データベース 登録 2010.9 シーズ名 酵素機能の応用 - 大阪市立大学

データベース
登録
2010.9
シーズ名
酵素機能の応用開発
氏名・所属 等
伊藤
和央、理学研究科・生物地球系専攻、准教授
<概要>
酵素化学はバイオサイエンスあるいはバイオテクノロジー分野の主軸をなす研究分野の1つである。
我々は、酵素機能の応用を念頭に、これまで微生物に起源を求め、種々の酵素、特にアミラーゼやプロ
テアーゼなどの生産菌を探索し、酵素の産生や分泌機構の解明を行い、酵素の取得法の開発を手がけて
きた。また、新しい酵素の発見と開発を念頭に置き、微生物のみならず動物や植物の生産する、糖質・
糖鎖関連酵素やペプチダーゼなどを中心として酵素を分離・精製し、その酵素化学的・蛋白化学的性質
を詳細に調べ、酵素蛋白の構造と触媒機能の解明を行っている。また得られた酵素を用いて、多糖やネ
オ複合糖鎖の酵素合成や生体分析への応用研究を行っている。
<アピールポイント>
生体やこれを取巻く環境にとって安全な有用物質の生産法はこれからますます必要とされる。その過
程でおこる化学反応を進行させる触媒として、酵素は最も安全な反応条件下で機能する自然が与えてく
れた理想的な触媒といえる。生体から取り出した酵素の特異的な機能を利用することによって、無駄な
く高収率で特異的に目的とする有用物質を生産、加工することが実現できる。また、生体内の酵素の機
能の解析や調節を通じて病気の診断や治療ができる。
<利用・用途・応用分野>
食品、医薬、酵素試薬、産業用酵素剤、新素材、生物資源改変、糖鎖工学、糖鎖生物学
キーワード
酵素、生体触媒、糖質、糖鎖、微生物酵素
データベース
登録
2010.9
シーズ名
細胞の生・死・分化に関わる生体物質の構造と機能
氏名・所属 等
臼杵
克之助、理学研究科・物質分子系専攻、講師
<概要>
研究内容:生体の機能がどのようにして発現しているの
か、そのメカニズムを有機化学的な手法で探究し、生命現
象、とくに細胞の生・死・分化の制御を担っている物質の
機能を分子レベルで明らかにするために、
1. かたちを知る(構造解析)
2. つくる(全合成)
3. はたらきを知る(生物活性評価)
4. かたちとはたらきとの関連を知る(構造活性相関)
5. 新しいはたらきをする分子をデザインする(生体類似機能物質の創製)
といったアプローチから研究を行っています。
微生物が生産する特異な生物活性をもった化合物の構造決定・構造活性相関:
免疫不全状態における真菌の日和見感染によって引き起こされる重篤な深在性真菌症( Candida
albicans によるカンジダ症や Aspergillus 属によるアスペルギル
ス症など)がとても深刻な問題となっています。真菌に特異的な細
胞壁の合成阻害は菌糸形態異常を引きおこすと考えられるので、真
菌に対して選択的に作用し、ヒトに対する副作用を示さない抗真菌
性抗生物質を探索すべく、糸状菌の菌糸における形態異常を指標と
するスクリーニングを行いました。
Streptomyces sp. HA 125-40 株が Mucor mucedo IFO 7684 に形態
異常を誘起する抗菌活性物質を産生することを見いだし、その活性
本体が cyclothiazomycin B1 であると同定しました。
生物活性物質の含フッ素アナログ合成を指向した含フッ素有機化合物の合成反応開発:
光学活性 Garner アルデヒドから容易に調製さ
れる炭酸エステルの水素化分解反応を鍵段階
とする経路でアスパラギン含フッ素イソスタ
ーを合成しました。
<アピールポイント>
生物が長い進化の過程で獲得した機能とそれらに関与する生体物質の構造を解明することは、生物の
生命体としての設計思想とその生存戦略を理解することでもあります。系統的かつ組織的に化合物を
探索し,生命現象を解明するためのツールとして活用していくうえで、微生物が生産する低分子有機
化合物の構造および生物活性の多様性は魅力的で、強力なバイオプローブになります。活性発現に必
要な化学構造を描出できるようになれば、医薬・農薬の開発などの分野への波及効果は大きいと期待
されます。
<利用・用途・応用分野>
医薬、農薬開発・感染症治療・環境バイオ
キーワード
抗生物質、構造活性相関、生理活性物質、含フッ素有機化合物
データベース
登録
2010.9
シーズ名
分子スピンとバイオスピンによる磁性材料の開拓
氏名・所属 等
塩見
大輔、理学研究科・物質分子系専攻、准教授
<概要>
○有機分子を素材とする,強磁性体・フェリ磁性体などの磁性体を開発する.
○磁性体の構成要素として,核酸など生体系分子をも含めた広範な物質範囲を探索する.
○各種物性データの測定と理論計算を併用して,磁性の発現機構を解明する.
<アピールポイント>
○磁性体の部品となる有機分子(ラジカル分子)の開発を設計・合成から行なう.
○磁性体の部品となる有機分子の磁気特性を,電子スピン共鳴(ESR)などを用いて,ミクロなレベ
ルで解明する.
○固体材料・試料(結晶性固体)の磁化率(帯磁率)を,液体ヘリウムによる極低温領域で測定し,
磁性の発現機構の解析を行なう.
<利用・用途・応用分野>
○ハイブリッド磁性材料の開発
○次世代の分子メモリーの開拓
○分子磁気デバイスの基盤技術の開拓
○スピンを基盤とするナノ技術,ナノバイオ技術の開拓
キーワード
磁性体,スピン,メモリー,スピンデバイス,ナノバイオ
データベース
登録
2010.10
シーズ名
昆虫の季節適応・環境応答
氏名・所属 等
志賀
後藤
向子、理学研究科・生物地球系専攻、教授
慎介、理学研究科・生物地球系専攻、准教授
<現在の研究概要>
多くの動物は季節の変化に合わせて生活しています.では彼らは野外で実際にどのような生活を送っ
ているのでしょうか.どうやって季節を知るのでしょうか.成長や繁殖に不適切な季節をどのように
乗り切るのでしょうか.ここには季節を予測する光周性を始め,さま
ざまな生理学的な性質が関わっています.
私たちはそれぞれの対象動物の野外での生活を念頭におき,生物の
多様性に着目しながら生物機能の研究をするという比較生理学の立
場から,対象動物の生活史の生理生態学的解析,そして光周性の神経
生理学的・分子生物学的解析を行っています.主な対象は昆虫ですが,
それ以外の何種かの無脊椎動物も対象に研究を行っています.研究内
容に関しては我々の研究室のホームページ(下記)も参考にしてくだ
さい.
<アピールポイント>
私たちはこれまで多くの動物を用いて研究を行ってきました.研究
を通して得られた生活史に関する情報やその動物の生理学的特性,飼
育法に関する情報を提供可能です.これまでに扱ってきた動物は以下
のとおりです.
●ホソヘリカメムシ ●ルリキンバエ ●ナミニクバエ ●シリア
カニクバエ ●ヒロズキンバエ ●ヒメマルカツオブシムシ ●キ
イロショウジョウバエ ●チャコウラナメクジ ●マダラスズ
●アジアカブトエビ ●マダラスズ ●マングローブスズ ●ナミ
ハダニ など
<技術協力・利用・用途・応用分野>
昆虫の生理学的特性についての情報提供.また,害虫駆除や昆虫利
用の基本的なデータとして重要な生活史の解明,生活史形質に関わる
生理学的特性の解析,高温・低温・乾燥などストレスに対する耐性の
解析.
