知っておきたい 残留農薬分析に用いる標準試薬の計量品質 - NMIJ

知っておきたい
残留農薬分析に用いる標準試薬の計量品質
(独)産業技術総合研究所 計測標準研究部門
井原 俊英,齋藤 剛,加藤 尚志,斎藤 直樹
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残留農薬分析における標準液の役割
測定試料
(食品、農産物など)
標準液
検量線作成
分析機器
測定値
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標準液の例(仕込量の保証)
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標準試薬の計量品質
A社:
99.0 % (GC)
B社: 100.0 % (GC)
C社:
99.5 % (HPLC)
D社:
98.4 % ± 0.4 % (CRM)
4
標準品の例(GCでの含量保証)
GC: 100.0 %
5
標準品の例(NMRでの純度評価)
NMR: 96.1 % ± 0.4 %
アセトンの残留
用途:GC/MSを用いた定性分析やおおよその濃度の把握
6
標準品の例(HPLCでの含量保証)
HPLC: 99.6 %
7
標準品の例(NMRでの純度評価)
NMR: 98.1 % ± 0.9 %
高級アルコール
の混在
1
5
4 3
2
用途:LC/MSを用いた定性分析やおおよその濃度の把握
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残留農薬試験用標準試薬41製品の表示値とNMR測定値
※国立医薬品食品衛生研究所
田原麻衣子博士より
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残留農薬試験用標準試薬41製品のNMR測定値の分布
未開封/開封済
※国立医薬品食品衛生研究所
田原麻衣子博士より
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標準物質とは
【標準物質:Reference Material,RM】
一つ以上の指定された特性について、十分均質かつ安定であり、
測定プロセスでの使用目的に適するように作成された物質
【認証標準物質:Certified Reference Material,CRM】
一つ以上の指定された特性について、計量学的に妥当な手順に
よって値付けされ、指定された特性の値及びその不確かさ、並び
に計量トレ-サビリティを記述した認証書が付いている標準物質
※ISO Guide 35:2006(標準物質-認証のための一般的及び統計学的原則)より
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認証標準物質の例
本標準物質の認証値は、・・・
国際単位系(SI)にトレーサブルである。
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標準物質の役割と計量品質について
【標準物質(標準品・標準液):特定の分析法による含量保証】
・該当する物質が含まれていることの確認
・おおよその値が知りたいとき
【認証標準物質:証明書による絶対値の保証】
・依頼分析など信頼できる定量値を得たいとき
・分析結果の同等性や継続性が重要なとき
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有効期限
・標準物質の有効期限は指定された保存条件を守った上で、
原則的に未開封の状態でのものである。
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未開封品及び開封品における表示値とNMR測定値
表示値
NMR
未開封
※国立医薬品食品衛生研究所
開封済
田原麻衣子博士より
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残留農薬試験用標準試薬における吸湿性評価
イソウロン
推奨開封条件(RH 50 %以下)
イソウロン,アセフェート,マラソン,CAT,モリネート,ピペロニルブトキシド
推奨開封条件(RH 20 %以下)
メタミドホス,プロフェノホス,テトラコナゾール,プロパホス,メタラキシル-M,
フォスチアゼート
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まとめに代えて
【問題】
【回答】
信号面積
検量線作成に使っている標準試薬が少なく
なったので、同じ試薬名のものを新たに購
入したら検量線の傾きが5 %程度異なる。
試薬メーカにクレームを言えるか?
濃度
購入したものがGCやHPLCで含量保証された標準品の場合(特
に試薬メーカが異なる場合)は、寛大なるご理解を戴ければと思
います。
一方、購入したものが認証標準物質の場合は、(証明書等の指示
に従って正しく使用し、精確に検量線標準液を調製していると思
えるなら)クレームを言っても良いでしょう。
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