ISSN 0916-7544 平 成 二 十 六 年 十 一 月 一 日 発 行 ︵ 毎 月 一 回 一 日 発 行 ︶ 通 巻 五 十 九 号 11 Journal of the ITU Association of Japan November 2014 Vol.44 No.11 トピックス 特 集 スポットライト 会 合 報 告 ITU-T SG16札幌会合報告 Workshop/Showcasing/ISO/IEC JTC 1/SC 29札幌会合レポート iPOP 2014 概要/講演ホットトピック/展示・デモの解説 NHK W杯8Kスーパーハイビジョンのパブリックビューイング ASIACCS 2014開催報告 ITU-R:SG4(衛星業務)、SG5 WP5D(IMTに関する検討)、 JTG4-5-6-7(IMTへの追加周波数特定等の検討) ITU-T:SG11(信号要求、プロトコル及び試験仕様)、 SG13(移動及びNGNを含む将来網) APT : PREF(太平洋地域政策・規制会合) 一般財団法人日本ITU協会 http://www.ituaj.jp C O N T E N T S November 2014 Vol.44 No.11 3 ITU-T SG16 第3回 札幌会合の結果概要 トピックス 内藤 悠史 Workshop on Multimedia technologiesレポート∼ITU-T SG16札幌会合より∼ 8 田中 清 Showcasing on Cutting edge Multimedia Technologies∼ITU-T SG16札幌会合より∼ 10 山形 理恵 11 ISO/IEC JTC 1/SC 29札幌会合レポート 浅井 光太郎 10th International Conference on IP+Optical Network(iPOP2014)の概要 特 集 14 山中 直明/岡本 聡/平松 淳 18 iPOP2014講演ホットトピック 大木 英司/塩本 公平/原井 洋明 23 iPOP2014で展示・デモの解説 福井 将樹/佐藤 陽一/釣谷 剛宏 スポット ライト 27 NHK W杯8Kスーパーハイビジョンのパブリックビューイング 泉本 貴広 30 ASIACCS 2014開催報告 盛合 志帆/早稲田 篤志/金森 祥子 会合報告 34 ITU会合スケジュールとITUジャーナルでの会合報告 ITU-R SG4(衛星業務)関連WP(第5回)会合報告 35 SG 4関連会合日本代表団/(総務省 総合通信基盤局 電波部 衛星移動通信課) ITU-R SG5 WP5D会合(第19回)の結果について∼IMTに関する検討∼ 42 高橋 和也 ITU-R JTG4-5-6-7会合(第6回)の結果について∼IMTへの追加周波数特定等の検討∼ 45 総務省 総合通信基盤局 電波部 移動通信課 新世代移動通信システム推進室 ITU-T SG11会合(2014/7/9-16)報告 49 姫野 秀雄 52 ITU-T SG13会合報告 後藤 良則 APT第7回太平洋地域政策・規制会合の結果 57 総務省 情報通信国際戦略局 国際政策課 海外だより 60 モスクワだより 増子 喬紀 この人・あの時 63 シリーズ! 活躍する国際活動奨励賞受賞者 その1 石榑 康雄/大槻 信也/大原 拓也 [表紙の絵] 大谷大学文学部教授 池田佳和 ●ウブドの峡谷(インドネシア、バリ島) オランダ統治下1930年代にバリ島が西洋に紹介されると、南 アジアへの憧憬を抱く多くの芸術家が山村ウブドに居を構えた。 それを契機として芸術と伝統舞踊の中心となって発展した。この ホテルはアユン川渓谷の絶壁に囲まれて緑の隠れ里のようであ る。 ITU(International Telecommunication Union 国際電気通信連合)は、1865年に創設された、最も古い政府 間機関です。1947年に国際連合の専門機関になりました。現在加盟国数は193か国で、本部はジュネーブ にあります。ITUは、世界の電気通信計画や制度、通信機器、システム運用の標準化、電気通信サービスの 運用や計画に必要な情報の収集調整周知そして電気通信インフラストラクチャの開発の推進と貢献を目的 とした活動をしています。日本ITU協会(ITUAJ)はITU活動に関して、日本と世界を結ぶかけ橋として1971 年9月1日に郵政大臣の認可を得て設立されました。さらに、世界通信開発機構(WORC-J)と合併して、 1992年4月1日に新日本ITU協会と改称しました。その後、2000年2月15日に日本ITU協会と名称が変更 されました。また、2011年4月1日に一般財団法人へと移行しました。 トピックス ITU-T SG16 第3回 札幌会合の結果概要 ないとう ITU-T SG16議長 ゆう し 内藤 悠史 1.はじめに 我が国の最新鋭のマルチメディア技術分野の研究成果や取 今会期第3回のSG16会合は、2014年6月30日から7月11日 組を紹介し、会議参加者のみならず、地元の一般見学者に にかけて札幌市の札幌コンベンションセンターで開催された。 も好評を博した。ワークショップ講演者各位、ショウケーシ 日本でのITU-T SG会合の開催は、2006年10月に東京で開催 ング展示を担当された各位及び、それらの企画運営に御協力 されたSG9会合以来、実に8年ぶりであった。 いただいた各位にも併せて感謝の意を表させていただく。 期間中には、ITU-TのIPTV-GSI、JCA-IPTV、CITSの各 会合、ITU-T、ITU-R間の合同会合であるIRG-AVA会合に加 会議の傾向としては、日本で開催されたこともあるが、依 え、協力関係にあるISO/IEC JTC 1/SC29、同SC29/ WG1、 然として日・中・韓の参加者数が多く、欧米からの参加者 SC29/WG11の各会合、SC29/WG11とSG16 WP3とのJoint 数は低調な傾向が続いている。そうした中で、新興のブラジ Collaborative Team会合であるJCT-VC及びJCT-3Vの各会 ルから9件、コンゴ民主共和国から1件の寄書が提出されたこ 合、さらにSG16日本開催支援委員会が主催したマルチメデ とは喜ばしいニュースである。 ィア ワークショップ及びショウケーシング等が並行して開催 課題別に見ても、これまであまり活発でなかった課題でも、 されるという、盛りだくさんな内容であった。本稿では、そ Q26(7件) 、Q27(11件) 、Q28(2件)と寄書が提出され、 の概要について報告する。 議論が活発化してくる兆しが見えてきていることも明るい話 題である。中でも、e-ヘルスを扱うQ28での、Continua Health Allianceで規格化されていたHealth/Medical/Fitness関連 2.会合概要 デバイス システムの設計ガイドラインやデータトランスポー 今会合の参加者数は、地元開催ということで日本からの ト及びインタフェースに関する総計32件の新規勧告群の承 参加者数が86名と前回(33名)から大幅に伸びたこともあ 認、CITSからの入力に基づく、新規テクニカルペーパー って、総数233名と前回(155名)から大きく増加した。遠 「Global ITS requirements」の初めての文書化は特筆されよ 隔からの会議参加者数は5名(おおよそ2%)であった。参加 う。 国数こそ24か国と、前回(29か国)を下回ったが、提出寄 書数は235件と前回(223件)を上回り、こうしたことからも 盛況であったことが見て取れる。中でも、承認勧告数は67件 3.並行して開催された会合等 と、これまでの最高であった2013年1月会合の55件を大幅に 3.1 ISO/IEC JTC 1/SC29会合、SC29/WG1会合及び SC29/WG11会合 更新した。これは、これまで開催された1回のSG会合で承認 された勧告数の中でも抜きんでた、最高の数と思われる。 今回の札幌での会合は、ITU及び総務省が主催者となり、 (一社)情報通信技術委員会、 (一財)日本ITU協会が協賛 SG16会合に並行して会期第2週にSC29会合、SC29/ WG1(JPEG)会合及びSC29/WG11(MPEG)会合が開 催された。 し、国内11の会社・団体から御賛同を得て頂いた資金で運 営され、日本ITU協会には事務局の中核となって御協力いた だいたことを、感謝をこめて報告させていただく。 会期2日目の7月1日より開始されたショウケーシング及び、 3.2 JCT-VC及びJCT-3V会合 ISO/IEC JTC1/SC29/WG11(MPEG)とSG16 WP3の 間の、次世代高効率画像符号化方式(HEVC)開発のため 同日夕方に開催された歓迎パーティには上川総務副大臣を のJoint Collaborative Team(JCT) -VC会合及び、3Dビデ はじめ、多数の総務省幹部に御来場をいただいた。ショウケ オ符号化方式開発のためのJCT-3V会合が第1週から行われ ーシングでは、超高精細H.265ビデオ符号化方式を用いたシ た。 ステムの8K大画面でのデモンストレーションをはじめとする、 ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) 3 トピックス 3.3 IPTV-GSI及びJCA-IPTV会合 6月30日から7月4日にかけてIPTV-GSI会合が開催され、 連するH.248.xxシリーズの7件の勧告、Q21が作成した、IP ベースのマルチメディアサービスの性能改善を図る勧告 Q13、Q14、Q26、及びQ28が参加した。TSR(Technical F.746.1等、計13件の勧告草案の承認と、Hシリーズ勧告の2 Strategic Review)会合が6月30日及び7月4日に開催され、 件のSupplementの合意を行った他、5件の新規作業項目を JCA-IPTV会合が7月3日に開催された。 承認した。 3.4 CITS会合 4.3 WP2 7月4日にCITS(Collaboration on ITS Communication WP2では、Q13のIPTV用の記述言語勧告H.761の改訂、 Standards)会合が開催され、中間出力として、Global ITS 日本が主導したQ14の災害情報に関するデジタルサイネージ communication requirementsドキュメントがQ27へリエゾ の要求条件に関する勧告H.785.0、Q25のIoT、USN及びス ン文書として送付された。 マートシティに関する勧告F.747.6他、合計6件の勧告に加 え、Q28のe-ヘルスデバイスの適合性試験に関する勧告32件 3.5 IRG-AVA会合 ITU-T SG16、SG9及びITU-R SG6の合同会合である、 等、合計39件の勧告草案の承認を行った。Q28における勧 告 H.810 Continua Design Guideを解 説 する技 術 文 書 Intersector Rapporteur Group Audiovisual Media Accessi- HSTP‐H810の作成、Q26のISO/IECガイドライン71のHシ bility(IRG-AVA)第2回会合が7月2日に開催された。 リーズSupplement 17としての採用に関しては、ガイドライ ン71のISO/IECでの承認投票による決着結果を反映すべく、 3.6 その他のイベント 会期中、下記の会合・イベントが開催され、SG16会合参 加者との間で多数の交流が行われた。 ・SG16日本開催支援委員会主催「マルチメディア技術ワ ークショップ」 (7月1日午後) ・SG16日本開催支援委員会主催のショウケーシング SG16議長団が2014年第3四半期に細部の見直しを行うこと を条件の合意、Q27の、CITSより入力された「Global ITS communication requirements」を精査した結果の、同課題 初めての技術文書HSTP-CITS-Req作成の合意等、合計5件 のドキュメント作成の合意を行った。また、その他、WP2で は6件の新規作業項目の承認を行った。 「Cutting Edge of Multimedia Technologies」 (7月1日4日) 4.4 WP3 ・公益財団法人日本財団主催「聴覚障害者の完全なコミ ュニケーションに関するワークショップ」 (7月2日午後) WP3では、Q10の2件の音声符号化勧告、G.711.1及び G.722の改訂草案、Q6の画像コーデックH.264及びH.265の 規格適合性に関する勧告及び基準参照ソフトウェア勧告各2 件を含む勧告草案10件、Q15の音声帯域モデム技術に関す 4.会合の成果 4.1 Q20 る2件の勧告草案及び、Q18の信号処理ネットワーク装置の 概要を解説する勧告草案等、合計15件の勧告草案の承認を Q20は、唯一のSG直属課題で、SGとしての戦略、WP間 行った。なお、WP3では、TSAGにエンドースメントを求め や課題間の調整、全課題に共通な事項への対処、新課題提 ていたQ16とQ18の合併が正式に承認された他、合計9件の 案や、担当課題が未定の新規作業項目の検討等を行う。今 新規作業項目が承認された。 会合では、勧告A.4及びA.6の統合の可能性に対するSG16の 意見のTSAGへの回答など、SG全般に関わるリエゾン文書の 対応審議を行った。 今会合で承認された勧告草案のリストを表1に、合意され た文書のリストを表2に示す。審議結果の詳細及び中間会合 の開催計画に関しては、併せてそれぞれ下記のURLを参照さ 4.2 WP1 Q5が作成したTelepresenceのシステムアーキテクチュア、 定義と要求条件等に関する最初の2件の勧告、H.420及び F.734、Q3が作成したメディアゲートウェイプロトコルに関 4 ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) れたい。 審議結果 http://www.itu.int/en/ITU-T/studygroups/20132016/16/Pages/results-1406.aspx 表1.Recommendations Consented by SG16 on the closing Plenary Title Document* Question ITU-T F.734 (ex F.TPS-Reqs) "Definitions, requirements, and use cases for Telepresence Systems" (New) TD 234/Plen Q5 ITU-T F.746.1 (ex F.LIMSreqs) "Requirements for Low-latency interactive multimedia streaming" (Rev) TD 277R1/Plen Q21 ITU-T F.747.6 (ex H.USN-WQA) "Requirements of water quality assessment services in ubiquitous sensor network (USN)" (New) TD 240R1/Plen Q25 ITU-T F.747.7 (ex F.NBLICreqs) "Requirements for Network based Location Information Conversion for location based applications and services" (New) (Sapporo, 30 June - 11 July 2014) TD 283/Plen Q21 ITU-T F.748.0 (ex H.IoT-reqs) "Common requirements for Internet of Things (IoT) applications" (New) TD 235/Plen Q25 ITU-T F.748.1 (ex H.IoT-ID) "Requirements and Common Characteristics of IoT Identifier for IoT Service" (New) TD 279/Plen Q25 ITU-T F.771 Amd.1 "Service description and requirements for multimedia information access triggered by tag-based identification: Supporting multiple air interfaces" (New) TD 281/Plen Q25 ITU-T G.711.1 (2009) Amd.1 (ex G.711.1-SWBS-Float) "Wideband embedded extension for G.711 PCM: New Annex G with an alternative implementation of stereo superwideband extension using floating-point" (New) TD 236/Plen Q10 ITU-T G.722 (2012) Amd.1 (ex G.722-SWBS-Float) "7 kHz audio-coding within 64 kbit/s: New Annex E with an alternative implementation of stereo superwideband extension using floating-point" (New) TD 237/Plen Q10 ITU-T G.776.4 (ex G.SPNE) "Signal processing network equipment" (New) TD 280/Plen Q18 ITU-T G.799.4 (ex G.CJB) "Procedures for the control of de-jitter buffers used in PSTN-IP gateways carrying voice-band data" (New) TD 275/Plen Q15 ITU-T H.222.0 (2012) | ISO/IEC 13818-1:2013 Amd.5 "Information technology - Generic coding of moving pictures and associated audio information: Systems: Transport of MVC depth video sub-bitstream and support for HEVC low delay coding mode" (New) TD 204/Plen Q1 ITU-T H.239 "Role management and additional media channels for H.300-series terminals" (Rev.) TD 212/Plen Q1 ITU-T H.248.39 "H.248 SDP parameter identification and wildcarding" (Rev.) TD 213/Plen Q3 ITU-T H.248.57: "Gateway control protocol: RTP control protocol package" (Rev.) TD 238/Plen Q3 ITU-T H.248.89 (ex H.248.TCP) "Gateway control protocol: TCP support packages" (New) TD 216/Plen Q3 ITU-T H.248.90 (ex H.248.TLS) "Gateway control protocol: H.248 packages for control of transport security using TLS" (New) TD 217/Plen Q3 ITU-T H.248.91 (ex H.248.TLSPROF) "Guidelines on the use of H.248 capabilities for transport security in TLS networks in H.248 Profiles" (New) TD 218/Plen Q3 ITU-T H.248.92 (ex H.248.SEPLINK) "Gateway control protocol: Stream endpoint interlinkage package" (New) TD 219/Plen Q3 ITU-T H.248.93 (ex H.248.DTLS) "Gateway control protocol: H.248 support for control of transport security using DTLS" (New) TD 231/Plen Q3 ITU-T H.264.1 "Conformance specification for H.264 advanced video coding" (Rev.) TD 288/Plen Q6 ITU-T H.264.2 "Reference software for ITU-T H.264 advanced video coding" (Rev.) TD 295/Plen Q6 ITU-T H.265 V2 "High efficiency video coding" (Rev.) TD 294/Plen Q6 ITU-T H.265.1 "Conformance specification for H.265 high efficiency video coding" (New) TD 286/Plen Q6 ITU-T H.265.2 "Reference software for ITU-T H.265 high efficiency video coding" (New) TD 287/Plen Q6 TD 241R1/Plen Q5 TD 282/Plen Q25 ITU-T H.420 (ex F/H.TPS-Arch) "Telepresence system architecture" (New) ITU-T H.621 Amd.1 "Architecture of a system for multimedia information access triggered by tag-based identification: Supporting multiple air interfaces" (New) ITU-T H.761 "Nested context language (NCL) and Ginga-NCL" (Rev) TD 296R1/Plen Q13 ITU-T H.785.0 (ex H.DS-DISR) "Digital signage: Requirements of disaster information services" (New) TD 278/Plen Q14 ITU-T H.821 (ex H.EH-HRN-01) "Conformance testing: Health record network (HRN) interface" (New) TD 172/Plen Q28 ITU-T H.831 (ex H.EH-WAN.1) "Conformance testing: WAN Interface Part 1: Web services interoperability: Sender" (New) TD 173/Plen Q28 ITU-T H.832 (ex H.EH-WAN.2) "Conformance testing: WAN Interface Part 2: Web services interoperability: Receiver" (New) TD 174/Plen Q28 ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) 5 トピックス 表1.Recommendations Consented by SG16 on the closing Plenary(続き) Title Document* Question ITU-T H.833 (ex H.EH-WAN.3) "Conformance testing: WAN Interface Part 3: SOAP/ATNA: Sender" (New) TD 175/Plen Q28 ITU-T H.834 (ex H.EH-WAN.4) "Conformance testing: WAN Interface Part 4: SOAP/ATNA: Receiver" (New) TD 176/Plen Q28 ITU-T H.835 (ex H.EH-WAN.5) "Conformance testing: WAN Interface Part 5: PCD-01 HL7 Messages: Sender" (New) TD 177/Plen Q28 ITU-T H.836 (ex H.EH-WAN.6) "Conformance testing: WAN Interface Part 6: PCD-01 HL7 Messages: Receiver" (New) TD 178/Plen Q28 ITU-T H.837 (ex H.EH-WAN.7) " Conformance testing: WAN Interface Part 7: Consent Management: Sender" (New) TD 179/Plen Q28 ITU-T H.838 (ex H.EH-WAN-8) " Conformance testing: WAN Interface Part 8: Consent Management: Receiver" (New) TD 180/Plen Q28 ITU-T H.840 (ex H.EH-PAN-USB) "Conformance testing: PAN/LAN/TAN: USB host" (New) TD 181/Plen Q28 ITU-T H.841 (ex H.EH-PAN-01) "Conformance testing: PAN/LAN/TAN Interface Part 1: Optimized Exchange Protocol (IEEE Std 11073-20601a-2010): Agent" (New) TD 182/Plen Q28 ITU-T H.842 (ex H.EH-PAN-02) "Conformance testing: PAN/LAN/TAN Interface Part 2: Optimized exchange protocol (IEEE 11073-20601a-2010): Manager" (New) TD 183/Plen Q28 ITU-T H.843 (ex H.EH-PAN-03) "Conformance testing: PAN/LAN/TAN Interface Part 3: Continua Design Guidelines: Agent" (New) TD 184/Plen Q28 ITU-T H.844 (ex H.EH-PAN-04) "Conformance testing: PAN/LAN/TAN Interface Part 4: Continua Design Guidelines: Manager" (New) TD 185R1/Plen Q28 ITU-T H.845.1 (ex H.EH-PAN-05.01) "Conformance testing: PAN/LAN/TAN Interface Part 5A: Weighing scale" (New) TD 186/Plen Q28 ITU-T H.845.2 (ex H.EH-PAN-05.02) "Conformance testing: PAN/LAN/TAN Interface Part 5B: Glucose meter" (New) TD 187/Plen Q28 ITU-T H.845.3(ex H.EH-PAN-05.03) "Conformance testing: PAN/LAN/TAN Interface Part 5C: Pulse oximeter" (New) TD 188/Plen Q28 ITU-T H.845.4 (ex H.EH-PAN-05.04) "Conformance testing: PAN/LAN/TAN Interface Part 5D: Blood Pressure Monitor" (New) TD 189/Plen Q28 ITU-T H.845.5 (ex H.EH-PAN-05.05) "Conformance testing: PAN/LAN/TAN Interface Part 5E: Thermometer" (New) TD 190/Plen Q28 ITU-T H.845.6 (ex H.EH-PAN-05.06) "Conformance testing: PAN/LAN/TAN Interface Part 5F: Cardiovascular fitness and activity monitor" (New) TD 191/Plen Q28 ITU-T H.845.7 (ex H.EH-PAN-05.07) "Conformance testing: PAN/LAN/TAN Interface Part 5G: Strength fitness equipment" (New) TD 192/Plen Q28 ITU-T H.845.8 (ex H.EH-PAN-05.08) "Conformance testing: PAN/LAN/TAN Interface Part 5H: Independent living activity hub" (New) TD 193/Plen Q28 ITU-T H.845.9 (ex H.EH-PAN-05.09) "Conformance testing: PAN/LAN/TAN Interface Part 5I: Adherence monitor" (New) TD 194/Plen Q28 ITU-T H.845.11 (ex H.EH-PAN-05.11) "Conformance testing: PAN/LAN/TAN Interface Part 5K: Peak expiratory flow monitor" (New) TD 195/Plen Q28 ITU-T H.845.12 (ex H.EH-PAN-05.12) "Conformance testing: PAN/LAN/TAN Interface Part 5L: Body composition analyser" (New) TD 196/Plen Q28 ITU-T H.845.13 (ex H.EH-PAN-05.13) "Conformance testing: PAN/LAN/TAN Interface Part 5M: Basic electrocardiograph" (New) TD 197/Plen Q28 ITU-T H.845.14 (ex H.EH-PAN-05.14) "Conformance testing: PAN/LAN/TAN Interface Part 5N: International normalized ratio" (New) TD 198/Plen Q28 ITU-T H.846 (ex H.EH-PAN-06) "Conformance testing: PAN/LAN/TAN Interface Part 6: Device specializations: Manager" (New) TD 199/Plen Q28 ITU-T H.847 (ex H.EH-PAN-07) "Conformance testing: PAN/LAN/TAN Interface Part 7: Continua Design Guidelines: Agent for Bluetooth Low Energy (BLE)" (New) TD 200/Plen Q28 ITU-T H.848 (ex H.EH-PAN-08) "Conformance testing: PAN/LAN/TAN Interface Part 8: Continua Design Guidelines: Manager for Bluetooth Low Energy (BLE)" (New) TD 201/Plen Q28 ITU-T H.849 (ex H.EH-PAN-09) "Conformance testing: PAN/LAN/TAN Interface Part 9: Personal Health Devices Transcoding: Agent for Bluetooth Low Energy (BLE)" (New) TD 202/Plen Q28 ITU-T H.850 (ex H.EH-PAN-10) "Conformance testing: PAN/LAN/TAN Interface Part 10: Personal Health Devices Transcoding: Manager" (New) TD 203/Plen Q28 ITU-T T.38 Amd.1 "Procedures for real-time Group 3 facsimile communication over IP networks: New Appendix VI, clarifications and corrections" (New) TD 205/Plen Q15 6 ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) 表1.Recommendations Consented by SG16 on the closing Plenary(続き) Title Document* Question ITU-T T.800 (2002) | ISO/IEC 15444-1 Amd.8 "Information technology - JPEG 2000 image coding system: Core coding system: Profiles for an interoperable master format (IMF)" (New) TD 291/Plen Q6 ITU-T T.800 (2002) | ISO/IEC 15444-1:2004 Cor.3 "Information technology - JPEG 2000 image coding system: Core coding system: Correction of equation G-9" (New) TD 289/Plen Q6 ITU-T T.800 (2002) | ISO/IEC 15444-1:2004 Cor.4 "Information technology - JPEG 2000 image coding system: Core coding system: Miscellaneous corrections" (New) TD 290/Plen Q6 ITU-T T.804 (2002) | ISO/IEC 15444-5 Amd.1 "Information technology - JPEG 2000 image coding system: Reference software: Reference software for the JP2 file format" (New) TD 292/Plen Q6 ITU-T T.834 | ISO/IEC 29199-"Information technology - JPEG XR image coding system Conformance testing" (Rev.) TD 293/Plen Q6 Note: *: some texts are subject to editorial clean-up before posting. Hence, the version posted may differ from the TD indicated. These texts are planned to start Last Call about eight weeks after the SG16 meeting (AAP-42). 表2.Other texts approved by SG16 Supplements Document Question ITU-T H.Sup.13 (ex H.Sup.Term) "Gateway Control Protocol: Common ITU-T H.248 terminology - Release 1" (New) TD 232/Plen Q3 ITU-T H.Sup.14 (ex H.Sup.IANA) "SDP codepoints for gateway control - Release 1" (New) TD 239/Plen Q3 ITU-T H.Sup17 | ISO/IEC Guide "Guide for addressing accessibility in standards" (New) TD 284/Plen Q26 ITU-T HSTP.DS-UCIS "Technical Paper: Digital signage: Use-cases of interactive services" (New) TD 276/Plen Q14 ITU-T HSTP.IPTV-Gloss "Technical Paper: Glossary and terminology of IP-based TV-related multimedia services" (New) TD 298/Plen Q13 ITU-T HSTP-CITS-Req "Technical Paper: Global ITS communication requirements" (New) TD 297/Plen Q27 ITU-T HSTP-H810 "Technical Paper: Introduction to the ITU-T H.810 Continua Design Guidelines" (New) TD 171/Plen Q28 中間会合の計画 http://www.itu.int/net/ITU-T/lists/rgm.aspx?Group =16 6.まとめ 今会期第3回目のSG16会合は、6年ぶりに日本で開催され たITU-T SG会合として、多大な成果を収めた。今会期、 なお、中間会合の開催計画中、2014年12月2-3日開催予 ITU-Tの重要な課題の一つは他標準化団体との協業を効果 定のQ27専門家会合及び、2014年11月3-7日に開催が計画さ 的に進め、通信標準化のイニシアティブを堅持することであ れていたWP1合同専門家会合のうち、Q1、Q2及びQ21の専 り、もう一つの重要課題は勧告の相互接続性や性能準拠性 門家会合はキャンセルされ、Q3及びQ5の専門家会合のみが を確認し、信頼性を向上させることである。 開催されることとなっている。 他団体との協業においては、SG16はISO/IECとの協業や CITS活動のリーダーシップを取るなど、積極的に取り組んで きた実績があり、また、勧告の信頼性向上においても、 5.