<関連する知的財産権>
<関連するURL>
http://www.sci.osaka‐cu.ac.jp/biol/aphys/index.html キーワード
昆虫利用、害虫管理、害虫駆除、品質管理
データベース
登録
2010.9
シーズ名
分子内相互作用
氏名・所属 等
寺岡
淳二、理学研究科・物質分子系専攻、准教授
<概要>
鉄ポルフィリン(右図)を有する一群の蛋白質をヘム蛋白質と呼ぶが、代
表格は血色素ヘモグロビン(Hb)であろう。Hb は肺で獲得した酸素を血流に
乗って体の隅々にまで効率よく運ぶ。効率よくとは、結合した酸素を組織に
運び、出来るだけ多く手離して、持ち帰りを少なくするということである。
しかし、これは言うは易し行なうは難しで、実際にはかなり大変なことであ
る。というのも、結合と解離は相反する化学的現象であり、酸素と強く結合
すれば、逆に離しにくいからである。
N
N
Fe
N
N
Hb は実際には酸素との結合場所である鉄ポルフィリンを4箇所持ち(右下図)
、それぞれのサイトに
おける酸素との結合定数を変えることによってこの難局を乗り切っている。つまり、あるサイトに酸素
が結合すると、蛋白質全体の構造変化が起きて他のサイトにおける酸素結合能が高まる、解離する場合
にはその逆のことが起きているという訳である。このことは言い換えれば、蛋白質分子中の酸素結合部
位が分子内でお互いに連絡を取り合っていると言うことで、その結果 Hb は酸素を効率よく運搬できる
のである。
われわれの身の回りには電話やメ-ルなどの様々な情報伝達手段があるが、Hb はその役割を担う最も
単純化された最小の装置、いわゆる分子機械
であると考えられる。
protein
O
O
O
しかし、酸素の結合がどのようにして蛋白
O
Fe
Fe
質の構造変化を引き起こしているのかの詳細
N
は未だに明らかではない。この点を理解する
N
NH
ことが重要であり、そのためには分子レベル
HN
における情報伝達機構、すなはち{酸素(配
位子)― 鉄 ― ポルフィリン}ユニットが如
communication
何に連絡を取り合っているかを、まず明らか
にする必要がある。そして、その後でユニッ
O
O
ト間の情報伝達機構の解明に立ち上がる。
O
O
そこでわたしは、
Fe
Fe
(1)ポルフィリンの光励起による鉄-配位
N
N
子結合の切断(光解離)
NH
HN
(2)配位子の分子振動による強い赤外円偏
光の認識
光励起によるポルフィリンの鉄の還
元(光還元)
などの、これまで調べてきた研究成果を基に{酸素(配位子)― 鉄 ― ポルフィリン}ユニット内の
相互作用、ひいては分子内における情報伝達機構を明らかにしようとしている。最近では新たに、同位
体置換したポルフィリンを用いてたんぱく質を再構成し、その振動スペクトルを観測することによって
ヘム-グロビン相互作用を浮き彫りにしようと試みている。
II
II
キーワード
II
II
たんぱく質、協同効果、分子内相互作用、分光学、ラマン
データベース
登録
2010.9
シーズ名
植物の活力を引き出すプラントサプリ
氏名・所属 等
平澤
栄次、理学研究科・生物地球系専攻、教授
<概要>
シーズのきっかけは、低 照 度 ス ト レ ス 下 で 観 葉 植 物 を 保 持 す る 植 物 用 有 機 栄 養 補 助 液
( プ ラ ン ト サ プ リ ) の 開 発 で し た 。 そ の 成 果 は ハイビスカスを用いた室内での植栽保持実験
で得られたものです(図1、知財1)。この成果は、植物栄養学に新たな学問分野、植物有機栄養学を
切り開くことに繋がり(図2)、切花用鮮度保持剤の開発(商標:チューリップサプリ、知財2)や、
無機肥料で育てた野菜に含まれる高濃度硝酸を下げるための有機栄養補助液の開発(知財3)に進展
しました。
新学問分野を応用した技術はいままでの植物保持技術にない優位性を持ち、新技術はすでに一部は
商品化されています。このシーズは、企業の方々の商品開発の要望をお聞きし、いままでにない植物
の活力を引き出すための共同開発から生み出されるものです。ご要望、ご提案をお待ちしています。
(図1)室内で2ヶ月後(左下)、プラントサプリを与えて
8ヶ月後(右下)、その後野外に置いて6週間で開花(中央)。
(図2)朝倉書店 2007 年
<アピールポイント>
このシーズの源泉は、まず基礎研究を行い植物の無機栄養とは別に新たに有機栄養分野を切り開いた
ことです。この基礎研究の成果をプラントサプリという有機栄養補助液の形でシーズ化したことです。
この研究は、既に3件申請されていることにも示されているように、さらに新たなシーズを生み出す
ことができます。たとえば OCU ニューテクガイド 2010 で提案したように、植栽に新たなプラントサプ
リを与えて、室内の二酸化炭素濃度を下げてそこに住む人達の居住環境を改善し、合わせて温暖化効
果ガスの削減する研究にも取り組んでいます。
<利用・用途・応用分野>
ビル内などの低照度環境下での植栽保持の用途は広く、プ ラ ン ト サ プ リ による屋内植物の利用分
野やその市場性は地球規模と考えられます。また現在すでに産業として定着しつつある、都市内や近
郊で行われている人工照明による水耕のレタスやトマトなどの野菜栽培においても、プ ラ ン ト サ プ
リ を応用することで、人工照明の照度を下げた栽培が可能になると考えています。
<関連する知的財産権>
知財 1;特願 2005-262445
知財 2;特願 2009-108426
知財 3;特願 2010-48467
<関連するURL>
http://www.sci.osaka-cu.ac.jp/biol/gphys/index.html
http://www.osaka-cu.ac.jp/cooperation/researcher/hirasawa.html
キーワード
野菜工場、水耕栽培、温暖化、都市緑化
データベース
登録
2010.10
シーズ名
抗重力反応を利用した有用植物の生産
氏名・所属 等
保尊
若林
曽我
隆享、理学研究科・生物地球系専攻、教授
和幸、理学研究科・生物地球系専攻、准教授
康一、理学研究科・生物地球系専攻、准教授
<概要>
植物は、地球上のすべての生物にとってエネルギー(栄養)の供給源であると同時に、地球環境の維
持においても不可欠な役割を担っている。このような植物は、数億年前に生物の先陣を切って陸に上
がって以来、重力の力に抵抗する反応(抗重力反応)を発達させて、陸上で進化してきた(図1)。植
物の抗重力反応において、中心的な役割を担っているのは細胞壁である。細胞壁は、セルロース繊維
とマトリックスからなり、個々の細胞を取り囲んでその形や大きさを直接的に制御すると同時に、植
物体全体に力学的な強度を与えている(図2)
。
陸上で抗重力反応を発達させた植物は、水不足、温度変化、圧力や接触など、陸上における他のスト
レスに対しても強い抵抗性を示して繁栄してきた。したがって、人為的に植物体の抗重力反応を活性
化することによって、頑丈でストレスに強く生産性の高い作物を作り出すことができる。また、抗重
力反応の活性化により植物体の大きさや形が変化するので、これをうまく操作することによって、園
芸的価値の高い品種をつくることが可能になる。
細胞壁
重力の大きさ
図1
図2
<アピールポイント>
植物にある種のストレスを与えて、他のストレスに対する耐性を高める発想は独創的であり、特に重
力をその手段に使うアイデアはユニークである。当研究グループは、4回の宇宙実験やそのための地
上研究を通して、重力を有効に利用するためのノウハウを蓄積している。
<利用・用途・応用分野>
1.生産性の高い作物の作出
2.園芸的価値の高い作物の作出
3.有用部位の割合が高い作物の作出
キーワード
植物、環境、作物、食品、園芸
データベース
登録
2010.9
シーズ名
微生物の細胞表層構造の解析とその応用
氏名・所属 等
東
雅之、工学研究科・化学生物系専攻、教授
<概要>
微生物の細胞表層は多糖や蛋白質からなる複雑な構造体で覆われ、その構造は細胞の理解に重要であ
るとともに応用面でも興味深い。酵母の細胞表層の次の点に注目し研究を進めている。
1.ヒトにない真菌特有の構造体で抗真菌薬の標的となる。
2.細胞表層構成成分であるβ-グルカンはヒトの免疫力を賦活する。
3.細胞壁局在蛋白質の一部を利用することで、機能性分子を細胞表層に提示する場となる。
<アピールポイント>
真菌であるカビや酵母の細胞壁はヒトにはない構造で抗真菌薬の標的として注目される。β-1,6-グ
ルカンは細胞壁の多糖・蛋白質複合体形成に中心的な役割を果たしているが、その生合成は不明な点が
多く合成酵素も明らかでない。我々はβ-1,6-グルカンに注目し、その合成に関わる蛋白質が抵抗真菌
薬の標的分子となると考え、その合成機構の解明に取組んでいる。
(2)免疫を賦活する酵母β-グルカンに関する研究
酵母 Saccharomyces cerevisiae の細胞表面の最外層はマンナン蛋白質に覆われβ-グルカンが露出す
ることはない。我々は GPI アンカーに変異を持ちβ-グルカンを表面に露出した株を見いだし、さらに
β-グルカンが露出することで細胞自身が免疫担当細胞であるマクロファージを強く活性化することを
明らかにした。現在、パン酵母の実用化を用い同様の検討を進めている。
また、細胞内に大量のグルカンを蓄積する Schizosaccharomyces pombe の変異株を取得しており、そ
の蓄積機構の解明と蓄積したグルカンの利用について検討している。
SEM
WT
mcd4 Δ
β
-1,3/1,6-
グルカン
QuickTimeý Dz
ÉOÉâÉtÉBÉbÉNÉX êLí£ÉvÉçÉOÉâÉÄ
ǙDZÇà ÉsÉNÉ`ÉÉ Ç¾å©ÇÈǞǽDžÇÕ ïKóvÇ-ÇÅB
1μm
マクロ
m cd4 Δでは表面が粗く
ファージ
グ ルカ ン を 露出
ÉOÉãÉJÉì
サイトカ イ ン
éÛóeëÃ
他の免疫細胞を活性化
(3)触媒提示に適した細胞表層構造の構築
細胞表層に目的蛋白質を提示する技術が開発され、物質生産への応用が期待されている。触媒提示方
法としては、細胞表層に局在する GPI アンカー型蛋白質のアンカー部位を利用した提示方法がこれまで
に確立されている。今後提示した触媒が高効率に働く事が望まれ、そのためには触媒提示や触媒反応に
適した細胞表層環境を創る技術が必要とされる。我々は S. cerevisiae の細胞壁変異株から触媒提示や
触媒反応に適した細胞壁環境の構築を検討している。
<利用・用途・応用分野>
抗真菌薬、機能性発酵食品、微生物触媒。
<関連するURL>
学科案内 http://www.eng.osaka-cu.ac.jp/faculty/bioa/bioa.html
細胞工学研究室 http://www.bioa.eng.osaka-cu.ac.jp/bie/index.html
キーワード
酵母、細胞表層、グルカン、免疫、抗真菌薬
データベース
登録
2010.9
シーズ名
微小液滴の運動制御
氏名・所属 等
加藤
健司、工学研究科・機械物理系専攻、教授
<概要>
固体面上の微小液滴を移動制御する新たな手法を提案
する.液滴が運動するとき,図 1 のように前端と後端で
現れる接触角 θA と θR の差(接触角履歴)が現れ,表面張
力 σ の接線方向合力による抵抗が発生する.接触角履歴
は,壁面上の微細なあらさなどの欠陥部に,液滴付着面
周囲の接触線がトラップされることが原因と考えられて
図 1 接触角の履歴現象
いる.欠陥部を通過する際の抵抗を低減するため,壁面
に超音波振動(28kHz)を施す.ついで,外部からレーザー
を液滴の一端に照射する.固体表面に分子レベルで秩序
的な SAMs(自己組織化単分子膜)を用いると,レーザーの
局所加熱によるランダムな熱振動が原因となり,その分
子配向が乱れるため,固体表面とのぬれ性が改善される.
その結果,レーザー照射端の接触角が他端よりも顕著に
減少し,液滴はレーザー照射端の方向に移動する.図 2
は,本手法の模式図である.図 3 は,液滴が移動する瞬
間での写真例で,照射端(右端)の接触角が顕著に減少し
ていることがわかる.なお,レーザー照射を止めて温度
が低下すると,接触角は可逆的に元の値に戻る.図 4 は,
レーザー出力に対する,1mm3 の液滴(αMSD)の移動速度の
変化を表したものである.本手法を試みた実験結果から,
図 2 液滴移動手法の模式図
1mm3 の液滴の移動抵抗を約 80%低減でき,レーザーの出力
を 200mW にすることにより,0.6mm/s 程度の速度で液滴を
運動させることができた.超音波振動と外部からのレーザー照射を組み合わせた方法により,液滴を
移動制御することができる.
