第2回 若手乱流討論会 企業の流体解析における 乱流の取扱いについて 2014.12.2 川崎重工業株式会社 技術開発本部 技術研究所 川本 英樹 目次 川崎重工における流体解析技術 流体解析における乱流の取扱い 乱流研究への期待 まとめ © 2013 Kawasaki Heavy Industries, Ltd. All Rights Reserved 2 川崎重工における流体解析技術 © 2013 Kawasaki Heavy Industries, Ltd. All Rights Reserved 3 川崎重工の製品群 2013年度 1兆4千億円 ほぼすべての製品に対して流体シミュレーションを適用して高性能化・高信頼性を実現 © 2013 Kawasaki Heavy Industries, Ltd. All Rights Reserved 4 流体シミュレーションの目的 性能の事前評価 →試験の代替、試験できない現象の評価 トラブル発生時の原因究明および対策評価 →性能改善、振動・騒音低減 最適設計への適用 →シミュレーションで流力的に最適な形状を決める →強度等も含めた多目的最適化へ展開 © 2013 Kawasaki Heavy Industries, Ltd. All Rights Reserved 5 適用事例の紹介 © 2013 Kawasaki Heavy Industries, Ltd. All Rights Reserved 6 航空機の事例 XP-1 哨戒機 脚部から発生する空力騒音評価 Ref. 濱田、他:川崎重工技報No.171 防衛省webサイトより 全機解析による空力抵抗評価 Ref. 濱田、他:川崎重工技報No.171 © 2013 Kawasaki Heavy Industries, Ltd. All Rights Reserved 不時着水時の姿勢・衝撃荷重評価 7 高速車両の事例 空力抵抗評価 パンタグラフからの 空力騒音解析 Ref. 越智、他:第51回飛行機シンポジウム 新型高速車両efSET 客室内空調性能評価 窓の揺れ Ref. 秋山、他:川崎重工技報No.170 微気圧波 トンネル 衝撃音 Ref. 秋山、他:川崎重工技報No.160 トンネル微気圧波の評価および先頭形状最適化 © 2013 Kawasaki Heavy Industries, Ltd. All Rights Reserved 8 モーターサイクルの事例 ライダーの快適性 ライダー自身に風が当たる 風防 熱風 車体としての性能 ライダー自身が 重要な空力パーツ 直進だけでなく コーナリングの 空力も重要 © 2013 Kawasaki Heavy Industries, Ltd. All Rights Reserved 小さなエンジンルームに自動車並みの 排気量エンジン → エンジン冷却が重要 9 ガスタービン・ジェットエンジンの事例 ジェットエンジン © 2013 Kawasaki Heavy Industries, Ltd. All Rights Reserved 産業用ガスタービン 10 発電用ガスタービン(L30A) 14stg. Compressor 2stg. GGT (Gas Generator Turbine ) 3stg.PT (Power Turbine) 8-cans Combustor 同出力クラスで世界最高効率を達成! 製品開発に流体解析を活用して 性能向上を実現 © 2013 Kawasaki Heavy Industries, Ltd. All Rights Reserved 11 ガスタービン開発における流体シミュレーションの活用 圧縮機 従来翼 新型翼 多段空力解析による段間マッチング評価 最適設計技術による 高効率翼型設計 燃焼器 タービン 非定常燃焼解析による 低Nox安定燃焼実現 Ref. みんなに役立っているコンピュータ シミュレーション(第3号) © 2013 Kawasaki Heavy Industries, Ltd. All Rights Reserved 流体伝熱連成解析に よる冷却性能評価 12 ジェットエンジンの事例(ギアボックスのヒートマネージメント) • ギアをシュラウド で覆い適切な排出口を設ける • シュラウド設置による損失低減率36%が実験と解析で一致 損失36% 低減 Input gear Output gear Rotation Oil jet べベルギアボックス Ref. Arisawa, et al, ASME Turbo EXPO 2009 シュラウドなし シュラウド形状の最適化 米国機械学会航空エンジン部門最優秀論文賞受賞(2009) © 2013 Kawasaki Heavy Industries, Ltd. All Rights Reserved 13 流体解析における乱流の取扱い © 2013 Kawasaki Heavy Industries, Ltd. All Rights Reserved 14 流体解析コード 最近では商用CFDコードが主流 一部製品(航空機、新幹線、ガスタービン等)では自社開発コ ードも使用 大学との共同研究も © 2013 Kawasaki Heavy Industries, Ltd. All Rights Reserved 15 なぜ乱流解析が必要か? 