資料№2 余熱利用について 平成 24 年 10 月 15 日開催 恵庭市焼却施設検討専門部会 1.余熱利用の必要性 焼却施設は、循環型社会形成を目指す上で、熱回収施設としての役割も大きく、焼却処理によって発 生する熱エネルギーを効率的に回収し、エネルギー資源としての有効利用を推進する必要があります。 2.余熱の回収方法 焼却施設では、ごみの焼却と同時に、800℃∼1000℃程度の高温の排ガスを発生させます。この排ガ スは、適正な排ガス処理を行うために、排ガス冷却設備と排ガス処理設備にて、200℃程度まで冷却さ れますが、排ガス冷却設備として熱交換器を利用することで、熱エネルギーを回収できます。 余熱の回収方法は図 1 のとおりです。 燃焼ガス冷却設備+排ガス処理設備 800℃∼1000℃ の排ガス 熱交換器 高温空気 蒸気 温水(高温水) + 減温塔など 熱エネルギー回収 図 1 余熱の回収方法 1 150℃∼200℃程度 の排ガス 3.余熱利用の形態 一般的に、余熱利用するための熱交換器には、ボイラ、空気余熱器、温水器などがあり、それぞれ熱 交換の結果、蒸気、高温空気、温水(高温水)という熱利用媒体を発生させます。 これらの、熱利用の形態としては、発生した蒸気を電力、温水などに変換し、さらに温水(高温水) を冷水・冷媒に変換して利用する場合や、余熱利用先の熱源として直接利用する場合があり、最終形態 は電力、蒸気と温水、高温空気となります。 余熱の回収方法の選択は、回収した熱利用媒体の使いやすさや利用先、輸送手段などを考慮しながら、 効率性、経済性を十分検討した上で決めていく必要があります。 余熱利用の形態は、図 2 のとおりです。 蒸気の形での 熱エネルギー利用 ボイラー ごみ 焼却炉 燃焼排ガス 焼却残渣 熱交換器 (空気余熱器) 発電機 電力 熱交換器 (高温水器、 温水器) 高温水、 温水 熱交換器 (空気予熱器、 排ガス加熱器) 高温空気、 排ガス高温 化 (直接熱利用) 蒸気 空気の形での 熱エネルギー利用 高温空気 熱交換器 (温水器) 温水の形での 熱エネルギー利用 熱交換器 (温水器) 温水 温水 図 2 焼却排熱のエネルギー変換による熱利用形態 出典:廃棄物熱回収施設設置者認定マニュアル 環境省 平成 23 年 2 月 ごみ処理施設構造指針解説((社)全国都市清掃会議、1987)の図を一部修正 4.余熱利用形態と必要熱量 余熱利用を大きく分類すると、施設内での利用に限定した「場内利用」と施設外へ熱や蒸気、電力な どを供給して利用を図る「場外利用」に分けられ、場内利用は、プラント関係と建築関係の利用に分類 されます。 余熱利用形態と必要熱量の一般的な値は表 1 のとおりです。 2 表 1 熱回収形態とその必要熱量 熱利用媒体 蒸気 温水 電力 用 途 場 内 余 熱 利 用 蒸発処理能力 2,000t/h 定格発電能力 1,000kW (背圧タービン) 定格発電能力 2,000kW (復水タービン) 1日(8時間) 洗車台数 50台/8h 1日(8時間) 洗車台数 50台/8h 1日(8時間) 給湯量 10㎥/8h 延床面積 1,200㎡ 延床面積 1,200㎡ 1日(4時間) 50着 延面積 1,000㎡ 収容人員60名 1日(8時間) 給湯量 16㎥/8h 収容人員60名 延床面積 2,400㎡ 対象100世帯 給湯量 300ℓ/世帯・日 34,000 kJ/排水100t 6,700 35,000kJ/kWh 35,000 20,000kJ/kWh 40,000 集合住宅 100世帯 水 理 蒸 発 ○ 設 備 電 ○ 洗車用スチーム ○ ク リ ー ナ 工場・管 理棟 ○ 給 湯 工場・管 理棟 暖 房 工場・管 理棟 冷 房 作 業 服 クリーニ ング 道路その 他の 融 雪 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 福祉センターの ○ 給 湯 ○ 福祉センターの ○ 冷 暖 房 ○ 地 域 集 中 給 湯 ○ ○ 水 プ ○ ー ル ○ ○ 温 水 プ ー ル 用 ○ シ ャ ワ ー 設 備 ○ 温 管 ー ル ○ 暖 房 ○ 動 植 