会報96号 - Ne

日ロ北 海 道 極 東 研 究 学 会
Association for Inter-Regional Study Between
Hokkaido -Russian Far East
No.96 号(特集;ロシア 2008 年の回顧と展望)
2009 年 1 月 10 日発行
発行者
日ロ北海道極東研究学会(創設 1986 年 会報創刊=89.5.15.)四半期発行
〒046-0261 小樽市銭函 2-14-2 望月(方)極東研:TEL.0134-62-2578 / FAX.0134-62-7498
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312-0750660
FES 事務局代表
K.望月
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極東研
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ロシア 2008 年の回顧と展望・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
Ⅰ内政分野:双頭政治の始動と大統領任期延長法の成立・・・・・・・・・・ 2
☆ 輝かしい新年の門出:「家族年」のスタート・・・・・・・・・・・・・・2
☆ 憲法改定の実施・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
Ⅱ.経済分野:楽観的展望から危機的状況へ・・・・・・・・・・・・・・・・4
☆株価の急落
(3)
☆ 流動性保証措置 (4)
☆原油生産の低下傾向
(4)
☆原油価格暴落への対応(5)
☆大型耐久消費財市場の需要縮小・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7
:自動車市場(6) 住宅市場の縮小 (6)
☆金融分野の実情と当局の対策(6)
☆為替政策(7)
☆雇用危機の発生・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8
Ⅲ 外交分野・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8
グルジアとロシアとの紛争・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8
ウクライナとロシアとのガス紛争・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8
Ⅳ 2009 年の展望・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10
国内経済・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10
ロ米関係・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
寄稿論文
「米の新大統領は,両国関係を改善することが可能か?」・・・・・12
V.G.シュビドコ:世界経済国際関係研究所共同研究員
テーマ別ニュース月禄 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14
Ⅰ ロシア国内政治(p.13), Ⅱ ロシア経済・社会(p.20), Ⅲ ロシアの外交・国際関係
(p.23), Ⅳ 極東・サハリン・千島(p.31), Ⅴ日ロ関係(p.35), Ⅵ領土問題(p.40),
Ⅶ オピニオン(今回は省略), Ⅷ 中国・北東アジア(今回は省略), Ⅸ エネルギー 環
境(今回は省略)
編集後記・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・40
はじめに:ロシアは 2008 年初頭,順風満帆の船出をした。しかし8月前後から米国発
の金融崩壊に巻き込まれ,未曾有の危機的状況を迎えたまま年を越した。09 年 1 月現在,
株価の回復見通しはなく,実体経済分野では失業問題が深刻化しつつある。以下では 08
年のロシアを,内政・経済・外交の 3 部門にわたり観察する。中心テーマは,内政分野で
は,双頭政治体制の始動と大統領任期延長法の成立,経済分野では,石油価格の変調と金
融危機,外交分野では,グルジア紛争とウクライナガス交渉などである。
Ⅰ内政分野:双頭政治の開始と大統領任期延長法の成立
☆ 輝かしい新年:08 年初頭,ロシアの論壇は,プーチン後の双頭政権を巡る論調で沸
き立っていた。07 年 12 月 2 日の下院選挙で,プーチン大統領が率いた「統一ロシア」が
圧勝し,憲法改正決議に必要な議席 300 を超える 315 議席を獲得した。「統一ロシア」な
ど親政権 4 党が,大統領選の統一候補としてメドベージェフ第一副首相(当時)を推薦し,
プーチン氏は首相に就任する用意があると述べた(12 月 17 日)。この段階で次期政権は,
メドベージェフ大統領とプーチン首相という「双頭政権」となることが,はっきりした。
42 歳のメドベージェフ大統領(65 年生まれ)がハンドルを握り,13 歳年上のプーチン
首相(52 年生まれ)が助手席でじっと進路を見つめる「双頭政治」は,相互信頼と強い意
思のもと安定した運転を開始した。新大統領メドベージェフ氏はプーチン首相の強い影響
力のもとにありながら,大統領としての独自性だそうと努力した。彼は「法秩序の強化(汚
職一掃)と経済の自由化(国家介入反対)の両立」を公約した。西側では,こうしたメド
ベージェフ大統領の近代化感覚を歓迎した。国家介入反対はプーチン政策に逆行するもの
だが,汚職一掃はプーチン氏が遣り残した課題でもある。しかし,国家主導の経済運営は
強まる一方であったし,官僚の汚職は一向に改善されなかった。
「双頭政治」の新しい課題は,それまで取り残されていた分野,住宅,健康,教育,農
業の 4 分野を国家の優先課題として取組むこと,人口減少に歯止めをかけること,加工産
業と中小企業の振興を図ること,軍隊の近代化を図ることなどであった。08 年を「家族年」
とし,成長と並んで福祉重視を打ち出した。07 年の年越しの公式行事には,政府高官の家
族連れの参加が目立った。石油の輸出価格と株価は右肩上がりの上昇を続け,ロシアは「我
が世の春」を謳歌していた。しかし,グルジア紛争が勃発した 8 月 8 日以降,舞台は暗転
した。世界金融危機と石油価格の暴落に見舞われ,ロシアは未曾有の難局を迎えることに
なった。メドベージェフ大統領議会教書(大統領就任後最初のもの,11 月5日)と 12 月
1 日のプーチン氏の恒例の 3 時間に及ぶ国民との TV 対話などの分析が欠かせない。
☆ 憲法改定の実施:国内政治分野でのもう1つの重要な話題は,憲法改定問題だ。メド
ベージェフ大統領が打ち出した憲法改定の中心は「大統領の任期を 4 年から 6 年へ,下院
議員の任期を 4 年から 5 年へそれぞれ延期し,次期改選期から適用する」というものであ
る。
この改訂案は,プーチン氏の次期大統領再出馬と長期政権化を狙ったものだとの観測が
強い。メドベージェフ大統領の任期満了は 2012 年である。ここで次期大統領としてプー
チン氏が再登板すれば,最大 2 期 12 年間大統領に留まることができる。しかし,長期政
権は腐敗するという歴史法則からプーチン氏もまた免れることが出来ない可能性も否定で
きない。現在の難局を乗り切る過程で,かなり強硬な政策が散見されることは,プーチン
氏にとっても悲しむべきことである。最近では政権反対党(野党)が影を潜めてしまい,
2
翼賛体制が出現した。憲法改正提案は約 1 カ月で十分な討論もないままで成立した(12
月 30 日大統領が法案に署名)。
経済分野や外交分野でも,名将プーチン氏の声望を揺るがしかねない事象に「双頭政権」
は直面している。
Ⅱ.経済分野:楽観的展望から危機的状況へ
暗雲は 2008 年 5 月ごろから襲ってきた。それは,1 年前の 2007 年 7 月頃から注目を
引くようになったアメリカ発の金融危機(サブプライムローンの焦げ付きと銀行信用の収
縮)から始まった。ロシアでは,
対前年同期比成長率(%)
最初,ロシアが米国の金融危機
に巻き込まれると考える専門家
は殆どいなかった。
しかし,ロシアの株価は 5 月
にピークをつけ,その後低落傾
向を保っている。主要産業生産
高,貨物輸送量,固定投資とも
25
20
15
対前年同期比成長率は5月から
低下している。8 月 8 日のグル
ジア紛争を契機とする,外資の
国外流出はロシアの株価の更な
る引き下げ要因となった。この
時の流出は政治的なものという
より,外国投資家が資金繰りの
ため,手持ちのロシア株などを
10
5
0
-5
1月
2月
3月
売却した結果生じたものと考え
4月
5月
6月
7月
8月
9月 10月
主要産業 貨物輸送高 固定投資
られる。株価の低下は,企業財
務を悪化させ,9 月の民間固定
投資を急激に引下げた(ただし 10 月の投資成長率は 8 月レベルまで回復している)。10 月か
らは,産業活動と貨物流通量は明白に悪化し
楽観論は次第に影を潜めた。
その上,世界不況と株価下落に連動した原
油の国際価格の下落も,石油大国ロシアを痛
打した。影響はどのような形で,なぜロシア
経済に襲い掛かったのか。波及過程を分析し
よう。
☆株価が急落:ロシアの株価(RTS)の動き
を見ると,5 月にピークを迎えた後,下落を
開始した株価は,9 月に若干反騰した。これ
は米リーマン・ブラザーズの破綻による下げに対する緊急措置の効果である。10 月中旬以
降,当局は約 6 兆ルーブル(21 兆円)の対企業・銀行支援を実施した。これで株価は一時
上昇したものの,数日の後には再び同じレベルまで下落し,そのまま越年した。最近(1 月)
3
の状況では大底を打った感じで横ばいを続けている。この間 5 月のピークから大底まで約
80%の低下を見た(2450 ポイント→約 600 ポイント)。外資流出(母国での資金手当ての
必要と手持ち株の投売り),国内投機家(企業・家計)の狼狽売り(売りが売りを呼ぶ現象)
などがこうした激しい動きをもたらした。注 090123 現在 RTS 指数(ドル建て)は 5 年ぶ
り 500 ポイントを割り込んだ。
民間対外債務と連邦対外債務(年末,10億㌦)
459.6
500.0
400.0
310.6
300.0
200.0
100.0
☆ 流動性
186.0
9 8 .82 0 . 0
213.5
9 7 1. 20 8 . 0
257.2
413.3
証
措
置:以前か
らロシアの
261.9
銀行と企業
175.1
71.1
保
(銀行以
44.7
37.4
外)大手は,
外国の金融
0.0
2003
2004
債務合計
2005
2006
連邦債務
2007
民間債務
市場で株式
などを担保
に積極的な
三井物産戦略研究所データによる
資金調達を行っていた。企業の対外債務は 08 年 4880 億㌦程度であり, 07 年では 4133 億
㌦であった。これはロシアの対外輸出金額の 1.16 倍に相当する。08 年 9 月下旬になると,
株価の低下のため借金の担保株の価値が下がり,複数の大手企業がマージンコールを受け
資金繰りが困難になった。10 月に入ると,担保に入っていた株式を外国の銀行に没収され
るケースが出始めた。ロシア政府は,対外債務を抱える大手企業の救済計画を緊急に策定,
希望する対外経済銀行(VEB)に融資申告を行うよう指示した。融資条件はつぎの通り(坂
。①金利は「コール市場(銀行間相互貸付市場)の金利(LIBOR)」+5%以上,②
口論文)
返済期限は 09 年末まで,③外国銀行に提出していたのと同じ担保を付ける,④自社の取
締役会に VEB の代表を入れる,その他など。VEB からの救済借入はこのように厳しいも
のであったにも関わらず,リアルセクターの 30 以上の大手企業(ノリリスクニッケル,
ロスネフチなど)が申請した(『ヴェードモスチ』紙,08 年 10/27&10/30←坂口)。10 月
中旬に政府が銀行部門と一般企業に予告した国家融資額は約 6 兆㍔(21 兆円)であった。
これは 08 年に予測される GDP の約 14%,国家歳出の 2/3 に及ぶほど大きな金額である
(塩原)。ちなみに 07 年の対外債務は GDP の 34%であったから(クズネツオフ),08 年
の場合もこの債務レベルの支援規模が必要との判断があったと思われる。それと同時に,
産業界のパニックを防ぐ意味からも,当局は意識的に冷静化を呼びかけた(アナウンスメ
ント効果)。こうした当局の対策措置は,かなり的確であったと評価してよかろう。
☆ 原油生産の低下傾向:ロシアでは、08 年 1 月から 3 月までの第 1 四半期の原油生産
が 10 年ぶりに減少し、4 月も前年割れが続いている。主力の西シベリア油田の老朽化が
進む一方で、東シベリアや北極圏での新規油田開発が遅れていることがその原因と思われ
る。ロシア政府は、原油の生産を引き上げるため石油業界の利益課税を 40 億ドル程度軽
減するとともに、新規開発を促す政策をとっている。しかし現在の生産水準を維持するだ
4
けでも、今後 20 年間で 1 兆ドル程度の開発資金が必要とされ、政府のこの程度の対策で
は不十分である。
☆ 原油価格暴落への対応:ロシア経済の大黒柱である石油ガス大手に対する国家支援と
して,金融支援の他にも,石油輸出関税の引下げ措置がとられた。原油の国際市場価格
(WTI)は 08 年 7 月 11 日に 147$/b(㌦ / バレル )のピークをつけた後,08 年末には 40.02
$/bにまで低下した。実に 70%超の下げである。このような急激な下げと,それぞれま
での右肩あがりの上昇は,原油に対する需給関係の変化では到底説明できるものではない。
ドルの最も有利な運用先を常時探っている国際巨大投機家が,国際原油市場に先を争って
なだれ込んだのだ。この投機行為の背後には,世界的金融構造の変化だけでなく,ロシア
を窮地に追い込む政治的陰謀があったという説もある(田中宇や北野浩伯を参照)。
ロシアの石油(ウラル・ブレンド)も,08 年 7 月前半に 130$/b以上の高値をつけた
後,11 月下旬には 50$/bまで低落した(米国産標準油種(WTI)09 年2月渡しの価格は,42.