流体関連製品では、ほとんどがレイノルズ数が106以上 →流体解析において乱流の考慮が必要 乱流の影響をモデルによって考慮する © 2013 Kawasaki Heavy Industries, Ltd. All Rights Reserved 16 乱流モデルの使い分け 定常解析(時間平均的特性の評価):RANSモデル 非定常解析(変動流体力評価、騒音評価等):URANS, DES, ( 粗い)LES, (粗い)DNS © 2013 Kawasaki Heavy Industries, Ltd. All Rights Reserved 17 定常解析用乱流モデル(RANSモデル) 航空機:Spalart-Allmarasモデル ターボ機械:Spalart-Allmarasモデル k-ω SSTモデル その他:k-ε モデル k-ω SSTモデル 低Re数型モデル、高Re数型モデル(壁関数使用) © 2013 Kawasaki Heavy Industries, Ltd. All Rights Reserved 18 高Re数型乱流モデル 壁面近傍の第1格子点を対数領域に配置し、壁関数を使用 格子数を大幅に削減できる 剥離流の精度が悪い Ref. 竹光,生産研究42巻1号 © 2013 Kawasaki Heavy Industries, Ltd. All Rights Reserved 19 非定常解析用乱流モデル URANS(k-ω SST, Spalart-Allmaras,他) DES(Spalart-Allmarasモデルベース) RANS/LESハイブリッド(k-ω SSTモデル) 粗いLES(Smagolinskyモデル+Van Driest Wall Damping Function) © 2013 Kawasaki Heavy Industries, Ltd. All Rights Reserved 20 円柱非定常解析の例(Re=104) St数はすべて同じ CLrmsは異なる(DNS > DES > URANS) 粗いDNS © 2013 Kawasaki Heavy Industries, Ltd. All Rights Reserved DES URANS 21 製品に応じた乱流モデルの使い分け および現状の課題 © 2013 Kawasaki Heavy Industries, Ltd. All Rights Reserved 22 航空機 航空機では揚力・抗力を正確に予測することが重要 抵抗の大部分が摩擦抵抗のため、乱流境界層の正確な予測 が重要 翼の失速特性評価も重要 乱流遷移の影響も大きい 遷音速域では衝撃波および衝撃波と境界層の干渉も重要 RANSモデルによる定常解析が中心だが、非定常解析も拡大 中 © 2013 Kawasaki Heavy Industries, Ltd. All Rights Reserved 23 翼胴形態の抵抗解析 AIAA 3rd Drag Prediction Workshop © 2013 Kawasaki Heavy Industries, Ltd. All Rights Reserved 24 翼胴形態の抵抗解析 Star-ccm+での解析結果例 Ref. Validation of Star-ccm+ for External Aerodynamics in the Aerospace Industry 剥離のない流れ場では、RANSモデルでかなりの精度で抵抗予測が可能 © 2013 Kawasaki Heavy Industries, Ltd. All Rights Reserved 25 翼型の失速特性 JP. Thomas and EH. Dowell, AIAA 2011-2077 © 2013 Kawasaki Heavy Industries, Ltd. All Rights Reserved 26 翼型の失速特性(乱流遷移の影響) Baldwin-Lomaxモデルで遷移位置を調整した例 蓮池、他,航空宇宙技術研究所特別資料第46号 © 2013 Kawasaki Heavy Industries, Ltd. All Rights Reserved 27 翼型の失速特性(乱流遷移の影響) Baldwin-Lomaxモデルで遷移位置を調整した例 蓮池、他,航空宇宙技術研究所特別資料第46号 © 2013 Kawasaki Heavy Industries, Ltd. All Rights Reserved 28 高速車両 走行時の空力抵抗評価には定常RANS解析 空力騒音、空力動揺などの評価のために非定常解析が必要 © 2013 Kawasaki Heavy Industries, Ltd. All Rights Reserved 29 トンネル内空力動揺 後尾車両や併結部車両がトンネル内で空力的な要因により動 揺することがある 動揺防止装置により対策 梶谷、他,JR EAST