2015 NEW YEAR TALK - 防衛技術協会

2015 NEWYEAR TALK
一般財団法人 防衛技術協会 理事長
高岡 力
読者の皆様、昨年は本誌をご愛読頂き大変有
難う御座いました。本年も引き続きご愛顧をお
願いしますとともに、協会を代表して、心より
新年のご挨拶を申し上げます。
昨年は防衛の世界にとり大きな変化の年であ
りました。武器輸出三原則に替わり、装備品移
転三原則が制定され、装備技術が従来の自国防
衛の世界だけではなく、政治、経済、外交の世
界にまで役割が拡大してまいりました。世界平
和と民主主義への志を共有する国々に対し、日
本の装備技術を提供したり、共同で開発を行っ
たりすることが求められています。新しい役割
は、新しい努力を必要とします。国際化と、提
供する技術の機微性判断と、それに必要なデュ
アル技術の把握です。
国際化ですが、共同開発国の首相同士の握手
も大事ですが、ユーザーである軍同士の常日頃
の交流、相互の国益を体現する企業同士の交流
があって初めてうまくいきます。米国では軍が
国際技術交流を担っています、またEUでは全
体利益を追求し、国境を越えて技術の共有を進
めています。また国外では一般の自動車ショー
のように、軍事技術に関する各種のカンファレ
ンスやトレードショーが国際交流の場として広
く設定されています。日本はこれらカンファレ
ンスで情報収集することはあっても情報提供す
ることはありませんでした。今後、これらの機
会に官民とも積極参加し交流を深める必要があ
ります。また外国から見れば日本の研究、開発
の市場が開放されたと受け取れるのは当然で
す。日本企業においては国外企業に負けないた
めの更なる体質強化と自ら外へ出る積極性が求
められています。
技術の機微性の判断とは、いかなる技術を提
供するか、いかなる技術は提供しないか、また
相手国ごとの判断基準をどうするかです。それ
らの判断は政治および経済から見るべき側面も
あり、また産業技術の未来予測的な面をももち
ます。わが国の優れた装備技術は多くは民間か
ら派生したものです。航空機構造材の炭素繊維
や電波吸収材が良い例です。これからも材料、通
信、電子機器や生化学の世界で多くの、いわゆ
るデュアルユースの技術が生まれてくるでしょ
う。技術の機微性の判断には、科学技術のみな
らず装備技術の広い理解が必要です。そのため
に国の衆知を集める組織が必要となります。
本年は、防衛省では技術研究本部と装備施設
本部にまたがる改編が予定されております。そ
の改編の中で装備技術の提供にかかわる国際化
への対応と、技術の機微性の判断での新たな役
割分担が明確になってくると考えられます。ま
た従来から技術研究本部では、米国等の諸外国
並みに大学や独立行政法人とデュアルユース技
術を共同で研究する方式が議論されています。
これが実現していけば、デュアルユース技術の
把握と応用に関して諸外国並みの体制が整うこ
ととなるでしょう。
本誌の編集を含め協会の活動の中で、この装
備技術に関わる変革に少しでもお役に立てれば
と考えています。昨年以来、本誌に連載中の
「ニッポンの頭脳集団」では、独立行政法人や民
間会社の研究活動をご紹介してきましたが、今
年はさらに大学を含め広範囲に紹介してまいり
ます。また同じく「技術を窮める」シリーズで
は重要なデュアルユースの技術を紹介してまい
ります。国際化に関しては、本年5月に横浜で
予定される海事安全保障の国際カンファレンス
(MAST)を積極的に支援してまいります。ま
た協会自身、新たな分野で防衛省を支援できる
よう、輸出貿易管理やデュアルユースの理解を
深めてまいります。
皆様のご支援ご鞭撻をお願いし、新年のご挨
拶とさせていただきます。