その解答

確率統計 B
担当:白井 英俊
確率についての試験
提出締め切り: 指定日時
提出場所: 指定された場所
以下の問に答えよ。ただし答だけではなく、説明もちゃんと付けること。たとえ答が導けな
くとも、考え方や説明によって評価を行うことがある。
1.バレンタインデーで彼女から手作りのチョコレートをプレゼントされた。彼女が僕を愛
している(事後)確率を求めよ。(愛情は計算ではない、という異議は却下)
ここで、L により「彼女が僕を愛している」という事象を、C により「彼女が手作りのチ
ョコをプレゼントする」という事象をそれぞれ表す。また、主観により、彼女が僕を愛して
いる(事前)確率を P(L) = 0.60、愛していない(事前)確率を P(¬L) = 0.40 とする。さらにク
ラスの女性に対して行ったアンケート調査などにより、ある人を愛している時にその人に
手作りのチョコをあげる確率 P(C|L)=0.30、愛していない場合でも手作りのチョコをあげる
確率 P(C|¬L)=0.10 であることが分かっているとする。
答:
問題文から、P(L) = 0.60
P(¬L) = 0.40
また、P(C|L)=0.30、P(C|¬L)=0.10
ここで求めたいのは、チョコレートをプレゼントされた(C)という条件のもとで L が成り
立つ確率、つまり P(L|C)である。これはベイズの定理から、 P(L|C) =
P(C|L)P(L)
ここで、P(C) = P(C|L)P(L) + P(C|¬L) P(¬L) = 0.30*0.60+0.10*0.40 = 0.22
ゆえに、P(L|C)=0.30*0.60/0.22 = 0.8181...
P(C)
よって答は 0.82 (チョコレートをプレゼント
されたことで彼女から愛されている確率が事前確率よりもあがった)
2. 3つのツボ C1,C2,C3 があり、その中に赤と白の玉が 3:1、1:1、1:2 の割合で入ってい
る。
ランダムに指定されたツボから玉を 1 個取り出し、その色が赤だったとき、そのツボが
C1 であった(事後) 確率を求めよ。また同様にして、ツボが C2、および C3 であった(事後)
確率を求めよ。
答:
壺を選んでから玉を選ぶという2段階になっていることに注意しよう。
まず、赤色の玉が取り出される確率をもとめてみよう。これを P(R)と表す。これを選
ぶにはこの最初の段階で、(1)C1 を選ぶ、(2)C2 を選ぶ、(3)C3 を選ぶことがあり、これ
らが起こる確率は 1/3 と考えられる。
そして(1)C1 が選ばれた場合、赤の玉が選ばれる確率 P(R|C1)は問題文から 3/4
(2)C2 が選ばれた場合、赤の玉が選ばれる確率 P(R|C2)は問題文から 1/2
(3)C3 が選ばれた場合、赤の玉が選ばれる確率 P(R|C3)は問題文から 1/3
である。ここで、ツボ C1、C2, C3 が選ばれる事象をそれぞれ C1,C2,C3 で表した。
これにより、 P(C1)=P(C2)=P(C3)=1/3 と表される。
よって、 P(R)= P(R|C1)×P(C1) + P(R|C2)×P(C2) + P(R|C3)×P(C3)
= 3/4 × 1/3 + 1/2 ×1/3 + 1/3 ×1/3
= 1/4 + 1/6 + 1/9 = (9+6+4)/36 = 19/36
赤玉が出たという条件のもとで C1 が選ばれたという条件付き確率 P(C1|R)は、ベイズの
定理から、P(C1|R)= P(R|C1)×P(C1)/P(R)= (1/4)/(19/36) = 0.4736842
ゆえに C1 が選ばれた事後確率は 0.47
同様に、P(C2|R)= P(R|C2)×P(C2)/P(R)= (1/6)/(19/36) = 0.3157895
ゆえに C2 が選ばれた事後確率は 0.32
同様に、P(C3|R)= P(R|C3)×P(C3)/P(R)= (1/9)/(19/36) = 0.2105263
ゆえに C3 が選ばれた事後確率は 0.21
3. 三種類の物体(仮に A,B,C とする) の認識ができるカメラ機構を備えているロボットが
ある。ロボットは、A の物体を認識した場合には赤色の LED を、B の物体を認識した場合
は緑色の LED を、C の物体を認識したら青の LED を点滅させる。ただし、ロボットのカ
メラ機構は故障することがあり、その場合、ロボットは赤色の LED を点滅させるものとす
る。また故障する事前確率は p = 0.01 であることがわかっているとする。
ここで 3 種類の物体の中から N 個をランダムに選び、次々にロボットに提示した。する
と、すべてロボットは赤色の LED を点滅させた。N = 1 の場合、N=2 の場合、… N=10 の場
合、それぞれの場合に対し、ロボットのカメラ機構が壊れている(事後) 確率を求めよ。
答:
i 個目の物体を提示したときに赤色の LED が点滅する事象を Li、ロボットのセンサーが
壊れているという事象を R とする。すると、問題文から、(その他に情報がない場合の確
率は「事前」確率): P(R)=0.01
まず P(L1|R)を求める。これは「ロボットのセンサーが壊れている」という状況のもとで
「赤色 LED が点滅する」確率である。これは問題文から 1.0
また、P(R)は「ロボットのセンサーが壊れている(事前)確率」なので、0.01。これにより、
ロボットのセンサーが壊れていない(事前)確率P(¬R)は1 − P(R) = 0.99となる。
N=1 の場合: このとき赤色の LED が点滅した(という情報がある)のだから、求めたい
のは P(R|L1)であり、これが(「赤色の LED が点滅した」という情報が得られた後の確率
なので、
「事後」)確率である。ベイズ則から P(R|L1) =
P(𝐿𝐿1 |R)P(R)
P(𝐿𝐿1 )
ここで P(𝐿𝐿1 |¬R) = 1/3 である(なぜなら、3種類の物体が任意に提示され、A の物体
の時に赤色 LED が点滅するから)。ゆえに、
P(L1)= P(𝐿𝐿1|R)P(R) + P(𝐿𝐿1 |¬R)P(¬R) = 1.0×0.01 + 1/3 * 0.99 = 0.34
以上から、N=1 のときは、0.01/0.34 = 0.02941176… よって、 0.029
N=2 の場合、(途中でロボットは壊れたり、直ったりしないとする)
このとき2つの物体を提示し、いずれも赤色の LED が点滅した(という情報がある)。そ
こで求めたいのは、P(R | L1∧L2) 、これは 1 回目も2回目も赤の LED が点滅したという
条件のもとで、ロボットのセンサーが壊れている(条件付き)確率
ベイズ定理から、P(R|L1∧L2) =
P(𝐿𝐿1 ∧L2 |R)P(R)
P(𝐿𝐿1 ∧L2 )
ここで、P(L1∧L2)= P(𝐿𝐿1 ∧ L2 |R)P(R) + P(𝐿𝐿1 ∧ L2 |¬R)P(¬R)
= 1.02×0.01 + (1/3)2×0.99 = 0.12
以上から、N=2 のときは、0.01/0.12 = 0.0833… よって、 0.083
同様にして N=3, ... N=10 の場合の確率が求まる。
上の議論から、これは 0.01/(0.01+(1/3)N×0.99) と表されることがわかるので、例えば
N=10 の場合は、0.998 (有効数字 3 桁まで表した)となる。