63$/bをつけた)。このような下落幅は,殆どの人の予想を超えるもので,石油採掘会社だけで
なく,ロシアの財政収入に大打撃を与えるものである。(連邦財政の歳入を、予算外の公的基金
に繰り入れる原油の輸出価格の基準値はロシア語ではパラゴーバヤ価格(пороговая цена:閾
値=トレシュホルド=hreshhold ) という。08 年の閾値は 27$/bであった。つまり、ロシアでは石
油売上税のうち、原油価格がこの価格を上回っていることからでる税収増加分を、一般歳入に回
すことなく基金に繰り入れることにしている (by V. Shvydko)。
ロシア石油会社への支援策の1つとして,当局が取った手は,輸出関税の引下げである。関
税引き下げを巡る,財務省と石油会社との攻防は,次のようだった。「通常の算定方式によれば,
08 年 11 月1日からの輸出関税は 300$/t 以上になるところ,各石油会社は 195$ まで引下
げることを要求した。一方財務省は歳入の確保のため,会社側の要求を押し切り,287.3 $/t
に設定した。(『コメルサント』紙 081105 ←坂口)。その後,会社側の強い要求で,12月1日から
192$になる可能性が高い。・・・それでも,石油価格が 50$を割り込めば,1㌧当たり 192$でも,
石油輸出は赤字になる可能性が高いと専門家は見ているようだ」(坂口)。
政府当局の対策とは別に,石油会社自身も危機対策を採った。職員の新規採用の中止,子会
社の人員削減,09 年に予定されていた地質探査と製油所の近代化プロジェクトへの投資縮小で
ある(ロスネフチ)。ガスプロムの子会社ガスプロムネフチ(石油会社)も,当座の生産維持投資は
行うが,将来のための地質探索や,下流のプロジェクトは凍結する方針である。しかしこれでは
今後の生産量拡大に否定的影響を与えることは避けられない。
ガス独占国策会社ガスプロムは,この経済危機にも関わらず,比較的余裕があるように見える。
たとえば,200 億㌦以上の短期債務を抱えているにも関わらず,対外経済銀行には,10 億㌦しか
融資申請を行っていない。この余裕は,天然ガスの輸出価格形成メカニズムにあると,坂口氏は
見ている。つまり欧州向けガス輸出価格は過去6~9ヶ月の(原油ではなく)石油製品の国際市
場での値動きのモニタリング結果に基づき決定されるが,その値段は現在(08 年 11 月末)ピーク
に近い状態にある。このため,ガスプロムの 08 年の欧州向け輸出額は過去最大の水準を記録
すると見られている。ただし,石油価格(石油製品価格とパラレル)が下落し続ければ,09 年の下
半期のガス輸出売上は急落し,09 年通年でみても 08 年通年の売上を大きく下回る可能性があ
る。
☆ 大型耐久消費財市場の需要縮小
5
ロシアの内需に大きな影響を与えるのは,自動車,住宅,白物家電製品など耐久消費財の需
要動向である。
自動車市場:08 年 9 月段階での情報では,低価格車の販売不振なのは,自動車ローンの貸出し
基準の厳格化とローンの金利の引上げ,および頭金比率の引き上げにある。金利は 9 月 1 カ月
で約2ポイントも上昇した。頭金は商品値段の最低 10%は要求されるようだ(www.autonews.ru,
080929 ←坂口)。日本車のように比較的高価の車の場合,自己資金での購入者が多く,ローン
活用率は3~4 割程度という。こうした自動車ローンの縮小が販売低下に結びついている。08 年
のロシアの自動車販売予想比は,35%減という。09 年の新車販売(外国ブランド車,輸入と現地
生産の合計)は,130 万台に留まる見通し。08 年は前年比 27%増の 200 万台だったようだが,一
転してマイナスになる(N090115)。
住宅市場の縮小:(井本を参照):08 年年末セールの一環として,ある大手銀行は住宅ロー
ン金利を引下げると発表した。現在の住宅ローンの最低金利は,ドル建てで 14.4%,ルーブル建
てで 19.4%で,返済期限は 5 年~25 年である。インフレ率が 10 数%あるので,実質金利はそんな
に高くはない。中には 40%の金利を設定している銀行もあるが,これは「貸さない」という意思表
示であって,銀行自身の資金不足をカモフラージュする経営戦略だという。
銀行ローンが厳しくなったので,住宅建築・販売会社自身が住宅ローンを提供しはじめた。たと
えば「有利な分割払い0%」というプログラムでは,1 年以内にマンション購入代金を完済すれば,
金利をゼロにするという。「有利な分割 18/18」というプログラムもある。これは,金利は 18%,返
済期間は 18 ヶ月,頭金は 36%である。その他,「代替(中古)住宅ローン」では,返済期間は 10
年,頭金は 30%,金利は 18%である。こうした物件は会社のウエブ・サイトに掲載されている。
(世界金融危機の引き金になった米国のサブプライムローンは,表面金利で借り手を釣り,実際の支
払い段階で法外な手数料を上乗せする「略奪的貸付け」であったという)。ロシアの住宅市場がこうし
た陥穽を持たないことを期待したい。
住宅価格の動向は,景気を占う重要な指標の1つになる。下降するとの予測が強ければ,建
築される住宅を担保とするローン金利は上がり,融資量は引き締められるし,抵当価値が下がれ
ば追加保証金が要求される。こうして,全体として流動性収縮をもたらす。住宅価格が上昇を始
めれば,逆のプラスサイクルが次第に大きく膨らみ,景気回復を先導する。12 月に発表されたズ
ベルバンクの「マクロ経済研究センター」によれば,ロシア不動産市場はこれから値下がり傾向を
もつとのことだ。専門家の予測では,08 年第 3 四半期を基準として,09 年は 30~40%の住宅価
格は低下するという。
☆ 金融分野の実情と当局の対策(V.シュヴィトコ論文を参照):経済危機は,金融
部門から入ってきた。経済
企業の対外債務と安定ファンド化(10億㌦)
動向をモニターしているエ
600
コノミストと政府関係者が初
488
500
417
めて危ないと感じ始めた時期
400
は,08 年 9 月頃だ。この時期,
262
300
175
米国「リーマンブラザーズ」
156.61
200
108
89.13
80
64.73
の経営破たんが契機となって
100
43.1
18.2
0
世界に景気減速への懸念が広
2003
2004
2005
2006
2007
2008
がり,株価下落が予想を上回
対外債務
安定化ファンド
出所:V.グズネツオフ
6
るようになった。第一に,海外の金融市場で資金調達を拡大していたロシアの銀行や企業
にとって,返済や再借入が困難になり,予定した企業投資も縮小に向った。第二に外国の
証券投資家がロシアから資金を引き上げる趨勢が強まり,7 月段階では,ネット流入して
いた外資が,9月には約 330 億㌦,10 月の前半で 150 億㌦~200 億㌦程度の流出があっ
たと推定されている。
☆ 為替政策:ロシアは 8 月のグルジア紛争以降,資金逃避に伴うルーブル急落に歯止
めをかけようとして,為替介入に 1000 億㌦規模の外貨準備を費やした。しかし,グラフ
に見るように,ルーブルの下落を止めることにはならなかった。その後,一転してルーブ
ルの低め誘導政策をとった。この措置は資金逃避が底を打ったとの判断と,08 年7月から
輸出の急激な低下が始まり,それに伴う貿易黒字の減少を食い止めようという狙いがこめ
られていた。グルジア紛争前の 1 ドル 23 ルーブル台の高値から年末に 29 ルーブルまで下
がった為替レートを,32 ルーブルあたりで底打ちさせたいとロシア政府は考えているよう
だ(ユーロとドルで構成される通貨バスケットは,08 年 12 月 26 日 34.31 ルーブルで年
を越した)。ルーブルの先安傾向を見越した庶民は,家電製品や家具などを買い,せっせと
カネをモノに変えているので,消費需要は案外落ちていないと伝えられる。預金もルーブ
ル預金からドル預金へ移す現象も見られる。
☆雇用危機の発生: 地方都市で暴動の恐れも (M90115):ロシア政府統計局は先月末、
全国の失業者が半年の間に約 100 万人増えて 500 万人を超え、失業率は 6.5%になったと
発表した。特に深刻なのが地方都市の基幹産業となっている鉄鋼、金属、自動車などの製
造業や建設業。エブゲニー・ゴントマヘル現代発展研究所理事(56)は「地方都市では失
業者の増大が社会不安に直結する恐れがある」として、地方政府と住民の衝突に発展する
危険性を警告する。ロシアの地方には 1 つの企業が町の経済を支える企業城下町が多く、
解雇された労働者の受け皿がないためだ。ボルガ川沿岸地方では、代表的な自動車企業「ア
フトブス」や「カマズ」が 1 月中旬まで主要生産ラインを停止。政府は国内自動車産業保
護のため 12 日から輸入車の関税を引き上げたが、日本などからの輸入中古車で生計を立
てる極東地方の住民が反発。治安部隊との衝突も起きた。
12 月 1 日のプーチンの国民との対話は,「社会分野で公約したこと(社会支援・年金・
の引き上げは,そのまま実行する,新しい危機対策の発表は 12 月 20 日まで延期する」な
どと述べ,国民に沈静化を呼びかけた。政策当局(アンドレイ・クレパーチ経済発展省次
官)は 12 月段階で,08 年の年間マクロ指標の見通しについて,成長率は 6.7%→3.5%,
ルーブルの対ドル減価は,24.7 ㍔から 32-35 ㍔へ,インフレは当初計画 8.5%から 12.5-15%
になろうと,政府公式見通しを変化させた。
失業統計を見ると 08 年 11 月時点で,失業者は 500 万人(10 月より 40 万人増加)であ
った。公式登録失業者は 08 年末で 140 万人(9 月以降 15 万人増加)この数字は,09 年
年央までに 25 万人増加し,09 年末までに 200 万人になると専門家は見ている。
特に深刻な影響を受けているのは、需要の落ち込みで生産縮小に追い込まれた鉄鋼業や
自動車産業。マグニトゴルスクでは、鉄鋼コンビナートがこの 3 カ月で約 3800 人の従業
員を解雇した。ボルガ川沿岸地方の自動車企業「カマズ」と「アフトバス」は 1 月まで大
半の生産ラインの稼働を停止することを決めた。ロシア政府の統計では、全国の失業者は
11 月だけで 37 万 6000 人増え、失業率は 6.5%になった。また国民1人当たりの所得は
7
11 月、前年比で 6.2%低下した。政府は主要企業に対する国家支援の方針を打ち出し、25
日に対象となる 295 企業のリストを公開、不安を打ち消すのに躍起になっている。一方、
極東地方では 14 日と 21 日に、輸入車の関税引き上げを決めた政府への大規模な抗議行動
が起き、治安部隊が参加者を拘束する事態も発生。またモスクワではこの数カ月で旧ソ連
諸国からの出稼ぎ者を中心に約 6 万人の建築作業員が失職したとされ、内務省は外国人に
よる犯罪や逆に外国人を狙った犯罪の増加を警戒している。
(M081227)しかし,09 年の
春先には 400 万人の外国人労働者が失職するとの観測がある(ノーボスチ通信員)。
Ⅲ
外交分野
08 年の外交問題の中心は,8 月 8 日に勃発した,グルジア紛争と,年末に欧州全体を巻
き込み,そのまま年を越したロシアとウクライナとのガス紛争である。
グルジア紛争については,前号(95 号)でかなり詳細にとりあげたので,ここでは簡単
に触れる。現時点で振返って見ると,ブッシュ政権の対ロ強硬外交(東欧での一連の「カ
ラー革命」や,NATO の東方拡大,理不尽な MD 配備など)が,グルジア紛争の背後にあ
ったこと,グルジア側が最初に仕掛けた戦争であったこと,グルジア政権の冒険主義に対
する内外の批判が高まっていることなど,グルジア側に不利な材料が強まってきた。しか
し一方でロシア側が払ったコストも高くついた。グルジアの先制攻撃を巻き返したロシア
軍は,国境を越えてグルジア領内に進攻したこと,南オセチアとアブハジア自治共和国の
独立を承認した(8 月 26 日)ことで,国際的に決着していない,「民族自決」原則と「領
土保全」原則の対立のうち,前者を採択し,コソボ紛争(コソボはセルビアから 08 年 2
月 17 日に独立,米国・EU が独立を承認,セルビアとロシアは猛反発)でのロシア自身の
立場と矛盾する外交を展開した。
ウクライナとロシアとのガス紛争
年越しを挿んで連日報道された,ロシアーウクライ
ナガス紛争は,
厳 冬 の EU諸 国
を巻き込み,半
月近いガス供給
ストップは関係
諸国に深刻な影
響を受けた。
1 月 18 日現
在の状況は次の
ようである。
プーチン首相
とウクライナの
チェモシェンコ
首相は 18 日未
明(日本時間同
日午前),対立し
ていたガス値上
げ問題などで基
8
本合意したと発表した。両国のガス会社が 19 日までにガス供給に関する合意文書を作成
した(N090119)。ガスプロムは 20 日,ガスの供給を再開した。ガスプロムとウクライナ
国営ガス会社「ナフトガス」の両社長が 19 日,欧州向けガス輸送とウクライナ向け供給
に関する 2 文書にモスクワで署名した。プーチン首相とテイモシェンコ首相が立ちあった
(N090120)。10 年間の供給契約は次の通り:ウクライナ向け販売価格は,欧州市場の価
格まで引上げるが,今年は 2 割引とする。これによると,第1四半期(1-3 月)の価格は
08 年の約 2 倍の 360 ㌦/千m3となるが,原油価格に連動してガスの市場価格も低下する
ので,今年の年間平均価格は 230-250 ㌦になると見られている。両国の顔を立つ内容にし
た形だ(A090121)。
解説(by KM):この問題は直接関係国間を含め,次のように広範な問題を提起している。
①EU 側の対応:ロシア産ガスの 30%~100%を依存する EU 諸国の住民と産業の Life
Line が脅威にさらされた。今後,ガス依存の脱ロシア化を進める動きが加速しそうだ。ノ
ルウエーからガスを買付ければ,EU 全体のロシアガス依存率は 25%から 20%に落ちると
の試算もある(A090118)。その他,原発依存率を高める,自国産エネルギーを開発する(石
炭,太陽発電,地熱発電など),備蓄を増やすなどがある。こうした動きが現実化すれば,
ロシアはガス輸出稼得額の低下という長期ロスを免れない。今回の供給停止によるガスプ
ロムの損失はすでに 12 億㌦(約 1100 億円)を超えたといわれている。
②ロシア側の出方はこうだ。エネルギー供給国としての「信頼失墜」が突きつけられてい
るので,ガス紛争の全責任は,ウクライナ側にあることを立証し,国際世論の非難をかわ
そうとしている。同時に,ウクライナを経由しない南北 2 本のパイプライン計画をアピー
ルし,欧州からの投資を引きだそうと試みている。2 本のパイプラインとは,地図で示し
たように,ドイツとバルト海をつなぐ「ノースストリーム」と,黒海経由で中南欧と結ぶ
「サウスストリーム」である。一方,米国の後押しで,
「ナブコ」ガスラインが計画されて
いる。これは,トルコ(アンカラ)→ブルガリア→ルーマニア→ハンガリー→オーストリ
アを経由するガスパイプラインで,ロシア依存からの脱却を狙ったものだ(しかしガス供
給力に不安があると指摘されている)。まことに,エネルギーを巡る政治的駆け引きは熾烈
なものである。
③ウクライナにとっては,ガスの
抜取りしていないことを立証し,
国際的孤立から脱却すること,経
済危機の影響とガスストップで壊
滅状態にある国内重工業の維持を
図ることなどが緊急に必要だ。そ
れに,今度のガス紛争で一段と激
化した親ロ派と親欧州派の政争が,
国民の結束力を殺ぎ,経済の回復
を遅らせている面も看過できない。
図は,大前氏の HP からのもので,ロ
シアの要求価格(EU 並み 418$)と,ウクライナの許容可能な価格 235$とを図示したもの。09 年の平
均価格は,この図のウクライナ側価格に落ち着く見通しだ。
9
ガスと石油をサハリンから輸入するようになった日本にとっても,このガス紛争が大き
な注目を集めた。なかには,ロシアは何時ガスの元栓を閉めるか分からないから,パイプ
輸入など計画すべきでない,との意見もある。しかし,通常のガス取引で,元栓を締める
などするわけはないガスをストップすれば,困るのは供給側で経済的のロスは計り知れな
い。輸入側は,他国からの輸入で凌ぐことができるのだ(関連
石井彰氏「日本は天然ガ
スを温暖化対策に利用せよ」A090121)。09 年 2 月中旬(18 日前後)に予定されるサハリン
2LNG 工場完成式にメドベージェフ大統領が出席する見通し。
注:08 年 8 月時点で、ガスプロムは、トルクメニスタンに 160 ドル/1000m3支払っていた。
同じガスが西欧では 7 月 500 ドルであった。ウクライナでは、179.5$であった。09 年からト
ルクメニスタンからの買取り価格は、250-260$という予測がある。09 年 1 月 1 日から、中間
業者のロスウクルエネルゴは、テイモシェンコ首相の要求通り排除され、新契約では、ガスプ
ロムが中央アジアのガスを直接買い取りウクライナに直接売ることになる。(MT11/13)
2009 年の展望 :
(1)国内経済の予測
ロシアのノーボス通信社は,著名な経済専門家の特別寄稿をネット上で公開している。以下,
この内容を要約する:
08 年 12 月 20 日,副首相兼財務相のアレクセイ・クドリン氏は、近年中に財務省に「戦時
体制」を敷き、世界金融危機の影響に機動的に対応することを約束した。政府は「緊急金融
支援」により,当面必要な資金はすでに実体セクターに注入した。今度は,危機から脱出し,
産業の近代化,税体系の改善,国家にとって有利なルーブルレートを活かしながら輸出を伸ば
す方法など,再び危機に陥らないための長期的政策に転換する必要がある。経済発展省の予
測では、危機は 2 年続くとしている。クドリン氏は、あるインタビューで、「我々は 2009 年を
耐え抜き、2010 年にはすべてが成長に向かうようにする」と言明した。上院は 2023 年までの
予算戦略案を承認した。既存の「2020 年までの長期計画」と「予算戦略」の可能性を抱き合
わせることになる。「予算戦略」は 09 年の 4 月 1 日までに内容を固める予定だ。以前予定さ
れた GDP の成長率見通しは,6.7%から 3.5%まで引下げた。インフレは当初の 8.5%ではなく約
15%になる恐れがある。09 年の産業の成長率は 2.4%,2010 年は 0.7%と低下し,2011 年にな
って,やっと 2.3%にまで上昇するとの予測だ。固定資本投資も削減される。
すべてこれらの数字は、石油価格が 50$ /b になるという想定で出されている。25 ㌦まで落
ちるという予測もある(戦略開発センター所長,経済省前次官M・ドミトリエフ)。予備基金の
資金は何時までもつか,石油価格は今後いくらになるかの見通しなしには政策や予算を立てる
ことは不可能だ。08 年 12 月 1 日時点で、国民福祉基金は 2 兆 1000 億㍔(763 億 8000 万㌦)
に、予備基金は 3 兆 7000 億㍔(1326 億 3000 万ドル)まで低下した。
しかし,いかに状況がわるくなっても、政府は、社会的支出を含む主要プロジェクト関連の
支払いを保証するつもりである。この保証を破壊する厳しいし指標も並んでいる。生産の縮小
が失業を増加し所得減少を引き起こすのだ。経済発展省の同じ予測では、現実の給料は、4-5%
の成長率で増加するが、小売の成長率は 4.5%まで鈍化するとの見方をしている。危機を利用
して、ロシアの基金市場を拡大し、国際金融センターを開設する(ルーブルでの国際決済比率
を次第に高める方針)という計画もある。
ズベルバンクの専門家は2 つのシナリオをベースに予測を立てている。基本的なシナリオは、
2009 年のロシア経済成長は 2.5─3.5%であり、実質所得の上昇率も同じく数%。インフレ率は
11%で、対ドルの為替レートは1 ドル= 30 ルーブルである。より悲観的なシナリオは、経済成
長率はゼロからマイナス 2.5%で、インフレ率は 11%を超え、ルーブル安がいっそう進む。
10
09 年 1 月 19 日,クドリン財務相によれば,09 年のインフレ率は,ルーブル安を前提に 13%
と予測した。財政予算案については,政府は原油価格 30$ /b を前提に,予算案を組み立て
ていると述べた。
外国貿易銀行は 11 日、08 年 12 月の GDP が前年比 1.1%減だったと発表した。GDP の
伸びがマイナスを記録したのは 99 年 3 月以来ほぼ 10 年ぶり。同銀行は「鉱工業とサービ
スの両部門で生産が急減」としている。(M090112)
ウラル地方の大手製鉄所では6万人の職員の20%が解雇、3万人が給与支払い遅延で、抗議
行動活発化。 しかし、抗議活動家から解雇処分。重機メーカも生産が半減し、解雇の嵐が吹き
荒ぶ。 不景気下でも止まらぬインフレがロシア経済構造の矛盾を浮き彫りにしている。
失業者の抗議運動,賃金不払い抗議運動と民主派弾圧ファッシズム抗議運動とが一体化して
きている現在の状況が、囁かれる「4~5月」経済危機深刻化の表出で「暴動」化すれば、治安機
関の弾圧行動は政治危機につながる可能性もある。(ヨーゼフ・サハロフスキー)
ロシア, 10 年ぶり財政赤字(N090126) 原油価格の下落を受けて,歳入が大幅に減少するた
めに,09 年の財政収支が赤字見通しになった。今年の GDP は 11 年ぶりでマイナスになるかもし
れない。プーチン首相は,すでに始まっている現行予算を,95$/b(ロシア産ウラルス)から,41
$で再編成するよう指示した。ロシアは歳入のうち,約 4 割を,石油・ガス輸出に依存する。現行
予算で約 1 兆 9 千億㍔(約5兆3千億円)だった財政黒字は,今後原油が大幅に上昇しない限り,
1999 年以来の赤字となる。赤字幅について,ドボルコビッチ大統領補佐官は「GDP 比率で,5%
(約2兆 1 千億円の相当)を超える」と発言した。赤字は石油輸出代金の一部を積み立ててきた
「準備基金」(昨年末残高4兆㍔強)を取り崩して補填する。
GDP 見通しも当初の 6-7%成長から「マイナス 0.2%」に修正(経済発展省)。有力経済研究所
(CMASF)はマイナス 3.1%を予想。ルーブルの対ドル相場は 7 月の高値から 4 割強下落した。中
銀は,ドルとユーロからなる通貨バスケットに対するルーブル価格の下限を新たに設定。今後 2
カ月間は事実上,約 10%のルーブル安しか容認しない姿勢をしめし,ドル売り介入をする方針。
外貨準備高はピーク時の 5965 億㌦(08 年 8 月)から 09 年 1 月 20 日には,3975 億㌦と急減し
ている。ロシア下院も「積極財政を支持」し,企業の外貨を以前のように強制的に売却させたり,
外貨送金制限するなどの臨時措置もありうるという。
(2)対米関係の予測 09 年 1 月 20 日にオバマ第 44 代米国大統領(Barack Hussein
Obama,1961 年生まれ)が就任した。ロシア側の大統領メドベージェフ氏は 65 年 9 月生
まれで,ユダヤの血統を持つ(中澤)のに対し,オバマ氏はそれより 4 年若く,黒人の血
統を持つ。2 人ともリーダーとして若さと被差別民族と出自である点で共通点をもつ。ブ
ッシュ時代に冷え切った両国関係が,現実的関係を回復する条件があるだろうか。今回の
会報(96 号)に掲載された,シュビドコ論文では,関係改善の前に緊急に取組むべき国内
経済の回復課題が立ちふさがっている上,さしあたり早急に関係改善をするインテンシブ
(刺激)が存在しないので,当面の改善は望めないという悲観論である。反対の意見もあ
る。それは,次の 3 点が関係改善の必要を両国に迫っているというものだ。①世界的金融
危機で国際的協力(G20 など)の必要になっている,②アフガンテロ作戦での協力(中央
アジアからアジアにかけての安全はロシアの協力が不可欠),③09 年 12 月に失効する
START 条約(核兵器削減条約: Strategic Arms Reduction Treaty)の後をどうするのか。この対
策がないと,核の脅威に晒されることになる(同条約は米露の戦略核弾頭数の上限を 6000 発に制
限し、履行状況を検証する査察制度導入などが柱)
。
ロシア上院議長(親政権党「公正なロシア」党首,プーチン首相に近い有力政治家),
は 09 年 1/15 日,東京での記者会見で,米国が日本などと共同で進めるミサイル防衛(MD)
計画について,
「冷戦の風を感じる。世界を武力の時代に引き戻すものだ」と厳しく批判し
11
た。オバマ次期大統領との関係改善に期待を示す一方,当面は新政権の対ロ政策を見守る
姿勢を示した。また,プーチン大統領が 2012 年の次期大統領選に出馬する可能性を排除
しないとも述べた。
D.トレーニン氏(カネギーモスクワセンター代表)は,「オバマ次期大統領は対ロ外交を
含め,まず金融危機対応が最優先課題となる。米国はオバマ氏の指示で,ロシアとの戦略
兵器削減交渉に向けうごきだしている。東欧でのMD(ミサイル防衛)計画や NATO の東
方拡大なども取上げるだろう。ロシア事情に詳しいゲーツ国防長官の続投は,ロシア重視
のサインと読める。ただ,オバマ氏が強い大統領になれるかどうかまだ分からない。」と述
べている。
ロシア,MD 問題改善期待(A090125)
ロシアは,オバマ政権の発足を米ロ関係を改善
する好機と見る。ブッシュ政権との対立の最大の原因だった米ミサイル防衛(MD)の東欧
配備計画を,新政権が見直すことへの期待が高まっている。ブッシュ政権の旧ソ連圏での
政策はロシアを刺激し続けた。
寄稿論文
露米の新大統領は,両国関係を改善することが可能か?