<アピールポイント>
壁面に電極などを埋め込んだ加熱により,液滴を駆動する方法などが提案されているが,構造が複雑
で,液滴の移動方向も制約される.本手法では,簡単な外部からの操作により,自由度の高い移動制
御が可能となる.
<利用・用途・応用分野>
マイクロ流体素子,マイクロリアクター,バイオ関連分野など.
図 3 移動する液滴の写真例
キーワード
図 4 レーザー出力による液滴移動速度の変化
ぬれ、接触角、液滴、Microfluidics
データベース
登録
2010.9
シーズ名
微生物による材料劣化の事例解析
氏名・所属 等
川上 洋司、工学研究科・機械物理系専攻、准教授
<概要>
1960 年代に金属腐食が微生物によって引き起こされることが報告され,種々の腐食現象における微
生物の作用が注目され始めた.金属材料の腐食の 20 %に微生物が関与していること,そして微生物腐
食対策として年間 300~500 億ドルの費用がかかっていることが 1990 年代に報告された.その後,腐
食現象に関与する微生物が注目され,硫酸塩還元菌など金属腐食を引き起こす微生物が同定されると
ともに実験室レベルでの研究が行われてきた.
微生物誘起腐食の特徴として
・pH などの要因では腐食が起こるとは考えにくい環境下においても微生物が関与することに
より腐食が生じ,
・その腐食速度が非常に速い.
・微生物誘起腐食による腐食形態は表面からの観察では表面に小さなピットが生じているだけ
のようであるが,腐食は材料内部に広がっており大きな空洞ができていることが多い.
などがあげられる.言い換えると,微生物誘起腐食は予期せぬところで腐食が生じ,その進行が速
く,目視では発見しにくい.このような特徴は微生物誘起腐食が実構造物に生じた場合,大きな事故
につながる恐れがあり,その被害が大きくなる可能性を示唆している.
腐食が生じた実環境下での再現試験や実環境を模写したラボテストなどにより,問題としている腐
食に微生物が関与していたか調べる.そして微生物誘起腐食が疑われた場合,その対策について考え
る.
<アピールポイント>
微生物誘起腐食に対する関心は広まりつつあるものの,その対象が材料科学と微生物学の両方にま
たがるといった特殊性もあり工学的に不明な点が多いのが現状である.そのため,微生物腐食が疑わ
れても詳細にわたって調査を行わず,腐食した部材を取り替えるなどの対策がとられることが多い.
しかし,部材の交換では腐食の原因を根本から取り除いたことにはならないため腐食が再発する.そ
こで,微生物誘起腐食が疑われた場合,その事例を調査し,確かに微生物誘起腐食であることが確か
められた場合,その対策を立てることが必要である.
<利用・用途・応用分野>
微生物は地球上あらゆるところに生息している.そのなかで微生物誘起腐食が生じるのは水周りで
あることが多い.報告例では発電所や化学プラントの配水管や貯蔵タンクが多く,特に地下水が混入
した冷却水が流れているようなところで発生することが多いようである.このような場所で先に述べ
たような特徴を有する腐食が生じた場合,微生物誘起腐食が疑われるので,一度検査を行うことが望
ましい.
キーワード
材料劣化、微生物誘起腐食、院内感染、汚染、環境
データベース
登録
2010.9
シーズ名
酸化還元タンパク質の構築原理とその利用
氏名・所属 等
北村
昌也、工学研究科・化学生物系専攻、教授
<概要>
硫酸還元菌 Desulfovibrio vulgaris (Miyazaki F)を研究素材として、その遺伝子を解析し、遺伝子工
学的に組換えタンパク質を作り出し、その性質を決定するとともに、積極的な利用法を提案していま
す。
<研究内容の説明>
夏の暑い日、下水の周りは、不快な臭いがしませんか?その臭いの正体は、硫酸還元菌が放出した
硫化水素です(臭いは我慢できますが、実は、毎年数人はこのために亡くなっています)。硫酸還元菌
は、硫酸塩呼吸という特殊な呼吸系で生育しているため、通常の生物が持っていないような特殊なタ
ンパク質を持っています。そこで私は、この菌が持っている補欠分子族(金属イオンやフラビン誘導
体など)結合タンパク質に着目して研究を行っています。このようなタンパク質は、酸化還元という
機能は主に補欠分子族に任せ、ペプチド鎖部分は、「枠組み」となっていますが、ペプチド鎖部分は、
生体内で反応を行う相手の選択や補欠分子族との選択性や結合強度、酸化還元電位の決定をしている
と考えられます。これらの関係を明らかすると同時に、その性質を使って新たな生物プロセスが提案
できないかと考えています。
遺伝子
どんなタンパク質が
できるか?
タンパク質
結合強度
酸化還元電位
細菌の生態
金属や
補欠分子族
ポリペプチド鎖
天然にない
アミノ酸の導入
遺伝子からタンパク質へ
FMN 結合タンパク質の
リボンモデル
金属イオン回収システムの概念図
<アピールポイント>
天然には、たくさんのタンパク質が存在しますが、これを改変する、さらに天然にないアミノ酸を導
入したタンパク質を作り出せば、とてつもない種類のタンパク質を作り出せる可能性があります。つ
まり、タンパク質工学は、目的に合致したタンパク質を「作り出す」無限の可能性を秘めていると言
っても過言ではないかもしれません。酸化還元タンパク質は、状態を制御できる数少ないタンパク質
ですから、タンパク質そのものを利用した素子などへの応用が期待できますし、環境中からレアメタ
ルを回収するシステムも作り出せるかもしれません。
<利用・用途・応用分野>
環境改善を意図した菌の駆除といった消極的な利用だけでなく、積極的な応用を考えています。例え
ば、金属タンパク質の結合金属イオンの選択性を利用すれば、有用微量金属の効率的回収システムが
できると考えています。また、フラビン誘導体と枠組みの関係、つまり酸化還元タンパク質の成り立
ちが理解できれば、新たな分子素子、すなわち 1 分子メモリやスイッチング素子としての用途が考え
られます。
<関連するURL>
http://www.bioa.eng.osaka-cu.ac.jp/bic/index-ie.html
キーワード
酸化還元タンパク質、補欠分子族、金属イオン回収、分子メモリ
データベース
登録
2010.9
シーズ名
光応答性有機フォトクロミック材料
氏名・所属 等
小畠
誠也、工学研究科・化学生物系専攻、准教授
<概要>
光により色の変わる物質をフォトクロミック化合物と呼ぶが、光により分子構造変化を伴うため、さ
まざまな物性が変化する。その中でも、ジアリールエテンは熱不可逆性と繰り返し耐久性に優れてい
るという特徴を有しており、結晶や高分
子媒体中など固体状態においてもフォト
クロミズムを示すことから、さまざまな
用途への応用が期待される。
我々は、用途に応じて望みの機能を有す
る分子の設計および合成を行い、物性を
評価することにより、目的とする性能を
生み出すことを目的として研究を進めて
いる。特に、結晶材料や高分子材料など
固体状態でのフォトクロミック反応系に
着目し、新しい特性を付与した高機能性
材料の開発を行っている。フォトクロミ
ック材料は、光によって、色、屈折率、
誘電率、酸化還元電位、固体表面形状、
図1 フォトクロミックジアリールエテン結晶
単結晶形状などが可逆に変化する。
<アピールポイント>
わずかに分子構造を変える
だけで物性が変化するため、
置換基を変えて分子設計を行
うことにより、目的に合わせ
た要求性能を有する材料を設
計・合成できる。
図2 紫外光を照射により、微小なファイバー状結晶が屈曲し、マイクロビーズ
をはじき飛ばした様子。結晶は可視光照射によって元のまっすぐに戻る
<利用・用途・応用分野>
光プリント材料、記録材料、光
メモリ材料、調光材料、光駆動マ
イクロアクチュエーター(図2)、
光スイッチング材料、各種センサ
ー、濡れ性の制御(図3)などさ
まざまな応用が考えられる。ま
た、フォトクロミックポリマーを
被覆した金属ナノ粒子の合成を
行っており、オプトエレクトロニ
クス分野での応用も考えられる。
図3 結晶成長に基づくフォトパターニング
<関連する知的財産権>
温度センサー関連、表示素子関連で特許出願
<関連するURL>
http://www.a-chem.eng.osaka-cu.ac.jp/kobatakelab/
キーワード
光スイッチング、分子センサー、温度センサー、撥水性
データベース
登録
2010.9
シーズ名
高効率モノクローナル抗体作製技術
氏名・所属 等
立花
太郎、工学研究科・化学生物系専攻、准教授
<概要>
モノクローナル抗体は、バイオ研究はもとより、環境ホルモンの検出、BSE(狂牛病)抗原の判定や各
種疾患の診断薬としても利用され、環境・食品・医療など様々な分野で私たちの暮らしに欠かすことの
出来ないツールとなっている。近年、蛋白質工学や発生工学の進歩により、異種動物抗体のヒト化や動
物を用いた完全ヒト抗体の産生が可能となった。それらがきっかけとなり、モノクローナル抗体をがん
などの治療薬として用いる抗体医薬の普及が爆発的に進み、以前にも増して優れたモノクローナル抗体
作製法の開発が強く求められている。私達は簡便で効率のよいモノクローナル抗体の作製法に関する研
究を行い、腸骨リンパ節法と新規アジュバンドを組み合わせることで高効率なモノクローナル抗体作製
法を樹立することに成功した。
<アピールポイント>
本法はわずか 1 ヶ月で特異性・機能性の高いモノクローナル抗体を作製することが可能である。また
その成功率も従来法に比べ格段に高い。
<利用・用途・応用分野>
キーワード
抗体、バイオ、医療、環境、健康
データベース
登録
2010.9
シーズ名
ケラチンを基材とする高機能細胞足場
氏名・所属 等
田辺
利住、工学研究科・化学生物系専攻、教授
<概要>
iPS 細胞の登場で再生医療への期待が益々高まっているが、再生医療の実現には細胞に加えて増殖分
