免疫不全症候群 先天性免疫不全(原発性免疫不全) • 先天性免疫不全(原発性免疫不全) (1) 感染の重症 (2) なかなか完治しない (3) 感染症に罹り易い(易感染) (4) 健康な人では病気を起こさないような弱 い微生物にも感染する(日和見感染) • 後天性免疫不全(続発性免疫不全) 自己免疫疾患・悪性新生物・免疫抑制薬やステロイ ド剤の使用・好中球減少症・ウイルス感染に伴う免疫 抑制(HIV感染症)・老化現象・脾臓などの免疫担当臓 器の摘出など • 重症複合型免疫不全症 ○ 抗体(免疫グロブリン)量が減少し、T細胞(Tリ ンパ球)が存在しなくなる先天性の免疫不全疾患 ○ 重症複合型免疫不全症は免疫不全疾患のなか で一番重い病気 ○ いくつもの異なる遺伝子欠損により起こり、すべて 遺伝性 ○ T細胞がまったく存在しないので、B細胞は免疫グ ロブリンを産生できない • 治療⇒抗生物質・免疫グロブリン・造血幹細胞移植・ 酵素補充療法(アデノシンデアミナーゼ) 先天性免疫不全(原発性免疫不全) • 無ガンマグロブリン血症 ○ 体内で免疫グロブリンGが全く作られない 低ガンマグロブリン血症 ○ 少しだけ作られる ○ 高IgM症候群:クラススイッチ機構に欠陥があり、 IgMを産生できるが、IgG、IgA、IgEを産生できない ○ IgA欠損症:IgMやIgGは産生しうるが、IgAのみ産生 できない状態である(IgAへのクラススイッチの異常) ○ IgGサブクラス欠損症 • 原発性の無または低ガンマグロブリン血症では、胎 児のときに母から移行した抗体が少なくなる生後6ヵ月 過ぎから感染症に罹り易くなる • RNA型エンベロープウイルス • HIV-1とHIV-2に大別される • 逆転写酵素をもち、標的細胞(CD4陽性細胞)である ヘルパーT細胞やマクロファージ表面に発現して いるCD4レセプターとに結合して感染・侵入する 後天性免疫不全症候群 (acquired immunodeficiency syndrome, AIDS, エイズ) • ヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus:HIV)感染によって生じ、 適切な治療が施されないと重篤な全身性免疫不全 により日和見感染症や悪性腫瘍を引き起こす • 近年、治療薬の開発が飛躍的に進み、早期に服薬 治療を受ければ免疫力を落とすことなく、通常の生 活を送ることが可能となって来た 逆転写(reverse transcription) • ウイルスの逆転写酵素の働きによってウイルス一本 鎖RNAゲノムを鋳型にマイナス鎖DNAを合成する • 合成されたマイナス鎖DNAを鋳型にプラス鎖DNAが 合成され、二本鎖DNAに変換され、核内に導入される (核移行) • 二本鎖DNAは宿主細胞のDNAに組み込まれ、プロ ウイルスと呼ばれる状態になる • プロウイルスはウイルスRNAやメッセンジャーRNA を合成し、メッセンジャーRNAはウイルス蛋白を合 成させ、完成したウイルスは宿主細胞から発芽して いく 1 逆転写酵素をもつウイルス • Retro virus ○ ヒト免疫不全ウイルス (HIV) RNA→DNA ○ ヒトTリンパ好性ウイルス (HTLV) RNA→DNA • Hepadona virus ○ B型肝炎ウイルス(HBV) DNA→RNA→DNA 死亡 1~3年 数年~十数年 CD4陽性(ヘルパーT細胞数) 正常:500~1000/μL AIDSと診断:< 200/μL エイズ関連症候群(AIDS related complex:ARC):エイズ発 病前の症状で次のものがあり、そのうち2つ以上の症状が重な るとARCとします。