V.G.シュビドコ:世界経済国際関係研究所共同研究員
最近 20 年間で,露米間関係の一層の悪化がはっきり認識されたのは多分 2008 年であ
った。少なくとも最近の 5 年間をとると,2008 年は双方で繰り返し誇張された言辞によ
りロ米関係は危機的状況にまで高められた年だった。双方にとり死活問題についてさえ対
話は閉されてしまった。現在,経済問題,なかんずく国際経済関係の協力分野で双方にと
って利益になる問題についても,対話や相談が凍結されていることを,公式に認めるまで
になった。
最近の 20 年間で,最低レベルまで下がったのは,安全保障分野で相互信頼の維持を保
証するコンタクトであった。相互の無理解とまずい対処のため,武器を使う紛争リスクは,
一再ならず起きている。最後に,以前はつまらない誤解が,相互の憎悪を助長しないよう
にしていた政治指導者間の個人的対話が事実上崩壊してしまった。
露米関係の現状を総括すると,双方は一層の関係悪化の恐れを食い止めるまでになっている。そ
の結果,すくなくとも正常化と関係改善の糸口を探る時期になっている。いずれにしろ,自国の対外政
策に大きな影響力を持つ両国のトップの公表されたレベルでは,両国関係の悪化は,専ら相手側の責
任であり,したがって,相手側こそ自己の行動を再点検し,妥協的・建設的対話への動きを開始すべき
だと声明している。
換言すれば,2008 年の秋にかけ,双方は対話を回復するため,何らかの条件を前提にすることは
無意味である,という意見を承認した。今のところ,相手側が政策方針を大きく変更する兆候はない。つ
まり,露米両国政府の対外政策チームが,対立の発生について自分が正しいのだから,こちらか
ら,政策の何らかの本質的変更する必要はないというわけで,双方は出口のない袋小路に
入ってしまった。
こうした条件下では,双方の対外政策の形成と実行に責任あるトップの政治指導者の
交代は,多くの観測者に,この分野の急速な変更の期待を生み出した。2008 年に露米双
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方で実施された大統領選の結果としての「プーチンーブッシュ」から「メドベージェフー
オバマ」の交代は,大統領間の関係に発生した否定的なことを忘れるチャンスを与えてい
る。一連の観察事項によれば,事態の完全な変更は全く確実である。2009 年の上期には,
すでに露米関係のはっきりした改善を予言することができる。それにも関わらず,懐疑的
な仮説に固執せざるをえない一連の要素がある。
第一に,ロ米関係に責任を持ち,両国政府の政策動向を決める人物の交代は,ラヂカル
な性格を持たないであろう。米国の新内閣は,イラクやアフガンでの米軍駐留問題の重点
の置き所は変更されても,米国の対外政策の従来の方向性は,無条件に維持されるだろう
し,対外政策面でロシア政府の方向性を決定する専門家たちは大方従来と同一グループで
ある。結局,アメリカ政府によるロシア認識は,果たして何らかの本質的変化があるか疑
わしい。
さらに,ロシア側の対外政策を決定するチームは,個人的見解を殆ど変えないのだから,ロシア側の
米国理解にも,殆ど変化を期待できないのだ。とにかく,プーチン大統領時代の側近グループが抱いてい
た米国の対外政策に対する本質理解は,新大統領メドベージェフと個人的つながりを持つようになった
人々にも受け継がれている。新大統領の公表された講演を見ても,現在のところ米国理解に何
らかの本質的変化は見られない。この観点からいえば,過去の重荷は,露米関係改善の道を職席
上探らねばならない人々を圧迫し続けている。
第二,全ての対外関係で憲法上責任を持つ大統領に,メドベージェフが就任してから 2
カ月を過ぎた時点で,はやくもコウカサスで事件が発生し,深刻で長期の露米関係悪化を
もたらした。08 年 8 月に起こったグルジア紛争は緊張関係を生み,
「クレムリンの新しい
住人」効果を利用した,米国との新しい対話の見通しに深刻な損害を与えた。
たとえメドベージェフ大統領が,米国の次期大統領(オバマ)との対話開始を計画し
たとしても,南オセチアとアブハジアの今後の運命について,グルジアとの深刻な対立(間
接的には米国との対立)があるので,これの実現を明らかに妨げている。さらにロシア大
統領による,この地域の独立の承認は(不本意なものであれ,そうでないものであれ),米
国との関係改善に解決困難な新しい問題をもたらした。
第三,近年におけるかなり低レベルの露米関係の紛争の結果,こうした関係それ自体
だけでなく,両国の政界の相互信頼にも影響を与えた。不信レベルを本質的に引下げるに
は,かなり長期の努力が必要である。数ヶ月では足りないだろう。双方が抱いている諸問
題に関して関係改善のための契約を結ぶ事業は,少なくとも数ヵ年にわたる目的意識と忍
耐を要する事業である。こうした対話の可能性を保証するのは,少なからぬ強い意志と政
治的能力である。両国間に関係改善の善意があったとしても,数年はかかるであろう。
最後に(4 番目),1980 年代と異なり今日の状況下では,両国関係改善課題の優先順位
は高くない。ロシアでも米国でも両国関係より,国家安全保障問題の方が,優先度が高い。
これは,とくに財政・経済問題である。この問題は今後 10 年間で,最も深刻な社会的・
経済的危機になりうる問題である。
米国もロシアも自国領土の外側(イラク,アフガニスタン,イラン,グルジアなど)
で,国際テロ組織の脅威の問題を抱えている。同時に,ロ米両国は,テロ組織の脅威を自
国内でも抱え,
「ライフラインを守るインフラ施設」と「国民の生命と健康」への潜在的不
安と安全保障に対して信頼喪失状態に置かれている。
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最後に,世界市場の多くの舞台で(とりわけ,中期・長期にわたる)経済的競争力を
引き上げるという,益々増大する無視できない課題も存在する。というわけで,両国間の
関係改善の解決は,相対的には緊急の課題ではなく,もう少し波が静まるまで延期できる
し,延期すべき課題であるのだ。
この問題への冷静な見解の結論は,少なくとも近い将来,露米関係の目覚しい改善を期
待できないということだ。この期間は,相手のやる気や,相手の可能性を模索する目的を
持って,両国大統領行政府間の非公式・非公開のコンタクトが期待されるのみだ。そして,
何時までも解決を放っておくべきでない問題について,可能な妥協線を見つける試みを行
うべきだ。
テーマ別ニュース月禄
Ⅰ ロシア国内政治
国内政治:記事を総合ページ「回顧と展望」に譲り大幅にカットした。
ロシア帝国最後の皇帝 ニコライ 2 世一家 90 年ぶり 名誉回復 (M81003)(要約)ニコ
ライ 2 世一家 7 人について、ロシア最高裁は 1 日、政治弾圧の犠牲者だったと認定し、名
誉回復を宣告した。最高裁は昨年、名誉回復の対象に該当しないとする検察側の主張を認
め、訴えを退けた。一転して認めた理由は明らかではないが、大統領が進めようとしてい
る政治からの「司法の独立」をアピールしようとした可能性がある。
「新冷戦なのか」露の繁栄 長く続かぬ ノルウェー防衛省政務次官 エスペン・バット・エイデ
氏 (Y81007)(要約)今,ロシアは米国のライバルではない。グルジア侵攻でモスクワの
株式市場が混乱したように、相互依存は進んでいる。今の緊張を「新冷戦」と呼ぶのは間
違いだ。ロシアが手にした富を、新産業の育成や人材開発に積極的に投じていないことに
驚く。資源頼みの経済成長であるなら、繁栄は長く続かないだろう。ロシアをはじき出さ
ず、多国間の枠組みで対話を続けていくことが重要だ。
大統領の任期
延長を表明 4年を 6 年に (M81106) プーチン主導「双頭」定着(D081108)
メドベージェフ大統領は 11/7 で就任から半年。前大統領の実力者プーチン首相との双頭体
制は、グルジア紛争や金融危機への対応を通じ、プーチン氏の主導が定着。メドベージェ
フ大統領任期延長も、プーチン氏返り咲きへの布石との見方が強い。11/5 の年次教書演説
で、大統領はグルジア紛争を引き合いに、ロシアの安全保障に直結する旧ソ連構成国の動
向を注視する意向を表明。グルジア紛争は、旧ソ連崩壊後ロシアによる他国への初の軍事
進攻だった。旧ソ連圏を「勢力圏」と位置付けて反ロシアの動きをけん制し、一方で米国
一極支配を批判して欧米の分断を狙うという手法は、プーチン氏そのまま。
[メドベージェフ大統領の主な発言]:「最重要課題は、市民と経済の自由をさらに発展さ
せること」(5/7 大統領就任演説で),「モスクワを世界の金融センターにしたい」(6/7 国際経
済フォーラムで),「しかるべき条約がなく、国境問題が未解決であることは,関係発展を
妨げている」(7/3 北方領土問題に関して日本メディアに),「新たな冷戦は望まないが、新冷
戦を恐れてはいない」(8/26 グルジア紛争をめぐってロシアメディアに),「新政党に投票し
た市民のため、下院選で 5-7%の得票を得た政党には 1-2 議席を与えていい。小政党にも議
会の舞台を与える」(11/5 初の年次教書演説で),
[プーチン首相の主な発言]「最終決定権はもちろん、大統領にある。現大統領はメドベー
14
ジェフ氏だ」(5/31 仏ルモンド紙に),「(ミルク高騰に)もうちょっと早く反応しなければい
けない。一般の市民がどういう生活をしているか見なくてはいけない」(6/9 経済フォーラム
での演説で評価が急上昇したシュワロフ第一副首相を牽制して),「米国の大統領選の特定
候補に有利な状況をつくるために、誰かがグルジア紛争を仕掛けたのではないか、との疑
いがある」(米 CNN テレビに),「ロシアに金融危機はない。ロシア経済は外国投資家にと
って静かな港」(9/13 仏フィガロ紙に)。
露が密造酒摘発庁を設置 有害成分 昨年 2 万人死亡 (M81115)(要約)ロシア政府は
粗悪な密造酒による健康被害を食い止めるため、アルコール製品を管理する省庁「連邦ア
ルコール製品流通監督庁」の新設を決めた。500 ミリリットル入りウォッカの最低小売価
格を 80 ルーブルに設定。これより安く販売されるウォッカを密造酒として取り締まると
ともに、酒税徴収の安定化を図る。
「反プーチン党」消滅 露リベラル「右派連合」 支持離れ 解散 親政権の新党設立
(M81117)(要約)プーチン前政権と対立してきたロシアのリベラル系野党「右派勢力連
合」が 15 日自主解散し、親政権色の濃い新党「正義」として新たに発足した。右派勢力
連合の元幹部で反政権のネムツォフ氏らは、15 日の党大会で「右派勢力連合」の存続を訴
えたが、現実路線の多数派に破れた。そこでネムツォフ氏はカスパロフ氏らと、近く別の
政治団体を結成する。もう一つの有力な野党「ヤブロコ」も下院の議席を失っている。プ
ーチン前政権と対立してきたリベラル系野党は、政界の表舞台から姿を消した。
ロシア上院 大統領任期延長承認 憲法改正案年内にも発効へ (M81223&27)(要約)大
統領と下院議員の任期延長は、次回の選挙後に適用される。この延長について大統領は、「民
主体制の強化と安定の維持が目的」
と主張する。大統領府が任期延長を急いだ背景には、
経済悪化を恐れ、プーチン氏の「再登板」に備えているとの見方がある。
(081230 に大統領
法案に署名・成立)
プーチン氏 米次期政権に期待感 「首相会見」 露大統領復帰の憶測 (M81205)(要約)
プーチン首相は 4 日、テレビ番組に出演し「米国との関係改善を望んでおり、前向きなシ
グナルを受けて取っている」と語った。プーチン氏は会見後の記者団とのやり取りで、
「次
の(大統領)選挙は 12 年に行われる」と述べ、繰り上げ選挙の可能性を否定するととも
に、自らの出馬には言及しなかった。
露が新ミサイル 来年末から配備 (Y81202)(要約)ロシアのマカロフ参謀総長は 1 日、
新型の潜水艦発射弾道ミサイル SLBM「ブラバ」の配備を 2009 年 12 月に開始する方針
を明らかにした。「ブラバ」は ICBM「トーポリ M」を改良した多弾頭ミサイルで、射程
距離は約 8000 キロとされる。
露大統領 元野党党首を新知事に指名 (Y81210)(要約)露大統領は 8 日、沿ボルガ地
方キーロフ州の知事に、民主派野党「右派同盟」を率いたニキタ・ベールイフ元党首(33)
を指名し、同州議会に提案した。政権批判の封殺を目指すクレムリンによる野党指導者の
取り込みとみられる。
露で反体制派デモ (Y81215)(要約)現代大統領と首相による統治体制の打倒をめざす
政治勢力「もう一つのロシア」が 14 日、モスクワとサンクトペテルブルクで集会やデモ
行進を呼びかけ、約 150 人が警察に一時拘束された。
野党「消滅」 幹部は続々政権迎合 (Y81220)(要約)キーロフ州議会は 18 日、大統領が
15
指名したニキタ・ベールイフ氏の知事就任に同意した。同氏は民主派野党「右派同盟」の
元党首。政権側に寝返った、とかつての同志から批判を浴びた。右派同盟の幹部だったセ
ルゲイ・キリエンコ元首相は国営原子力企業社長に天下りし、アナトリー・チュバイス元
大統領府長官は最大手の電力会社総裁、国営企業社長と渡り歩き、現政権の産業政策を推
進する。右派同盟の元幹部で、第 1 副首相でもあったボリス・ネムツォフ氏は、今月 13
日に旗揚げした反クレムリンの急進的な組織「連帯」に参加。イリーナ・ハカマダ氏は今
年 3 月、政治活動を停止した。また、グレゴリー・ヤブリンスキー氏は 6 月、長年務めた
「ヤブロコ」党首を引いた。政治学者アンドレイ・リャボフ氏は「リベラル派の多くは取
り込まれ、妥協を拒否した者は政治の舞台から追い出されたと指摘する。
露大統領の任期延長 6 年に 州知事ら「便乗」も (Y81223)(要約)憲法修正条項は、大
統領の署名を経て近く発効する。国政での任期延長を受け、スベルドロフスク州議会で知
事と議員の任期を現行の 4 年から 5 年に延ばす州憲法改正案が提出されたように、知事や
地方議員の間に「お手盛り」で任期を延ばす動きも広がりつつある。
露、爆発で 8 人死亡 (Y81107&M)(要約)北オセチア共和国ウラジカフカスの中央市
場付近で 6 日午後、テロとみられる爆発が起き、9 人が死亡、約 40 人が負傷した。当局は
女による自爆テロの可能性もあるとみて調べている。
露 原 潜 事 故 20 人 死 亡 日 本 海 航 行 中 消 化 装 置 誤 作 動 か 「 放 射 漏 れなし」 ( Y &
M81110)(要約)ロシア太平洋艦隊所属の原潜が 8 日午後 8 時半ごろ、ウラジオストク沖
ピョートル大帝湾のロシア領海を試験航行中に消火装置の誤作動と見られる事故を起こし、
乗員ら少なくとも 20 人が死亡、21 人が負傷した。この船は 91 年に起工されたが、資金
不足のため中断し、最近完工した。死者の内訳は、軍人 3 人と原潜造船所の技師ら民間人
17 人。試験航行には合計 208 人が乗船していた。死者のほとんどが造船所の技師ら民間
人だったことから、マスク着用など非常時の防護訓練が不十分だった可能性が指摘されて
いる。今回の事故は、ロシア軍の表面上の威信回復に実体が伴っていないことを浮き彫り
にした。
原潜事故、軍事ビジネスに痛手(D081111)(要約)
この事故で軍の掌握を狙ってメドベー
ジェフ大統領が掲げた「軍の近代化」は、出端をくじかれた。完成間もない原潜の事故で、
ロシアの軍事ビジネスへの影響も指摘されている。この原潜は、年末にロシア海軍に正式
配備された後、インドに 10 年間貸し出される予定で、約 6 億 5 千万㌦(約 646 億円)の貸
出料が見込まれている。さらに軍艦 2 隻と空母をインドにリースする予定だが、軍事専門
家プホフ技術戦略分析センター代表は「インドが今後契約を警戒する可能性もある」。
http://www.mag2.com/m/0000257699.html
原潜事故「人為ミス」 (Y81114)(要約)タス通信によると、事故原因について、ロシア
