Citrix NetScalerによる仮想化されたマルチテナント型データ - シトリックス

Citrix NetScaler ∣ ホワイトペーパー
Citrix NetScaler の仮想マルチ
テナントデータセンター機能
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エグゼクティブサマリ
次世代データセンター設計への仮想化技術の影響は多大なものがあります。
仮想化技術によって、デリバリーインフラストラクチャーをコンピューティ
ング資産から解放し、コンピューティング環境のあらゆる主要コンポーネン
ト で マ ル チ テ ナ ン ト 性 を 実 現 す る こ と で 、 IaaS ( Infrastructure-as-aService)プラットフォームの開発が可能になります。言い換えれば、サー
バー、ストレージ、ネットワークといった、データセンターの多くのリソー
スで仮想化ソリューションを利⽤できるようにすることで、今日の企業組織
のデータセンターをプライベートクラウドに着実に変貌させる道が開かれる
といってもよいでしょう。
技術的な観点から⾒ると、このことには専⽤のハードウェアや特殊なシステ
ムをなるべく使わずに、すべてのテナント(アプリケーション、事業部門、
運⽤チーム、そしてサービス提供事業者の場合は顧客)のコンピューティン
グ要件を満たせるようになるというメリットがあります。また、ビジネスの
視点から⾒れば、業務に必要なコンピューティングサービスの性能と信頼性、
そして絶えず変化していく事業状況への即応性と適応能⼒を大幅に⾼めなが
ら、データセンターを今まで以上に簡素化し、インフラストラクチャーの整
理統合と TCO 削減を進められるという効果があります。しかし、サーバーリ
ソース、ストレージリソース、ネットワークリソースだけでなく、ネット
ワークセキュリティやアプリケーション配信の基本コンポーネントでも仮想
化技術を利⽤できなければ、これらのメリットを最大限に⾼めることはでき
ません。
この文書では、仮想化技術によってデータセンターの設計がどう変化してい
くかを説明します。また、Citrix® NetScaler® 製品シリーズの ADC(アプリ
ケーションデリバリーコントローラー)には、複数の物理的および仮想的な
配備方式があることから、サーバーの負荷分散といったデータセンターに必
須のサービスでも関連機能の利⽤とメリットの活⽤を可能にする点で、シト
リックスの製品にいかに先進性があるかについても述べます。
データセンターを変える仮想化
技術
仮想化の価値は、主に次の 2 つの中核機能から生まれます。
1. 抽象化。上位層のサービスを、その配信に使われる下位層のリソースから
切り離すことで、柔軟でポータブルな配備を可能にします。
2. マルチテナント性。1 つのリソースを複数の利⽤元から同時に利⽤できる
ようにすることで、リソースのより効率的な利⽤と整理統合を実現します。
たとえば、サーバーを仮想化したとき、仮想サーバー上で複数のゲストオペ
レーティングシステムの実⾏や、仮想サーバーを他の物理サーバーへと移⾏
することを実現できるのは、抽象化機能のおかげです。また、1 台の物理
サーバー上で複数の仮想サーバーを同時に実⾏できるのは、マルチテナント
性があるからこそです。
いずれにしても、データセンター構築時に、今日の企業組織に次のような魅
⼒的な選択肢が豊富に提供されるのは、さまざまな技術や関連ソリューショ
ンに、この 2 つの機能のどちらか一方または両方が備わっているからといえ
ます。
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サーバー/コンピューティングインフラストラクチャーの場合:
• サーバー仮想化によって、より徹底的な整理統合を実現できます。強
⼒な分離機能とリソース分配機能によって、別々のテナントの作業負
荷を、同じ物理サーバー上で安全に、かつ効果的に実⾏できるからで
す。
• 先進のサーバー仮想化ソリューションであれば、サーバーリソースの
仮想的なプールを使って、⾼可⽤性、災害復旧、作業負荷の自動ス
ケーリングのためのエンタープライズ級のサービスを効率よく実現で
きます。そのため、データセンターのインフラストラクチャーをさら
に簡素化することができます。
• 仮想化技術とサーバーモジュール、スイッチモジュール、ストレージ
モジュールを組み合わせた、統一された(またはモジュール式の)コ
ンピューティングプラットフォームを使⽤することで、別の方式のア
クセス層の設計を可能にし、別のレベルの物理的整理統合を実現でき
ます。
ストレージインフラストラクチャーの場合:
