京野菜

田中
信行
日置
結香子
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小野田
美香
<目次>
‣ はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・P3
‣ そもそも京野菜とは・・・・・・・・・・・・P3
‣ 京野菜と京料理・・・・・・・・・・・・・・P5
‣ 野菜の振り売り・・・・・・・・・・・・・・P6
‣ 京都の土地と京野菜・・・・・・・・・・・・P7
‣ 九条ネギについて・・・・・・・・・・・・・P8
‣ 九条ネギの歴史・・・・・・・・・・・・・・P9
‣ おすすめレシピ・・・・・・・・・・・・・・P10
‣ フィールドワーク・・・・・・・・・・・・・P11
‣ 九条ネギのお宝性・・・・・・・・・・・・・P15
‣ 感想・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P16
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<はじめに>
私たちの班は京野菜の中でも、
「九条ネギ」について調べることにした。それ
おは、京野菜全般を扱うには種類が多すぎるのと、京野菜の中で、九条ネギは
多くの人々に名前が知られているからである。京野菜の定義を確認したうえで、
九条ネギについて調べ、そこから九条ネギのお宝性を追求していく。
<そもそも京野菜とは>
九条ネギについて触れる前に、九条ネギをはじめたとした「京野菜」につい
て、きちんと整理しておこうと思う。
京野菜とは京都で栽培される伝統野菜のことを指し、絶滅したものも含めて
全部で 37 種の野菜がある。また平成元年からは行政・農林水産業団体・流通業
界が一体となって、京都の「ブランド認証事業」を行っている。ブランド産品
は野菜に限らず水産物までも含む。ブランド認証された産品については「京マ
ーク」のシールが張られ、その証明がされている。詳細については以下の通り
である。
京都府では、平成元年度から品質的に優れた府内産農産物を市場や消費者にPRし高
付加価値化するとともに、消費者に本物の京野菜を提供するため、府内産農産物のブラ
ンド化に取り組んでいます。
近年、他県産京野菜の生産拡大が進む中、ブランド京野菜等を京都府農業の牽引役と
するため、平成14年12月「ブランド京野菜等倍増戦略」(以下「第1次プラン」と
いう。)を策定し、この第1次プランに基づき他県産京野菜との違いの明確化や京野菜
の信頼性の向上、ブランドイメージの浸透、「京マーク」の知名度向上等を重点課題と
して計画的に施策を推進してきました。
(京都府ホームページより)
●京の伝統野菜、ブランド指定産品の分類と具体的な産品名
□京の伝統野菜(37 種)
絶滅したもの
郡だいこん・東寺かぶ
現存するもの
辛味だいこん・青味だいこん・時無だいこん・桃山だいこん・茎だいこん
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佐波賀だいこん・松ヶ崎浮菜かぶ・佐波賀かぶ・大内かぶ・舞鶴かぶ・すぐき菜
鷲菜・畑菜・もぎなす・田中とうがらし・桂うり・京うど・柊野ささげ・京みょうが・
京せり・じゅんさい・聖護院きゅうり
□ブランド指定されているもの(13 種)
聖護院だいこん・聖護院かぶ・みず菜・壬生菜・九条ねぎ・賀茂なす・京山科なす
鹿ケ谷かぼちゃ・えびいも・堀川ごぼう・くわい・京たけのこ・伏見とうがらし
□京の伝統野菜に準じるもの(3 種)
現存するもの
鷹ヶ峰とうがらし
ブランド指定されているもの
万願寺とうがらし・花菜
□伝統野菜以外でブランド指定されているもの(8 種)
京こかぶ・金時にんじん・やまのいも・紫ずきん・丹波くり・京だんご梨・黒大豆
小豆
□水産物でブランド指定されているもの(1 種)丹後とり貝
●京都府の農林水産物における京野菜(京の伝統野菜)とブランド産品の関係図
京の伝統野菜
伝統野菜に
準じるもの
絶滅したもの
現存するもの
ブランド指定
伝統野菜以外のブランド指定
水産物のブランド指定
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京のブランド産品の条件
明治以前に導入された歴史がある
農林水産物全般が対象
府内全域が対象
高規格のブランド認証基準(※)
たけのこを含む
市場流通する生産量
キノコ、シダは除く
加工向け産品は除く(消費者の目に触れ
る)
絶滅した品目も含む
有識者の審査会をパスしている
※認証基準
(1)イメージが京都らしい
(2)(1)以外のもので販売拡大を図る必要がある
(3)次の要件を備えている
・
出荷単位としての適正な量を確保
・
品質・規格を統一
・
他産地に対する優位性・独自性の要素がある
(「さいさい京野菜倶楽部」(社)京のふるさと産品協会ホームページより)
<京野菜と京料理>
京野菜が千年以上も長い間受け継がれてきた背景には、京料理の発展が大き
く関係していると考えた。そこでここでは「京料理」とは何なのかについて調
べてみた。
京料理
高級料亭で出される料理!!なのか?????