検察当局は 13 日、海軍兵士の一人が「消火装置」を誤作動させた人為ミスだったと明ら
かにした。
IH 世界選手権 V チーム全員にベンツ(D081217)(要約)
メド大統領が、5 月のアイスホ
ッケー男子世界選手権で 15 年ぶり優勝のロシアチーム 28 人全員に、1 台約 15 万ユーロ(約
1850 万円)のベンツを贈呈。イズベスチヤ紙は「金融危機の折、外国リーグで活躍する裕
福な選手に国予算でプレゼントが必要か」と指摘。金融危機以降、輸入車の関税引き上げ
など国内自動車産業保護に力を注いでいるが、ベンツは外国製。この点も批判のきっかけ
16
になったもよう。これに対し 8 月北京オリンピック金メダリストに贈られた車は、ロシア
国内で組み立てられた車両だった。
露大統領 読売新聞へ寄稿 国際協調呼び掛け (Y081121)(要約)寄稿では、世界的な
金融危機について、
「いくつかの国の誤った経済政策により引き起こされた」と指摘し、名
指しを避けながらも米国などを批判した。国際協調について、
「多極型の国際金融・経済制
度づくりという優先課題の解決が重要」と指摘し、
「地域通貨の役割強化」を提唱、米ドル
を基軸通貨とする世界経済の仕組みを見直すよう主張した。
「信頼できるようなエネルギー
供給制度の構築を進める」「アジア太平洋地域のエネルギー安定供給制度の構築を推進す
る」と述べた。ソマリア沖などでの海賊行為を念頭に、「海運やエネルギー輸送に深刻な
脅威を与える国際テロに共同で対処することが重要だ」と述べた。地域間の関係拡大につ
いて、
「産業、先端技術分野での協力を進めることや、アジア太平洋地域と欧州間を結ぶ貨
物輸送用の“陸の懸け橋”の建設を含めた交通整備計画の実施が特に重要だと考える」
「地
域間の関係拡大はまず、シベリアやロシア極東地域にとって重要だ」と、述べた。
論点 大統領任期延長から占うロシアの行方 (M81212)・プーチン氏の「10月革命」 中村
逸郎(筑波大大学院教授)
欧米や日本では大統領の任期
延長が話題になったが、ロシア
の地方政治家は、上級機関から任命されている知事や自治体首長を今後は各議会で多数を
占める政党から選出する、と大統領が発表したことに驚いている。彼らが再任を望むなら
ば、統一ロシアとの関係を深め、議会選挙では与党を積極的に支援することになる。モス
コフスキー・コムソモレツ紙は 11 月 28 付で、統一ロシアを手にしたプーチン氏の政治的
な影響力は大統領時代よりも大きくなったと報じた。首相権力の強化は、大統領権限を形
骸化してしまう。ロシア政治の実態は、大統領制から議院内閣制に移行したようだ。ロシ
アの友人はこの動きを、
「十一月革命」と形容した。だが政府と与党の一体化は行政権力の
強化と引き換えに、政治の衰退を招いてしまう。
・政治競争を制度化へ セルゲイ・マルコフ(政治評論家 ロシア下院議員)
ロシア大統領の
任期の延長は、今後のロシアが安定した発展の軌道から外れずに戦略的、長期的なプロジ
ェクトを実現するために必要だからだ。今のロシアは混乱の後遺症を克服し、国内に市民
社会を確立し、影響力のある先進国の一員としての地位を取り戻さなければならない。任
期延長のもうひとつの理由は、下院選挙と大統領選挙を切り離すことだ。現状では下院選
は大統領選の前哨戦と見られているが、それにより有権者の注意を大統領候補である個人
より政党に向けるのに役立つ。プーチン政権下で国家の安定のため政治の中央集権化が進
められたが、振り子は今、反対の方向へ動き始めた。民主化の過程で重要なのは、ゴルバ
チョフ元ソ連大統領の過ちを繰り返さないことだ。今日のロシアで政治的競争の発展は、
きわめて強い大統領制によって均衡が図られることになるだろう。
権力強める双頭体制 リリヤ・シェフツォワ(カーネギー国際平和財団モスクワセンター上級研
究員)最も重要な点は誰が次の大統領に就くかではなく、プーチン氏のもとで形成された
権力集団が(指導者の)自己再生産のあらゆる方法を模索しているということだ。資源輸
出に依存するロシアの経済モデルはもはや立ちゆかないからだ。必要なのは改革だ。改革
は自由なメディア、野党、競争を復活させ、権力の交代を導くものだ。現在の政権はこれ
を許容できない。「双頭体制」は、自らの権力強化に専念することを決意した。経済危機
は長引き、いずれ社会的な危機、政治的な危機へと移行するだろう。成長の源泉を失った
17
現在の体制は、いずれ腐敗か崩壊が始まるだろう。解決策を提案できる次世代エリートの
結集に期待する。
ロシア軍
近代化作戦
将校半減・指揮系統スリム化(A081209
要約):ロシアが大
規模な軍改革に着手した。2012 年までに将校を 20 万人減らして半分以下にし,指揮系統
も変更する。「ロシア帝政以来約 150 年ぶり」といわれる大手術だけに,国防次官が辞任
するなど軍内部に不満や動揺が広がっている。セルジュコフ国防相によると,現在 113 万
4 千人いる兵力を 12 年に 100 万人まで削減。なかでも 35 万 5 千人いる将校を 15 万人へ
らし(20 万 5 千人にする),大将などの将官を 1100 人から 900 人にする。国防省の官僚
は 1 万 500 人から 3500 人に。軍需物資調達などの業務関係の多くは民営化され,人員も
1/3 に縮小する。下級将校は増員され,階級ごとの軍人給与は上がる。
軍の指揮系統も根本的に変わる。
「軍管区ー軍ー師団ー連隊」を 12 年までに「軍管区ー
作戦司令部ー旅団」に変える。
メドベージェフ大統領は,即応戦闘集団化,指揮システ
ムの効率化,最新兵器装備,軍人の生活状況改善の4つを挙げている。今回はその第一弾。
米国は兵力約 150 万人でその差は 30 万人だが,国防費は 16 倍の開きがある。
ワールド・ビュー スターリン主義の呪縛 モスクワ支局長 瀬口利一 (Y81221)(要約)スタ
ーリン死後 55 年の今春以降、国営テレビの特集番組でスターリン讃美が横行している。
番組の討論では、粛清の悲劇に触れても、粛清を命じた指導者の責任は問わない。ソ連を
軍事、経済大国に導いた「偉大な指導者」として、スターリンを肯定的に描こうとする現
政府の意図が見え隠れする。インターネットなどで「ロシアの英雄」を選ぶ人気投票では、
12 月 18 日までの集計でスターリンが約 217 万票のうち 29 万票以上を得票。13 世紀の軍
事的英傑ネフスキーに次ぐ 2 位につけ、プーシキン(3 位)やピョートル大帝(4 位)を
上回っている。ロシア正教会にさえ、スターリンを神格化する“異端派”が存在する。こ
うしたメディアや宗教界での「スターリン再評価」の動きを、政治評論家アレクサンドル・
ツィプコ氏は、
「ソ連崩壊後もロシアが共産主義イデオロギーに代わる国家理念を見いだせ
ていないためだ」と読み解く。
高まる「反中央」感情(D081227)(要約)
日本製中古車などの輸入関税引き上げ問題で、極
東の住民が政府への反発を強めている。ウラジオストクでの抗議集会で市民や報道陣を拘
束したのは、内務省特殊部隊と判明。住民の「反中央」の意識が刺激された。地元関係者に
よると、モスクワの部隊と知った住民との間で険悪な雰囲気が。中央からの派遣は「極東
では治安当局も日本車を支持している」との内務省の判断とみられる。サハリンでは現在、
ロシア製新車「ボルガ」は約 55 万ルーブル(約 170 万円)。これに対し品質が上とされる日
本製中古車「トヨタクラウン」は約 35 万ルーブル(約 110 万円)と 6 割強の値段。だが輸入
関税引き上げにより、税額は 60 万円近く跳ね上がる。モスクワ方面からの運送費がかさ
む極東では食品などの価格が高く、輸入品の規制は生活をさらに圧迫する。一連の抗議で
は「ウラジオストクを日本に渡せ」「サハリンを日本に貸し出せ」との主張も。一方、国
内の自動車生産地は輸入関税引き上げを歓迎。ロシア西部のウリヤノフスク自動車工場で
は政府方針支持の集会が開かれ、
「国内企業への支援は必要」と訴えた。ミローノフ上院議
長は「妥協策を探すべき」と理解を示したが、引き上げ方針を変えておらず、反発はさら
に続きそう。
金融危機で景観論争再燃(D081228)(要約)
18
サンクトペテルブルグ市で、プーチン首相
のお墨付きを得た超高層オフィスタワー計画をめぐる景観論争が再燃。建設費を世界最大
天然ガス会社ガスプロムと折半するはずの同市が、金融危機による財政悪化のため出費を
断念。景観を損なうと主張する市民団体は「計画を見直す好機」と注視。ガスプロムのミ
レル社長は、同市の出資断念を了承した上で、市内北東部のオフタ地区に建設する大型複
合施設「オフタ・センター」建設を同社単独で続行すると表明。同センターは約 66 ㌶の
敷地にコンサートホールや美術館、スケート場など配置。中心に高さ 396 ㍍のオフィスタ
ワー。建設費は約 660 億ルーブル(約 2060 億円)。問題は、観光都市である同市の景観に
超高層タワーが与える影響。歴史的建造物も多い市内は世界遺産に登録されており、規制
が緩い区域でも建物の高さは原則 48 ㍍まで。しかし、同市出身のプーチン首相は「この
計画が役立つことは間違いない」。ガスプロム関連会社を同市に移転させ税収増を図る狙い
もあるとされ、市長は特例として建設を指示。反対運動は手詰まりの様相だった。そこに
同市の出資断念。市民団体「生きている街」ミンチョーノクさんは「今ならガスプロムも
金融危機を理由に計画を変更しやすい。企業イメージも守れる」と見直し論議の盛り上が
りに期待。一方で金融危機は街経済に重くのしかかる。あるタクシー運転手は「観光客が
減って商売が困難になった。しかしタワー建設で職が増えるならそれもいい」。
「双頭」ロシア
グルジア紛争
強硬策
原油安に誤算(N081231)
8月のグルジア紛
争で,メドベージェフ大統領はグルジア領内の南オセチアの独立を承認し,米欧への対決
姿勢を鮮明にした。この事
件は,プーチン首相が絶大
な権力を維持している現実
を浮き彫りにした。首相は
軍事・外交の権限を持つ大
統領を差し置いて「最高司
令官」として振舞った。メ
ドベージェフ大統領も次第
にプーチン氏の激しい口調
をまね,対米強硬姿勢を打
ち出し,MD(ミサイル防
衛)に対抗して,ミサイル
を欧州に向けて配備すると
表明した
露
官製ベビ
ーブーム(Y090105):ロシアではベビーブームが起きている。08 年 1 月以降,第2子を
産んだ保護者を対象に,子が3歳になった時点で 30 万㍔(約 90 万円)を助成する。使い
道は住宅購入,教育,年金の3つに限られ,現金は至急しない。それでも平均月収が 2 万
㍔(約 6 万円)の住民にとり少ない額ではない。国連の推計では(07 年),約 1 億 4220 万
の人口は 2050 年には約 25%減少する。ロシアは 1992 年から死亡率が出生率を上回るよ
うになった。この逆転には,1家に2人以上が必要だ。プーチン氏の主導で,政府は少子
化対策を本格化してから,出生率は急増した。連邦政府の少子化対策予算は 06 年から 1
2倍以上の 1300 億㍔(3900 億円)に膨れ上がった(図は読売より)。
19
Ⅱ 経済・社会(経済危機関連は,1 部を残し大幅にカット,総合記事「回顧と展望」を
見よ)
アイスランド 欧州に振られ 露にすがる 緊急の借款要請 (Y81009)(要約)ロシアのク
ドリン副首相兼財務相は 7 日、金融危機に見舞われるアイスランド政府から借款の緊急要
請を受け、前向きに対応する方針を示した。
柔道、プーチン氏と学ぶ(D081009)(要約)
柔道家としても知られるプーチン首相出演の
DVD 教材「ウラジーミル・プーチンと柔道を学ぼう」がロシアで発売される。
ロシア 4 兆円追加融資 (Y81008)(要約)メドベージェフ大統領は 7 日、ロシア金融市
場の安定化策として、ロシア中央銀行が国内の大手銀行などに対し、総額 9500 億ルーブ
ルの追加融資を行う方針を表明した。ロシア政府は先月以降、3.7 兆ルーブル規模の緊急
介入を表明済みだが、その「追加措置」となる。グルジア紛争による外国資金の海外流出
に、米国の証券大手の破綻に端を発した金融危機が追い打ちをかけた格好だ。
金融危機で財務相会合(D081011)(要約)
CIS 首脳会議が 10 日、キルギスの首都ビシケ
クで開かれ、金融危機に対応するため作業グループを設置、10 日以内にモスクワで財務相
会合を開くことを決めた。ウクライナのユーシェンコ大統領は出席せず。9 日開かれた外
相会議では、グルジアが通告していた CIS 脱退が,09 年 8 月に有効になることを確認、
事実上了承した。
ニッケル世界大手
会長に国営企業長
基幹産業,政府管理一段と(N081112)ニッケ
ル独占会社(世界最大)ノリリスクニッケルの会長に国営持ち株会社社長(国営ロステクノ
ロジ社長チェメゾフ氏)が就任する。最終的には同社の約 25%が政府保有になるとの観測
もあり,基幹産業の政府管理が一段と強化されそうだ。財閥を率いるデリパスカ氏が国営
銀行に資金援助を要請,それに対し,政府側は 45 億㌦を融資する条件として,ノリリス
クニッケル株の 25%プラス 1 株を担保とし,政府が取締役を派遣することとした。
大統領と首相の故郷に第二のクレムリン?(D081127)(要約)
旧都サンクトペテルブル
グに来春開設される図書館に、大統領執務室や海外要人を迎えて会談する部屋が設置され
ることが決まった。メドベージェフ大統領とプーチン首相の出身地-「第二のクレムリン」
との呼び声も。図書館は、ロマノフ王朝時代にロシア正教最高機関として使われた 1834
年完成の歴史的建造物を約 740 億ルーブル(約 2660 億円)かけ増改築。ロシア初代大統領
エリツィン氏の名を冠する。
首都ーSt ペテルブルグ間 3 時間 45 分(D081227)(要約)
モスクワ-サンクトペテルブル
グ間約 890 ㌔を 3 時間 45 分で結ぶ「ロシア版新幹線」が 26 日公開された。最高時速 250
㌔。両都市間の所要最短時間は現在より 45 分短縮される。国営ロシア鉄道が 09 年 12 月
に導入する。ドイツ製で名称は「サプサン」(タカの意)。10 両編成定員約 600 人。8 編成
を順次導入する。購入価格は総額 2 億 7600 万ユーロ(約 350 億円)。ロシア鉄道ヤクーニ
ン社長は「運賃は 3900 ルーブル(約 1 万 2 千円)程度」と述べた。
世界危機 収束遠く 市場の不安静まらず (M081004)(要約)米金融安定化法が成立し
ても、市場の動揺は収まりそうにない。ロシアも、ロシア中銀による流動性供給などを合
わせて、政府が金融安定化のためにつぎ込んだ資金は 2000 億ドルにのぼる。
「ノボシビルスク便り」ギンギツネのペット化実験(D081023) (要約)
ノボシビルスクの
学園都市アカデムガラドクにある細胞・遺伝学研究所の研究成果で、ペットにギンギツネが
20
仲間入りしそう。L.トルット薄志は、
「野生動物が人間に順応し家畜化されたプロセス」を
テーマに 59 年から研究。雄ギツネ 30 頭と雌ギツネ 100 頭から「生まれつき人間になれて
いる個体」を選んで交配した。現在 250 頭のエリートギツネが存在する。
ロシア株 19%下落(D081008)
ロシア株式市場は 6 日、代表的なロシア取引システム
(RTS)株価指数が前週末比 19.1%下落。インタファクス通信によると、1 日の下げ幅とし
ては、97 年 10/28 の 19.03%を抜き、同指数が 95 年 9 月に始まって以来最大。
ロシア経済はピーク過ぎた(D081008)(要約)
国際フォーラム「北太平洋地域協力の行方
-ロシアの新政権と極東戦略」(北太平洋地域研究センター主催)が 6 日、札幌で開かれ、国内
のロシア問題専門家がパネル討論を行った。前外務次官・谷内外務省顧問,時事通信社・名
越外信部長,袴田・青山学院大教授,環日本海経済研究所調査研究部・伊藤研究主任などが
出席した。
