食用作物学II (イネについて)

2014/12/19
食用作物学II
(イネについて)
第七回 光合成、草型
収穫指数
(全乾物重に対する子実乾物重の割合)
同化産物の分配
子実収量=全乾物重×収穫指数
如何に全乾物重を増やすか
光合成能力を上げる
生育期間を延ばす
草型を改善する
施肥量を増やす
如何に収穫指数を増やすか
収量による直接選抜は,通常収穫
指数の増加をもたらすが,全乾物重
の増加には繋がらないことが多い
全乾物重の増加と組み合わせて考
えることが重要
作物学研究室 柏木純一
個葉の光合成
光合成のロス
光呼吸:カルビン回路で,CO2はRubisco(酵素)により脱炭素→1分子の5炭素物質から2
分子の3炭素物質を合成.
Rubiscoは,同時に脱酸素酵素としても機能.O2濃度が相対的に高い時には、 O2を5炭素
物質に反応→合成された物質はエネルギー(ATP)を要する様々な反応を経て,CO2と3炭素
物質へ.Rubiscoが脱酸素酵素として働く→非効率なため,光合成の効率が下がる
C3植物とC4植物
C3植物:低い葉内CO2圧+強光環境で光呼吸による光合成ロスが大きい
↑
熱帯乾燥地域
C4植物:葉肉細胞でCO2を「濃縮」し,維管束鞘細胞で高濃度CO2を解放するために,
葉内CO2圧が低くならない+強光環境でも光呼吸による光合成ロスが小さい
O2
C4
C3
光化学系
脱炭酸酵素
C4
PEP(ホスホエノールピリビン酸)
純光合成速度
純光合成速度
Rubisco
PEPC
RubisCO
高濃度
CO2
C3
TCA回路
C4(オキサロ酢酸)
CO2
葉温
C6H12O6
葉肉細胞
葉肉細胞
光強度
維管束鞘細胞
生物図解 田中隆荘・田中昭男監修
C3植物とC4植物
イネへのC4回路導入
C4のCO2濃縮メカニズム:
PEPCを含む幾つかの関連遺
伝子を,遺伝子組み換えに
よって,C4作物であるトウモロ
コシからイネに導入する試み
Rubiscoが高酸素に曝され
ないような構造的隔離:
可逆的にクランツ構造をとる
植物(エレオカリス Eleocharis
vivipara) などを用いて,クラ
ンツ構造形成のメカニズムに
ついての研究
http://hwm5.gyao.ne.jp/y4c4c/C4structure.html
Nature 416, 576-578 (11 April 2002)
Agricultural biotech: The rice squad
Christopher Surridge
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2014/12/19
個葉の光合成
個葉の光合成
光合成速度の測定:生成物が炭水化物であるので炭素
の吸収量(=CO2)測定により調査できる
6CO2+12H2O→C6H12O6+6H2O+6O2
補償点
一定濃度のCO2を含む空気(リ
ファレンスガス)を送り,チャン
バーから出てくる空気(サンプル
ガス)に含まれるCO2濃度を測定
する.両者の差から光合成速度
を算出する.
LI-6400
リファレンス
光合成速度測定
チャンバー
呼吸量
光飽和点
CO2濃度
みかけの光合成量
光強度、温度、CO2濃度、水分
含量の影響を受ける
真の光合成量
CO2 放出量
CO2 吸収量
光合成のロス:葉は光合成を行う(CO2吸収)とともに,
呼吸(CO2放出)によって生きている.呼吸による炭水化
物の消費およびそれに伴うCO2の放出は,光合成の総量
(真の光合成量)に対するロスとなる.
呼吸の調査は,植物体を暗黒下に置いてCO2放出量を
測定する(暗呼吸)
LI-6400:Li-Cor社の携行型光合成
測定装置.光合成,蒸散の測定
の実験(屋内,屋外とも)でよく使
用される.
時間
葉面積拡大の限界
受光体制のよい草型
葉面積が大きい方が光合成をす
るうえでは有利なのではないか?
相互遮蔽を小さくする草型とは?
100
I(相対光強度)=I0 e-KF
I0=群落最上層の光強度
F=積算葉面積指数:
群落最上位葉からの葉面積指数の積算値
→値が大きいほど地面に近い(最上位葉か
ら離れた深い位置)
K=吸光係数
光合成量
呼吸量
純生産量
LAI(Lef Area Index,葉面積指
数):1m2に存在する葉面積の総
計(イネは最大で、4-6)
呼吸量:LAIの増加に伴い比例
的に増加する
(真の)光合成量:LAIの増加に
伴い増加するが、相互遮蔽により
その増加程度は鈍ってくる
(みかけの)光合成量(=純生
産量):あるLAIで最大となり、准生
産に対する最適のLAIが存在す
る。最適LAIをこえると純生産は減
少する
LAI
80
70
相対照度(%)
μ mol CO2 m-2 s-1
90
60
50
群落上層から地表に近付いてゆくほど、
指数関数的に光強度は減少する(暗くなる
=下位葉は光合成をする上で不利)
Kが小さい(=葉が直立している)下位葉に
まで光が届くため、LAIが増加しても光合成
の低下が小さい。
40
30
20
10
★相互遮蔽による光合成量の減
少を抑えることが純生産量の増加
につながる
0
0.0
1.0
2.0
3.0
4.0
積算LAI
5.0
6.0
7.0
緑の革命
同化産物の分配
収穫指数
(全乾物重に対する子実乾物重の割合)
サンプル
子実収量=全乾物重×収穫指数
如何に全乾物重を増やすか
光合成能力を上げる
生育期間を延ばす
草型を改善する
施肥量を増やす
如何に収穫指数を増やすか
有効茎(穂数)を増やす
一穂粒数を増やす
粒重を増やす
“前”緑の革命型
緑の革命型
ニュータイプ?
穂が重くなり倒伏しやすくなる
多肥,密植栽培に適した草
型へ向けた育種
稲の収量は,大幅に改善さ
れたが,頭打ちか?
草丈の低い(半矮性)イネの育種
★緑の革命の成功
IR8(IRRIのイネ高収量品種):低脚烏尖の半矮性遺伝子
Bevor14(CIMMYTのコムギの高収量品種):農林10号の半
矮性遺伝子
農家経済が改善したのか?
Green Revolution: The way forward. (2001) G.S. Khush, Nature
Reviews, 815-822
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