京料理とは
京料理のルーツをたどるには 1200 年前の平安京にまでさかのぼる。京の都に
は天皇をはじめ、多くの公家や殿上人が集まる。その中で生まれた料理が京料
理の原点と言われている。
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以下が主な京料理。
○有職料理・・・宮中で生まれた儀式に則った料理。
○精進料理・・・寺社の商事である、獣肉・魚介を全く使わない料理。
○懐石料理・・・一汁三菜を基本とし、茶を出す前に出された料理。
京都は周りに海がなかったため、これらの料理は野菜中心であり、京都人のタンパク
源は、大豆から作る豆腐や油揚げ、高野豆腐であった。
しかし!!!
これら以外にも京料理と呼ぶべきものがあるのでは?
「京のおばんざい」
(日常のおかず)も庶民の間で受け継がれて
きた京料理なのである!
<野菜の振り売り>
頭に手ぬぐいをかぶり、手にはこてをつけ、白足袋をつけ、わらじをはいた
農家の主婦達が京野菜をかごに入れ、大八車で野菜を売りに来る。これが野菜
の振り売りである。京都北部の賀茂、などで見かけることができる。
振り売りは千年以上前の平安時代のころから続いているといわれている。そ
して、さらに振り売りをしている主婦達が売っている京野菜のそれぞれに適し
た料理法や、出合いもんも母から娘へと引き継がれているのだ。
出合いもんとは、味のとりあわせのよいもの同士のことである。
例えば、
→身欠きにんじんとナス
→里芋と棒だら
→筍とワカメ
→油揚げと水菜
など。
残念ながら九条ネギの出合いもんは、ないようでした・・・・。
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↑振り売りはこのように、かごに野菜を入れて売っている。
<京都の土地と京野菜>
三山三川の水と土がポイント
三山
北山・東山・西山
三川
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桂川・加茂川・宇治川
☆周りを山で囲われている
→夏は暑く、冬は寒さが厳しい盆地特有の気候に。しかし、積雪は少なく作物を育
てるのに適している。
☆三つの川が流れている
→北から南にかけ緩やかに傾斜しているため、川から流された土が京都の地で堆積
することにより、質のよい土壌に。
京の都だからこその利点
京都は千年以上前から都であり、中世末期にはおよそ数十万人、江戸時代には
四十万人もの人々が居住していた。人々から排出された人糞尿や塵芥は周辺の
農家に運ばれ利用されていたが、今でもその一部が残存し、長い間蓄積され肥
沃な土壌となった。
<九条ネギについて>
みなさんは九条ネギを見たことがありますか??
☆どちらが九条ネギでしょう☆
左です!!
正解は、、、、、、
九条ネギとは長くてやわらかく、風味のある青ネギ。内部にぬめりがあるの
が特徴で、このぬめりが、魚の生臭さを消したり、身体を温める働きがある。
青々とした葉の部分にはカロチンやビタミン B1、B2、C を含み、刺激成分の
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硫化アリルと B1 が結合し吸収を助け、消化を促進する。
左が九条ネギで右が普通の白ネギ。
比べると、九条ネギが長くて大きいのがわかる。
ちなみに、
九条ネギ➭128円
白ネギ➭98円
<九条ネギの歴史>
平安前期の「続・日本後紀」には九条村(現・京都市南区九条)で「水葱」を
栽培したと記録がありまた、伝承によると、弘法大師(空海)が昔、東寺(教王護
国寺)の近くで大蛇に追われて逃げ場を失い、葱畑に隠れて難を逃れたことがあ
り東寺の五重塔の上には、葱坊主(葱の花のつぼみ)がつけられたとも言われて
いる。
洛南一帯は低湿地で養分豊かな土壌が条件に適した上に、熱心な農家によっ
て作りこまれ、改良されたことから九条葱の名が生まれたとされている。九条
通り周辺でも地区によって各々の特徴のネギを生産していた。その後、その地
域の種が各地に散らばり、現在では京都北部から南部まで、多くの地域で作ら
れている。
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<おすすめレシピ>
☆九条ネギと油揚げの煮物
●材料
・九条ネギ
・油揚げ
・だし汁
二束
一切れ
1カップ
○感想
10分もあればすぐにできるくらい簡
単!!ネギのシャキシャキ感がたっぷ
り味わえる。
☆九条ネギの親子丼
●材料
・鶏肉
二切れ
・玉ねぎ
1/2 玉
・卵
2玉
・九条ネギ 2束
・かざり九条ネギ 適量
○感想
なるべく九条ネギは大きめに切
って、たくさん入れるのがおすすめ。
上に生の九条ネギを散らすことで
さらにネギの食感を楽しめる。
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<フィールドワーク>in MAHALO
私たちは九条ねぎにこだわったハンバーガーを作られているお店でお話を伺い
ました。
MAHALOとは?