化因子、細胞足場が重要な要素となる。細胞足場材料としてはコラーゲンが最もよく研究されている
が、BSE 混入の危険性などが指摘されている。我々は羊毛ケラチンを原料として多孔性細胞足場を作
製してきた。羊毛は非血管組織であるので病原体の混入の可能性が低い。また、システイン残基に富
むケラチンは、自然にジスルフィド架橋が起こり非水溶性成形体ができるという特徴を有する。これ
まで、ケラチンを原料として2種の多孔体を作製した。一つはケラチン粉末を NaCl 粒子と共に圧縮成
形後、水中で NaCl を溶出することで得た圧縮成形ケラチン多孔体である。もう一つは、アルギン酸カ
ルシウムビーズを加えたケラチン水溶液を凍結乾燥後、ビーズを EDTA 水溶液中で溶出した極めて空隙
率の高いソフトスポンジである。
Fig. 1 圧縮ケラチン多孔体の製法
Fig. 2 ソフトケラチンスポンジの製法
これらを臨床使用するため、さらに多孔体を高機能化するため次の二つのテーマに取り組んでいる。
(1)血管増殖因子を配備した多孔体を作製:多孔体を細胞と共に生体内に入れた場合、多孔体内部の
細胞への栄養補給が困難になり内部の細胞が壊死するという問題を解決する。
(2)ケラチン多孔体の分解制御:生体に入れた多孔体は、患者組織の再生と共に分解消失することが
望ましい。用途に応じた分解速度を持つ多孔体の品揃えを目指す。
<アピールポイント>
現在、試みている二つの多孔体への機能付加は、再生医療の実現のため極めて重要であり、これが達
成されれば実用化への道が開ける。
<利用・用途・応用分野>
再生医療分野に加え、物質生産のための高密度細胞培養器材としても使用できる。
<関連する知的財産権>
ケラチン多孔体・田辺利住、山内清・特願 2005-58220
<関連するURL>
http://www.bioa.eng.osaka-cu.ac.jp/bme/index.html
キーワード
ケラチン、多孔体、細胞足場、生分解性、血管新生
データベース
登録
2010.9
シーズ名
全反射蛍光 X 線分析法による微量元素分析
氏名・所属 等
辻
幸一、工学研究科・化学生物系専攻、教授
<概要>
血液にはさまざまな元素が含まれており、
生体内で重要な役割を果たしているが、過剰
に含む場合や不足している場合は疾患を引
き起こす可能性がある。そのため、血液中の
元素を分析することは健康診断や医学研究
で重要である。従来の血液元素分析は原子吸
光法、ICP 発光分光分析などによって行われ
ている。しかし、これらの分析法では、血液
試料が数 mL 必要である、前処理が煩雑であ
る、などの短所がある。このような欠点は全
反射蛍光 X 線分析(TXRF)法により克服する
ことができる可能性がある。特に、複雑な前
処理を行わず TXRF により全血試料を測定す
るための簡便・迅速な前処理方法について検
討している。
血液試料をガラス基板の中央に 10μL 滴
下・乾燥し、これを卓上型全反射蛍光 X 線分
析装置(NANOHUNTER, 理学電機工業)によっ
て測定する。As 化合物を飲料水に含ませて投
与した As 中毒のラットの全血を分析したと
ころ、ラットの全血試料に対するスペクトル
から As のピークを確認することができた。
全反射蛍光 X 線分析装置の構成
尿の分析例
尿の分析例
<アピールポイント>
100 秒程度で ppm から ppb レベルの元素分析が大気中で可能である。しかも、試料の量は 10・L 程度
で良く、測定後に試料を残すことも可能である。
<利用・用途・応用分野>
その他の応用としては、生体組織の分析、環境水や大気中の浮遊粒子状物質の分析が期待される。ま
た、マイクロ化学チップにより処理した試料に対しても、全反射蛍光 X 線分析法は有効である。
<関連する知的財産権>
発明者:辻 幸一、田中 啓太、中野 和彦、北森 武彦、渡慶次 学、出願人:科学技術振興機構「マ
イクロチップ並びにそれを用いた分析方法及び装置」、PCT 出願 PCT/JP2006/317078、提出日:2006
年 8 月 30 日.
<関連するURL>
http://www.a-chem.eng.osaka-cu.ac.jp/tsujilab/
キーワード
微量元素分析、マイクロ化学チップ、X 線分析、微小量分析、
その場分析、バイオ試料、環境分析
データベース
登録
2010.9
シーズ名
高空間分解能 3 次元蛍光X線分析
氏名・所属 等
辻
幸一、工学研究科・化学生物系専攻、教授
<概要>
共焦点型蛍光X線分析法では、一次X線をポリキャピラリーレ
ンズなどでマイクロビームに集光して試料に照射する。このとき
検出側のポリキャピラリーレンズの焦点を、照射したマイクロビ
ームの光路中の一点(照射側レンズの焦点位置)に合わせれば、
特定の空間内でのみ発生する蛍光X線を検出することができる。
この実験配置で試料ステージを x-y-z 軸方向に 3 次元走査すれ
ば、試料を損傷させることなく、非破壊で 3 次元の元素分析を
行うことができる。
自動車塗装片の非破壊的元素分析結果
自動車塗装片(断面図)
例えば、自動車交通事故における鑑識捜査では自動車塗装片の深さ方向の元素分析が必要とされる。
この手法を利用すれば、非破壊的に(鑑識資料を破壊せず)内部の情報を取得できる。
<アピールポイント>
非破壊的に試料内部元素分析が可能である。大気中での測定なので、水分を含む試料にも適用できる。
<利用・用途・応用分野>
植物、生体試料の内部の元素分布解析、半導体材料における異物解析、環境試料や考古物試料の分析
<関連する知的財産権>
[1] 発明者:辻 幸一、出願人:科学技術振興機構、
「擬接触型キャピラリーを用いる微小領域 X 線分析
方法及びその装置」、特許第 3989772 号(登録 2007 年 7 月 27 日)、 出願日:2002 年 5 月 21 日.
[2] 発明者: 辻 幸一、駒谷慎太郎、内原博、坂東篤、出願人:公立大学法人大阪市立大学、 株式会
社堀場製作所、「蛍光 X 線検出装置及び蛍光 X 線検出方法」
、特願 2010-104705, 出願日:2010 年 4
月 30 日.
<関連するURL>
http://www.a-chem.eng.osaka-cu.ac.jp/tsujilab/
キーワード
元素マッピング、3 次元分析、X 線分析、深さ方向分析、
その場分析、バイオ試料、環境分析、異物解析
データベース
登録
2010.9
シーズ名
バイオインターフェースとしての天然由来ポリアミン
氏名・所属 等
長﨑 健、工学研究科・化学生物系専攻、教授
<概要>
再生医療・遺伝子治療・抗癌治療などの先端医療が成功するためは、細胞培養法・遺伝子導入法・薬剤送
達法などの優れた基幹技術が必要である。我々は、天然に存在するポリアミン化合物を基体とし生体適合性
や生分解性に優れ安全で効率の高い薬剤運搬材料や培養基材の開発を目指し研究を行っている。
ガラスやプラスチック基材へ細胞接着性を向上させる上で、微生物が産生する ε-ポリ-L-リジン(ε-PLL)が
有用であり、種々の培養細胞や初代細胞の培養に適用可能で、良好な細胞骨格形成をもたらすことを見出し
た。
また天然物由来アミノ化多糖であるキトサンを原料とし、化学修飾による高機能化を行っている。キトサンの
遺伝子キャリアとしての機能を向上させるために、アミノ基密度を増大させた 6-アミノ-6-デオキシキトサン
(6ACT)は生理条件下においてキトサンよりもはるかに優れた水溶性や遺伝子導入効率を有する。さらに、
6ACT に糖修飾を施すことで、より水溶性や細胞適合性に優れかつ細胞ターゲット能を有する素材となる。
一方、ε-PLL は従来の α-PLL や PEI 等と比較して細胞毒性が低く、種々の方法で高分子量化すると、PEI
や市販のカチオン脂質系遺伝子導入剤と比較しても、それらの活性を上回る優れた遺伝子キャリアとして機能
する。
O
OH
O
O m
O
H2N
PLL
H
N
O
NH2+ClS
NH2
H
OH
N
S
ε-PLL
H2N
PLL
O
NH2
HO
NH2+Cl-
H2N
PLL
30
PLL
NH2
O
NH2
n
HO
HO
S
S
NH2+Cl-
N
H
PLL
NH2
HO OH
OH
O
n
HO
OH
NH2
SS-PLL
Δ
– H2O
PLL
NH2
n
HO
OH NH
O
Dehydrated-PLL
HO
O
NH2
OH
O
HO
O
H2N
n
6ACT
NH2+Cl-
H
N
O
NH2
mEG-PLL
OMe
C
H
N
H
m
m=1, 9, 23
MeO
O
x
O
NH2
y
Lac-6ACT
<アピールポイント>
天然素材を基体とし細胞親和性の高い薬剤運搬材料の骨格となるポリアミンに対して、さらに組み合わせ可
能な細胞内局在の制御技術も保有している。例えば、核内移行因子であるインポーティンβタンパクをポリアミ
ンにコンジュゲートすることにより、標的細胞のさらに核内へ効率的に薬剤を送達するシステムを構築すること
が出来る。
<利用・用途・応用分野>
1. 細胞培養基材用コーティング剤
2. 遺伝子・核酸化合物・抗がん剤など各種薬剤のデリバリーキャリア
3. 薬剤の核内送達システム
<関連する知的財産権>
核内移行性核酸構造体・(独)科学技術振興機構・特許 4034274 号
6-アミノ-6-デオキシキトサン,その製造方法およびそれより成る核酸導入剤・(独)科学技術振興機構・特許 4518804 号
細胞培養器具及びその製造方法・チッソ,長﨑 健・特開2007−20444
核酸複合体及びそれを用いる細胞内への核酸導入方法・チッソ,長﨑 健・特開2006-304644
<関連するURL>
http://www.bioa.eng.osaka-cu.ac.jp/bfc/
キーワード