但し、他の病気でも起こることがあり診断 は困難 • • • • • • • • 全身のリンパ節が腫れる 発熱、悪寒、寝汗 食欲不振 慢性の下痢 急激な体重減少、2ケ月で10%以上の減少 激しい頭痛をくり返す 疲労感、脱力感、倦怠感 異常な発疹、全身に数ミリ~10円玉大の赤~暗紫色の結 節 • 舌に白い斑点 • 貧血、白血球、血小板の減少 がん細胞の特徴 がん細胞 自己増殖 浸潤 転移 正常細胞 規則性のない無軌道な 必要以上に細胞が増 増殖 え続けないようにコント ロールされている 周囲との境界を侵して 通常の細胞はある程度 増殖する(胃がん:胃粘 成長すると分裂と移動 膜腺組織→深部(筋肉 を止めて、自分の置か 層)→筋肉層の血管や れた場所でそれぞれの リンパ管 役割をするようになる (分化) 血管新生(血管内皮細 胞増殖因子)→血流→ 転移 2 がん細胞を攻撃する自然免疫と獲得免疫 腫瘍細胞は接触による増殖抑制がなくなる 良性腫瘍と悪性腫瘍(がん、肉腫)の違い 腫瘍細胞の転移 腫瘍マーカー(Tumor marker)とは? 検査の方法と用い方 • 悪性腫瘍(がん)の増殖に伴って産生される物 質 • がんのスクリーニング(ふるいわけ)として行わ れる • 現状ではまだ理想的な検査とはいえず,腫瘍マー カーが陽性だからといって必ずがんがあるわけで はなく,反対に陰性でも完全にがんを否定できない (早期では正常のこともある) • がん以外の疾患でも増加することがある • 採取した血清にモノクロール抗体という試薬を加え ると,含まれている腫瘍マーカーと結びつくので,そ の量を測定する。尿や膣分泌液などを試料とするこ ともある • 確定診断は,超音波検査やX線CT、血管造影な どの画像診断、生検などを総合して判断する • 診断が確定したあと,がんの進行程度の判断や治 療後の経過観察,再発や転移の発見に用いられる 3 がん検診 • がんの場合,初期には症状の現れないことが 多い • 定期的に検診を受けて早期に発見し,治療する ○ 胃がん ○ 大腸がん ○ 乳がん ○ 子宮がん(「子宮頸がん」と「子宮体がん」) ○ 前立腺がん がん検診 • 胃がん(胃のエックス線検査:バリウム造影)(内視 鏡検査) • 肺がん(胸部エックス線検査)(喀痰細胞診) • 大腸がん(便潜血検査):痔や良性ポリープなどから の出血に対して反応してしまう • 乳がん(視診)(触診)(マンモグラフィー)(超音波検 査) • 子宮頸がん(頚部細胞診) 糞便検査(Feces, Stool) • 便中の血液(潜血:2日法) 上部消化管出血(胃潰瘍,十二指腸潰瘍) 下部消化管出血(大腸癌) • 潜血検査 低感度法(グアヤック法): Hbのペルオキシダー様作用 高感度法(フェノールフタレイン法やオルトトリジン法) Hbのペルオキシダー様作用:これら化学法は潜血食を 必要とする。 ↓ 現在は 免疫法(オルトトリジン法と同感度) ○ 食事の影響を受けない(ヒトHbAに特異的) ○ 上部消化管出血では偽陰性となる ○ HbFとは反応しない ○ 便の室温保存は不安定(冷蔵庫⇒トランスフェリンは安 定):2日法では冷蔵庫保存 ○ 免疫法はイムノクロマト法を原理とする 腫瘍マーカーの分類 腫瘍マーカーの種類 • 癌胎児性抗原: 胎児で産生されるが,出生により 産生が止まる蛋白質。