①薬物受容体と細胞内情報伝達

1.受容体の種類
1A.Gタンパク質共役型
1B.イオンチャネル内蔵型 (細胞膜)に局在
1C.チロシンキナーゼ関連型
①薬物受容体と細胞内情報伝達
(細胞質・核内)に局在
1D.核内受容体
-目標受容体の種類を説明できる
受容体刺激時に発生するシグナル伝達経路を説明できる
神経伝達物質の受容体を分類することができる
1
2
(細胞膜)に局在している受容体
細胞膜に存在している
受容体
実際はこんな形
受容体
(タンパク質)
細胞内情報伝達系
細胞機能の発現
神経細胞:脱分極 or 過分極
筋細胞:収縮 or 弛緩
分泌細胞: 分泌液の放出
N
(毛糸の玉をイメージすること)
3
C
C
N
4
1.受容体の種類
1A.Gタンパク質共役型受容体
1.受容体の種類
1A.Gタンパク質共役型受容体
【構造】7回膜貫通型
Gタンパク質共役型受容体
【機能】受容体に共役する(Gタンパク質)の
活性変動により細胞内の標的タンパク質の
活性を変化させ、細胞の興奮性を間接的に
変化させる
膜7回貫通型
細胞外
N
【代表例】 PQ
⑦
①
(アドレナリン受容体)
(ドパミン受容体)
(ムスカリン性アセチルコリン受容体)
(セロトニン5-HT1、 5-HT2、 5-HT4、受容体)
Gタンパク質
共役型受容体
細胞膜
C
5
1.受容体の種類
1B.イオンチャネル内蔵型
細胞内
6
1.受容体の種類
1B.イオンチャネル内蔵型
【構造】4回膜貫通型サブユニットの会合
細胞外
N
C
【機能】受容体が刺激されると
内蔵される(イオンチャネル)が
開口することにより、
細胞の興奮性を直接変化させる
【代表例】 PQ
イオンチャネル
内蔵型受容体
(ニコチン性アセチルコリン受容体)
(セロトニン5-HT3受容体)
(GABAA受容体)
7
細胞内
8
1.受容体の種類
1C.チロシンキナーゼ関連受容体
1.受容体の種類
1D.核内受容体
【構造】1回膜貫通型
【機能】受容体に内蔵している(チロシンキナーゼ)の活性化
により、細胞内タンパク質のチロシン残基をリン酸化
することにより細胞の興奮性を変化させる
【代表例】
(インスリン受容体)
(上皮成長因子(EGF)受容体)
【構造】制御領域、DNA結合領域、リガンド結合
領域を持つ1本鎖タンパク質
【機能】リガンド(ホルモン、脂溶性ビタミンなど)
が結合することにより特定のDNA配列に
結合し、転写調節を行う
【代表例】
性ホルモン(アンドロゲン、エストロゲンなど)受容体
9
(細胞質・核内)に局在している受容体
10
2.
Gタンパク質による細胞内情報伝達機構
Gタンパク:(グアニンヌクレオチド結合タンパク)
細胞外から細胞内への情報伝達に関与する。
細胞内(細胞質/核)に
存在している受容体
2A.
Gタンパク質の構造的特徴
・α、β、γサブユニットの 3量体として存在する
核
・活性化を調節する GTPは(α)サブユニットに結合している
・αサブユニットの GDPが GTPに交換されると
Gβγサブユニットと解離し、活性化される
DNA
遺伝子の転写を
起こす
・細胞内効果器タンパク質機能の調節は、
主に(α)サブユニットが行っている
11
12
2.
Gタンパク質・・
(グアニンヌクレオチド結合)タンパク
Gタンパク質による細胞内情報伝達機構
2B. Gタンパク質の種類
・サイクリックAMP (cAMP) 経路を活性化するもの
→ (Gs)
Adenosine
triphosphate (ATP)
・cAMP経路を抑制するもの
→ (Gi/o)
・ホスホリパーゼC (PLC) 経路を刺激するもの
→ (Gq/11)
Guanosine
diphosphate (GDP)
・低分子量Gタンパク質を活性化するもの → G12/13
・視細胞に存在するもの → Gt
・味細胞に存在するもの → Ggust
Guanosine
triphosphate (GTP)
14
13
2.
