資料(PDF 212KB) - 帝国データバンク

2014/12/5
大阪支社
住所:大阪市西区靭本町 1-6-18
TEL:06-6443-5601(代表)
URL:http://www.tdb.co.jp/
特別企画: 2013 年度 近畿地区 未上場建設業者の経営実態調査
増収の陰で中小企業の負担が増加
―収益性で規模間格差が浮き彫りに―
はじめに
公共事業政策を背景に、建設業者の倒産件数は今年 9 月、過去最長となる 24 カ月連続での前年
同月比減少を記録した。2013 年度の主要上場建設会社の業績は、受注高が前年度比 20%増、売上
総利益も 1.0pt 増と明らかな好業績が並んだ(当社調べ)。しかし、中小建設業者からは人件費の
高騰や資材高による収益性の悪化、公共工事の先食いに対する懸念の声も上がっており、景況感
には大きな規模間格差がみられる。
帝国データバンク大阪支社は、近畿地区未上場建設業者の経営実態について、「売上高」「売上
原価率」「労務費・外注加工費比率」などについて、調査を実施した。当社の企業概要データベー
ス「COSMOS2」(145 万社収録)および企業財務データベース「COSMOS1」(73 万社・490 万期収録)
の中から、過去 5 期連続での業績比較が可能な、年商 10 億円以上の近畿地区未上場建設業者 740
社を抽出して分析した。
「売上原価率」(売上原価÷売上高、以下「原価率」)は、5 期連続で実績値の判明した 453 社、
「労務費・外注加
工費比率」(<労務費+外注加工費>÷売上高、以下「労務・外注費率」)は、同じく 320 社を分析対象とした。
調査結果要旨
1. 近畿地区未上場建設業者 740 社の 2013 年度売上高合計は 3 兆 7897 億 3300 万円となり、前年
度比 8.9%増加。全体の 72.3%(全国は 71.3%)にあたる 535 社が前年度比増収となった。
2. 「原価率」の平均は 87.2%(全国は 87.1%)と前年度比 0.1pt 増、「労務・外注費率」の平
均は 63.4%で前年度比 1.3pt 増となり、全国で最も高かった。
3. 地域別にみると、全国 9 地域で売上高合計が増加した一方、労務・外注費率も上昇。うち 5
地域では前年度比 1.0pt を超える上昇となった。
4. 売上規模別では、年商 30 億円未満の企業で原価率が上昇した一方、年商 300 億円以上では低
下。労務・外注比率は年商 30 億円未満の企業で急騰するなど、規模間での格差が見られた。
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2014/12/5
特別企画: 2013 年度
近畿地区
未上場建設業者の経営実態調査
1.近畿地区未上場建設業者の動向 ~2013 年度は 72.3%が増収
2013 年度の近畿地区未上場建設
売上高合計
(百万円)
業者 740 社の売上高合計は 3 兆 7897
億 3300 万円、前年度比 8.9%増と 2
期連続の増加となった。2012 年度と
比べ「増収」となった企業は 740 社
中 535 社にのぼることが判明。主要
2009年度
2010年度
2011年度
2012年度
2013年度
増加率
3,751,871
3,496,286
3,367,410
3,479,317
3,789,733
増収企業数
△6.8%
△3.7%
3.3%
8.9%
構成比
332
384
441
535
44.9%
51.9%
59.6%
72.3%
※売上高合計および増収企業は、5期連続で年商が判明している740社が対象。
上場建設会社では約 80%が増収とな
増益企業数
(売上総利益)
っていた(『2013 年度 主要上場建設
会社の受注・業績動向調査』、6 月 24
日発表)が、近畿地区未上場建設業
者でも 72.3%が増収と昨年度の業界
の活況がうかがえる。
227
216
253
309
2009年度
2010年度
2011年度
2012年度
2013年度
原価率
(平均)
構成比
50.1%
47.7%
55.8%
68.2%
労務費外注費
(平均)
87.2%
86.6%
86.6%
87.1%
87.2%
60.8%
61.9%
61.6%
62.0%
63.4%
※増益および原価率は、5期連続で実績値が判明している453社が対象。
一方で、売上総利益をみると「増
※労務・外注費率は、5期連続で実績値が判明している320社が対象。
益」企業は 453 社中 309 社、構成比は 68.2%にとどまった。主要上場建設会社では約 90%が増益
となった状況と比べると、近畿地区未上場建設業者では 30%弱が「減益」であり、受注の増加が必
ずしも収益向上に結びついていない状況がみられる。
原価率をみると、調査対象 453 社の平均は 87.2%となり、2012 年度より 0.1pt 上昇している。