次回会合 次回SG16会合は、2015年2月9日から20日にかけてジュネ IPTV テスト イベントの開催や、ショウケーシング開催を通 しての勧告の普及活動を通じて、先駆的な活動を実施して ーブのITU本部において開催され、IPTV-GSI会合、JCA- きており、今後とも積極的に取り組んでいきたいと考える。 IPTV会合、CITS会合、IRG-AVA会合、JCT-VC会合及び 関係各位の一層の御参加を期待したい。 JCT-3V会合、さらにMPEG会合、JPEG会合も併せて開催 される予定である。 最後に、札幌会合の開催に御協力いただいた各位に、今 一度お礼を申し上げたい。 ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) 7 トピックス Workshop on Multimedia technologiesレポート ∼ITU-T SG16札幌会合より∼ た なか 日本電信電話株式会社 NTTサービスエボリューション研究所 主幹研究員 きよし 田中 清 1.はじめに 2014年7月1日札幌コンベンションセンター小ホールにて、 ITU-T SG16札幌会合に併催するローカルイベントとして、 表1.プログラム委員一覧 プログラム委員会委員 NTT 田中 清 NICT 深堀道子 三菱電機 内藤悠史 開催概要を説明するとともに、当日の講演内容について概観 日本ITU協会 田中和彦 する。 NHK/ TTC IPTV専門委員会 遠藤洋介 ワークショップ(Workshop on Multimedia technologies) が開催された(図1は当日の会場付近の様子、図2は会場内 の様子を示す写真である) 。本稿では、本ワークショップの ップは、展示会の出展物の紹介を中心とした技術紹介を行 う技術講演セッションと、プラチナスポンサによる基調講演 セッションで構成された。ワークショップの主催はプログラ ム委員会が行った。その構成員を表1に示す。また本ワーク ショップの共催として総務省、協賛に一般社団法人情報通 信技術委員会(TTC)が名を連ねた。なお技術講演セッシ ョンは、TTC マルチメディアアドバイザリーグループ(MMAG)がオーガナイズし、そのうちIPTV(Internet Protocol Television)に関連する講演を集めたセッション1をTTC 図1.会場風景 IPTV専門委員会がオーガナイズした。当日の司会はそれぞ れオーガナイズした委員会の副委員長であるNECの芹沢氏 と筆者(NTT田中)が分担した。 ワークショップへの参加者は81名で、うち56名は当日会議 が開催されていたITU-T SG16会合及びJCT-VCへの参加者 であった。 3.講演内容 プログラムの構成を表2に示す。当日は、主催、共催、協 図2.ワークショップ模様 賛の各団体等から、それぞれの代表(プログラム委員会 内 藤氏、総務省 松井氏、TTC 前田氏)に挨拶をいただいた 後、基調講演セッションが開始された。基調講演セッション 2.開催概要 本ワークショップは、7月1日より4日まで同じくローカル イベントとして開催された展示会(Showcasing on Cutting では、NTTの藤田氏、NICTの富田氏、三菱電機の田中氏 より、それぞれ各社が取り組んでいる研究開発と標準化につ いての講演をいただいた。 edge of Multimedia Technologies)と連動する形で、SG16 会合ホストである日本企業によって企画された。ワークショ 8 ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) 引き続き、技術講演セッションが開催され、室蘭工業大 表2.プログラム構成 基調講演 13:15‐13:30 御挨拶等 (内藤悠史SG16議長、総務省情報通信国際戦略局通信規格課 松井俊弘課長、 TTC 前田洋一専務理事) 13:30‐13:45 NTTサービスイノベーション総合研究所 藤田敏昭所長 13:45‐14:00 NICT 富田二三彦理事 14:00‐14:15 三菱電機 田中健一役員技監 技術講演:TTC MM‐AGオーガナイズ 特別セッション: 【招待講演】Beyond the content 14:15‐14:45 室蘭工業大学 岸上 順一教授 distribution, and its technology セッション1:TTC IPTV専門委員会オーガナイズ NTTメディアインテリジェンス研究所 14:55‐15:10 H.265/HEVC Encoder for UHDTV 画像メディアプロジェクト 池田 充郎氏 NHK技研テレビ方式研究部 15:10‐15:25 8K‐UHDTV HEVC Real‐time Encoder 市ヶ谷 敦郎氏 ITU‐T standards based IPTV solutions OKI通信システム事業本部 15:25‐15:40 and the global testbed キャリアシステム事業部 山本 秀樹氏 ITU‐T Standards for Multimedia 三菱電機開発業務部 15:40‐15:55 Application Platforms 松原 雅美氏 セッション2 To Create a World Without NICT音声コミュニケーション研究室 15:55‐16:10 Communication Barriers 堀 智織氏 日立製作所情報・通信システム社 An advanced traffic management 16:10‐16:25 solution for big‐data circumstances 経営戦略室 櫻井 義人氏 学教授でNTTシニアアドバイザの岸上氏の招待講演から始 電機の松原氏からはIPTVのミドルウェア技術を中心に標準 まった。岸上教授からはメタデータに関するITU-T勧告F.750 化の重要性を説いていただいた。セッション2は、NICTの堀 とH.750の相似性について解説をしていただくとともに、近 氏による自動翻訳に関する講演と日立製作所の櫻井氏によ 年のメタデータの重要性やメタデータの今後の方向性につい るビッグデータに関する講演とで構成された。全ての講演を て、メタデータに関する興味深い講演をいただいた。 通して聴講者は熱心に耳を傾けていた。 次に技術講演セッションでは、セッション1としてIPTVサ 4.まとめ ービスに深く関係する4件の講演が実施された。高精細な映 像サービスを実現するための映像符号化技術については、 ITU-T SG16会合に併催されたワークショップである、 NTTの池田氏から8Kを見据えたUHDTVサービスのロードマ Workshop on Multimedia technologiesの概要について報 ップとH.265/HEVCエンコーダ技術について、NHKの市ヶ 告した。本ワークショップはITU-T SG16の日本招致ホスト 谷氏から8K UHDTV向けのCODEC技術について、それぞれ である日本企業によって、ボランティアで企画、構成され、 講演いただいた。また、OKIの山本氏からはIPTVとその応用 実現したものである。御協力いただいた関係各位に感謝す サービスについて解説をいただくとともにI3GT(ITU IPTV る。 IPv6 Global Testbed)についての紹介をいただいた。三菱 ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) 9 トピックス Showcasing on Cutting edge Multimedia Technologies ∼ITU-T SG16札幌会合より∼ やまがた 独立行政法人 情報通信研究機構 国際推進部門 標準化推進室 7月1日∼4日までの4日間、日本開催支援委員会の主催に り え 山形 理恵 初日の7月1日には、上川陽子総務副大臣及び武井俊幸総 より「Cutting edge of Multimedia Technologies」のテー 務省統括審議官が展示を視察され、この視察の模様は、 マでマルチメディアの最新技術を紹介するShowcasingを開 NHK札幌放送局、北海道テレビ放送(HTB) 、北海道放送 催した。 (HBC) 、札幌テレビ放送(STV)のニュースで取り上げられ た。このテレビ放送でニュースを見た一般の人も見学に訪れ 総務省、NICT、三菱電機、NTT、富士通、NHK、OKI、 たことから、Showcasingには、4日間で約300名が来場し、 3Dragonsからそれぞれ下表の展示が行われ、国際標準に関 多くの方にマルチメディアの最新技術を体感していただくこ 連する展示も紹介した。 とができた。 写真1.上川総務副大臣の視察 写真2.北海道の大学生たちの見学 表.Showcasing出展者、展示タイトル 出展者 総務省 (協力:NHK、NICT、シャープ) 展示タイトル 85インチモニターによる8K動画のデモ NICT ①言語の壁の無い世界を創る(U-STAR) ②聴覚障がい者と健聴者のコミュニケーション支援アプリ「こえとら」 NICT 簡単 3Dフォーマット(大域ビューと奥行) 三菱電機 ITU-T標準に準拠したIPTV端末装置 三菱電機 10G-EPONネットワークアクセスを用いた高速通信サービス NTT 多視点映像とデプスマップを用いた自由視点テレビ NTT MMT FECを用いた高信頼 4K H.265/HEVCリアルタイム伝送 富士通研究所 映像電子透かし技術のアプリケーション応用 NHK 8K-UHDTV用H.265/HEVCリアルタイムエンコーダ 沖電気工業 ITU-T 標準準拠IPTVソリューション 3Dragons 裸眼全周囲3Dディスプレイ「ホロデッキ」 10 ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) ISO/IEC JTC 1/SC 29札幌会合レポート 三菱電機株式会社 コミュニケーション・ネットワーク製作所 主管技師長 ISO/IEC JTC 1/SC29 国際議長 1.まえがき あさ い こう た ろう 浅井 光太郎 われているJPEG規格、さらにデジタルシネマなどで使われて 2014年7月、ISO(International Organization for Stan- いるJPEG2000、JPEG XRの静止画符号化規格を策定して dardization)とIEC(International Electrotechnical Com- きた。MPEGは1988年に設立され、やはり世界中のデジタル mission)の合同委員会、JTC1(Joint Technical Com- 放送やDVD、ブルーレイ、映像・音楽配信に用いられてい mittee)の小委員会(Sub-Committee)の一つであるSC 29 るMPEG-1/2/4など一連の映像・音響符号化伝送に係る規 と傘下のWG(MPEG、JPEG)が札幌で会合を開催した。 格を策定している。さらに、検索やコンテンツ流通を想定し 本号で別に報告されているITU-T/SG 16会合と時期及び会 たMPEG-7/21の規格も策定している。その中で、MPEG-2 場を共にする開催である。ISO/IEC JTC1/SC 29とITU- Videoや同Systems、MPEG-4 AVC、HEVCがITU-Tとの共 T/SG 16双方の共同チームであるJCT(Joint Collaborative 同作業による代表的な標準化成果である。映像符号化方式 Team)の会合も同時に開催された。筆者はSC 29の議長とし の標準化において、両標準化組織が個別あるいは共同で検 て、これらの会合に参加した。本稿では、SC 29の活動を紹 討を行ってきた成果の歴史を図1に示す。MPEG-2の標準化 介するとともに、SC 29とSG 16の協力関係と札幌会合での 活動は実質的にMPEG会合にITU-Tメンバが参加する形で進 成果について報告し、最後にこれからの活動について述べる。 行したが、1999年以降はJVT(Joint Video Team)やJCTVC(Joint Collaborative Team on Video Coding) 、JCT-3V などのチームを設立して共同運営を行っている。 2.SC 29とITU-Tの協力関係 ISO/IEC JTC1/SC 29は Coding of Audio、 Picture、 3.札幌会合 Multimedia and Hypermedia Informationというタイトルの 下、メディア情報の符号化に関する標準化を行っている。 3.1 札幌会合の成果 SC 29は1991年、前身のISO/IEC JTC1/SC 2/WG 8がSCと 札幌会合において、SC 29傘下のWGには300人を超える して独立して設立された。現在活動しているWGはWG 1と 技術者が参加した。以下、3.2では札幌会合におけるSG 16 WG 11である。それぞれ、JPEG、MPEGと呼ばれることも との共同作業を含めた標準化成果のトピックス、3.3では同 多い。SC 29の規格は符号化方式のみならず、メディア多重 時同一場所での国際会合を札幌で開催したこと自体による 化、ファイル形式、属性記述、プロトコル、APIなど、伝送 成果について紹介する。 と蓄積に係る周辺技術を含んでいる。 3.2 SC 29標準化の成果 メディア符号化に関するISOとITU-Tとの協力関係は1986 年、ISO/TC 97/SC 2/WG 8とCCITT SGVIIIによるJPEG 3.2.1 HEVC(High Efficiency Video Coding) HEVCは ISO/IECで は ISO/IEC 23008-2( MPEG-H 設立に始まる。JPEGは世界中のWebやデジタルカメラで使 1990 1992 1999 1994 ISO/IEC MPEG-1 MPEG-2 Twin Text MPEG-4 H.261 TV電話 TV会議 2013 Twin Text MPEG-4 AVC MPEG-H HEVC H.262 ITU-T 2008 2003 Common Text H.264 H.263 CD-ROM デジタル放送 アナログ電話 DVD 3G携帯 PCなど 3G携帯 インターネット カメラ、プレイヤ H.265 ワンセグ放送 ブルーレイディスク IPTVなど UHDTV モバイル 高品質映像 図1.映像符号化方式の標準化 ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) 11 トピックス Part2) 、ITU-TではRec. H.265の番号を持つJCT-VC共同作 る。同技術は空間上のある点に到来する音の方向性を関数 業の成果である。第1版は2013年12月に出版済みであり、札 で展開し、その係数を符号化伝送して再生側での音場再生 幌会合では二つの拡張に関する作業を完了した。一つはスケ を行う。札幌会合では、これまでの検討をVersion1の規格案 ーラブル拡張であり、もう一つは多視点映像への拡張である。 にするとともに、Version2の検討を開始した。Version1では これらの拡張は2014年1月会合で成立した高品質拡張ととも ビットレート256kbpsから1.2Mbpsで方式評価していたのに に、第2版として統合される予定である。HEVCは世界で急 対し、今回は48kbpsから128kbpsでの提案評価を行い、方 速に適用が進みつつある。札幌会合でも、SG 16側のTech- 式の選定を行った。Version2は2015年6月に規格案となる予 nology Show Caseにおいて、8K映像の符号化再生デモが行 定である。 われ、SC 29側ではスマートフォンなどに向けた映像配信サ ービスの現物紹介が行われた。いずれもHEVCを利用してお り、同規格がモバイルから超高精細映像までの広い範囲の使 3.2.4 FTV(Free Viewpoint Television) 札幌会合ではFTVの公開セミナーを開催した。FTVは再 用に適していることが示された。次回2014年7月会合では、 生時に視点を自由にナビゲーションすることや多数の視点を SG 16の専門家とともに、映像符号化に関するブレインスト 合成して高臨場感の立体映像再生を実現する技術である。 ーミングを行う予定である。例えば、これまで9∼10年ごと セミナーでは超多視点ディスプレイを実現するプロジェクタ に新たな規格によって圧縮率を倍加してきたが、今後はもっ アレイや、無線でカメラを同期させた多視点映像の取得、多 と短い間隔で規格を策定すべきではないかという議論などが 視点映像のコンテンツ作成例など多くの事例が紹介された。 想定される。 MPEGとJCT-3Vでは立体映像について既に、多視点映像の 視点間相関を利用した符号化、被写体までの距離情報を表 3.2.2 MMT(MPEG Media Transport) す奥行きマップの追加によって視点数を減らす符号化を標準 MMTはMPEG-HのPart1として標準化されているメディア 化しており、FTVはこれらに続くものである。FTVは他の項 トランスポート技術である。2014年6月に規格として出版さ 目より長期の課題であり、標準化を間に合わせるべき目標の れており、現在は追加のパートについて標準化活動が進めら 一つと想定されているのは2020年の東京オリンピック・パラ れている。MMTは複数の伝送路で伝送する映像や音声を同 リンピックである。 期して提示する仕組みを提供する。技術的には従来の MPEG-2 TS(Transport Stream)が188バイト固定長のパ 3.2.5 JPEG XT ケットと、同期用にTSごとの参照クロックを用いていたのに JPEG XTは既存のJPEG規格に対するスケーラブルな拡張 対し、可変長のパケットと世界協定時(UTC)を用いる。 であり、後方互換性を確保した規格である。札幌会合では、 MMTは日本における次世代放送のトランスポート形式の候 多ビット拡張やHDR(High Dynamic Range)画像などにつ 補でもある。札幌会合では、MMTの公開セミナー(Devel- いて委員会草案(CD)を作成した。最も普及しているJPEG opers’ Day)を開催した。同セミナーでは四つの講演と七つ 規格はBaselineでビット精度が8ビットであり、多階調の撮 のデモが行われ、盛況であった。次回2014年7月会合で第2 像が可能な現在のセンサを活かしきれない。JPEG XTは9∼ 回を開催予定である。 16ビットの精度、さらに浮動小数点の精度を提供する。後 方互換性により、既存のJPEGデコーダではJPEG XTの符号 3.2.3 立体音響(3D Audio) 立体音響はMPEG-HのPart3として標準化される音響符号 化技術である。同規格では高臨場感の音場再生を可能とす 化画像を8ビットの精度で復号可能であり、JPEG XT対応デ コーダでは多ビット精度の復号が可能である。これらの拡張 は本年10月に規格案、2015年7月に標準化の予定である。 る3D音響をチャネルベース、チャネル+オブジェクトベース、 シーンベースに分類している。チャネルベースは例えば22.2ch のマルチチャネルオーディオである。チャネル+オブジェクト 3.2.6 MAR RM(Mixed and Augmented Reality Reference Model) ベースでは、特定のオブジェクトに対応する音をミックスせ MAR RMはISO/IEC JTC1/SC 24とSC 29との共同作業 ずに符号化伝送し、再生側でバランスを制御できる。シーン であり、札幌会合ではその委員会草案(CD)が完成した。 ベースはHOA(Higher Order Ambisonics)の技術を用い MAR RMは物理的な現実(例えば実写映像)と仮想的な現 12 ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) 実(例えばCG)と両者を複合(例えば実写映像にグラフィ 境と市場ニーズに即してタイムリーに規格を策定し、規格の ックスを重畳又はその逆)した拡張現実(Augmented 内容を告知し、活用を支援することである。例えば3.2.1に記 Reality)システムの概念や構造、想定される応用例を記述 載の映像符号化に関するブレインストーミングは、市場と技 している。今後、MARを利用する新たな規格、アプリケーシ 術レベルのタイミングを検討する試みである。映像符号化以 ョン、サービスの参照モデルになることが期待される。 外にも、モバイル環境の進化と普及に対応したDASH (Dynamic and Adaptive Streaming over HTTP)活用など、 3.3 同時・同一場所での会合開催による成果 提案・検討されている技術課題は多い。 札幌会合はSC 29とSG 16の共催でなく、同時・同一場所 ISO/IECはITU-Tと同様、de jure規格を担う組織の課題 (co-located)の個別開催である。両標準化組織はJCTの活 として、策定する規格の機能や性能だけでなく、誰もが使え 動もあり、参加者が重複している。同時・同一場所での会 る中立性、公平性や保守・更新の継続性を保証することが 議開催は参加者にとって効率が良く、会場費も抑制できる 期待されている。また標準化組織の社会的責任として、例 ため、参加側と運営側の双方にメリットがあった。個別開催 えばアクセシビリティの向上への貢献が期待されている。直 は各標準化組織の運営規則や国内の事務局、同会計が個別 接WG活動を行っているのはSC 29の上位委員会であるJTC1 なための措置である。同じ会場という設定を利用し、ジュネ であるが、SCもこうした責任の一端を担っている。 ーブ以外ではほぼ交流の機会がない役職者の情報交換も期 共にメディア符号化を課題とするSC 29とSG 16は国際標 待したが、会期の中で共通の日時を設定することが困難で、 準化においてこれまで並走してきた。今後の課題についても 実現しなかった。 多くを共有している。同時に、共通点の多い標準化活動の 運営面について、SC 29側では会合参加者による準備委員 ライバルでもある。市場環境や技術課題の分析、個別あるい 会が結成され、国内事務局とともに、札幌会合の準備から は共同で取り組むべき課題の認識、協力関係の仕組みや在 機材の提供、会期中の運営、後始末に至るまで、お世話を るべき姿など、議論すべきことは多い。SC 29自身での議論 していただいた。SG 16側関係者の大変な御努力については を行うとともに、SG 16と継続的に意見交換していくことを ここで触れないが、札幌会合が大きな混乱なく開催できたの 期待している。 は双方関係者の御尽力の賜物である。双方の会合に関係す る筆者の反省点として、国内関係者の情報共有に一層の充 実化の余地があったと感じている。 謝辞 札幌会合の開催に御尽力いただいた札幌会合準備委員 札幌会合は日本での同時開催や標準化会合の同時開催と 会、情報処理学会情報規格調査会諸氏、並びにITU-T/SG いう側面のみならず、他国開催時や会合以外のイベント開催 16内藤議長と日本ITU協会、札幌会合に御協力いただいた にとっても、複数の国際組織間で連携を行う機会であった。 方々に感謝いたします。 将来の活動に役立つような申し送り事項として関係者と整 理したいと考えている。 文献 SC 29 http://kikaku.itscj.ipsj.or.jp/sc29/ SC 29/WG1(JPEG)http://www.jpeg.org/ 4.これからの標準化と協力関係 メディア符号化に係る標準化の今後について考える。1980 年代の後半に標準化活動が本格化したメディア符号化は21 世紀にかけて放送のデジタル化という変革をもたらし、デジ SC 29/WG11(MPEG)http://mpeg.chiariglone.org/ “MPEG Press Release”、ISO/IEC JTC1/SC 29/WG11 N14537 (2014) 短期集中セミナー「画像・音声符号化伝送技術∼最前線と標 準化動向∼」情報処理学会(2014) 村上、浅井、関口「高効率映像符号化技術HEVC/H.265とそ タルメディアを活用する多様なサービスを誕生させた。今日、 の応用」オーム社(2013) 映像音響コンテンツにとって、通信・放送・蓄積(パッケー 特集「立体音響技術」映像情報メディア学会誌、Vol.68、 ジ)の境界は従来よりも曖昧なものになり、メディアを活用 No.8、pp.601-624(2014) するサービスの多様性が増している。 今後、注力していくことの一つは、多様化するサービス環 妹尾「MPEG会合(7月札幌)準備ノート」映像情報メディ ア学会誌(2014掲載予定) ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) 13 特 集 iPOP 2014 10th International Conference on IP+ Optical Network(iPOP2014)の概要 慶應義塾大学 理工学部 情報工学科 教授 慶應義塾大学 理工学研究科 特任教授 NTTアドバンステクノロジ 先端プロダクツ事業本部 企画部門長 やまなか おかもと ひらまつ なおあき 山中 直明 さとる 岡本 聡 1.はじめに あつし 平松 淳 考えがラフコンセンサスとRunning Code、つまり、詳細の International Conference on IP+ Optical Network スペックではなく、コンセプトを決めた後は、実際に動くコ (iPOP)は、今年で10回目となった。iPOPは、光技術とIP ードを作り、プロトコルとしてデファクト化する。ISOCORE 技術を統合した次世代ネットワークに関する国際会議とエキ は、そのRunning Codeのインタオペラビリティを数多く実 シビションで構成され、標準化やデファクトに大きな影響力 施しており、逆にIETF等の世界標準に反映させるには、 を持った、最大規模の会議である。本報告では、その特徴や ISOCORE等を通じて、海外キーメンバーと一緒に技術検証 目的を説明する。 を行うことが必要である。 図2に、それぞれの関係を示す。IETFは複数のRunning Codeを重要としており、それに基づく合意が必要である。一 2.iPOPとは 般的に、故障時や異常系と呼ばれる非正常系の実装は行わ iPOPを理解するのは、その創成の歴史を理解することが ず、基本コンセプトをTest Codeとして開発し、Inter Oper- 大きな助けとなる。米国にMPLS(Multi-Protocol Label abilityにより、その有効性と問題点を抽出する。IETFで標 Switching)コンファレンス(現在の名称はSDN(Software- 準化後に、RFC(Request For Comment)としてまとめら Defined Networking)技術をカバーするためにSDN/MPLS れ、それに基づき開発を進める。この際にも、ネットワーク に変更)があり、既に17回を数えているエスタブリッシュさ 製品は、一部インターフェースにおいて相互接続が必要であ れた会議である[1]。SDN/MPLSは、米国のISOCORE[2]が主 る。そのため、ISOCOREや日本におけるけいはんな情報通 催している(図1) 。 信オープンラボやPIL(Photonic Internet Lab.)のような活 ISOCOREは、北米を代表する通信プロトコル及びサービ 動は、開発コミュニティとして重要である。PILは、慶應義 スインタオペラビリティの実験、検証サイトであり、実際に 塾大学、NTT研究所が中心となって日本の産学官連携によ は、IETF(Internet Engineering Task Force)で制定され りGMPLS技術の標準化・実用化を目指すために構築された るプロトコル仕様の事前検証やプロトコル実装(Running 大学・通信キャリア・通信機器ベンダーから構成されるバー Code)作りを行う。IETFは、御存じ、北米が中心となった チャルな研究機関である。 グローバルデファクトスタンダード機関であり、その基本的 SDN/MPLSコンファレンスは、そのISOCOREが主催す る、いわば、公開される最もホットな話題のプレゼンテーシ ョンとブース展示の場である。多い時には1000名近くがアジ アや欧米各国から参加し、そのほとんどが通信機器ベンダー 2014 製品 iPOP MPLS Tokyo.JP Test Code Washington DC Japan North America 図1.History of iPOP 14 ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) Research/ Vender 寄書 Inter Operability 実装技術 IETF RFC 図2.IETFにおける標準化とTest Code、製品実装の関係 開催日 会場 iPOP 2005 2月21∼22日 Tokyo fashion town iPOP 2006 6月22∼23日 Meiji Kinenkan iPOP 2007 6月7∼8日 NTT Musashino Research and Development Center iPOP 2008 6月5∼6日 NTT Musashino Research and Development Center iPOP 2009 6月11∼12日 National Institute of Information and Communications Technology iPOP 2010 6月10∼11日 NTT Musashino Research and Development Center iPOP 2011 6月2∼3日 NEC Tamagawa Plant(Attender 200∼300) iPOP 2012 5月31日∼6月1日 Keio University iPOP 2013 5月30∼31日 TKP Otemachi Conference Center iPOP 2014 5月22∼23日 NTT Musashino Research and Development Center 図3.iPOP開催地 や通信キャリアのエグゼクティブやエンジニアであるという、 ト型の会議は、むしろ、トレンドと将来ビジネスへのマーケ 巨大な会議である。 ティングの色が強く、技術の詳細はない。iPOPでは、標準 本来、SDN/MPLSコンファレンスは、Internationalで行 化やテストベッド、更には実験結果といったブロードな話題 おうと合意していたが、IETFの主要メンバーから、コンファ で、発表者よりも参加者が極めて多く、そのほとんどがイン レンスを拡大してヨーロッパとアジアでも開催するとの提案 ダストリであることが大きい。また、日米を代表するベンダ があり、アジアはiPOPとして、光技術に軸足をおいて、キャ ーや、その研究所が中心となって論文を発表しており、むし リアバックボーンネットワークをターゲットとした会議をPIL ろ、アカデミアでも産学連携やナショナルプロジェクトへの が主催者として開催することになった。iPOPは、現在では 参加、更には、プロダクトを持ったり、オープンソフトウェ PILとISOCOREの共催となっている。iPOPの開催地等を図 アを開発できるメンバーに限られている。 3に示す。 iPOPとSDN/MPLSは相補的な関係を築いており、春の 3.iPOPの話題 タイムフレームにおいては、日本でiPOPを開催し、秋のタイ ムフレームにおいては、米国でSDN/MPLSを開催している。 iPOPのフューチャーを分析してみよう。図5に、iPOPの主 iPOPの会議の規模はSDN/MPLSよりは小さく200∼300名 にカバーしているエリアと、代表的キーワードを並べる。 であるが、後述するように2011年の東日本大震災の直後で iPOPはどちらかというと、キャリアネットワーク、さらにメ も、参加人数の落ち込みは小さく主要メンバーから重要視さ トロからコア/バックボーンの技術が多い。Layerはプロトコ れていることが分かる。 ルが主であるが、Serviceやアプリケーションとハードウェア iPOPのカバー領域を他の国際会議と比較したポートフォ に近い技術もカバーする。特に近年は、データセンタやクラ リオとして、もう一度整理する(図4) 。国際会議の近年の傾 ウドフェデレーション(Inter-cloud)といったネットワーク 向は、アカデミアが中心で、企業やキャリア等からの貢献が のユーザーとも言うべき技術との融合を狙った研究が行われ 減少している。これは、IEEEのCommunication Societyの ている。その代表がSDNであり、もともとデータセンタ内へ フラッグシップコンファレンス(Globecom及びICC)におい の適用を目指した技術であるが、それをキャリアネットワー ても顕著である。一方、Interop Tokyoに代表されるイベン クのコントロールと融合して、オーケストレーションさせる Service Multi-layer iPOP Topics Network (Protocol) NFV SDN Inter AS GMPLS Future Optical Access/Metro Openflow ・Inter‐cloud ・GICTF Interface Access 図4.iPOPのカバー領域 Metro Backbone Data Center 図5.iPOPのカバー技術領域 ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) 15 特 集 iPOP 2014 GMPLSは、C-planeとD-planeの分離と、パケットのみでは M-plane なくλパスやTDM(Time Division Multiplexing)パスも全 iPOP hot topics てRSVP(Resource reSerVation Protocol)の拡張パラメー タとして一元的に扱う、いわば、オペレーションの統合を目 C-plane 指したものである。同時に、LAN(Local Area Network) の技術であったイーサネットを、キャリアネットワークへの 適用を狙ったPBB-TE(Provider Backbone Bridge Traffic L3 L2 L1 D-plane L3 L2 L1 Engineering)等の技術が出てきた。これらに共通して言え るのは、プロバイダーのバックボーンでは、今までよりも 図6.iPOPとネットワークレイヤ構造の関係 OAMやトラヒック制御技術の高度化が必須である点である。 つまり、故障が生じた時に、ネットワークが自動的に故障箇 方法や、OAM(Operation, Administration and Mainte- 所を発見したり、通信経路を自動的に切り替えたりする機能 nance) 、信頼性を検討している。 を実装することは、容易ではなかった。そのため、プロトコ iPOPとネットワークのレイヤ構成の関係を図6に示す。 iPOPは、C-plane(コントロールプレーン)技術が中心であ るが、D-plane(データプレーン)のキャリアイーサネット、 ルが複雑になり、大規模なキャリアネットワークへの適用に は制限があった。 また、次に話題として出てきたのは、データセンターのネ MPLS-TP(Transport Profile)等や、M-plane(管理プレ ットワーク技術というべきOpenflowやSDNのキャリアネット ーン)のオペレーション、監視手法もレポートされる。近年 ワークへの適用である。今やiPOPにおいても半数以上が は、オープンフローに代表されるフローでネットワーク内を SDN関連の話題である。また近年は、新世代ネットワーク、 転送する技術が出る一方、SDNやNFV(Network Func- 特に、Data(Contents)Centric Network技術がアプリケー tions Virtualization)に対するインパクトも詳細に検討され ションとしてホットな話題である。一方、これらのネットワ ている。 ーク技術の進展を支え続けたのは光伝送技術であり、10∼ iPOPは、SDN/MPLSがインターネットに軸足をおいたキ 40∼100Gbpsと進展することにより伝送コストが下がり、複 ャリアバックボーン技術を議論する場であるのに対して、 雑な処理やサービスをクラウドで行うことになった。その結 光+IP技術によるキャリアバックボーン技術を議論する場で 果、ネットワークのトラヒックがデータセンタ中心に向かい、 ある。さて、これらの技術が、この10年間にどのように遷移 キャリアネットワークにおいて電子的なパケットスイッチング (イーサネットスイッチやIPルータ)を利用したトラヒックア してきたかを示したのが図7のトレンドである。 iPOPの ス タ ー ト は 、 WDM( Wavelength Division グリゲーションにより伝送帯域を余すことなく利用するコス Multiplexing)ネットワークが導入され、波長パス(λパス) トダウンを指向するのではなく、むしろ帯域を余らせて利用 の概念に合わせて、MPLSを拡張したGMPLS(Generalized することで運用コストを低減する方法として、アグリゲーシ MPLS) ョンを廃止する方向に向かうことも考えられる。 [3、4] がその大きなトピックスとして取り上げられた。 2004(iPOP 1st) IP+Optical 2014(iPOP 10th) GMPLS Openflow C/D separation Multilayer Multi - AS Operation Virtualization SDN Software Function ?? NFV Orchestration M2M on 40Gbps Digital Coherent 100Gbps Elastic 図7.iPOPの技術トレンド 16 ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) iPOPは通常2日間で行われる、密度の高い会議である。 ①初日は、IETFのワーキンググループチェア等の世界的 に著名なメンバーを入れたプレナリーやキーノートがあ る。その後、ISOCOREとPILの連携を目指した、クロ Ethernet Data Center Centric 4.iPOPの構成と参加者 Over 100G ーズなランチミーティングがある。 ②午後は、ビジネスセッションがあることが多い。これは、 この分野の先端企業による最新の製品開発や、企業戦 略を紹介する、ホットなセッションである。 初日 2日目 (1) プレナリー キーノート テクニカル セッション ISOCORE Lunch Meeting ︵ (2) ビジネスセッ 展 3 示︶ ション 動 ブ態 ーデ スモ レセプション テクニカル セッション 展動 示態 ブデ ーモ ス Closing セッション 図8.iPOPのスケジュール 図11.iPOP2005からiPOP2014の参加者数推移 ③展示ブース、動態デモ(エキシビション)、これは、 離れは全くないと言える。また、iPOPの参加者数の変遷を iPOPの大きな特徴である。よくあるエキシビションとは 図11に示す。初期のGMPLSの盛り上がりに対応して、参加 大きく異なり、展示ブースを先端企業や国の研究所、 者数は450名近くまで増加し、トピックスの変遷に伴い増減 大学等が実際に装置を動かしながら、来客者と深い意 しているが、安定して300名規模の参加者による会議運営が 見交換を行っている。 なされていることが分かる。 