• SAN(ストレージエリアネットワーク)ソリューションを利⽤するこ
とで、専⽤のディスクやDAS(直接接続ストレージ)を使う必要性を
なくすことができます。
• 統合通信ファブリックによってLANデータプロトコルとストレージプ
ロトコルの集約化を実現することで、ストレージ⽤に完全に別のネッ
トワークインフラストラクチャー機材(アダプタ、通信リンク、およ
びスイッチ)を使う必要性を低下させることができます。
ネットワークインフラストラクチャーの場合:
• VM(仮想マシン)として、またはハイパーバイザーと一体化したコン
ポーネントとして動作するソフトウェアアクセススイッチを利⽤する
ことで、伝統的な3階層構成のネットワークのうちのアクセス層を、
(少なくとも物理的には)完全に廃止できるようになります(図1:
伝統的な3階層データセンターネットワークの物理構成図を参照)。
• STP(スパニングツリープロトコル)の代わりになるものとして、
CiscoのvPC(仮想ポートチャネル)やIETF-TRILLなどを利⽤するこ
とで、スケーラビリティの⾼いレイヤ3ネットワークから、⾼度に仮
想化されたコンピューティングインフラストラクチャーの性能要件を
満たすのにより適した、スケーラビリティの⾼いレイヤ2ネットワー
クへの移⾏を実現できます。⾼性能なノンブロッキングスイッチも併
⽤すると、独⽴した集約層のない「よりフラット」なデータセンター
も設計可能になります。
• コア層のスイッチングプラットフォームで仮想デバイスインスタンス
を利⽤できるため、垂直統合と⽔平統合の両方を実現できます。垂直
統合とは、集約層の物理スイッチを、コアスイッチ上で動作する仮想
インスタンスに置き換えることを指します。垂直統合の代わりに、ま
たはそれと同時に、⽔平統合も⾏うことができます。⽔平統合とは、
テスト/開発のために、または新しく買収した事業部門をサポートする
ために、あるいは売却予定の事業部門を切り離すためにといった、さ
まざまな目的でコア層とパラレルに運⽤されるスイッチを、コア層の
スイッチングプラットフォームの中に「吸収」することを指します。
• 物理的整理統合と簡素化によって、従来の物理的境界がなくなったと
しても、VLAN、VPN、仮想ルーティングテーブルといった、レイヤ2
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およびレイヤ3レベルのさまざまな技術を使って、テナントの独⽴性
やテナントの個別の取り扱いを論理的に維持することができます。
ここで取り上げたものは、利⽤できる仮想化技術と考えられる実装方式のほ
んの一部にすぎません。あり得る順列と組み合わせ、そしてその結果として
の物理/論理構成は、実際には無限にあります。組織によってニーズがそれぞ
れ異なるという事実もあわせて考えると、まったく同じ設計のデータセン
ターは 2 つとないと言ってよいでしょう。そのため、将来的には ADC を含め
て、どのデータセンターソリューションにも、しっかりとした仮想化テクノ
ロジ群によって実現される、それ相応の柔軟性が必要になります。さもなけ
れば、このレベルの柔軟性を持つ競合ソリューションに対して不利になるリ
スクが残ります。
⾼度に仮想化されたデータセンターの
メリット
データセンター仮想化の「なぜ」、「どのように」をより詳しく⾒てみると、
ほとんどの組織では、一部のテナントに対して、仮想化技術を部分的に実装
することから着手しています。戦術面では、このことには物理的専有面積を
減らすことができる、電⼒、冷却、空間のようなデータセンターのリソース
と装置コストを節約できるという大きな利点があります。さらに、アプリ
ケーションの性能、信頼性、ユーザーエクスペリエンス、そして IT の運⽤効
率が向上するというメリットもあります。
しかし、最終的な目標は、これらの部分的な仮想化の拡張・統合・編成を⾏
い、フル機能版のプライベートクラウドを実現することにあります。なぜな
ら、そうした方がメリットを組み合わせて、効果を最大限に⾼めることがで
きるからです。たとえば、データセンターを⾼度に仮想化することには、次
のようなメリットがあります。
• 組織としての強固さを犠牲にしたり、似たようなテナントを特定の物
理的位置に集めたりしなくても、統合の恩恵を最大限に⾼めることが
できます。
• テナントごとの要件に基づいてではなく、総体的にリソースの規模を
調整できるため、ハードウェアとその関連費⽤をさらに節減できます。
• どの物理コンポーネント群でも、事実上あらゆるテナントのニーズに
オンデマンドで応じられるため、ITの運⽤効率が向上し、変化してい
く事業状況に対する優れた即応性を実現できます。それと同時に、比
