半導体工学 ショットキー接触とオーミック接触 pn接合とショットキー接合

本日の内容
回数
半導体工学
名城大学 理工学部 材料機能工学科
岩谷 素顕
7-1
ショットキー接触とオーミック接触
項目
内容
1
電子統計1
次元の制御と状態密度 真性半導体
2
電子統計2
不純物半導体 n型 p型
3
電気伝導
移動度 ホール効果 拡散係数 アインシュタイン関係式
4
ダイオード1
ポアソン方程式 バンドダイヤグラム 空乏層 空間電荷層
拡散電位 階段接合 キャリア寿命
5
ダイオード2
傾斜接合 接合容量 逆方向飽和電流 温度特性 電子雪崩
6
バイポーラトランジスタ1
エミッタ効率 ベース輸送効率 ベース接地電流増幅率
7
バイポーラトランジスタ2
エミッタ接地電流増幅率 アーリー効果
8
バイポーラトランジスタ3
周波数特性
9
サイリスタ
TTL
ターンオン条件 先にこちらをやります
GTO
10
金属と半導体の接触
ショットキー障壁 オーム性接触 リチャードソン定数
11
FET1
MESFET 静特性 高周波特性
12
FET2
MOSTFETのバンドダイアグラム 静特性 Nチャネル Pチャネ
ル
13
FET3
エンハンスメント ディプレッション CMOS
14
IMPATT、PD、太陽電池
LED、LD
衝突イオン化、光吸収、量子効率、フィルファクター、タンデム
セル 直接遷移、間接遷移、発光色とバンドギャップ、反転分
布、キャリア閉込、光閉込、ファブリ・ペロー共振器
pn接合とショットキー接合
n型
金属
ショットキー接触
n型
p型
n型
金属
オーミック接触
p型
p型
Si pn接合ダイオードのI -V特性
電流 [A]
小信号用
Dual
20mA
10mA
0V
電圧 [V]
0.7V
電流の立ち上がり電圧
大電流用
ショットキーダイオードの写真
専門用語確認
Si ショットキーダイオードのI-V特性
cf. pn接合ダイオード
0.7~0.8V
5mA/div
なぜ、立ち上がり電圧が
小さいか?
語句
意味
電子親和力
物質に1つ電子を与えた時に放出または吸収されるエネル
ギー。放出の場合は正、吸収の場合は負と定義する。電子親
和力が負であることは、陰イオンになり難いことを意味する。
仕事関数
物質表面において、表面から1個の電子を無限遠まで取り出
すのに必要な最小エネルギーのこと
真空準位
内部に構造を持たない電荷を持った粒子(荷電粒子)が、真
空中に孤立(かつ単独)で存在し、加えて運動エネルギーが
ゼロの状態にある時の最低のエネルギー準位のこと
0.2V/div
半導体材料のエネルギー状態
真空準位
真空準位
S電子親和力
S電子親和力
S:仕事関数
S:仕事関数
金属のエネルギー状態
真空準位
:仕事関数
p  NA
EC:伝導帯下端
Efn フェルミ準位
Eg
 n  n  ND
E fn  EC  k BT  ln 