金融危機、ロシア新興富豪を直撃(D081025)
金融危機は、原油高を背景とする高成長で
「わが世の春」を謳歌してきたロシアの符号を直撃。長者番付トップの経済人は資産の 6 割
近い損失を抱えた。株式市場は 5 月から 70%以上急落。時価総額で約 1 兆㌦(約 95 兆円)
が失われた計算。大統領は総額 9750 億㌦をつぎ込む株価対策を発表したが株価下落の流
れは変わっていない。世界有数のアルミニウム会社に出資するデリパスカ氏は今年の米フ
ォーブス誌の世界長者番付でロシア人トップ 9 位にランクされた。40 歳で資産 280 億㌦、
デリパスカ氏は、今回の金融危機で資産の 6 割弱の 160 億㌦の損失を抱えた。株価下落に
伴う担保割れで、金融機関から融資の早期返済を求められ、既にカナダの大手自動車部品
メーカーの株 25%を手放した。ロシア 4 位のフリードマン氏は銀行、通信、石油ガス開発
企業などの株を保有するアルファ・グループを経営しているが、昨年借り入れた 20 億㌦に
ついて、追加担保を差し出すよう求められたという。5 月に資産 10 億㌦以上の世界の富豪
1062 人のうち、87 人がロシア国籍と発表、ロシアの富裕層拡大を裏付けた米フォーブス
誌ロシア版カシューリンスキー編集長は「87 人中半分は来年のリストから外れるかもしれ
ない」。
露財閥に献金依頼か 英「影の財務相」 英投資家が暴露 (M81024)(要約)英国の最大
野党・保守党幹部で、
「影の内閣」で財務相を務めるジョージ・オズボーン下院議員(37)
が新興財閥のロシア人に違法な政治献金を依頼したとの疑惑が浮上している。英国では外
国人の政治献金は違法行為。デリパスカ氏は米フォーブス誌 08 年長者番付 9 位のロシア・
アルミニウム(ルサル)社の社長。
明日へ 世界遺産を守る⑥ 再開発と歴史の調和を サンクトペテルブルク (Y81028)(要
約)サンクトペテルブルクは、経済成長に伴う再開発の波に洗われている。「2003 年以降
に失われた建物は第 2 次大戦にナチスによる包囲戦で破壊された数を上回ります」と、町
並みを守る社会団体「ジボイ・ゴーラド」幹部のエレーナ・ミンチェノクさん(25)は語
る。その象徴が、「ガスプロム」による高さ 400 メートルの超高層ビル計画だ。市は「予
定地は世界遺産区域の外」と許可したが、ユネスコも懸念を表明する。
ウクライナ 暴落の冬 底をつくドル 暖房稼動 30% (Y81101)(要約)ウクライナでは、
銀行の取り付け騒ぎが起き、企業の生産調整で雇用不安も広がっている。
ロシア経済、改革が必要」(D081030)
ロシア・ユーラシア政治経済ビジネス研究所の隈
部代表が 29 日、東京の日本記者クラブで講演、ロシア経済に対する金融危機の影響につ
21
いて「厳しいが、ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)はしっかりしている。持ちこた
える可能性が大きい」と語った。隈部氏はかつて国際協力銀行でロ経済・金融の分析に携わ
ったアナリスト。
「株価は金融危機の前から下落している。改革が必要」と分析。ただ、豊
富な外貨準備高などから、98 年の金融危機のような財政破綻はないとも指摘。「ロシアが
倒れる時は、既に他の国が倒れている」と話した。
サハリン住民の 8%麻薬使用?(D081008)(要約)
インタファクス通信が 7 日に伝えた、ロ
シア連邦サハリン麻薬流通監督局の調査報告によると、同州の医療当局が記録している麻
薬患者は現在約 4 千人だが、明らかになっていない部分を含めると、麻薬使用者は 4 万人
以上に達し、同州の人口約 50 万人の 8%を超えると試算できるという。また 08 年 1-9 月
の州内の麻薬犯罪摘発は 584 件で、大麻やアヘンなど 63 ㌔を押収。組織的犯罪は 31 件と
前年同期の 2 倍に達し、252 人が起訴された。同局は、大陸-サハリン間のフェリーが麻薬
流入経路となっているとみて、監視強化を訴えている。
露大統領 G20 で改革案 脱「ドル基軸」 (M081101)(要約)メドベージェフ大統領は 10
月 31 日、今月 15 日に米国で開かれる世界 20 カ国・地域(G20)の緊急首脳会議で、ド
ル依存にかわる基軸通貨の多様化などを柱とした国際金融システムの改革案を提起する意
向を表明した。それは①新たな国際協定に基づく新システムの構築②国際金融センターと
外貨準備に当てる国際通貨の多様化③時代の要請に応じた効果的な危機管理体制の確立、
が柱。安全保障だけでなく経済でも米国の 1 極支配体制を突き崩そうというロシアの戦略
を反映した提案と言えそうだ。
ロシア正教総主教死去 アレクシー2 世 79 歳 政治混乱を収拾 (M081206)(要約)5 日、
モスクワ郊外の自宅で死去した。死因は公表されていないが、長く心臓の病を患っていた
とされる。1929 年、エストニアのタリン生まれ。レニングラード神学大を卒業。90 年 6
月、第 15 代総主教に就任。ソ連崩壊後のロシアで歴代政治指導者と良好な関係を築き、
ソ連時代に抑圧された正教会の影響力回復に尽力した。
ロシア大統領 イタリア訪問を中止し帰国へ (M&Y081206) (要約)メドベージェフ大
統領は 5 日、総主教の死去に伴い,インド訪問中の大統領は、次に予定していたイタリア
訪問を中止して、同日夜に帰国する。
聖像画「里帰り」で論争(D&Y081214)(要約)
修道士で画家、生涯が映画化もされたア
ンドレイ・ルブリョフが 1420 年代に描いたイコン(聖像画)「聖三位一体」。もともとモス
クワ北東 70 ㌔セルギエフ・ポサードの教会にあったが、1929 年にトレチャコフ美術館に
移された。今年 9 月、アレクシー二世がアブデーエフ文化相に対し、来年 6 月の宗教行事
にイコンを教会に数日間展示する「里帰り」を要請。ルブリョフ記念美術館ポポフ館長は
「事故も懸念されるし保管状態も保てない」。
車の関税 抗議デモ 1000 人 ウラジオストク 60 人一時拘束 (Y81223)
自動車輸入関税
引き上げに反発し、ロシア極東ウラジオストクで 21 日に行われた抗議デモは約 1000 人が
参加する規模となった。日本から多くの中古車を輸入する極東やシベリアでは、関税引き
上げによる打撃が特に大きく、自動車販売業者らの不満の高まりは政権の予想以上になっ
ている。抗議デモは、露政府が今月 10 日、国内産業保護を理由に来年 1 月からの関税引
き上げを発表したことに抗議して行われた。これに対し、治安部隊は、デモを無許可で行
ったとして参加者を強制排除、NHK のロシア人カメラマンを含む約 60 人を一時拘束した。
22
デモは 21 日、モスクワはサンクトペテルブルクにも波及した。政府が関税引き上げを発
表して以降、極東やシベリアでは自動車販売業者らが断続的にデモを組織している。一連
のデモでは「プーチン首相は辞任を!」とのプラカードも掲げられた。しかし、政権の統
制下にあるテレビ各局はデモについて目立った報道を行っていない。クレムリンが世論の
動向に神経質になっているためとみられる。
検証金融危機:世界経済に未曾有の嵐,塗り替わる金融勢力,(N081216)
米,破綻の芽は随所に,進みすぎた金融技術,政府の迷走
危機を増幅(N081217)
金融危機 露に寒風 失業 500 万人、富裕層も打撃 政府、「不況」報道に介入 (Y81227)(要
約)世界的な金融危機と原油価格の急落が、ロシア経済を揺るがしている。ドボルコビッ
チ大統領補佐官は 24 日、
「来年は赤字予算になる見通し」と述べ、歳入が当初の予想を下
回る可能性に言及。原油輸出による税収が減少するためで、不足額は 3.5 兆ルーブルで歳
入目標の 3 分の 1 に相当するという。政府の発表によると、11 月の工業生産は前月比マイ
ナス 10.8%、失業者は同月だけで 38 万人増え、500 万人を超えた。給与遅配も同月には
前月比約 2 倍の 78 億ルーブルに達した。富裕層も打撃を受けている。モスクワ郊外の高
級住宅地の地価は、最悪で危機前の 4 分の 1 となった。米金融情報大手ブルームバーグの
計算では、米フォーブス誌が選んだロシアの大富豪 25 人は、10 月までに計 2300 億ドル
の資産を失った。景気の落ち込みに対して、政府は総額 6 兆ルーブル規模の対策を発表し
た。国民には不安と不満が広がっており、
「成長神話」に陰りが出てきたことで、国民の不
満の矛先が、政権に向かう可能性が出てきた。こうした中、ベドモスチ紙が 11 月末に掲
載した「不況シナリオ」
(地方の工場が倒産し、抗議デモが暴徒化して他都市に広がり、モ
スクワに達する、という内容)に対し、通信情報省のメディア担当部門が、
「過激主義防止
法」を順守する必要があると警告した。ロイター通信は、大手新聞社の記者が編集幹部か
ら経済記事の表現に「留意」するよう指示されたと伝えた。政治評論家ドミトリー・オレ
シュキン氏は「全国的な抗議行動に発展するとは考えにくい」とする一方で、報道への介
入については、
「クレムリンが政情不安を警戒していることの表れ。危機が悪化すれば国民
の怒りはプーチン首相に向かう」と指摘している。
凍える露経済 1 か月で失業 37 万人増 所得 6.2%減 (M081227)(要約)ロシアの産業
界が深刻な不況に陥っている。国民は不安な年末を迎えている。特に深刻な影響を受けて
いるのは、需要の落ち込みで生産縮小に追い込まれた鉄鋼業や自動車産業。マグニトゴル
スクでは、鉄鋼コンビナートがこの 3 カ月で約 3800 人の従業員を解雇した。
ロシア,資本の流出加速(N081231)ロシア経済は危機色が強まりそうだ。対外借入に
依存してきた主要企業が資金繰り難に陥った上,原油価格の急落で,財政,経常収支とも
赤字に転落する見通し。来年の GDP 成長率は 3%の予測(ここ数年は 7%前後だった)。
資本流出に歯止めがかからず,外貨準備高は数ヶ月で 1600 億㌦(27%)減った。この資
金は通貨防衛や債務返済が必要な企業への緊急融資に使われた。プーチン首相はインフラ
整備など(予定どおり)実施すると強気だが,財政赤字は GDP の5%に達する見込み。
「安
定化基金」も 09 年末には底をつくとの指摘もある。高層ビルの建設は凍結され,高級車
の販売も急減しているほか,解雇や賃金遅配などが,社会不安に繋がる懸念もでている。
急減する産油国景気(N090104):原油相場は 08 年初 100 ㌦から 7 月に 147 ㌦台を経
て 09 年初は 46 ㌦台に急落した。ロシア中銀は,グルジア紛争前の対ドル為替 23 ㍔台か
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ら年末の 29 ㌦台まで下がったのを,32 ㍔当たりで底打ちさせたい意向だ。
ロシア経済マイナス成長へ(N090112)対外貿易銀行によれば 08 年 12 月の GDP は,前
年同月比 1.1%減少した。09 年についても回復は期待できず,09 年は年間でマイナスとな
る見通しという。しかし,政府はプラス成長を維持すると考えている。石油価格の低迷で,
通貨ルーブルの下落も続き,中銀は 1/12日の公式レートを1$=30.531 ㍔にすると発表。
08 年 7 月の高値 23.12 ㍔から半年で約 3 割の低下となった。
Ⅲ ロシアの外交・国際関係→省略,記事は全て総合ページに譲る。
Ⅳ 極東・サハリン・千島→今回は紙幅の関係で省略。
Ⅴ
日ロ関係
土屋ホームロシア進出(D081003)(要約)
住宅メーカー道内大手の土屋ホーム(札幌)は
10/2 日、ロシアで住宅事業に進出すると発表。ユジノサハリンスクでモデルハウスを建て、
富裕層向けに高級住宅を販売する。3 年後をめどに年商 20 億円を目指す。同社の施工子会
社アーキテクノが現地で施工する。ユジノサハリンスクの商社ロヤクス社や札幌の資材会
社などと業務提携を結び、年内に外断熱工法を用いたモデルハウスを建設する。09 年度に
15-20 棟を建て、11 年度をめどに年間 70-80 棟の建設を目指す。営業販売はロヤクス社が
担当。運賃や関税がかさむため、販売価格は国内の倍近い 1 坪当たり百万円程度となるが、
「現地調査では 8 千万円~1 億 5 千万円の物件が売れている。高性能住宅なら需要は高い」
(川本社長)。
和食ブーム、モスクワで(D081003)(要約)
外食としての和食が定着したモスクワで、日本
の食材を売り込む催しが続いている。JA全農は在ロ日本大使館とイベントを共催。日本
から野菜やコメなど持ち込み和食を提供。9 月にはモスクワ市内の高級スーパーが日本
の野菜や果物の専門コーナーを開設。伊藤忠商事も日本食を紹介する催しを開催した。
モスクワでは健康志向を背景に、日本食を提供する飲食店が 600 店以上に上る。
「対日」進展の機運(D081005)(要約)
7 月日ロ首脳会談の合意に基づき、フリステンコ産
業貿易相が 11 月来日する。政府は「ロシアはグルジア問題で米欧と対立しているため、東
アジアへの戦略的な関与を強めている可能性がある」(外務省幹部)と分析。ロ側が対日関係
進展に前向きなこの機をとらえ、北方領土交渉前進の環境を整える方針。
サハリンへ船で修学旅行(D081005)(要約)
稚内市-コルサコフ市を結ぶハートランドフ
ェリーの定期航路を利用した初の修学旅行が、6 日から 4 泊 5 日で行われる。日ロ間の交
流拡大で観光などの経済効果を見込む道や経済界、地元自治体などは、これをきっかけに
航路利用が増えればと期待。修学旅行を行うのは東京都中央大杉並高校。
ロシアの爆撃機が日本海上空に (M81009)(要約)ロシア空軍の戦略爆撃機 2 機が 8 日、
軍事演習の一環で日本海上空を偵察飛行し、自衛隊機の追尾を受けた。
日本語で熱く弁論(D081010)(要約)
第 13 回ロシア極東東シベリア日本語弁論大会が 9
日、サハリン国立総合大で開かれた。地区予選を勝ち抜いた 13 人が格闘技から恋愛まで
幅広いテーマで語った。優勝は「日本式お仕事」と題して発表の極東国立人文大 5 年 A.ニコ
ラエワさん。労働時間が長い日本企業の短所と従業員支援が手厚い長所を指摘、ロ企業の
目指す姿を論じた。
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「サハリン 2」完成間近(D081014)(要約)
サハリン北東沖の海底から続く長さ 800 ㎞の
パイプラインの終点、プリゴロドノエ基地。ここで天然ガスを液化し年間 960 万 t を出荷。
その 6 割は東京電力や東京ガスなど日本向けで、日本の総輸入量の約 1 割をまかなう。道
内に供給先はないが、LNG 確保が難しくなる中、日本は今後 20 年以上にわたる供給源を
確保した。不凍港プリゴロドノエ基地の完成で、これまで夏季に限られていた出荷は通年
可能になる。東京湾まで 2,3 日と、2 週間はかかる中東より圧倒的に有利。約 200 億ドル(約
2 兆円)をかけたこの事業の意義がここにある。サハリンエナジー社イアン・クレイグ最高
経営責任者は「ロシアと日本の戦略的プロジェクト」と語り、双方の利益になると強調。寒
冷地向け住宅建設で 7 月、同州進出を果たした松本建工の中所国際部長は、ロシア企業と
の提携の背景を「サハリン 2 にかかわった企業は国際ルールになじんでいるから協力でき
た」と説明。稚内建設協会加盟各社が 01 年、現地企業と設立し、250 人のロシア人従業
員を抱える合弁会社ワッコルもその一つ。サハリン 2 の原油と LNG を運ぶタンカーは年
間 250 隻ほど。既に本格出荷を始めたサハリン 1 と合わせ、道北沿岸の海は年間 500 隻前
後が行き交う資源輸送の「動脈」になる。油流出事故が起きれば、漁業は大打撃を受けかね
ない。一方、サハリン州政府は、サハリン 2 に代わる新たな雇用確保も緊急課題。最盛期
の 06 年、プリゴロドノエ基地だけで約 1 万人いた国内外の労働者は今後、約 300 人に減