2C.
Gタンパク質による細胞内情報伝達機構
2C.
Gタンパク質活性化の機序
αサブユニットに結合しているGDPがGTPと置き換わる
Gタンパク質と受容体が解離し、サブユニットも解離する
Gタンパク質活性化の機序
1.Gタンパク質共役型受容体に作動薬が結合する
2.受容体の構造が変化し、Gタンパク質のαサブユニット (Gα)に
結合する GDPが GTPへ交換される
3.GTP結合型 Gαは Gβγサブユニットと解離し、受容体とも解離する
4.Gβγと解離した Gαは、効果器タンパク質と相互作用し細胞内情報伝達
系に影響を与えたり、細胞膜に存在するイオンチャネルの機能を変化さ
せたりする (Gβγもこれらの機能に影響を与えることが示されている)
5.Gαに内蔵される GTPase (GTPを GDPにする酵素)活性により Gαの
GTPが GDPへ変化し、Gαと Gβγが再会合して、Gタンパク質の活性
化が終了する
α
β
γ
other
protein
GDP
GTP
15
16
2C.
Gタンパク質活性化の機序
2C.
αサブユニットに結合しているGDPがGTPと置き換わる
Gタンパク質と受容体が解離し、サブユニットも解離する
other
protein
α
β
γ
GTP
活性化
Gタンパク質活性化の機序
αサブユニットに内蔵しているGTPaseによって
GTPがGDPに変換される
other
α protein
不活性化
β
γ
GTP
GDP
17
AC:アデニル酸シクラーゼ
PKA:プロテインキナーゼA
18
2.
2D.
AC
Gタンパク質による細胞内情報伝達機構
Gタンパク質により調節される細胞内情報伝達経路
2D-1 cAMP経路
【活性化機序】
1.Gsαが解離して、(アデニル酸シクラーゼ:AC)を活性化する
2.活性化したアデニル酸シクラーゼは、(ATP)を (cAMP)へ変換する
3.生成された cAMPは、cAMP依存性プロテインキナーゼ(PKA)を活性化する
Gs
4.活性化された PKAはその細胞内基質を(リン酸化)することにより、細胞の機
能に影響を与える
AC
ATP
other
protein
cAMP
PKA
20
AC:アデニル酸シクラーゼ
PKA:プロテインキナーゼA
2.
2D.
Gタンパク質による細胞内情報伝達機構
Gタンパク質により調節される細胞内情報伝達経路
2D-2. ホスホリパーゼ C (PLC)経路
【活性化機序】
1.Gq/11αが解離して、(ホスホリパーゼC:PLC)を活性化する
Gi
2.活性化した PLCは、(ホルファチジルイノシトール2リン酸 (PIP2))
から(イノシトール 3リン酸 ( IP3))および(ジアシルグリセロール
(DG))を生成する
AC
3.生成された IP3は、細胞内カルシウムストア膜上の IP3受容体に結合し、
カルシウムストアからのカルシウム遊離を引き起こす
ATP
other
protein
cAMP
4.生成された DGは、(プロテインキナーゼ C (PKC))を活性化する
5.活性化された PKCは、その細胞内基質を(リン酸化)することにより、
細胞機能に影響を与える
PKA
22
ジアシルグリセロール
ジアシルグリセロール
(DAG)
O
=
ホスファチジルイノシトール
4,5-二リン酸 (PIP2)
ホスホリパーゼC
(PLC)
グリセロール
(グリセリン)
イノシトール
1,4,5-三リン(IP3)
23
CH2‐O‐HC‐R
|
CH‐O‐H
|
CH2‐O‐HC‐R
アシル基
=
CH2‐O‐H
|
CH‐O‐H
|
CH2‐O‐H
O
1,3-ジアシルグリセロール
2.
