No.84 [D-1] 動的コーン貫入試験装置における打撃装置自重低減効果について

全地連「技術フォーラム2014」秋田
【84】
動的コーン貫入試験装置における打撃装置自重低減効果について
㈱ワイビーエム
川崎地質㈱
1. はじめに
〇奈須徹夫
濱田泰治
武藤真幸
近藤
丸尾史郎
勉
開発した SRS 試験装置は、打撃装置の自重を低減する
平成23年に発生した東日本大震災では、軟弱地盤上の
ために⑧リフタにより⓪打撃装置を常時支持しており、
宅地の液状化、宅地盛土の崩壊、河川堤防の崩壊などの
打撃に伴う④アンビルの降下を⑤アンビル検出用近接セ
被害が発生した。これを契機に、宅地・埋立地あるいは
ンサで感知し、⑧リフタを下げることで⓪打撃装置が⑨
河川堤防などの地盤調査における安価で高精度な地盤調
ロッドの降下に追従する。
査法として動的コーン貫入試験(SRS)が着目されている。
超軟弱地盤においては、打撃直後、④アンビルが急激
SRS は、スウェーデン式サウンディング(SWS)より貫入能
に降下し、⑧リフタが追従できずに④アンビルが⑥ワッ
力が高く、標準貫入試験(SPT)より機動性に優れており、
シャで停止し、計測された Nd 値が実際より大きな値とな
試験で得られる Nd 値は SPT による N 値とほぼ等しく、
る場合を想定し、アンビルストロークを従来の60mm か
設計への適用性が高い。
ら1計測に相当する200mm に延長した。
SRS については、これまで、効率化と評価の均質化を
(2)比較試験に用いた打撃装置の諸元
目的に装置の全自動化が進められ、打撃装置も機械化し
表-1に比較試験に用いた打撃装置の諸元を示す。図
大型化してきた。一方、アンビルおよびロッドを介して
-2に比較試験に用いた打撃装置の概要図を示した。比
ロッド先端コーンに加わる打撃装置の自重が、軟弱粘性
較試験では、従来どおり打撃装置自重がアンビルに加わ
土の評価に及ぼす影響を危惧する声もあり、今回、打撃
るアンビルストロークが60mm の試験装置(SRS(1-60))、
装置の自重低減機構を持つ全自動動的コーン貫入試験装
自重低減機構のみ装着しアンビルストロークが60mm の
置を開発した。
試験装置(SRS(2-60))、
自重低減機構を装着しアンビルス
本論では、この SRS 試験装置を用いて有明海沿岸の軟
弱粘性土地盤で調査した結果を従来型試験装置による調
トロークを200mm に延長した試験装置(SRS(2-200))の3
機種による Nd 値の関係を比べた。
SRS(2-200)については、ISO 22476-2の DPSH-A に規
査結果と比較して報告する。
2. 打撃装置の概要
定されているアンビル/ハンマー直径比(Da/Dh)≦0.5に準
(1)打撃装置の自重低減機構について
拠するよう変更している1)。
打撃装置の自重低減機構を持つ SRS 試験装置の全体図
表-1 比較試験に用いた打撃装置の諸元
を図-1に示す。
⓪打撃装置
①ハンマーフィード
シリンダ
②クロー
③ハンマー
④アンビル
⑤近接センサ
⑥ワッシャ
⑦バケット
⑧リフタ
⑨ロッド
⑩スイベルヘッド
⑪ガイドローラ
⑫先端コーン
⑬リニアエンコーダ
⑭ガイドセル
⑮操作盤
⑯リフタ制御用
切替バルブ
⑰制御盤
図-1 SRS 試験装置の全体図
従来型
アンビルストローク60mm
(a) SRS(1-60)
自重低減型
アンビルストローク60mm
(b) SRS(2-60)
自重低減型
アンビルストローク200mm
(C) SRS(2-200)
図-2 比較試験に用いた打撃装置の概要図
全地連「技術フォーラム2014」秋田
3.比較試験概要
(2)自重低減効果
比較試験は、N=0の超軟弱粘性土層が連続して分布す
SRS 試験装置の自重低減効果を比較するため、従来型
る佐賀市内の沖積平野にて実施した。事前に行ったボー
SRS 試験装置 SRS(1-60)と自重低減型 SRS 試験装置
リング柱状図を図-3に示す。GL-1.7~11.7m に N=0の
SRS(2-60)および SRS(2-200)の調査データの相関図を図
有明粘土層(Ac)、GL-11.7m 以深に三田川層(Mc・Ms)が分
-5に示す。
SRS(1-60)で Nd≒0であっても自重低減型の SRS(2-60)
布している。
および SRS(2-200)では Nd=0~4を示しており、試験装置
の自重を低減することで超軟弱地盤の強度を高精度に確
認することができた。CRS(2-200)では、N=4~5の粘性
土においても同様の傾向がみられる。
N≧10の場合は、バラツキが大きくなり、自重低減効
果の傾向は確認できない。
(3)アンビルストローク延長効果
図-6にアンビルストロークが60mm の SRS(2-60)お
よび200mm の SRS(2-200)の調査データの相関図を示す。
SRS(2-60)では、打撃直後にアンビルが伸びきってしま
う現象は数回みられたが、SRS(2-60)と SRS(2-200)の Nd
値の相関図を見る範囲では、Nd≦2で、SRS(2-200)の Nd
値の方がやや大きい傾向があるが、概ね、相関性は良い。
SRS では、ロッド上端がロッドガイドに拘束されず、深
さ40mm の穴に挿入されており、ロッドに自由度がある
図-3 事前のボーリング柱状図
4.試験結果
ため、リフタによる自重低減装置の追従性が不足しても
(1)SRS と SPT の試験結果
データに大きな影響が及びにくいものと思われる。
図-4に深度毎の N 値および Nd 値を示した。SRS によ
5.まとめ
る Nd 値と SPT による N 値は、Nd≒N であるが、SRS の
1)SRS は、SPT に比べ、連続的な調査が可能であり、測点
Nd 値は連続性があり、N=0の Ac 層では、Nd>0の数値も
間の強度変化を確認することが可能であり、解析精度の
見られ、微細な強度変化を確認することができる。ここ
向上が期待できる。
2)
に、SRS の補正打撃回数 Nd 値は、(1)式により算定した 。
2)SRS に自重低減機構を搭載することで、従来型では打
撃装置の自重によって不明瞭となっていた Nd≒0の部分
Nd = Ndm - αMv
ここに、Nd :補正された打撃回数
Ndm :測定された打撃回数
α
・・・・
:トルク係数(0.040)
Mv :ロッド周辺の摩擦抵抗(N・m)
(1)
を高精度に測定することが可能となった。
3)アンビルストロークを変えた SRS(2-60)と SRS(2-200)
の比較を行ったが、当初、危惧されたような Nd 値の差は
確認できなかった。機械的検証が必要である。
《引用・参考文献》
1)ISO 22476-2:Geotechnical investigation and testing
—Fileld testing—Part2:Dynamic probing,2005.
2)地盤工学会:地盤調査の方法と解説,p.462,2013.3.
図-4 深度毎の N 値および Nd 値
図-5 Nd 値の相関図
(従来型と自重低減型)
図-6 Nd 値の相関図
(アンビルストローク60mm と200mm)