また、現場人件費等の工事関連費用をみる労務・外注費率を分析すると、調査対象 320 社の平均
は 63.4%と、直近 5 期で最も高い。ここから、案件増に伴う人手不足等によって人件費が高騰し
ている状況がみてとれる。
※ 売上高-売上原価=売上総利益
2.全国地域別動向~近畿は売上高、労務・外注費率は 2 年連続増加、原価率は 3 年連続増加
2013 年度の業績を地域別にみると、売上高合計は全 9 地域で増加。増収企業数は 8 地域が構成
比で 5~15pt 急増したものの、「東北」だけが同 4.4pt 減少。同地域は 2011 年度以降の復興需要
により他地域に先駆けて活況が顕著だったが、ここに来て一服感がみられる。
売上高合計
(億円)
北海道
東北
関東
北陸
中部
近畿
中国
四国
九州
全国
8,688
12,360
67,197
9,116
25,011
33,674
8,942
3,664
15,550
184,202
2011年度
増収
増加率 企業数
△ 3.5%
9.3%
3.7%
0.5%
△ 0.3%
△ 3.7%
1.2%
△ 5.7%
2.7%
1.1%
170
368
817
214
424
384
172
87
372
3,008
構成比
45.3%
59.9%
56.4%
55.2%
51.3%
51.9%
53.9%
53.7%
58.7%
54.6%
売上高合計
(億円)
9,370
15,421
71,065
9,848
25,922
34,793
9,171
3,920
16,100
195,610
2012年度
増収
増加率 企業数
7.9%
24.8%
5.8%
8.0%
3.6%
3.3%
2.6%
7.0%
3.5%
6.2%
239
468
929
235
477
441
181
97
369
3,436
構成比
63.7%
76.2%
64.2%
60.6%
57.7%
59.6%
56.7%
59.9%
58.2%
62.4%
売上高合計
(億円)
10,456
17,719
76,673
11,113
28,017
37,897
10,091
4,266
17,893
214,126
2013年度
増収
増加率 企業数
11.6%
14.9%
7.9%
12.8%
8.1%
8.9%
10.0%
8.8%
11.1%
9.5%
構成比
75.7%
71.8%
69.6%
76.8%
68.2%
72.3%
67.7%
69.1%
73.7%
71.3%
284
441
1,008
298
564
535
216
112
467
3,925
※ 売上高合計および増収企業は、5期連続で年商が判明している企業が対象。「北海道」375社「東北」614社
「関東」1448社「北陸」388社「中部」827社「近畿」740社「中国」319社「四国」162社「九州」634社
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特別企画: 2013 年度
近畿地区
未上場建設業者の経営実態調査
原価率を地域別にみると、2013 年度は「中部」「中国」を除く 7 地域で上昇した。
「近畿」「関東」
では、上昇率は小幅ながらも毎年じわじわと上昇している。「北海道」「四国」「九州」は 0.4pt 増
と、地方圏での原価率上昇が
原価率
(平均)
年、他地域に比べ高水準での
増加が続き、直近 3 期で計
1.1pt 上昇している。また、震
災以降に原価率の低下が続い
ていた「東北」では、前年度
比 1.0pt の上昇に転じた。
原価率の水準がもっとも高
いのは「北海道」で、2013 年
度 は 88.5 % と 全 国 平 均 を
2012年度
2011年度
目立つ。特に「九州」では近
北海道
東北
関東
北陸
中部
近畿
中国
四国
九州
全国
前年度比
増減(pt)
88.0%
86.9%
86.1%
87.4%
87.0%
86.6%
87.1%
86.5%
86.5%
86.7%
0.2
△ 0.4
0.0
0.1
0.2
0.1
0.5
0.4
0.3
0.1
原価率
(平均)
2013年度
原価率
(平均)
前年度比
増減(pt)
88.1%
86.0%
86.6%
87.3%
87.3%
87.1%
87.3%
86.3%
86.9%
86.9%
0.1
△ 0.9
0.4
△ 0.1
0.3
0.4
0.2
△ 0.2
0.4
0.2
前年度比
増減(pt)
88.5%
86.9%
86.7%
87.4%
87.1%
87.2%
87.2%
86.7%
87.3%
87.1%
0.4
1.0
0.2
0.0
△ 0.2
0.1
△ 0.1
0.4
0.4
0.2
※ 前年度比増減は小数点以下第2位を四捨五入
※ 原価率の分析は、5期連続で実績値が判明している企業3411社が対象
1.4pt 上回る。最も低いのは「関東」と「四国」で 86.7%となった。