Technical Review No.31 © 2013 Kawasaki Heavy Industries, Ltd. All Rights Reserved 30 船舶 船体抵抗を正確に予測するためには摩擦抵抗の高精度な評 価が重要 3次元ねじれ境界層のProfileも含めて、乱流境界層の再現が 重要 プロペラ推進性能を高精度で評価するためには伴流分布の高 精度な予測が重要 © 2013 Kawasaki Heavy Industries, Ltd. All Rights Reserved 31 伴流分布 CFD Workshop Tokyo 2005 日野、他,海上技術安全研究所 第5回研究発表会講演集 伴流分布は乱流モデルによって大きく異なる © 2013 Kawasaki Heavy Industries, Ltd. All Rights Reserved 32 伴流分布(格子の影響) 同じ船型、同じCFDコード、同じ乱流モデルでも格子を変える だけで伴流分布が大きく変わる 格子B © 2013 Kawasaki Heavy Industries, Ltd. All Rights Reserved 格子A 33 船舶 西川,「イノベーション基盤ソフトウエアの研究開発」最終成果報告会 講演集 すばらしい成果! ↓ この結果を用いた新たな乱流モデルに期待 © 2013 Kawasaki Heavy Industries, Ltd. All Rights Reserved 34 ターボ機械 翼面、ケーシング面での境界層の発達、2次流れの予測 チップクリアランスからの漏れ流れ、馬蹄渦 非定格点(大規模な剥離を伴う) 遷音速作動(衝撃波) Ref. 特開2006-112437 © 2013 Kawasaki Heavy Industries, Ltd. All Rights Reserved 35 定常解析 多段圧縮機の定常解析 RANSモデル(Spalart-Allmarasモデル)使用 T. Ikeguchi, et al, ASME GT2012-68524 © 2013 Kawasaki Heavy Industries, Ltd. All Rights Reserved 36 非定常解析 京コンピュータを用いて多段圧縮機全周非定常解析を実施中 (九州大学との共同研究) DES(k-ω モデルベース) Ref. Yamada, et al, ASME Turbo EXPO 2013 © 2013 Kawasaki Heavy Industries, Ltd. All Rights Reserved 37 乱流研究への期待 © 2013 Kawasaki Heavy Industries, Ltd. All Rights Reserved 38 企業の乱流解析で必要なこと 短時間で高精度な結果を得ること より高精度なRANSモデルが必要(特に3次元的な境界層発達 および剥離流れの精度が重要) 計算負荷の低い非定常解析用乱流モデルが必要(URANS? DESモデルの改良?粗い格子でも精度のよいLESモデル?) © 2013 Kawasaki Heavy Industries, Ltd. All Rights Reserved 39 乱流特性の制御ができれば・・・ 乱流遷移を制御して抵抗低減 渦スケールをコントロールして周波数をずらす? 渦の発生を動的にコントロールして性能向上?(ダイナミックリ フトとか?) その他 © 2013 Kawasaki Heavy Industries, Ltd. All Rights Reserved 40 企業の立場から乱流研究への期待 DNS, LES研究の成果を反映して、RANSモデルをもっと改良し てほしい(近年はRANSモデルの研究が停滞しているのでは? ) もっと計算負荷の小さい非定常乱流解析のできる手法を開発し てほしい 乱流遷移を含めて現象再現できる乱流モデルを開発してほし い 壁面粗度影響を適切に考慮できる乱流モデルを開発してほし い © 2013 Kawasaki Heavy Industries, Ltd. All Rights Reserved 41 まとめ © 2013 Kawasaki Heavy Industries, Ltd. All Rights Reserved 42 まとめ 流体解析は、製品の性能向上に大きく貢献する欠かすことの できない技術の一つである 流体解析は既に設計・開発に多用されているが、解析結果に ついては、実機試験・要素試験などによる検証を行い、設計精 度の向上に努めている より高精度な解析結果を得るために、乱流現象の適切な考慮 が重要 製品設計・開発 実験 数値流体解析 流体力学 © 2013 Kawasaki Heavy Industries, Ltd. All Rights Reserved 43 © 2013 Kawasaki Heavy Industries, Ltd. All Rights Reserved 44
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