また、別稿で詳細は紹介されるが、ここでは、ショーケー スとして最先端のプロトコル(例えば、2014年は、SDN化さ れた100Gbpsを超える、メトロ/アクセス/コア網のマルチベ 5.むすび ンダー)相互接続動態デモを行ったりした。これらの展示は、 iPOP(International Conference on IP+Optical Net- 一見の価値がある。 図9に、2011年の参加者の統計を、図10に2014年の参加 work)の概要を示した。10回になる本会議は、日本におい 者の統計を示す。8割以上が通信機器ベンダーや通信キャリ ては極めてユニークに、産業界や最新の標準化等にインパク アのメンバーであり、近年の国際会議に見られる企業の会議 トを与えながら開催されてきた。米国のIETFやISOCOREと 連携を取りながら、テクニカルな論文発表とともに、充実し Academia、18% た展示やデモが行われている。日本においても、このような、 Government、Institute、6% コンソーシアム型の研究開発スタイルと、グローバルにイン パクトを与え、デファクトが形成できる活動が必要である。 Vendor、60% Carrier、16% なお、iPOPの今後の開催予定は以下のとおりである。 iPOP 2015(予定) :沖縄 2015.4.22-24 2days total 276 iPOP 2016(予定) :慶應義塾大学(横浜)2016.6.16-17 図9.iPOP2011参加者の統計 Others(Journalist)、1% Academia、12% Government、Institute、4.5% 注 [1] http://www.isocore.com/sdn-mpls/ [2] http://www.isocore.com/ Vendor、66.5% Carrier、16% [3] E. Mannie (Editor), “Generalized Multi-Protocol Label Switching (GMPLS) architecture”, IETF RFC3945, Oct. 2004 2days total 386 図10.iPOP2014参加者の統計 [4] “MPLS、GMPLS、フォトニックとSDNを理解する” 山中 直明編著、オーム社(2014)、[山中研究室1][山中研究室 2R1] ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) 17 特 集 iPOP 2014 iPOP2014講演ホットトピック 電気通信大学 情報理工学研究科 教授 日本電信電話株式会社 NTTネットワーク基盤 技術研究所 プロジェクトマネージャ 独立行政法人 情報通信研究機構 光ネットワーク研究所 研究室長 おお き しおもと はら い えい じ 大木 英司 こうへい 塩本 公平 1.全体 ひろあき 原井 洋明 り上げる。さらに、例年のiPOPの中心トピックである光ネッ 第10回目となるiPOP(International Conference on IP+ トワークやパケットトランスポートにおけるSDN適用を扱っ Optical Network)では、高信頼、監視、操作性が重要視さ た技術セッションを紹介する。また、10周年を迎えたiPOP れるキャリア向けSDN(Software-Defined Networking)を で行った二つの新しい試みを紹介する。一つは電子情報通信 中心トピックに、iPOPプログラム委員会の企画により、基 学会ネットワーク仮想化時限専門委員会とのジョイントセッ 調講演2件、招待講演3件、一般講演10件(3セッション) 、 ションであり、ネットワーク仮想化及びNFV(Network ポスター4件の発表が行われた。発表者の所属は日本10、米 Function Virtualization)に関する国内の最新の技術動向の 国7、イタリア1、韓国1と国内外比がほぼ同じであった。本 報告である。もう一つは、クロージングセッションにおける 解説では、まず、基調講演、招待講演から一件ずつ、トラン 海外2名と国内5名のパネリストを招いたCurrent status and スポートネットワークを対象としたSDNを核とし、データセ challenges of SDN and NFV toward future of transport ンタとの連携、あるいは、複数のドメインを一括管理する大 networkと題したディスカッションである。iPOP2014のテク 規模ネットワーク管理制御技術の動向を紹介した講演を取 ニカルプログラム構成を図1に示す。 Program at a Glance Thursday 22, May 2014 Friday 23, May 2014 iPOP Plenary Presider: iPOP Organizing Committee Co-Chair Opening Address - Naoaki Yamanaka, iPOP General Co-Chair, Keio University, Japan - Bijan Jabbari, iPOP General Co-Chair, Isocore, USA Keynote Technical Session 2: Software-Defined Networking and Network Virtualization Chair: Itaru Nishioka, NEC, Japan K-1 Yukio Ito, SVP Service Infrastructure NTT Communications, Japan K-2 Justin Dustzadeh, Ph.D. CTO & VP Technology Strategy Networks, Huawei, iPOP Exhibition introduction - iPOP Exhibition Co-Chair Local arrangement / Lab tour introduction - iPOP Local arrangement Co-Chair Technical Session 1: SDN for Optical Networks Chair: Motoyoshi Sekiya, Fujitsu Labs America, USA T1-1 Xiaoyuan Cao, KDDI R&D Labs., Japna T1-2 Takaya Miyazawa, NICT, Japan T1-3 Sota Yoshida, Mitsubishi Electric Co., Japan Business Session Chair: Akihiro Nakamura, TOYO Corporation, Japan B-1 Chris Liou, Infinera Corporation, USA B-2 Atsushi Iwata, O3 Project, Japan B-3 Alex Henthorn-Iwane, QualiSystems, USA B-4 Toshal Dudhwala, Ixia, USA B-5 Hiroaki Harai, NICT, Japan B-6 Hidenori Inouchi, Hitachi, Japan B-7 Allen Umeda, Spirent Communications, USA Poster Session / Exhibition P-1 Julien Thieffry, Keio University, Japan P-2 Sam K. Aldrin, Huawei Technologies, USA P-3 Masa Iwashita, A.I.Corporation, Japan P-4 Shaheedul Huq, Coriant, USA T2-1 Shinya Ishida, NEC, Japan T2-2 Shuji Ishii, NICT, Japan T2-3 Takumi Oishi, Hitachi, Japan Invited-talk Session: Chair: Kohei Shiomoto, NTT, Japan I-1 Young Lee, Huawei, USA I-2 Ming Xia, Ericsson Research, USA I-3 Jin Seek Choi, Hanyang University, Korea Technical Session 3: Traffic Engineering and Resource Optimization Chair: Shoichiro Seno, Tokushima Bunri University, Japan T3-1 Paparao Palacharla, Fujitsu Laboratory of America, USA T3-2 Asato Kotsugai, Keio University, Japan T3-3 Gianmarco Bruno, Ericsson Telecomunicazioni, Italy T3-4 Victor Yu Liu, Huawei Technologies, USA Joint session of IEICE Technical Committee of Network Virtualization and iPOP Chair: Katsuhiro Shimano, NTT, Japan J-1 Hirokazu Takahashi, NTT, Japan J-2 Michiaki Hayashi, KDDI R&D Laboratories Inc., Japan J-3 Akihiro Nakao, The University of Tokyo, Japan J-4 Yasunobu Chiba, NEC, Japan Closing Panel Session by iPOP Technical Program Committee "Current status and of SDN and NFV toward future of transport network" Panelists: Akihiro Nakao (Univ. of Tokyo), Shuji Ishii (NICT), Shinya Ishida (NEC), Ynuog Lee (Huawei), Meral Shirazipour (Ericsson), Katsuhiro Shimano (NTT), Xiaoyuan Cao (KDDI Labs) Coordinator: Kohei Shiomoto (NTT) Closing by iPOP Organizing Committee Co-Chair 図1.iPOP2014プログラム一覧 18 ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) さらに、OpenFlowスイッチ、ゲートウェイ、パケットオプ 2.基調講演 ティカルノードなどをSDNコントローラにより制御し、エッ NTT Communicationsの伊藤幸夫氏より「Next Steps in ジにてWANアクセラレータやファイアウォールなどをNFV機 the SDN/OpenFlow Network Innovation」と題した基調講 能として備えることで、様々なサービスを提供する構想と、 演がなされた。伊藤氏はまず、トラヒック増、装置コスト増、 SDNによるネットワークを実環境と同じ条件下で設計・試 運用コスト増に対する課題は、通信サービス事業者がどう収 験可能なシステムVOLTを紹介した。 益を上げるかであると述べた。その課題解決に対し、高速、 最後に、SDNとクラウドコンピューティング研究促進のた 大容量、迅速柔軟というキーワードを提示し、次世代の高 めの沖縄オープンラボ及び、物理ネットワークと仮想ネット 速大容量ネットワークを提供するPTN(Packet Transport ワーク間の情報反映を迅速にしマルチレイヤネットワークの Network)として波長ごとに100Gbps、80波長の計8Tbps回 統合管理制御をSDNで実現するためのO3(オースリー)プ 線を東阪間に提供していること、CDC(Colorless、 ロジェクトを紹介し、ONF(Open Networking Founda- Directionless、Contentionless)のROADM(Reconfig- tion)等に貢献しつつ、SDN技術の促進と普及を進めると述 urable Optical Add/Drop Multiplexer)により、二つの経 べた。 路に故障があっても更に別経路に切替えできることを東北大 震災の例により紹介した。また、ネットワークを経済的にす 3.招待セッション るために以前はコアルータによってパケット集約する必要が あったが、昨今はパケットトランスポートを導入し、エッジ 招待セッションにおいては、新たにIETF(Internet Engi- ルータでフルメッシュのパケットパスを提供し経済的なネッ neering Task Force)で議論が開始されようとしているテー トワークになっていることも紹介した。 マであるACTN(Abstraction and Control of Transport 迅速、柔軟なネットワークとして、ユニークで差別化され たサービスを素早く提供することができるSDN/NFVの取組 Network)に関してYoung Lee(Huawei、USA)から発表 があった(図2) 。 を挙げた。NTT Communicationsでは、10か国を超える国 ACTNの目標は、複数のマルチテクノロジのベンダ島から にまたがってデータセンタを構築しクラウドサービスを提供 なるトランスポートネットワークを単一のトランスポートネッ しており、顧客から要求があると、ネットワークコントロー トワークとして可視化し、制御するための仮想環境を創造 ラとオープンフロースイッチを用いて、データセンタ内、及 し、仮想的なネットワークオペレーションを実現することで び、データセンタ間に迅速にネットワーク資源を提供できる ある。 ことを述べた。エンドツーエンドではVLAN(Virtual Local 通信事業者のトランスポートネットワークは、一般に、複 Area Network) 、MPLS(Multi-Protocol Label Switching) 数のドメインから構成され、各ドメインがベンダ島(同一ベ を用い、その設定をSDNコントローラが自動的に行うことに ンダの機器から構成されるネットワークのドメイン)となっ よりVPNを構成している。 ている。このようにトランスポートネットワークが複数のベ 図2.Young LeeによるACTNに関する招待講演 ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) 19 特 集 iPOP 2014 ンダ島から構成されるのは、ベンダによって、技術、運用方 る。その実現のために、OpenFlowの命令とノード独自の 針がそれぞれ異なっていることに起因する。異なるベンダ島 CLIとを仲介するためのOpenFlow Agentを光パケットノード をまたがって運用することはトランスポートネットワークを運 側に実装した。Extended OpenFlow MessageとExtended 用する通信事業者の永年の課題であった。新しくサービスを Flow Tableとを今回実装し、ホスト間の通信をするために、 導入するたびに、複数のベンダ島をまたがって、多量の設計 OpenFlowスイッチと光パケット交換ノードのテーブルを 稼働や手動保守作業が必要であった。 SDNコントローラから制御する実験に成功している。 ACTNでは、迅速なネットワークサービスの展開を可能と Sota Yoshida(三菱電機)は、OTNにSDNを適用するア し、従来のネットワークオペレーションを改善し、既存サー ーキテクチャを検討し、SDNアダプタを用いてGMPLSのシ ビスをスケールさせることを目標とするための方法を検討す グナリングを活用する方法を述べた。SDNアダプタに用い、 る。ACTNでは、トランスポートネットワーク資源の運用の 従来ネットワークエレメントにある制御プレーンをネットワ ために用いられる方法や能力を定義する。下位レイヤのネッ ークマネジメントシステムに移行する。さらに、ドメインご トワーク資源を抽象化し、上位レイヤのアプリやユーザに見 とのシグナリングを含めた三つの要素によって、故障箇所の せる機能、インフラ資源をスライシングし、特定のアプリケ 特定、光パスの設定しやすさ、設定時間に関する改善を施 ーションやユーザ要件を満足させるため、顧客を接続するた すことができることを紹介し、さらに、これを大規模な光ネ めの機能、情報モデルを介して、接続性や網資源を要求す ットワークにおけるエンドツーエンドのパス設定や、故障か る様々な顧客をサービスするための計算方法、仮想ネットワ らの復旧に用いることができることを示した。 ークコントローラ、トポロジの抽象化とオープンなインタフ ェースなどを規定する。 IP/MPLSネットワークからSDNをベースとするパケット転 送ネットワークへ中断なく移行することが求められている。 ACTNのユースケースとしては仮想ネットワークオペレー Shinya Ishida(NEC)は、Stateful PCE(path computa- ションがあり、ACTNはこのための標準のAPIと抽象化技術 tion element)を用いたIP/MPLSネットワークからパケット を確立することを目標としている。仮想ネットワークとして 転送ネットワークへのマイグレーション技術について述べた。 は、単一の管理ドメイン内の複数のドメイン、複数の管理ド software-defined転送ネットワークを実現するソリューショ メイン、MVNO(Mobile Virtual Network Operator)等を ンとして、IP-integrated transport network(ITN)を導入 想定している。ACTNの他のユースケースとしては、Packet- した。ITNは、MPLSからWDMネットワークまでの複数のレ Opticalトランスポートへの応用もあり、Packetドメインと イヤをカバーするノード、及び、OpenFlowのような標準プ Opticalドメインの接続を想定している。ACTNの他のユース ロトコルを介して制御するITNコントローラから構成される。 ケースとしては、Global Data Centerへの応用も想定してい マイグレーションシナリオとして、仮想opaqueノードシナリ る。 オとトランスペアレントL2ブリッジシナリオを紹介した。仮 IETFにおいて、ACTNのBoF(Birds of a Feather)を計 想opaqueノードシナリオでは、ITNが、IP/MPLSネットワ 画しており、様々なキャリアからの要件取りまとめに着手す ークを大きな一つの仮想ノードとして振る舞うように制御す る予定である。 る。L2ブリッジシナリオは、ITNが、Ethernet pseudo-wired ネットワークとして振る舞うように制御する。Stateful PCE に接続されたITNコントローラは、ITNのエッジノードにおけ 4.技術セッション 光ネットワークへのSDN適用が検討されている。ここでは、 ShowCaseの動態展示技術を含む講演を紹介する。 るサービスフローを監視・管理することにより、中断のない マイグレーションを実現する。 Takumi Oishi(日立製作所)は、IPネットワーク、ATM Xiaoyuan Cao(KDDI研究所)は、量が動的に変動するト ネットワーク、SDHネットワーク、フレームリレーネットワ ラヒックを収容するための検討として、光パケット交換(技 ーク等の現存する様々なネットワークを、ネットワーク仮想 術概要は、同じセッションで講演したTakaya Miyazawa 化技術を用いて、マルチサービス統合ネットワークにマイグ (NICT)の講演を参照)のSDN適用について述べた。動的 レーションする方式を提案した。提案方式では、現存するネ 収容のための光パケットノードのルーティングテーブルの設 ットワークにアクセスするノードに対して、ネットワーク仮想 定変更を、SDNコントローラからOpenFlowによって制御す 化によりエミュレーションすることにより現存するサービスを 20 ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) 提供する。マイグレーションにおいては、サービスごとに徐々 にマイグレーションを行う方式を紹介した。 インタードメイン仮想化に関する講演(Michiaki Hayashi、 KDDI研究所)では、SEPを導入することにより、異なる仮 Shuji Ishii(NICT)は、OpenFlow/SDNテストベッド 想化ドメイン間を接続するインタードメイン仮想化技術が紹 RISE 3.0の設計と実装について紹介した。OpenFlowテスト 介された。SEPを用いたインタードメインアーキテクチャに ベッドRISEは、2011年に、JGN-X(Japan Gigabit Network おいて、共通なAPI(application interface)とスライスを定 eXtreme)上に、パブリックサービスとして提供が開始され 義することにより、制御プレーンの接続が可能になり、仮想 たOpenFlowテストベッドである。RISE 2.0では、JGN-X物 化ドメイン間のデータプレーン間変換が可能になる。SEPの 理トポロジに制限されていたため、ユーザのトポロジをコン メリットとして、仮想化ドメインの中立性が保たれ、特定の フィグレーションできなかった。RISE 3.0は、この問題を解 仮想化ドメインのモデルに依存しない変換機能を定義できる 決し、ユーザのOpenFlowスイッチとJGN-Xスイッチの間に こと、及び、仮想化ドメイン間接続におけるネットワークリ RISE OpenFlowスイッチレイヤを導入することにより、ユー ソース管理が可能になることが挙げられる。 ザによるトポロジコンフィグレーションを容易にする方式を 実現した。 FLAREに関する講演(Aki Nakao、東大)では、データ プレーンをプログラマブルにするアーキテクチャFLAREが紹 介された。FLAREでは、ASICの代わりに多くのコアプロセ ッサ(many core processor)を使用することにより、パケ 5.ジョイントセッション ットの処理がプログラマブルになる。一般的なプロセッサ、 最先端のネットワーク仮想化技術と光IPネットワーク技術 多くのコアプロセッサ、及び、多種なプロセッサを用いた階 の領域にまたがる技術分野を活性化することを目的として、 層的な資源管理を可能にするFLAREの設計思想、プロトタ 電子情報通信学会ネットワーク仮想化時限専門委員会と イプ実装、その性能が報告された。また、様々な機関の研究 iPOPプログラム委員会により、ジョイントセッションが企画 者・技術者がSDN/NFVの現状の問題についてインタラクテ された。このセッションは、四つの講演から構成された。ジ ィブに議論するSDN/NFVインキュベーションプログラムの ョイントセッションの講演のトピックは、 (1)Lagopus:広 取組が報告された。 域ネットワークに向けた高性能ソフトウェアOpenFlowスイ NFVのための管理・オーケストレーションアーキテクチャ ッチ、 (2)SEP(slice exchange point)を用いたインタード に関する講演(Yasunobu Chiba、NEC)では、NFVが実用 メイン仮想化、 (3)FLARE:SDNとNFVのためのプラット 化されるための課題、及び、サービスレベルを保証するため フォーム、 (4)サービスレベル保証が要求されるNFVのため に必要な管理・オーケストレーションアーキテクチャが述べ の管理・オーケストレーションアーキテクチャ、であり、ネ られた。NFVにおいて、ネットワークサービスを構成するた ットワーク仮想化及びNFVに関する最新の技術が報告され めに、集中的に行う管理・オーケストレーション機能が必要 た。 になる。サービスレベルを保証するためには、論理的な計算 Lagopusに関する講演(Hirokazu Takahashi、NTT)で は、Lagopusと名付けられたソフトウェアベースのOpenFlow 資源・ネットワーク資源を見積り、これらを物理的資源への 割当て・制御の必要性が報告された。 スイッチ(Version 1.3)の設計とプロトタイプ実装が紹介さ れた。Lagopusの主なターゲットは、広域ネットワークに適 用する際に求められる性能と機能を提供することである。 6.パネルセッション Lagopusプロトタイプは、10Gbpsレベルのフロー処理性能 iPOPの主たるテーマであるPacket-Opticalトランスポート を、最先端のマルチコアCPUとネットワーク入出力インタフ は将来のトランスポートネットワークアーキテクチャである ェースを利用することにより、Intel x86サーバ製品上で実現 が、通信事業者はトランスポート技術に関して選択肢があ できることが報告された。さらに、Lagopusは、広域ネット る。Packetトランスポートに関しては、IP、MPLS(-TP) 、 ワークで使用されるプロトコル(例、MPLS:Multi- Ethernetなどが候補であり、Opticalトランスポートに関して Protocol Label Switching、 PBB: provider backbone は、OTNやWSONなどが候補である。このような選択肢が bridge)の処理を含むOpenFlow 1.3の仕様をほぼ完全にサ ある中で、通信事業者はどのようなPacket-Opticalトランス ポートしていることが報告された。 ポートをデザインし、それをどのように運用するかを見極め ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) 21 特 集 iPOP 2014 ているところである。 SDNは近年脚光を浴びている技術であり、通信事業者は リテータにより、パネル討論が行われた(図3) 。 パネリスト SDNが将来のトランスポートネットワークを運用する上で、 ・Akihiro Nakao(Univ. of Tokyo) 重要な役割を果たすと考えている。通信事業者はSDNを使 ・Shuji Ishii(NICT) うことで、制御プレーンをネットワーク装置から分離し、彼 ・Katsuhiro Shimano(NTT) ら自身の運用ポリシーを実現することができる。 ・Xiaoyuan Cao(KDDI Labs) また、NFVも近年脚光を浴びている技術である。 ・Shinya Ishida(NEC) SGSN/GGSN( Serving General packet radio service ・Young Lee(Huawei) Support Node/Gateway General packet radio service ・Meral Shirazipour(Ericsson) Support Node) 、ファイアウォール、NAT(Network Address ファシリテータ Translation) 、CDN(Contents Delivery Network) 、ロー ・Kohei Shiomoto(NTT) ドバランサ、DPI(Deep Packet Inspection)などのネット 下記を論点として、示唆に富む発言と活発な議論がなさ ワーク機能が仮想化され、トランスポートネットワーク上に 展開されており、これらのネットワーク機能を選択し、接続 することで、様々なネットワークサービスを実現するもので れた。 ・Do we have enough software development resource in SDN/NFV era? ある。NFVにより、通信事業者は、様々なネットワークサー ・Standard-driven or Open-source-driven? ビスを実現するために、ソフトウェアによりネットワーク機 ・What do the operators say about the real pain points? 能を実現し、市中のIT仮想化技術を用いてキャリアクラウド −Multi-domain issue? Vendor islands? Organization のデータセンタ上に集約することが可能となる。NFVはSDN とともに、将来のキャリアネットワークにおいて、サービス オーケストレーションの有望なイネーブラとして、期待され ている。すなわち、マルチテクノロジのトランスポートネット ワークとネットワークサービス機能が統一的に管理・制御さ domain? Virtual network operation? ・Is it easy to deploy and operate nation-wide SDN/ NFV network? ・IP should be integrated into transport network(OPTN)? ・Optical node should be controlled by SDN? れる。 このような背景を踏まえて、下記のパネリスト及びファシ ・What is the role of optics in SDN/NFV era? 例えば、Nakaoは、SDN/NFVの成功は、優秀なプログラ マの創出にかかっており、それを生むエコシステムを作る必 要があること、その土台として例えば、氏らが進めるトイブ ロック構想が紹介された。Shimanoは広域ネットワークに向 けた高性能SDN/OpenFlowソフトウェアスイッチLagopus のオープンソース化について述べた。Ishiiは、国全域の広域 SDN/OpenFlowネットワークRISEの運用の現状を紹介し、 広域統合環境ではトラブル解決をいかに洗錬するかが課題に なると述べた。Caoは日欧プロジェクトSTRAUSSなどを紹介 し、SDNが様々な光トランスポート統合やドメイン間接続を する手段として非常に有効であることを述べた。Shirazipour はNFVを光ネットワークに用いる例を紹介した。 図3.パネルセッションの模様 22 ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) iPOP2014で展示・デモの解説 ふく い まさ き NTTアドバンステクノロジ株式会社 応用NIビジネスユニット ビジネスユニット長 福井 将樹 NTTコミュニケーションズ株式会社 技術開発部 担当部長 佐藤 陽一 さ とう つりたに 株式会社KDDI研究所 光トランスポートネットワークグループ グループリーダ 1.はじめに よういち たけひろ 釣谷 剛宏 Profile(MPLS-TP)等パケットトランスポート機器や iPOP2014は記念すべき10回目の開催ということもあり、 100Gb/s級の光伝送機器の展示が多く見られた。2011年頃 展示出展数は過去最大の21を数え、多くの企業・団体に参 からは、Software Defined Networking(SDN)やOpenFlow 加いただき、大変盛況であった。図1は第1回目からの展示 をトランスポート機器へ実装検討する取組が進められ、展示 出展社数を示す。第1回目の2005年以降、出展社数は若干 でも各社の取組が紹介された。 減少傾向にあったが、昨年は微増し、今年は大幅に増加し 2014年は、NTT武蔵野R&Dセンターのコンベンションホ た。出展企業・団体の占める海外企業数は、例年3∼6を数 ールにて、図2に示すように21の展示ブースと一つのショーケ え、国際会議の展示会として花を添えている。また、展示の ースブースを設け、展示会を開催した。参加企業・団体を キーワードは、その年の技術トレンドに合わせて変化し、こ 表1に記載する。出展内容については、上記に示すとおり、 こ数年は大きく変化した。開催初期はIPと光の連携の全盛 トランスポート機器におけるSDN/OpenFlow技術が大半を 期の時代であり、トランスポート機器間をGeneralized 占めており、以下、SDN関連の展示内容を三つのトピック Multi-Protocol Label Switching(GMPLS)技術を用いて ス分けて紹介する。 相互接続するデモンストレーションやUser-Network Inter表1.出展社名(順不同) face(UNI)によるIPルータと光との連携などがメインであ った。中期ではMulti-Protocol Label Switching-Transport ISOCORE Infinera QualiSystems 東京大学 25 展示出展数 20 日本・海外企業団体 海外企業団体 慶應大学 三菱電機 OA研究所 ixia 富士通 沖電気工業 東陽テクニカ O3プロジェクト 古河電気工業 情報通信研究 日本電気 機構(NICT) 15 10 5 0 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 iPOP開催年 超高速フォトニッ クネットワーク開発 推進協議会 (PIF) Coriant けいはんな情報 日本電信電話 通信オープン (NTT) ラボ研究推進 協議会 KDDI研究所 図1.展示出展社数推移 NTTコミュニ ケーションズ 図2.各社参加企業のブース配置構成とその風景(写真) ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) 23 特 集 iPOP 2014 た。これらの異なるタイプの装置を、SDN/ OpenFlowベー 2.展示トピック1:SDN(1)-ショーケース iPOPのショーケースでは過去3年続けてSoftware Defined スの統合制御装置(㈱KDDI研究所)にて一元的に制御し、 模擬データセンターからのリクエスト(帯域要求)に応じて、 Transport Network(SDTN)に関する相互接続性検証デ 個々に仮想光ネットワークを構築することに成功した。コ モンストレーションを実施した。2012年最初のデモでは、世 ア・メトロ・アクセスの各光ネットワークにはそれぞれネッ 界初のSDTNデモと題し、6社で五つのネットワークドメイン トワーク制御装置があり、自らが管理する物理ネットワーク を構築し、各ドメインを構成する異種レイヤのネットワーク を簡易的な論理ネットワークとして統合制御装置(SDNコ 機器をSDNコントローラで制御するデモを実施した。今年も ントローラ)に情報提供することで、毎秒100ギガビット級 引き続きSDTNをキーワードに、データセンター(模擬)間 トランスポートネットワークを含む大規模光ネットワークの の100ギガビット級のコア・メトロ・アクセス光ネットワーク 制御を可能としている。ショーケース参加各社は、実機を展 を6社で構築し、SDTN技術を用いて一元的に相互接続する 示会場に持ち込み、各社ブースを構成しそれぞれの成果を展 デモンストレーションを展示した。図3に相互接続検証の構 示した。なお、本技術はデータセンター間をつなぎ、広域ク 成及びその様子(写真)を示す。データセンター間を接続す ラウドを構成する大容量通信ネットワーク技術への応用が期 る光ネットワークは、毎秒100ギガビットの波長多重光伝送 待できる。 装置(三菱電機㈱)と毎秒100ギガビット級の光パケット・ 光パス統合スイッチング装置((独)情報通信研究機構)をメ 3.展示トピック2:SDN(2)-O3プロジェクト トロコア光ネットワークとして、また、模擬データセンター 広域ネットワーク(以降、NW)に必要なSDN技術の研 (イクシア、東陽テクニカ提供)とつながるアクセス部分は、 エラスティック性を有する次世代光アグリゲーションネット 究開発に取り組むO3(Open Organic Optima)プロジェク ワークのプロトタイプ機器(慶應義塾大学提供)にて構築し トからは、抽象NWモデルを用いた広域異種NWの統合的可 コアNW (三菱電機) 毎秒100ギガビット 波長多重光伝送装置 ネットワーク 統合制御装置 (KDDI研) 10ギガビットイーサネット (※) メトロNW (NICT) 10ギガビットイーサネット 毎秒100ギガビット級 光パケット・光パス統合 スイッチング装置ネットワーク 10ギガビットイーサネット アクセスNW (慶應大学) 10ギガビットイーサネット 仮想L2スイッチ データセンター (ixia、東陽テクニカ) 光加入者線 終端装置 アクティブ光分配網 回線終端装置 1ギガビットイーサネット (※) イーサネットは、富士ゼロックス株式会社の登録商標です。 ixia 東陽テクニカ 三菱電機 NICT 慶應大学 KDDI研 図3.100Gb/s級光ネットワーク装置を用いたSDTN相互接続性検証構成と参加各社ブース風景(写真) 24 ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) 視化技術及び、パケット・光トランスポートから成るマルチ し、要求を満たす資源を下位レイヤのリソースプールから探 レイヤNWの一元管理技術を展示した。 索して上位レイヤのトラヒックに割り当てるためのリソース 広域NWを対象としたSDN技術では、広域NWを構成す 管理制御を行なう。また、光カットスルー技術では、ユーザ る多様なNWの相違をいかに吸収するかが鍵となる。O3プロ 要件に応じてパケット及び光コアNWのパスを使い分け、必 ジェクトでは、個々のNWをオブジェクト指向のデータモデ 要に応じて光ダイレクトパスをEnd-to-Endで設定することに ルで抽象化表現し、オブジェクトを処理するオペレータ機能 より、ユーザへ低レイテンシーな通信品質を提供する。 をユーザの特性に合わせて拡張することで、その解決を目指 これらの技術は、ビジネスセッションでのプレゼンテーシ している。今回展示した統合的可視化技術では、NWの形状 ョンにて概要を説明し、O3ブースではパネル及びビデオ映像 をノード/ポート/リンクというグラフで表現し、その上で各 を用いたデモンストレーションとして展示を行なった。 NWにおける通信や経路に関する情報(OpenFlowのフロー 情報、MPLS/光パス、オーバレイトンネルなど)をフロー情 報として抽象化している。さらに、これら抽象NWモデルを 4.展示トピック3:SDN(3)-海外ベンダ、他 用いて仮想化や階層化などのNW間制御を行うため、Aggre- ショーケース参加団体及びO3プロジェクト参加企業以外 gator(NW全体を一つの仮想ノードに集約) 、Slicer(NW では、海外の伝送システムベンダのCoriant社やInfinera社が を複数の仮想NWに分割) 、Federator(複数のNWを一つに 参加し、それぞれ“Packet Optical SDN” 、 “SDN for Multi- 統合) 、Layerizer(複数階層のNWを一階層に縮約)などの Layer Core Networking”と題してSDNの取組を紹介した。 制御モデルを定義している。 さらに、海外のソフトウェアベンダであるQualiSystems社も マルチレイヤNWの一元管理技術では、パケットトランス 参加し、 “Automation for Agile Infrastructure”と題して、 SDNやクラウドなどAgileなネットワークやそのテスト環境を 御技術及び光カットスルー技術を展示した。マルチレイヤ管 自動化するためのソフトウェアの紹介を行った。