九条ネギを使ったハンバーガーショップ。
こだわりのバーガーは九条ねぎの他に丹波牛
やツバメソースなど京都の食材を存分に
活かしたものとなっている。まさに京都の
おいしさがぎゅっと詰まった一品!
アクセス:京都市南区吉祥院中河原西屋敷町 8-1
営業時間:11:00 ~20:00
(水曜日・木曜日は定休日)
HP: http://www.mahalo0086.com/
☆インタビューに応じていただいた方々☆
お店の方と二人の農家の方に、取材に協力していただきました。
MAHALO 店長:井藤さん
農家1:安田さん
農家2:富永さん
・なぜ京都の食材にこだわったハンバーガーを作られたのですか。(井藤さん)
やっぱり人と同じものではだめ、コンセプトが大切です。
実家は九条ネギの農家をしているんですよ。
全国うまいもの大会などにも出場していますよ。
・この辺りではやはり九条ねぎの栽培が盛んですか。(伊藤さん、安田さん)
九条周辺ではねぎを栽培している農家が非常に多く、三代以上続く農家が多いです。
農家にはそれぞれ「その家の種」があり、それを代々受け継ぎながら栽培しています。
これが九条ネギの元になっていて、その種を欲しがる人もいるんですよ。
ここら辺のねぎは「吉祥院産の九条ネギ」とされていて最高級の九条ネギなんです。
良いものなら一束千円くらいするものもあるんですよ。これは市場には出回らず、高
級料亭などに出荷されていて。スーパーなどで見かける九条ねぎとは違うんです。
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・苦労されていることは何ですか。(安田さん)
栽培がやはり大変ですね。一人で種まきから出荷までを行うという「育てる」ことに
関わる苦労が多いです。特に九条ネギは植え替えを行っての栽培のため、単なるネギ
を作るよりも時間も手間もかかるんです。冬場であっても井戸水で洗い、昔は丸一日
水につかった状態で行われていたんですよ。
・九条ネギはなぜおいしいのでしょうか。(井藤さん、安田さん、富永さん)
九条ネギの旬は冬場です。大体 10 月~3 月までの間が食べごろ。九条ネギには独特
の風味と甘味があり、冬場の九条ネギはぬめり感が違います。1200 年前からの伝統
的な野菜で歴史もありますし。
昔桂川の氾濫によって川の栄養が周辺の土に届き、桂川沿いの土には栄養があったこ
とから良いネギが育つ環境ができたということもあるのかも知れません。
京都の冬の寒さは厳しく、九条ネギはその冬に雪を突き破って出てくるくらいの力を
持っています。その力がおいしさの秘訣にもなっているんじゃないかな。
・九条ネギのおいしい食べ方を教えていただけますか。
普段お家ではどんな風に食べられていますか。
(井藤さん、安田さん)
一番美味しい食べ方はすき焼きですね。肉にも劣らない存在感でおいしいです。
普段は味噌汁などにも入れるし…何にでも入れて食べていますよ!
・夏のネギと冬のネギの栽培方法は違うのですか。(安田さん、富永さん)
夏のネギは一発でつくります。病気に負けない品種をと品種改良されたものもありま
す。
冬のネギは一度切ってから再び植えます。一度目に生えるねぎは細く、太い良いねぎ
をつくるための工夫なんです。
・やりがいは何ですか。(富永さん)
作りにくい時にきれいなネギができた時はやはりやりがいを感じます。青い部分が割
れず、良い黒さをしているネギが良いねぎなんですよ。
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☆富永さんに栽培の作業場を見せていただきました。
作業場の様子(ネギを井戸水で洗う工程)
井戸水で洗われた九条ネギ
「一日を朝から丸まる使ってね
ぎを洗います。
水道水ではネギにとって良く
ないので、くみ上げた井戸水を使
っています。
」
九条ネギの種
「これが九条ネギの種です。
ここから九条ネギができるん
ですよ。」
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●MAHALO バーガー
注文してから目の前で作って下さるバーガーは京都の恵みがたくさん詰まった一品。
パテから全てオーダー後に作って下さるので、見ているだけでもわくわく。
焼きあがった丹波牛の大きなパテに、主役とも言うべき九条ネギがたっぷりとのせられ
ます。この九条ねぎには MAHALO さんの工夫があり、火を通したものと生のものをミッ
クスして使われているそう。そうすることで九条ネギの持つ甘みを引き出し、しゃきっ
とした歯ごたえも味わえるようになるのだそう。
ご夫婦の共同作業から、京都らしく
おいしいバーガーが生まれます。
MAHALO バーガーの
できあがり!