る見通し。ホロシャビン知事は「道路や港、空港の近代化にも日本の技術と融資を期待す
る」と熱い視線を送る。
「ひと 2008」ワシーリー・サプリンさん(D081014)(要約)
1999~2004 年まで駐札ロシア
総領事を務めた。外交官生活を北海道で締めくくりたいと本人の強い希望で、ロ外務省ア
ジア太平洋局次長から異例の再登板。「ロシアの経済状況も変わりました。金融危機の影響
は心配ですが、ロシアと北海道の新たな経済関係を築いていきたい」。領土問題は「圧力に
よる解決は不可能」というのが持論。
顔 函館ハリストス正教会に着任した 115 年ぶりのロシア人司祭 ニコライ・ドミートリエフさん
(48) (Y81021)
カード提出要請、官房長官が拒否(D081021)(要約)
河村官房長官は 20 日、ロ外務省在
サハリン州代表部の代表が、来年度からの北方四島へのビザなし交流で日本からの訪問団
に出入国カード提出を求める可能性に言及したことに関し、拒否を表明。
生コン,ロシア生産
会沢高圧,現地企業と合弁
ウラジオ (N081022) 会沢高圧コ
ンクリート(苫小牧市)は,ウラジオのコンクリートメーカー,ザハール社と合弁を設立
し,生コンなどの現地生産を開始する。2012 年のウラジオでの APEC 開催を控え道路な
どインフラ整備(道路斜面の土砂崩れ防止など擁壁の製造・設計・施行など)に大きな重
要が見込める。09 年 4 月生産開始,初年度に擁壁関連だけで約 5 億円の売上を見込む。
道-ウラジオ、航路開設に努力(D081021)(要約)
高橋はるみ知事は 20 日、ウラジオス
トク市の沿海地方政府でダリキン知事と会談し、北海道-ウラジオストク間の航空路開設
に向け努力することで一致。経済交流拡大や観光振興が狙い。道経連近藤会長ら道内経済
界幹部らも同行し、寒冷地向け住宅や道路建設技術、道産食品を PR。
道産品輸出,協力求める,高橋知事,ハバロフスク知事と会談(N081022)建設技術を
売り込み(D081023)(要約)
高橋はるみ知事はユジノ市で 22 日、北海道の建設技術に対す
るロ極東での需要に期待を表明、道内企業の進出を支援する意向を示した。高橋知事は、
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岩倉建設が手がけた賃貸マンションを視察、「サハリンで道内の技術を生かす可能性はある。
双方の企業のマッチングを支援したい」。今年進出した松本建工の住宅建設現場も視察。松
本社長は、現地の技術者不足のため「より簡単に組み立てられる工法が必要」と指摘。知
事は「道立北方建築総合研究所に検討させる」と約束。同行した伊藤組土建の平野社長は「道
路や住宅整備は日本より 20 年近く遅れており、工事は無尽蔵。気候が似ている北海道企
業に強みはある」。
互恵的関係を構築(D081024)(要約)
高橋はるみ知事は 23 日、ユジノ市でホロシャビン
知事と会談し、2012 年までを期限とする新たな「北海道とサハリン州の友好・経済交流促進
プラン」に調印。経済分野を中心に 37 項目に及ぶ協力内容を明記し、より深い関係づくり
を目指す。新プランは、「貿易経済及び投資協力」「個々の経済分野における協力」「環境保全、
防災」「教育文化、スポーツ、保健医療」の 4 つに大別される。新プランは、双方が利益を得
る互恵的な関係構築を目指したのが特徴。高橋知事は、北海道はサハリンのエネルギー資
源を買う立場であるのと同時に、住宅などを売る立場でもあることから「サハリンはビジネ
スパートナー」と強調、関係拡大を呼びかけた。ホロシャビン知事は特に寒冷地向け農業技
術供与を求めた。
高橋知事極東訪問、経済界同行で好反応(D081024)(要約)
北海道は、大陸部では新潟県
や富山県などに比べ存在感が薄くなっており、今回の高橋知事のロシア極東訪問は巻き返
しの第一歩となった。12 年に APEC 開催を控えるウラジオストクなど極東にはロ政府か
ら 5700 億ルーブル(約 2 兆円)に及ぶ社会基盤への投資がある。ハバロフスク地方のイシャ
ーエフ知事も「当地方の建設会社は寒冷地に強い北海道の建築技術に関心がある」と述べた。
今回の訪問には道議会や道内経済界幹部も同行。サハリン州のみならず、大陸部との交流
拡大を願う高橋知事にとって、北海道の存在感を示すことは成功。〈解説〉
石炭購入、増量を希望(D081024)(要約)
知事のサハリン州訪問に同行した道内経済界一行
は 23 日、ホロシャビン知事に対し、経済交流への支援を呼びかけた。ロシアから年間約
70 万 t を輸入している北電は昨年度、サハリンから試験的に 1 万 t、本年度は 2 万 t 購入。
通関手続きを近くの港でできるよう改善すれば「2 万 t 以上の輸入も可能」と近藤会長は強
調。北海道銀行堰八頭取は、ユジノサハリンスクに開設する駐在員事務所について「ロシ
ア中央銀行と最終調整中。年内に設置し、民間プロジェクトを支援していきたい」と述べ、
金融機関の立場から役割を果たす考えを示した。
「まちかど」帰り始めた日本人たち(D081028)(要約)
日本の LNG 輸入量の 1 割を担うサ
ハリン 2 の施設が完成し、工事に関わってきた日本人たちが帰国を始めた。日本企業が担
当したのは主にサハリン州南部プリゴロドノエ基地。LNG 生産施設や原油タンクがある
積み出し港。施工したのは千代田化工建設と東洋エンジニアリングが出資した現地 CTSD。
滞在した日本の技術者や商社マンは昨年調査で百数十人、大半は世界中から来た労働者約
6 千人と簡易住宅で生活。何もなかった極寒の地に大型エネルギー施設を造り上げた。
地域間協力拡充を(D081028)
北海道政経懇話会の 10 月例会が 27 日札幌で開かれ、駐
日ロ大使ベールィ氏が「ロシアと北海道-日ロ関係における地域協力の役割」と題して講演。
北海道に対し、サハリン州の大規模石油天然ガス開発事業などを通じ、ロ極東地域との相
互協力関係を築くことを強く期待した。北方領土問題では「ロシアは解決案の探究を棚上
げする予定はない」として上で、解決策は「互いに受け入れ可能な形でしか考えられない
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ことは明らか」と強調。ロシア産水産物の密漁・密輸出入問題については「ロ側の仕事は山
積みしているが(輸出先の)北海道にも改善の余地がある」と述べ,取締機関の連携を強化
する必要性を訴えた。
〈D 社説〉道とロシア、新しい経済交流探ろう(D081029)(要約)
高橋知事がロシア極東 3
地域を訪問し、サハリン州と新たな経済交流促進プランに調印。対ロ交流で北海道は全国
の先頭ランナーだった。だが現状は、サハリン州とは一定の交流があるものの、他 2 地域
とは細々としたものでしかない。知事訪問はハバが 18 年前、ウラジオが 12 年も前のこと。
北方領土問題を抱え、原油ガス開発が進むサハリン州との提携を道は優先した。今回は道
内経済界代表が初めて訪問に同行し、熱意を示した。沿海地方政府とはウラジオ-新千歳を
直接結ぶ航空路線やチャーター便就航で一致。そうすれば,新潟経由で半日かかるのが 1,2
時間で行き来できるようになる。北海道とロシアの貿易額は昨年で 1100 億円。極東 3 地
域はロ政府の投資による成長が続き、経済パートナーとなる可能性が膨らむ。道内経済が
冷え込む中、期待していい地域となりそう。ロシアは政府や地方行政の影響力が強い。空
路開設や法制度の交渉、投資を支える融資などで道の支援も欠かせない。
スーパー銭湯、極東で事業化(D081101)(要約)
ロシア専門商社大陸貿易は31 日、ユジノ
市で、いわゆる「スーパー銭湯」のロシア極東での開業を支援する事業計画を明らかにし
た。同社はかつて、ロ側との合弁で同市に開設した「サンタリゾートホテル」をロ企業に
乗っ取られた経緯があり,今回は施設運営には関与せず、入浴施設の設計や、ロシアでは
入手できない機械設備の輸出を同社が担当する形で、新たな事業展開を目指す。提携先企
業の募集を開始している。
道弁連・サハリン州弁護士会が協定(D081108)(要約)
北海道弁護士会連合会は 7 日、サ
ハリン州弁護士会と国際友好協定を結んだ。司法情報の交換などを通じ、両地域の経済交
流などの発展を法的に支援する。道とサハリン州は、石油・天然ガス開発など経済を中心に
関係が深まっており、それに伴い起こり得る法的トラブルに対処するのが狙い。将来的に
は漁船拿捕などの事件にも対応できる体制づくりを目指す。
「改修費を全額負担」(D081105)(要約)
ラブロフ外相は 4 日の函館訪問で、函館市所有の
旧ロシア領事館の保全について、全面支援する姿勢を表明した。3 億~4 億円とみられる
改修資金をロ側が負担する異例の形で保全事業が動き出す見通し。活用策としては、ロシ
ア政府系基金「ロシアの世界」が同日ロシア極東国立総合大函館校に開設した文化情報施
設「函館ロシアセンター」の移設などが検討されている。領土問題については「友好関係
や相互利益、理解を深めること。これはあらゆる問題解決を図る最短の近道」と述べ、経
済など多面的な関係発展を通じ、解決を目指す姿勢を強調した。
情報発信へ拠点化狙う(D081105)(要約)〈解説〉ラブロフ氏は、友好関係をはぐくむ上で
の文化交流や言語教育の重要性を指摘。道とサハリン州との協力やビザなし交流など、日
ロ関係における幅広い協力・交流が「平和条約交渉の進展にも寄与する」との考えを強調。
改修はその一環といえる。
サハリン 2 パイプライン完成(D081107)
大型エネルギー開発事業サハリン 2 で、サハ
リンエナジー社は 6 日、全長約 800 ㎞のパイプラインが完成し、同日から原油と天然ガス
の充填作業を始めたと発表。パイプラインは原油と天然ガス用 2 本が並行し、サハリン北
東沖の大陸棚から、積み出し港サハリン南部プリゴロドノエ基地まで地中に埋設された。
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環境破壊が問題となり、完成が遅れていた。原油は一か月かけて同基地に到達、年内に出
荷を始める。輸出量は年間約 1 千万 t の予定。天然ガスは同基地で冷却、液化され、出荷
開始は年明けの見通し。輸出量は年間約 960 万 t で、このうち約 600 万 t が日本向け。日
本の総輸入量の約 1 割に当たる。
露の MICEX と東証相互協力協定 (M081124)(要約)東京証券取引所グループは、ロ
シア最大の証券取引所である MICEX グループと相互協力協定を締結した。今後、主要株
価指数に連動する上場投資信託(ETF)の相互上場の可能性を探る。MICEX グループは
1992 年設立。グループ傘下に現物株式、デリバティブ、債券、為替など 6 市場を持つ。
「大陸へ・極東ビジネスの今」〈1〉競争(D081201)(要約)
ハバロフスクの日本食レスト
ラン「さっぽろ」は、故中川秀夫さんらの日ロ合弁企業が 91 年に開いた。ホテル経営にも
進出。当時、北海道は極東ビジネスの先頭にいた。合弁企業は 97 年、事実上ロ側に乗っ
取られ、不信感から道内関係者の足は遠のいた。北海道は従来、距離の近いサハリン州を
重視。同州の人口は 50 万人。ハバロ地方は 140 万人、沿海は 200 万人。その市場はシベ
リア鉄道で欧州までつながる。新潟税関支署管内の 07 年対ロ貿易額は 431 億 4500 万円と、
02 年からの 5 年間で 8 倍に急増。07 年輸出額は北海道を超えた。大陸との航空路を武器
に官民一体で攻勢をかける。ハバロ郊外の大型スーパー「サンベリー」に 9 月、「新潟お
もてなし館」を新設。昨年の輸出台数は北海道約 2 万 4 千台、首位の富山県約 15 万台。日
本海沿岸各都市が、急成長するロシアへの攻勢を強めている。
「大陸へ・極東ビジネスの今」〈2〉躍進(D081202)(要約)
新潟名産のイチゴ「越後姫」1 パ
ック(300g)2 千円がハバロでは 3 ヶ月間で 1800 パック売れた。「FFSフラワーファームし
ろね」(新潟市)が、極東で流通するオランダ産がすぐしおれると聞き、空輸を始めた。1
本 400-500 円だが、「2 週間もつ」と評判に。4 年で 35 万本輸出、現在のシェアは 1 割。同
西脇社長は「ハバロのシェアを 5 割にし、ウラジオストクにも販路を広げたい」。物流に
欠かせないのが航路。新潟と中ロ国境トロイツァ、韓国のソクチョをフェリーで結ぶ「日
本海横断航路」。北東アジアフェリージャパン(新潟市)など日中韓ロ 4 社が運航会社を設立
、来春就航を目指す。新潟-トロイツァ間は 24 時間。中国吉林省から鶏肉をチルドで輸入
できる。三橋専務は「極東ロシアは人口 700 万人。吉林省、黒竜江省は 6500 万人。さら
に魅力的」。両省は港がなく千㌔以上離れた大連港を利用していた。新潟篠田市長は、原油・
天然ガスの輸入拠点を目指す。ウラジオストク港が天然ガスを輸送するパイプラインの輸
出港になれば対岸の新潟港に優位性があるという。新潟東港では、天然ガスから軽油や灯
油などを精製するガス・トゥー・リキッド(GTL)実証プラントの建設が進む。日本GTL技術
研究組合の垂杉理事によると、天然ガスを輸入して新潟でGTLを製造するのは、コスト面
で無理がある。ただ「ロシアで製造したGTLの日本への輸入港として、新潟も選択肢にな
るかも」。環日本海経済研究所の佐藤経済交流部長は「寝ていても天然ガスは新潟港にやっ
てくる」。
「大陸へ・極東ビジネスの今」〈3〉参入(D081203)(要約)
島根県浜田港。2 千-3 千台の
中古車が並ぶ。年商 150 億円。この 5 年間で 6 倍という伸び率。97 年、ロシアへの中古
車輸出を始めた。当初はロシア金融危機に直面し全く売れなかった。しかしその後ロシア
は年率 5-10%の急成長。中古車輸出は 07 年、2 万台に。ロシア最大の船会社「フェスコ」
の定期便も就航。対ロ貿易の新顔が第一線に。貿易品目を拡大するため、行政を巻き込み
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「ロシア貿易推進プロジェクト」を設立。農産物や名産石州瓦などを輸出。ロ政府は、中
古車関連の関税を引き上げる方針。高橋社長は「関税引き上げがなくても、じきロシア国
内で中古車が発生し、輸入は減る。今のうち品目を拡大しなくては」。国土交通省秋田港湾
事務所の田中企画調整課長は、モスクワ、サンクトペテルブルグを注視。同港は国交省の「シ
ーアンドレール構想」モデル港として表舞台に登場。首都圏や東北から自動車部品などを
鉄路で同港に輸送、船で極東ロシアへ。シベリア鉄道で欧州方面に出荷。船で 40 日の距
離を 25 日で運べる。コンテナを仙台~ナホトカに輸送する実験は既に成功。東北にはト
ヨタ自動車系の工場移転が相次ぐ。秋田商工会議所の泉理事は「北米への出荷は仙台港、
ロシアへは秋田港となってくれれば」と期待。秋田県も「フェスコ」の定期航路誘致を目指
す。古タイヤなどを手始めに「名産『あきたこまち』の輸出やシベリア製材輸入など、有
望な品目はある」(流通貿易課)。
「大陸へ・極東ビジネスの今」〈4〉リスク(D081204)(要約)
北海道企業が輸出したタマネ
ギ引き取りのため、コルサコフ港に出向いた卸売会社社長テンさんは、荷卸の請求書が見
積もりの 15 倍になっており驚いた。船から岸壁まで 20m の移動で 19 万円。商品を預け
た倉庫会社からも見積もりの 6 倍の 21 万円を請求された。
「日本関連の取引ならふっかけ
ても言い値で払う」ロシア側一部にはそんな悪習が残る。98 年、ユジノサハリンスクにス
ーパーを開いたカウボーイは、商品がロシア税関に数週間放置されるなど問題が相次ぎ、
運営を断念、店舗賃貸に転換。塗装業「せきはら」が 03 年サハリンで始めた日ロ合弁建
設事業は、ロ側の送金遅れで行き詰った。大陸進出となれば難度は増す。新潟で大陸への