また、東京 理制御技術では、アプリケーションからのNW資源要求に対 大学からは“FLARE” (Deeply Programmable Network Divide Flow Space Slicer Flow→Link Link‐ layerizer ポートNW及び光コアNWを対象としたマルチレイヤ管理制 Aggregator Federator 図4.統合化されたNW制御モデルの例と展示風景(写真) 抽象ネットワークモデル 全ての下位レイヤがリンク化 された抽象化ネットワーク システム全体構成 光コア関連 Pkt. Trans. 関連 L0123 ユーザアプリ (GUI) L2仮想化 下位レイヤのトポロジ 隠蔽/リンク化 L012 L3(IP) L1仮想化 L01 L1(LOODU) レイヤ のリソースを制御 L0仮想化 L0(OCh) L1(ODU) ネットワークコンポーネント (制御対象オブジェクト) 情報モデルは 標準準拠 SDN制御対象引渡 (物理データ) 光NW 管理制御 L2(LSP) レイヤの リソースを制御 光コアNW リソース管理 抽象NW関連 マルチレイヤ管理制御 PTN リソース管理 L2(LSP) ユーザにNW 資源を提供 OpenFlowの 回線交換拡張 OpenFlow/TL1 変換 SDN対応 光コアノード 既存EMS パケットトランスポート ドライバ パケットトランスポートノード L2 NW(MPLS-TP) L1 NW(OTN) L0 NW(WDM) PTN: Packet Transport Network MPL-TP: Multi-Protocol Label Switching-Transport Profile ODU: Optical Data Unit LOODU: Low Order Optical Data Unit OTN: Optical Transport Network OCh: Optical Channel EMS: Element Management System TL1: Transaction Language 1 NW: Network 図5.マルチレイヤNW(パケット・光トランスポート)一元管理技術の例 ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) 25 特 集 iPOP 2014 図6.各社ブースの様子(左写真:右から東大、Infinera、Coriantブース、右写真:QualiSystemsブース) Nodeアーキテクチャ)上にSoftware DefinedなOpenFlow とが期待される。 ver1.3を実装し、実機による高速処理のデモなどが実施され D-PlaneとC-Planeを分離したOpenFlowの考え方はハード た。他、沖電気工業や古河電気工業から、それぞれ“SDN ウェア、ソフトウェアそれぞれの得意分野に対して独自の進 access area network for fixed and mobile services with vir- 歩ができるような考え方を提供したと考えられる。今後はそ tualized PON” 、 “Wavelength Selective Switch”と題して れぞれの技術分野に関して、独自の進化が期待できる。 展示が行われた。図6に主なブースの様子を掲載する。 例えば、インターネットに代表される増大するトラヒック に効率よく対応するために、400Gbps光伝送や、400Gbpsパ ケットトランスポート等の伝送技術の更なる大容量化は主に 5.むすび 本稿では、iPOP2014における展示・デモの解説を行った。 ハードウェア技術の進歩によるところが大きい。それに対し て、多様化するサービスに柔軟に素早く対応するために、ソ 10年の歴史を刻んだiPOPのテーマは光とIPの連携から始ま フトウェアで定義されるデータプレーンやネットワーク機能 り、GMPLSによる制御、MPLS-TPや100Gbps光伝送等の を、コモディティ化されたスイッチ、サーバで実現する データプレーン、更にはSDNによるネットワーク制御へと使 SDN/NFV技術は、クラウド技術で培われたソフトウェア技 われる手段が変遷してきた。使われる技術は変われど、デー 術を取り込み更なる高度化が期待される。 タプレーンとコントロール/マネジメントプレーンの連携によ るネットワークの高度化は今後も継続的に技術開発されるこ 26 ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) 10年の節目を迎えたiPOPは次の10年に向けて新しいネッ トワーク技術の発展を牽引していくものと期待する。 スポットライト NHK W杯8Kスーパーハイビジョンの パブリックビューイング いずもと 1.はじめに たかひろ 泉本 貴広 日本放送協会 技術局 計画部 副部長 3.8K信号の伝送とブラジル国内パブリックビューイング NHKはブラジルで開催された「2014FIFAワールドカップ IBCで受信した8K圧縮信号は、監視・分配され、ブラジ (以下W杯)ブラジル」において「FIFA TV-NHK 8K proj- ル非営利国営学術ネット団体RNP(Rede Nacional de ect」として、FIFAと契約を締結し、6月15日∼7月14日ま Ensino e Pesquisa)のあるCBPF(Centro Brasileiro de で、日本戦2試合と決勝戦を含む9試合で8K制作を行い、 Pesquisas Físicas ブラジル中央物理研究所)を経由して、 ブラジル・リオデジャネイロで3会場、日本国内4会場にてラ NTTの協力により日本に向けて学術回線により伝送された イブパブリックビューイングを実施した。 (図2) 。 またIBCでも信号を復調し8K 85インチスクリーンで世界 中の放送関係者を対象にライブ8Kコンテンツを御覧いただ 2.9試合5会場の8K制作 いた(写真1) 。 2014FIFAワールドカップブラジル大会は、日本時間2014 その他、リオデジャネイロでは、FIFA TVのオフィシャル 年6月13日∼7月14日までの間、ブラジル国内12か所のサッ カースタジアムで、64試合が行われ、1990年以来24年ぶり4 回目のドイツ優勝で幕を閉じた。このうち、NHKでは日本 リオデジャネイロ 戦2試合を含む9試合において8K番組制作を行った。制作を 8K 85 ’ 実施した会場について図1に示す。 クルーは、およそ1か月の期間、各サッカースタジアムでセ CBPF Fiber Optic Sofitel Hotel FIFA 8K 85’ Globo & RNP 275 インチシアター 学術ネットワーク IBC ッティングと撤収を繰り返しながら総計5,400kmを移動し、3 (大阪) 台の8Kカメラと2台のスーパースロー4Kカメラを8Kにアップ コンバージョンした映像を切り替えながら、8K制作を実施し (港北) 8K制作 9試合、5会場 (豊洲) (徳島) た。各会場で制作した8K信号は、H.264圧縮して280Mbps の信号にしてリオデジャネイロにあるIBC(International Broadcasting Center:国際放送センター)に伝送した。 図2.W杯パブリックビューイング全体概要図 ブラジルW杯8K制作実施概要 ■6/14∼7/13まで、ブラジル5会場、9試合を8K制作 ■8Kカメラ3台と4Kスーパースローカメラ2台を切り替えて制作 6/23rdブラジルvsカメルーン 6/30thフランスvsナイジェリア 7/5thアルゼンチンvsベルギー ブラジリア 8K制作 9試合、5会場 6/16thガーナvsアメリカ 6/19th日本対ギリシャ ナタール 6/14th日本対コートジボワール レシフェ 6/28thブラジルvsチリ 7/8thブラジルvsドイツ ベロオリゾンテ 3x8K DG cameras 4K‐8K U/C 4K‐8K U/C 2x4K super Slow(FT‐one) 7/13thFinal リオ 8K ENC H.264 図1.8K番組制作概念図 ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) 27 スポットライト 写真1.IBCでの8K パブリックビューイングの様子 写真3.CBPFでの8Kパブリックビューイングの様子 図3は実際に使用した8K国際伝送回線の構成である。多 くの学術ネットワークを使用し、最終的には5ルートの冗長 系を構成し、地球の裏側から約2万5,000kmの大容量伝送 を、9試合無事に伝送することができた。 4.日本国内のパブリックビューイング 日本国内では、イオンシネマ港北ニュータウン(写真4) 、 芝浦工業大学豊洲キャンパス(写真5) 、グランフロント大阪 (写真6) 、アスティとくしま(写真7)にて8Kプロジェクター 写真2.FIFA TVオフィシャルホテルでの8Kパブリックビューイングの様子 を用い300インチ以上の8Kシアターを設置した。8Kライブ以 ホテルであるSofitelホテルにて8K 85インチLCDで往年の名 外の時間は収録した試合やW杯以外のコンテンツ上映も実 選手やヨーロッパの放送事業者などが8Kライブを視聴した 施し、期間中合計約1万人に8Kコンテンツを視聴していただ いた。 (写真2) 。 さらに、ブラジル最大のTV放送局TV GloboがRNPと共同 日本国内でも「ここまできれいだと現地よりも楽に見られ で8Kシアターを設置し、CBPFにて学生やブラジル政府関係者 る」 「最高の臨場感だった。8Kテレビの発表が待ち遠しい」 などを招待してパブリックビューイングを実施した(写真3) 。 など好評をいただいた。 route2 route5 Seatlle NewYork Tokyo route4 Miami route1 route3 [route1] NTT GEMnet2 - Internet2 - RNP [route2] NTT GEMnet2 - SINET4 - RedCLARA - RNP [route3] NTT GEMnet2 - NTTV-Link - RNP [route4] NTT GEMnet2 - Internet2 - RNP(Miami - Foraleza - Rio/L2) [route5] NTT GEMnet2 - SINET4 - RNP(Miami - Foraleza - Rio/L2) N V- TT lin k 図3.JAPAN-BRAZIL Circuit 28 ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) Fortaleza SaoPaulo Rio de Janeiro cFIFA 写真4.イオンシネマ港北ニュータウン ○ cFIFA 写真6.グランフロント大阪 ○ cFIFA 写真5.芝浦工業大学豊洲キャンパス ○ 写真7.アスティとくしま することができ、伝送環境も含めて8Kがより実用的になった 5.おわりに ことを示せたと考えている。2016年のリオデジャネイロオリ 2012年のロンドンオリンピックでは実験的な要素が濃かっ ンピックでもこの経験を基に8Kライブにトライし、2020年東 た8Kライブだが、今回のブラジルW杯では各々2時間以上に 京オリンピック・パラリンピックの8K放送実現につなげてい 及ぶサッカーライブを、地球の裏側から9試合無事に生中継 きたい。 表1.パブリックビューイング実施場所と各会場の状況 日本戦2試合、準決勝、決勝を含む9試合を8Kで制作しパブリックビューイングを実施 ■ 国外はリオディジャネイロ市内3か所 会場 期間 来場者数 画面サイズ 備考 CBPF※1 6/16∼7/13 約1,060人 275インチ TV Globo& RNP※2主催。ブラジルVIP及び学生などを対 象にパブリックビューイングを実施 FIFA Sofitel Hotel 6/12∼7/13 約530人 85インチLCD FIFA‐NHK共催。FIFA関連VIPを対象にパブリックビュー イングを実施 IBC 6/12∼7/13 計測不可能 85インチLCD FIFA‐NHK共催。世界中の放送関係者を対象にパブリッ クビューイングを実施 ※1 Centro Brasileiro de Pesquisas Fisica ※2 Rede Nacional de Ensino e Pesquisa ■ 日本国内4カ所 会場 期間 イオンシネマ 港北ニュータウン 6/16∼7/14 3,385人 350インチ (ライブ890人) 来場者数 画面サイズ 22.2サラウンドスピーカーの取付金具を設置 W杯期間中に8K機材を常設 備考 グランフロント 大阪 6/15∼6/20 2,656人 350インチ (ライブ385人) 昨年末紅白8Kライブを実施 芝浦工業大学 豊洲キャンパス 6/15∼6/21 1,775人 330インチ (ライブ411人) 芝浦工大の学生を対象にNHK職員による8K講演を実施 アスティとくしま 6/15∼6/20 1,206人 300インチ (ライブ232人) 阿波踊りなどのコンテンツを上映 ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) 29 スポットライト ASIACCS 2014開催報告 独立行政法人 情報通信研究機構 ネットワークセキュリティ研究所 セキュリティ基盤研究室 室長 もりあい し ほ 盛合 志帆 わ せ だ 独立行政法人 情報通信研究機構 ネットワークセキュリティ研究所 セキュリティ基盤研究室 研究員 独立行政法人 情報通信研究機構 ネットワークセキュリティ研究所 セキュリティ基盤研究室 技術員 あつ し 早稲田 篤志 かなもり さち こ 金森 祥子 術のみならず情報セキュリティ技術を幅広くカバーするトッ 1.はじめに プカンファレンスが日本で開催される意義は大きい。 ACM ASIACCS( ACM Symposium on Information, Computer and Communications Security)は、コンピュー 2.ASIACCS 2014概要 タ・通信セキュリティに関する国際会議ACM CCS(ACM conference on Computer and Communications Security) 本章では2014年6月4日から6日の日程で京都市の京都ガ の関連シンポジウムとしてアジア・オセアニア地域で2006年 ーデンパレスにて行われたASIACCS 2014の開催概要につい から開催が始まった。ASIACCSの2006年から2014年までの て述べる。 開催地を図1に示す。日本での開催は2008年(東京 秋葉原) に続き、2回目となる。情報セキュリティ技術の重要性がま すます認識され、関連する分野が広がっている昨今、暗号技 2.1 Organization ASIACCS 2014の運営に携わった方々を表1にまとめる。 2.2 論文採録状況 本会議には255件の投稿があり、厳正な査読を経て、論文 が42件とShort paperが8件の計50件が採択された。論文の Taipei(2006) Singapore(2007) 採択率は16.4%であり、この採択率は例年どおりの水準であ Tokyo(2008) る。採択された論文の著者を国別にグラフ化したものを図2- Sydney(2009) a)にまとめる。米国の採択が最も多く、次いで中国、フラ Beijing(2010) Hong Kong(2011) ンスと続いた。また、上記とは別にポスター発表を募ったと Seoul(2012) ころ、17件の応募があり、発表が行われた。これらのうち、 Hangzhou(2013) 最も優秀な論文としてProgram Chairが選出した2本をBest Kyoto(2014) paper awardsに、また、参加者の投票により4本のposterを Best poster awardsに選出した(4.1参照) 。 図1.ASIACCSのこれまでの開催地 表1.ASIACCS 2014運営陣 Honorary Chair 中尾康二(KDDI/情報通信研究機構) General Chair 盛合志帆(情報通信研究機構) Program Chair Trent Jaeger(Pennsylvania State University) 櫻井幸一(九州大学) Workshop Chair Vinod Ganapathy(Rutgers University) Local Organizing Chair 上原哲太郎(立命館大学) Poster Chair 大久保美也子(情報通信研究機構) 事務局 情報通信研究機構 ネットワークセキュリティ研究所 セキュリティ基盤研究室 30 ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) 2.3 Keynote 2.5 参加者 Keynote speakerとして米国University of California, 本会議には28か国から175名の参加者があった。国別の参 Santa BarbaraのChristopher Kruegel教授を招き、 “Fight- 加者数をまとめたグラフを図2-b)に挙げる。開催国である ing Malicious Code - An Eternal Struggle”というタイトル 日本の参加者が最も多く、米国、中国と続いた。また、参 で講演が行われた。講演では、モバイルデバイスの脆弱性を 加者が1名のみの国も15か国あった。 突いたマルウェアの脅威等について解説された。また、マル ウェアの進化や被害が増加しているにも関わらず、この分野 3.併設ワークショップ の研究発表件数が減少していることを指摘し、この分野への ASIACCS 2014開催の前日である6月3日に5件のワークシ 研究者の参入が啓発された。 ョップを開催した。ワークショップ名とChair、講演数は表3 2.4 プログラム のとおりである。ここでは、特に自動車のセキュリティを扱 本会議では12のセッションによりプログラムを組み論文の ったAsiaCyCAR 2014について紹介する。 講演を行った。またポスターセッションは各セッションの間 のCoffee break時に合わせて行った。表2にそのセッション 構成を示す。 3.1 AsiaCyCAR 2014 自動車の電子化が進み、ネットワークに接続される自動車 向けサービスの増加に伴い、セキュリティ・プライバシ保護 対策やサイバー攻撃への対応が喫緊の課題となってきてい 表2.ASIACCS 2014のセッション構成 る。近年、クルマのセキュリティに関する研究発表が増えて Session 1:Network 6月4日 おり、このテーマを扱う専門の国際会議も増えてきた。ACM Session 2:Reputation and Location で昨 年 から始 まったCyCAR 2013(First International Session 3:Processing encrypted data Academic Workshop on Security, Privacy and Dependabil- Session 4:Applications 1 6月5日 6月6日 ity for Cybervehicles)もその一つである。ASIACCS 2014 Session 5:Crypto Session 6:Access control and Flow analysis でもこのテーマを扱おうと、ワークショップAsiaCyCAR 2014 Session 7:Software and Systems security を企画し、4件の招待講演を行った。横浜国立大学の松本勉教 Session 8:Applications 2 授からは“How to Eliminate Unauthorized CAN Transmis- Session 9:Authentication sion”というタイトルでCAN(Control Area Network)と Session 10:Android いう車内ネットワークの安全性について講演をいただき、 Session 11:Short 1 Network ETAS株式会社のCamille Vuillaume氏からは“Automotive Session 12:Short 2 Software スペイン チェコ デンマーク ニュージーランド ノルウェー ハンガリー フィンランド (各1) インド (2) カナダ(3) オーストリア(3) ルクセンブルグ(4) オーストラリア(4) イタリア(5) イギリス(6) 米国(65) イギリス オーストラリア オーストリア カナダ(各2) インドネシア(3) 香港(4) ドイ ツ( 6) シンガポー ル(6) 日本(68) フランス(7) 香港(7) 8) 韓国( ) 12 国( 中 ドイツ(10) シンガポール(10) 米国(38) イタリア インド エジプト スイス スウェーデン チェコ チュニジア デンマーク ニュージーランド ノルウェー ハンガリー フィンランド ベルギー マレーシア ルクセンブルグ (各1) 中国(15) フランス(11) a)国別著者(延べ人数、20か国、152名) b)国別参加者(28か国、175名) 図2.国別のa)著者と、b)参加者のグラフ ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) 31 スポットライト 表3.併設ワークショップ 2014 ACM Asia Public Key Cryptography Workshop(ASIAPKC'14) Program Co-Chairs 江村恵太(情報通信研究機構) 、花岡悟一郎(産業技術総合研究所) 、Yunlei Zhao(Fudan University) 講演数 採択6件+招待講演1件 Second international workshop on Security and Forensics in Communication Systems(ASIACCS-SFCS 2014) General Chairs Noureddine Boudriga、Slim Rekhis(University of Carthage) 講演数 採択6件+招待講演1件 The First International Workshop on Information Hiding and its Criteria for evaluation(IWIHC 2014) General Co-Chairs 岩村惠市(東京理科大学) 、Ki-Ryong Kwon(Pukyong National University) 講演数 採択9件+招待講演1件 Asia Workshop on Security, Privacy and Dependability for CyberVehicle(AsiaCyCAR 2014) General Chairs 野島良、盛合志帆(情報通信研究機構) 講演数 招待講演4件 The 2014 International Workshop on Security in Cloud Computing(SCC'14) General Chair Robert Deng(Singapore Management University) 講演数 採択9件+招待講演1件 Security Initiatives in Europe”というタイトルで自動車セ キュリティに関するヨーロッパでの取組について御紹介いた だいた。また、同じくETAS株式会社のDennis Kengo Oka 氏からは“The Trust Assurance Level(TAL)Concept Towards a Common Security Evaluation Standard for V2X Senders”というタイトルで、車車間通信のセキュリティ認 証について紹介をいただき、三菱電機株式会社の松井充氏 か ら は “ Minimalism of Cryptography on Embedded Devices”というタイトルで、車載向け等の組み込みデバイ スにいかに少ないメモリで暗号技術を実装するかについて講 演をいただいた。 4.1 Best paper awards及びBest poster awards 本会議では2件のBest paper awards及び、4件のBest poster awardsが選出された。 > Best paper awards(2件) ・Anupam Das, Nikita Borisov, Prateek Mittal, Matthew Caesar “Re3: Relay Reliability Reputation for Anonymity Systems” ・Markus Miettinen, Stephan Heuser, Wiebke Kronz, Ahmad-Reza Sadeghi, N. Asokan “ConXsense - Automated Context Classification for Context-Aware Access Control” 4.歓迎レセプション > Best poster awards(4件) ・Sanami Nakagawa, Keita Emura, 6月5日夕刻、会議参加者を歓迎し、交流の場を提供する 歓迎レセプションが開催された。レセプションは、情報通信 研究機構 今瀬真理事の歓迎の挨拶と乾杯により始まった。 レセプションの催し物として、舞妓さん、芸妓さん、地方さ ん3名による京舞(祇園小唄)を楽しんでいただいた(写真 1)。レセプションの中で、Best paper awards及びBest poster awards(4.1章参照)の授賞式が執り行われ、受賞 者にはProgram Chairと舞妓さんから賞状と記念品が授与さ れた。最後に、Robert Deng教授(Singapore Management University)によるASIACCS 2015(2015年4月14日から17 日、シンガポールにて開催)について発表及び閉会の辞があ り(写真2) 、レセプションは無事終了した。 32 ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) 写真1.舞妓さんによる祇園小唄 Goichiro り、その知名度は広がり、参加者は年々増加の一途をたど っている。とはいえ、会場選定及び予算計画を始めた2013年 夏の時点では、前回の日本開催であるASIACCS 2008、2013 年5月のASIACCS 2013を参考にしていたため、参加予定人 数は80名∼100名を想定していた。2014年4月の論文投稿締 切り時に、投稿数が過去最高の255件であることが判明した 時には、プログラム構成、会場のレイアウトなど、計画変更 を余儀なくされた。 参加者の6割が海外からの研究者であることから、会議開 催場所をワンフロアに集め、受付も含めた動線を検討し、会 写真2.Robert Deng教授による閉会の挨拶 場案内図のポスターや飲食に関する立て看板を設置し、会場 レイアウト、飲食のメニュー等、外国人にも分かりやすい工 Hanaoka, Akihisa Kodate, Takashi Nishide, Eiji 夫を凝らした。また、少しでも京都らしい「和」のおもてな Okamoto, and Yusuke Sakai しを味わっていただくために、レセプションの催し、Coffee “Performance Evaluation of a Privacy-Enhanced Access Log Management Mechanism” ・Dennis Kengo Oka, Camille Vuillaume, and Takahiro Furue “Vehicle ECU Hacking” ・Yuji Suga breakのメニュー、会場受付の装飾(折鶴)等に、予算内で 趣向を凝らした。ASIACCS 2014の新たな試みとしては、ポ スターセッションの開催が挙げられる。これは、少しでも多 くの研究者に国際会議参加の機会を広げることを目的に開 催されたのだが、積極的な17件の応募があった。会場の工夫 としては、多くの参加者にポスターを見てもらうために、 “SSL/TLs severs status survey about enabling for- Coffee break会場にてポスターセッションを開催した。結果 ward secrecy (+ rapid survey after the Heartbleed として、ポスターセッションは盛況となり、本会議セッショ Bug) ” ンの時間に食い込むほど、白熱した議論が繰り広げられた。 ・Takuya Watanabe and Tatsuya Mori “Understanding consistency between words and actions for Android apps” ASIACCS 2014は、会議運営方法に関して、海外の研究 者からも高評価が得られた。このように予想を大幅に超える 参加者数(175名、うち海外から107名)であっても、混乱 をきたすことなく、全てのプログラムをつつがなく終えられ たことは、関係者の皆様の貢献によるところが大きい。九州 5.おわりに 大学、立命館大学はじめ関係各位の御協力に深く感謝する。 ASIACCSは、コンピュータ/通信セキュリティに関する国 際会議として、アジア地域で2006年から毎年開催されてお ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) 33 会合報告 ITU会合スケジュールとITUジャーナルでの会合報告 ※ 赤字:本号掲載の会合 Start Date ITU-SG 2014/10/20 2015/5/12 ITU-R 2014/6/18 2014/6/25 ITU-T ITU-D 34 End Date 2014/11/7 2015/5/22 2014/6/25 2014/7/1 Group Plenipotentiary Conference Council WP 5D WP 4C 2014/6/30 2014/7/4 WP 4B 2014/7/2 2014/7/11 2014/7/21 2014/9/30 2014/10/1 2014/10/1 2014/10/8 2014/10/15 2014/7/10 2014/7/11 2014/7/31 2014/9/30 2014/10/7 2014/10/7 2014/10/8 2014/10/22 WP 4A SG 4 JTG 4-5-6-7 SG 7 WP 7C WP 7D SG 7 WP 5D 2014/10/27 2014/11/6 WP 5A 2014/10/27 2014/11/7 WP 5B 2014/10/27 2014/11/5 WP 5C 2014/11/10 2014/11/10 2014/11/11 2014/11/12 2014/11/17 2014/11/17 2014/11/21 2014/6/30 2014/7/7 2014/7/9 2014/9/2 2014/9/8 2014/9/17 2014/11/2 2014/11/3 2014/11/4 2014/11/4 2014/11/5 2014/11/5 2014/11/10 2014/11/12 2014/11/12 2014/11/12 2014/11/13 2014/11/13 2014/11/13 2014/11/13 2014/11/13 2014/11/14 2014/11/14 2014/11/17 2014/11/17 2014/11/17 2014/11/17 2014/11/18 2014/11/18 2014/11/18 2014/11/19 2014/11/19 2014/11/19 2014/11/19 2014/11/20 2014/11/20 2014/11/21 2014/11/21 2014/11/21 2014/11/21 2014/11/23 2014/11/24 2014/11/24 2014/11/24 2014/11/25 2014/11/25 2014/11/25 2014/11/26 2014/9/15 2014/9/22 2014/9/29 2014/9/15 2014/10/28 2014/11/5 2014/11/12 2014/11/23 2014/11/24 2014/11/14 2014/11/11 2014/11/19 2014/11/13 2014/11/21 2014/11/20 2014/11/21 2014/7/11 2014/7/18 2014/7/16 2014/9/11 2014/9/12 2014/9/26 2014/11/3 2014/11/7 2014/11/4 2014/11/6 2014/11/5 2014/11/5 2014/11/10 2014/11/12 2014/11/18 2014/11/18 2014/11/19 2014/11/13 2014/11/14 2014/11/14 2014/11/13 2014/11/14 2014/11/14 2014/11/17 2014/11/17 2014/11/21 2014/11/18 2014/11/18 2014/11/19 2014/11/20 2014/11/21 2014/11/20 2014/11/19 2014/11/19 2014/11/20 2014/11/20 2014/11/21 2014/11/21 2014/11/21 2014/11/21 2014/11/23 2014/11/25 2014/12/5 2014/12/5 2014/11/25 2014/11/25 2014/11/25 2014/11/26 2014/9/19 2014/9/26 2014/10/1 2014/11/28 2014/10/29 2014/11/7 2014/11/14 2014/11/27 2014/11/26 WP 6C SG 5 WP 6A WRC-15-IRWSP-14 RRB-14.3 WP 6B SG 6 SG/WP 16 SG/WP 13 SG/WP 11 SG/WP 12 SG 9 SG/WP 17 Workshop SG16 rapporteur group meeting SG15 rapporteur group meeting QoS Group SG15 rapporteur group meeting SG15 rapporteur group meeting SG16 rapporteur group meeting SG15 rapporteur group meeting SG11 rapporteur group meeting IoT-GSI SG11 rapporteur group meeting SG11 rapporteur group meeting SG11 rapporteur group meeting SG11 rapporteur group meeting JCA-SDN Workshop SG5 rapporteur group meeting SG11 rapporteur group meeting SG5 rapporteur group meeting SG11 rapporteur group meeting Workshop SG15 rapporteur group meeting SG11 rapporteur group meeting SG11 rapporteur group meeting SG11 rapporteur group meeting SG11 rapporteur group meeting JCA-CLOUD JCA-IoT SG5 rapporteur group meeting TSAG rapporteur group meeting WP 1 & 3/13 WP 2 & 3/11 SG2RG-AMR SG3RG-LAC Forum SG3RG-ARB SG/WP 15 SG15 rapporteur group meeting SG5RG-ARB SG2RG-ARB Forum JCA-CIT SG 01 SG 02 TDAG Workshop Workshop Workshop Symposium Forum Symposium ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) 青字:次号以降掲載予定の会合 Title Plenipotentiary Conference 2015 Session of the Council IMT Systems Efficient Orbit/Spectrum Utilization for MSS and RDSS Systems, air interfaces, performance and availability objectives for FSS, BSS and MSS, including IP-based applications and satellite news gathering Efficient Orbit/Spectrum Utilization for FSS and BSS Satellite Services Joint Task Group 4-5-6-7 Science Services Remote Sensing Systems Radio Astronomy Science Services IMT Systems Land mobile service above 30 MHz*(excluding IMT); wireless access in the fixed service; amateur and amateur-satellite services Maritime mobile service including Global Maritime Distress and Safety System (GMDSS); aeronautical mobile service and radiodetermination service Fixed wireless systems; HF and other systems below 30 MHz in the fixed and land mobile services Programme Production and Quality Assessment Terrestrial Services Terrestrial Broadcasting Delivery 2nd ITU Inter-regional Workshop on WRC-15 Preparation Radio Regulations Board (RRB) Broadcast Service Assembly and Access Broadcasting Service Multimedia Future networks including cloud computing, mobile and next-generation networks Protocols and test specifications Performance, QoS and QoE Broadband cable and TV Security ITU Workshop on "Quality of Service of Regulatory and Operational Issues" WP1/16 Questions Rapporteur Group Meeting G.989.3 and other