使用後の中性化深さを推定する試験方法が規定されてい る。本規格における供試体や試験条件などを以下に示す。 試験設備紹介 供試体は,形状・寸法を 100 × 100 × 400mm の角柱供試 中性化促進試験装置 体とし,数量を一条件あたり 3 個とする。促進試験は,供試 体の前養生や測定面以外の面の被覆を行った後に開始す る。促進試験の環境条件は,温度 20 ± 2℃,相対湿度( 60 中央試験所 ± 5)%,炭酸ガス濃度( 5 ± 0.2)%である。 中性化深さの測定は, 「促進期間が 1,4,8,13,26 週に なったときに行うとよい。 」とされている。中性化深さの測 定は,所定の促進期間後に供試体を割裂し,フェノールフ 1.はじめに コンクリートは,セメントの水和で生成される水酸化カ ルシウムによって,pH12 〜 13 の強いアルカリ性を示す。 タレイン溶液を噴霧した後,ノギスを用いて行う。測定位 置は左右各 5 か所とし,3 個計 30 か所の平均値で中性化深 さを表す。 中性化状況の一例を写真 1 に示す。 鉄筋コンクリート中の鉄筋は,このコンクリートの強いア ルカリ性によって表面に不動態皮膜が形成され,腐食から 保護された状態にある。従って,コンクリートに強いアル カリ性が保持されている間は,コンクリート構造物内の鉄 筋が容易に腐食することはない。 3.中性化促進試験装置の導入背景 当センター中央試験所では,JIS A 1153 の環境条件での 試験実績は多数ある。しかし,例えば JIS A 1171(ポリマー しかし,コンクリートのアルカリ性は,大気中の二酸化 セメントモルタルの試験方法)では,環境条件を温度 30 ± 炭素や酸性溶液などの作用により,時間の経過とともに表 2℃(湿度と炭酸ガス濃度は同条件)としている。また,促 面から徐々に失われていく。この現象を中性化という。こ 進中性化試験は,基準コンクリート(または基準モルタル) の中性化の深さが内部鉄筋の表面まで達すると防食機能が との相対比較で行う場合が多いため,JIS A 1153 の環境条 失われ,水と酸素が同時に供給されると腐食が進行し易く 件を必須とはしないこともある。そのため,期間短縮ある なる。鉄筋の腐食が進むと,酸化によって発生するさびの いは実情に即すことを目的とし,JIS A 1153 とは異なった 膨張圧によって,かぶりコンクリートにひび割れやはく離 環境条件で行いたいという要望が以前からあった。 が発生する。腐食がさらに進行すると,構造耐力の低下を しかし,当センター中央試験所では,促進試験装置を 1 台 引き起こすこともあり,コンクリートの中性化深さの進行 しか所有していなかったため,他の環境条件での試験の要 は,鉄筋コンクリート構造物の耐久性を評価する上でも大 望,また多数の変動要因での試験の要望には,残念ながら 事な項目の一つである。 応えられていなかった。よって,今回 2 台目の試験装置を 導入することとした。 2.コンクリートの促進中性化試験 コンクリートの配合条件や使用材料の種類が中性化に及 ぼす影響を比較検討する場合には,実際使用する条件下に 長期間暴露して行うのが最も実際に近い方法であるが,時 間が掛かりすぎてしまい実用的ではない。そのため,促進 試験方法が 2003 年に JIS A 1153(コンクリートの促進中性 化試験方法)として制定された。 本規格では,大気中より二酸化炭素濃度(炭酸ガス)の高 い,中性化を促進する条件下に供試体を静置して,中性化 深さおよび中性化速度を測定し,その結果に基づいて長期 32 写真 1 中性化状況の一例 建材試験センター 建材試験情報 11 ’14 4.中性化促進試験装置の概要 今回導入した試験装置は,マルイ社製の中性化促進試験 装置「 MIT-639-3-05 型」である。本試験装置の概要を表 1 に,試験装置の外観を写真 2 に,試験槽内の状況を写真 3 に 示す。 本試験装置は,試験槽内の気流を水平方向にし,槽内に 供試体棚を設けることで,槽内の試験条件を均一に保ち, 設置場所による中性化促進のムラを少なくする構造として いる。また,従来の装置に比べ,扉の密閉性が一層向上し, 炭酸ガスが漏れづらくなっている。 写真 2 中性化促進試験装置の外観 5.おわりに 当センター中央試験所材料グループでは,今回紹介した 促進中性化試験のほかにもコンクリートの耐久性試験を 行っている。ぜひご利用いただければ幸いである。 【お問合せ】 中央試験所 材料グループ TEL:048-935-1992,FAX:048-931-9137 (文責:中央試験所 材料グループ 主任 若林 和義) 写真 3 中性化促進試験装置の試験槽内 表 1 中性化促進試験装置の概要 項目 仕様 W1450 × D900 × H1700mm(外寸) 寸法 W700 × D850 × H1220mm(内寸) 材質 ステンレス鋼板製 ( 内外装・冷却器ともに ) 温度:+20℃~ +60℃ 制御範囲 湿度:30% RH ~ 90% RH(温湿度制御範囲内による) CO2 制御範囲:濃度 1%~ 20%(温湿度制御範囲内による) 棚板耐荷重 / 枚数 100kg( 1 段あたり)/ 6 枚 湿度センサー 静電容量式電気センサー 電源 三相 AC200V 20A 建材試験センター 建材試験情報 11 ’14 33
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