オフショア開発フォーラム2009 オフショア事業推進の 成熟度アセスメントに役立つ診断技法 2009年11月17日 – 東京 アイコーチ株式会社 代表取締役 幸地 © Offshoring Academy 司 1 講師略歴 幸地 司(こうち・つかさ) アイコーチ株式会社代表取締役/琉球大学非常勤講師 沖縄生まれ。九州大学大学院修了。日本屈指のオフショア開発コン サルティング会社を経営。業界に先駆け発表したグローバル技術者養 成プログラムが評判を呼び、実践的でわかりやすいケーススタディが高 い評価を得る。 2003年 アイコーチ株式会社を設立、代表取締役に就任 2006年 琉球大学 非常勤講師に就任 2007年 オフショア大學を設立 2008年 オフショア開発PRESS (技術評論社)共著 2008年 オフショア開発に失敗する方法(ソフト・リサーチ・センター)著 2009年 オフショアプロジェクトマネジメント【SE編】【PM編】(技術評論社)共著 © Offshoring Academy 2 目次 1. オフショア開発人材を取り巻く環境変化 2. オフショア開発成熟度アセスメント 異文化コミュニケーション能力 v.s 標準化 3. オフショア開発成熟度アセスメント 報酬マネジメント分析 © Offshoring Academy 3 1. オフショア開発人材を取り巻く環境変化 © Offshoring Academy 4 2015年までに日本人IT産業従事者は激減 理由1 長引く世界経済不況 理由2 団塊世代+αの引退 この世代が IT産業から引退 時間制約を抱えた 団塊ジュニア世代+αが激増 (共働き、育児、介護、心身症) © Offshoring Academy 出典:http://www.ipss.go.jp/ 5 中国ソフトウェア業界の労働人口ピラミッド 年齢 ・トップ層でも若い、30代中心 ・1年ごとの雇用契約が多い ・対日オフショア開発には二級人材が従事する 60歳 50歳 先行者利益として トップ企業が囲い込み あまり流動しない 40歳 戦力外のプログラマを 使わざるを得ない状況 流動性は極めて大きい 30歳 男 女 参考:幸地司(2008)、オフショア開発に失敗する方法、ソフト・リサーチ・センター 世界同時不況により、対日オフショア従事者の稼働率は激減。 50%~60%減は当たり前。 © Offshoring Academy 6 外国人SEのキャリア開発における課題 • 中国 – 生涯に一度は乱世が訪れるとの警戒心 – 将来、政治動乱が発生して社会不安に陥ると、社会のセーフティー ネットは一気に崩壊。年金・退職金・医療保険だけではなく、安定 した地位や利権も水の泡。 – こうした状況を避けるために、優秀な中国人ビジネスパーソンは、 特定会社に依存した文脈的スキルを磨くよりも、政治的ネットワー クを磨き、個人財産の蓄積に精を出す。 • ベトナム – ベトナム戦争の影響で中高年層が相対的に少ないベトナム社会 では、若者が憧れる「仕事を通じて自己実現を果たした年長者」 に出会う機会はほとんどない。 • 外国人SEは日本企業にとって雇用調整弁 – 多くの外国人SEは、日本的な新人教育の洗礼を受けることなく 現場に放り込まれて、景気悪化のせいで現場からあっという間に 放り出された。これでは、日本企業がブリッジSEに要求する「空 気を読む文脈的スキル」を身につける暇などない。 © Offshoring Academy 7 2. オフショア開発成熟度アセスメント 異文化コミュニケーション能力 v.s 標準化 © Offshoring Academy 8 オフショア開発によるコスト削減(理想論) 原価削減20~30%達成 人件費(-) 過剰品質 抑制(-) 現行の 開発原価 標準化(-) 選択と集中 による 競争力向上(-) 間接費(+) コミュニケーション © Offshoring Academy 9 オフショア開発によるコスト削減(現実) 原価削減なし、 もしくは現状悪化 人件費(-) 現行の 開発原価 © Offshoring Academy 過剰品質 標準化(+) 抑制(-) 選択と集中 による 競争力向上 (±0) 間接費(+) コミュニケーション 10 制度(フェア)と風土(ケア)で組織観評価 組織の多様性適応力を測るフレームワーク 充実← 風土(異物への抵抗性・支援の手厚さ ) →未熟 制度未熟×風土充実 制度充実×風土充実 日本人と同じ精神構造を持つ外国 人SEなら活躍するが・・・ ひとまず合格 → オフショア不適合者の →標準化/評価制度の見直し 制度未熟×風土未熟 トップの意識改革が必須 オフショア推進どころではない →トップが変われば一変する 配置転換や離職勧告が次の課題 制度充実×風土未熟 マネジメントの評価観が問題 → マネジメントの意識改革/ 異文化コミュニケーション促進 未熟← 