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MAHALOバーガーを食べての感想
ボリューム満点のバーガーをほおばるとパテの肉汁がじゅわっと広がり、九条ねぎの風味
と甘さがソースと絡みながらお肉の美味しさを一層引き立てます。店長さんのおっしゃる
通り、ここでは九条ネギの強い甘みと水みずしい歯ごたえが同時に楽しめました。夏を迎
えたトマトの風味もバーガー全体にちょうど良く合い、一口で京都らしさを存分に感じら
れるハンバーガーでした。取材途中であるにも関わらず、そのおいしさに一時全員無言に
なりながら完食しました。
<九条ネギのお宝性>
私たちはこれまで、京野菜について調べ、京料理との関わりについて知り、
そこから九条ネギにスポットを当て、それについて調べてきた。そこから導き
出した、九条ネギのお宝性は、「受け継がれている」ということだ。
○京都の独特の地形・土壌により九条ネギが生まれた。このネギは、精進料理、
懐石料理などで現在も食べられていると同時に、おばんざいとして庶民の間で
も受け継がれてきた。
○九条ネギの生産農家にはその家の「種」が代々受け継がれている。
「種」が違
うことでその家の九条ネギも少しずつ変わってくる。生産者達は自分の家の
「種」から少しでもいいものが作れるよう日々努力している。生産者にとって
「種」とは誇りであり、宝なのだ。
<感想>
私たちの班は、このルポを作り始めたとき、「京野菜」について調べることにしていた。
しかし、各自が分担されたところを詳しく調べていくうちに、さまざまな問題点な困難な
点にぶつかってしまった。
まず、京野菜の定義の難しさである。さまざまな文献なインターネットをあたり、京野
菜にはどのような野菜が含まれているのかを調べたが、すでに絶滅したものもあったり、
魚介類も入っていたり、そもそも私たちが想像していた以上に数が多く、それらを正しく
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分類し、把握するだけでもかなり大変なことになってしまった。また、京野菜の定義はい
わば現在進行中であり、立場があやふやな野菜も数種あり、また誰が野菜を京野菜と決め
ているのかという根本的な部分がわからなくなり、ますます混乱してしまった。
そこで私たちは第一回検討会で出た意見を参考にし、テーマを「京野菜」から「九条ネ
ギ」にしぼることにした。こうすることによって、数が多すぎて何からどうすればよいの
かはっきりと見えてこなかったものが、かなり見えやすくなり、作業がしやすい状態にす
ることができた。
しかし、ここから問題となってきたのが時間がないということであった。普段ほとんど
同じ授業をとることのない人と同じものを作成するには絶対に空き時間に集まって話し合
いをしなければならないが、なかなかその時間が見つけられず、かなり苦労した。
インタビューに行く時間もほとんどなく、本当はもっとたくさんの生産者や料亭などに
も行きたかったのだが、それはすることができなかった。しかし、MAHARO バーガーにイン
タビューに行ったとき、たまたま生産者の方を紹介してもらい、お話をうかがうことがで
きた。これは、時間がなくいいルポにできるか不安であった私たちにとって、涙が出るく
らいの救いの一声であった。
私はこのルポを作成し、もちろん今まで知らなかった、九条ネギ、京野菜、京料理など
多くの京都ならではのことについて深く知ることができた。そして、それだけではなく、
このルポをきっかけとし、今まで出会うことのなかった人々にも出会うことができた。私
はこのことが非常にうれしく感じる。もしあと少しでも時間があればなと思う気持ちもあ
るが、今できるだけのいいルポにすることができたと思っている。この授業でこの体験を
することができ本当によかった。
(小野田
美香)
今回京野菜の調査からスタートし、京野菜の中でも代表的な九条ネギについて調べてい
った。私は京都出身で他の班員よりも京都や京野菜については知っているつもりだったが、
実際口にしたり見聞きしたりした経験はあるものの、その詳細については十分にわかって
いなかったのだと気づいた。生活の一部になっている分、京都の人間ほど京都を知らない
部分もあるのかも知れない。フィールドワークでは京都のご当地バーガーとも言うべきハ
ンバーガーのお店に行った。MAHALO の井藤御夫妻には急な取材のお願いであったにも関わ
らず快く迎えていただき、農家の方のお話を聞ける機会まで作っていただいた。またお仕
