ASTRO-H衛星計画 松本浩典 (名古屋大学KMI) 1 目次 • ASTRO-Hについて –カロリメーターSXS –硬X線望遠鏡 HXT –硬X線イメージャー(HXI), 軟X線望遠鏡(SXT), X 線CCD (SXI), 軟ガンマ線検出器(SGD) • ASTRO-Hで進めるサイエンス 2 ASTRO-H 計画(2014年打ち上げ予定) 日本で6番目の X線天文衛星 3 かつてない国際協力 日本/アメリカ/ヨーロッパから、 160人以上の科学者が参加. 4 初代: はくちょう衛星(1979年~1985年) 96kg すだれコリメーター+比例計数管。 X線バーストを使った中性子星半径の測定など 5 2代目:てんま衛星(1983年~1988年) 216kg 蛍光比例計数管など 天の川銀河高温ガスの発見、中性子星の 重力で赤方偏移した吸収線の発見など 6 3代目:ぎんが衛星(1987年~1991年) 420kg 大面積比例計数管など 活動銀河核の統一描像の確立など 7 4代目:あすか衛星(1993年~2001年) 420kg X線CCD、 X線望遠鏡、蛍光比例計数管 巨大BHの重力による鉄輝線の変形、宇宙線 電子加速の発見など 8 5代目:すざく衛星(2007年~現在) 1700kg X線望遠鏡+X線CCD, 硬X線検出器 超新星残骸の過電離プラズマの発見、宇宙線 陽子加速天体候補の発見など 9 ASTRO-H搭載機器 HXT(Hard X-ray Telescope) SXT(Soft X-ray Telescope) SGD (Soft Gamma-ray Detector) HXI (Hard X-ray Imager) 10 SXS (X-ray micro-calorimeter) SXI (X-ray CCD) 超ワイドバンド検出 (0.3~600keV) SGD HXI HXT SXT SXI SXS 11 衛星 重量 2.7t 12 Soft X-ray Spectrometer (SXS) 中にSXS ISAS/JAXA、NASA/GSFC、金沢大、首都大など 13 Soft X-ray Spectrometer (SXS) X線マイクロカロリメーター HgTe ℎ𝜈 Δ𝑇 ∼ 𝐶 C:熱容量 熱浴50mK 高エネルギー分解能。空間的に広がった天体も 観測可能。 比較: 回折格子は点源のみ。 14 エネルギー分解能 フォノン数のゆらぎ+その他 HgTe 熱浴 (T)50mK フォノン数𝑁 ∼ (C: 熱容量) 𝐶𝑇 𝑘𝑇 =𝐶 𝑘 フォノン数ゆらぎΔ𝑁 = 𝑁 ∼ エネルギー分解能Δ𝐸 ∼ Δ𝑁 × 𝑘𝑇 = 𝐶 𝑘 𝐶 𝑘𝑇 ΔE: X線Eによらない。冷やした方が良い。 15 冷やすために… 断熱消磁冷凍機+液体He+ジュールトムソン 冷凍機+2段式スターリング冷凍機 要求寿命3年、目標5年以上 16 SXS性能 エネルギー分解能 (FWHM) エネルギー範囲 視野 ピクセル数 ピクセルサイズ 角度分解能(HPD) 有効面積 寿命 対応カウントレート 要求値(目標) 7 eV (4 eV) 0.3--12 keV 2.9分角四方 6×6 800μm 1.7分角(1.3分角) 160/210 cm2 (@1/6 keV) 3年(5年) 150 cts/s (dead time 5%以下) 17 SXS performance Mn Kα1, Kα2 比較 X線CCD ~130eV 18 特に重要な特性X線 例:天の川銀河中心X線 •6.4keV線 中性Fe Kα線 X線CCD ΔE~130eV •6.7keV線 He状イオンFe Kα線 •6.9keV線 H状イオンFe Kα線 Koyama et al. 2007, PASJ, 59, 245 存在量多い 比較的孤立 19 7eV@6keV ドップラー効果だとすると、 𝑉 7𝑒𝑉 −3 ∼ = 1.17 × 10 𝑐 6𝑘𝑒𝑉 𝑉 ∼ 3.5 × 107 𝑐𝑚 𝑠 もう一桁遅くても、ライン中心値の分離は可能。 