細胞培養基材、遺伝子導入剤、ドラッグデリバリー
データベース
登録
2010.9
シーズ名
安全性の高い止血剤用ハイドロゲル
氏名・所属 等
長﨑 健、工学研究科・化学生物系専攻、教授
<概要>
現在、手術用止血剤としてフィブリン製剤が大量に使用されている。しかし、一般にヒトもしくは動物由来材料
はウイルスやクロイツフェルトヤコブ病などの感染に対する危惧が払拭できないため、医療現場においては他
の安全性の高い材料への置換えが切望されている。
我々は生分解性や生体適合性に優れる微生物が産生する高
分子を基体とし、生体に優しいポリアミンとポリアルデヒドからな
る組織接着性ハイドロゲルを新規に開発した。ゲルを形成する
高分子の主鎖高次構造(三重螺旋構造)や分子量を制御する
ことにより、ゲル化速度及びゲル強度が止血剤として適したハイ
ドロゲルであり、コラーゲンフィルムなどの接着力も高いことを見
出している。ゲル形成成分であるポリアルデヒドとポリアミンは共
に出発原料が食品などにも利用されており高い安全性が期待
される。培養細胞に対する細胞障害性の低さやマウス体内での
生分解性が明らかにされており、マウス出血モデルにおける止
血効果も現在臨床で使用されているフィブリン製剤と同様の効
果を持つことが確認できている。
図. 脳神経外科手術へのハイドロゲルの利用
CHO
OH
HO
HO
OH
HO HO
O
OH
NaIO4
O
OH O
O
OH
x
O
OH
at 4 °C
O O
HO
HO
H
y
HO
O
HO
pH 13
O
O O
HO
O
OH
CHO
OH
x
H
y
β-1,3-グルカン由来ポリアルデヒド
O
NH2
H
OH
N
C
H
O
H2N
ε-PLL
PLL
O
O
23
30
O
HO
O
H
C
N
OH
O
NH2
NH2
O
23
30
OH
NH
N
C
H
O
OH
30
高分子量化ポリアミン
スキーム. ハイドロゲル形成二成分の合成スキーム
<アピールポイント>
ハイドロゲル形成に用いる二成分はヒトや動物由来の組成物を含まないので、ウイルスやプリオンの感染リス
クが非常に低い。本研究で用いる b-1,3-グルカン(ダイソー社製アクアβ®)は側鎖グルコースの分岐率が非
常に高い(ほぼ 100%の分岐率) b-1,3-グルカンであり、側鎖グルコースのアルデヒド化が進行しても高い水溶
性を維持し、製剤として高濃度水溶液を調製可能である。さらに、b-1,3-グルカンは三重螺旋構造を形成し、
その螺旋内部は疎水的な空孔を有する。疎水空孔には難水溶性薬剤を複合体として取込み水溶化し、徐放
も期待でき、薬剤放出ハイドロゲルとして機能することが期待される。
<利用・用途・応用分野>
1. 組織接着剤、止血剤、再生医療用スキャフォールド
2. 骨充填、美容形成注入材
3. 褥瘡用製剤材料
<関連する知的財産権>
β-1,3-グルカン由来ポリアルデヒド/ポリアミンハイドロゲル・ダイソー,大阪市大・PCT/JP2008/070052
<関連するURL>
http://www.bioa.eng.osaka-cu.ac.jp/bfc/
キーワード
ハイドロゲル、止血剤、組織接着性
データベース
登録
2010.9
シーズ名
多機能型新規分解性ポリマー材料
氏名・所属 等
松本
章一、工学研究科・化学生物系専攻、教授
<概要>
分解性ポリペルオキシドは、ジエン化合物と酸素とのラジカル交互共重合体で、モノマーを空気や
酸素中でラジカル重合することにより簡単に合成でき、液状、ゴム状、粉末状、ゲル状など多彩な形
態で供給できる。ポリペルオキシドは、容易に熱分解するほか、光・酵素などで分解できる新規な分
解性ポリマー材料である。熱分解のほか、紫外線照射、酵素やアミンなどによっても分解可能で、熱
分解の場合はポリマーの分子設計により熱分解温度を任意に設定できる。一般の分解性高分子では、
何らかの刺激によって短時間で一気に低分子にまで分解することは難しいが、この新規分解性ポリマ
ー材料は、熱・光・酵素などで一気バラバラに分解できる点に特徴がある。新規分解性ポリペルオキ
シドは、薬剤と結合する官能基を導入したり、親水性基を導入したり、生分解性鎖を導入することが
可能で、これらの機能を組み合わせることにより、ドラッグデリバリーシステム(DDS)、生体内吸
収材料、解体性接着剤など様々な応用展開が可能となる。応用例として、特に、生体内吸収材料・D
DSなどの医療・医薬品分野、生分解性ポリマー材料分野、分解性塗料や解体性接着技術分野での応
用が期待できる。
外部刺激
機能化ポリペルオキシド
機能発現
分解性ポリペルオキシドが関連する応用分野
様々な刺激によって瞬時に分解
分解性塗料,解体性接着剤,粘着テープ製造
関連分野
多様な分解方法,分解生成物の制御
生体内吸収材料,医用材料,DDS,医薬品
関連分野
液体,ゴム,粉末,ゲルなど多様な形状
成形加工,フィルム・生分解性材料関連分野
分解性ポリペルオキシドの機能化と応用分野
<関連する知的財産権>
特願 2003-95858 (国際公開番号 WO2004/087791 A1) 「分解性高分子およびその製造方法」 松本章一
特願 2005-136699 (国際出願番号 PCT/JP2006/309252) 「分解性高分子およびその製造方法」 松本章一
キーワード
分解性高分子、環境調和型材料、ラジカル重合、解体性接着、
ドラッグデリバリーシステム
データベース
登録
2010.9
シーズ名
組換え麻疹ウイルス作製技術を用いた麻疹ウイルスの研究とその応用
氏名・所属 等
扇本
綾田
真治、医学研究科・ウイルス学、准教授
稔、医学研究科・ウイルス学、助教
<概要>
麻疹(はしか)は麻疹ウイルスによって引き起こされるウイルス性疾患で、亜急性硬化性全脳炎(SSPE)
は、麻疹ウイルスが脳内で持続感染した結果生じる予後不良の疾患です。私たちは以下の2つのテーマ
の研究を行っています。
1)麻疹ウイルスワクチンの弱毒化の仕組みを明らかにする。
麻疹の予防には麻疹ウイルス弱毒生ワクチンが非常に有効で、その定期接種により麻疹の罹患は劇的
に減少しています。私たちは麻疹ウイルスワクチン株と野生株の性質の違いを調べて、ワクチン株の
弱毒化の仕組みを明らかにしようとしています。
2)SSPE 患者由来麻疹ウイルスの脳での感染・増殖の仕組みを明らかにする。
私たちはこれまで SSPE 患者の脳より麻疹ウイルスを分離し、通常の麻疹ウイルス(通常の麻疹ウイ
ルスは脳では増殖しにくいと考えられている)との比較研究を行い、SSPE 患者由来の麻疹ウイルスの
変異と神経病原性との関連を明らかにしてきました。さらに、脳での麻疹ウイルスの感染・増殖の仕
組みを分子レベルで明らかにしようとしています。
<アピールポイント>
1)麻疹ウイルスワクチン株は他の疾患の予防・治療(遺伝子治療や各種の感染防御抗原を組み込んだ
ワクチンのベクターとしてや、悪性腫瘍を溶解するウイルスとしての開発が行われている)への利
用に向けた研究が進んでいます。私たちの麻疹ウイルスワクチン株の性質の研究から既存のベクタ
ーよりもそれぞれの用途により適したベクターを開発できないかと考えています。
2)SSPE 患者由来麻疹ウイルスの神経病原性は小動物を用いた感染実験により検定しています。麻疹ウ
イルスの脳での感染・増殖の仕組みの研究から抗ウイルス薬をデザインして、さらに、この動物感
染実験系を用いて SSPE の新たな治療法を開発できないかと考えています。
<利用・用途・応用分野>
1.麻疹ウイルスワクチンを用いた悪性腫瘍の溶解療法
2.麻疹ウイルスワクチンをベクターとし、各種の感染防御抗原を組み込んだ新たなワクチンの開発
3.麻疹ウイルスワクチンの遺伝子治療用ベクターとしての利用
4.SSPE の新たな治療法の開発
5.ヒト免疫不全ウイルスの脳内感染等、他の RNA ウイルスの神経系における感染・増殖メカニズムの
解明
麻疹ウイルスワクチン
の性質を明らかにする研究
1. 悪性腫瘍の溶解療法
2. 新たなワクチンの開発
3. 遺伝子治療用ベクター
キーワード
麻疹ウイルスの脳での増殖
の仕組みの解明
1. SSPEの新たな治療法の開発
2. RNAウイルスの神経系におけ
る増殖メカニズムの解明
亜急性硬化性全脳炎、遺伝子変異、ワクチン、がん、遺伝子治療
データベース
登録
2010.10
シーズ名
白血球(好中球、単球)機能の制御
氏名・所属 等
加藤
隆幸、医学研究科・細胞情報学、講師
<概要>
好中球は生体防御、とくに自然免疫において中心的役割を担っている。異物の侵入や、感染にすばや
く反応して感染巣へ移動し、貪食、活性酸素、脱顆粒によって侵入してきた細菌を排除する。その一
方で敗血症などに続発する SIRS などにおいては好中球の過剰反応が病態の増悪につながるとされて
おり、その制御システムを解明することは臨床的にも重要である。ヒトの末梢血から好中球・単球を
分離し、種々の試薬および生理活性物質によるタンパク質の修飾を解析している。活性酸素の放出、
サイトカインの産生、アポトーシス、細胞骨格の再編成や細胞運動、細胞接着など解析し、細胞内情
報伝達がどのように関わっているのかを調べている。
<アピールポイント>
ヒトから分離した好中球・単球を用いて研究を行っている。ヒト由来の正常細胞に関する知見が得ら
れるため、意義があると考えられる。
<利用・用途・応用分野>
炎症性疾患の治療法の開発、確立。造血器疾患の治療法の開発、確立。
<関連するURL>
http://www.med.osaka-cu.ac.jp/physiology2/
キーワード
造血幹細胞、好中球、単球、アポトーシス、細胞内情報伝達
データベース
登録
2010.9
シーズ名
脂肪性肝炎・肝硬変を生じるウサギモデル
氏名・所属 等
河田
則文、医学研究科・肝胆膵病態内科学、教授
<概要>
メタボリック症候群が注目を集めていますが、糖尿病にしても、高脂質血症にしても、最終的には患者