癌細胞では産生される • 糖蛋白質: 癌細胞が産生する糖蛋白質(糖鎖が正 常細胞と異なる) • 臓器産生抗原: 癌細胞が産生する蛋白質 • 酵素(アイソザイム): 癌細胞が産生するアイソ ザイム • ホルモン: 癌細胞が産生するホルモン • 抗体 • 癌遺伝子,癌抑制遺伝子 • 癌胎児性抗原: α-フェトプロテイン,CEA • 糖蛋白質: CA 15-3,CA 19-9,CA 125,シアリル Lex抗原,DUPAN-2,CYFRA • 臓器産生抗原: PIVKA-II,PSA,フェリチン • 酵素(アイソザイム): 胎盤性ALP,NSE,前立 腺酸性ホスファターゼ • ホルモン: HCG,VMA,カルシトニン • 抗体(p53抗体):食道がん、大腸がん、乳がんの 診断の補助 • 癌遺伝子,癌抑制遺伝子 4 腫瘍マーカーの測定法 • 癌胎児性抗原: α-フェトプロテイン(CLIA),CEA (CLIA) • 糖蛋白質: CA 15-3(CLIA) ,CA 19-9 (CLIA) ,CA 125 (CLIA) ,シアリルLex抗原(IRMA:放射免疫測定 法) ,DUPAN-2 (EIA) ,CYFRA (ECLIA) • 臓器産生抗原: PIVKA-II (ECLIA) ,PSA (CLEIA) , フェリチン (CLEIA) • 酵素(アイソザイム): 胎盤性ALP (電気泳動法) , NSE (RIA) ,前立腺酸性ホスファターゼ(EIA) • ホルモン: HCG (CLEIA) ,VMA (HPLC),カルシトニ ン(RIA) • 抗体(p53抗体): (ELISA) • 癌遺伝子,癌抑制遺伝子 腫瘍マーカー:糖蛋白質(糖鎖抗原) CA 15-3 乳癌 CA 19-9 膵癌 CA 125 卵巣癌 シアリルLex抗原(SLX) 肺癌(肺腺癌) DUPAN-2 膵癌 CYFRA(シフラ) 肺癌(肺扁平上皮癌) 腫瘍マーカー:酵素(アイソザイム) 胎盤性ALP(PALP-like) 悪性腫瘍(精巣) NSE(神経特異的エノラーゼ) 神経芽細胞腫瘍 ○ 解糖系酵素であるエノ ラーゼのアイソザイム 前立腺酸性ホスファターゼ 前立腺癌 ○ 酸性ホスファターゼのアイ ソザイム 腫瘍マーカー:癌胎児性抗原 α-フェトプロテイン (AFP ) ○ 胎児では肝臓で産生 される。 肝細胞癌(原発性) CEA (癌胎児性抗原) 肝細胞癌(転移性),大腸 癌,膵癌,胃癌 腫瘍マーカー:臓器産生抗原 • PIVKA-II: 肝臓細胞癌 ○ 肝細胞癌での過剰産生の機序は,ビタミンK欠乏 よりも,自己増殖的に細胞分裂を促進し癌細胞を増 殖させる。 • PSA(前立腺特異抗原): 前立腺癌 ○ 前立腺上皮細胞で産生される蛋白質 ○ 総PSA=α1-アンチキモトリプシン結合(PSAACT)+α2-マクログロブリン結合(抗体と反応しな い)+遊離(フリー)PSA(≈γ-セミノプロテイン) ○ F/T比%(悪性で低下する) • フェリチン: 骨髄性白血病 腫瘍マーカー:ホルモン HCG(ヒト絨毛性ゴナド トロピン) βーHCG 卵巣癌,絨毛癌,精巣癌 VMA(バニルマンデリン 酸) 褐色細胞腫 カルシトニン 甲状腺髄様癌 5 ヒト絨毛性ゴナドトロピン:HCG (Human Chorionic Gonadotropin) バニリルマンデル酸 (Vanillyl Mandelic Acid:VMA) • 胎盤から分泌される性腺刺激ホルモンである • α鎖とβ鎖(特異的)からなる • 妊娠4週から検出され,出産まで尿中に排泄され る(検出感度:50 mIU/mL) • 腫瘍マーカー(卵巣癌)としても用いられる( ⇒βHCG産生腫瘍:血清・尿を試料とする) • 尿(早朝尿)を試料とする。イムノクロマト法で測定さ れる(OTC試薬) • 副腎髄質ホルモン(カテコールアミン,アドレ ナリン,ノルアドレナリン)の代謝産物である。 • 褐色細胞腫,神経芽細胞腫で尿中に排出さ れる。 • 測定法:HPLC法 ○ 蓄尿は6N塩酸による酸性蓄尿 ○ バニリンを多く含む食品を避ける ROC曲線 (感度,特異度, 偽陽性率を 知ることができる) カットオフ値 基準値 カットオフ値 腫瘍マーカー 感染症の検査 疾病群 Bence Jones蛋白 • 骨髄腫,骨肉腫,リンパ性白血病,原発性マクログロ ブリン血症 • 免疫グロブリンのL鎖(MW: 25,000)のダイマー • 特異的熱凝固蛋白(Putnumパットナム法) • 56℃で混濁・凝固,100℃で溶解 • 骨髄の中には形質細胞という細胞があり、免疫グロブリン と呼ばれる蛋白を作っています。この蛋白は細菌、ウイル スなど体内に侵入してきた異物を攻撃します。多発性骨髄 腫とは、1つの形質細胞が必要ないにもかかわらず、どん どんと増殖する病気です。そして増殖する形質細胞(骨髄 腫細胞)から産生される免疫グロブリンをM蛋白と呼びま す。 多発性骨髄腫 • monoclonal γ • M-protein(M蛋白血症):他のグロブリンの 生成は抑制される • 抗体として機能しない • 血清総蛋白(TP)濃度は増加する(ベンス・ジョン ズ型では増加しない) • ZTT 高値(硫酸亜鉛):TTT 低値(チモール)と乖 離する • 日本での頻度:IgG型(59.1%),IgA型(21.8%),IgM 型(0.2%),IgD型(3.5%),BJ型(軽鎖のみ産生,他 のグロブリンは全て減少:13.1%) 6 4 4 細胞が、がん細胞に変わる条件 • がん細胞の成立には ○ がん遺伝子の活性化 ○ がん抑制遺伝子の不活性化 がん遺伝子の活性化 • がんウイルスの感染によるがん遺伝子の移入 • 発ガン物質,紫外線による細胞内遺伝子(原がん 遺伝子)の変異 7 がんウイルス 腫瘍ウイルス(がんウイルス)の種類 発がん物質 前がん遺伝子が ○ 欠失または点変異 ○ 増幅(何個も複製さ 増幅(何個も複製さ れ多量の遺伝子産物 ) 多量の遺伝子産物) がん前遺伝子 (プロトオンコジーン) 胃がん ピロリ菌 肝臓がん B,C型肝炎ウイルス 子宮癌、その他の性器癌 パピローマウイルス(HPV) 紫外線 がん抑制遺伝子 がん遺伝子 (オンコジーン) がん抑制遺伝子 がん遺伝子,がん抑制遺伝子 • がん遺伝子(オンコジーン): 活性化されると癌を 誘導する。 • がん抑制遺伝子(トゥモールサプレッサージー ン): 相同染色体の両者が損傷すると癌を抑制で きなくなる • がん前遺伝子(プロトオンコジーン) 00回臨検国家試験(午 83) 悪性リンパ腫 EBウイルス 成人T細胞白血病 ATLウイルス カボジ肉腫 ヘルペス8型 がん遺伝子 がん抑制遺伝子 K-Ras(膵癌・大腸癌) p53(白血病・肉腫・そ の他多数) N-Ras(急性白血病) c-Myc(胃癌・肺癌・メ Rb(網膜芽細胞腫瘍) ラノーマ) n-Myc(消化管間質肉腫 (GIST)・白血病) EGFR(肺癌) HER2(乳癌) c-Kit (消化管間質肉腫 (GIST)・白血病) 56回臨検国家試験(午後15) 5 5 8 56回臨検国家試験(午後80) 59回臨検国家試験(午前46) 25 23 SCC:子宮頸癌(扁平上皮癌) 58回臨検国家試験(午前83) 57回臨検国家試験(午前82) 14 5 57回臨検国家試験(午後82) 55回臨検国家試験(午前80) 14 1 9 55回臨検国家試験(午後52) 54回臨検国家試験(午前82) 4 4 10
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