大幅に拡大する2014年のインバウンド数

マーケットウィークリー・809号
産業ニュース
2014.12.19
スマホ、車載用途の拡大が見込める電子部品
作成者:兵藤三郎
与党圧勝、アベノ
ミクス効果でデフ
レ脱却に期待
消費増税後の国内消費回復に遅れが見られ、一部の新興国の経済成長鈍化が懸
念される。しかし、15.3期・第2四半期(4-9月、以下上期)の決算は、製造業中
心に会社計画を上回る好決算が多く、マーケットにはポジティブであった模様。
12月14日に行われた衆議院総選挙においても与党勢力が圧勝、有権者にはアベノ
ミクス効果によるデフレ脱却に対する期待感があったと推察される。今回の産業
テーマでは、電機業界のトップピックサブセクターとして電子部品業界を深堀し
た。同業界は世界のトレンドや日本の立ち位置でも注目できる業界と考える。
高い国際競争力で
円安メリットが歩
留まる電子部品
電機業界はじめ、機械や自動車業界など輸出型の産業では現在の円安局面はプ
ラス材料。しかし、かつての超円高局面では人件費等の固定費圧縮策も兼ね生産
拠点の海外移転を推進、足元では原材料や海外新興国等の人件費などの高騰によ
り、国内企業が享受する円安メリットには物足らなさが残る。新興国等の台頭に
伴う競争環境の激化も要因の一つとなろう。その中で、電子部品は依然高い国際
競争力を保持していると考えられ、比較的円安メリットが大きい業界と位置づけ
られよう。12月12日に発表された鉱工業生産指数でも足元の電子部品・デバイス
工業等の高い伸び率が示された。
◇主な電子部品メーカの主要製品など
銘柄名
コード コメント
イビデン
4062
FC-PKG MPU向け高シェア、PCB、(DPF)
ミネベア
6479
(ボールベアリング)、LEDバックライト トップシェア
マブチ
6592
小型モータ ミラー、ドアロック等 車載向けが7割
日電産
6594
精密小型モータ首位 車載向け注力中 (液晶搬送装置)
第一精工
6640
コネクタ、車載用センサ等 新規にトルクセンサを開発
TDK
6762
HDD用ヘッド MLCC、フェライト、2次電池等
ミツミ
6767
アクチュエーター、カメラモジュール等
アルプス
6770
カメラモジュール、スイッチ等 車載向け60%超
ホシデン
6804
機構部品、アミューズメント向けに強み
ヒロセ電
6806
コネクタ 携帯向けではトップシェア
航空電子
6807
コネクタ ジャイロセンサー等 (油田掘削装置)
ローム
6963
トランジスタ、ダイオード、SiC半導体
新光電
6967
FC-PKG リードフレーム
京セラ
6971
セラミックPKG (太陽電池、コピー機)
太陽誘電
6976
MLCC、SAWフィルタ、インダクタ等
村田製
6981
電子部品最大手 MLCC等
日ケミコン
6997
アルミ電解コンデンサ等 (アルミ箔)
KOA
6999
抵抗器
(出所)各種資料よりCAM作成 (注)コメント欄のカッコ内は電子部品以外の事業
環境対策としても
省電力電子部品の
需要は高い
エネルギー価格の高騰や地球温暖化対策の一環として、増加し続ける電気機器
が消費する電力量を軽減させる省電力化への需要は高い。国内有力電子部品メー
カーには、その要求に応えられる技術を持つ企業が多いことが、高い競争力を保
持している背景であろう。某小型モータを製造する企業のオーナーはある対談で、
マーケットウィークリー・809号
2014.12.19
「世の中の全てのモータが当社技術を持つブラシレスモータに置き換わったら、
北京の空は晴れる」と会場を笑わせた。電力の約半分をモータが消費する現状を
踏まえてのアピールであろう。
トップラインの成
長ではスマホ、車
載向けがけん引
その他、トップラインの成長としてはスマホ向けや車載用途の拡大がけん引し
よう。スマホでは最先端製品の需要は一巡した模様だが、ミドル・ローエンドの
スマホにも薄型・小型、高機能化の要求が高まり高機能搭載部品の需要は旺盛。
自動車の電装化もようやく始まったばかり、足元の運転アシスト機能などを考え
れば今後の成長余地は大きいと考える。アイドリングストップの浸透は、従来エ
ンジンに連結していた電源を、独立させる必要が生じる。今後はモータ、コネク
タ、電源等の需要拡大が予想される。
IOT社会到来
で、当面電子部品
需要の拡大が続く
依然、スマホ等の補足品、入力デバイス的な存在でしかないが、浸透が始まっ
たウェアラブル端末や、将来は全ての物や情報がインターネットにつながり利便
性や快適性が向上するIOT(internet of things)社会が到来するとの予想も
あり、電子部品需要の拡大は当面続こう。IOTでは、センサ、通信モジュール
等が注目される電子デバイスであろう。足元では、PC需要に下げ止まり感が出
始めたことも同業界に対しては安心材料となった。
新たなM&A発表
で中期的な成長を
印象付けた日電産
15.3期業績は、上期等の進捗状況を勘案し、TDK(6762)、アルプス電(6770)、
ローム(6963)、村田製(6981)などが通期計画を上方修正した。何れもスマホ、
車載用途は足元でも堅調に推移していることが伺える決算であった。予想据置が
一時ネガティブに伝わった日電産(6594)は説明会で懸念を払拭、12月12日には、
新たにドイツの自動車部品メーカーの買収を発表し、車載事業による中期的な成
長を印象付けた。HDD用精密小型モータの需要も堅調、減価償却費等の固定費
も削減され、キャッシュカウ事業となり業績をけん引している。
銘柄格差も拡大、
選定は事業環境等
の考慮も必要
一方、同セクター内では銘柄間格差も拡大している。主因は、主要顧客動向、
特にスマホ関連ではサムスンの苦戦が目立ち、イビデン(4062)、ヒロセ電(6806)
等が影響を受けている模様。その他、PC向けやゲーム機器向けの需要減では新
光電(6967)、ホシデン(6804)等の経営環境が厳しく、業績予想を下方修正し
た。銘柄選定には主要製品での事業環境等の考慮が必要。特に為替要因では、多
くの企業が為替感応度を公表しているが、原材料の仕入れ、製造拠点、競争環境
等による値下げ圧力で想定通りにメリットを享受できないケースもある。
◇主な車載電装化関連の電子部品
関連テーマ
技術等
関連部品等
燃費向上
HEV・EV等、ヘッドライト
モータ、2次電池、キャパシタ、LED、各種センサ
安全性向上
ADAS、自動ブレーキ等
カメラ、レーザー、通信モジュール、ECU
テレマティックス
カーナビ、PND
通信モジュール、CPU
◇主な電機大手注目企業の株価とコメント
銘柄
コード
株価
PER
(単位:円、倍)
コメント
マブチ
6592
9,710
29.7
小型モータ大手、車載向けが7割程度を占める
日電産
6594
7,912
33.3
車載向けの収益貢献始まる、HDD用も安定的利益確保へ
TDK
6762
7,440
26.1
HDDヘッドの収益安定、2次電池等拡大、通期予想上方修正
アルプス電
6770
2,268
16.8
携帯向け電子部品(カメラモジュール等)伸長、車載にも強み
村田製
6981
12,705
23.1
電機部品最大手、高い技術力で顧客ニーズを獲得
(出所)各種資料に基づきCAM作成 (注)株価は12月15日終値、PERは今期予想