VI-070 超長距離・高速掘進シールドにおけるビット摩耗特性について 関西電力(株)中央送変電建設事務所 田中一雄,正会員 大道武治,正会員○深海仁司 鹿島・三井・青木・清水・戸田共同企業体 正会員 山本 享,正会員 坪内範和 大成・佐藤・間・大豊・フジタ共同企業体 正会員 脇田雅之,小倉嵩敬 1.はじめに 関西電力(株)では大阪市内の電力需要増加対策として、50万ボルト地中送電線用洞道の建設を進めている。 その内、JR新大阪駅近傍の三国立坑と大阪北部に位置する万国博記念公園内の万博立坑を結ぶ区間(約 11.5km) において、第2工区が5.0㎞、第3工区が6.5㎞の超長距離を泥水加圧式シールドにより高速で掘進し、地 中接合させた。超長距離掘進における重要な課題はカッタビットの耐久性確保であり、今回の工事では高硬度超 硬チップ(E3 材相当)を採用している。本報では、そのカッタビットの摩耗特性について中間報告する。 2.工事概要とビット概要 工事概要を表-1、シールドルート土質縦断図を図-1、ビット概要を表-2に示す。 表-1 工事概要 表-2 ビット概要 (第2工区) 項 目 個 数 備 考 メインビット(E3材相当) 98 高さ65mm、幅100mm ゲージカッタ(E3材相当) 12 最外周部のカッタビット 予備ビット(E3材相当) 36 高さ65mm、幅100mm 先行ビット(E5材相当) 141 高さ90mm、幅80mm 許容摩耗量 15mm 学園豊崎間管路新設工事 第2工区 第3工区 φ5,750 φ5,750 5,000 5,000 5,037 6,457 R=60 R=60 下り4.9、上り3.538 下り4.622、上り1.315 50m 45m 工事名 シールド外径(mm) 仕上がり内径(mm) シールド延長(m) 最小曲率半径(m) 最大縦断勾配(%) 最大土被り(m) シールド通過土層 沖積砂質土・粘性土 洪積砂質土・粘性土・砂礫 洪積砂質土・粘性土 最大地下水圧(MPa) 発進時期 到達時期 0.5 H10.8 H12.9 局所的に滞水(不飽和) H10.4 H12.9 (第3工区) 項 目 メインビット(E3材相当) トリムビット(E3材相当) 予備ビット(E3材相当) 先行ビット(E3材相当) 許容摩耗量 地中接合点 標 高 O.P (m) + 60.0 線 部 新幹 接合 山陽 工区 1 + 20.0 3工区 2工区 立坑 構想 分岐 道 T洞 道路 国 大橋 架橋 立坑 NT 地下 東三 八条 坂高 分岐 十 榎 江坂 道路 Dc-17 高速 名神 Ds-16 Dg-1 - 60.0 Dc-20 (Fc-D2) Dc-2(Ma-11) Dc-3(Ma-11) Ds-3 Dg-2 第1工区 Dc-6 (Ma-9) Dc-8 (Ma-7) 舎) 駅 千里 (南 里線 千 阪急 Dc-16 (Fc-A) 万博立坑 ル レー モノ 坑 阪 大 橋 岐立 津雲 丘分 里線 千里 急千 阪 第4工区 Dc-15 (Ma-0) Ds-20 Ds-17 Ds-21 Dc-22 (Fc-F) Dc-10 (Ma-5) Ds-9 Dc-11 (Ma-4) ) Dc-18 (Fc-C) Ds-18 As-1 Ac-1 - 20.0 備 考 高さ100mm、幅150mm 最外周部のカッタビット 高さ100mm、幅150mm 高さ120mm 30mm Ds-15 Ds-19 + 0.0 - 40.0 舎 駅 坑 橋 山台 岐立 橋 橋 高架 高架 台分 行(桃 架 谷 山 急 高 新田 桃 阪 砂小 春日 下 北大 三国立坑 + 40.0 個 数 52 12 42 81 Dc-20 (Fc-D2) Dc-19 (Fc-D1) Dc-17 (Fc-B) Dc-16 (Fc-A) Ds-16 推定地下水位線 Dc-15 (Ma-0) 第3工区(6.5km) 第2工区(5.0km) 11.5km 3.ビットの摩耗 (1)ビット摩耗量の予測(計画時) 凡例 Ac:沖積粘性土、As:沖積砂質土、Dc:洪積粘性土、Ds:洪積砂質土、Dg:洪積砂礫土 図-1 シールドルート土質縦断図 摩耗量の予測については、シールド通過地盤を過酷比率法により区分し、土質毎の E3 材摩耗係数(過去の施工 実績から求めた E5 材摩耗係数に耐摩耗比を乗じた係数)に計画摺動距離を乗じて算出している。ここで摺動距離 とは、面板の回転によりビットが周回した距離をいう。今回採用した摩耗予測式を次式に示す。 予測摩耗量=Σ(土質毎の E3 材摩耗係数×各土質の摺動距離) 上記式によりビット最外周部の摩耗量を予測すると、第2工区では 4000m 手前で許容摩耗量 15mm に達し、第3 工区では 6000m 付近で許容摩耗量 30mm に達するため、両工区とも中~外周部にビット交換システム(予備ビッ ト)を装備した。また、ビット交換システムの使用時期を判断するため、第2工区では超音波式検知ビット2個、 キーワード:泥水加圧式シールド、超長距離、洪積地盤、ビット摩耗 連絡先(530-6691 大阪市北区中之島6丁目2番27号 TEL 06-6446-9786 FAX 06-6446-9888) -140- 土木学会第56回年次学術講演会(平成13年10月) VI-070 光ファイバー式検知ビット2組、第3工区では超音波式検知ビット4個、油圧式検知ビット3組を装備し、掘進 途中おける摩耗量を把握した。 (第2工区) 超音波検知SB-0(取付半径2.600m) 最外周の予測 (2)施工中におけるビット摩耗量(検知ビットデータ) 超音波検知SB-1(取付半径1.690m) 最外周換算(SB-0値より) 摩耗量(mm) 20 第2工区、第3工区の超音波式摩耗検知ビットによる摩耗量結果 を図-2に示す。第2工区は摩耗予測線内の摩耗量である。第3工 許容摩耗量 15mm 15 10 5 0 区の摩耗量は摩耗予測線に比べ約2倍で推移し、内周側(MK02)、 0 1000 2000 3000 掘進距離(m) 外周側(MK01)共に摩耗が同等で推移している。 4000 5000 4304mより予備ビット全パス使用 (第3工区) (3)ビットの実摩耗量(実績) 超音波検知MK01(取付半径2.625m) 最外周の予測線(半径2.805m) 超音波式検知ビットの実摩耗量は、ほぼ検知データと同じであっ 35 摺動距離の関係をパス別に整理したグラフを図-3に示す。第2工 許容摩耗量 30mm 30 摩耗量(mm) た。メインビット摩耗量(ゲージカッタ、トリムビットも含む)と 超音波検知MK02(取付半径1.780m) 最外周換算(MK01より) 40 25 20 15 区では、予備ビット作動範囲のメインビット摺動距離値が予備ビッ 10 ト使用後も検知ビットの摩耗が収束していないため掘進完了時の値 0 5 0 1000 を採用した。グラフの結果では、多パスによる効果が認められず、 2000 3000 4000 掘進距離(m) 5000 6000 7000 4633mより予備ビット2パス使用、5638mより全パス使用 また、バラツキがある。摩耗係数については、内周部(1.7パス 図-2 超音波式検知ビットの摩耗量 )の相関性が弱く、中外周部(3パス)では 1.8×10-3mm/km であった。 第3工区のメインビット摺動距 (第2工区) 離値は、予備ビット使用後は検知 グラフの結果では、パス別による (第3工区) 6パス 60 50 50 40 40 摩耗量(mm) 予備ビット作動前の値を採用した。 3パス 30 3パス 20 差異が認められ、多パスによる摩 y = 0.0134x r = 0.9349 y = 0.0107x r = 0.7194 20 3パス 0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000 0 500 1000 1500 2000 摺動距離(km) 2500 摺動距離(km) 3000 3500 4000 (第3工区) 図-3 メインビットの摩耗量 る。また、バラツキも少なく、摩 (第3工区) (第2工区) 右側 40 13.4×10-3mm/km、中外周(3パス 30 30 摩耗量(mm) 40 摩耗量(mm) 右側 左側 耗係数は内周側(1.5パス)で 20 y = 0.0118x r = 0.216 10 左側 20 y = 0.0197x r = 0.5498 10 関係を右側・左側ビット別に整理し たグラフを図-4に示す。第2工区 線形 (3パス) 30 0 耗低減効果(約 20%)が現れてい 予備ビットの摩耗量と摺動距離の 6パス 10 0 )では 10.7×10 mm/km であった。 3パス y = 0.0018x r = 0.4368 10 -3 1.5パス 1.5パス 摩耗量(mm) ビットの摩耗が収束しているため 1.7パス 60 y = 0.0084x r = 0.3197 0 0 100 200 300 400 500 摺動距離(km) は、バラツキがあり摩耗係数の相関 600 700 800 900 0 0 200 400 600 800 1000 1200 1400 摺動距離(km) 図-4 予備ビットの摩耗量 性が弱い。第3工区も、あまり相関性は強くないが、右側ビットで摩耗係数は 19.7×10-3mm/km であった。 4.考察 今回報告以外に、先行ビット等の摩耗分析も整理しているところであり、現在、地盤・掘進データ等を踏まえ 総合的な分析を行っているが、現段階においてのビット摩耗について、以下のことが考察できる。 ① 第2工区と第3工区の摩耗進行速度が大きく違っているため、不飽和・飽和地盤による相違、ビットの寸法 と個数による相違が左右していると考えられる。 ② 第3工区の摩耗量は、過去の施工実績等より求めた予測摩耗量と約2倍違っていることより、何らかの地盤 特性等の違いが影響しているものと考えられる。 5.おわりに 今回のシールド工事により、過去の施工実績から求めた摩耗特性と相違しているところが認められ重要視する 必要がある。また、分析途中の結果ではあるが今後の長距離掘進シールドの一助となれば幸いである。 -141- 土木学会第56回年次学術講演会(平成13年10月)
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