現場職人の人件費な
2011年度
どに該当する労務・外注
労務・外注費
率(平均)
費率を地域別にみると、
2013 年度の平均水準が
最も高かったのは「近
畿」で 63.4%、全国平
均を 2.9pt 上回ってお
り、近畿地区での人手不
足の状況が見て取れる。
次いで「関東」の 63.1%、
「中部」の 61.8%と都
北海道
東北
関東
北陸
中部
近畿
中国
四国
九州
全国
53.4%
55.9%
61.4%
58.4%
60.5%
61.6%
58.3%
57.5%
56.8%
59.0%
2012年度
前年度比
増減(pt)
0.2
△ 0.1
0.5
0.7
1.6
△ 0.3
1.4
0.9
0.8
0.6
労務・外注費
率(平均)
53.1%
56.1%
62.6%
58.7%
61.5%
62.0%
59.2%
57.5%
57.5%
59.7%
2013年度
前年度比
増減(pt)
△ 0.3
0.1
1.3
0.3
1.0
0.4
0.9
0.0
0.7
0.7
労務・外注費
率(平均)
前年度比
増減(pt)
54.5%
57.2%
63.1%
58.9%
61.8%
63.4%
60.6%
59.1%
58.3%
60.5%
1.5
1.1
0.4
0.2
0.3
1.3
1.3
1.6
0.8
0.8
※ 前年度比増減は小数点以下第2位を四捨五入
※ 労務・外注費率の分析は、5期連続で実績値が判明している企業2557社が対象
市圏が続く。一方でもっ
とも水準が低いのは「北海道」の 54.5%で、全国平均を 6.0pt 下回っている。
上昇率では、2013 年度は全 9 地域で上昇。とりわけ、「近畿」「北海道」「東北」「中国」「四国」
の 5 地域で前年度比 1.0pt 超の大幅上昇となり、最高は「四国」で 1.6pt の上昇となった。一方、
2012 年度に大幅な上昇を記録した「関東」
(2012 年度、1.3pt)「中部」
(2012 年度、1.0pt)は、
それぞれ 0.4pt、0.3pt の微増となっている。経年でみると、直近 3 期で「中国」が計 3.6pt と急
騰。「関東」
「九州」もそれぞれ計 2pt 超の上昇を記録しており、急速な人件費の高騰に伴う地場
業者の収益悪化が懸念される。
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2014/12/5
特別企画: 2013 年度
近畿地区
未上場建設業者の経営実態調査
3.売上規模別 ~年商 30 億円未満で労務・外注費率が急騰、収益格差が鮮明
2013 年度の業績動向を売上規模別にみると、売上高合計は全てのレンジで前年度増収となるな
ど売上の伸びは堅調である。
「20 億~30 億円未満」、「100 億~300 億円未満」、「1000 億円以上」を
除く 4 レンジで 10%以上の伸びを記録した。増収企業の構成比は、
「100 億~300 億円未満」、「1000
億円以上」を除く全てのレンジで増加しており、全体では 72.3%が増収となった。また、増収企
業数も、「100 億~300 億円未満」、「1000 億円以上」を除く全てのレンジで増加した。
2011年度
売上高合計
(百万円)
増加率
2012年度
増収
企業数
52.3%
514,332
4.0%
249
構成比
59.1%
売上高合計
増収
増加率
構成比
(百万円)
企業数
10~20億円未満
494,758
1.7%
20~30億円未満
218,715
-1.0%
58
54.7%
234,371
7.2%
65
61.3%
254,279
8.5%
74
69.8%
30~50億円未満
301,984
1.6%
54
56.8%
313,700
3.9%
54
56.8%
357,214 13.9%
73
76.8%
50~100億円未満
405,685
-2.0%
33
47.8%
419,179
3.3%
39
56.5%
473,927 13.1%
56
81.2%
100~300億円未満
489,896
-5.4%
13
36.1%
520,922
6.3%
25
69.4%
565,171
25
69.4%
300~1000億円未満
481,289
0.6%
6
54.5%
510,947
6.2%
8
72.7%
585,670 14.6%
1000億円以上
975,313
-9.8%
0
0.0%
965,866
-1.0%
1
50.0%
974,700
0.9%
1
50.0%
3,367,640
-3.7%
384
51.9% 3,479,317
3.3%
441
59.6% 3,789,733
8.9%
535
72.3%
近畿
220
2013年度
売上高合計
増収
構成比
増加率
(百万円)
企業数
578,772 12.5%
8.5%
295
70.1%