物 用 温 室 ○ ○ 熱 帯 動 植 物用 温室 ○ ○ 水 プ 理 棟 設 園 芸 ○ 野 菜 工 場 ア イ ス ス ケー ト場 ○ 延床面積350㎡ 延床面積 800㎡ 延床面積 1,000㎡ 造水能力 1,000㎥/日 ○ 250,000kJ/台 サラダ菜換算 5,500株/日 リンク面積 1,200㎡ 蒸気復水器にて 大気拡散する熱 量を含む 310 5-45℃加温 1,600 230,000kJ/㎥ 290 5-60℃加温 670kJ/㎡・h 800 840kJ/㎡・h 1,000 ― 1,300kJ/㎡・h 230,000kJ/㎥ ≒0 1,300 460 5-60℃加温 670kJ/㎡・h 冷房の場合は暖 1,600 房時必要熱量× 1.2倍となる 69,000 kJ/世帯・日 84 5-60℃加温 42,000 kJ/世帯・h 冷房の場合は暖 4,200 房時必要熱量× 1.2倍となる 8,400 2,100 860 5-60℃加温 670kJ/㎡・h 冷房の場合は暖 230 房時必要熱量× 1.2倍となる 840kJ/㎡・h 670 1,900kJ/㎡・h 面積10,000㎡ ○ ○ 50,000kJ/台 戸別住宅 84,000 100棟 kJ/世帯・h 25m 一般用・子供用併設 1日(8時間) 230,000kJ/㎥ 給湯量 30㎥/8h 海水淡水化設備 ○ 施 66,000kJ/kWh 備考 蒸気復水器にて 33,000 大気拡散する熱 量を含む 排 処 洗 車 水 加 温 ○ 温 必要熱量 MJ/h タービン出力 500kW 地 域 集 中 暖 房 ○ 場 外 余 熱 利 用 単位当り熱量 誘引送風 機の ○ タービン 駆動 プ ラ ン ト 発 関 係 建 築 関 係 設備概要(例) 1,900 430kJ/造水1ℓ 18,000 多重効用缶方式 (630kJ/造水1ℓ) (26,000) (2重効用缶方式) 630∼1,500 6,300∼ kJ/㎡・h 15,000 700kW 5,400kJ/㎡・h 6,500 空調用含む 滑走人員500名 (注)本表に示す必要熱量、単位当たりの熱量は一般的な値を示しており、施設の条件により異なる場合が ある。 出典:ごみ処理施設整備の計画・設計要領2006改訂版 3 5.余熱利用の用途実績 「ごみ焼却余熱有効利用促進市町村等連絡協議会」が全国 998 箇所の焼却施設を対象で調査した結果、 焼却施設規模別の場内、場外の用途別余熱利用の実績は、表 2、表 3 のとおりです。 表 2 焼却施設規模別の用途実績(発電以外の場内余熱利用) 規模(t/日) 利用例 50未満 50以上 100以上 100未満 200未満 ※ 200以上 割合 合計 (%) 給湯 141 140 170 210 661 66.2 暖房 55 93 146 194 488 48.9 冷房 7 7 19 85 118 11.8 13 8 16 29 66 6.6 ロードヒーティング、融雪 3 3 7 4 17 1.7 汚泥乾燥 1 1 2 3 7 0.7 誘引送風機駆動用蒸気タービン 0 0 4 0 4 0.4 その他 0 1 1 4 6 0.6 排ガス加熱 ※:割合とは、それぞれの利用例の合計が全施設(998施設)に占める割合を表している。 ≪ごみ焼却余熱有効利用促進市町村連絡等協議会 平成6年1月11日∼平成6年3月31日の調査による≫ 出典:ごみ処理施設整備の計画・設計要領2006改訂版 表 3 焼却施設規模別の用途実績(発電以外の場外余熱利用) 規模(t/日) 利用例 福祉施設 50未満 50以上 100以上 100未満 200未満 ※ 200以上 割合 合計 (%) 10 17 31 51 109 10.9 温水プール 0 2 18 80 100 10.0 保養施設 3 5 8 22 38 3.8 地区集会所、コミュニティーセンター 1 5 9 13 28 2.8 下水汚泥処理施設 0 0 5 16 21 2.1 園芸など 0 1 5 11 17 1.7 スポーツ関係施設 1 1 2 13 17 1.7 浴場 1 3 4 2 10 1.0 地域給湯、暖房 2 1 1 4 8 0.8 文化関係施設 0 0 0 6 6 0.6 その他 0 3 4 14 21 2.1 ※:割合とは、それぞれの利用例の合計が全施設(998施設)に占める割合を表している。 ≪ごみ焼却余熱有効利用促進市町村連絡等協議会 平成6年1月11日∼平成6年3月31日の調査による≫ 出典:ごみ処理施設整備の計画・設計要領2006改訂版 4 6.余熱利用の検討 炉の稼働にあたって、補修整備、補修点検、全炉停止等を行う必要があります。1 炉の年間停止日数 は 85 日程度となります(補修整備期間 30 日+補修点検期間 15 日×2 回+全炉停止期間 7 日間+起動に 要する日数 3 日×3 回+停止に要する日数 3 日×3 回=85 日)。 このことから、施設は 2 炉構成(施設規模 52t)の場合、常に 2 炉運転することが不可能のため、余 熱利用可能量を1炉稼働時(施設規模 26t)の場合を想定して試算します。 表 4 余熱利用の試算(1 炉最大) 計画値 項目 備考 26 t/日 ① 施設規模 1炉 ② 低位発熱量※1 8,000 kJ/㎏ (1,911 kcal/㎏) 基準ごみ時を8,000KJ/kg ※2 と設定 ③ 熱回収量 6,067 MJ/h (1,449 Mcal/h) ボイラ熱回収率を70%※3 と設定 =①÷24×②×70%×10 3 ④ 場内熱消費量 1,274 MJ/h (304 Mcal/h) 全体量に対して21% ※4 を場内で消費すると設定 =③×21% ⑤ 余熱利用可能量 4,793 MJ/h (1,145 Mcal/h) ③-④ ※1:ごみ中の可燃分の燃焼によって発生した総発熱量から、燃焼によりごみ中の水分が変化した水蒸気の凝縮潜熱を 差し引いたものをいう。真発熱量と呼ばれることもある。 ※2:「環境省一般廃棄物処理実態調査結果 平成 22 年度」北海道にある焼却施設の低位発熱量の平均値である。 ※3:廃熱ボイラを設置することにより、ごみの持つエネルギーの約 70∼80%程度が余熱利用等のための有効利用可能 熱として、蒸気エネルギーに変換し得る。安全側を見て 70%とした。 出典:ごみ処理施設整備の計画・設計要領 2006 改訂版 ※4:東京都 13 清掃工場の平均値は 20.9%(平成 2 年度)である。 (場内熱消費として表 1 の工場・管理棟の給湯、暖 房、冷房、その他に燃焼用空気加熱、排ガス再加温等が該当) 出典:ごみ焼却排熱の有効利用 理工図書 石川禎昭著 エネルギー有効利用の一環として、焼却施設から発生する余熱を利用した、下水汚泥の乾燥を検討 します。本市の下水終末処理場で発生する下水汚泥量は年間約 6,100t(H30 推計)と想定しており、 汚泥乾燥用の必要熱量は 1,400MJ/h 程度となります。 下水汚泥=6,100t/年=0.70t/h 必要熱量=0.70t/h×2,000MJ/t=1,400 MJ/h (※2,000MJ/h は、含水率 80%の下水汚泥を含水率 30%の乾燥汚泥にするために必要な熱量です。 ) 5 汚泥乾燥用以外の余熱利用可能量としては 3,393MJ/h(4,793MJ/h-1,400 MJ/h)となり、その他では 表5のような余熱利用可能例があります。 余熱の利用方法については、焼却施設整備基本計画策定段階で市民や地域住民の意見・要望なども考 慮しながら検討します。 表 5 余熱利用可能例(表 1 の抜粋) 用途 設備概要(例) 必要熱量 MJ/h 道路の融雪 延面積1,000㎡ 1,300 福祉センターの給湯 収容人員60名 1日(8時間) 給湯量 16㎥/8h 460 福祉センターの冷暖房 収容人員60名 延床面積2,400㎡ 1,600 温水プール 25m 一般用・子供用併設 2,100 温水プール用シャワー設備 1日(8時間) 給湯量 30㎥/8h 860 温水プール管理棟暖房 延床面積350㎡ 230 施設園芸 面積1,000㎡ 630∼1,500 (注)本表に示す必要熱量、単位当たりの熱量は一般的な値を示しており、施 設の条件により異なる場合がある。 6
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