チューリップ輸出を手掛ける「FFS フラワーファームしろね」は、契約トラブル回避のた
め、細かい条件を付ける。代金前払い、苦情は出荷後 3 日目までなど。「あいまいな契約
で代金回収できない業者はたくさんいる。北海道の人は面倒だとしり込みする」。ロ側にも
改正の機運が。サハリン州ホロシャビン知事は「不合理な手続きが成長を阻害している」
と、輸出入などの関連制度の簡素化を主張。
「行政はいつも支援するというが、何も変わら
ない」。ロシア専門商社大陸貿易の吉富社長は、極東各地でスーパー銭湯展開を目指す。同
社は 93 年、ユジノに日ロ合弁で「サンタリゾートホテル」を開業、わずか 5 年でロ側に
乗っ取られた。今回は入浴施設設計などにとどめ、運営に関与しない。
「大陸へ・極東ビジネスの今」〈5〉(D081205)(要約)
ユジノサハリンスク近郊に今冬、松
本建工の寒冷地向け技術を使った一戸建て住宅が。同社が高断熱パネルを供給し、同社技
術者指導で現地業者が施工。約 3 千万円と現地相場の半分に近い。狙うは極東全体の市場。
「寒いほど強い」北海道の技術と経験は、大陸進出への鍵となる。イシャーエフ知事(ハ
バロ)は「当地の建設会社はカムチャツカなど北方の仕事も請け負う。最新技術に興味が
ある」と、北海道の建設手法に関心を示した。高品質の生鮮食品も強み。道や商社など 14
団体でつくる「ロシア極東地域北海道フェア実行委員会」は 12/18 日から、ハバロフスク
の国際見本市に道産リンゴや牛乳、スープなど出品する。「北海道の安全でおいしい食品」
をアピールし、年内には試験販売に挑む。
「大陸での第一歩。サハリンより市場規模も大き
く有望」(道担当者)。島根県ロシア貿易アドバイザー浅井氏は、北海道に航路がないと弱
点を指摘。ロシアでの日本食人気を背景に道産食品もすでに一部が同県浜田-ウラジオ航路
で輸出されている。浜田港は定期航路を実現。秋田港も官民挙げて航路誘致に乗り出す。
鳥取県境港はウラジオストクとの定期フェリー就航に向け旅客ターミナルを整備中。環日
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本海経済研究所の佐藤経済交流部部長は「寒冷地向けの建設技術は北海道にしかない」と
優位性を認める。浜田港振興会狩野事務局次長は「北海道はロシア専門職員もいてサハリ
ンでの経験もある」と評価。人口 700 万人のロシア極東市場を制するのはどこか。
パナソニック
ロシア・中東へ進出(N081208)パナソニックは 09 年度にも,ロシアと
中東の白物家電市場に進出する。海外販売の拡大により,白物家電を 07 年対比で 2010 年
に 1 割増しの1兆円に引き上げる。ロシアではモスクワ,サンクトペテルブルグなど主要
四都市に営業所を開設する。ウアジオにもショールームを設ける。
不安の在留邦人「交流にも影響」(D081214)(要約)
「サハリン日本センター」の那須
所長が刺されて重傷を負った事件を受け、現地在留邦人に不安が広がっている。サハリン
州の昨年の殺人事件被害者数は 172 人(未遂含む)。前年より 56 人減ったが、人口 10 万人
当たり 34 人と多い。サハリンの景気は減速するとみられ、ある在留邦人は「98 年のロシ
ア金融危機当時のように再び治安が悪くなるかも」と、道内企業の進出への影響を心配す
る。
松本建工 再生法、サハリンに衝撃(D081216)(要約)
15 日、民事再生法の適用を申請し
た住宅メーカー道内大手の松本建工は今秋、寒冷地向け技術を売り物にサハリン州に住宅
事業進出を果たしたばかり。「安くて暖かい住宅」として現地で期待されていただけに、
関係者は衝撃を受けている。
サハリン沿岸警備局「出入国カード必要」(D081217)(要約)
ビザなし交流で北方領土
を訪れる日本人に対し、ロ側が「出入国カード」提出を求める動きを見せている問題で、
管轄当局の連邦保安庁サハリン沿岸国境警備局は「法律上必要」と回答、09 年度から提出
を求める考えを示した。日本政府は、北方領土に対するロシアの主権容認につながりかね
ないカード提出を認めない立場で、ロ側が強硬に求めた場合、今後の交流に影響する可能
性もある。
即席めん 日清が参入 (M081227)(要約)日清食品ホールディングスは 26 日、ロシア
即席めん最大手のマルベンフード・セントラルの持ち株会社「アングルサイド」と業務提
携したと発表した。アングル社はシェア 41%を持つロシア最大のメーカー。ロシアは世界
9 位の即席めん消費国(08 年推定で年間約 20 億食)。今後も成長が見込まれるため、ロシ
ア市場に初めて参入する。日清は 09 年 1 月にアングル社株式の約 15%を約 93 億円で取
得。10 年9月まで総額約 270 億円を投じ、出資比率を 33.5%まで引き上げる。業務面で
は、日清が持つ即席めん技術を提供。「カップ・ヌードル」の現地生産、販売も検討する。
プーチンと柔道学ぼう 自ら実演DVD (Y081008)(要約)プーチン首相は7 日、自ら実演
する柔道教則用DVD「プーチンと柔道を学ぼう」を発表した。DVDはスポーツ奨励に取
り組む露政府の意向を受け、首相に近い与党系議員らが発案。山下泰祐さんや井上康生さ
んら日本の各選手も撮影に協力した。プーチン氏は 13 歳で柔道を始め、故郷レニングラ
ードの選手権で優勝。2000 年に来日した際、講道館で 6 段を授与された。
道産食品、サハリンに商機(D081001)(要約)
ユジノ市で第 12 回国際水産見本市兼第 4
回加工食品展が 30 日に開幕。シカ肉販売など道内食品 3 社が日本から初参加。道内から
は水産加工のフジユニオン(札幌)、食肉加工の中央食鶏(三笠)、シカ肉など販売のVIVID(千
歳)が約 50 商品を紹介。取引を希望する地元業者もあった。
道内タイヤ盗急増(D081228)(要約)
道内でタイヤが盗まれる被害が拡大し、1-11 月は
30
前年同期比 21%増の約 3 千件。一部は買い取り業者を通じて小樽港からロシアに輸出され
ているとみられる。中古タイヤは大半が簡単な税関審査で済む「手荷物扱い」のため、監
視の目が届きにくく、盗品の輸出が横行しているとの見方も。ロシアに中古タイヤを販売
する業者は「1 回の船で 2 万-3 万本輸出する」。ロシアの好況で、中古車輸出が好調なこ
とに比例し、日本製タイヤの需要も急増しているという。札幌市内タイヤ販売店によると、
中古タイヤ販売の 9 割はロシア向け。1 本 500-1000 円で買い取り、1000-1500 円前後で
ロシアの業者に売る。中古車の輸入関税引き上げの関係で、中古車の駆け込み需要があり、
タイヤ買い付けも増えているという。小樽税関支署によると、タイヤの大半は手荷物扱い
のため実数は不明だが、「輸出は月十数万本」とみる。
「ロシア極東に挑む」Nikkei 081110~14 まで,連続の特集記事を組む)以下は,紙幅
の関係で,要点を記述する。
北海道からサハリン向けの輸出食品は,日本食ブームと健康志向を背景にその高い安全
性と高品質,美味で,現地の評判はいい。しかし,新潟や島根などと比較して北海道ブラ
ンドの浸透は弱い。理由は,サハリン市場への進出が独特の困難さとリスクをもつとの思
考を払拭できないからだ。たとえば食品輸出には数箇所の認可が必要で,工場検査証明な
ど手続きが複雑(先方の業者と協力しないと安定輸出は無理)。その上,大量販売ルートが
確立していないため,コスト高が避けられない。日本米が1㌔約 500 ㍔(約 2000 円:国
内価格の 3-5 倍)で販売されている。しかも円の対ルーブル為替の上昇により日本製品の
値段は高まる傾向を持つ。釣りなど趣味の分野では,
「高級品ほど売れる」という現象もあ
る。先方の市場に食い込むには,個々の業者の努力もさることながら,交通インフラの開
拓が不可欠で,行政レベルの強力な支援が必要だ。道内からサハリンへの直行航路・直行
航空便はあるが,ウラジオとの間にはない。高橋知事のトップセールス行脚では(極東 3
州,08 年 10 月),ダリキン沿海地方知事から「(ロシア社による道との直行便に)可能性
がある」との回答を引き出した。たしかに直行航空便を持つ新潟やフェリー便の多い島根
に比較して,ハバロフスクやウラジオとの疎遠関係は否めない。
国際交通インフラと並んで重要なことは,信頼できる金融ファシリテイを確立すること
だ。銀行業は,決済・送金・貿易融資業務を通じて対外貿易に大きく貢献するほか,住宅・
乗用車・白物家電などの消費者ローンで,地元需要を振興するとともに,与信審査に伴う
地元の経済情報を握ることができる。かって好評であった「みちのく銀行」が撤収したあ
と,北海道銀行がユジノに駐在員事務所を置き,北洋銀行も成長性を見込んで関係強化を
模索している。しかしロシアの金融制度・慣行の未熟さは否定できない。日本では手形や
買い掛けによる後払いが一般的だが,ロシアでは前金が主流だ。急成長する極東には,道
内外から建設,食品,自動車関連など多くの企業が進出を伺う。そのさい信頼できるパー
トナ探しが事業発展の明暗を分けることが多い。銀行や道の出先機関(北海道ビジネスセ
ンター)は,この分野で頼もしい相談役だ。
「相談件数は急速に盛り上がっている」という。
しかし,相手企業を紹介しても,立ち消えになるケースがしばしばあり,プロポーズ情報
を提供する熱意が冷めている,情報をウエブ・サイトに乗せても反応がさっぱりないとい
うボヤキも聞こえてくる。食品・観光・建築は対極東交流の 3 大項目である。サハリン石
油・ガス開発工事が一段落した現在,開発工事ほどの大資本がいらないこうした業界にその
出番が廻ってきたといえる。自動車産業の関連裾野は広いが,建築業界の裾野も大きな広
31
がりを持つ(建築素材,家具・調度品,道路・港湾,上下水道・電気,冷暖房,耐震設計
など)。寒冷地で地震の多い広大な大地を開拓してきた北海道は,同じ条件を持つサハリン
や極東大陸に必要な建築・土木関連のノウハウの豊富な蓄積がある。サハリンはしばしば
巨大地震の被害を経験しているので,耐震性の高い断熱性能を持つ一戸建て住宅の需要は
着実に増加する。道内企業には,煩雑な手続きや,分かり難い法令に不満が多いが,中国・
韓国企業も同じ条件で,活発に参入している。先方に制度改善を求めるとともに,激烈な
国際競争があることも視野に入れるべきだ。サハリンには日本語を話し日本時代を懐かし
む多数の住民がいるのだ。
ユジノに桜並木を(D081114)(要約)
ユジノサハリンスク市で 13 日、十勝管内清水町か
ら運んだエゾヤマザクラ 120 本の植樹が始まった。同市で日本料理店「ふる里」経営の宮
西豊さんが日ロ友好のため寄贈した。
「好況の恩恵」激減懸念(D081115)(要約)
解体中古車関税の大幅引き上げで、道内への影
響も懸念されている。函館税関によると、北海道からロシアへの中古車輸出台数はロシア
の好況で増え続け、07 年は約 2 万 4 千台と前年比 27%増、約 172 億円同 52%増。小樽港
からの輸出が圧倒的。今回の関税引き上げの話があってから、駆け込み輸出が相次いだと
いう。
ドラえもんで文化交流(D081117)(要約)
メドベージェフ大統領夫人スベトラーナさん
が 16 日、モスクワ日本大使館で開かれた「日ロこども交流会」に出席、折り紙やアニメ
映画「ドラえもん」を鑑賞。スベトラーナさんは「日本独特の文化を尊敬している。相手
のことを学ぶことにより親しくなれる。アニメを通じた子供の交流ができれば素晴らしい」
と提案、交流会につながった。
アレクシー2 世死去(D081206)(要約)
ロシア正教会総主教のアレクシー2 世が 5 日死去
した。79 歳。6 か月以内に新しい総主教を選出する。在位中は旧ソ連崩壊後のロシアの歴
代指導者と協調関係を築きソ連時代に抑圧された正教会の影響力回復に努めた。対外的に
はロシア革命後に亡命した聖職者でつくる在外教会との和解を実現したほか、11 世紀に分
裂したカトリック教会との対話の道も模索。函館を「正教会の信仰が日本に広まった原点
の地」と位置づけ、00 年来日の際はウラジオから直接函館入りした。
シベリア鉄道でマツダ車モスクワへ(D081121)(要約)
マツダはロシアへの新車輸出で、
シベリア鉄道による輸送を始めた。モスクワまでの輸送期間は、海路の 3 分の 1 近くまで
短縮される。価格面など課題も多いが、シベリア鉄道が拡大する日ロ貿易の「大動脈」に
成長するか、試金石となりそう。マツダ車の鉄道輸送は 9 月下旬に始まった。約 30 両編
成の貨車は上下 2 段に仕切られ、1 両に約 10 台積むことができる。広島などからウラジオ
ストク近郊の港まで船で運ばれ、シベリア鉄道でモスクワへ。日本から到着まで 18 日間。
従来は、フィンランドまで船で運んでから陸送し、約 50 日間かかった。欧州でマツダ車
を販売するマツダモーターヨーロッパ(独)によると、ロシアでの 1-9 月の販売台数は、前
年同期比 81%増の 6 万 125 台。シベリア鉄道での輸送は「車体に傷つくこともなく期間も
予定通り。サービス向上になる」。年内 8 千台、09 年はロシアで販売する約 8 万台のうち
3 分の 1 を鉄路で運ぶ計画。シベリア鉄道を管理するロシア鉄道ヤクーニン社長は「トヨ
タも来年から部品輸送を始めるはず」。トヨタのサンクトペテルブルグ工場への部品輸送
が実現すれば、苫小牧工場から輸出される可能性も。中国や韓国からは、自動車部品や家
32
電製品の輸送が動き出しており、日本への波及を期待する。課題も多い。輸送量は「コン
テナ貨物で海路より 15-20%割高。完成車はそれ以上だろう」(商社関係者)。日本側は、料
金安定や税関手続き簡素化を求めているが「目立った改善は見られない」(日ロ外交筋)。
国内の自動車産業保護を目的とした、ロ政府の関税引き上げの動きも懸念材料。日ロ間の
貿易額は 2007 年、前年比 57%増約 2 兆 5 千億円に達するなど急伸している。シベリア鉄
道の物流に詳しい環日本海経済研究所の辻研究員は「ロシアのインフレで値上げが続けば
価格競争力を失いかねないが、日本側が求めてきた安全性や定時運行は確保されている」。
価格さえ落ち着けば日ロの大動脈になりうるとの見方。
新エネルギー供給体制を(D081121)
ペルー首都リマで開かれるAPEC首脳会議に参加
するメドベージェフ大統領は 21 日、アジア太平洋協力に関する論文を時事通信などに寄
せ、
「ロシアは世界最大の石油ガス供給国の一つとして、アジア太平洋地域における新エネ
ルギー供給システムの構築を推進する」と述べ、域内の発展にエネルギー面で協力する方
針を明らかにした。また、アジア太平洋地域を「世界経済発展の牽引車」とたたえ、従来
の欧米志向からアジア太平洋重視外交に転換する意向を示した。論文はエネルギー供給の
新システムについて「域内消費国が輸入先を多角化し、信頼できる供給源を確保できるよ
うにする」と述べた。ロシアは石油輸出全体に占めるアジア向け比率を現在の 5%から、
2020 年までに 30%以上に拡大するとしている。大統領は今回のAPECでも「エネルギー安
保に真剣な関心を注ぐべき」と強調。
「エネルギー価格変動に絡む各国の懸念をロシアも共
有する」とし、透明性のある価格設定実現や省エネ、代替エネルギー開発の共同計画に参
加する用意があると表明。大統領は「多くのAPEC参加国は金融危機後の世界経済の新し
いリーダーになる」と予測。食料、環境、貿易・投資自由化、国際テロなどの分野で共通の
戦略目的達成に向け、
「参加国と多面的な対話を進める」と約束。さらに「アジア太平洋の
協力増進はシベリアや極東にも重要」と述べ、12 年にウラジオストクで開かれるAPEC首
脳会議に向け、過疎の極東・シベリア開発に域内の活力を導入する考えを示した。(時事)
日本車締め出すな(D081123)(要約)
日本製中古車を締め出そうとするロシア政府の方
針に反対するロシア極東の市民が 22 日、ウラジオストク市などで一斉に抗議行動を行っ
