自己整合配置を用いたSi 上へのRTD の集積

修士学位論文概要
題目
自己整合配置を用いた Si 上への RTD の集積
氏名
林
将司
〔概要〕
【背景と目的】
RTD は、微分負性抵抗特性による高い機能性とともにその超高速性から注目されており、RTD を基にした
様々な回路や 712 GHz という超高周波発振が報告されている。このような超高速 RTD を超高集積が可能な
CMOS VLSI 上に集積することが出来れば、様々な分野、特に高周波無線通信において非常に魅力的である.
しかし、現在のところ化合物半導体 RTD が、特に高速性という点で、最も良好な特性を示している。
現在、新しい異種材料の集積技術として、Fluidic Self-Assembly(FSA)法が提案されている。FSA 法とは、
液体中に配置した基板上に、数十µm 程度の微小デバイスブロックを散布し、必要な場所に配置する技術であ
る。ブロックの配置は、散布されたブロックが基板上をスライドし、そこに設けられたリセスに入ることで
実現される。本論文では、FSA 法を用いて化合物半導体 RTD と CMOS を融合し、2 つの RTD とトランジス
タで構成される MOBILE を作製することを目的とする。
【実験と結果】
図 1 に RTD ブロック作製方法の概略図を示す。RTD ブロックの作製工程は、RTD の作製、ブロック間の
分離エッチング、エピタキシャルリフトオフ(Epitaxial Lift-Off, ELO)の 3 つの工程からなる。作製するブロ
ックが割れてしまうことを防ぐためにポリイミドで保護膜を形成した。ELO では、リン酸系エッチング液を
用いて、InP 基板のみを選択エッチングした。リセスは、配置したブロックが出てしまうことを防ぐために
オーバーハング構造を持つリセスを形成した。
まず、デバイス部の厚さが 0.4 µm の RTD ブロックを
FSA 法により Si 上に配置したが、液体中からの取り出
ポリイミド
しと乾燥で多くのブロックがリセスから出てしまっ
た。これは、デバイス部が非常に薄く、軽いことが原
因であると考えられる。そこで厚いバッファ層(2 µm)
RTD
を持つブロックを作製し、Si 上への配置を行なった。
InP
sub.
液体中から取り出し、乾燥を行なっても液体中で配置
c) ELO
a)
保護膜作製
b) 硫酸系エッチング
した約 90 %のブロックが配置された状態であった。配
図1
ブロック作製方法
置後、レジストハードベークを用いてブロックの固定
を行ない、配線金属を蒸着し、RTD 特性を測定した。
図 2 に配線後の RTD ブロック、図 3 に RTD 特性を示
す。微分負性抵抗を有する良好な特性が得られている。
しかし、ピーク電圧よりも高い範囲では若干電流が増
加しており、ブロックのそりによる歪みが原因でリー
ク電流が発生している可能性がある。
C
E
MOBILE はピーク電流の異なる 2 つの RTD が必要で
あるため、CMOS チップ上にまず大きなブロックを配
50 [µm]
置し、その後、小さいブロックの配置を行なった。こ
れにより 2 種類のブロックを同一の基板上に配置した。
図 3 RTD 特性
しかし、CMOS チップの電極と RTD の接続部分で断線 図 2 配線後の RTD ブロック
しており回路動作の確認は行なえなかった。
今回は本質でない問題により MOBILE の作製は行な
えなかったが、FSA 法による集積は有効な技術といえ
る。
〔公表論文、学会発表等〕
・電気関係学会東海支部連合大会 2004 秋
・電子情報通信学会 2005 秋