 NC 
ショットキーダイオードの内部構造
Al
EV:価電子帯上端
p型半導体
n型半導体
最初にこちらの話
EC:伝導帯下端
 p 
E fp  EV  k BT  ln  
 NV 
Efp フェルミ準位
EV:価電子帯上端
EV:価電子帯上端
+
EF フェルミ準位
EC:伝導帯下端
順方向
ー
Al
1019cm-3程度以上と、特
に不純物濃度の高い層を、
上添え字の+記号で表す。
n+-Si
n-Si
電極材料が同じであるにもかかわらずなぜ整流性が生じるか?
n-SiとAlの接触
各材料の物性
アルミニウム(Al: Aluminum)
原子番号
13
原子量
26.9
融点
660℃
沸点
電子親和力
仕事関数
2467℃
0.46eV
4.28eV
シリコン(Si: Silicon)
原子番号
14
原子量
28.1
融点
1420℃
沸点
3280℃
電子親和力 ~2.7eV
n-SiとAlの接触
仕事関数 Si
ドーピング濃度により異なる。
真空準位
真空準位
電子親和力 Si
仕事関数
Al=4.28eV
伝導帯下端EC
フェルミ準位EfSi
フェルミ準位
EfAl
価電子帯上端EV
接触直後
n-SiとAlの接触
真空準位
真空準位
Al
Siの伝導帯電子は、エネル
ギーが高いので、Si-Al界面
付近の伝導帯電子は、Al側
に移ると考えられる。
EfAl
Si
Si
------
EC
EfSi
EV
接触すると、どうなるか?
n-SiとAlの接触
15族(P,Asなど)
-
+
Al
n-SiとAlの接触
-
+
-
+
+
-
-
+- +
+ - -+
-
+- +-
+- +
-
+- +
+ - -+
-
+
+ Si
-
n-SiとAlの接触
------
EfAl
EC
EfSi
EV
n型半導体のショットキー障壁
エネルギー
真空準位
ショットキー障壁 m-S
Ef
EfAl
- - - -E
C
EfSi
EV
平衡状態では、金属と半導体の
フェルミ準位は一致する。
EC
実際にはmSになる
とは限らない。
EV
金属の仕事関数 metal > n型半導体の仕事関数 Si
のとき、ショットキー接合になりやすい。
p型半導体の場合
p型半導体の場合
エネルギー
-
-
真空準位
EC
仕事関数 m
Metal
-
-
S
+ + + + + EV
-
13族(B,Al,Gaなど)
+
ー
+
ー
+
ー
ー
+
+
ー+ ー
ー + +ー
+
ー+ ー+
ー+ ー
+
ー+ ー
ー + +ー
+
ー
ー Si
+
p型半導体の場合
p型半導体の場合
エネルギー
真空準位
エネルギー
真空準位
仕事関数 m
S S
EC
EfM
Eg
仕事関数 m
EfS
+ + + + + EV
p型半導体の場合
真空準位
EC
S
+ + + + + EV
p型半導体の場合
エネルギー
真空準位
エネルギー
EC
仕事関数 m
EC
S
+ + + + + EV
仕事関数 m
+ + + EV
同じn型半導体p型半導体と同じ金属の組み合わせのショット
キー障壁
p型半導体の場合
エネルギー
p型Si
金属
n型半導体のショットキー障壁 m-S
EC
EF
EV
ショットキー障壁 SEgm
p型半導体のショットキー障壁 SEgm
加えると、
m-S
+SEgm=Eg
となるはず。
実際には、SEgmに
なるとは限らない。
金属の仕事関数 m < p型半導体の仕事関数 S
のとき、ショットキー障壁を形成しやすい。
n形およびp形半導体に対するいくつかの金属に対するショット
キー障壁高さ
ショットキー金属
n形Si(eV)
p形Si(eV)
合計(eV)
Al
0.7
0.8
1.5
Ti
0.5
0.61
1.11
Au
0.79
0.25
1.04
PtSi2
0.85
0.2
1.05
NiSi2
0.7
0.45
1.15
実際には、格子定数の異なる半導体と金属が接合を形成する
ため、界面である半導体表面に特別な準位を形成しやすい。
n型半導体におけるショットキー障壁の詳細
F ( x) 
エネルギー
ポテンシャルは、
 ( x)  
空乏層
幅W
x=0
x=W
x
qN D

n型半導体におけるショットキー障壁の詳細
x>=0においてポアソン方程式は
空乏層
幅W
d 2 ( x)
qN
 D
dx 2

電界をF(x)とすると、F ( x)  
d qN D

x A

dx
x=W(空乏層の端)において、F(W)=0なので
x=0
x=W
F ( x) 
x
qN D

(x W )
n型半導体におけるショットキー障壁の詳細
エネルギー
(x W )
 ( x)  
qN D 2 qN D
x 
Wx  B
2

空乏層
幅W
半導体表面(半導体と金属の界面)x=0で
x=0とすると、B=0なので
qN
 ( x)   D ( x 2  2Wx)
2
n型半導体のドナー密度ND、
誘電率0r
ポテンシャル(電圧)をxとする。
エネルギー
x=0 x=W

qN D 2
( x  2Wx)
2
拡散電位VDは
x
VD
VD   (W )   (0) 
qN D

W2
n型半導体におけるショットキー障壁の詳細
エネルギー
VD   (W )   (0) 
EfM
qV
設問: ショットキーダイオードの接合容量Cを導きなさい。
qN
 ( x)   D ( x 2  2Wx)
2
拡散電位VDは
qN D 2
W
2
qN D
2(VD  V )
C
外部より、逆方向(金属側に負、半導体
側に正)の電圧Vを加えると、
EfS
VD  V 
qN D 2
W より
2
2
(VD  V )
qN D
qN D
接合容量は、 C 
2(VD  V )
空乏層幅は、W 
x=0
x
設問:解答例
設問
C 


S ( 1)
W
誘電率、ドナー密度NDのn型半導体において、その上に金
属を蒸着してショットキーダイオードを作製する。その接合容
量の外部電圧依存性を測定すると、ショットキーダイオード
の拡散電位VDおよびn型半導体のドナー密度NDが測定でき
ることを説明しなさい。

