ぐんま型木製ガードレールの維持管理技術の開発(1)

ぐんま型木製ガードレールの維持管理技術の開発(1)
予算区分:県
Ⅰ
単
研究期間:平成24~26年度
担当:木材係
町 田
初 男
小 黒
正 次
はじめに
平成22年に開発したぐんま型木製ガードレールは、上ビーム径180mm下ビーム径160mmのスギ丸棒の
横梁と、既存鋼製ガードレールの支柱を使用した構造を有し、先行開発されたほとんどの木製ガード
レールよりも安価で設置できる。しかし、開発してからの年数が少ないため、劣化の進行についての
知見がなく、設置者に対して維持管理方法を提示できていない。
木材を屋外に使用する場合、最も大きな劣化要因は木材腐朽菌やシロアリ等による生物劣化である。
屋外使用において、これらの生育に必須である水分の供給を防ぐことは困難であることから、保存処
理薬剤の浸潤層をつくることで生物劣化の進行を防ぐのはきわめて重要な劣化対策である。しかし、
材中央部までは薬剤が浸潤していないので、大きな割れが生じた場合、保存薬剤の未浸潤部分に割れ
が到達し、水が浸入して劣化の原因となる。
そこで、適切な維持管理方法を確立するためのデータを収集し、一層の普及に繋げることを目的に、
設置後2年が経過した箇所の表面割れ調査と劣化調査を行ったので報告する。
Ⅱ
方
法
表-1に調査箇所の概要を示す。野反湖と原町は、全延長の割れ調査と劣化調査を行った。また、
21世紀の森は、146mの表面割れ調査と全延長に対しての劣化調査を行った。
表面割れ調査は、割れ幅1mm以上割れ長さ50cm以上の割れを対象として、断面を30°毎に分割した部
位ごとに存在する割れの位置(鉛直方向からの角度)と割れ幅、割れ長さを測定した。
劣化調査は、徒歩で目視調査を行い、劣化や劣化の兆候が見られた箇所については、ハンマーやド
ライバーを使用した打診と触診を行った。劣化の評価は森林総研の6段階評価とした。
表-1 調査箇所の概要
地点名
所在地
標高
設置延長
調査延長
(表面割)
道路側方位
設置年
備考
原町
東吾妻町原町
365
39
39
SW
2010
市街地
野反湖
中之条町入山
1525
53
53
NW
2010
草地
21世紀の森
沼田市上発知町
川場村門前
750~
1000
1868
146
W-WNW,ESE-S
2010
混交林
Ⅲ
結果及び考察
表-2に表面割れ調査結果の概要を示す。日当たりのよい市街地に位置する原町で割れが多く、割
れ面積も大きかった。一方で、21世紀の森の2箇所は、直線距離で数百mしか離れていないが、日射
の状況が大きく異なり、1日の大部分が日陰になる公園内で割れ本数が少なく、割れ面積も小さかっ
た。
ビームの上下では、概ね上ビームの方が割れの数、割れ面積ともに大きかった。上ビームでは割れ
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が多く発生するが、個々の割れの幅はあまり大きくない傾向が認められた。一方で下ビームでは割れ
の数は上ビームより少なめであるが、大きな割れが発生していた。
地点名
標高
調査
延長
表-2 表面割れ調査結果の概要
1本当たり
1本当たり
道路側方位
割れ数(本)
割れ面積*(cm2)
備考
上ビーム
下ビーム
上ビーム
下ビーム
(日射状況)
原町
365
39
SW
6.5
6.9
423.3
361.3
良好
野反湖
1525
53
NW
6.8
5.6
381.5
176.2
良好
(霧の発生あり)
21世紀の森(林道)
905
45
ESE-S
6.0
4.0
209.8
174.5
良好
(霧の発生あり)
21世紀の森(公園内)
970
100.5
W-WNW
4.1
2.8
97.3
66.5
ほぼ日陰
(霧の発生あり)
*:割れ面積=割れ長さ×割れ幅
原町と21世紀の森(公園内)における割れ位置と割れ幅の関係を図―1に示す。4箇所中、最も多
く割れが発生していた原町では、最大の割れが下ビームに発生していて、割れ幅は11mmであったのに
対して、割れの発生が最も少ない21世紀の森(公園内)でも、最大の割れは下ビームに発生していて、
割れ幅は6mmであった。なお、どの調査地点でも、地点最大の割れは下ビームに発生していた。
12
12
10
10
8
8
0°
-90°
90°
180°
・j
・
・i・
・
・
・
j
・
・
・i・
・
・
・
6
4
上ビーム
4
2
-180 -135
-90
下ビーム
6
2
0
-45
0
45
割れ位置(°)
90
135
180
-180 -135
原町
0
-45
0
45
割れ位置(°)
-90
90
135
180
21世紀の森(公園内)
図-1
割れ位置と割れ幅の様子
また、劣化調査の結果、どの調査箇所においても現時点で生物劣化は認められなかったが、大きな
割れでは材内部の保存薬剤未浸潤部分まで割れが到達していると推察される。より長期の供用期間を
目指すため、メンテナンス方法の検討とその効果調査なども今後行っていく予定である。
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