topics QSDG - Quality of Service Development Group G.8152 MPLS-TP Info modelling drafting G.fast 3rd IRG-AVA meeting DSL/PLT interference mitigation Q1/11 Rapporteur group meeting Internet of Things - Global Standards Initiative Q14/11 Rapporteur group meeting Q15/11 Rapporteur group meeting Q2/11 Rapporteur group meeting Q3/11 Rapporteur group meeting Joint Coordination Activity for Software-Defined Networking ITU Workshop on "Cloud Computing Standards - Today and the Future" Q8/5 discussions Q11/11 Rapporteur group meeting Q14/5 discussions Q4/11 Rapporteur group meeting Combating Counterfeit and Substandard ICT Devices G.fast Q5/11 Rapporteur Group meeting Q6/11 Rapporteur group meeting Q8/11 Rapporteur group meeting Q9/11 Rapporteur group meeting Joint Coordination Activity on Cloud Computing Joint Coordination Activity on internet of things Q15/5 discussions E-meeting of the TSAG Rapporteur Group on Strengthening Collaboration Future networks including cloud computing, mobile and next-generation networks Signalling requirements, protocols and test specifications Study Group 2 Regional Group for the Americas Study Group 3 Regional Group for Latin America ITU/BDT Regional Economic and Financial Forum for the Arab Region ITU-T SG3 Regional Group for the Arab Region (SG3RG-ARB) Networks, Technologies and Infrastructures for Transport, Access and Home DSL and G.fast ITU-T SG5 Regional Group for the Arab Region SG2 Regional Group for the Arab Region Regional Standardization Forum for the Arab Region Joint Coordination Activity on Conformance and Interoperability Testing First meeting of ITU-D Study Group 1 (2014-2018 study period) First meeting of ITU-D Study Group 2 (2014-2018 study period) 19th Meeting of the Telecommunication Development Advisory Group Meeting of the ITU statistical Expert Groups (EGTI, EGH) Cloud Computing Concentrated Assistance to Yemen Promote ICT to benefit people with disabilities Regional Economic and Financial Forum for Arab States (REFF-ARB) 12th World Telecommunication/ICT Indicators Symposium (WTIS 2014) Place Busan (Rep. of Korea) Switzerland [Geneva] Canada [Halifax] Switzerland [Geneva] Switzerland [Geneva] Switzerland [Geneva] Switzerland [Geneva] Switzerland [Geneva] Switzerland [Geneva] Switzerland [Geneva] Switzerland [Geneva] Switzerland [Geneva] Switzerland [Geneva] Switzerland [Geneva] Switzerland [Geneva] Switzerland [Geneva] Switzerland [Geneva] Switzerland [Geneva] Switzerland [Geneva] Switzerland [Geneva] Switzerland [Geneva] Switzerland [Geneva] Switzerland [Geneva] Japan [Sapporo] Switzerland [Geneva] Switzerland [Geneva] Switzerland [Geneva] Switzerland [Geneva] Switzerland [Geneva] United Arab Emirates [Dubai] Korea (Rep. of) [Seoul] E-Meeting United Arab Emirates [Dubai] E-Meeting E-Meeting Switzerland [Geneva] E-Meeting Switzerland [Geneva] Switzerland [Geneva] Switzerland [Geneva] Switzerland [Geneva] Switzerland [Geneva] Switzerland [Geneva] Switzerland [Geneva] Switzerland [Geneva] E-Meeting Switzerland [Geneva] E-Meeting Switzerland [Geneva] Switzerland [Geneva] Switzerland [Geneva] Switzerland [Geneva] Switzerland [Geneva] Switzerland [Geneva] Switzerland [Geneva] Switzerland [Geneva] Switzerland [Geneva] E-Meeting E-Meeting Switzerland [Geneva] Switzerland [Geneva] Chile [Santiago] Chile [Santiago] Kuwait [Kuwait City] Kuwait [Kuwait City] Switzerland [Geneva] Switzerland [Geneva] Kuwait [Kuwait City] Kuwait [Kuwait City] Kuwait [Kuwait City] E-Meeting Switzerland [Geneva] Switzerland [Geneva] Switzerland [Geneva] Switzerland [Geneva] South Africa [Johannesburg] Yemen [Sana'a] Brazil [São Paulo] Kuwait [Kuwait City] Georgia [Tbilisi] ITU-R SG4(衛星業務)関連WP(第5回)会合報告 SG 4関連会合日本代表団 (総務省 総合通信基盤局 電波部 衛星移動通信課) 1.はじめに 2.WP4A会合 2014年6月25日(水)から同年7月11日(金)の17日間に WP4Aは、固定衛星業務(FSS)及び放送衛星業務 わたり、スイス国ジュネーブ市のITU本部において、衛星業 (BSS)の効率的な軌道及び周波数利用に関する問題を扱う 務に関する審議を所掌とするITU-R(無線通信部門)SG4 作業部会であり、Mr. J. Wengryniuk(米国)議長の下、表 (Study Group 4;第4研究委員会)のWP(Working Party) 1の体制で審議を行った。以下に、主にWRC-15議題を中心 会合及びSG4会合が開催されたので、その概要を報告する。 に、今会合で取りまとめられたCPMテキスト案の概要を紹 今回は、WP4Cが6月25日(水)∼7月2日(水)に、 介する。 WP4Bが6月30日(月)∼7月4日(金)に、WP4Aが7月3日 (木)∼10日(木)に、SG4会合が7月11日(金)に開催さ 2.1 WRC-15議題1.6.1及び1.6.2 れ、44か国・約20の機関から延べ約490名(WP4A:約220 議題1.6はKu帯におけるFSSへの追加分配を検討するもの 名、WP4B:約50名、WP4C:約120名、SG4:100名)が であり、議題1.6.1は10-17GHz帯において250MHz幅を第一 出席した。我が国からは、総務省、KDDI(株) 、日本電信 地域に分配(アップリンク及びダウンリンク)することを、 電話(株) 、スカパーJSAT(株) 、 (株)放送衛星システム、 議題1.6.2は13-17GHz帯において250MHz幅を第二地域に、 日本放送協会、 (株)エム・シー・シー、三菱電機(株) 、 300MHz幅を第三地域に分配(アップリンクのみ)すること (株)日立製作所、日本無線(株) 、 (財)航空保安無線シ を検討する議題である。 ステム協会、 (独)情報通信研究機構、 (独)宇宙航空研究 今会合では、米国やカナダ、フランス、ロシア、ルクセン 開発機構、 (株)国際電気通信基礎技術研究所、ライトハ ブルク等が寄与文書を入力し、また、我が国からはこれまで ウステクノロジー・アンド・コンサルティング(株)から計 明確な結論が出ていなかった13.4-13.75GHzにおける無線航 28名が参加した。 行業務(RNS)との周波数共用が可能であることを示す文 書を入力した。 審議の結果、我が国の提案はCPMテキスト案に反映され、 表1.WP4Aの審議体制 WP/WG/SWG WP4A 検討案件 議長 FSS及びBSSの効率的な軌道及び周波数利用 Mr. J. Wengryniuk(米国) WRC-15議題1.6、1.7、課題9.1.3、9.1.5、FSS間干渉問題関係 Mr. D. Jansky(米国) SWG 4A1a WRC-15議題1.6.1、1.6.2(FSSの新規分配の検討) Mr. P. Van Niftrik(SES World Skies) SWG 4A1b WRC-15議題1.7(non-GSO FSS/ARNS) Mr. D. Weinreich(米国) WG 4A1 SWG 4A1c WG 4A2 SWG 4A2a SWG 4A2b SWG 4A2c WG of WP 4A Plenary ショート・トピックス関係 Mr. D. Jansky(米国) (WRC-15議題9.1課題9.1.3、9.1.5、FSSと地上系との共用問題等) WRC-15議題1.5、1.8、1.9.1、1.9.2、1.10、BSS問題、アンテナ・ パフォーマンス、ESOMPs関係 Mr. P. Hovstad(AsiaSat) WRC-15議題1.8(ESV) Mr. I. Mokarrami(イラン) WRC-15議題1.9.1(7/8 GHz帯FSSへの分配の検討)、議題1.9.2 (7/8 GHz帯MMSSへの分配の検討) Mr. J. Conner(米国) 地球局問題、アンテナ・パフォーマンス関係 Mr. S. Doiron(カナダ) WRC-15議題7、課題9.1.2、議題9.3関係 Mr. J. Wengryniuk(米国) ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) 35 会合報告 また各国が入力した干渉結果等を反映したCPMテキスト案 距離を段階的に設ける(C帯:64∼323km、 が作成され、議題1.6.2については、議題を満足する方法 Ku帯:29∼125km) (米国案) (Method)の中に、FSSの候補帯域として、13.4-13.75GHz Method D:送信EIRP値に応じて、離隔制限距離を段階 帯、14.5-14.8GHz帯及び14.8-15.1GHz帯が記載された。 的に設ける(C帯:59∼345km、Ku帯:44 ∼125km) (ロシア案) 2.2 WRC-15議題1.7 Method E:ESVがRRの原理や目的に適合するよう見直 5091-5150MHz帯に付されている無線通信規則(RR)脚 す。 注5.444Aにおいて、移動衛星業務(MSS)の非静止 (NGSO)衛星システムのフィーダーリンクに限りFSS帯(地 球から宇宙)への一次分配が2018年1月1日前まで認められ ているが(それ以降は二次業務となる) 、議題1.7はその使用 について見直すものである。 2.4 WRC-15議題1.9.1 議題1.9.1は7/8GHz帯におけるFSSへの追加分配を検討す るものである。 本議題においては、従来、フランスがFSSへの追加分配を 今会合においても、これまで同様、中国が航空無線航行 強く主張しており、韓国がそれを支持する形であった。一方、 業務(ARNS)への影響を懸念し、ARNSの保護を主張し、 米国は既存業務の保護を強く主張し、FSSへの追加分配を 米国等が脚注5.444A中の有効期限の削除を主張した。最終 行わないことを主張していた。今会合では、我が国も寄与文 的にはARNSへの影響を配慮するということを条件に、脚注 書を入力し、FSSへの分配を行うMethodは、7GHz帯FSSダ 5.444A中の有効期限を削除するという唯一のMethodを作成 ウンリンクは7190-7250MHz帯のみとし、それ以外の周波数 した。 帯のFSSについてもいまだ検討が成熟していない点が多数あ るとして、RRの変更なし(NOC:No Change)のMethod 2.3 WRC-15議題1.8 議題1.8は船上地球局(ESV)の規定(決議第902で規定 されているESVと沿岸国の低潮線間の離隔距離(ESVが海 岸国からの事前合意を得ずに運用できる)やESVのアンテナ も残す提案を行った。審議の結果、以下のMethodがまとめ られた。 Method A:7150-7250MHz帯及び8400-8500MHz帯へ FSS(GSOのみ)を分配 径等)の見直しを行うものである。今会合では、従来、寄与 Method B:7190-7250MHz帯及び8400-8500MHz帯へ 文書を入力してきたイラン、米国及びロシアに加え、我が国 FSS(GSOのみ)を分配する(深宇宙SRSの やフランスが寄与文書を入力した。我が国は、寄与文書にお 周波数帯と重複する7150-7190MHz帯への いて、これまでの離隔距離の計算手法に関する問題点を指摘 FSS分配を避ける) し、これを踏まえて離隔距離の計算が見直され、C帯につい Method C:RRの変更なし(NOC) ては、Method B∼Dの離隔距離が最大で125kmという現行 規定と同じ距離となった。なお、会合終盤において、イラン 2.5 WRC-15議題7 が、自国の寄与文書の提案(特定の主管庁の周辺では現行 議題7は衛星に関する周波数調整手続の見直しを検討す 規定を維持するというMethodの追加)を変更し、ESVの運 るものである。本議題の中では、周波数・軌道の有効利用 用を認めているRR中の脚注と決議を削除するよう提案内容 のための宇宙業務の調整・通告・登録手続に関する条項の を修正すると発言した。イランのこの発言に対し、我が国や 見直しが進められており、本議題の中には検討項目に応じて 米国、フランス等が反対し、最終的には新たにMethod Eが Issue A、B、 、 、という通し記号が付されている。例えば、 作成され、議題1.8のMethodは以下の五つとなった。 Issue Aは衛星の運用休止に関するものであり、現行規定で Method A:現行規定の維持(C帯:300km、Ku帯: 125km) Method B:C帯についてのみ、離隔距離を拡大(C帯: 345km、Ku帯125km) (イラン案) Method C:C帯の最小アンテナ径を2.4mから1.2mに緩和 した上で、送信EIRP値に応じて、離隔制限 36 ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) は、運用休止の開始日から6か月以内に運用休止申請をする こととなっているが、期限を越えた場合の罰則規定等がない ため、期限を越えた場合の規定を検討するものである。これ はペイパー衛星の防止を意図しており、今会合においては以 下のMethodが作成された。 Method A1:RRの改正なし(NOC) Method A2:RRの改正 値に変更(干渉基準はΔT/T=20%相当) 、 -Option 1:6か月の通知期限を超過した日数分、3年の運 その他については現状のC/I計算及びΔ 用休止期間を短縮する。 T/T=6%相当の干渉基準を維持。 -Option 2:12か月以内に運用休止が通知された場合、6 Option 1B:C帯/Ku帯/Ka帯に関して、RR第9.41号で適 か月の通知期限を超過した日数分、3年の運 用する基準(MSSについては、BRが調整要 用休止期間を短縮する。12か月を超えて通知 否を審査する基準)をRR第11.32A号同様 された場合、6か月の通知期限を超過した日数 RoP§3Bで規定されるC/I計算に変更し、干 を倍にした日数分、3年の運用休止期間を短 渉基準をΔT/T=20%相当へ変更。 縮する。 なお、議題7に関しては、WP4Aの他、SC(Special Committee)も規則面から議題7を検討しており、今会合に Option 1C:Option 1B同様の干渉基準の変更を行うが、 干渉基準はΔT/T=6%を維持。 Option 1D:RRの変更なし(NOC) おいて審議がまとまらなかったIssueやSCのみが所掌してい るIssueについては、2014年12月に開催されるSCで審議され る予定である。 (調整軌道弧の見直しについて:Option 2) Option 2A:C帯とKu帯の調整軌道弧を縮小。ただし、 RR第9.41号による調整は可能。 2.6 WRC-15議題9.1課題9.1.2 課題9.1.2は、RR第9.7号に従った衛星の周波数調整に関 するRR第9.41号適用時に使用される技術基準及び衛星の調 整軌道弧の縮小について検討するものである。つまり、現在 (C帯:±8度→±6度、Ku帯:±7度→±6 度、Ka帯:変更なし(NOC) ) Option 2B:C帯、Ku帯及びKa帯の調整軌道弧を縮小。 ただし、RR第9.41号による調整は可能。 C、Ku、KaといったFSSが多く利用している周波数帯におい (C帯FSS/BSS(non-Plan):±8度→±6 て新たに衛星網の周波数調整手続を開始すると、一定の軌 度、Ku帯FSS/BSS(non-Plan):±7度 道範囲(C:8度、Ku:7度、Ka:8度;これを調整軌道弧 →±5度、Ka帯FSS:±8度→±6度、その と呼ぶ)内にある既存衛星網は基本的に周波数調整対象と 他:変更なし(NOC) ) して識別され、その外にある既存衛星網については、RR付 Option 2C:RRの変更なし(NOC) 録第5条に規定されている条件を満たす場合にその主管庁が 第9.41号に基づいて要請した場合に限り調整対象に加えられ 2.7 WRC-15議題9.1課題9.1.5 るが、本議題では、主に新規参入する主管庁の調整負荷を 課題9.1.5は、第一地域の一部の国における航空機の運用 軽減することを目的としてこれらの条件の見直しが行われて や気象情報の配信のためのFSS地球局(3.4-4.2GHz帯)支 いる。 援に関する検討を行うものである。今会合では、タンザニア 今会合ではロシア、米国、ESA、カナダ、Telenor、スウ /ウガンダ及び米国から2件の寄与文書が入力された。前者 ェーデン、BRからの寄与文書を基にCPMテキスト案が作成 は、検討すべき具体的項目として、国際公衆通信の需要や され、以下の見直し案がまとめられた(注:議題9はMethod 現在国際公衆通信に使われている軌道資源の特定等の8項目 を作成しない) 。 を挙げ、WRC-15までには検討が終了しないとしてWRC-18 (干渉基準の見直しについて:Option 1) Option 1A:C帯/Ku帯FSS/BSS(non-Plan)及びKa帯 まで検討を継続することを提案するものであった。後者は ITU-DでもWTDC-14でその決議37が改正されITU-Rと連携 FSS/BSS(non-Plan)/MetSatに関して、 した活動の必要性がうたわれていることを挙げ、ITU-Rは現 RR第9.41号で適用する基準をRoP§B3で規 行規定に沿って途上国の能力育成と知識共有を支援する活 定されるC/I計算に変更し(ただし、干渉基 動に重点を置くべきとするものであった。 準はC帯/Ku帯のみΔT/T=20%相当に変更 審議の結果、CPMテキスト案に第一地域FSS地球局 し、Ka帯はΔT/T=6%相当を維持) 、RR第 (3400-4200MHz帯)保護のための行動を主管庁に促す決議 11.32A号で適用する基準について、C帯/Ku 第154(WRC-12)改正案が作成された(注:議題9では 帯FSS/BSS(non-Plan)はpfdマスク/制限 Methodは作成されない)。なお、この決議の改正案の ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) 37 会合報告 resolvesの項には、以下の内容が含まれる。 3.WP4B会合 > 主管庁はIMT局がRR脚注5.430Aに準拠することを担 WP4Bは、IPベースのアプリケーション及び衛星によるニ 保(ensure)すること。 > 地上系を計画・免許する主管庁に対し、FSS VSAT ュース中継(SNG)を含むFSS、BSS及びMSSのシステム、 を保護するため航空及び気象の管轄機関と国レベル 無線インターフェース、性能及び信頼性目標に関する問題を で調整することを促す。 扱う作業部会であり、Mr. D. Weinreich(米国)議長の下、 > FSS VSAT局を運用する主管庁に対し、本目的の 表2の体制で審議を行った。 VSAT局についてその数を考慮した上で個別免許と MIFRへの登録を検討することを勧める。 3.1 デジタル変調用キャリアID関連 これまで、我が国の提案を基に、ITU-R勧告SNG.1070 2.8 ESOMPs関連 (SNG等のアナログ変調キャリアに自動的にIDを重畳するシ ESOMPs(Earth Stations On Mobile Platforms)とは、 ステム(ATIS)の特性を規定する勧告)をベースにデジタル Ka帯のFSS帯域で運用する移動プラットフォーム上地球局 変調キャリアに対応するものに作り直した新勧告の策定作業 のことであり、これまで米国や英国を中心にITU-R報告 が進められ、前会合において、新勧告草案が作成された。 S.2223(GSO衛星と通信するESOMPsの技術・運用条件を 今会合では、我が国から新勧告草案の記述の修正及び新 まとめたもの)や新勧告案S.[GSO FSS E/S 29.5-30.0/19.7- 勧告草案を新勧告案へ格上げすることを提案した結果、我 20.2GHz](ESOMPsの技術条件をまとめたもの)の改訂作 が国の提案を反映した新勧告案が作成され、SG4へ提出さ 業と新勧告の策定作業を進めてきた。一方、イランは れた。 ESOMPsの利用形態がRRで定義されているFSSの範疇から 3.2 マルチキャリア伝送/多次元信号マッピング関連 外れることを理由に、勧告化に強く反対してきた。 今会合は、WRC-15議題のCPMテキスト案を完成させな 前々回会合において、我が国から、衛星システム用マルチ ければならなかったため、本件に関しては、これまで以上に キャリア伝送技術を記述したITU-R報告S.2173の改訂及び衛 十分な審議時間が割かれず、報告S.2223の改訂案の審議は 星通信における多次元信号マッピング技術を記述するITU-R 次回会合へ持ち越された。新勧告案S.[GSO FSS E/S 29.5- 新報告の作成に向けた作業を提案し、ITU-R報告S.2173の 30.0/19.7-20.2GHz]については、オフライン審議を経て、米 改訂作業と新報告の策定作業が開始され、前会合において、 国、英国、カナダ及び欧州の寄与文書を一つにまとめた作業 両文書のステータスが一つ格上げされ、それぞれ作業文書か 文書が作成された。なお、これまでの会合同様、RR脚注 ら報告改訂草案と新報告草案S.[MULTI_POL]が作成され 5.526の解釈について意見が分かれ、次回会合において再検 ていた。 討されることとなった。 今会合では、我が国から両文書に衛星実験結果を追加す 作業文書のステータスについては、今会合において新勧告 草案へ向けた作業文書を新勧告草案へ格上げすることを希 ることを提案し、我が国の提案を両文書に追加した上で、そ れぞれ報告改訂案と新報告案へ格上げし、SG4へ提出した。 望するESOMPs推進国に対して、イランが強く反対し、最 3.3 超高精細度テレビジョン衛星放送のための伝送方式 終的には作業文書のままとなった。 今会合において、我が国から超高精細度テレビジョン衛星 表2.WP4Bの審議体制 WP/SWP 議長 FSS、BSS及びMSSのシステム、無線インターフェース、性能 及び信頼性目標 Mr. D. Weinreich(米国) SWP 4B1 衛星のデジタルキャリアID及びマルチキャリア/多次元信号関係 福家直樹 氏(日本) SWP 4B2 IMT衛星コンポーネント及びIntegrated MSSシステム Mr. H.W. Kim(韓国) SWP 4B3 他の課題 Mr. D. Weinreich(米国) WP4B 38 検討案件 ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) 放送のための伝送方式をまとめた新報告BO.[UHDTV_ 4.2 WRC-15議題1.10 TRANSMISSION]を策定することを提案し、WP4Bにおい 議題1.10は22-26GHz帯をMSSへ追加分配することを検討 て検討が開始された。次回会合以降、他国からの寄与文書 するものである。これまで、MSSへの追加分配を主張する国 を踏まえ、新報告の策定へ向けた検討を進めていく。 はスラヤ・テレコミュニケーションズ(UAE)のみで、米国 なお、本件に関しては、放送業務を所掌するSG6及びその 下の各WP(WP6A、6B及び6C)と情報共有を図るため、 等が既存業務の保護の観点からMSSへの追加分配に反対し てきた。 これらのグループに対してリエゾン文書を送付した。 今会合においては、UAE及びロシアからMSSの候補帯域 として具体的な帯域が提案された。しかし、Methodの記述 内容についてUAEとロシアの意見が分かれ、両国が提案した 4.WP4C会合 Methodをそれぞれ記載することとなり、また、各Methodの WP4Cは、MSS及び無線測位衛星業務(RDSS)の軌道 利点・欠点の記述内容についても意見がまとまらず、WP4C 及び周波数有効利用に関する問題を扱う作業部会であり、 議長の提案により、利点・欠点は記載せず、これらに関して Mr. A. Vallet(フランス)議長の下、表3の体制で審議を行 は「no agreement」のみを記載することとなった。 った。 なお、最終的にまとめられたMethodは以下のとおりであ る。 Method A: MSSへの分配なし(NOC) 4.1 WRC-15議題1.9.2 議題1.9.2は、7/8GHz帯における海上移動衛星業務 Method B: 23.15-23.55GHz帯(宇宙から地球)及び 25.25-25.5GHz帯(地球から宇宙)をMSS (MMSS)の追加分配を検討するものである。今会合では、 MMSSへの追加分配を主張するフランスや韓国、ロシアから 寄与文書が入力された他、追加分配を反対する米国からも へ分配する(ロシア提案) Method C1:22-26GHz帯(宇宙から地球)をMSSへ分 寄与文書が入力され、CPMテキスト案に関する審議が進め 配する(UAE提案) られた。審議においては、これまでと同様に、MMSSへ周波 Option C1a:24.25-24.55GHz帯(宇宙から 地球)をMSSへ分配 数を分配するための現実的な規則条項に関する審議が不十 Option C1b:22.65-22.95GHz帯(宇宙から 分との指摘が米国等からあったが、最終的には、MMSSへ 地球)をMSSへ分配 の追加分配を行うためのMethodを含めたCPMテキスト案が 完成された。なお、CPMテキスト案に記載されたMethodは Method C2:22-26GHz帯(地球から宇宙)をMSSへ分 配する(UAE提案) 以下の二つである。 Option C2a:24.25-24.55GHz帯(地球から Method A:MMSSへの分配なし(NOC) Method B:RR第9.7号及び第9.21号の規定に従い周波数 調整を行うこと及びRR第21条の規定(地表 面での電力束密度の制限値)に従うことを条 宇宙)をMSSへ分配 Option C2b:25.25-25.5GHz帯(地球から 宇宙)をMSSへ分配 件に7375-7750MHz帯及び8025-8400MHz帯 をMMSSへ分配する。 表3.WP4Cの審議体制 WP/SWG WP4C 検討案件 議長 MSS及びRDSSの軌道及び周波数有効利用 Mr. A. Vallet(フランス) SWG 4C1 XバンドにおけるMSSの追加分配(WRC-15議題1.9.2関係) Mr. M. Abyaneh Nazari(イラン) SWG 4C2 KaバンドにおけるMSSの追加分配(WRC-15議題1.10関係) Mr. E. Jacobs(米国) SWG 4C3 400 MHz周辺のMSS(WRC-15課題9.1.1関係) Ms. S. Contreras(フランス) SWG 4C4 AMS(R)S及びADS関係 Mr. M. Razi(カナダ) SWG 4C5 RDSS関係 Mr. T. Hayden(米国) ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) 39 会合報告 4.3 WRC-15議題9.1課題9.1.1 今会合においては、我が国から勧告改訂草案中に記載さ 課題9.1.1は406-406.1MHz帯のコスパス・サーサット・シ れている計算式に説明を加えるための文書の追加等を提案し ステムの保護を検討するものであり、主に米国やフランスが た結果、我が国の提案を反映した勧告改訂草案が作成され、 本検討を主導している。 次回会合へ継続審議となった。 今会合においては、米国やフランス、ロシアからの寄与文 書を基にCPMテキスト案を完成させた。なお、審議において 4.5 1215-1300MHz帯におけるEESS(能動)からRNSS 受信機へのパルス干渉 は、ロシアが、RR第5条の周波数分配表上において、コスパ ス・サーサット・システムの保護を確実にするための記述を 前々回会合(2013年4-5月)での米国提案に基づき、 隣接帯域に記載することを提案し、410-460MHz帯に新脚注 1215-1300MHz帯における複数のEESS(能動)衛星から 5.A911「The use of the frequency band 390 - 420 MHz is RNSSへの複数局からの混信の検討を行うITU-R新報告草案 subject to application of Resolution 205(Rev. WRC-15) 」 M.[RNSS_Multi_EESS]に向けた作業文書がこれまで検討さ を追加するための提案がCPMテキスト案の中に記載された れてきた。この新報告に対しては、EESS等のリモートセンシ (注:議題9はMethodを作成しない) 。 ングを扱うWP7Cからの質問が入力されていたことを受け、 今会合では、我が国及び米国から本作業文書の修正提案と 4.4 RNSS干渉評価方法に関する勧告の改訂(勧告改訂草 案ITU-R M.1831) WP7Cへの回答案が入力された。審議の結果、両国の提案 に基づき作業文書が更新され、新報告草案へ格上げされた。 ITU-R勧告M.1831は、Gagg(aggregate gain factor:あ また、WP7Cへの回答文書が送付された。 るRNSSシステムAからのRNSS信号が別のRNSSシステムB受 信機への干渉となる場合に、複数のRNSSシステムA衛星か 5.SG4会合 らの干渉信号レベルとその各干渉信号到来方向に対する RNSSシステム受信機の利得を総合して表現したパラメータ) 今会合では、勧告案5件(うち、新規2件、改訂3件)及 とSSC(Spectrum Separation Coefficient:RNSS信号間の び勧告の削除案5件、報告案4件(うち、新規2件、改訂2 RF波の重なりを表現するパラメータ)を用いて、RNSSシス 件) 、研究課題案1件(新規) 、が審議された。勧告案につい テム間の干渉量を雑音レベル増加に置き換えて評価する干渉 ては、SG4において合意を得、採択又は承認を求めるための 評価方法である。2012年5月のWP4C会合から、本勧告の改 郵便投票等に諮られることとなった。審議結果は表4∼表6 訂作業が進められており、前回会合において勧告改訂草案 のとおりである。 が作成された。 表4.SG4での審議結果(勧告案) 種類 勧告番号及び概要 BO.[ALT_BSS_ANT_DIAG] (12GHz帯BSS地球局の開口径55-75cmのアンテナのアンテナパターン) 審議結果 会合にて採択。 承認を求める郵便投票に付す(*1) 1 新規 2 〃 3 改訂 4 〃 M.1787-1 会合にて採択。 (1164-1215MHz帯、1215-1300MHz帯、及び1559-1610MHz帯で運用するRNSS(宇宙から 承認を求める郵便投票に付す(*1) 地球及び地球から宇宙)のシステム及びネットワーク特性並びに送信宇宙局の技術特性) 5 〃 M.1478-2 (406-406.1MHz帯コスパス・サーサット・システムの保護基準) PSAA(*2) 6 削除 S.352-4 (FSSのアナログ伝送方式を用いたシステムのための仮想的基準回線) PSAA(*2) 7 〃 S.353-8 (FSSのFDM方式電話通信のための仮想的基準回線における許容雑音電力) PSAA(*2) 40 S.[DIGCID] (4/6GHz帯及び11-12/13/14GHz帯のGSOのFSSにおける随時利用の地球局送信で用いるデ PSAA(*2) ジタル変調キャリア識別システム) M.1850-1 (IMT-2000の衛星系無線インターフェース) ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) 会合にて採択。 承認を求める郵便投票に付す(*1) 表4.SG4での審議結果(勧告案)(続き) 種類 勧告番号及び概要 審議結果 S.464-2 (FSSのFDM方式電話通信用の周波数変調システムのためのプリエンファシス特性) PSAA(*2) 〃 S.481-2 (FSSシステムにおけるFDM方式を用いた電話通信の実際のトラヒックのノイズの測定) PSAA(*2) 〃 S.482-2 (ユニフォームスペクトル信号によるFSSのFDM方式の電話通信を用いたシステムのパフ PSAA(*2) ォーマンス測定) 8 削除 9 10 *1:決議ITU-R 1-6の§10.4.5に従い、郵便により承認を求める手続。 *2:決議ITU-R 1-6の§10.3に従い、郵便により同時に採択と承認を求める手続。 表5.SG4での審議結果(報告案) 種類 1 新規 2 〃 3 改訂 4 〃 報告番号及び概要 審議結果 S.[MULTI_POL] (衛星通信における多次元信号マッピング技術) 承認 M.[RNSS_MULTI_EESS] (1215-1300MHz帯におけるRNSS受信機への複数のEESSシステムからの総干渉発生可能 承認 性の検討) BO.2007 (21.4-22GHz帯におけるBSSによるHDTV及びUHDTVに関する伝送実験) 承認 S.2173 (衛星システム用のマルチキャリア伝送技術) 承認 表6.研究課題の審議結果 種類 1 新規 概要 審議結果 [INTEG_MSS]/4 (Integrated MSSシステムに関するシステムアーキテクチャと性能の検討) PSAA(*) *:決議ITU-R 1-6の§10.3に従い、郵便により同時に採択と承認を求める手続 (RAG14においてRA-15までの暫定措置として認められている) では各国との激しい議論の応酬が続き、日本代表団全員が 6.次回会合予定 審議の進展に貢献した。その結果、我が国の意見をCPMテ 次回の会合スケジュールは次のとおりである。 キスト案に反映させることができただけではなく、SG4の中 > WP4C:2015年6月17日(月)∼23日(火) における我が国のプレゼンスの向上にもつなげることができ > WP4B:2015年6月22日(月)∼26日(金) た。次回SG4関係者がITUの場に集結するのは2015年3月下 > WP4A:2015年6月24日(水)から7月2日(木) 旬から開催されるWRC-15準備会合(CPM15-2会合)であ > SG4:2015年7月3日(金) る。CPM15-2会合に向けては、さらに我が国の見解を整理 し、会合に臨んでいきたい。最後になったが、今回の会合に おいても多大なる貢献をした日本代表団全員には、この場を 7.おわりに 借りて深く御礼申し上げる。 今会合はWRC-15議題のCPMテキスト案を完成させるた めの重要かつ非常にハードな会合であった。連日連夜の審議 ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) 41 会合報告 ITU-R SG5 WP5D会合(第19回)の結果について ∼IMTに関する検討∼ 前 総務省 総合通信基盤局 電波部 移動通信課 新世代移動通信システム推進室 システム開発係長 たかはし (現 総務省 情報流通行政局 放送政策課 主査) 高橋 1.はじめに 2012年1月23日∼2月17日に開催された世界無線通信会 かず や 和也 個別にその名称が言及される形で、検討結果をJTG 4-5-6-7 に入力することが要請された。 