さんの肝臓が障害を受けて、脂肪肝となり、その後脂肪性肝炎・肝硬変で亡くなることが分ってきまし
た。それにも関わらず、適当な動物モデルが現在ないため、メタボリック症候群による肝臓病を治療し
たり、予防する薬を開発し・スクリーニングすることは現在では不可能です。私達の研究室では、動脈
硬化症モデルとして使われていたウサギモデルを改良して、高コレステロール・高脂肪食を食べさせる
だけでウサギに脂肪肝、脂肪性肝炎、肝硬変をつくることに成功しました。このモデルは、腹部大動脈
には粥状硬化症がみられ、耐糖能異常もあり、まさにヒトの病態と似ています。このモデルを、有望な
薬剤のスクリーニングに利用することを提供します。
下の図は、正常のウサギの肝臓(左)と高脂肪食を食べさせたウサギの肝臓(右)を示しています。
肝臓が白色化していることで、脂肪肝になっていることがわかります。
<アピールポイント>
このモデルは、アミノ酸欠乏食を食べさせたり、遺伝子改変で肝障害を起こすのとは異なり、正常食に
高コレステロール・高脂肪食を混ぜるだけでできます。従って、飽食によるヒトのメタボリック症候群
と似ています。ウサギさえ手に入れば簡単に作成できます。
<利用・用途・応用分野>
メタボリック症候群に関係する糖尿病や高コレステロール血症のお薬は多数ありますが、それらが脂肪
性肝炎にも効果があるかどうかはわかっていません。新しい薬の開発、健康食品の効果のスクリーニン
グに利用できます。
<関連する知的財産権>
動脈硬化症モデルとして使われていたものを改良しただけであり、特にありません。
<関連するURL>
http://www.med.osaka-cu.ac.jp/syoukaki/
http://www.pubmedcentral.nih.gov/articlerender.fcgi?tool=pubmed&pubmedid=17322381
キーワード
メタボリック症候群、脂肪肝、肝硬変、飽食
データベース
登録
2010.9
シーズ名
新規ヒト過労マーカー
氏名・所属 等
木山
博資、医学研究科・機能細胞形態学、教授
<概要>
ラット疲労モデル動物を用いた研究では、過労が慢性的に継続すると、内分泌系の中枢臓器である下
垂体の一部の細胞が細胞死に至ることが明らかになった(下図)。
この細胞死を起こす細胞は下垂体中間葉に存在する細胞で、αMSH というホルモンを分泌する。過労
状態ではこのαMSH の産生・分泌が活発になり、過労が継続するとαMSH の産生・分泌が止まらなくな
り、結果的にこの細胞は過労死をおこす。細胞死は主に中間葉の小葉中央部に見られるが、過労負荷
をかけるとこの細胞は小葉周辺から新たに分裂し再生する。したがって、過労が継続する間αMSH の
血中の濃度は上昇し続ける。過労負荷を停止すると、αMSH の血中レベルはすみやかにもとに戻る。
この動物実験の結果をもとに、ヒトの慢性疲労症候群(CFS)の患者での血中αMSH を計測すると、罹病
5 年以内では有意なαMSH の上昇が認められた。また、一晩の徹夜のような短期的な過労ではαMSH の
上昇は見られなかった。これらの結果より、αMSH はヒトの慢性疲労のマーカーとして応用できると
考えられる。
参考文献
Ogawa T, et al, J Neurochem (2005) 95: 1156-1166
Ogawa T. et al, J Neurochem (2009) 109:1389–1399
<アピールポイント>
・罹病 5 年以内の慢性疲労症候群の診断に利用できる。
・短期間の疲労やストレスでなく、蓄積した疲労を検出するのに適している。
<利用・用途・応用分野>
・慢性疲労症候群の診断
・検診による慢性化した疲労や長期の過労のスクリーニング
・過労死の予防
・慢性過労に対する医薬品・特保・サプリメントの評価
<関連する知的財産権>
•発明の名称 :疲労度の判定方法および疲労度判定キット
•出願番号
:特願2009−115685
•出願人
:公立大学法人大阪市立大学
•発明者
:木山博資、池島信恵、小川登紀子、渡辺恭良、倉恒弘彦
キーワード
疲労、下垂体、バイオマーカー、αMSH
データベース
登録
2010.9
シーズ名
バイオセンサーとして働くイオンチャネル
氏名・所属 等
久野
みゆき、医学研究科、准教授
<概要>
各臓器を構成する細胞膜にはイオンを選択的に通す蛋白分子(イオンチャネルやトランスポータ)があ
る。さまざまな化学的・物理的刺激によってチャネル活性が変動し、細胞の電気信号、細胞応答、ホメ
オスターシスが調節される。チャネルは刻々と変化する細胞内外環境の鋭敏なバイオセンサーとして働
いている。
様々な刺激
ホルモン
薬剤
毒物
温度
音
光
酸・アルカリ
張力・重力
電気信号
細胞応答
(分泌・分化・増殖)
チャネル
浸透圧・pH
細胞
物質輸送
イオン
例:プロトンシグナル
pH を決定するプロトンイオン(H+)は、生体膜を介する物質の取り込みや・排出、酸分泌、味覚、骨
吸収、感染初期の自然免疫過程、痛みの発生、組織のアシドーシス・アルカローシスなど、多彩な生理
的・病理的現象と深く関わっている。プロトン濃度が一定の範囲に保たれるように、多くの pH 調節機
構があるが、特に細胞膜にはプロトンを細胞内外に輸送するさまざまな分子が存在する。例えばプロト
ンチャネルは細菌など異物を処理する食作用に不可欠であり、プロトンポンプは骨組織を溶解し骨リモ
デリングを行う。これらの分子の異常は、易感染性や骨粗鬆症などの病態を引き起こすことが知られて
いる。
<アピールポイント>
パッチクランプ法によるチャネル活性のリアルタイム定量測定し、刺激要因を検出することができる。
<利用・用途・応用分野>
創薬・バイオセンサー開発・骨粗鬆症の治療
<関連するURL>
http://www.med.osaka-cu.ac.jp/molcelphysiol/
キーワード
イオン、チャネル、プロトン、骨代謝、ホメオスターシス
データベース
登録
2010.9
シーズ名
メタボリック症候群と関節炎
氏名・所属 等
小池
達也、医学研究科・リウマチ外科学、准教授
<概要>
関節リウマチ患者は、炎症により関節に腫脹が生じ、骨軟骨の破壊が進行する。実際の臨床の現場で
は、痩せている人よりも太っている人の方で症状が軽い印象がある。一方、関節リウマチ患者の寿命は
短いとされており、死亡総数が最も多いのは循環器系の疾患によってであることが報告されている。と
ころが、関節リウマチ患者の長期予後を調査した研究では太っている患者の方が寿命が長いことが証明
された。ここには大きな矛盾が存在している。通常、太っている人に循環器系の疾患が多いとされてい
るので、太っている人の方が寿命は短いと予測されるからである。そこで、肥満が関節炎を抑制するよ
うな機構が存在するのはないかと考え、肥満細胞が産生するレプチンを分泌できないマウスを用いて関
節炎を発生させる実験を行った。すると、太っているマウス(レプチンを出せない)においては関節炎
の発症進展が抑制されることが明らかになった。これにより、脂質代謝を調整する物質が、関節炎をも
コントロールできる可能性が示された。
また、関節の炎症を抑制し、次に関節軟骨を再生させることが治療の最終目標となるが、現時点では
有効な薬剤は同定されていない。我々は、副甲状腺ホルモン関連ペプチドが軟骨の増殖と分化を促進す
ることを見いだしており、上記結果と合わせてより、より理想に近い治療法を開発できると考えている。
<アピールポイント>
肥満という生命予後に悪く作用すると考えられている因子が、関節炎に対しては抑制因子として作用
し、生命予後を逆に改善する可能性があることを明らかにした。
<利用・用途・応用分野>
関節炎治療、軟骨再生。
<関連する知的財産権>
副甲状腺ホルモン関連ペプチドの変形性関節症あるいは慢性関節リウマチに対する治療効果を細胞培
養系で証明して、使用特許を申請した。特許出願「変形性関節症および炎症性疾患治療剤」特願平 7-30803
号
キーワード
関節リウマチ、メタボリック症候群、副甲状腺ホルモン関連ペプチ
ド
データベース
登録
2010.9
シーズ名
再生医療における iPS 細胞の足場となる scaffold の開発
氏名・所属 等
高松
聖仁、医学研究科・整形外科学、講師
<概要>
当教室の同門である山中伸弥(京都大学・iPS 細胞研究センター長)らが開発報告した iPS 細胞は、
人間やマウスの皮膚から採取した細胞から作成されており、増殖能力が旺盛で大量培養できるため今
後の再生医療の中で大きな期待が寄せられている。ただ、実際にこの細胞を人に応用することを考え
ると細胞のみを注入できる状況は限定されており、細胞増殖の足場となる scaffold と共に生体へ移植
する方法が将来の再生医療の軸の一つとなると考えられる。しかし、iPS 細胞もしくは iPS 細胞から
誘導された細胞が、まず in vitro において scaffold 上で生着できるのか、もし生着できたとしても
その場で腫瘍化することはないのか、scaffold 上で分化は進むのか、それとも多能性が維持されるの
かはいずれもまだ明らかにされていない。
これまで我々は、末梢神経欠損部再建用の生体吸収性材料による人工神経(ポリマーチューブ)を開
発し、それに培養シュワン細胞を組み合わせるハイブリッド型人工神経を作成してきた。そして、そ
れら一連の実験の中でシュワン細胞の生体吸収性材料上での三次元培養に成功している。
その技術を応用し、本研究では iPS 細胞から神経系細胞に誘導された細胞を用いて、生体吸収性人工
神経上でその細胞の接着・生着能力、腫瘍化、分化について研究を行っている。すなわち、iPS 細胞
をどの程度分化させた状態で、どのような生体吸収性材料の上で培養し、どの程度の期間体外で培養