類のない適応能⼒により、既存の投資を無駄にすることもなくなりま
す。
データセンターの他のサービスの仮想化の
必要性
実現される魅⼒的なメリットを考えると、データセンターをプライベート
(またはハイブリッド)クラウドに変貌させるために、ほとんどの組織が前
述の多彩な仮想化技術を採⽤するようになることは確実でしょう。しかし、
データセンター仮想化のパズルには、まだもう 1 つの重要なピースが残って
います。つまり、単にサーバー、ストレージ、ネットワークインフラストラ
クチャーだけでなく、それ以外のものでも、仮想化によって実現される配備
の柔軟性とマルチテナント性の機能を利⽤できなければなりません。本当に
最⾼のメリットを実現するためには、データセンターインフラストラク
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チャーの他の主要コンポーネント(ADC など、さらに、この文書では取り上
げませんが、ファイアウォールや侵入防止システムのようなネットワークセ
キュリティ機器)にも、同様の機能が必要です。これらの機能の量と多彩さ、
そして多種多様なフォームファクタのサポートにより、ソリューション群が
幅広いデータセンター設計に完全に対応できることも大切です。
NetScaler による、データセン
ター設計の新トレンドの卓越し
たサポート
Citrix NetScaler は、完全に統合化されたオールインワンタイプの Web ADC
です。DMZ やデータセンターの中に置かれた Web サーバーの前面に配備す
ることで、⾼度な L4〜L7 負荷分散とトラフィック管理によるアプリケー
ションの可⽤性の最適化を、そして統合されたアプリケーションファイア
ウォールによるセキュリティの強化を、さらに Web サーバーの効率向上によ
るコストの大幅削減を実現できます。
NetScaler の仮想化とマルチテナント機能
データセンターの⾼度な仮想化、そしてその結果として避けられないデータ
センター設計の多様化。シトリックスはこの 2 つのトレンドを受けて、仮想
化のための、そしてマルチテナント性の要件をサポートするための、次の 3
つの強⼒な機能を提供し、ADC 市場をリードしています。
NetScaler トラフィックドメイン。NetScaler には、かなり以前から、負荷分
散、トラフィック管理などのアプリケーションデリバリー機能のポリシー
セットごとに、別々の VIP(仮想 IP アドレス)を割り振れるというマルチテ
ナント指向の機能があります。トラフィックドメインは、この共通機能に基
づいています。具体的な仕組みとしては、複数のテナントがサポートされる
ADC で、まず外部ゲートウェイに送られ、アクセス制御ポリシーや宛先ドメ
イン⽤のその他のセキュリティ機能(マルウェア対策システムや侵入防止シ
ステムなど)によってフィルタリングされるもの以外の通信トラフィックが、
他のテナントのドメインの中に入り込めないようにします。機能の点では、
Cisco の VRF(Virtual Routing and Forwarding)によって実現できるものに
似ていますが、仮想ルーティングテーブルの代わりに、L2、L3 レベルの各種
の属性に基づいて発動するポリシーを使って、トラフィックを区分けするこ
とに違いがあります。動的なルーティングを⾏うことができ、ドメインごと
に静的なルートを作成/維持する必要のない手法です。
NetScaler VPX。仮想アプライアンス版の NetScaler です。仮想化 ADC とマ
ルチテナントデータセンター設計の分野におけるシトリックスのリーダー
シップを体現したソリューションであり、他の多くの仮想アプライアンス製
品にはない次の特⻑を備えています。
• フル機能。広域負荷分散、アプリケーションファイアウォール、堅牢
なSSL VPNなど、ADCの全機能、全モジュールを備えています。
• ⾼性能。最⾼3Gbpsのスループットレベルが実現されています。
• オープン性。Citrix® XenServer®上だけでなく、Microsoft® Hyper-V™
上やVMware ESX、KVM上でも実⾏することができます。
NetScaler SDX。シトリックスが提供する、もう 1 つの革新的マルチテナン
トソリューションです。NetScaler SDX では、1 台のアプライアンス上で、
完全に分離/独⽴した複数の NetScaler インスタンスを実⾏できるため、複数
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の仮想 ADC を効果的に実現できます。しかし、仮想デバイスの概念の他の実