PLC:ホスホリパーゼC
PKC:プロテインキナーゼC
2D.
PIP2:ホスファチジルイノシトール-4,5-二リン酸
IP3:イノシトール-1,4,5-三リン酸
PLC
Gq
Gタンパク質により調節される細胞内情報伝達経路
2D-3. 一酸化窒素 - cGMP経路(NO - cGMP経路)
【活性化機序】
1.Gq/11αの解離により、細胞内 Ca2+濃度が上昇する
(PLC経路参照)
PIP
IPDG
32
2.Ca2+とカルモジュリンが複合体を形成し、
NO合成酵素 (NOS)を活性化する
3.NOSは、(アルギニン)から(一酸化窒素 (NO))を生成する。
NOは、細胞膜を簡単に通過することができるので、
隣接する細胞へ拡散する(受動拡散)
Ca2+ストア
Ca2+
other
protein
Gタンパク質による細胞内情報伝達機構
PKC
26
2.
2D.
3.代表的神経伝達物質と細胞内情報伝達
Gタンパク質による細胞内情報伝達機構
Gタンパク質により調節される細胞内情報伝達経路
3A. アセチルコリン
2D-3. 一酸化窒素 - cGMP経路(NO - cGMP経路)
Gタンパク質共役型
【活性化機序(つづき)】
4.NOは、可溶性(グアニル酸シクラーゼ)を活性化する
5.活性化されたグアニル酸シクラーゼは、GTPから(
cGMP)を生成する
6.生成された cGMPは、cGMP依存性プロテインキナーゼ(プロテイン
キナーゼ G; PKG)を活性化する
7.活性化された PKGはその細胞内基質を(リン酸化)することにより
細胞の機能に影響を与える
M1
M2
M3
Gq/11
Gi/o
Gq/11
IP3/DG ↑
cAMP ↓, K+ ↑(Kir)
IP3/DG ↑
中枢神経系
心臓、神経終末、
延髄、平滑筋
腸管平滑筋、
血管内皮など
イオンチャネル内蔵型
自律神経節型(NN)
筋肉型(NM)
陽イオンチャネル開口(Na+、Ca2+ ↑)
27
28
3.代表的神経伝達物質と細胞内情報伝達
3.代表的神経伝達物質と細胞内情報伝達
3B. ノルアドレナリン、アドレナリン
3B. ノルアドレナリン、アドレナリン
α1
α2
β1
β2
β3
α1A
α1B
α1D
α2A
α2B
α2C
Gs
Gs
Gs
Gq/11
Gq/11
Gq/11
Gi/o
Gi/o
Gi/o
cAMP ↑
cAMP ↑
cAMP ↑
IP3/DG ↑
IP3/DG ↑
IP3/DG ↑
cAMP ↓
cAMP ↓
cAMP ↓
心臓
気管(気管支)
腎臓、肝臓
肝臓、
脾臓、
心臓、
血管平滑筋
心臓、脂肪組織、
消化管、血管
大動脈、
肺
平滑筋
血小板、
大脳皮質
腎臓、肝臓
大脳皮質
シナプス前膜
29
3.代表的神経伝達物質と細胞内情報伝達
30
3.代表的神経伝達物質と細胞内情報伝達
3C. ドパミン
3D. セロトニン
D1 様
D2 様
D1 、D5
D2、D3、D4
Gs
Gi/o
cAMP ↑
cAMP ↓
D1/線条体、側坐核、
嗅結節
D2/線条体、側坐核、
嗅結節、消化管
31
5-HT1
5-HT2
5-HT3
5-HT4
Gi/o
Gq/11
イオンチャネル内蔵型
(陽イオン透過型)
Gs
cAMP ↓
IP3/DG ↑
Na+↑、K+↓
cAMP ↑
中枢神経系
平滑筋
中枢神経系
平滑筋
血小板
中枢神経系、平滑筋
末梢神経終末