し、最終的に誘導された細胞がどのような能力と性質を持っているのか検討を加えている。
これらを明らかにし、末梢神経の領域のみならず他分野に応用できる iPS 細胞の足場となる scaffold
を開発し今後の iPS 細胞を用いた再生医療の礎のひとつとしたい。
<アピールポイント>
これまで当教室では、末梢神経欠損部再建用の人工神経の開発と研究を 10 年以上行っており、以下
のような研究の蓄積がある。
1.生体内で一定の期間形態と機能を維持した後に吸収される素材の開発
2.生体外で細胞と組み合わせて三次元培養が可能な形態の生体材料の開発
3.生体外で細胞が接着しやすい生体材料の開発
4.生体外で細胞の成長因子を付加できる生体材料の開発
5.生体内で細胞の成長因子を徐放するドラックデリバリーシステムの開発
6.生体外で生体材料と細胞を組み合わせて培養する技術の開発
7.iPS 細胞から神経系細胞へ誘導する技術の確立
8.生体材料上での細胞の性質に関する評価技術の確立
<利用・用途・応用分野>
この技術が確立されれば、iPS 細胞から誘導された細胞を生体内に移植する際に、足場としての
scaffold 上で三次元培養された大量の iPS 誘導細胞を移植することが可能となる。
そのことは、移植した iPS 誘導細胞が拡散することなく標的臓器においてより有効に機能するために
必要な技術と考えられる。
<関連する知的財産権>
主要特許【発明の名称】神経再生チューブ 【発明者】高松聖仁
【課題】切断された神経を再生する。
【解決手段】生体吸収性高分子から構成されるスポンジ、及び、該スポンジより分解吸収
期間の長い生体吸収性高分子から構成される筒状の強化材を含み、少なくとも内面がス
ポンジである神経再生チューブ。
【出願日】平成13年7月9日【公開日】平成15年1月21日
【出願番号】特願2001−208179(P2001−208179)
<関連するURL>
http://www.med.osaka-cu.ac.jp/orthoped/group/05handsur.html
キーワード
iPS 細胞、生体材料、神経、scaffold、再生医療
データベース
登録
2010.9
シーズ名
内視鏡を用いた低侵襲脊椎外科手術の開発
氏名・所属 等
中村
博亮、医学研究科・整形外科学、教授
<概要>
近年、手術侵襲の低侵襲化を目的として外科手術への内視鏡の応用が進んでいる。脊椎外科手術
においても例外でなく、同様の手術効果が得られるならば、患者さんはより皮膚切開の小さな内
視鏡手術を選択する傾向にある。われわれは国内の脊椎内視鏡視下手術の草分け的存在であり、
多くの内視鏡視下手術を行い、その発展に貢献してきた。また、内視鏡視下手術をより安全に、
簡便に行う目的で機械の開発などを手がけてきた。
<アピールポイント>
われわれは国内でも早期より脊椎内視鏡手術に取り組んできた教室であり、
今までにも独自の内
視鏡視下手術機械の開発などを手がけてきた実績を有する。
<利用・用途・応用分野>
内視鏡手術、脊椎手術全般
<関連するURL>
http://www.med.osaka-cu.ac.jp/orthoped/
内視鏡を併用した椎体形成術(骨粗鬆性椎体骨折後偽関節に対する手術)の
風景
左からシェーマ、実際の手術写真、術中イメージ画像、内視鏡画像
このように内視鏡を通過させるだけの小さな皮切で椎体内部を観察しながら
手術を行うことができるのが利点である。
内視鏡視下椎弓形成術の手術中写真
直径約 20 ミリの皮切で脊柱管の内部を詳細に観察しながら神経除圧術を行うことがで
きる。そのためには高解像度の画像装置と特殊な手術道具の開発が必須となる。
キーワード
脊椎手術、低侵襲、内視鏡手術、骨粗鬆性椎体骨折、椎体形成術
データベース
登録
2010.9
シーズ名
細菌由来糖脂質分子の免疫惹起能とその応用
氏名・所属 等
藤原
永年、医学研究科・細菌学分野、講師
<概要>
病原微生物を含む細菌はタンパク質を始めとする種々の抗原物質を産生する。細菌感染症における宿
主免疫応答は、タンパク質抗原を中心に解明され多くの知見が集積されている。結核菌を含む抗酸菌
の特徴は天然では希な長鎖脂肪酸であるミコール酸を多量に含むことである。これら脂質分子の宿主
免疫応答については歴史が浅い。1990 年代に初めて
ミコール酸が CD1 分子を介して T 細胞に認識される新
規宿主認識機構が解明された。さらにセラミド含有糖
脂質を認識する NKT 細胞の存在も報告され、自己免疫
疾患との関わりが議論されている。我々は右図に示し
た様に、細菌が産生する特徴的な糖脂質分子であるミ
コール酸含有糖脂質およびセラミド含有糖脂質につ
いて、それら脂質分子の構造解析、生合成や機能解析
に加え、多彩な生理活性について検討している。これ
ら脂質分子を用いた新規の免疫惹起能を応用した健
康増進、感染症制圧パラダイムを提供したいと考えて
いる。
1)ミコール酸含有糖脂質
ミコール酸含有糖脂質は結核菌やらい菌を含む抗酸菌に広く分布する特徴的な糖脂質分子である。
cord factor (terhalose-6,6’-dimycolate) は結核菌の病原因子と考えられ、種々の免疫薬理学的活
性を持ち、多方面への応用が可能と考えられる。実際、これら糖脂質を含む画分は結核の血清学的迅
速診断法の開発や、膀胱ガン、肺ガンへの応用も検討されている。単にアジュバンドや免疫惹起物質
としてのみでなく、保湿効果や細胞の新陳代謝促進など多方面への応用が期待される。
2)セラミド含有糖脂質
セラミド含有糖脂質は我々が提唱した Sphingomonas、Sphingobacterum 属を規定する特徴的な糖脂質
である。セラミド含有糖脂質は哺乳動物に広く分布するが、細菌には非常に珍しく、その構成脂肪酸、
長鎖塩基が異なり、糖についても特徴的である。CD1d 分子拘束性 NKT 細胞を強力に活性化する海綿由
来α-ガラクトシルセラミドと構造相関性があり、その生理活性に興味が持たれる。最近セラミド分子
は主に保湿成分として化粧品へ応用されているが、我々は既にアポトーシス誘導等の生理活性に注目
し、細菌に由来する本糖脂質分子の構造解析、宿主認識機構、免疫薬理学的応用について検討を進め
ている。また、本糖脂質を持つ Sphingomonas 属はダイオキシン分解活性があり、環境浄化への応用も
可能と考える。
<アピールポイント>
従来の抗原分子はタンパク質を中心に主要組織適合抗原 (MHC) クラス I, II により宿主免疫応答が
成立しているが、脂質分子は MHC クラス I, II 以外の新たな CD1 分子拘束性 T 細胞により抗原認識さ
れる。我々は細菌由来の特徴的な脂質分子の免疫惹起能を応用した健康増進、感染症制圧に向けたユ
ニークな取り組みを行う。
<利用・用途・応用分野>
感染症関連では、脂質分子を用いた診断、新規治療薬の開発(細菌増殖に必須な脂質生合成の阻害剤
開発)、ワクチン開発に応用可能である。
バイオ製品として保湿効果、免疫惹起による細胞の新陳代謝促進などに応用可能である。
<関連する知的財産権>
特になし
<関連するURL>
特になし
キーワード
感染症迅速診断法、抗化学療法薬、免疫惹起能、細胞活性化
データベース
登録
2010.9
シーズ名
結核ワクチン BCG の組み換え DNA 技術
氏名・所属 等
松本
壮吉、医学研究科・細菌学分野、准教授
<概要>
結核ワクチン BCG は、これまで最も多くの人に投与されたワクチン(20 億人以上)である。BCG は牛型
結核菌の弱毒株で、生菌として投与するいわゆる生ワクチンである。投与後ヒト体内で生存するため
効果が持続する。また、抗酸菌特有の細胞壁脂質は古くから強い免疫賦活作用を有することが知られ、
癌やアレルギーの治療効果が確認されている。
難治性疾患対策として、アデノウイルスベクター等を用いた遺伝子治療の開発が進行している。BCG
の現在までの実績(安全性が立証済みであり、安価に生産できる)と前述のような強い免疫賦活能や持
続性を有するという特性から、難病の予防や治療応用に期待される。
私は抗酸菌蛋白質の研究途上、分子生物学的手法の確立に迫られ、長期間 BCG 内で保持されるベクタ
ーや外来遺伝子(難病の予防/治療抗原を含む)の BCG での安定な発現系を構築した。BCG の組み換え技
術や資源を利用して BCG を遺伝的に改良し、難病の予防や治療に活用することが可能である。
<アピールポイント>
ヒトの防御免疫を効率的に誘導する効果的—安全—安価な予防/治療ワクチンの開発
<利用・用途・応用分野>
・難治性感染症(結核、AIDS、マラリア、インフルエンザなど)に対するワクチン開発
・癌やアレルギーの予防や治療への応用
<関連する知的財産権>
1. 出願番号:特願 2008-277012、発明者:松本 壮吉、山本 法明、発明の名称:MDP1 を用いた炭
水化物を有する物質の分離方法 出願人:コニカミノルタホ−ルディングス株式会社、出願日:平
成 20 年 10 月 28 日
2. 出願番号:PCT/JP2009/061819、発明者:山本 法明、松本 壮吉、山本 法明、発明の名称:MDP1
による微生物を凝集および/または沈殿させる方法:出願人:コニカミノルタホ−ルディングス株
式会社、出願日:平成 21 年 6 月 29 日
3. 特許第 4415200 号、発名者、山田 毅、松本 壮吉、発明の名称:遅発育性抗酸菌ポリペプチド、
特許権者 大塚製薬株式会社、山田 毅、松本 壮吉、特許取得日;平成 21 年 12 月 4 日
<関連するURL>
http://www.med.osaka-cu.ac.jp/bacteriology/indexJap.html
キーワード
結核、感染症、アジュバント、BCG、膀胱癌
データベース
登録
2010.9
シーズ名
マウス ES 細胞を用いたモデルマウス作成と、DNA 修復遺伝子を用いた