議(WRC-12:World Radiocommunication Conference 2012)において、2015年に開催予定の次回WRC-15における > JTG 4-5-6-7会合は、共用検討やCPMテキスト草案の検 IMTに関する議題として、移動業務への一次分配及びIMT 討において、適切な周波数範囲等を含めた移動業務の への追加周波数特定を検討する議題(議題1.1)及び第1地 周波数要求に関するWP5D会合からの検討結果、並び 域における694-790MHz帯の移動業務(航空移動業務を除 に関連するWPからの検討結果を考慮すること く)への追加分配に伴う諸問題を検討する議題(議題1.2) が決定された。 (Decision decides部第3項) > 議題1.2に関する共用検討をJTG 4-5-6-7会合が行うに当 さらに、2012年2月20日∼21日に開催された2015年の世 たって、関連するWPからの技術面・運用面の特性や 界無線通信会議へ向けた第1回準備会合(CPM15-1: 保護要件、並びにWP5D会合及びWP6A会合からの周 Conference Preparatory Meeting)においては、これら二つ 波数要求は2012年12月31日以前にJTG 4-5-6-7会合へ の議題について検討するための組織として四つの研究委員会 提出されること(Decision further decides部第3項) が関わるジョイントタスクグループ(JTG 4-5-6-7)の設置が 決定された。 > 議題1.1に関する共用検討をJTG 4-5-6-7会合が行うに当 たって、関連するWPからの技術面・運用面の特性や CPM15-1で決定されたJTG 4-5-6-7の所掌に基づき、上記 保護要求、現在や将来の利用方法に関する情報、並び の二つのWRC-15の議題に関する検討において、第4世代移 にWP5A会合及びWP5D会合からの周波数要求は、で 動通信システム(IMT-Advanced)に関する標準化や、第3 きるだけ2013年7月31日以前にJTG 4-5-6-7会合へ提出 世代移動通信システム(IMT-2000)の高度化等、IMT全般 されること(Decision further decides部第4項) の検討を担う作業部会(WP:Working Party)である WP5D会合が、大きな役割を担うこととなった。 これまで、WP5D会合においては、CPM15-1以降、IMT に適切な周波数範囲(Suitable Frequency Ranges)等を含 3.WP5D第19回会合の結果概要 WP5D第19回会合は、6月18日∼25日にカナダのハリファ めた移動業務の周波数要求に関する検討が進められた。 ックスにおいて開催された。本会合には、各国電気通信主管 2013年7月のWP5D第16回会合(札幌)における最終合意 庁、標準化機関、電気通信事業者、ベンダーなど、30か国 の内容が検討結果としてJTG 4-5-6-7会合に提出され、JTG から約180名が参加し、我が国からは14名が参加した。 4-5-6-7会合において技術的な検討に基づいてCPMテキスト 案の作成が進められているところである。 本稿では、今研究会期7回目の会合として開催された WP5D第19回会合について、その結果概要を報告する。 今回の会合では、2020年以降の携帯電話に関する集中的 な議論が行われ、IMTの将来ビジョンに関係する勧告 M.[IMT.VISION]や今後の検討スケジュール等について検討 が進められたほか、勧告M.1579-1の改定案及びIMTAdvancedの不要輻射に関する勧告案がSG5に上程された。 2.議題1.1及び1.2の検討におけるWP5D会合の役割について 以下に、今会合において審議された主な結果について、そ JTG 4-5-6-7会合は、CPM15-1での議論の結果、WRC-15 の概要を紹介する。議論は主としてサブワーキンググループ 議題1.1及び議題1.2に関する責任グループとしてその設置が (SWG:Sub Working Group)を単位として行われたことか 決定された(ITU-R CA/201 ANNEX10)が、以下に示すと ら、SWGの活動を中心として記載する。なお、WP5Dの審 おり、その所掌(Terms of Reference)において、WP5Dは 議体制は表1及び表2のとおりである。 42 ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) 表1.WP5Dの審議体制 Group 担当項目 WP5D ITU‐R WP5D全体 WG GEN(GENERAL ASPECTS) SWG‐IMT HANDBOOK IMT関連の全般的事項 ・IMTハンドブックM.[IMT.HANDBOOK]の作成及びITU‐D SG2との連携 SWG‐PPDR SWG‐TRAFFIC SWG‐VISION DG Vision.Trends DG Vision.Capability DG Vision.Update SWG‐RA‐15 PREPARATION WG SPEC(SPECTRUM ASPECTS) SWG‐ESTIMATE SWG‐FREQUENCY ARRANGEMENTS DG 700MHz SWG‐SHARING STUDIES DG M.[IMT.SMALL.CELL] DG TDD Coexistence WG TECH(TECHNOLOGY ASPECTS) SWG‐IMT SPECIFICATIONS SWG‐RADIO ASPECTS DG Future Technology Trends DG Above 6 GHz DG IMT ARCH DG 1579 Global Circulation SWG‐OUT OF BAND EMISSIONS (OOBE) AH WORKPLAN ・IMTのPPDR応用の研究 ・2020年及びそれ以降のトラヒック推定、市場要求、等に関する研究 ・2020年及びそれ以降の地上系IMTのビジョンに関する研究 ・新勧告案M.[IMT.VISION]に向けた作業文書第2章の作成 ・新勧告案M.[IMT.VISION]に向けた作業文書の主要能力8件の特定 ・新勧告案M.[IMT.VISION]に向けた作業文書の2章と4.3章を除く部分の作成 ・2015年ITU無線通信総会に向けたITU‐R 決議等の見直し スペクトラム関連 ・WRC‐15議題1.1及び議題1.2における所要周波数帯域幅の推定 ・WRC‐15議題1.2におけるIMT用周波数チャネル配置 議 長 S. BLUST(AT&T) 副議長:K. J. WEE(韓国)、 H. OHLSEN(エリクソン) K. J. WEE(韓国) B. A. SOGLO(クアルコム) B. BHATIA(インド) 代理議長:V. SAMPATH(カナダ) C. EVCI(フランス) J. SONG(サムソン) J. STANCAVAGE(アメリカ) R. COOPER(イギリス) J. SONG(サムソン) J. LEWIS(サムソン) A. JAMIESON(ニュージーランド) 新 博行(日本) Y. ZHU(中国) ・新報告案M.[IMT.ARRANGEMENTS]に向けた作業文書の作成 A. ABOU‐ALMAL(UAE) ・周波数共用研究 ・3.4‐3.6GHz帯におけるIMTとFSSの共用検討、新報告案作業文書作成 ・2.3‐2.4GHz帯における二つのTDD間の共用検討、新報告案作業文書作成 無線伝送技術関連 ・IMT‐2000無線インタフェース技術勧告(M.1457)及びIMT‐Advanced 無線インタフェース技術勧告(M.2012)の維持改定管理 ・無線関連技術(将来IMT技術動向、IMTに特化したCRS、基地局アンテナシス テム、他)の研究、 グローバルサーキュレーション勧告(M.1579)の維持改定管理 ・新報告案M.[IMT.Future Technology Trends]に向けた作業文書の作成 ・新報告案M.[IMT.Above 6GHz]に向けた作業文書の作成 ・新報告案M.[IMT.ARCH]に向けた作業文書の作成 ・勧告M.1579‐1の改定案に向けた作業文書の作成 ・不要輻射に関する勧告M.1580及びM.1581の改定管理、IMT‐Advancedの不 要輻射に関する研究 WP5D全体の作業計画等調整 M. KRAEMER(ドイツ) J. JIAO(中国) X. XU(中国) H. WANG(中国) N. P. MAGNANI(イタリア) 代理議長:石川 禎典(日本) M. GRANT(アメリカ) M. GRANT(アメリカ) R. RUISMAKI(ノキア) A. SANDERS(アメリカ) P. SCHEELE(ドイツ) U. LOWENSTEIN(ドイツ) H. OHLSEN(エリクソン) 表2.IMT技術と勧告M.1457及びM.2012の改定にのみ関与するSWG Group WG TECH (TECHNOLOGY ASPECTS) [SWG-EVALUATION] [SWG-COORDINATION] 担当項目 ・無線インタフェース技術評価作業 ・IMT-2000及びIMT-Advancedの開発ステップ管理のコーディネート作業 (1)IMTの将来ビジョンに関係する勧告M.[IMT.VISION] に関する検討及び今後の進め方に関する検討 議 長 [H. WANG(中国)] [本多 美雄(日本)] いては、IMT-2020の性能について、重要となるパラメ ータの項目(最大で八つ)の選定に向けた議論が行わ ・ SWG RA-15 Preparationについては、2015年ITU無線 れ、7項目について軸とすることで合意した。残り1項 通信総会(RA-15)に向けて、ITU-R決議、意見、研 目については、議論が完了しておらず、コレスポンデン 究課題をレビューし、IMTに関連する無線規則の決議 スグループ(CG:Correspondence Group)を設置し、 及び勧告についての非公式な意見をまとめるために今 次回会合まで議論を継続することとなった。また、同 回会合で新設され、作業が開始された。本SWGでは、 CGにおいては、これらのパラメータの項目を用いた 将来のIMTの名称についての議論が行われ、RA-15で正 IMT-2020のダイアグラム作成に向けた議論も行われる 式名称が承認されるまでの暫定措置として、「IMT- 予定である。 2020」を脚注付きで使用することとされた。決議56及 ・ SWG-RADIO ASPECTSにおいては、将来のIMTに適 び決議57の改定・新設についても議論が行われ、RA- 用される新技術を記載する新レポート案M.[IMT. 15のスケジュールを考慮の上で、次回以降に議論を継 Future Technology Trends]に向けた作業文書を更新 続することとなった。 しPDN Reportとした。本レポートの内容を要約したテ ・ SWG-VISIONにおいては、ドラフティンググループ キストは、M.[IMT.VISION]において参照される予定 (DG:Drafting Group)を三つ設置し、M.[IMT.VISION] である。また、6GHz以上の帯域におけるIMTの実現可 作業文書の作成を進めた。DG Vision.Capabilityにお 能性についての新レポート案M.[IMT.Above 6GHz]に ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) 43 会合報告 ついても作業文書を更新し、WP3M/3Kに電波伝搬に 関する情報提供を求めるリエゾン文書を発出した。 て内容を合意した。 ・ IMT-Advancedの詳細無線インタフェース勧告ITU-R ・ 2020年∼2025年のトラヒック及び携帯電話加入者数に M.2012の第二版に向けた検討に関しては、前回会合で 関する報告M.[IMT.BEYOND2020.TRAFFIC]につい LTE-Advanced側のみの改訂を行うことで合意してお て、中国提案のトラヒック推定やフランス及びエリクソ り、今回会合においてはL T E - A d v a n c e d のG C S ンからの非対称性に関する提案等について、作業文書 Proponentから改訂概要の入力の確認が進められた。 を更新した。本レポートの内容を要約したテキストが、 M.[IMT.VISION]において参照される予定である。 ・ AH WORKPLANにおいては、IMT-2020の検討スケジ (5)IMTの不要輻射勧告の策定(SWG-OOBEにおいて検 討)及びGlobal Circulation勧告M.1579の改訂 ュールについて議論が行われた。IMT-2020の一部検討 ・ IMT-Advancedの不要輻射新勧告M.[IMT.OOBE.BS] スケジュールの前倒しを主張する韓国が、その他の国と 及びM.[IMT.OOBE.MS]について、今回会合で完成 折り合いがつかず、二つの案を添付して次回に継続検 し、SG5に上程した。 討することとなった。 ・ IMT端末のGlobal Circulation勧告M.1579に関しても、 OOBE勧告の完成を受けて、IMT-Advanced端末も対 (2)IMTに関する将来の周波数要求条件の算定等 象に含めた改訂2版がSG5に上程された。 ・ 2020年における必要周波数帯域幅(周波数要求条件) の推定をまとめたレポートM.2290の結果に関して、前 回会合に放送事業者から入力された前提条件の見直し を求める寄書、及び同様な観点から衛星事業者がJTG 4.今後の予定 第20回会合は2014年10月15日∼22日(ジュネーブ)に、 会合に入力しWP5Dへリエゾン文書として送付されて 第21回会合は2015年1月27日∼2月4日(オークランド(ニュ きた寄書に基づき、長時間の議論が行われた。結果的 ージーランド) )に開催される予定である。 に、M.2290の結果を妥当とする見解(日本を含め多く の主管庁が支持)と、見直しが必要とするとの見解 なお、RA-15については、2015年10月26日∼30日(ジュネ ーブ)に開催される予定である。 (ルクセンブルク、ロシア、上記事業者が支持)に分か 今会合では、IMT-2020の検討スケジュールや れ、合意には至らなかった。結果として、JTG会合への M.[IMT.VISION]をはじめとする関連文書のドラフティング リエゾン文書の発出も行われなかった。 が積 極 的 に行 われた。我 が国 からも、ARIB 2020 and beyond ad hoc会合における検討状況についての入力を行 (3)周波数共用に関する検討(SWG-SHARING STUDIES において検討) い、我が国の検討を作業文書に追記することができた。日本 代表団として参加された皆様、会合前の寄書作成や審議に ・ 3.4-3.6GHz帯におけるIMT小セルシステムと固定衛星 貢献してくださった関係各位、厳しいスケジュールの中、 業務との共用検討に関する新ITU-Rレポート 2020 and beyond ad hoc会合で御検討をいただいた皆様に、 [IMT.Small Cell]に向けた作業文書を更新した。 厚く御礼申し上げる。 ・ 2.3-2.4GHz帯におけるTDD周波数ブロック間の共用検 IMT-2020については、国内では「5G」として本年1月よ 討に関するITU-Rレポート[IMT.Small Cell]に向けた作 り、総務副大臣主催の「電波政策ビジョン懇談会」におい 業文書を更新するとともに、完成時期について、第22 て議論が進められているところである。本年7月には同懇談 回会合に作業計画を変更した。 会の中間とりまとめにおいて、東京オリンピック・パラリン ピックが開催される2020年に世界に先駆けて5Gを実現する (4)IMTの無線インタフェース勧告の改訂(SWG-IMT SPECIFICATIONSにおいて検討) ために、推進体制の強化、研究開発の促進、国際強調の推 進などの方向性が示されたところである。WP5D会合は、5G ・ IMT-2000詳細無線勧告ITU-R M.1457第十二版に向け 実現に向け、国際的協調を推進していく上で最も重要な会 た改訂に関しては、前回会合及び今回会合に入力され 合の一つであることから、関係の皆様には、今後の審議に向 た寄与文書について議論を行い、ハイパーリンクを除い けての更なる御協力をお願い申し上げたい。 44 ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) ITU-R JTG4-5-6-7会合(第6回)の結果について ∼IMTへの追加周波数特定等の検討∼ 総務省 総合通信基盤局 電波部 移動通信課 新世代移動通信システム推進室 1.開催概要 (1)JTG4-5-6-7の概要 JTG4-5-6-7(Joint Task Group 4-5-6-7)は、2015年11月 に開催予定の世界無線通信会議(WRC-15)の議題1.1 合で合意に至った一部を除き、最終取りまとめの作業やそれ らレポート案等の承認手続を行う関係SGへの送付に係る審 議が未了の状態であった。 今回の会合での審議体制については、 (IMTへの追加周波数特定等の検討)及び議題1.2(欧州、 > 最終回である今回会合の最優先課題は、今年の8月 アフリカ地域における700MHz帯の移動業務への分配検討) 15日までにCPM編集担当責任者への提出を要する について、CPMテキスト案の作成など、必要な検討を行う CPMテキスト案の最終取りまとめであること ため、衛星業務を扱うSG4、地上業務を扱うSG5、放送業 > このCPMテキスト案の最終取りまとめ作業を今回会 務を扱うSG6及び科学業務を扱うSG7の共同検討の場とし 合の期間内でやり遂げるため、CPMテキスト案担当の WG1に主な審議時間の大半を費やす必要があること てITU-Rに設置されたグループである。 2012年7月の第1回会合以降、IMTへの追加周波数特定等 > 共用検討等の結果に係るレポート案等の取りまとめ に向けた候補周波数帯の検討やそれらにおける既存業務と 作業については、CPMテキスト案の完成に支障のない IMT等との共用検討、これら検討結果を記載したCPMテキ 範囲で行う必要があること スト草案の作成作業等が進められてきたところであるが、最 等を踏まえ、前回会合までの体制を大幅に見直して、WG2、 終回である今回(第6回)会合は、これら担当議題に係る 3、4及び5の代わりに全体会合の直下に個々のレポート案等 CPMテキスト案を完成させることを目指して開催されたもの の取りまとめを専担するアドホックグループ(Ad-Hoc2∼11) である。 が設けられ、CPMテキスト案の審議の前後の時間帯等に議 論されることとなった。また、これまで議題1.1の候補周波数 (2)今回の開催状況 第6回JTG4-5-6-7会合は、本年7月21日∼31日にジュネー ブのITU本部及びCICG会議場において開催された。本会合 には、各国電気通信主管庁、標準化機関、電気通信事業 帯に関する各国見解等を取りまとめた表の作成を行ってきた Ad-Hoc1では、引き続き同表の更新作業等が行われた。 今回の会合での審議体制をまとめると、表1のとおりであ る。 者、メーカーなど、132の国・機関から約420名が参加し、 我が国からは15名が出席した。 2.主な審議結果について (3)審議体制 (1)議題1.1のCPMテキスト案 前回会合までは、CPMテキスト案の作成検討、取りまと WG1において、議題1.1及び議題1.2のCPMテキスト案に めを担うワーキンググループ(WG1)や、放送業務、地上業 関し、各担当グループで作成された文案の取りまとめと共通 務、衛星業務、科学業務に関連する共用検討など技術的な 部分のドラフティングを担当している。実質的な議論と作業 検討事項をそれぞれ担当するワーキンググループ(WG2、3、 は、議題ごとに設置されたSWG(議題1.1についてはSWG1- 4及び5)等が全体会合の下に設置され、さらにそれらWGの 1、議題1.2についてはSWG1-2)において行われ、CPMテキ 下に個別の既存システムとの共用検討など具体的作業に取 スト案の更新作業が進められた。 り組む多くのサブワーキンググループ(SWG)やドラフティ ンググループ(DG)が設置されて、議論が行われていた。こ 議題1.1のCPMテキスト案は、以下の各章で全体構成がな された。 れまでに各帯域における既存業務との共用検討等の実作業 第1章 概要 はおおむね終えていたところであるが、共用検討等の結果に 第2章 背景 関する多くのITU-Rレポート案や勧告案については、前回会 第3章 技術検討等の概要(3.1 周波数要求条件、3.2 共 ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) 45 会合報告 表1.JTG4-5-6-7会合(第6回)の審議体制 グループ名 担務内容 議 長 Martin Fenton(英) 〈副議長〉 Elsayed Azzouz(エジプト) Johan Smit(南アフリカ) Plenary 全体審議 WG 1 CPM Textの作成 Cindy Cook(加) 議題1.1 CPM Text作成 Diana Tomimura(伯) DG3.1 議題1.1 CPM Text 3.1章の作成 Hiroyuki Atarashi(日) DG3.2/4.1 議題1.1 CPM Text 3.2、4.1章の作成 Michael Kraemer(独) DGCband 議題1.1 CPM Text 5、6章のうちCバンド固定衛星業務に関する部 分の作成 Vadim Poskakukhin(露) SWG1-1 議題1.2 CPM Text作成 Jose Carrascosa(仏) Ad Hoc 1 SWG1-2 候補周波数帯に関する見解の取りまとめ John Lewis(韓) Ad Hoc 2 議題1.1に関する放送業務に関連 Amy Sanders(米) Ad Hoc 3 議題1.2に関する放送業務に関連 Roland Beutler(独) Ad Hoc 4 航空テレメトリと第一地域のARNS Michal Polzun(ポーランド) Ad Hoc 5 固定業務・移動業務関連 Stephen Jones(英) Ad Hoc 6 レーダ関連 Stephen Talbot(英) Ad Hoc 7 5GHz帯無線LANと無線測位業務の共用 Stephen Ward(米) Ad Hoc 8 放送衛星業務関連 Eric Fournier(仏) Ad Hoc 9 移動衛星業務関連 Paul Deedman(英) Ad Hoc 10 1.4GHz帯の地球探査衛星業務関連 Glenn Feldhake(米) Ad Hoc 11 5GHz帯無線LANと地球探査衛星業務の共用 Edoardo Marelli(ESA) DG Parameters 共用検討におけるパラメータ Michael Kraemer(独) 用・両立性検討) 第4章 検討結果の分析(4.1 共用検討等の分析、4.2 候 補周波数帯) 周波数分配の情報やJTG4-5-6-7で行われた共用・両立性検 討の結果等が簡潔にまとめられるとともに、4.1章は各技術 検討の結果取りまとめを担当する各Ad-Hoc等からの検討結 第5章 議題を解決する手法の検討 果サマリーのテキストを集約する形でドラフティングが進め 第6章 具体的なRR改定案 られた。その結果、基本的にはそれぞれの技術検討について、 このうち、3.1章の周波数要求条件、3.2及び4.1章の共 既存業務保護に必要な所要離隔距離やpfd値、干渉低減技 用・両立性検討関係、第5章及び第6章のうちCバンド固定 術が取りまとめられるとともに、同一地域・同一周波数の共 衛星の関係については、それぞれドラフティンググループが 用は困難など、全体で合意できた結論が記載されている。 設置されて、集中的に議論が行われた。 4.2章の候補周波数帯については、前回会合までの議論で 特に3.1章の周波数要求条件については、日本の新氏 は特に周波数帯の絞り込み等は行われておらず、これまでに (NTTドコモ)がDG3.1の議長を務め、詳細議論及びドラフ 各国・各機関から提案があった周波数帯を全て記載した状 ティング作業が進められた。周波数要求条件について別途既 に取りまとめているReport ITU-R M.2290の内容の適否、同 Reportに基づく記載の修正是非について議論となったが、最 終的には同Reportに基づき2020年のグローバルな所要周波 態を維持する形となっていたが、今回会合で、 基準1:一つ以上の主管庁が候補帯域として提案している こと 基準2:JTG4-5-6-7で技術検討が行われていること 数帯幅は過去に特定済みの周波数も含めて1340∼1960MHz という二つの基準に合致した周波数帯を記載することが合意 という結論が維持された。 された。これら基準に照らし、5725∼5850MHz等について また、3.2章、4.1章の共用・両立性検討の関係について は候補帯域から外す提案等がなされたが、その後の議論の結 は、両章の記載内容が重複しないよう配慮しつつ、3.2章で 果、最終的にはいずれも候補周波数帯のリストに残されるこ 46 ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) ととなった。 第4章には三つの値(-56dBm/8MHz、-42dBm/ また、我が国から提案していた候補周波数帯のうち、3400 8MHz、-25dBm/8MHz)を含む複数の値が異なる条件 ∼3600MHzについては、一部の国々が、WRC-07で検討済 の下で算出されたと例として併記されることとなった。 みであり、WRC-15の議題1.1で検討対象とする必要はないと ・SAB/SAPの検 討 (Issue D)は、使 用 可 能 上 限 を 主張し、議論となったが、最終的には候補帯域として記載 694MHzまでに削減するという基本的な考え方におい されることとなった。 て、SAB/SAPに不足する分の周波数の補足方法(脚注 このような議論の結果、現行の無線通信規則(RR)の周 分配)などが追記された。 波数表の区分に応じて、候補周波数帯(470-694/698、 1350-1400、1427-1452、1452-1492、1492-1518、15181525、1695-1710、2700-2900、3300-3400、3400-3600、 3600-3700、3700-3800、3800-4200、4400-4500、45004 8 0 0 、4 8 0 0 - 4 9 9 0 、5 3 5 0 - 5 4 7 0 、5 7 2 5 - 5 8 5 0 、5 9 2 5 6425MHz)が4.2章にリストアップされており、我が国から の提案帯域(1427.9∼1510.9MHz、3400∼4200MHz、 4400∼4900MHz)はいずれも含む形で記載されている。な (3)議題1.1、1.2関連の共用検討 以下を新レポート案として承認し、関連SGへ送付するこ ととした。 ・470-694/698MHzにおける地上デジタル放送とIMTを含 む広帯域移動通信の共用・両立性検討 ・GE06エリア内の694-790MHzにおける地上デジタル放 送とIMTの同一チャネル共用・両立性検討 お、これら日本の提案帯域について、3.2章、4.1章では、幾 ・1452-1492MHzにおける放送と移動業務の共用検討 つかの運用条件(離隔距離、基地局タイプ、不要発射レベ ・1429-1535MHzにおけるIMTと航空テレメトリシステム ルなど)は必要なものの、おおむね条件によって共用・両立 が可能との検討結果となっている。 第5章については、議題を解決する手法(メソッド)につ き、その枠組みを2段階に分けて、まず一般的メソッドとし て 、 前 回 合 意 し た よ う に Method A( NO Change)、 Method B(移動業務に分配) 、Method C(IMT特定)を、 またこれらに加え、周波数帯ごとに各Methodに詳細オプシ ョンも記載されており、日本の提案帯域についても、我が国 の主張を関係するメソッドに反映する形で記述がなされたと ころである。 の共用検討 ・470-694/698MHzにおけるIMTと固定業務の共用・両 立性検討 ・1350-1530MHzにおけるIMTと固定業務の共用・両立 性検討 ・3400-4200MHzにおけるIMTと固定業務の共用・両立 性検討 ・4400-4990MHzにおけるIMTとpoint-to-point固定無線 システムの共用・両立性検討 ・5925-6425MHzにおけるIMT屋内小セルと固定業務の 共用・両立性検討 (2)議題1.2のCPMテキスト案 SWG1-2において、Issue A(周波数下限) 、Issue B(BS) 、 Issue C(ARNS) 、Issue D(SAB/SAP)を主要論点として 議論が進められた。 議題1.2のCPMテキスト案は、以下の各章で全体構成がな ・1400-1427MHzの地球探査衛星業務と1375-1400MHz、 1427-1452MHzの移動業務の共存検討 その他の最終的な完成、合意に至らなかった16件の検討 は、暫定新レポート草案や作業文書として、JTG4-5-6-7第6 回会合議長報告に添付するにとどめることとなった。 されている。 第1章 概要、第2章 背景、第3章 共用検討結果のま とめ、第4章 検討結果の分析、第5章 議題を解決する手 法の検討 (4)無線LAN 議題1.1は、IMTへの追加周波数特定のほか、無線LANへ の追加分配についても検討対象となっている。これまで各 主なポイントは以下のとおりである。 国・各機関からの提案により、5350-5470MHz及び5725- ・周波数下限の検討は694MHzの一つのみとすることで合 5850MHzが候補帯域となっていた。 意された。 このうち5725-5850MHzについては技術検討が十分でない ・IMT移動局の帯域外輻射電力の制限値(OOBE)が提 との理由で、前述のように、候補帯域から外す提案等がなさ 案されたが、結論が出なかったため、CPMテキスト案の れ、一旦削除されたが、その後、無線LANの候補帯域とし ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) 47 会合報告 て現に検討が継続しているため候補帯域として記載すべきと 3.今後の予定 の意見も出され、議論の結果、最終的には候補周波数帯の リストに残されることとなった。 来年11月に開催予定のWRC-15に向けた今後の予定とし これらの帯域では既存業務であるレーダーや地球探査衛星 ては、アジア太平洋地域における共通見解・共同提案の作 業務(能動)との共用可否が問題となるが、その検討結果 成、取りまとめを行うAPTの準備会合であるAPG15-4が2015 の取りまとめに今回の会合では多くの時間を要したところで 年2月9日∼14日にバンコク、APG15-5が7∼8月頃に韓国で ある。最終的には、いずれも合意形成には至らず、レーダー 開催され、また、CPMテキストを最終的に完成させるITU-R との共用に関するレポート案は作業文書として議長報告に添 のCPM15-2会合は、2015年3月23日∼4月2日にジュネーブ 付されたのみであり、また、地球探査衛星業務(能動)との にて開催される予定である。 共用に関するレポート案についても、結論のテキストの一部 に鍵括弧が残された状態で全体会合に提案されたが、合意 4.おわりに できず、レポート草案として議長報告に添付されるにとどま った。 今回の会合はJTG4-5-6-7の最終会合であり、CPMテキス 5350-5470MHz及び5725-5850MHzのいずれの候補帯域に ト案の作成等を完了させる必要もあったことから、最後の追 ついても、共用可能性が示されるには至っていないことから、 い込みで会合期間中は週末を含め朝から深夜まで長時間の 議題1.1のCPMテキスト案の第5章においては、Method A 議論が行われました。非常にハードなスケジュールの中、現 (NOC)のみが記載されている。 地で献身的に対応してくださった日本代表団各位、会合前 の寄書作成や審議に貢献された関係各位に深く御礼申し上 げます。 (5)その他 これまで作成してきた議題1.1の候補周波数帯に関する各 WRC-15の開催まで残すところあと1年となりましたが、我 国見解等を取りまとめた表について、今回会合においても入 が国としての提案等が最後に実を結ぶには、今後ますます折 力等に基づいて更新作業がなされた。同表については、情報 に触れて各国との調整、折衝等が重要になってくると思われ としてJTG4-5-6-7第6回会合議長報告に添付された。 ます。関係の皆様のこれまでの御尽力に感謝するとともに、 今後も引き続き御協力をお願い致します。 会合風景 48 ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) ITU-T SG11会合(2014/7/9-16) 報告 ひめ の 日本電気株式会社 テレコムキャリアビジネスユニット 主任 ひで お 姫野 秀雄 1.会合の概要 2.2 ラポータ等の変更 本稿では2014年7月9日∼16日にスイス・ジュネーブにて WP1/11議長のJane D. HUMPHREY(Ericsson)は継続 開催されたITU-T SG11会合について報告する。本会合には 参 加 不 可 とのことから、 WP1/11議 長 をXiaojie ZHU 20か国から約120名の参加があり61件の寄書が審議された。 (China Telecom:現WP1/11副議長)に交代することが合 日本からはNEC 4名、NTT 1名の計5名が参加している。 意された。またQ11、Q12、Q15ラポータのロシアメンバは継 SG11では、WTSA-12にて合意されたSG11の検討内容に従 続参加が困難とのことから各Qのラポータがオーストリア、 い、信号要求条件とプロトコル、M2M、試験仕様(C&I) カナダ、スペインへ変更された。 の3本柱に沿った議論を実施している。 3.各WPでの議論 2.会合トピックス SG11プレナリ会合にて議論された主な項目について報告 する。 3.1 WP1/11:新たなネットワークへの信号要求条件とプ ロトコル WP1/11にグループされている3課題(Q1/11、Q2/11、 Q3/11)では、サービスにおける信号要求条件とプロトコル 2.1 FG-M2M成果文書の議論 等について議論している。今会合ではQ1/11にてFG-M2M成 2014年4月に完成したFG-M2M成果文書の報告が親SGで 果文書について議論を行い、NEC/NTT/NICTの連名によ あるSG11プレナリ会合にて実施された。本報告書と今後の るFG-M2M成果文書のうちM2MサービスレイヤAPI&プロト 対応を検討するため、SG11の関連課題Qが集合しSG13と コルに関連する文書D3.1を勧告として完成させるための新規 SG16との関係についても議論を実施した。SG16では WIの提案及びQ1/11の課題テキストにe-healthを追記する提 Q25/16にてFG-M2M成果文書であるD2.1:M2M service 案が議論され、FG-M2M成果文書D3.1をベースに検討する layer:requirements and architectural frameworkをベース 新規WI、Q.M2M_pro_overview“Overview of APIs and とする新WI(Work Item)が合意されており、検討を開始 protocols for M2M service layer”として検討開始すること するとのリエゾンを受け取っている。SG13からはギャップ分 が合意された。エディタはNECが務める。 析、ユースケース、エコシステム、要求条件及びアーキテク Q2/11では、勧告草案Q.CDIV(NGN付加サービスプロ チャについて今後議論したいとの意見が出されたが、今会合 トコル仕様としての着信転送仕様)に対して、NECからの寄 にて具体的なWIは開始されていない。SG11では、NTT/ 書について審議を行った。CDIV参照文書として3GPP文書 NICT/NECからの提案により、FG-M2M成果文書D3.1: を参照することが合意され、本文は3GPP文書でappendix部 M2M service layer:APIs and protocols overviewをベース にTTC文書による具体的なインプリに関連した情報を追記し にM2MサービスレイヤAPI&プロトコル概要を検討する新規 ている。本提案では、本文に参照するドキュメントとして WIをQ1/11にて検討開始することが合意された。またSG11 「TS-3GA-24.604(Rel11)v11.8.0」をベースに入力し、 においてe-healthのAPI及びプロトコルを検討するために appendix部に「JJ-90.27(着信転送サービス(CDIV)に関 Q2/11にてToRの変更が議論され、M2M/IoTのアプリケー するNNI仕様) 」をベースに提案を実施。審議の結果、エデ ション例としてSmart Grid、Smart Cityなどと並んで、e- ィトリアル修正を加えて寄書内容は合意された。完成予定は healthを追記することが合意された。今後は11月JCA-IoTと 2015年4月。次回2014年11月中間会合で内容をFIXさせて完 IoT-GSIにてSG11、13、16の関係者が集まり議論する予定。 成させる予定。また、Q2/11においてもFG-M2M成果文書 の作業引き継ぎについて検討しe-health適応を検討するため Q 2 / 1 1 の課題テキストにe - h e a l t h を追加するN E C / ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) 49 会合報告 NTT/NICT提案は、Q2/11課題テキストのMotivationに 課題(Q4/11、Q6/11、Q2/13、Q14/13)と合同会合を実 M2M/IoTのApplication例としてSmart Grid、Smart Cityな 施 し 、 Q4/11か ら は Y.3300( Framework of SDN)、 どと並んで、e-Healthを追加することが合意された。 Y.FNsdn-fm、SDN functional requirements、SDN func- Q3/11ではバスク大(スペイン)からの、Kaleidoscope tional architectureの紹介、Q2/13からはY.S-NICE-reqts、 2014にて出展した内容をベースとして、ETS緊急通信システ Y.NGNelの紹介、Q5/11からはQ.SBAN、Q.Supplement- ムの国際相互接続概要を記す勧告草案の検討開始提案につ SDNの紹介、Q6/11からはQ.IPv6UIPの紹介が実施された。 いて議論を実施。本提案はITU-T Y.2205、Q.Supp 57、 各文書はY.3300の内容と整合が取るように調整する必要が ITU-D M.3350、Y.2705を参照したETS国際間相互接続につ あるとの認識で合意された。 いて検討することを提案している。まずはlimitation of ETS interoperabilityなどの課題を記載する技術レポートを作成す ることから開始することが提示され、新規WIとしてTR-ETS- 3.3 WP3/11:IoTとM2Mを含むサービスネットワーキング WP3/11にグループされている3課題(Q7/11、Q8/11、 IL“ETS interoperability limitations” (技術レポート:緊急 Q9/11)では、ネットワークアタッチメントなどを含むサー 通信システムの接続の制限)の検討開始が合意された。