CO2回収型次世代IGCC技術の開発状況

CO2回収型次世代IGCC技術の開発状況
電力中央研究所 エネルギー技術研究所
牧野 尚夫、
尚夫 梅本 賢、
賢 橋本 望
Oxy‐fuel combustionの基礎学理体系化と展開に関する研究分科会
2013年6月18日
1
背景と目的
CCS技術は、地球温暖化対策の中長期的オプションとして期待
されているが CO2回収に伴い、効率の低下や発電コストの上昇
されているが、
回収に伴い 効率の低下や発電コストの上昇
が懸念されている。
そこで、CO
そこで
CO2回収後で
42%(HHV)という
高い送電端効率を
高
送電端効率を
実現できるCO2回収型
高効率IGCCの
基盤技術を開発する
基盤技術を開発する。
発電
電効率 % (送
送電端効率 HHV基準)
50
本システムの開発目標:送電端効率 42%
40
39.0%
39.7%
42.1%
30
32.6%
31.0%
31.2%
20
10
0
GE
1 IGCC 2
CO 回収なし
CO
Conv
C
C 回収時
Capt
2
2
E-Gas
IGCC4
3
CO
Conv
C
C回収時
Capt
CO2回収なし
2
5Shell
IGCC6
CO
COCapt
CO
回収なし CO
回収時
C22回収なし
Conv
C22回収時
データ出典:"Cost and Performance Baseline for Fossil Energy Plants-Volume1 Rev.2 DOE/NETL 2010/1397 (Nov.2010)
2
従来のCO2回収型発電方式
燃焼後回収システム
(Post-combustion)
1.燃焼後回収システム
(Post-combustion))
(
石炭
●吸収法によるCO2回収技術は既に実用化
空気
●課題:CO2回収エネルギーの低減など
CO2
回収
排煙
処理
ボイラ
煙突
CO2
圧縮
貯留
酸素燃焼システム
(Oxy-fuel
(Oxy
fuel Combustion)
2. 酸素燃焼システム
(O f l Combustion)
(Oxy-fuel
C b i )
石炭
●実証段階
排煙
処理
ボイラ
CO2
圧縮
酸素
●課題 酸素製造動力の低減など
●課題:酸素製造動力の低減など
貯留
CO2
燃焼前回収システム
(Pre-combustion)
(Pre
combustion)
3 燃焼前回収システム
3.
(Pre-combustion)
石炭
空気
/酸素
●IGCC+CCS、実証段階
、実証段階
ガス
化炉
煙突
H2
ガス
精製
シフト
反応器
シフト反応
CO+H2O→H2+CO2
●課題:CO2回収動力の低減など
CO2
回収
CO2
GT/
HRSG
圧縮
貯留
3
開発システムのコンセプト
CO2分離不要
高効率
IGCC
+ Oxfuel
CO2回収型次世代IGCC(Oxy
回収型次世代IGCC(Oxy-fuel
fuel IGCC)
蒸気タービン
石炭
ガス
化炉
酸素
CO2
ガス
精製
ガスタ
ービン
酸素
排熱回収
ボイラ
CO2
①再循環CO2による
ガス化反応促進
②セミクローズド型GT
の採用による高効率化
圧縮
CO2
③シフト反応器、CO2分離不要
従来型(Pre-combustion IGCC)
H2
石炭
空気
/酸素
ガス
化炉
ガス
精製
シフト
反応器
CO2
回収
CO2
GT/
HRSG
圧縮
この部分が不要となる
貯留
4
NEDOプロ「CO
NEDOプ
CO2回収型次世代IGCC技術開発」
P08020 「革新的ゼロエミッション石炭ガス化発電プロジェクト」の一項目
期間:平成19年~平成25年
期間:平成19年
平成25年 (Phase 1:基盤研究)
体制
NEDO
電中研
九州大学他
1.酸素- CO2ガス化技術の開発
1. 石炭およびチャーの構造とガス化反応性
基本ガス化反応の解析・評価
2. 石炭中の鉱物の分析と挙動
数値解析によるガス化炉最適化検討
3 ガス化において生成する灰の物性・構造
3.
小型ガス化炉による基本性能実証
4. ガス化炉内流動解析
2 高CO条件における乾式ガス精製の最適化
2.高CO条件における乾式ガス精製の最適化
5. COリッチ生成ガスの操作性(GT燃焼性)
3.実機フィージビリティ・スタディ(FS)
6 石炭の前処理
6.