癌治療増感と環境影響の解析
氏名・所属 等
森田
隆、医学研究科・遺伝子制御学、教授
<概要>
哺乳動物の組換え遺伝子は、DNA の損傷を正確に組換えにより修復することができる。癌細胞におい
ては、この機能を抑制することにより、放射線や抗がん剤の感受性を高め、低線量、低用量で同じ治
療効果を期待でき、患者さんの QOL を高めることも可能である。このような薬剤として修復遺伝子の
発現を抑制する siRNA の効果を明らかにし、特許を本年 6 月取得した。
<アピールポイント>
これまで、マウス ES 細胞を遺伝子改変マウスを作成する材料として用いてきたが、これからは、国
際宇宙ステーションに打ち上げて、宇宙放射線の感受性を検出し、宇宙での長期有人宇宙飛行への安
全性の指標の作成を試みている。
<利用・用途・応用分野>
ES 細胞を利用した発生工学分野、
組換え機能による放射線影響の解析、
組換えに関与した生殖機能の解析
<関連する知的財産権>
(1) 相同組換反応に関与するマウス遺伝子
特許第 3509886 号
登録日 2004/1/9
発明者 森田 隆、松代愛三、
出願人 森田 隆
(2) RNAi による新規治療法および治療剤
特許第 4526228 号
登録日 2010/6/11
発明者 森田 隆、吉田佳世、
出願人 森田 隆
(3) 発明の名称:サイトグロビン遺伝子の機能が欠損している非ヒト疾患モデル動物
出願番号:特願2008-221841
出願日:平成20年8月29日
発明者:河田 則文、志賀 亮、森田 隆、吉田 佳世、吉里 勝利
出願人:河田 則文 様、森田 隆
キーワード
胚性幹細胞、宇宙放射線、環境、DNA 切断、DNA 修復
データベース
登録
2010.9
シーズ名
SHP2 基質分子を標的とした阻害剤の開発
氏名・所属 等
渡邉
哲史、医学研究科・生理学第2、特任助教
<概要>
酵素の一種であるチロシンフォスファターゼ SHP2 は、低身長、先天性心疾患、発達遅滞を特徴とす
る Noonan 症候群の原因遺伝子の一つであり、また種々の骨髄性白血病において変異が認められる。こ
れらの疾患では SHP2 の活性が上昇しており、これによる細胞増殖を引き起こすシグナル伝達経路の活
性化が発症の一因と考えられている。したがって、このシグナル伝達経路中で SHP2 が基質としている
分子の特異的な阻害剤の開発は、上記の疾患の治療薬となる。
<アピールポイント>
これまで、明らかになっていなかった疾患発症に関わる SHP2 の基質分子を同定する。
<利用・用途・応用分野>
同定した基質分子をターゲットとした阻害剤を開発し、Noonan 症候群や骨髄性白血病に対する治療
薬の創出へと発展させる。
<関連する知的財産権>
なし
<関連するURL>
なし
キーワード
SHP2、基質阻害剤、Noonan 症候群治療薬、骨髄性白血病治療薬
データベース
登録
2010.9
シーズ名
抗加齢(アンチエイジング)効果を持つ栄養成分の探索
氏名・所属 等
西川
禎一、生活科学研究科・長寿社会総合科学講座、教授
<概要>
◆ 研究の背景:悪性腫瘍や肺炎は加齢と共に増加します(図1)。しかし、高齢社会のわが国では、
高齢者も現役であることが求められており、健康寿命の延長こそが重要です。
◆ 研究目標と内容:実験動物を用いてアンチエイジング・免疫賦活など健康寿命の延長に有用な食品
成分を探索し、「滋養強壮」と言う漠然とした概念に科学のメスを入れる(図2、3)
図1. 男女共に 30 代から悪
性新生物(癌)による死亡が
増え、70 代以降は肺炎による
死者が急増します。加齢によ
る生体防御機能の低下も一つ
の要因と考えられています
OP50
(n=141)
対照(n=141)
LP (n=89)
LR (n=144)
LH (n=131)
W o r m S u r v iv a l ( % )
100%
生 80%
存
率 60%
図2. 当研究室では上図のような線虫を
用いて栄養などが寿命や免疫力に与える
影響を調べています。
40%
20%
0%
0
5
観 察 期 間
10
15
Time (day)
20
25
図3. 線虫にある種の被験物を食べ
させたところ、普通の餌を食べている
対照群に比べ有意に寿命が延びまし
た。私達の食生活も健康と寿命に大き
な影響を与えると考えられます。
<アピールポイント>
私達が開発した図2のような実験系を用いて、有用な機能成分の発見を目指します。
<利用・用途・応用分野>
食品・栄養・医療・医薬・漢方・健康食品・サプリメント・滋養強壮
<関連する知的財産権>
1. 「被検物質評価方法」 出願人・発明者:西川禎一、特願 2006-332851
2. 「被検物質評価方法」 出願人・発明者:西川禎一、特願 2007-320214
<関連するURL>
http://www.life.osaka-cu.ac.jp/cgi/pro.cgi?4102
http://www.occn.zaq.ne.jp/cuiyx806/home.html
キーワード
老化・免疫賦活・生体防御・栄養・機能性食品
データベース
登録
2010.9
シーズ名
光合成活用次世代エネルギー開発(1/2)
氏名・所属 等
橋本
秀樹、複合先端研究機構、教授
<概要>
光合成細菌の光合成系は,自然が創造した超高速(100 フェムト秒以下)かつ高効率(~100%)な光
エネルギー変換機構を解明するための本質的なバイオナノデバイスであるばかりでなく,太陽光エネ
ルギーの有効利用と言う観点から眺めた場合,人類の存亡に関わる根源的な問題解決に向けての急務
な研究対象である.光合成初期過程の機能発現には,LH2,LH1 と呼ばれる2種類のアンテナ色素蛋白
複合体と光反応中心複合体(RC)の合計3種類の色素蛋白複合体が関係している.原子間力顕微鏡(AFM)
を用いた光合成膜のその場観察により,これら3つの色素蛋白複合体が自己組織化により集積した超
分子配列が,機能発現に密接に関係している様相が明らかにされつつある.本研究では,天然由来の
色素蛋白複合体及び精密有機合成と分子生物学の技術を駆使して色素および蛋白構造を改変した人工
の色素蛋白複合体を脂質二重層膜に任意の比率で配列させた人工光合成膜を創成する.透過型電子顕
微鏡(TEM)及び原子間力顕微鏡(AFM)により膜内での色素蛋白複合体の超分子配列の確認を行いな
がら,極限の時間分解能と安定性を有するコヒーレント分光計測と時間分解顕微分光計測を適用する
ことにより,光合成初期過程の真の実時間・実空間計測を達成し,世界にさきがけて,個々の色素蛋
白複合体間の位相緩和情報も含めたエネルギー伝達のメカニズムの本質的な理解を達成する.さらに,
得られた知識を統合し,次世代型の太陽光発電システムと次世代型エネルギー(太陽水素,バイオガ
ソリン)生産システムを構築し,その機能解析を行う.
研究内容のイメージ図
TEM 及び AFM により決定した人工光合成膜内における LH2 及び RC-LH1 色素蛋白複合体の2次元空間
配列。これは想像図では無く,実際の観測により得られた情報をもとに作成した図(見てきたような
では無く,見てきた図)である。LH2 から LH1 を経て RC に高効率な励起エネルギー移動が実現されて
いるが,色素蛋白複合体がどのように空間配列し,どのような経路でエネルギー伝達されたら最高効
率が得られるのか?と言う根源的な問題解決に挑戦している。図で示した黄色矢印の実体を明らかに
することが,この研究の目標である。この事が実現できれば,太陽光エネルギーをフル活用した新奇
太陽光エネルギー変換デバイス開発への道が切り開かれる!
キーワード
光合成、次世代エネルギー開発、超高速レーザー分光計測
データベース
登録
2010.9
シーズ名
光合成活用次世代エネルギー開発(2/2)
氏名・所属 等
橋本
秀樹、複合先端研究機構、教授
<アピールポイント>
JST-CREST,ヒューマン・フロンティア・サイエンスプログラム,日産科学振興財団特別研究助成,
JST-ATSP 等の大型競争的外部資金を獲得し,精力的に研究を展開している。時代の潮流に乗って,大
きな成果が期待されている。菅新政権では,グリーン・エネルギーの開発が要求されているが,正に
その政治指針にも合致する研究であり,今後益々の発展が期待されている。
<利用・用途・応用分野>
色素増感型太陽光発電や太陽光を利用したバイオ燃料生産など,その応用分野は図り知れない。機能
解析に用いる最先端レーザー分光計測は,光計測の分野での技術革新に繋がる。
<関連する知的財産権>
“カロテノイド類およびその製造方法”(特願平 10-283423),
“レチノイド類およびその製造方法”(特願平 10-327457),
“重水素を有するテルペノイド類の製造方法”
(出願整理番号 K00398JP00),
“π電子共役分子の二光子励起による光反応制御方法”(特願 2001-73160),
“共役ポリエン分子の光反応制御方法”(特願 2003-74260)
,
“遠赤外光発生装置”(特願 2003-299239),
“テラヘルツ波発生装置”(特願 2003-299239),
“位相特性測定装置”(特願 2003-343638),
“ガン抑制剤及びガン抑制方法”(特願 2006-039270),
“フコキサンチン—クロロフィル a/c タンパク質の製造方法”
(特願 2009-211721)
<関連するURL>
http://www.sci.osaka-cu.ac.jp/phys/PBM/index-j.html
http://www.ocarina-ocu.jp/
http://www.photonics.jst.go.jp/ja/subject/index3.html#03 (CREST/JST)
キーワード
光合成、次世代エネルギー開発、超高速レーザー分光計測