連載 モータ・コントロール実験室 静かに 省エネ・ ドライブ

連載
特設サイト http://toragi.cqpub.co.jp/tabid/684/Default.aspx
力強く回したり,一気に
加速したり,ピタリと止めたり
静か
省エ に
ドラ ネ・
イブ
!
モータ・コントロール実験室
∼ベクトル制御編∼
第 10 回 ループ・ゲインの周波数特性に手を入れて
サーボ・システムを安定化する
渡辺 健芳
3 帰還回路
1 サーボ・
コント 2 制御対象
ローラ
(プラント)
−
Ver
加算器
誤差
A1
A2
0
周波数[Hz]
Vout
出力
A =A 1 A 2
サーボ・コントローラ
を設計する
3 帰還率βの
ゲイン特性
(β=1の場合)
ゲイン[dB]
Vin +
2 プラントの
ゲイン特性
1 コントローラの
ゲイン特性
ゲイン[dB]
指令入力
β
図 1 サーボ・システムの安定性は①サーボ・コントローラと②
プラントと③帰還回路の周波数特性で決まる
手を入れることができるのはサーボ・コントローラの周波数特性だけ
ベクトル制御とは,サーボしつつ電力効率やトルク
効率を上げる技術です.ベクトル制御をするには,次
の条件を満たすサーボ・システムが設計されているこ
とが前提です.
●
出力値が指令値と一致してサーボ効果が得られる
●
指令値や動作条件の変化に安定して追従する
前回は,上記二つの条件を満たしているかを,ステ
ップ応答,ボーデ線図,ナイキスト線図,ニコルス線
図の四つのツールで判断する方法を解説しました.
今回から 2 回に分けて,安定したサーボ・システム
にするために,周波数特性をどう作り込むのかを解説
します.周波数特性は,周波数の素となる部品のよう
なもの
(伝達要素と呼ばれる)を組み合わせて作ってい
きます.今回は,周波数特性の作り込みに使う 8 種類
の周波数の素について解説します.
コントローラ部の周波数特性を
積極的に調節する
● ①サーボ・コントローラ,②プラント,③帰還率
設計対象となる一般的なサーボ・システムのモデル
を図 1 に示します.次の三つから構成されます.
162
0
周波数[Hz]
I
ループ・ゲインGL
のゲイン特性
1+ 2+ 3
D
P
0
ゲイン[dB]
βVout
ゲイン[dB]
Takeyoshi Watanabe
0
周波数[Hz]
周波数[Hz]
図 2 コントローラとプラントと帰還率の各ゲインを足し合わせ
たものが,ループ・ゲインG L の周波数特性になる
① サーボ・コントローラ(以下,コントローラ)
A1
② プラントA 2
③ 帰還回路 β
この三つの回路は直列に結合されています.つまり,
図 2 に示すように,①と②と③のゲインと位相を足し
合わせたものが,サーボ・システムのループ・ゲイン
GL の周波数特性になります.サーボ・システムが十
分なサーボ効果と安定性を得られる条件を満たすよう
に,ループ・ゲイン G L の大きさ(ゲイン)と位相の周
波数特性に手を入れます.
第 1 回 制御前の準備① モータの事を知る
第 2 回 制御前の準備② ホール IC の実装位置を正確に知る
第 3 回 制御方法の基礎知識① 電力効率とトルク効率の一挙両得
2015 年 1 月号