5
要素技術について
蒸気タービン
石炭
O2
ガス
化炉
ガス
精製
ASU
主要検討事項
ガスタ
ービン
排熱回収
ボイラ
O2
CO2
CO2
・ガス化炉・・・これまでに無い系でのガス化反応特性把握
(CO2の反応促進効果と比熱増大影響)
・ガス精製・・・乾式脱硫設備における高CO濃度による炭素析出挙動把握
ガス精製
乾式脱硫設備における高CO濃度による炭素析出挙動把握
・ガスタービン・・・石炭ガス化ガスを用いたセミクローズドGTの基本燃焼特性
(高CO2濃度場におけるH2およびCOの燃焼特性)
・ASU(空気分離装置)・・・純酸素が比較的多量必要。
コンパクト化、高効率化を検討。
6
O2/CO2吹
吹ガス化炉に関する取組み
化炉 関する取組
小型炉(3t/d)による実験
(反応促進効果検証)
検証
40
チャー生成率 [%]
30
数値解析による実機サイズの性能予測
構築 た 応 デ を組 込
構築した反応モデルを組み込み、
実機サイズのガス化炉性能予測
炉内温度分布
計算結果例
20
10
□:CO2 0 vol%
●:CO2 15 vol%
○:CO2 25 vol%
0
0.51
0.52
酸素比 [-]
0.53
0.54
Redu
uctor
0.50
反応モデル構築
高CO2分圧における反応モデル
提案モデル
CO2 とH2O で共有する活性点と
それぞれ専用の活性点が存在
nshare:共有する活性点の量
ntC
100
80
0.0012
MN炭
0.0009
nshare = a ntH = b ntC
–1
0
0
0
CO2とH2Oの和
従来モデル1
0.0006
0 0003
0.0003
CO2 濃度 [%]
60
40
20
計算格子
(コンバスタ部拡大図)
Combustor
ntH
適用
ガス
ス化反応速度 r x=0.5 [s ]
H2Oガス化の
活性点の量
CO2ガス化の
活性点の量
Reductor
coal burner
Combustor
coal/char burner
提案モデル
実験値
従来モデル2
20
40
60
80
H2O 濃度 [%]
100
計算領域
<成果>
高精度化した解析ツールで実機規模O2/CO2ガス化炉の反応特性などを明らかとした。
参考: Y.Oki, et.al, “Development of high efficiency Oxy-fuel IGCC system”, GTC, 2012
7
乾式脱硫剤など の炭素析出の影響と対策
乾式脱硫剤などへの炭素析出の影響と対策
乾式脱硫における課題
ガ
ガス化炉生成ガス・・・高濃度の
成ガ
高濃
CO
2CO→CO2+C の反応により炭素(C)が脱硫剤に析出する→性能低下
対策案
ガスタービン燃焼排ガス(CO2,H2O)を添加し抑制。
・CO2・・・2CO→CO2+Cの平衡を左へ
CO2,H2O
石炭
酸素
ガス
化炉
ガス
精製
ガスタ
ガ
ービン
・H2O・・・CO+H2O→CO2+H2でCO減少
蒸気タービン
排熱回収
ボイラ
ASU
<成果>
乾式脱硫設備で懸念される炭素析出現象の抑制技術を提案するとともに 炭素析出
乾式脱硫設備で懸念される炭素析出現象の抑制技術を提案するとともに、炭素析出
しない濃度領域を詳細に検討した。
参考: 小林 誠ら, “CO2回収型高効率IGCCシステム用乾式脱硫プロセスの炭素析出抑制策 -循環排ガス添加時のガス組成変化を考慮した
8
炭素析出抑制策の検討-”, 電力中央研究所研究報告書,M12001, (2012)
ガスタ ビン
ガスタービン
Oxy-fuel IGCCガスタービン(セミクローズドガスタービン)における基礎検討
課題・・・
1.従来のガスタービン(LNG)や通常の石炭ガス化ガスと燃焼成分が異なる。
→CO、H2リッチガスの基礎燃焼特性把握+希釈剤CO2の影響把握が必要
2 燃焼排ガスが石炭搬送に用いられる。
2.
燃焼排ガスが石炭搬送に用いられる
→燃焼促進により残存O2低減が必要
燃料
燃焼ガス
酸化剤
希釈剤
燃焼反応領域
燃焼領域を一つの
均一反応器と仮定
燃料
酸化剤
希釈剤
反応領域 ( t =20ms)
<進捗>
基礎的検討段階と
基礎的検討段階として、燃焼器を単純化し、基礎燃焼特性を把握した。
燃焼器を単純化 基礎燃焼特性を把握 た
*所内検討
参考: 長谷川武治, “CO2回収型高効率IGCC用クローズドサイクルガスタービンの開発―排気循環ガスの分割供給による燃焼促進―”,日本
エネルギー学会誌,91, pp.1260-1263, (2012)
9
ASUカスタマイズによる動力低減
IGCC用・・・高圧N2必要
既存技術
本システム
高圧N2は不要
Oxyfuel用・・・O2も低圧で良い
高圧O2が必要
(既存IGCC用ASU想定) 0.40 kWh/kg‐O2
(カスタマイズ後) 0.305 kWh/kg‐O2
(窒素を低圧のまま排出するなどの工夫による)
<成果>
本システムにカスタマイズしたASU設備を構築し、酸素製造動力が低減されることを確認した。
→ 1,300℃級GTでもCO2回収後に約40%(HHV)の送電端効率が期待される。
参考: Y.Oki, et.al, “Development of high efficiency Oxy-Fuel IGCC System”, Power-Gen International 2012
10
まとめ(CO
( 2回
回収型次世代IGCC技術開発進捗)
次世代
技術開発進捗)
●提案したシステムの基盤技術として、要素研究に取り組んでいる。進捗例は以下の通り●
・ガス化炉・・・小型加圧ガス化炉でCO2による反応促進効果を検証するとともに
高精度化した解析ツールで実機規模O2/CO2ガス化炉の
反応特性などを明らかとした。
・ガス精製・・・ 乾式脱硫設備で懸念される炭素析出現象の抑制技術を提案
するとともに、炭素析出しない濃度領域を詳細に検討した。
・ガスタービン・・・基礎的検討段階として、燃焼器を単純化し、
ガスタ ビン
基礎的検討段階として 燃焼器を単純化し
基礎燃焼特性を把握した。
(空気分離装置) 本シ テ
タ イ した
設備を構築し、
・ASU(空気分離装置)・・・本システムにカスタマイズしたASU設備を構築し、
酸素製造動力が低減されることを確認した。
今後は、各要素技術の高度化、信頼性の一層の向上を図るとともに、着実にスケー
ルアップを進めるため、数10トン/日規模のベンチスケール装置による検討を始めとして、
段階的にスケールアップを行い、早期の実用化を図りたいと考えている。
11