Fe原子の熱運動だとすると、 1 3 2 𝑚𝐹𝑒 𝑉 ∼ 𝑘𝑇 2 2 9 𝑘𝑇 ∼ 0.11𝑀𝑒𝑉, 𝑇~1.3 × 10 𝐾 20 SXSでHe状FeイオンKα線を見ると kT=3keVプラズマモデル SXS SXI(CCD) 微細構造がわかる 21 He状鉄イオン微細構造 X,Y W Z W: 1s2p 1P1 1s2 1S0共鳴線 Z: 1s2s 3S11s2 1S0禁制線 X, Y: 1s2p 3P2,1,01s2 1S0 intercombination line 22 微細構造の重要性 温度 𝑋+𝑌+𝑍 𝐺 𝑇 = 𝑊 密度 𝑅 𝑛𝑒 𝑋+𝑌 = 𝑍 23 他の衛星との比較: エネルギー分解能 SXSはE>2keVで有利。 SXS以外は 回折格子 24 他の衛星との比較:有効面積 圧倒的な有効面積 SXS以外は 回折格子 25 Hard X-ray Telescope (HXT) HXT HXT 名古屋大学、愛媛大学、ISAS/JAXAなど 26 X線反射鏡 金属板のバームクーヘン。 27 X線反射の原理 これまでの望遠鏡 (E<10keV) 真空(n=1.0) 反射鏡(Auなど。) 全反射を利用。 E>10keVには入射角が小さくなりすぎる。 28 ASTRO-H 硬X線望遠鏡(HXT)の原理 ブラッグ反射を利用 Pt, Cで多層膜 29 HXT 1台目完成写真 49cm Focal Length 12m 45cm 全部で213層。 30 多層膜 断面電顕写真 • Pt/C 多層膜 • 10~140 層 • 膜厚を徐々に変える • d=25~100Å 31 深さ方向に膜厚変える=Super Mirror 反射鏡1枚の反射率 • Black 単層膜 D=100Å • Red 多層膜 D=40Å N=30 Γ=0.4 • Blue スーパーM D=26~50Å N=78 Γ=0.4 32 望遠鏡有効面積 33 硬X線検出器(Hard X-ray Imager; HXI) E<20 keV: Double-sided Si Strip Detector E>20keV: Double-sided CdTe Strip Detector 34 HXT + HXI 感度がすざく衛星の100倍以上 35 軟X線望遠鏡(Soft X-ray Telescope; SXT) • • • • 金の単層膜 直径 45cm 203層 焦点距離 5.6m 角度分解能 ~1.3arcmin • 有効面積 ~425cm2 at 6keV 36 Performance of SXT ASTRO-H Suzaku 37 X線CCD (Soft X-ray Imager; SXI) • Pch X線CCD • 空乏層大 ~200um • 広視野(38分角) 38 軟ガンマ線検出器 (Soft Gamma-ray Detector; SGD) • Si/CdTe コンプトンカメラ • 偏光情報(統計が稼げれば) 39 Performance of SGD 40 ASTRO-Hで狙うサイエンス (のごく一部) 41 天の川銀河中心から高階電離鉄輝線 すざく衛星(3度 X 0.5度) Fe I (neutral) Fe XXV (He-like) Fe XXVI (H-like) 42 高階電離鉄輝線の意味 H状鉄イオン輝線と、He状鉄イオン輝線 kT=5~10keVの高温ガス? 天の川銀河の重力で閉じ込められない。 1e50 erg/yrのエネルギー注入が必要 超新星爆発: ~1発/100yr 1e49 erg/s 全然足りない! 43 もう一つの可能性:点源の重ね合わせ • 淡く、たくさん存在し、高温ガスをまとう • 有力候補: 激変星(Cataclysmic Variable) –空間密度 3e-5 pc-3 恒星 降着流 降着流 kT=1—25keV 磁場の強い白色矮星 白色矮星表面 44 X-ray spectrum of CV 高階鉄電離輝線を持つ。 45 点源の重ね合わせなら… 点源は、星とともに回転しているに違いない。 46 SXSなら W Wの中心エネルギーの分離で、100km/sは 観測可能 47 中性の鉄が輝線を出す Suzaku 6.4keV line image Sgr B2領域 励起源が必要 48 励起源 • 光電離 –いま、照射源候補がない。 –銀河中心BHが昔100万倍明るかった? • 粒子による電離 –宇宙線 49 SXSでSgr B2を見ると 中性鉄Kα 中性鉄Kα コンプトン肩 鉄の光電吸収エッジ 50 SXSで見た中性輝線 • コンプトン肩 –照射源の方向に制限がつく • 鉄エッジ –励起源が通過した物質量(柱密度)を反映 • 大きい (NH>1e24 cm-2)… 光電離 • 小さい (NH<1e24 cm-2)… 粒子 –電子? 陽子? 51 SXSで見たラインの幅 電子の場合 σ~0eV 陽子の場合 σ~10eV 輝線の太り方で区別できるだろう 52 活動銀河核の広がった鉄輝線 あすか衛星 X線CCD Tanaka et al. 1995 2012/10/27現在 Citation 735 53 活動銀河核からのX線 中心核:巨大BH 可視光 など 降着円盤 X線 54 解釈その1: 一般相対論的効果 降着円盤 55 解釈その2:複数の電離吸収体+細いFe輝線 Miyakawa et al. 2012 海老沢 天文月報 2010年 𝑊𝐻 𝑊𝐿 𝑁1 𝑃 + 𝑊𝐻 𝑊𝐿 𝑊2 𝑁2 𝑃 + 𝑅𝑁3 𝑃 + 𝐼𝐹𝑒 W:電離吸収体 N:normalization, P:power-law, R: 反射 56 SXSで見れば 電離吸収体か? 相対論的鉄輝線か? 57 銀河団ガス ©SDSS 銀河団=銀河の集団 ©RASS 銀河団 = 数千万度の火の玉 58 中央部のAGNがかき乱しているらしい おとめ座銀河団 =18kpc 59 SXSで見ると Turbulenceが見える。 60 超新星残骸 Tycho X-ray E~1e51 ergの大爆発の名残。 しかし、見えているのは電子(kT~1keV)のみ。 ~1e49 ergしか測定していない。 61 はじめてイオンの動きを測定できる! 62 宇宙線加速 (銀河系内)宇宙線はどこで加速されている? 63 SNRからのシンクロトロンX線 SN1006 RXJ1713-3946 ©CXC Uchiyama et al. 2007 E~10-100TeVの電子の存在 64 HXT+HXIで見れば SN1006 RXJ1713@40keV すざく衛星 HXT+HXI スペクトルの折れ曲がり最高エネルギー 高エネルギーイメージ加速場所 65 ASTRO-H予定 • 2014年夏打ち上げ予定 • 観測時間配分予定 – Phase 0(3ヶ月): 機器立ち上げ、チェック – Phase 1(6ヶ月): Science Working Group 100% – Phase 2(12ヶ月):SWG 15%, Guest Observer 75%, Observatory 10% – Phase 3(残り): GO 75%, Obs. 10%, Key Project (15%) (TBD) SXSには寿命。要求3年、目標5年以上 66 新潟大からサイエンスへの 積極的なご参加をお待ちしております。 67 68 Appendix. ASTRO-H Key Parameters 69 2011//06/30 The X-ray Universe 2011, Berlin Performance of HXI image 70 Using this strong line (single), we measure the Galactic rotation curve. ΔV ~ 10 km/s Does Hot plasma show similar rotation as hose of stars, cold gas, star clusters or same ? expansion ? Plasma states (collisional ex, recombination, & temperature). So Astro-H can determine more reliable parameters Lugten et al. 1986 Crawford etal. 1985 71
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