腸管神経叢
心臓
海馬
32
3.代表的神経伝達物質と細胞内情報伝達
3.代表的神経伝達物質と細胞内情報伝達
3E. γ-アミノ酪酸 (GABA)
3F. グルタミン酸
Gタンパク質共役型
イオンチャネル内蔵型
グループ1
Gタンパク質共役型
グループ2
グループ3
mGluR1 mGluR5 mGluR2 mGluR3 mGluR4 mGluR6 mGluR7 mGluR8
GABAA
GABAC
GABAB
α1β2γ2
ρ1ρ2ρ3
Gi/o
Gq/11 Gq/11
IP3/DG ↑
IP3/DG ↑
Gi/o
Gi/o
Gi/o
Gi/o
Gi/o
Gi/o
cAMP ↓
cAMP ↓
cAMP ↓
cAMP ↓
cAMP ↓
cAMP ↓
中枢神経系
Ca2+↓
cAMP ↓
K+↑
Cl-↑
Cl-↑
中枢神経系
網膜細胞
中枢神経系
イオンチャネル内蔵型
NMDA
non-NMDA
グルタミン酸結合
グリシン結合部位
部位
中枢神経系
AMPA
カイニン酸
Ca2+↑
中枢神経系
33
3.代表的神経伝達物質と細胞内情報伝達
3.代表的神経伝達物質と細胞内情報伝達
3G. オピオイド受容体
ヒスタミンH1受容体
μ
δ
κ
ORL1
Gi/o
Gi/o
Gi/o
Gi/o
cAMP ↓、
Ca2+↓、K+↑
cAMP ↓、
Ca2+↓、K+↑
cAMP ↓、
Ca2+↓、K+↑
cAMP ↓、
Ca2+↓、K+↑
ヒスタミンH2受容体
アンギオテンシンⅡAT1受容体
バソプレシンV2受容体
プロスタグランジン(PGE)受容体
中枢神経系、心血管系、泌尿器系など
受容体つながり
確認しておいた方がよい受容体
ヒスタミンH1受容体・H2受容体
バソプレシンV2受容体
プロスタグランジン受容体
34
ナトリウム利尿ペプチド(ANP)受容体
アンジオテンシンⅡAT1受容体
おまけ
Gq
Gs
Gq
Gs
Gq
グアニル酸
シクラーゼ関連
エンドセリン受容体
ナトリウム利尿ペプチド受容体
35
36
2.
PQ
Gタンパク質による細胞内情報伝達機構
2D.
この一連の流れを
なんという?
DNA
↓
RNA
↓
protein
Gタンパク質により調節される細胞内情報伝達経路
2D-1
cAMP経路
このシグナル伝達経路に関する薬物を答えなさい
PQ
PQ
【活性化機序】
アルギニンやシトルリンは、
この反応系とは別に、人体
における重要な代謝経路に
関わっている。その経路を
何というか。
2.活性化したアデニル酸シクラーゼは、(ATP)を (cAMP)へ変換する
1.Gs
アデニル酸シクラーゼ:AC)を活性化する
αが解離して、(
A)
アデニル酸シクラーゼを活性化させる薬物
3.生成された
cAMPは、cAMP依存性プロテインキナーゼ(PKA)を活性化する
B) アドレナリンβ受容体(Gsタンパク型共役受容体)
4.活性化された
PKAはその細胞内基質を(リン酸化)することにより、細胞の機
の遮断薬
能に影響を与える
PQ
一酸化窒素の産生源としてアルギニンが
選ばれているのはなぜか。グリシンやア
ラニン、チロシンではなぜだめなのか?
37
C)
カルシウムチャネル(PKAによってリン酸化を
受けるタンパクの一つ)を遮断する薬物
D)
PKAを阻害する薬物で臨床に用いられている薬物は
無い(研究目的の利用では存在する)。
その理由を考えなさい。
38