔軟性をもたら
We bサービスやFTPなど、各種転送
︶を含めたアプ
治体主導のある地域医療連携ネットワー
Oriented Architecture
﹂を採用して頂きました。
リケーション間の通信を実現するために
クに﹁ Ensemble
使用される構築モデル・基盤の総称です。
ただし、実際の連携システム構築では、
ヒューマンネットワークの問題など、シ
ジ ン の こ と で あ り、 S O A︵ Service
さらに、これまで電子カルテシステム
ベンダや部門システムベンダに依頼して
しています。
しており、従業員数は369名、ICT
今日は、当社によるESB、SOA基
盤構築についてお話します。
ICTを活用するサービスを提案、提供
医療における
SOA基盤構築の
最前線
資を受け、2004年4月より活動して
先端医療とIT活用:現状と将来展望
いる企業です。国内 か所に拠点を展開
今井将洋氏
︶とは、
ESB︵ Enterprise service bus
データ交換処理するメッセージングエン
地域連携接続による Ensemble 導入効果。
① DMZ への出力対応や②仕様変更時への対応、③メッセージ可視化と
アラート通知が可能などのメリットがある
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講演会場には約 200 名の関係者が来場。イン
ターシステムズのソフトウェアを利用した医療用
ソフトウェアが多く出展された展示会場にも多
数の来場者が訪れ、活況を呈した
◆株式会社メイン
次世代地域医療データバンク
◆株式会社ゼクト
人間ドックデータ管理・業務効率化システム
「Medical Dock Navigator Z feat.BEACON」
◆株式会社ミトラ
周産期電子カルテシステム
「ハローベイビープログラム」
◆セーレン株式会社
医療情報システム「NEW CureLa シリーズ」
「HAPPY ACTIS-ERD」
◆京セラ丸善システムインテグレーション株式会社
院内連携・地域連携システム「Ensemble」
◆東芝メディカルシステムズ株式会社
病院向け歯科電子カルテシステム
◆株式会社 医用工学研究所
医療用データウェアハウス「CLISTA!」
京セラ丸善システムインテグレーション株式会社
医療販売推進部 地域連携ソリューショングループ
医療情報技師
月刊新医療2016年1月号
InterSystems in Healthcare Seminar 2015
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豊橋市民病院は愛知県にある診療科数
科、病床数820床の大規模病院です。
愛知県の東三河全域と、静岡県の浜名湖
以西、湖西地域を医療圏としており、約
ム管理グループは、システムの保守管理
やセキュリティ対策、ホームページの管
理・運営などの業務を担っています。
DWH運用には
万人の地域住民を支える中核病院です。
人材育成が不可欠
私の所属する医療情報課は2004年に
発足し、事務職員5名でスタートしまし
行しています。当院のDWHシステムは、
私たちの企画推進グループでは、DW
Hシステムをフル活用して毎日業務を遂
の企画と運営と管理であり、情報システ
インターシステムズ社のデータベースエ
しました。同システムが稼働し、5年が
が詰め込まれており、これにより、症例
院情報システムから送られた各種データ
﹂を使
る 医 用 工 学 研 究 所 の﹁ CLISTA!
用しています。DWHシステムには、病
︵ キャシエ ︶
﹂を 搭 載 す
ンジン﹁ Caché
経過しましたが、その間、医療情報課の
当院では、 年に電子カルテを中心と
した病院総合情報システムが稼働を開始
ムに特化した部署でした。
た。当時の役務は医療総合情報システム
原瀬正敏氏
体制は大きく変わりました。 年からは、
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立案やデータの利活用、がん登録などの
画推進グループでは、システムの企画・
制に移行しました。私が在籍している企
その業務変化に対応すべく、2グループ
れています。
や集計業務、資料作成に積極的に利用さ
他、病院運営・経営のためのデータ抽出
検討やカンファレンスなど診療や研究の
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データ利活用の問題点として、例えば膵
癌の患者さんのデータが欲しいという依
頼があった際、医事会計システムと電子
ども検索されてしまい、検索数が増加す
子カルテ上の病名検索で〝膵癌疑い〟な
該事例が出来するのかというと、まず電
されなかったケースもあります。なぜ当
カルテで入力したはずの患者さんが検索
まうのです。一方で依頼した医師が電子
よりもはるかに多い患者が検索されてし
モデリングをして、それを可視化できる
ること。それからデータのマッピング、
えます。まずデータの抽出や分析ができ
それでは、サポートに何が必要かを考
えると、私は3つのプロセスが重要と考
になってほしいと要求されたのです。
て、病院の意思決定におけるサポート役
ではない﹂と明確に言われました。そし
病院上層部の人たちから
﹁医
私たちは、
療情報部門への要求はシステム構築だけ
データサイエンスチームの
形成が必要
るからであり、加えて検索されなかった
カルテで〝膵癌〟で検索すると、思った
理 由 は、
〝 膵 頭 部 癌 〟 や〝 膵 体 部 癌 〟
、
を実行できるスタッフが、医療情報部門
として、病院に必要ではないでしょうか。
ことです。そして、この3つのプロセス
〟といった複数の病
〝 pancreatic cancer
名で入力されているケースがあるからで
した。
ります。
ですから、
DWHを使うためには、
こと。さらにデータ活用・分析の知識が
さらに医療情報の仕組みを理解している
この3プロセスを実行できる人材とは、
まず医療の仕組みを理解していること。
DWHの運用に精通したヒューマンリソ
深いことです。このような人材はなかな
DWHシステムの導入にはデータの格
納・利用方法も含めて検討する必要があ
ースを育成しなければならないのです。
かいないでしょう。ですから、今後は、
医療情報を扱う我々は、人材育成に注力
しなければならないと感じています。
私は、今後各病院にデータのサイエン
スチームを形成することが必要になって
くると考えています。経営層に対して3
つの職種、すなわち新しい知見や有益な
情報を生み出すサイエンティスト、デー
タを整理、モデリングするデータマネー
ジャー、得られたデータ等を分析するア
ナリストの育成を、医療情報部として提
案としていきたいと思っています。
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豊橋市民病院
企画情報グループ 主査
しかし、DWHは万能ではありません。
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豊橋市民病院から見た
医療情報部門の
今後の役割とは
業務を行っています。もう1つのシステ
病院の意思決定をサポートする医療情報部門には3つの
プロセスを実行できる人材が必要
[特別講演]
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