装と比べたときに特に際⽴つ違いは、分離が完璧なことです。メモリ、CPU
サイクル、SSL カードさえも、「切り分け」て別々の NetScaler インスタン
スにはっきりと割り振ることのできる、割り当て可能なリソースにすること
ができます。実際、NetScaler 処理プラットフォームの「アプリケーション主
体制」を考えると、この完璧な分離という特⻑が極めて重要になります。
たとえば、Cisco の VDC(Virtual Device Context)では、コア層の一部の処
理とそのためのリソースを、複数のスイッチングインスタンス間で共有させ
たままにしておくことができます。これは、作業負荷(この場合は L2/L3 レ
ベルのさまざまなスイッチングアルゴリズム)が、リソース消費の観点から
はどれも似たようなもので、比較的コストがかからないからです。そのため、
レートの制限や制御を適⽤することにより、リソースの共有を効率的に管理
できます。これに対して、ADC では、アプリケーション層のファイアウォー
ルや圧縮など、リソースを多⽤する L7 レベルの作業負荷を大量に実⾏しなけ
ればなりません。これらのリソース集約的な L7 機能では、仮想 ADC ごとに
必要なリソースが大きく変わる可能性があります。しかも、このばらつきは、
処理するトラフィックの量から単純に推測できるものではありません。この
場合に、完璧な分離が必要なのはそのためです。分離が完璧でなければ、あ
るテナントに必要なリソースのために、それと同じ物理システムで実⾏され
ている他のテナントが大きな悪影響を受けてしまう可能性があります。
NetScaler の実装方式
NetScaler では、基本的に物理ハードウェアの選択肢が 2 つあり、NetScaler
アプライアンスと GPH(汎⽤ハードウェア)のどちらも使うことができます。
GPH とは、標準的なサーバーだけでなく、ブレードサーバーや UCS(ユニ
ファイドコンピューティングシステム)までをも含む、広範囲なハードウェ
アを指す⽤語です。上の節で述べた仮想化手法と組み合わせると、仮想マル
チテナントデータセンターに NetScaler ADC 機能を実装するには、基本的に
次の 4 通りの方式があります。
1. 1 台の NetScaler MPX アプライアンス上で 1 つの NetScaler インスタンス
を実⾏する
2. GPH 上で 1 つの NetScaler VPX インスタンスを実⾏する
3. GPH 上で複数の NetScaler VPX インスタンスを実⾏する
4. 1 台 の NetScaler SDX マ ル チ テ ナ ン ト ア プ ラ イ ア ン ス 上 で 複 数 の
NetScaler インスタンスを実⾏する
NetScaler MPX、VPX、SDX のどの実装でも、設定時に NetScaler トラ
フィックドメインを使⽤することで、特定のインスタンスのトラフィックを
さらに区分けすることができます。しかも、そうしたとしても、NetScaler 装
置をペア構成やクラスタ構成にすることによる⾼可⽤性やスケーラビリティ
の実現は妨げられません。このような構成は、単に上記の基本構成を拡張し
たものにすぎないからです。
NetScaler ソリューションには、3 種類の製品のどれでも、使われるバイナリ
が同じだという、もう 1 つの重要な特⻑があります。そのため一貫性が生ま
れ、管理が容易になります。また、構成を移⾏させたり、別々の実装で同じ
構成を使うことが簡単にできるため、柔軟性が生まれ、既存の投資が無駄に
なるのも防ぐことができます。
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実装方式の選択の指針
次に当然持ち上がる問題は、特定のシナリオに最も適した実装方式はどれか
ということでしょう。一般に、実装方式を決定するには、いくつかの要因と
トレードオフの評価が必要です。そのうち、最も重要なのは、それぞれの構
成でどの程度の分離/隔離が実現されるかです。また、複数のテナント間で共
有されているリソースがあるか、その共有がどのように⾏われるかという観
点からの⾒方もあります。具体的な検討項目は次の通りです。
• 障害の分離度。プロセスの障害(または保守のためのシャットダウ
ン)が、他のテナント⽤のサービスの可⽤性に影響するかどうか。
• 機能の分離度。別々のテナントで別々のバージョンのファームウェア
を実⾏できるか。たとえば、新機能を利⽤できるようにするため、あ
るテナントで最新バージョンのアプリケーションファイアウォールが
必要になったときにどうなるか。他のすべてのテナントに対して、最