2
(VD  V )
qN D
qN D
2(VD  V )
設問:解答例
ショットキーダイオードのI-V電圧特性
エネルギー
C
qN D
2(VD  V )
1
2(VD  V )

2
C
qN D
1/C2
傾き
2/qND
エネルギー
qVD
nS
q(VD-V)
電子の
分布
qV
VD
V
金属
半導体
バイアス電圧=0
金属側 正
n型半導体側 負
順方向電圧V
ショットキーダイオードのI-V特性:エミッション電流モデル
ショットキーダイオードのI-V特性
エミッション電流モデル
障壁以上のエネルギーを持つ電子の
q(VD-V) 障壁の最高エネルギーを基準としたエ
ネルギー
E=E-EC-q(VD-V)=nS-EfS
EC
EfS そのエネルギーが運動エネルギーにな
るとすると、
2
2
2
2
E 
(k x  k y  k z )
2me
EV
E-EfS=EC-EfS+q(VD-V)+nS-EfS
=nS-qV+E
x
エネルギー
E
nS
qV
ショットキーダイオードのI-V特性
q
 2
k x  f (k )dk
me (2 ) 3 
q
   qV
 2
exp  nS
me (2 ) 3
k BT

E-EfS=nS-qV+E
E 

2
2
2
2
kx  k y  kz
2me
f(E):フェルミ・ディラックの分布関数
E>>Efの場合
E  Ef
1
)
 exp( 
E  Ef
k BT
1  exp(
)
k BT
f FD ( E ) 
マクスウェル・ボルツマン分布と同じ
 exp(a
2
x 2 )dx 
0
k  mv




1
 2 
dk
 3 q  v x f (k )
3 
L
  2  
 L 
 

k x
2
q
 f (k )dk
3 
(2 ) me
Z(E):エネルギー状態密度

波数と電子の速度の関係
 q  v x dn
ここで、電子密度nは、n(E)=Z(E)・f(E)
ショットキーダイオードのI-V特性
n型半導体から金属に流れる電流の密度jS→mは
jS m  qnv x
電流密度 j=qnv
jS  m 



  2k y 2 
  2kx 2 
  2k z 2 






  k x  exp 
 2m k T dk x   exp  2m k T dk y   exp  2m k T dk z
e B 
e B 
e B 
0





ショットキーダイオードのI-V圧特性

という、積分公式を用いると、
2a
2
   qV
qme k B T 2
 exp  nS
2 2
k BT
2 




となる。
金属から、n型半導体へは、ポテンシャルの形から
jm  S 
2
  
qme k B T 2
 exp  nS 
2 2
2 
 k BT 
オーム性接触
従って、総電流密度は
j  j S  m  jm  S
    qV  
qme k B T
  1

 exp  nS exp
2 2
2 
 k BT    k BT  
2
2
m<Sの場合
真空準位
m
Efm
S
2
    qV  
  1
 A*T exp  nS exp
 k BT    k BT  
  qV  
  1
 I S exp
  k BT  
A*:リチャードソン定数
伝導帯下端EC
フェルミ準位EfS
価電子帯上端EV
金属
n型半導体
設問
オーム性接触
障壁は殆どないので、電子
は自由に行き来できる。
m<Sの場合
p型半導体におけるオーム性接触の条件と、接
触後のエネルギーバンド図を描きなさい。
伝導帯下端EC
フェルミ準位EfS
EfM
価電子帯上端EV
金属
n型半導体
設問:解答例
設問:解答例
m>Sの場合
m>Sの場合
真空準位
m
Efm
S
伝導帯下端EC
フェルミ準位EfS
価電子帯上端EV
金属
+
Al
p型半導体
p型半導体
高濃度ドーピングによるオーム性接触の実現
順方向
金属
高濃度ドーピングによるオーム性接触の実現
W
-
Al
2
(VD  V )
qN D
NDが多くて、Wが数nm以下になると
電子の波動関数
n+-Si
n-Si
Ef
不純物濃度(ND)が多いと、
オーム性になる。なぜか?
拡がり:数nm
トンネル電流により
電子は自由に行き来できる。
→オーム性
設問
次は、バイポーラトランジスタにつ
いて詳しく解析します。
1. p型半導体のショットキーダイオードにおいて、順方向とは、
金属と半導体にどのような向きで電圧を加えればよいか?
2. p型半導体と金属によるショットキーダイオードにおける、無
電圧、順電圧及び逆電圧のエネルギーバンド図を描きなさい。