事中にも協力していただいた安田さん、富永さんにもお世話になり、この場を借りて皆さ
んにお礼を申し上げたい。ご協力いただき本当にありがとうございました。これまでどち
らかと言えば普段脇役の印象が強かったネギだが、そうしたイメージを覆す魅力や存在感
が九条ネギにはあったのだと知った。実際に九条ネギが手間暇をかけて大切に育てられて
いる所を拝見させていただきお話を聞く中で、作り手の想いを感じる事ができた。現代で
は効率や合理性ばかりが追求され、そうでないものを探す方が困難になっているように思
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う。そんな中で伝統的な作り方を守りながら栽培されている農家の方から情熱と愛情を感
じた。時代が変わっても受け継ぐ人の想いが途切れずにあるからこそ、1200 年という長い
時を経ても九条ネギが存在し続けているのだろう。取材を行った際「ある年にとても良い
ものができたとしても、同じものを植えて次の年に同じものができるとは限らない。1年
1年が勝負。
」と富永さんはおっしゃっていた。簡略化や合理化による大量生産を行うので
はなく、一つ一つを大切に育てる姿勢や「その家の種」が家宝のように守られている事が、
脇役ではなくきちんとおいしいと感じられる九条ネギを作り出しているのだと思う。九条
ネギが人々に愛される存在であり続ける事で絶えずに購入され続け、それにも支えられて
作られ続ける。様々な人の想いがあるからこそ、今おいしい九条ネギを口にする事ができ
るのだと実感した。そしてそれをもっともっと感謝しなければならないと思った。ルポル
タージュの作成にあたり上手く進まない時も少なからずあったが、「知る・学ぶ」という事
は、足を運び目で見てよく聞く中で実現できるものなのだと感じた。それは今回のインタ
ビューなどの活動を通して、文献や web 上では絶対に気づけない事にたくさん出会えたか
らである。取材に応じて下さった方々との出会い自体も、自分にとっての大きな学びとな
った。九条ネギについての知識だけでなく、この活動を経験して得られたものは非常に大
きかったと思う。そうして得られたものを、これからに活かしていきたいと考える。
(日置
結香子)
京野菜が近年取り上げられていたがその理由があまり分からなかった。しかし、調べて
いくうちに、いろいろな団体が京野菜を有名にするために動いていることがわかった。ブ
ランド化し、ある基準をクリアしたものを京野菜として認定することで京都の生産物の価
値を上げられている。このような活動が全国に広まれば、各地域の有名産物がよりはっき
りし、競争もより激しくなり消費者により良い品物が届けられるのではないだろうかと思
う。九条ネギが有名であるということは知っていたが、値段が高く他のネギと品質的にも
違いはないだろうと思っていた。しかし、今回農家の方々の話を聞きルポを作り上げてい
く中で他のネギと九条ネギの違い、九条ネギの中での違い、またそこから見えてきたお宝
性が少しは理解できたと思う。手間のかかる製法をあえて行うことでより良いものを作り
たい、他の農家のものよりも少しでも状態のいいネギを出荷したい。この農家の方々の気
持ちこそお宝なのではないかと感じた。職人の自分の仕事に対するプライド・意地が絶滅
する京野菜がある中で、九条ネギを維持しているのだと感じた。農家の方々がこれだけ大
変な思いをしているのだから、これから大切に食べていこうと思う。
(田中
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信行)
<参考文献>
京都府ホームページ
http://www.pref.kyoto.jp/brand/11700049.html
(2009/07/02 閲覧)
「さいさい京野菜倶楽部」(社)京のふるさと産品協会
http://kyo-furusato.jp/mark.html
ナカニシヤ出版
光文社
(2009/06/10 閲覧)
「京の野菜―味と育ちー」
「京料理の迷宮
社団法人
農山漁村文化協会
有限会社
葱常ホームページ
林義雄
岩城由子
奥の奥まで味わう」
「日本の食生活全集26
柏井壽
聞き書
著
著
京都の食事」
http://www.kujyounegi.com/cgi-bin/kujyounegi/siteup.cgi?category=1&page=0
(2009/07/01 閲覧)
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