新バージョンのソフトウェアへのアップグレードを強制しなくても、
そうすることができるか。
• 性能の分離度。あるテナントのリソースの消費が、他のテナントの処
理性能に影響する可能性があるか。それとも、厳格な割り当てを⾏う
ことができるか。前述のように、ADCではアプリケーションファイア
ウォールや圧縮といったL7レベルの作業負荷をサポートする必要があ
るため、このことが特に重要になります。
• データの分離度。あるテナントのデータを別のテナントのデータから
切り離しておけるか。それをどのように⾏えるか。PCI-DSS(支払
カード業界データセキュリティ基準)や、米国連邦政府機関向けの
FISMA(連邦情報セキュリティマネージメント法)のようなプライバ
シーとセキュリティの基準/法令に従う必要のある組織では、このこと
が特に重要です。
• 管理の分離度。別々のテナントの管理機能をどの程度分離および委託
できるか。
違いを明確にするため、トラフィックドメインを考えてみましょう。トラ
フィックドメインそのものには、ネットワーク層のテナントデータを分離す
るという基本的な機能しかありません。しかし、ロールベースの管理やレー
ト制限機能と組み合わせて使⽤すると、妥当なレベルの管理の分離度と、あ
る程度の性能の分離度もそれぞれ実現することができます。これに対して、
NetScaler SDX では、上記の 5 つの分野すべてに対処できるだけでなく、は
るかに⾼レベルの性能の分離度を実現できます。また、専⽤の NetScaler
VPX/MPX インスタンスについても強⼒で、テナントの分離度を最大限に⾼
めることができます。ただし、物理的な整理統合性が犠牲になります。
評価プロセスには、次のようないくつかの技術的要因も関わってきます。
• テナント密度。それぞれのNetScaler SDXアプライアンスには、最大
で80の別々のNetScalerインスタンスを収容できます。これに対して、
トラフィックドメイン機能では、最大で4,000のテナント「分離」が
サポートされます。
• ハードウェアプラットフォーム。汎⽤ハードウェアの方が一般に安価
ですが、NetScaler MPX/SDXアプライアンスには、ハードウェア選択
の問題がない、SSLアクセラレーション機能がある、最⾼150Gbpsの
実績のある性能が提供される、ADCを所有している部門と、その下位
ハードウェアを所有している部門が違うという「所有権分断」の問題
が起きないというメリットがあります。
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• 仮想化の目的とメリット。一般に、仮想化の度合いが⾼いほど、物理
的な整理統合性、TCO削減効果、柔軟性、ポータビリティ、ITの敏捷
性が⾼くなります。
最後に、大局的な事業上の問題も関係してくる可能性があることに注意する
必要があります。この点では、事業の一般的性質(たとえばクラウドサービ
ス提供事業者と製造業者ではニーズが違います)、どの組織モデルが採⽤さ
れているか、買収/合併が起きやすいか、受け入れられるリスクと、データセ
ンターの TCO を削減したいという願望のバランスをどうとるかといったこと
などを検討する必要があります。
仮想マルチテナントデータセン
ターのための NetScaler の実装
シナリオ
⾼度に仮想化されたマルチテナントデータセンター⽤に、NetScaler に多彩な
実装方式があることには、データセンターの最終的な物理/論理構成がどのよ
うなものであっても、それに最も適した実装を選べるという利点があります。
一番の目的は最⾼の柔軟性の実現なので、NetScaler には「これが正しい」と
か、「こうでなければならない」という標準的な配備方法はありません。と
はいっても、いろいろな実装方式をどのように使えば、さまざまなシナリオ
に固有のニーズを満たせるかを示すため、いくつかの構成例を以下に示しま
す。
• 柔軟なテナント性。この構成では、ネットワークのコア部に冗⻑ペア
構成のNetScaler MPXを配置して、幅広く適⽤できるトラフィック管
理 機 能 を 実 ⾏ し ま す 。 そ れ と と も に 、 NetScaler SDX か 専 ⽤ の
NetScaler VPXインスタンスをフロントエンドサーバーの論理的な近
傍で使⽤して、テナントごとのアプリケーションファイアウォールな
ど、大量のコンピューティングが必要な特定目的のサービスを提供し
ます。
• マルチテナントサービス層。この構成は、サービス層(またはゾー
ン)が設定されているデータセンター設計に向いています。ネット