エデ ビスネットワーキングについて議論を行っている。特に ィタはバスク大であり、完成予定は2015年4月。 Q8/11ではプロトコル実装に関わる連携検討として主に途上 国向けのハンドブック文書作成を実施している。その中で、 3.2 WP2/11:Software-Defined Networking(SDN) とリソース制御 WP2/11にグループされている3課題(Q4/11、Q5/11、 Q8/11にて議論している模造品対策(TR-Counterfeiting) はウクライナ、ロシアからの提案で途上国からのサポートを 受けて継続議論をしており、今会合にて完成することが予定 Q6/11)ではSDN等について議論を実施しており、Q4/11で されていた。今会合では英国より模造品に関する技術レポー は、サプリメント文書Q.Supplement-SDN(サプリメント文 ト案に対する修正案が提示され、現在の技術レポートの記載 書:SDN信号概要)について、MIIT(中国)、China 内容では対応端末をICT機器全般としてはいるが、モバイル Unicom、Korea(Rep.of) 、SK Telecomより計8件の寄書 端末の記載に偏重しておりバランスを欠いていることから、 が入力され活発に議論が実施されている。各寄書は修正を施 英国寄書ではモバイル端末以外のICT機器についての記載も し文書へ反映させることが合意され、サプリメント文書 考慮して記載すべきだとの指摘からモバイル端末以外のICT Q.Supplement-SDNはTD532(GEN/11)にて更新されてい 端末対策情報を追記することが合意されたが、今会合中に る。本文書は次回11月会合で完成予定であったが、BBF等 全ての情報を提供するには時間が足りなかったため、本技術 からのリエゾン対応などを実施するため完成予定を2015年4 レポートの本会合での完成は見送り、今後e-meetingで議論 月に延期した。 を進め、11月の中間会合での完成を目指すこととなった。ま Q5/11では、勧告草案Q.SBNG(ブロードバンドネットワ た、関連機関からリエゾンを受信しており、WTOから文書 ークゲートウェイ(BNG)におけるフレキシブルネットワー のスコープはITUの所掌する通信機器に限るべきで一般的な クサービス信号要求条件)についてMIIT/China Unicom/ 電気機器に広げるべきではないと指摘を受けている。これら Huawei連名(中国) 、China Unicomからの計4件の寄書に の議論の動向から、課題8の課題テキストに模造品問題が記 ついて議論を実施。全て中国からの寄書入力である。これら 述されていないことについて、ラポータから模造品問題に対 の提案は内容の明確化を反映させた上で合意され、勧告草 応する課題改定案が提示され合意した。模造品問題ワーク 案Q.SBNGはTD549(GEN/11)にて更新された。完成予 ショップ(2014年11月17-18日:11月中間会合期間)を開 定は2014年11月。 催予定。 Q6/11では、勧告草案Q.IPv6UIP(IPv6での統合インテ リジェントプログラマブルインタフェースのシナリオと信号要 求条件)及び勧告草案Q.IPv6ProMM(マルチメディアサー 3.4 WP4/11:適応性&相互接続性試験(C&I) WP4/11にグループされている6課題(Q10/11、Q11/11、 ビスにおけるIPv6プロトコル手順)について議論され、勧告 Q12/11、Q13/11、Q14/11、Q15/11)では、試験仕様に 草案が更新されている。 ついて議論を行っている。Q10/11では勧告草案Q.IP-FAX- またSDN関連の議論については、SG13及びSG11の関連 50 ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) testing(IP-FAXサービス試験仕様)について、OKI/東芝テ ック/brother/NECの連名により提出した寄書について審議 体とのクラウド相互接続に関係するポイントの明確化及び試 を実施。HATSのNGN FAX試験要綱をベースに既存のVoIP 験エリア(target area)の具体化の提案について議論を実施 やマルチメディアサービス試験仕様(Q.3948、Q.3949)の記 し、本文書は試験勧告Q.39xxシリーズのSupplement文書 載内容に沿ってベースラインドキュメントの入力提案を実施 Q.Suppl.65として同意(Agreement)された。本文書の結 し、タイトルとスコープをT.38 FAX端末に絞ることで提案内 果をベースに、Q.FW-Cloud-iop(フレームワーク文書)の検 容は合意された。完成予定は2015年4月会合。 討開始が可能となる。Q.Suppl.65を作成する過程で、ETSI 勧告草案Q.TR-rec-pro(試験ラボ認証手順)についてロ ではTC CLOUDにて試験仕様を作成しており、相互接続試 シアがSG11にて継続議論することを提案している。ITU-T勧 験(Plagfest)を実施していることが確認できたことから、 告の適応性試験を実施する試験ラボを認証する手順を検討 他SDOとの連携強化を目的に、ETSI TC INT及びETSI TC する文書Q.TL-rec-proはQ11/11のWIとして管理されている CLOUDへ、ETSIの活動紹介を要求するリエゾンを送付し次 が、実際の検討はITU-Tと試験ラボとの共同チームCorre- 回11月中間会合若しくは来年4月会合にて連携活動が実施 spondence Group(CG)にて月1回e-meetingにて開催され されることが期待される。 ており、その会合結果が報告されている。Q.TL-rec-proにて 記載された手順に該当する団体としてILACとIECEEを例示 しITU-T勧告の認証試験を実施できるラボと紹介された。本 4.次会合の予定 文書Q.TL-rec-proは今年中に完成する予定であったが、まだ 今後、以下の会合が予定されている。 検討状況が不十分であることから来年2015年中の完成へと ラポータ会合 2014年11月10日∼21日Geneva、 Switzerland 時期が変更された。 サプリメント文書Q.Supp-CCI(クラウド相互接続活動調 SG11会合 査レポート)についてNEC及びChina Telecomからの寄書5 2015年4月27日∼5月1日Geneva、 Switzerland 件について議論を実施し、クラウドを検討しているSDOや団 表1.合意文書一覧 勧告番号 種別 最終文書 番号 勧告名 TD 529 Rev.1 (GEN/11) 関連課題 番号 Q.3615 (Q.ProGeoSMS) 新規 Protocol for GeoSMS Q.3232 (Q.napc.Nc) Signalling Requirements and Protocol at the Nc interface between the transport TD 500 新規 location management physical entity and the transport authentication and (GEN/11) authorization physical entity Q7/11 Q2/11 Q.3931.3 新規 Performance benchmark for the PSTN/ISDN emulation subsystem of an IP mul- TD 505 timedia system - Part 3: Traffic Sets and Traffic Profiles (GEN/11) Q10/11 Q.3946.1 新規 Conformance test specification for the session initiation protocol - Part 1: Protocol TD 514 Implementation Conformance Statement proforma (GEN/11) Q11/11 Q.3946.3 ETSI TS 102 027-3 Conformance Test Specification for SIP (IETF RFC 3261); 新規 Part 3: Abstract Test Suite (ATS) and partial Protocol Implementation eXtra Information for Testing (PIXIT) proforma TD 515 (GEN/11) Q11/11 Q.monitor_d 新規 Set of parameters of devices for monitoring TD 528 (GEN/11) Q13/11 ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) 51 会合報告 ITU-T SG13会合報告 日本電信電話株式会社 ネットワーク基盤技術研究所 主任研究員 SG13副議長 WP1/13共同議長 ご とう よしのり 後藤 良則 1.はじめに ITU-T SG13会合が2014年7月7日から18日にジュネーブの ITU本部で開催された。勧告案10件を合意、3件をTAPによ イムリーな勧告化作業が進められる一方、必ずしも市場ニー ズが明らかでなく作成されたもののほとんど活用されていな い勧告が多いとの指摘もあった。 る決定、補足文書1件を承認した。個別の勧告案に関する議 今回の会合でも通常の会合どおり多数の新規勧告案の作 論と共にSG13の活動見直しに関するアドホック、IoT、Big 業の開始が提案された。しかし、Common Interest Session Data/SDN/仮想化に関するcommon interest sessionも開 の議論を受けて、新規勧告案の扱いについて最終日のプレナ 催され、SG13の方向性に関する様々な議論が行われた。こ リで議論された。勧告案が乱立気味であり、勧告案の作業 れらの動向も含め本会合での議論について報告したい。 開始のハードルを引き上げ、件数を絞り込むことで注目度の 高い慣行を作りたいというのが議長の意向である。 確かに件数を絞り込むことで個々の勧告の注目度を上げ 2.全体的事項について 2.1 Common Interest Sessionについて るというのは興味深い仮説である。しかしながら、件数を絞 り込むことと絞り込まれた勧告案が注目を浴びることは別の 本会合では複数の課題にまたがるテーマの方向性を議論す 問題である。産業界にニーズがなければどんなに絞り込んだ るための新しい試みとしてComonn Interest Sessionが開催 ところで勧告は注目を浴びることはない。多種多様な勧告を された。具体的なテーマはIoT、Big Data、SDN/仮想化で 作成することで組織としての求心力が高まり、やがて有力な あった。これまでも複数の課題が関連するテーマについては 標準を育てることもあるだろう。また、世間からの注目度が 合同セッションが開催され、関係するラポータを中心に作業 低くても産業界で使われている地味ながら重要な勧告がある の調整が行われることはあったが、従来の合同セッションと のも事実であり、注目度が低いことを理由に産業界にニーズ 異なりSG/WP議長が取り仕切るという意味ではトップダウ のある作業を中断することが標準化機関として責任ある態度 ン的な意味合いの強いセッションであった。IoT、Big Data と言えるかどうか疑問もあるだろう。議長の所見は一定の理 についてはSG13議長のChaeSub Lee氏、SDN/仮想化につ 解ができるものの、やや拙速に結論を求めすぎるところがあ いてはWP3/13共同議長のHyoung Jun Kim氏とWP1/13共 る。筆者は副議長として議長の拙速な動きを別の角度から補 同議長である筆者が議事進行を務めた。 う必要があると考え、個々の勧告案は柔軟性を持って判断 今回Common Interest Sessionで取り上げたテーマに共通 すべき旨発言している。 するポイントとしてコンセプトが先行し、標準化すべき技術 新規勧告案の作業開始の基準や今会合で提案された新規 的なポイントに関して十分なコンセンサスが確立していない 勧告案については継続して検討することになっているが、今 という点がある。しかしながら標準化活動も競争であり、他 後議論によっては作業開始のハードルが高くなることも予想 の標準化団体に先駆けて検討テーマを立ち上げることも標準 される。これからは日本が提案する勧告案についてはその必 化グループの運営上重要である。SG13の活動をリードする 要性をしっかり説明できるように入念な準備が必要となる。 立場にある筆者としてはコンセンサス確立と標準化活動にお 国内での議論を充実させていきたい。 ける競争の両面を見ながら、SG13の一層の活性化に貢献し ていきたい。 2.3 作業方法見直しアドホックについて 今会合は4年間の研究会期の中間に当たり、これまでの作 2.2 新規勧告案について 業方法の見直しと改善点を考えるのにいい機会と言える。こ 新規の勧告案の作業開始はタイトルとスコープを合意すれ のため今会合から作業方法の見直しの議論が始まった。今会 ば1メンバー以上の支持で作業開始が可能である。比較的容 合では課題の整理に多くの時間が割かれ、以下の問題点が 易に開始できることから多数の勧告案が作成され効率的でタ リスト化された。 52 ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) 表1.WP構成と課題 WP WP1:NGN-e and IMT (議長:後藤良 則(日本) 、 Heyuan XU (中国) ) 関連課題 ラポータ Q1:Service scenarios, deployment models and migration issues based on convergence services Heechang CHUNG(韓国) Q2:Requirements for NGN evolution(NGN-e)and its capabilities including support of IoT and use of software-defined networking Marco Carugi(China Unicom) Xiao Su(China Telecom、アソシエイト) Q3:Functional architecture for NGN evolution(NGN-e)including support of IoT and use of software-defined networking Yuan ZHANG(China Telecom) Q4:Identification of evolving IMT-2000 systems and beyond Brice Murara(Rwanda) Q5:Applying IMS, IMT and other new technologies in developing country mobile telecom networks Simon BUGABA(Uganda) Q6:Requirements and mechanisms for network QoS enablement (including support for software-defined networking) Taesang CHOI(ETRI) Q7:Deep packet inspection in support of service/application awareGuosheng Zhu(中国) ness in evolving networks WP2:Cloud Computing and Common Capabilities (C4) (議長:Huilan LU(米国) 、 Jamil CHAWKI (フランス) ) WP3:SDN and Networks of Future (議長:Leo LEHMANN (スイス) 、 Hyoung Jun KIM(韓国) ) Q8:Security and identity management in evolving managed networks(including software-defined networking) Igor FAYNBERG(米国) He Xiao(China Telecom、アソシエイト) Q9:Mobility management(including support for software-defined networking) Seng Kyoun JO(ETRI) Q10:Coordination and management for multiple access technologies(Multi-connection) Yachen WANG(China Mobile) Oscar LOPEZ-TORRES(China Mobile) Q17:Cloud computing ecosystem, general requirements, and capabilities Kangchan LEE(ETRI) Youngshun Cai(China Telecom、アソシエイト) Q18:Cloud functional architecture, infrastructure and networking Dong WANG (ZTE) Olivier LE GRAND(Orange、アソシエイト) Q19:End-to-end Cloud computing service and resource management Mark Jeffrey(Microsoft、米国) Ying Cheng(China Unicom、アソシエイト) Q11:Evolution of user-centric networking, services, and interworking with networks of the future including Software-Defined Networking Gyu Myoung LEE(韓国) Q12:Distributed services networking Jin PENG(China Mobile) Q13:Requirements, mechanisms and frameworks for packet data network evolution Jiguang CAO(中国) Q14:Software Defined-Networking and Service-aware networking of future networks 江川尚志(NEC) Q15:Data-aware networking in future networks Ved P. KAFLE(日立) Alojz HUDOBIVNIK(スロベニア) Q16:Environmental and socio-economic sustainability in future net- Gyu Myoung LEE(韓国) works and early realization of FN Maurice Ghazal(レバノン、アソシエイト) ・複数の課題での作業の重複 SG13の課題を分析したものと言うこともできるだろう。今回 ・幾つかの課題での参加者の低迷 の作業方法見直しはWPや課題といった組織構成見直しを意 ・作成した勧告の低い認識度 図したものではないということになっているが、これらの論点 ・要求条件、アーキテクチャより先の作業の必要性 の検討を進めるうち組織構成見直しの議論に発展するかもし ・革新的技術への挑戦 れない。引き続き動向に注意するとともに日本からも適宜見 ・他標準化団体と比べた専門性 直し策を提言することでSG13の活動活性化に貢献していき ・2週間に及ぶ長期の会合開催 たい。 Common Interest Sessionや新規勧告案に関する議論と も関連するが、現在のSG13は参加者数、寄書数、勧告作成 数といった量的な側面では高いアクティビティを保っている のに対して、近年影響力のある勧告が作成されていないなど 質的な側面で課題を抱えている。会合で指摘された点は 3.技術的な議論について 3.1 将来網とSDN SDN/仮想化については既述したようにCommon Interest ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) 53 会合報告 Sessionが開催され、これまでの議論の方向性の確認が行わ 勧告案であるが、要求条件も確立していない中で作成された れた。SG13におけるSDNの検討は課題14がSDNの基本的事 ものであるので、実際にITU-TにおけるSDNの一連の勧告と 項を検討し、他の課題はそれぞれの立場で必要に応じて して含めるのが適当かどうか議論もあると思う。いずれ見直 SDNの適用方法を検討するという方向で合意されている。 しが必要になるのではないだろうか。 今回もそれぞれの課題からSDN関係の勧告案の状況を紹介 網仮想化についてはY.FNvirtarchの議論がNTT、日立の し、これまでの方向性を確認した。一方、仮想化については 寄書により進展した。また、これまで休眠状態であった これまで合同セッションなどで十分に議論されてこなかった Y.FNammnsa(自律的網制御/管理に関する勧告案)は せいか、 “そもそも仮想化とは何か?”という点が議論にな Y.AMCと名称を改めて作業を再開した。 った。仮想化とはもともと計算機の分野で発展した概念であ る。これを通信ネットワークに適用しようというのが将来網 の仮想化であるが、ネットワークの機能を支えるサーバ類の 3.2 クラウドコンピューティング クラウドコンピューティングはこれまでJTC1とのCT 仮想化と伝送路の仮想化では適用する技術は大きく異なる (Collaborative Team)でアーキテクチャ(勧告案Y.3502) だろう。そういう意味では仮想化そのものを議論することに と用語の検討(勧告案Y.3500)の検討を進めてきた。これ 特別の意味があるわけではなく、仮想化すべき対象を明確に らの勧告案が成熟したことから今回会合で合意した。これら して議論すべきとの指摘があった。具体的な方向性の整理は の勧告案はJTC1との共通テキストであるので並行してJTC1 今後の課題であるが、まずは仮想化そのものは具体的な標準 側の承認手続も進められている。また、これら勧告案の作業 化のテーマというよりコンセプトであるという点を合意した が終了したことを受けてCTも活動を終了した。 ことはCommon Interest Sessionとして一つの成果と言える だろう。 前回会合でY.3300(SDNの概要に関する勧告)を合意し、 SG13が独自に進める勧告案に関してはY.3512(NaaSの要 求条件に関する勧告案) 、Y.3513(IaaSに関する勧告案)を 合意した。また、Y.CCNaaS-arch(NaaSのアーキテクチャ AAPで承認されたことを受けて、本会合でその継続となる要 に関する勧告案) 、Y.BigData-reqts(Big Dataに関するクラ 求条件、アーキテクチャの作業をY.SDN-req、Y.SDN-arch ウドの要求条件に関する勧告案)などの作業が進捗した。 として開始した。これらの文書はまだ目次のみのスケルトン 状態である。上記したように本会合では新規勧告案の作業 3.3 HEMS 開始について議論され、SDN関係のこれらの勧告案について 日本の関係者が推進するY.HEMS-arch(HEMSのアーキ も取り上げられ議論された。SDNについてはONF(Open テクチャに関する勧告案)は富士通、JAIST、NTTの連名寄 Networking Fundation)を中心に活発な活動がある。また、 書6件により作業が進捗した。韓国勢を中心にコメントが多 昨 年 のTSAGで紹 介 されたDPN(Deep Programmable く出されたもののおおむね順調に進捗している。HEMSは近 Network)もSDNの将来の在り方として可能性があるだろ 年注目されている分野であり、Y.HEMS-archは日本が世界 う。SG13としてONFで議論されているSDNやDPNをどのよ に先駆けて勧告化を推進しているテーマである。これまでの うに捉えて標準化を進めるのか、いろいろ考えなければなら 電力関係の勧告は散見されるが、多くが宅内系に閉じたシス ないところだろう。国内でも少し議論してみたいテーマであ テムであり、Y.HEMS-archはクラウド側と連携するシステム る。 構成になっていることに特徴がある(図1参照) 。クラウド上 今回Y.3320(SDNに関する形式手法に関する勧告案)を のプラットフォームを介してアプリケーションをサポートする 合意した。本勧告案に関してETRIから特許宣言があった。 構成もoneM2Mなど他の標準化においても見られる構成で 近年ETRIから特許宣言が行われるケースが散見される。こ れまでは寄書件数といった量的側面で存在感を出してきた ETRIであるが、特許を埋め込みなど活動の質的側面を強化 アプリケーション している可能性がある。なお、上記したようにSDNに関して は全体概要のY.3300を承認したばかりであり、要求条件、ア ーキテクチャの勧告案(Y.SDN-reqts、Y.SDN-arch)は作 業が開始されたばかりである。Y.3320はSDNをテーマにした 54 ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) アプリケーション アプリケーション 管理 PF HGW デバイス 図1.HEMSの構成 デバイス デバイス 具体的にHEMSに適用したケースとして注目に値する勧告案 のデバイスからのトラヒックの処理など)を個別のネットワ と言えるだろう。本勧告案は2014年11月のWP3/13会合で ーク技術ごとに論じるのではなく、ネットワーク技術に依存 合意が予定されている。 しない一般的な問題として論じることを意図したものである。 IoTは多様なユースケースがあり、それぞれに対応して無線、 3.4 IoT IoTについてはCommon Interest Sessionが開催された。 固定の様々なネットワークインフラが用いられる。IoTは多 数のデバイスからのトラヒックという意味ではIoTの課題はネ 議長からStudy Groupの目的は標準を作成することであっ ットワーク技術に関わりなく共通であり、汎用的な要件の整 て、研究(study)をすべきでないとの意見が示された。ま 理は産業界の視点では重要である。Common Interest た、具体的な懸念事項として中国が今回提案したwearable Sessionの影響で議論そのものは若干の混乱が見られたが、 deviceに関する検討は韓国が今回提案したconstrained 産業界に貢献するために標準化の意義を粘り強く主張して nodeと同じであるという点を取り上げた。 いきたい。 確かにStudy Groupの活動は最終的に標準策定に至るべ また、この他にY.IoT-semantic-requirements-framework きであって、学術的な研究や調査のみに終始すべきではない。 (IoTにおけるセマンティック技術の利用に関する勧告案) 、 レポート作成がStudy Groupの目的でないという議長の指摘 Y.IoT-BigData-reqts(IoTとBig Dataの連携に関する勧告 にはもっともなところもある。しかしながら様々な背景(国 案)など様々な勧告案の作業が進捗した。 情など)を抱える参加者がグローバル標準化のために集まっ ているITU-Tの現状を考えると、具体的な標準化作業の前段 3.5 その他 階で課題意識を共有するためにレポート類を作成することは 途 上 国 におけるIMT/IMSを扱 う課 題 5でSupp 66 to 有益であり、これによって特定された課題を解決するために Q.1740seriesを完成させ、プレナリで承認した。この文書は 参加者の努力を集中することができる。参加者の専門性は標 途上国におけるIMT、IMSの展開状況と課題をまとめた補足 準化活動の命とも言え、専門家集団を育て上げ標準化のポ 文書であり、途上国へのアンケート調査を基にまとめられて イントを特定するプロセスとして調査、研究を軽視すべきで いる。近年アフリカを中心に途上国の活動が活発化している はないと考える。 が、固定網と移動網がバランスよく利用されている先進国と Wearable deviceとconstrain nodeの比較は興味深い論点 異なり、途上国においては移動体通信の比重が非常に大き である。時間不足でcommon interest sessionとしては満足 くなっている。一方で技術力、資本力で問題も抱えており、 な結論は得られなかったが、IoTの“Things”には家電、自 このような途上国の抱える問題の一端を明らかにする文書で 動車からRFIDタグまで様々な能力のデバイスが含まれる。 ある。途上国向けにビジネスを検討している方には有益な資 様々なデバイスの能力別に分類して標準化を進めるというの 料と思われる。また、途上国にとって将来網やクラウドも大 もIoT検討の効率化という意味では有益だろう。 きな関心事になりつつある。これに対応してIMT、IMS以外 Common Interest SessionのテーマにはBig Dataもあり、 のテーマも議論できるよう課題5のテキストを改定した。 IoTとの関係も含めて議論された。Big Dataの技術的なポイ セキュリティを扱う課題8についてその存続が議論されて ントは主に情報処理系であり、IoTよりもクラウドとの関係 いる。セキュリティはICTシステムを考える上で重要な要素 が深いというのが議長の意見であった。一方でSG13の専門 であるが、テーマが分散傾向であることを考えると特定の課 性の観点で情報処理系に特化した議論を進めることが適当 題で集中的に議論するよりも各テーマごとにセキュリティを かどうか疑問も呈された。 検討するのも一つのアイデアだろう。今会合では結論は出て 個別の課題としては課題2、3を中心に検討された。産業 界の期待が大きい反面コンセプトが先行し、具体的な標準化 いないが、引き続き課題8の在り方を議論していくことにな る。 テーマの特定に大きな労力を割いているテーマであることは Common Interest Sessionで紹介したとおりである。多数の 勧告案があるが、今会合ではNTTからIoTのネットワーク要 件に関する勧告案(Y.IoT-network-reqts)の作業開始を提 案した。これはIoTの展開に伴うネットワークの課題(大量 4.勧告等の承認 今会合で、表2に示す勧告案10件を合意、3件をTAPによ る決定、補足文書1件を承認した。 ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) 55 会合報告 て開催される。 5.今後の会合予定 2014年11月10-21日にSG13の大半の課題が参加する合同 ラポータ会合がジュネーブで開催され、最終日の11月21日に 勧告案合意などのためのWP会合が開催される。また、次回 謝辞 本報告をまとめるに当たり、御協力いただいたSG13会合 の日本代表団の皆様に感謝します。 のSG13会合は、ジュネーブで2015年4月20日-5月1日にかけ 表2.2014年7月SG13会合で合意・承認・凍結・決定された文書 新規 / 改訂 勧告番号 文書 番号 改訂 Y.1271rev TD-119/PLEN 新規 Y.2302 (Y.NICE-arch) 新規 承認 手続 課題 Framework(s)on network requirements and capabilities to support emergency telecommunications over evolving circuitswitched and packet-switched networks 決定 Q3 TD-126/PLEN Functional Architecture for Network Intelligence Capability Enhancement(NICE) 合意 Q3 Supp66 to Q.1740 series TD-127/PLEN Supplement on scenarios and requirements in terms of services 同意 Q5 (補足文書) and deployments for IMT and IMS in developing countries 新規 Y.2771 TD-115R1/PLEN 新規 Y.2725 新規 Y.2083 (Y.dsnmmtel) 新規 タイトル Framework for Deep Packet Inspection 決定 Q7 TD-110/PLEN Support of OpenID in Next Generation Networks 決定 Q8 TD-138/PLEN Multimedia telephony over Distributed Service Networking 合意 Q12 Y.2616 (Y.PTDN-interworking) TD-132/PLEN Interworking mechanisms in public packet telecom data network(PTDN) 合意 Q13 新規 Y.3320 (Y.FNsdn-fm) TD-131/PLEN Requirements for applying formal methods to software-defined networking 合意 Q14 改訂 Y.3022rev1 (注) C501R1 Revision to Y.3022:Measuring energy in networks 合意 Q16 新規 Y.3013 (Y.FNsocioeconomic) TD-123/PLEN Socio-economic Assessment of Future Networks by Tussle Analysis 合意 Q16 新規 Y.3500 (Y.ccdef、注) TD-107/PLEN Cloud computing - Overview and Vocabulary 合意 Q17 新規 Y.3502 (Y.ccra、注) TD-108/PLEN Cloud computing - Reference architecture 合意 Q18 新規 Y.3512 (Y.CCNaaS) TD-128/PLEN Cloud computing - Functional requirements of Network as a Service 合意 Q18 新規 Y.3513 (Y.ccIaaS) TD-125/PLEN Cloud computing - Functional requirements of Infrastructure as a Service 合意 Q18 56 ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) APT第7回太平洋地域政策・規制会合の結果 総務省 情報通信国際戦略局 国際政策課 1.はじめに アジア・太平洋電気通信共同体(Asia Pacific Telecommunity:APT)は、主にアジア・太平洋地域における電気 通信及び情報基盤の均衡した発展を目的として1979年に発 足した国際機関(事務局:バンコク)であり、研修やセミナ ーを通じた人材育成、標準化や無線通信等の地域的政策調 整等を行っている。現在の加盟国数は加盟国38、準加盟 国・地域は4であり(図1参照) 、賛助加盟員(民間企業等) は2014年9月時点で132となっている。 事務局は、局長の山田俊之氏(日本) 、次長は空席、そ の他職員22名で構成される。 図2.第7回太平洋地域政策・規制会合の模様 (2)ワークショップの主な結果 各セッションの概要は、以下のとおり。 ・セッション1:「島嶼国における政策・規制動向」 山田APT事務局長がセッション議長を務め、3者が以下 のとおり、プレゼンテーション等を行った。 (ア)山田APT事務局長 アジェンダ及びプログラムの採択を行い、昨年の管理 委員会において本会合のワーキングメソッドが作成され た旨言及があった。 (イ)ヤン・ITU電気通信標準化部門担当官 島嶼国におけるITUの活動概況について 図1.APT加盟国エリア (ウ)近藤総務省情報通信国際戦略局国際協力課長 (当時) モバイルブロードバンドの更なる発展に向けた我が国 2.第7回太平洋地域政策・規制会合 の政策及び取組について (1)概要 太平洋地域政策・規制会合は、各国の政策立案者及び規 なお、我が国からのプレゼンテーションに対する質問とし 制機関担当者間において、政策・規制に関するベストプラク て、衛星通信用Cバンドの保護について日本の支援が得られ ティスや知見等の意見交換、情報共有等を行うことを目的 るのかと質問が出るなど、島嶼国の当該周波数帯に関する関 として2009年より毎年開催されている会合である。2014年次 心は非常に高いものと伺われた。 の第7回会合は、7月8日から10日までの3日間、フィジー (ナンディ)において開催され、APT加盟国14か国の情報通 信機関職員、賛助加盟員等約60名が参加した。 ・セッション2:「島嶼国における電気通信ステータスの 再考察及び活動に関する最新動向」 プラサド・フィジー通信省通信課長がセッション議長を ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) 57 会合報告 務め、5者が以下のとおり、プレゼンテーションを行った。 (ア)ヴェイカティ・フィジー通信省技術官 フィジーにおけるブロードバンドの現状について (ウ)チュン・OVUM指導課長 オンラインサービス事業者の発展及びそれに関する規 制事項について (イ)ナヴィラ・フィジー電気通信庁担当官 フィジーにおける国家ナンバリングプランについて (ウ)プラサド・フィジー通信省上級エンジニア フィジー及び島嶼国におけるサイバーセキュリティの 法制度・政策について (エ)ボックス・バヌアツ電気通信・無線通信規制体監 ・セッション5:「島嶼国における人材開発」 サリイ・パラオ国家通信社規制事項スーパーバイザがセ ッション議長を務め、2者が以下のとおり、プレゼンテー ションを行った。 (ア)イフラアン・フィジー通商委員会担当官 ICTセクターにおける規制及び消費者保護について 視官 バヌアツにおけるインターネット普及率等の達成目標 等を定めたユニバーサルアクセスポリシーについて (イ)ルイガン・PIRRC技術アドバイザ ICT産業における人材育成プロセスについて (オ)トゥイハラマカ・トンガ情報通信省副CEO EBC-J3プロジェクト「ルーラルエリアにおけるICT開 ・セッション6:「インターナショナル・コネクティビティ 発プログラム」の活用による災害管理能力の強化につ いて の促進」 フィリッポ・マーシャル諸島運輸省事務次官がセッショ ン議長を務め、3者が以下のとおり、プレゼンテーション ・セッション3:「島嶼国におけるICT投資の促進」 フォン・PITA会長がセッション議長を務め、3者が以下 のとおり、プレゼンテーションを行った。 (ア)ウェッブ・世界銀行規制専門官 島嶼国におけるICTセクターの発展、展望及び課題に ついて を行った。 (ア)サンフォード・MSコンサルティングタヒチテレコ ムエキスパート 島嶼国における海底ケーブル及び衛星通信の接続状 況並びにネットワーク計画において考慮されるべき事項 について (イ)バタチャリャ・アジア開発銀行シニアICTインフラ 専門官 (イ)ボロウリ・トンガケーブル社CEO 小規模市場における海底ケーブル事業について 貧困削減に資するICTセクターへの融資プログラム等 について (ウ)ムリス・O3bネットワークスセールスマネージャ 島嶼国におけるO3b社のネットワーク接続事業の現状 (ウ)ハヤット・テレノールパキスタン主席企業担当官 について ICTの規制に関してアジア地域が島嶼国から学ぶべき 事項について ・セッション7:「規制機関によるクローズドセッション」 本会合に参加の各規制機関により、地上デジタル放送 ・セッション4:「インターネットに関する政策・規制事 項」 への移行、ローミング、無線周波数管理等の議題につい てのディスカッションが行われた。 プナハ・パプアニューギニア国家情報通信技術庁CEO がセッション議長を務め、3者が以下のとおり、プレゼン テーションを行った。 (ア)ヴォセア・ICANN地域次長 インターネットガバナンス及びインターネット発展に 関する政策について (イ)グズマン・ISOC地域プログラムコーディネータ オンライン上のサービスが拡大し続ける現状における インターネットアクセスモデルについて 58 ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) ・セッション8:「電気通信技術について」 レグヴァカ・ソロモン諸島電気通信委員会規制資源課 長がセッション議長を務め、3者が以下のとおり、プレゼ ンテーションを行った。 (ア)ワラス・テルストラ周波数戦略マネージャ 公共LTEネットワークを用いた公衆保護・減災への 取組について (イ)チュー・デジセルPNG計画マネージャ 経済成長に向けたICTインフラ及び人材育成への投資 (ア)政策、規制及び立法に関するガイドライン について (ウ)チュン・OVUM指導課長 IoT/M2M市場の展望及びそれらの拡大がICT分野に 加盟国におけるブロードバンドネットワーク政策立案 の促進及び支援等 (イ)人材育成 与える影響について オンライン研修等の分野における人材育成支援活動 の実施 ・セッション9:「無線周波数について」 (ウ)CERT活動への支援 サブ地域単位でのCERT設立の支援等 ボックス・バヌアツ電気通信・無線通信規制体監視官 がセッション議長を務め、3者が以下のとおり、プレゼン (エ)支援と協力 地域における無線周波数マネジメントの支援等 テーションを行った。 (ア)ワラス・テルストラ周波数戦略マネージャ IMTブロードバンドの実現に向けた周波数確保につい ・議長及び副議長の選出 本会合における2016年までの議長及び副議長について、 て (イ)ホートン・パプアニューギニア国家情報通信技術 庁エキスパートアドバイザ 島嶼国における衛星通信用Cバンドに関する研究及び プナハ・パプアニューギニア国家情報通信技術庁CEOが 議長に、プラサド・フィジー通信省通信課長が副議長に 選出された。 戦略について (ウ)ホートン・パプアニューギニア国家情報通信技術 庁エキスパートアドバイザ IMTと固定衛星業務の周波数共用に関する研究につ いて(WRC-15議題1.1関連) ・アウトプット文書の検討及び採択 衛星通信用Cバンドの扱いに関するリエゾン文書 (WRC-15議題1.1関連)が採択され、APG15-4会合に入力 されることとなった。 (エ)ヨコペ・パプアニューギニア国家情報通信技術庁 資源計画マネージャ 衛星通信用Cバンドの保護に向けた活動状況について ・その他 島嶼国からの要望を受け、近藤総務省情報通信国際戦 略局国際協力課長(当時)が、島嶼国に対する研修・ワ ・セッション10:「APT大臣級会合に向けた検討事項」 デイビス・APT事務局テレコムエキスパートがモデレー ークショップを来年度も開催することを検討したい旨表明 した。 タを務め、各パネリストがAPT大臣級会合に向けた規制・ 政策分野における新たなイニシアティブに関する議論を行 3.おわりに った。 さらに、デイビス・APT事務局テレコムエキスパートが 本年はAPT総会が開催され、事務局長及び事務局次長の APT大臣級会合の背景、目的、テーマ等についてプレゼン 選挙が行われるほか、今後3か年の財政・活動方針が審議、 テーションを行い、同会合に向けたコレスポンデンス会合 決定されます。引き続き、各種APT会合・活動への関係各 に、以下4項目のイニシアティブに係る文書を入力するこ 位の積極的な御参加及び御協力をよろしくお願い申し上げ とについて合意した。 ます。 ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) 59 海外だより∼大使館より∼ モスクワだより まし こ 在ロシア日本国大使館 一等書記官 たかのり 増子 喬紀 1.はじめに 皆様にとってのロシアのイメージはどんなものでしょうか。 お隣の国であるにも関わらず、日本国内ではなかなかロシア のことについて身近な情報がないこともあり、昨今のウクラ そして、バレエ、オペラ、コンサート、サーカス等、屋内系 のハイレベルな芸術が気軽に楽しめるのも当地の特徴です。 そんなあまり日本で知られていないモスクワの現状につい てICTネタを中心に御紹介させていただきます。 イナ問題の報道も相まって、残念ながら「おそロシア」的な イメージが広まっているのではないかと思います。 2.ロシアの携帯電話事情 一方で、ロシア人は(特に高年齢層において)日本に対し て良いイメージを持っていることが多いです。私も赴任当初 は日本人の対露イメージとロシア人の対日イメージのギャッ (1)契約方式 ロシアでは、ビッグ3と呼ばれるMTS、Megafon、Beeline プに驚かされました。ここロシアでは、日本製品に対する信 の3社を中心として携帯電話が普及しています。ここロシア 頼も高く、 「日本ブランド」神話がいまだ通用する数少ない ではポストペイド式の契約も可能ですが、プリペイド式の携 国の一つです。 帯電話契約が主流であり、携帯電話キャリアショップはもち モスクワに住んでいる実感としては、経済制裁やそれに伴 ろん、家電量販店のほか、駅や空港、路上等でSIMカードが うルーブル安の進行、また、経済制裁への対抗措置としての 販売されており、パスポートさえ提示すれば気軽に購入でき 米国・EU等からの農作物輸入の制限による食料品を中心と ます。また、モスクワ市中心部のほとんどのエリアでLTEに する物価の上昇等は感じられますが、治安面の悪化等はそれ よる高速通信が利用できます。 ほど感じられません。ちなみに、ここモスクワでは、地域に プリペイドのチャージは、街中にあるキオスク端末に携帯 もよりますが、夜12時頃でも女性が一人歩きしているのをよ 電話番号を入力し、お金を投入するだけでOKなので簡単で く見かけるなど、治安は悪くはないように思えます。もちろ す。もちろん銀行送金やWeb経由でクレジットカードを使用 ん、強盗やひったくりといった犯罪もないわけではありませ してチャージすることもできます。 んので油断は禁物ですが・・・。 これまで、いわゆる「西側」とは少し違った発展をしてき (2)携帯電話料金 たこともあって、モスクワでは日本との違いもいろいろなと 無料通話・通信が含まれるパック料金等の設定もありま ころで感じます。街中を歩いていて特に目につくのは、両替 すが、基本料金無料のプランも多くあります。基本料金無料 屋さんや花屋さん、薬屋さんの多さです。午前3時に急に花 のプランであっても、1分当たり1.8ルーブル(約5円)程度の が必要になるというようなシチュエーションはあまり思い浮 通話料であり安いです。そのせいもあってか、街中ではロシ かびませんが、これらの花屋さんやスーパーマーケットは24 アの人が通話をしているのをよく見かけます(運転中も!) 。 時間営業のお店が多いのも驚かされます。一方で、いわゆる 一説によると、ロシアでヨーロッパ各国よりもオートマチッ コンビニはありません。また、我が国の文化と言っても過言 ク車が普及しているのは、運転中でも電話するためだと ではない自動販売機は、日本の自動販売機メーカーが進出 か・・・。 していることもあり、徐々に増えてきています。 さらに、モスクワ市内では東京都内よりも多いのではない かと思うくらい高級車がたくさん走っています。貧富の差 インターネット定額プランも月3GB利用で350ルーブル (約1000円)程度と格安です。気をつけなければならないの は、SIMカードを購入した都市以外の地域に行くときには、 (格差)が大きいことも一因ですが、ソ連崩壊時に住んでい 「ローミング」扱いになり、通話料金が高くなることがあるこ たアパートをそのまま無償で取得できたということから、昔 とです。インターネット定額プランも安いものは地域限定で からモスクワに住んでいる人は家賃負担がないため可処分所 定額になっていることもあるので、利用するときにはよく確 得の割合が大きいということも影響しているかもしれません。 認が必要です。 60 ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) (3)端末販売 一部のUSBモデム、ルーターを除けば、通話可能な端末や タブレットに関してはほとんどSIMフリー端末が売られてい ます。最新のiPhone6もSIMフリーモデルが日本から1週間遅 4.モスクワの電波塔 (1)オスタンキノTV塔 1967年に完成した540mのTV塔。展望台の高さは、東京 れで販売が開始されました。一括払いでの購入の他、10回分 タワーの最上部よりも高い337mで、夏の間は開放型(!) 割払いなどを受け付けているところも多く見受けられます。 展望台で更なるドキドキ感が楽しめます。ガイドによると、 地中に埋まっている部分はわずか数m(!)しかないらしい。 (4)位置情報を活用した渋滞情報サービス 当地では、Yandex社の地図アプリを利用するユーザーの 位置情報を利用して、詳細なリアルタイム渋滞情報が提供 されています。実際のユーザーの移動情報に基づいているの で、精度も高く、信頼されています。 また、多くのタクシー会社がandroidタブレットベースのタ クシー配車・管理システムを構築しており、タブレットが会 社との連絡(とGPSによる位置確認)手段、ナビゲーショ ン、料金メーター(!)を兼ねています。モスクワの渋滞は ひどいので渋滞情報が極めて重要であること、また通信料金 が安いこともあって、こういった機器が相当程度普及してい るという印象です。余談ですが、ドライブレコーダーの普及 率も高いように見受けられます。 (5)決済サービス 面白いのは、SMSによる認証を利用して「決済」もできる ことです。ネットで演劇のチケット等を購入する際の支払い 方法としても利用できるほか、昨年からパーキングメーター 写真1.オスタンキノTV塔 1960年代に540mものタワーを造ることができたソ連 の技術力に驚かされます。 制が導入されたモスクワ市内において路上駐車を行う際に も、SMSを決められたフォーマットで送信するだけで自動決 済が可能になっています。 3.モスクワの固定通信網事情 最近、モスクワでも加入者向けの光ファイバー接続サービ スが始まりました。例えば888ルーブル/月(約2500円/月) のプランでは、200Mbpsのインターネット接続とHD品質の IPTVサービスがセットで提供されています。もちろんケーブ ルテレビやイーサネットによるインターネット接続サービスも 提供されていますが、いずれも数百ルーブル程度と安価にサ ービスが提供されております。 写真2.シューホフの塔 見た目のインパクトでは随一のタワーだと思います。 ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) 61 海外だより∼大使館より∼ さらに、よく見ると最上部には旗が立てられており、これで もちろん、1回券や回数券もありますが、全て非接触ICカー 数m分の高さを稼いでいるとのこと。 ドが使われています。 1回券、2回券、5回券は英語にも対応した自動券売機で (2)シューホフの塔 1922年に完成した160mの電波塔。ウラジーミル・シュー ホフの設計による双曲面構造の塔は芸術的ですが、経年劣化 等の問題や再開発の話があり、取壊しの話が出ています。 も買えるので、地下鉄利用のハードルはそれほどは高くない です。 地下鉄は路線も充実していますが、駅間がちょっと長めな のが玉にきずです。地下鉄駅から長い距離を歩かなければな らないことも多いです。 5.モスクワ生活 (1)言語 (3)買い物 モスクワは物価の高さランキングにおいて、ここ数年上位 基本的には、ロシア語しか通じませんが、空港や旅行者向 に顔を出し続けています。昔は物資も不足気味であったと聞 けのホテルでは英語も通じます。看板等の案内についてもロ きますが、今のモスクワでは、生活する上で(値段や品質は シア語のみのところが多いですが、最近は徐々に英語との併 ともかくとしても)物がなくて困るということはありません。 記のものも増えてきています。若い世代は英語教育を受けて いるので、徐々に変わっていくのかもしれません。 郊外には多くの大型スーパーやショッピングモールがあり、 多くのロシア人が買い物を楽しんでいます。 ちなみに顔文字の「 (´Д`) 」の口の部分である「Д」は ロシア語で使われているキリル文字です。意外に身近なとこ ろにもロシア語が隠れています。 (4)お食事 ロシア料理はもちろん、おしゃれな西洋系のレストランや 中央アジア系のレストランなど種類は豊富ですが、総じて単 (2)公共交通機関 当地では、最近、地下鉄・バス・トラムの共通カード「ト ロイカ」が導入されました。1ルーブル単位でチャージして、 価は高めです。 また、モスクワでは日本料理はとても人気があり、寿司を 出すレストランは800∼1000店舗もあると言われています。 改札でタッチするたびに料金が減算されていく仕組みです。 6.おわりに 旅行先としては他のヨーロッパ各都市と比べると残念なが ら今ひとつ人気のないモスクワですが、実際に来ていただい た方からは「意外に」良かったという評価をいただきます。 実はヨーロッパ最大の人口を擁する都市であり、前述のとお り高級車がたくさん走っているなど、非常に面白い市場なの で、新たなビジネスの種を探しにモスクワに出張されてはい かがでしょうか。本物のウォッカ(アルコール度数は40度) とボルシチ(トマトケチャップは入っていません)とともにお 待ちしております! (本稿は、筆者個人の見解を述べたものであり、所属組織 写真3.最近モスクワ市内に普及しつつある自動販売機 アイスクリームとコンタクトレンズの自動販売機とともに、日本の自動 販売機が頑張っています。 62 ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) の見解を示すものではありません) この人・あの時 シリーズ! 活躍する国際活動奨励賞受賞者 その1 今年で42回を迎えた日本ITU協会賞は、情報通信・放送業界において国際標準化活動や国際協力活動で世界的な貢献をさ れた方々に贈呈されてきている。その中で、 「国際活動奨励賞」は、受賞者の今後の更なる活躍への期待が込められている。 今号よりシリーズとして、奨励賞受賞者の御紹介記事を掲載する。是非読者の皆様には今後とも受賞者を応援いただきたく、 また、今後のネットワーク作りのためにお役立ていただければ幸いである。 いしぐれ やす お 石榑 康雄 NTTセキュアプラットフォーム研究所 [email protected] http://www.seclab.ecl.ntt.co.jp/index.html ITU-T FG-M2Mにおけるエディタ及び(一社)情報通信技術委員会におけるe-Health WPのリーダーとし て、国内外でe-Healthに関する標準化の議論に貢献。また、ITU-T SG16におけるラポータと連携し、ITUの 各種イベントでのデモシステムのプロモーションを国内外で行い、Continua設計ガイドラインのITU-T勧告 化(H.810、2013年12月)に貢献。 ICTによる医療・健康分野の社会課題解決への挑戦 この度はITU協会賞 国際活動奨励賞 功績賞対象分野 り、各成果文書を完成させることができました。 という大変名誉ある賞を頂きまして、ありがとうございまし た。国内外において、多くの皆様に御指導・御協力をいた だき、大変感謝しております。 一方、自身の所属であるNTTにおいては、以前よりグロー バルな業界標準であったContinua Health Allianceの設計ガ イドラインに対応したmobile Health (m-Health)システム 私は、e-Health(医療・健康分野へのICT活用)の分野 を開発し、海外他企業との相互接続性の検証と国内での事 で約10年仕事をさせていただいてきた中で、特に医療・健康 業展開を進めており、加えて、途上国を含むグローバル展開 情報の共有・活用の仕組みであるEHR(Electronic Health に向けたプロモーション活動を進めてきました。その一環で、 Record)やPHR(Personal Health Record)の市場創出に ITU-T SG16のラポータと連携し、ITUの各種イベント(Joint 向けた調査・提言、研究開発・実証実験、プロモーション ITU-WHO Workshop on e-Health Standards and 活動を行ってまいりました。EHR/PHRを実現していく上で Interoperability、ITU Workshop on“E-health services in は、国際標準化は極めて重要なテーマであります。 low-resource settings:Requirements and ITU role”など) への出展を行い、グローバル展開に向け多くの国の方々とe- このような活動を進める中で、2012年春にITU-TのFocus Healthの必要性と課題について議論を進めてきました。更に Group on Machine-to-Machine Service Layer(FG-M2M) は、具体的な標準化活動についても連携し、Continua にて、e-Healthを対象とした検討が行われることになりまし Health Allianceの設計ガイドラインのITU-T勧告化(H.810、 た。私はTTC(一般社団法人情報通信技術委員会)にて、 2013年12月)にもつなげることができました。 e-Health Working Partyのリーダーを務める機会をいただき、 国内の関連企業等の方々と共に、FG-M2Mへの対応を進め これまでのe-Healthに関する標準化活動や出展などを通し てまいりました。FG-M2Mでは、自身初めての国際標準化活 て、医療・健康分野におけるICTの存在価値が着実に高ま 動でしたが、ユースケースの成果文書のエディタも務めるこ っていることを実感しています。今後も、医療・健康分野の とになり、分からないことが多く、関係された皆様には大変 グローバルな社会課題に対して、解決に向けた活動を微力な 御丁寧に御指導をいただきました。FG-M2M全体としても、 がら進めていきたいと思います。ありがとうございました。 日本から参加された皆様の御尽力により、日本が中心とな ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) 63 この人・あの時 おおつき しん や 大槻 信也 NTTアクセスサービスシステム研究所 [email protected] http://www.ansl.ntt.co.jp/ 2011年より、ITU-R SG5 WP5A/5C会合及びWRC12への参加を通じて固定無線システム/固定BWAの分 野に関連するITU-R勧告改訂や新レポート策定等に大きく貢献した。WP5Cではドラフティンググループ議 長及びコレスポンドグループ議長を務め、 「固定無線システムの利用と将来動向」のレポートの策定に貢献し た。 私のITU-Rでの活動 筆者は2011年6月よりITU-R WP5A/WP5C会合への継続 WRC会合開催前にはITU-R WP5Cにおける同議題に関 参加や世界無線通信会議(WRC:World Radiocommuni- するレポート策定作業に参加し、レポートの策定に貢献 cation Conference)の参加を通じて固定無線システム・陸 した。WRC会合やAPT準備会合(APG12-5)おいても 上移動無線システムの分野における、ITU-R勧告の改訂や新 日本での状況を積極的に説明し、最終的に日本を含め レポートの作業に携わり、今回協会賞をいただいた事項を含 た全参加国が合意可能な結論を導き出すことに成功し め以下の作業を実施してきた。 た。 ・WP5CでのITU-R報告「固定無線システムの利用と将来 動向」の策定 これらの作業を通じて苦労した点としては、ITU-R活動に 本ITU-R報告について研究課題の提案・承認から新レ 携わる前までは通信技術における標準化活動での参加経験 ポートの策定にわたり、自ら寄与文書を入力するだけで はあるが、ITU-Rでは通信関連以外の電波を利用した技術及 はなく、会合期間中は本レポートに関するドラフティン び周波数の利用方法に関する事項も議論することから、それ ググループ(DG)において議長を務め、他メンバから らに関係する通信事業者以外の方々と議論をすることが必 の入力を集約し作業文書の改訂を主導するとともに、 要となった。しかしながら、私には通信技術に関するもの以 定期会合間に作業を実施するコレスポンデンスグループ 外の知識が当初は不足していたこともあり非常に苦労した部 (CG)の議長も務めた。 ・宇宙業務と固定業務の共用条件に関する勧告の改訂 分がある。これについては会合に一緒に参加していた日本代 表団の方々や、場合により議論相手となる通信事業者以外 データ中継衛星(DRS)を保護することを目的とした の方々にも積極的に教えを請い、助けていただきながら活動 WP7Bからの標記勧告の改訂要求に対して、その要求 を遂行していくことができた。 を満たしつつ固定無線局を運用している国にも配慮し既 また、このような方々と議論を重ねていき、お互いに妥協 存固定無線局の運用継続も保証するような修正を提案 可能な点を見つけた時、またその後相手と握手をしたときに することにより関係各国の合意を得ることに成功し、勧 は大きな達成感を得ることができた。 告改訂作業を完了させた。 ・固定ブロードバンドワイヤレスアクセス(BWA)に向け 標準技術に関する勧告の改訂 今後の展望・目標 今後もITU-R WP5A/WP5C会合に継続的に参加し、固定 標記勧告について近年の技術の進展・状況の変化に合 無線システム・陸上移動無線システムに関する日本発の技 わせた修正及び勧告の易読化を目的とした構成の変更 術に関する文書の策定による日本の先進性アピールをするだ を提案するとともに、会合期間中DGの議長を務め勧告 けにとどまらず、会合においては議論の推進役を積極的に務 改訂案の作成を主導し、勧告改訂作業を完了させた。 めることによりITUの活動を活発化させ、ひいてはITUにお ・2012年世界無線通信会議(WRC12)での議題1.8(71- ける日本のプレゼンスを高めること及び世界的な電波の有効 238GHzの固定業務に関連する技術的、規則的な検討) 64 ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) 利用の達成のために貢献をしていきたいと考えています。 おおはら たく や 大原 拓也 NTT未来ねっと研究所 [email protected] http://www.ntt.co.jp/mirai/e/index.html 2006年2月よりITU-T SG15で、光伝達網(OTN)に関する多数の寄書提案を行っている。特にOTN上に おけるイーサネット転送、OTNの100Gbit/s化について、イーサネットを最重要視したOTNへの転換を基本 とする日本発の技術提案を進め、OTN標準化に大きく貢献した。 OTN(Optical Transport Network)の標準化活動 光ファイバを用いた高速ネット接続サービスやスマートフ が出てきました。そのような背景の下、我々はデータトラヒ ォンやタブレットを利用したワイヤレスアクセスサービスの広 ックに適したOTN拡張の提案を進めましたが提案は容易に がり、更にはそれらのサービスをベースにした多様なアプリ は受け入れられませんでした。それは、光ファイバ通信シス の利用拡大に伴いネットワークトラヒックの急激な増加が続 テムは長期間使用されることから、従来の規定との互換性が いています。そのようなネットワークを根底で支えているの 要求されるためです。膠着状態が長期間続く中、継続的な が大容量・長距離の光ファイバ通信システムです。大都市間 提案に加え、国内外の通信事業者との連携を進めたり、シ を結ぶ光ファイバ通信システムは一本の光ファイバに異なる ステムベンダとの議論を進めたりすることにより、徐々に理 波長の光を複数多重するWDM(Wavelength Division 解を得ていきどうにか合意にたどり着くことができました。 Multiplexing)伝送を用いています。現在は一波長当たり この合意はOTNにおいて音声トラヒックからデータトラヒ 100Gbit/sのWDM伝送システムが実用化され、さらに一波 ックへの適応という大きな転換点と言えます。OTNの転換 長当たり400Gbit/sや1Tbit/sといったBeyond 100G伝送の 点に立ち会えたことは非常に貴重な経験であり、そしてとて 実現に向けた研究開発が活発に進められています。 も刺激的なものでした。国際標準化活動を通じて世界各国 大容量・長距離の光ファイバ通信システムの実用化に際 の通信事業者、システムベンダ、コンポーネントベンダの標 して重要な役割を演じているものの一つが国際標準化です。 準化エキスパートと人脈を築くことができたのは財産でもあ 国際的に定められた標準規格にすることで、通信システム間 ります。会合の中では対立する立場にあっても一たび技術的 の相互接続性の確保や大量生産による経済化、更には技術 な議論を終えるとその対立の構図は取り払われます。更には、 開発の方向性を定めて光通信システム業界の力を結集する ある案件で対立している相手であっても別の案件では協力関 ことでより一層高度な技術の実現が可能となります。 係を築くこともあり、そのようなときに国際標準化の醍醐味 私 は2006年 よりITU-T SG15においてOTN( Optical を感じます。 Transport Network)の国際標準化に携わっています。通信 現在は100G伝送の次の時代を担うBeyond 100G伝送の標 事業者としての将来のネットワーク像を描くとともに、既存 準化議論が進んでいます。Beyond 100Gではこれまでの光フ 装置との整合性といった観点にも注意を払いながら標準化議 ァイバ通信で用いられてきたシングルキャリア伝送からマル 論に参加しています。当時はイーサネットの普及が進展し、 チキャリア伝送へと転換することが予想され、長距離・大容 長距離・大容量の光ファイバ通信システムにおいてもそれら 量光ファイバ伝送においてもパラレル伝送を意識した標準化 のデータトラヒックを効率良く転送することの重要性が急速 が必要になると考えられます。これまでの経験を活かしつつ に増している状況でした。しかしながら従来のOTNは音声ト も、新たなパラダイムシフトを巻き起こしOTNの次の転換点 ラヒックを主体とした通信に適したものになっておりデータ を生み出して通信事業の発展、ひいては光ファイバ通信技術 トラヒックを効率的に収容できるものにはなっていませんで の進展による社会の発展のために精進していきたいと考えて した。したがってOTNはそのような時代の要請に応える必要 います。 ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) 65 情報プラザ 最近の活動 ITUAJ 新規出版物「無線通信の国際標準化」が発行されました。 http://www.ituaj.jp/ 「無線通信の国際標準化」(橋本明 著/NTTドコモ)が出版されま ITU全権委員会議が開催されています。 した。是非お求めください。 ITUの最高意思決定機関である全権委員会議が、釜山/韓国で開催 されています。ITU選挙職の選挙、理事国の決定はじめ、これから 形体:A5判、約100ページ 四年間の運営に関わる重要決定事 概要:1)国際標準化の意義と目的 2) 項が決められます。日本は、理事 ITUの組織 3)ITU-Rの発行する 国に選出され、KDDIの伊藤氏は 文書 4)提案文書の作成と会合 無線通信規則委員会の委員に二期 での審議 5)国際会議での論戦 目の当選を果たしました。会合の 報告はジャーナルで掲載します。 における留意点 他 売価:2,500円(税込・送料別)/ 賛助会員2,000円(税込・送料別) 編 集 委 員 CEATEC JAPAN 2014開催 委 員 長 田中 良明 早稲田大学 副委員長 亀山 渉 早稲田大学 委 員 三輪 聡 総務省 情報通信国際戦略局 のりひさ 哲久 〃 重成 知弥 総務省 情報通信国際戦略局 〃 金子 賢二 総務省 情報通信国際戦略局 〃 岩間 健宏 総務省 総合通信基盤局 〃 深堀 道子 独立行政法人情報通信研究機構 〃 今中 秀郎 日本電信電話株式会社 〃 中山 智美 KDDI株式会社 〃 小松 裕 ソフトバンクモバイル株式会社 〃 神原 浩平 日本放送協会 〃 堀口由多可 一般社団法人日本民間放送連盟 〃 渡辺 章彦 通信電線線材協会 〃 中兼 晴香 パナソニック株式会社 〃 土田 充 三菱電機株式会社 〃 東 充宏 富士通株式会社 〃 飯村 優子 ソニー株式会社 〃 江川 尚志 日本電気株式会社 〃 岩崎 哲久 株式会社東芝 〃 田中 茂 沖電気工業株式会社 Vol.44 No.11 平成26年11月1日発行/毎月1回1日発行 〃 櫻井 義人 株式会社日立製作所 発 行 人 小笠原倫明 〃 斧原 晃一 一般社団法人情報通信技術委員会 〃 田中 秀一 一般社団法人電波産業会 顧 問 小菅 敏夫 66 いわさき 株式会社 東芝 岩崎 電気通信大学 〃 齋藤 忠夫 東京大学 〃 橋本 明 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) 最先端IT ・エレクトロニクス総合展である「CEATEC JAPAN 2014」が、10月7日∼11日の5日間、幕張メッセで開催 されました。15回目を迎えた今年は世界24か国からの出展があ り、昨年より9,564名(+6.8%)多い150,912名の来場者となり ました。 今年の開催テーマは「Next-夢を生みだし、未来を描け」。 IT・エレクトロニクス産業の幅広い分野における最先端技術と イノベーションを集結し、これからのIT・エレクトロニクス技術 の展望・未来・可能性などを実感できる場が提供されていまし た。 特に、IT・エレクトロニクス産業との更なる融合により成長が 期待される「モビリティ」 「ヘルスケア」 「ウェアラブル」 「ロボテ ィクス」など、今後の技術革新がもたらす分野を取り込んだ社会 システムや、新しいライフスタイルなどの訴求が目立ちました。 「CEATEC AWARD 2014 総務大臣賞」を受賞した「フルス ペック8K液晶ディスプレイ」をはじめ、 「ウェアラブル端末」 、 「ラ リー継続卓球ロボット」 、 「チアリーディングをするロボット」 、 「手 話をする人間型のコミュニケーションロボット」等々、興味深い 展示が多くあり、来場者の方々の関心を集めていました。 ITUジャーナル 一般財団法人 日本ITU協会 〒160-0022 東京都新宿区新宿1-17-11 BN御苑ビル5階 TEL.03-5357-7610(代) FAX.03-3356-8170 編 集 人 森 雄三、石井篤子、松山靖之 編集協力 株式会社 キンコー C ⃝著作権所有 一般財団法人 日本ITU協会 ITU出版物に対する斡旋販売のお知らせ 2014.08 日本ITU協会では、ITUから出版されている書籍を斡旋販売致します。 下記にある書籍については、当協会内で閲覧いただけますので併せて御利用ください。 ※価格は、 概算価格です。ご購入時の為替レートにより若干の変動があります。 また、 CDはシングルユーザの場合の価格です。 Collection of the Basic Texts of the International Telecommunication Union adopted by the 憲章・条約 Plenipotentiary Conference 2011 規則関係 Radio Regulations Edition of 2012 国際周波 数情報 4年に1度改正 無線通信規則 4年に1度改正 全権委員会議 最終文書(2014年 釜山) Final Acts of the World Conference on International Telecommunications (WCIT-12) 世界国際電気通信会議(2012年ドバイ) 2015年発行予定 電気通信規則収録 世界無線通信会議 最終文書(2012年 ジュネーブ) 次回のWRCは2015年を予定 World Telecommunication Standardization Assembly Proceedings Dubai, 2012 世界電気通信標準化総会 最終文書(2012年ドバイ) World Telecommunication Development Conference (WTDC-14): Final Report 2014 世界電気通信開発会議(2014年ドバイ) World Telecommunication/ICT Indicators Database CD-ROM 18th Edition, 2014 ITU各国別情報通信データ集(インディケーターズ) Yearbook of Statistics - Telecommunication/ICT Indicators - 2003-2012 39th Edition, 2013 ITU各国別情報通信データ集(イヤーブック) BR International Frequency Information Circular (BR IFIC) - Space Service Edition of 2014 衛星系業務関係周波数等情報 BR International Frequency Information Circular (BR IFIC) - Terrestrial Services Edition of 2014 地上系業務周波数等情報 ITU-R Recommendations and Reports DVD-ROM Edition of 2014 ITU-R全勧告集 ITU-T Recommendations and selected Handbooks-DVD-ROM 2014 ITU-T全勧告集 List V - List of Ship Stations and Maritime Mobile Service Identity Assignments Edition of 2014 船舶局の局名録及び海上移動業務識別の割当表 List IV - List of Coast Stations and Special Service Stations Edition of 2013 海岸局及び特別業務の局の局名録 Manual for Use by the Maritime Mobile and Maritime Mobile-Satellite Services (Maritime Manual) Edition of 2013 海上移動業務及び海上移動衛星業務で使用する便覧 勧告 海洋関係 憲章・条約 Final Acts of the Plenipotentiary Conference Busan, 2014 最終文書 Final Acts - WRC-12, Geneva Geneva 2012 関係 統計 関係 価格(概算) :円 Book CD 和書名/解説 Book 次回のWTSAは2015年を予定 2014年末発行予定 インターネット普及率等の検索・抽出可能なデータ インターネット普及率等国別一覧表データ 移動衛星・測位衛星・固定衛星・放送衛星等対象 固定業務・移動業務・無線測位業務・放送業務等対象 個別に無料ダウンロード可能 http://www.itu.int/pub/R-REC 個別に無料ダウンロード可能 http://www.itu.int/pub/T-REC 船舶必携書籍3冊のうちの1冊 船舶必携書籍3冊のうちの1冊 船舶必携書籍3冊のうちの1冊 現行最新版 19,000 19,000 2011年 63,000 63,000 2012年 18,000 18,000 2010年 グアダラハラ 15,000 15,000 2013年 29,000 29,000 2012年 24,000 24,000 2013年 22,000 22,000 2010年 ハイデラバード 43,000 43,000 2014年 毎年 6月/12月 18,000 − 2013年 − 95,000 二週間毎に発行 単体でも購入可 − 34,000 二週間毎に発行 単体でも購入可 − 133,000 − 223,000 − 51,000 2014年 − 34,000 2013年 47,000 47,000 2013年 NTTドコモ 橋本 明 著 (ITU-R SG5議長) 第1章 国際標準化の意義と目的 標準化の意義、標準化活動の位置づけ 等 第2章 ITUの組織 世界無線通信会議、研究委員会、作業部会等 第3章 ITU-Rの発行する文書 無線通信規則、勧告、報告、決議 等 第4章 提案文書の作成と会合での審議 提案文書の作成、会合への対応 等 第5章 国際会議での論戦における留意点 Hearing、Speaking、Reading、Writing、 Chairmanship 等 定価: 2,500円(税込・送料別) 賛助会員: 2,000円(税込・送料別) 一昔前までは一般的ではなかった携帯電話が、スマホの時代となり、今では子供も持 つようにさえなりました。近年の電波ビジネスの拡大は想定を遥かに超え、無線技術 の標準化や電波利用に関わる規則は世界的に重要性を増してきています。 本書は無線通信の国際標準化に携わる人へ、ITUの会議での活動を想定し、標準化の 意義、ITUの組織構成や発行する文書、提案書の作成、会合での具体的対応法等、国 際会議参加者に必要な基本的知識・ノウハウを満載しました。30年以上ITUに日本代 表として活躍なさった橋本明氏の経験の集大成です。無線通信分野の方のみならず、 情報通信の国際ビジネスに関わる人への必携書です。 お問い合わせ お申し込みは 日本ITU協会 出版担当 ([email protected] 03-5357-7620) 平 成 二 十 六 年 十 一 月 一 日 発 行 ︵ 毎 月 一 回 一 日 発 行 ︶ 第 四 十 四 巻 第 十 一 号 ︵ 通 巻 五 十 九 号 ︶ I T U ジ ャ ー ナ ル
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