制度(プロセス標準化、外国人登用の人事制度、機会提供・処遇の公平・公正) →充実 © Offshoring Academy 11 3. オフショア開発成熟度アセスメント 報酬マネジメント分析 © Offshoring Academy 12 次世代オフショア開発に向けた課題 • マネジメントの意識改革 – 古き良き年功序列に元気いっぱいの外国人SEをどう 組み込むか? • 高度成長期はみんなが一律に仲良く豊かになる時代なので、 日本人/男性/正社員の間ではあえて個人差をつける必要 がなかった • 一方、元気いっぱいの外国人SEは、個人差のある特別待遇 を望む • 標準化/評価制度の見直し – 不適切な成果主義の軌道修正 • 従来、個人差をつけた「外的報酬」に偏重 • 従来、過去精算型の金銭報酬に偏重 © Offshoring Academy 13 報酬からオフショア開発成熟度を分析 一律 外的報酬 ①基本給、福利厚生 個人差 ②賞与、昇給、報奨金 内的報酬 ③職場環境の改善、遠足、 ④仕事そのもののやりが メンタルヘルスケア い、自由裁量権、仕事や研 修への挑戦機会 参考: 川上真史(2008)、トータル・リウォーズの設計と運用、Business Breakthrough 757Ch オフショア大學(2009)、オフショアプロジェクトマネジメント【PM編】、p238 © Offshoring Academy 14 人材マネジメント戦略次元の日中比較 戦略次元 日本人、日本企業 (主に男性・正社員) 中国人、中国IT産業 (女性・派遣社員) ①短期成果 | •従来:基本的には長期成果 •今後:プロジェクト評価比重が高まる → 長期から短期へ •短期成果 •従来:利害関係者は仲良し集団 •今後:組織は病んでいるので、人間 関係や職場環境を配慮する方向へ → より配慮重視型へ •人材流動が激しく決して仲良し集 団ではないので、いろいろ配慮す る姿勢が求められる •従来:安定環境だが、極めて高品質 •従来:請負型の組織は、景気動向に 大きく左右されて不安定 •現在:技術力よりも文脈的スキルが 重要である一方、ベテラン職人より若 手PGが使い勝手がいいと目される → より厳しい環境へ •業界全体は今後も安定成長が見 込めるが、雇用環境は不安定 •技術力やヒューマンスキルの個人 差が激しい •日本ほど高品質ではない 長期成果 ②課題重視 | 配慮重視 ③安定環境 | 厳しい環境 参考:オフショア大學(2009)、オフショアプロジェクトマネジメント【PM編】、p238 © Offshoring Academy 15 人事マネジメントの新しい戦略次元 ①「短期成果-長期成果」への処方箋 – 短期成果=個人差をつけた報酬制度が効果的 – 長期成果=一律に報酬水準を高める方が賢明 ・・・昔はノンビリと失敗しながら先輩の背中を見て仕事を覚えたも のさ。なのに、今では短期のプロジェクト評価が当たり前? ②「課題重視-配慮重視」への処方箋 – 課題重視(仲良し組織)=外的報酬を中心に組み立てる – 配慮重視(病んだ組織)=内的報酬を高める方が賢明 ・・・昔の職場は家族同然、社員旅行・運動会・サークル活動も盛ん だったのに。現在は成果主義による殺伐さと鬱病だらけ? ③「安定環境-厳しい環境」への処方箋 – 安定環境=一律に報酬水準を高める – 厳しい環境=個人差をつけた報酬制度が効果的 ・・・「プログラマ35歳限界説」「ITは3K職」「下請に丸投げ」「派遣業」 参考: 川上真史(2008)、トータル・リウォーズの設計と運用、Business Breakthrough 757Ch オフショア大學(2009)、オフショアプロジェクトマネジメント【PM編】、p238 © Offshoring Academy 16 あなたの組織を分析してください 充実← 風土( 異物への抵抗性・支援の手厚さ ) →未熟 組織の多様性適応力を測るフレームワーク 年齢 制度未熟×風土充実 制度充実×風土充実 制度未熟×風土未熟 制度充実×風土未熟 男 未熟← 制度(プロセス標準化、人事制度、機会提供・処遇の公平・公正) →充実 組織の人口ピラミッド(日本とオフショア委託先の対比) 一律 (a) 短期成果-長期成果 判定理由 女 個人差 ②賞与、昇給、報奨金 ③職場環境の改善、遠足、メンタルヘルス ケア ④自由裁量権、仕事や研修への挑戦機会 外的報酬 ①基本給、福利厚生 (b) 課題重視-配慮重視 © Offshoring Academy 内的報酬 (c) 安定環境-厳しい環境 17 補足資料 © Offshoring Academy 18 2009/11/7 浙江省烏鎮シンポジウム © Offshoring Academy 19 2009/11/10 無錫シンポジウム © Offshoring Academy 20
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