ワークのコア部またはその近くで、NetScaler SDXの複数のインスタ
ンスを稼働させ、全テナントのアプリケーションデリバリーのニーズ
を満たします。通常、この層には、ネットワークファイアウォール、
侵入防止システムなどのコンポーネント(理想的には、それ自身にマ
ルチテナント機能があるもの)も組み込んで、データセンターに欠か
せない、その他のさまざまなサービスを提供します。
• マルチテナント/多階層アプリケーション。この構成は、複数のテナン
ト(通常は事業部門)のそれぞれで、1つ以上の多階層アプリケー
ションが運⽤される環境に向いています。NetScaler SDXを使⽤して、
テナントごとに専⽤のインスタンスを提供し、トラフィックドメイン
を使って(ロールベースの管理やレート制御も併⽤できます)、各テ
ナントのアプリケーションの別々の層に合わせてインスタンスの内部
を論理的に分離します。
• 基本/上級SMB。通常は、法的規制の対象にならず、少数のテナントし
かないSMB(中小企業)のニーズを満たすには、冗⻑ペア構成の
NetScaler MPX(またはNetScaler VPXとGPHの組み合わせ)と、ト
ラフィックドメインを使うだけで十分です。法的規制の対象になり、
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Citrix NetScaler ∣ ホワイトペーパー
かなりの量のSSL処理が必要だったり、事業上の重要性がそれぞれ異
なる、より多数のテナントがあるSMBでは、代わりに冗⻑ペア構成の
NetScaler SDXを使⽤したほうが、性能と分離度を上げられるため適
しています。
特定のシナリオでどの方式を選んだとしても、NetScaler MPX、VPX、SDX
で使われるコード基盤は同じなので、機能は変わらず、組織のニーズが変化
したときに、その変化にたやすく対応できる柔軟性が提供されます。
まとめ
さまざまな仮想化技術と仮想化機能。今日の企業組織はそれを利⽤すること
で、⾼度に仮想化され、マルチテナント性のある次世代のデータセンターを
構築できます。これらのある種のクラウドのような設計には、インフラスト
ラクチャーを大幅に簡素化できる、TCO の削減を⾏える、信頼性、性能、変
化していく事業状況への即応性と適応能⼒を大きく改善できるという特⻑が
あります。
しかし、このようなメリットを最大限に⾼めるには、仮想化によって実現さ
れる配備の柔軟性とマルチテナント性の諸機能を、サーバー、ストレージ、
ネットワークインフラストラクチャーだけでなく、ADC でも利⽤できるよう
にしなければなりません。そのために、シトリックスの NetScaler 製品シ
リーズの ADC ソリューションには、市場をリードする革新的な仮想化/マル
チテナント機能が開発/搭載されています。NetScaler トラフィックドメイン、
NetScaler VPX 仮想アプライアンス、そして NetScaler SDX 仮想デバイスプ
ラットフォームを利⽤することで、企業組織も、そしてサービス提供事業者
も、業務に必要なアプリケーションデリバリーサービスに最適なソリュー
ションを、データセンターのさまざまな物理/論理構成にかかわらず実現でき
ます。
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Citrix について
Citrix Systems, Inc.(NASDAQ:CTXS) は、新しい快適なワークスタイルを実現する仮想化、ネットワーキング、クラウドイン
フラストラクチャのリーディングカンパニーです。多くの企業および組織の IT 部門やサービスプロバイダーが、仮想化、モバイ
ル化されたワークスペースの構築、管理、セキュリティ確保のために、シトリックスのソリューションを利⽤しています。仮想
化、モバイル化されたワークスペースでは、デバイス、ユーザー、利⽤するネットワークやクラウドを問わず、アプリケーショ
ン、デスクトップ、データ、サービスをシームレスに利⽤することができます。シトリックスは今年、創設 25 周年を迎えますが、
今後も革新に取り組み、モバイルワークスタイルにより IT をさらにシンプルにするとともに生産性の向上に貢献していきます。
シトリックスの 2013 年度の年間売上⾼は 29 億ドルで、その製品は世界中の 33 万以上の企業や組織において、1 億人以上の人々
に利⽤されています。シトリックスの詳細については www.citrix.co.jp をご覧ください。
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E0411/PDF
J1014/PDF