11 100.0%
※ 売上高合計および増収企業は、5期連続で年商が判明している740社が対象。「10~20億円未満」421社、「20~30億円未満」106社、
「30~50億円未満」95社、「50~100億円未満」69社、「100~300億円未満」36社、「300億円~1000億円未満」11社、「1000億円以上」2社。
しかし、原価率を売上規模別にみると、年商 300 億円以上の 2 レンジともに前年度比低下して
いるものの、年商 300 億円未満の 5 レンジ中 3 レンジは前年度比上昇しており、規模間の収益性
に格差が出ていることが明らかとなった。最も上昇したのは「10~20 億円未満」の 0.4pt、次い
で「20~30 億円未満」の 0.3pt、最も低下したのは「300~1000 億円未満」で△3.7pt。一方で、
2012 年度は「年商 100 億円以上」のレンジで上昇傾向となっていた。これは、近年の案件の増加
によって、選別受注を進められる状況となり、中規模以上の業者の利幅が回復した結果、小規模
業者については比較的利幅の薄い案件が増加したことによるものとみられる。
2011年度
原価率
(平均)
10~20億円未満
20~30億円未満
30~50億円未満
50~100億円未満
100~300億円未満
300~1000億円未満
1000億円以上
近畿
85.4%
87.0%
86.7%
89.0%
89.3%
89.4%
92.5%
86.6%
2012年度
前年比増減
(pt)
△ 0.3
0.5
0.4
△ 0.7
0.0
0.7
△ 0.1
0.0
原価率
(平均)
85.9%
86.7%
87.5%
88.7%
90.1%
91.0%
94.5%
87.1%
2013年度
前年比増減
(pt)
0.5
△ 0.3
0.8
△ 0.3
0.8
0.6
2.0
0.5
原価率
(平均)
86.3%
87.0%
87.2%
88.8%
90.1%
87.3%
94.2%
87.2%
前年比増減
(pt)
0.4
0.3
△ 0.3
0.1
0.0
△ 3.7
△ 0.3
0.1
※ 原価率分析は、5期連続で実績値が判明している453社が対象。
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2014/12/5
特別企画: 2013 年度
労務・外注
2011年度
費率を売上
ンジ中 5 レン
ジで上昇。特
に、「20~30
億円未満」が
未上場建設業者の経営実態調査
2012年度
2013年度
労務・外注
労務・外注
労務・外注
前年比増減
前年比増減
前年比増減
費比率
費比率
費比率
(pt)
(pt)
(pt)
(平均)
(平均)
(平均)
規模別にみ
ると、全 7 レ
近畿地区
10~20億円未満
20~30億円未満
30~50億円未満
50~100億円未満
100~300億円未満
300~1000億円未満
1000億円以上
59.9%
63.1%
62.1%
62.9%
74.7%
74.1%
72.4%
61.6%
△ 0.5
1.0
△ 1.5
0.8
1.1
0.7
△ 0.9
△ 0.3
60.1%
61.4%
65.2%
62.9%
74.9%
77.7%
73.7%
62.0%
0.2
△ 1.7
3.1
0.0
0.2
3.6
1.3
0.4
3.5pt の大幅
近畿
上昇、「10~
※ 労務・外注費率は、5期連続で実績値が判明している320社が対象。
61.3%
64.9%
65.9%
62.8%
75.5%
77.1%
75.1%
63.4%
1.2
3.5
0.7
△ 0.1
0.6
△ 0.6
1.4
1.3
20 億円未満」が 1.2pt の上昇となっている。人手不足に伴う人件費の高騰で、中堅規模業者にそ
のしわ寄せがいっている実態が明らかとなった。
まとめ
今回の調査では、アベノミクスや消費税増税前の駆け込み需要の影響などから、地域や売上規
模に関わらず、国内建設業者全体が増収傾向にあることが分かった。一方で、収益性の観点から
みると、人手不足や資材高、大手の選別受注を背景に、地方圏や中小業者で原価率、労務・外注
費率が大きく上昇している実態が判明。これまでの建設不況で財務内容が毀損していることに加
え、未だ十分な価格転嫁が難しい中小業者にとって、原価や労務・外注費の上昇は命取りになり
かねない。
近畿地区では、売上高 30 億円未満の中小企業の増収企業数は前年に比べて大きく増加している。
しかし、一方で費用負担も増加しており、各経費を賄うために必死に受注を獲得している様子が
窺える。同規模の未上場建設業者は近畿地区全体の 69.0%を占めるなど同地区を支えている企業
群とも言えるため、今後の動向には注目していく必要性があるだろう。
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