た。同市議会ペニャスィ議員は「ウラル山脈以東の車の 70%が右ハンドル車。市内では関
連業界で約 10 万人が働いている。右ハンドル車が禁止されたら 40%が失業する」と強調。
沿海地方ではウスリースクやナホトカでも同様の抗議行動が行われた。昨年ロシア極東に
輸入された中古車は約 40 万台で大半が日本車。
北方領土解決、次世代に委ねず(D081124)(要約)
麻生首相は 11 月 22 日、メドベージェ
フ大統領と初の首脳会談を行った。大統領は北方領土問題について「解決を次世代に委ね
ることは考えていない」と早期解決に意欲を表明。両首脳は、政治主導で問題の進展を図
るべきとの認識で一致。首相は会談で「大統領の領土問題解決の決意が事務レベルの交渉
に反映されていない」と指摘。大統領は「どこの国でも官僚の抵抗はあるが、首脳の善意
と意志があれば解決できる」と応じ、領土問題前進に向け、事務方に具体的作業に入るよ
う指示することで一致。大統領は、極東シベリア開発やエネルギー分野での日ロ協力にも
強い関心を表明。大統領の領土問題前進への意欲の背景には、経済分野での日本の一層の
支援を得たいとの思惑がある。
狙いは経済協力(D081124)(要約)
22 日の日ロ首脳会談で、北方領土問題進展に強い意
33
欲を示し、「積極的に取り組むという大統領の姿勢が明確に見えた」と日本側を喜ばせた。
ただ、領土問題に重きを置く麻生首相と、経済協力重視の大統領とのずれも。「双方が受
け入れ可能な解決案」に至る道のりは、平坦ではない。首相は冒頭、「平和条約交渉が、
経済関係に比べて進展していない。官僚のメンタリティーを克服しなければ」と、政治家
同士による領土問題解決を呼びかけた。大統領は「首相の率直な物言い」を評価。首相同
行筋はこれが大統領の「解決を次世代に委ねない」との発言を引き出すことにつながった
とし、期待を寄せる。ただ大統領は、領土問題について「首脳の善意と意志があれば解決
できる」と述べた後、
「そのような考えは既存の文書から引き出さなければならない」とも
指摘。「既存の文書」とは四島の帰属問題を解決して平和条約を締結すると明記した 1993
年の東京宣言か、歯舞色丹 2 島返還を明記した 56 年日ソ共同宣言か。外務省幹部は「文
書と言えば全部入ってくるからこちらにとっても悪くない」と楽観的だが、解釈によって
は結論が大きく違ってくる。大統領の関心が経済協力にあることは、両首脳が双方の関心
事項を確認した際に、東シベリア開発やエネルギー分野での協力、原子力の平和利用での
協力などを列挙したことでも明らか。ロシアが日本など東アジア重視を強めているのは、
グルジア紛争で欧米との関係が悪化している上、極東発展のカギを握るAPECのウラジオ
ストク開催が 12 年に迫っているからだ。メドベージェフ、プーチン両氏の「双頭体制」
が盤石なロシアに対し、政権基盤が揺らぎ始めた首相は、ロシアのペースに巻き込まれず
に領土交渉を進めることができるのか。大統領の積極姿勢は、首相に重い宿題を背負わせ
たともいえる。
樺太考古学の父木村信六、異色の生涯 1 冊に(D081125)(要約)
戦前の樺太で警察官の傍ら
遺跡を調査し、
「オホーツク式土器」命名にも寄与した異色のアマチュア考古学者木村信六
(1903~41 年)の功績を紹介する「木村信六伝」が今秋、道北方博物館交流協会から出版さ
れた。木村はロシアでも 1 昨年に刊行された日本人研究者列伝に登場しており、日ロ双方
で再評価が進んでいる。
操業規制の順守、ロ側が要望(D081126)
日ロ両国の 200 カイリ水域における来年の操
業条件を決める日ロ漁業委員会(地先沖合交渉)が 25 日始まった。12/5 まで、サンマ、スケ
ソウダラなどの漁獲割当量や協力費の額を協議する。日本政府代表山下水産庁次長が「撚
油の高騰、日本水産市場の停滞、ロシア経済発展で両国の漁業をめぐる状況は大きく変わ
った」と、日本側の協力金などの負担減に理解を求めた。ロ政府代表のエフストラチコフ
連邦漁業庁副長官は「操業規制の厳格な順守が必要」と、資源管理強化に向けた協力関係
構築を優先したい考えを示した。自国漁船がカニなどを密漁し、道内に輸出しているとさ
れる実態への憂慮を表明したものとみられる。
「新企業ファイル」大雪林業(D081127)(要約)
サハリン州で切り出される針葉樹を丸太
や製材として輸入するほか、道内民有林の丸太販売、国有林の造林・造材が事業の 3 本柱
で、年間 4 万-5 万㎥の木材を扱う道内大手の総合林業会社。北洋材輸入は、造材現場での
機械化があまり進んでいなかった 96 年に、サハリンの業者の見学受け入れがきっかけ。
作業効率の良さに驚いた業者が車両や林業用機械をサハリンへ輸出してくれるよう熱望。
大雪林業は、代わりに北洋材のエゾマツを丸太で輸入。99 年にはスミルヌィフに合弁会社
を設立し製材輸入に道筋を付け、01 年度はピークの 4 億円を輸入。その後、サハリン側の
造材業者がより高収入の得られるパイプライン建設に従事するようになり、丸太や製材生
34
産が激減。昨年度の輸入は約 5 千万円に落ち込んだ。パイプライン建設が終わった今後は、
外貨獲得を目指すロシアにとって重要な木材産業が活気づくとみられる。来年にも丸太の
輸出関税が大幅に引き上げられる見通しの中、
「合弁の製材工場を持つ強みを生かしながら、
安定的に針葉樹を確保していく」(同社)構え。
和食の競演、ユジノで(D081129)(要約)
サハリン州の日本料理店などで働くロシア人調
理師が腕前を競うコンクール「すし職人 2008」が 28 日、ユジノサハリンスクで開かれた。
州政府による「第 2 回料理・サービス選手権」の行事の一つ。
中古車関税引き上げ(D081211)
ロシア首相府は 9 日、プーチン首相が中古車輸入関税
を引き上げる政令に署名したと発表。金融危機を受け、海外メーカーの現地生産を含む国
内自動車産業保護が狙い。タス通信などによると、9 ヶ月間の限定措置。近く正式発表さ
れ、その 1 ヶ月後の施行。製造後 1-5 年の排気量 1500cc の乗用車で、関税を平均 25%か
ら 30%に引き上げる。製造後 5 年超の中古車は排気量に応じて税額が決まり、1500cc 乗
用車の場合、税額が約 80%増になる。ロ政府は 11 月中旬、中古車を解体して部品扱いで
輸入する場合の関税を従来の 3 倍以上に引き上げていた。
ウニ密漁が激減(D081212)(要約)
サハリン沿岸国境警備局などは 11 日、北方領土海域
のウニ密漁が 08 年は激減し、取締りの成果が出ていると発表。ロ側が記録したウニ輸出
量に対し、昨年は密漁を含め 3.6 倍ものウニが根室に運ばれていたが、今年は 1.2 倍に減
っているという。同局によると、今年のウニ漁獲枠は 5500t。1-10 月にロ税関を経て正規
輸出されたウニは約 4400t。これに対し、大半が運ばれる根室花咲港の同期間輸入量は根
室税関支署によると約 5300tで、両統計の差は約 900t。07 年はこの差が大きく、北方領
土海域からの輸出が約 2700tに対し、根室側輸入量は約 9800tと、7000t余りの違い。サハ
リン・千島列島海域では今年、越境や密漁容疑でロ側が拿捕した船は今までに 83 隻。この
うち外国籍は 40 隻だが、大半は取締りを逃れるために外国籍に仕立てた事実上のロシア
船。ロ側によると、日ロ当局は密漁防止に向け情報交換を強化、10 月からは船の出入港や
水産物情報を即時交換しているという。
ロシアとの交流、知事が努力確認(D081212)(要約)
サプリン駐札総領事が着任後初め
て高橋道知事と会談、北海道とロシア極東の地域間交流拡大に向けて双方努力していくこ
とを確認。サプリン氏はハバロフスク地方などロシア極東と北海道のチャーター便就航に
意欲を示した。
「まちかど」警察いても悪い治安(D081216)(要約)
ユジノサハリンスクでは、警察官が 3
人組で巡回している。警察官が多いのに治安は悪い。夜は警察への電話がつながらないこ
とも。先日法人が刺された事件もそうだった。
「夕方以降は小さな事件にはいかない」と警
察に言われた日本人もいる。治安の悪さは北海道との交流にも影響する。
サハリン 2、原油の通年出荷開始(D081213)(要約)
サハリン 2 で、プリゴロドノエ基地か
ら原油の通年出荷が始まった。サハリンエナジー社イアン・クレイグCEOは、
「アジア太平
洋地域へのエネルギー供給源が増え、地域の安全体制が強化された」と意義を強調。世界
的金融危機の中、総額約 200 億㌦(約 1 兆 8 千億円)に及ぶ巨大事業を実現したことについ
て、ホロシャビン知事は「1980 年代からの関係者の努力の成果」と述べた。原油は掘削地
から約 800 ㌔のパイプラインで同基地に運ばれ、日本の消費量の 3%に当たる 1 日 15 万バ
レルを生産する。
35
サハリン邦人 43%減(D081218)(要約)
石油天然ガス開発が一段落したサハリン州で、在
留邦人(10/1 現在)が 173 人と、前年同月より 43%減った。減少は 2 年連続。今後、道-サ
ハリン間航空路や定期フェリーの利用動向に影響しそうだ。サハリン 2 工事終了やみちの
く銀行撤退などから、在留人数は 130 人減少。最多だった 06 年(352 人)のほぼ半分。サハ
リン 2 工事関係者の帰国は 10 月以降も続き、さらに数十人減少。代わりの大規模事業も
なく、03 年(109 人)水準まで減る見込み。稚内-サハリンの日ロ定期フェリーの利用者は今
年、日本人客が減少、その穴をロシア人客で補っており、航路維持には重要開拓が一層求
められそうだ。
道産食品に人だかり(D081221)(要約)
ハバロフスク市での 18~21 日の国際見本市に、
道や商社など 14 団体でつくる「ロシア極東地域・北海道フェア実行委員会」が参加、道産食
品を売り込んでいる。商品は「ほくれん」、福山醸造、北海大和の牛乳、醤油、スープなど
11 点。試食にスープや仁木町産リンゴを提供。来年 2 月以降、コンテナ 1 個分の道産食品
を現地スーパーで試験販売する予定。協力会社ミグ・トレード(ハバロフスク)担当者は「道
産品に対する消費者の反応は良い。モスクワにも販売を提案している」。ロングライフ牛乳
や水産加工品への関心が高いという。
中古車の国内価格下落
対ロ輸出急減(N081228):ロシア向け日本の中古車の価格が
下落している。対ロ輸出台数は 08 年 1-10 月に前年同期比で 10%増であったが,11 月の
中古車対ロ輸出は前年同期比で 10%に急減した。ロシア向け減少は,09 年 1 月から自動
車輸入関税が上がるため,( 注;10 月までは駆け込み需要があったようだ )。一方,ロシ
ア向け日本の中古車の価格が下落している。中古車オークション市場では 11 月の成約単
価は市場平均で 47 万円と前年を 9 万円下回った( 注,品薄になりながら,車の値段が挙
げるなど,不可解な現象が続いている)。
高まる「反中央」感情(D081227)(要約)
日本製中古車などの輸入関税引き上げ問題で、
極東の住民が政府への反発を強めている。ウラジオストクでの抗議集会で市民や報道陣を
拘束したのは、内務省特殊部隊と判明。住民の「反中央」の意識が刺激された。地元関係者
によると、モスクワの部隊と知った住民との間で険悪な雰囲気が。中央からの派遣は「極
東では治安当局も日本車を支持している」との内務省の判断とみられる。サハリンでは現
在、ロシア製新車「ボルガ」は約 55 万ルーブル(約 170 万円)。これに対し品質が上とされ
る日本製中古車「トヨタクラウン」は約 35 万ルーブル(約 110 万円)と 6 割強の値段。だが
輸入関税引き上げにより、税額は 60 万円近く跳ね上がる。モスクワ方面からの運送費が
かさむ極東では食品などの価格が高く、輸入品の規制は生活をさらに圧迫する。一連の抗
議では「ウラジオストクを日本に渡せ」「サハリンを日本に貸し出せ」との主張も。一方、
国内の自動車生産地は輸入関税引き上げを歓迎。ロシア西部のウリヤノフスク自動車工場
では政府方針支持の集会が開かれ、
「国内企業への支援は必要」と訴えた。ミローノフ上院
議長は「妥協策を探すべき」と理解を示したが、引き上げ方針を変えておらず、反発はさ
らに続きそう。
日清食品がロシア最大手に出資(ロ1NIS 速報 090115): 日清食品は,即席麺の製造や
商品開発での先進技術・ノウハウを提供し,主力商品「カップヌードル」の現地生産・販
売を検討する。
横浜ゴムがロシアにタイヤ工場建設へ((ロ1NIS 速報 090115)::リベツク州の経済特
36
区に立地する。タイヤ工場の年間生産能力は 140 万本。工場建設投資額は約 35 億㍔。
INAX がロシアに販売代理店を新設(N081227):衛生陶器,システムバス,外装タイ
ルや調湿タイルなどの販売をモスクワで開始した。
ウラジオで建設工事受注(N090114)北海道内の中小建設業 5 社はサハリンの建設会社
トランスストロイ・サハリン(ユジノ市)と 06 年に合弁企業「ハイドロテック」を設立
した。資本金は 300 万㍔(約1千万円)で,日本側の出資は 50%。サハリンで護岸工事な
どを手がけ,売上高累計は約 20 億円。09 年から,12 年の APEC 開催準備の木土工事を
受注する。大橋建設のための埋立工事や,石油積出港の浚渫などの受注を目指す。
コンクリート道内大手の会沢高圧コンクリートも現地企業との合弁でウラジオ進出を計
画している。
ユニ・チャーム(紙おむつ・生理用品),ロシア・インドに新工場(N090107):スエー
デンの会社と合弁(ユニ・チャームメンリッツ)の生産子会社を設立し,モスクワ郊外に
新工場を建設中。2010 年に稼動開始を予定している。
シベリア抑留死 露に名簿提供へ 政府、調査求める (Y090123)
第 2 次大戦後のソ連に
よるシベリア抑留で死亡した日本人約 53000 人(厚労省推計)のうち、身元や収容先など
が確認されていない約 21000 人について、日本政府は今年 3 月末までにロシア側に名簿を
提供し、調査協力を求める。斎藤泰雄駐ロシア大使が 21 日、記者会見で明らかにした。
ロシアが 1991 年以降、日本に引き渡した死亡者名簿(約 41000 人分)に載っていない約
12000 人分の名前や出身地などの情報を提供する。
サハリン州歳入 18%減(D090117)
サハリン州のホロシャビン知事は 16 日、09 年の同州
政府の歳入が、前年比 18%減少する見通しを示した。同州予算は近年、石油天然ガス開発
による好況で伸び続けていたものの、原油安と金融危機で一転。知事によると、09 年の歳
入見込みは 420 億ルーブル(約 1180 億円)。08 年の歳入は前年比 70%増の 512 億ルーブル
(約 1430 億円)と、2000 年以降で最高だった。州が想定している原油価格は 1 バレル 68
㌦。今後さらに下落して 1 バレル 30 ㌦に達した場合、歳入は 354 億ルーブル(約 990 億円)
まで落ち込むという。州政府は住宅建設を中心に事業規模を維持する意向で、08 年予算の
余剰金をもとに 50 億ルルーブル(約 140 億円)の予備基金を創設。財源が不足した場合、こ
の基金で補う。ホロシャビン知事は州予算の縮小による外国企業進出の減速を警戒。
「今後
も石油天然ガス開発は続く」と強調し、投資継続を呼びかけた。
「日本専用」シベリア鉄道
難航(A090123)
三井物産が 09 年 1 月から週 1 往復運行を
計画していたシベリア鉄道「日本専用列車」に荷物が集まらず,実現が遅れている。ロシ
ア向け輸出が減っている上,原油価格急落でライバルの貨物船の運賃が安くなっているた
めだ。鉄道で運べばモスクワに約 25 日で着き,船便の約 60 から大幅に短縮できる上,環
境負荷も少なく,原油高に伴う船賃高騰も追い風となっていた。しかし世界的な景気減速
で,日本の対ロ輸出は,08 年 11 月は前年同期比で 6.7%減少した(02 年 7 月以来初めて)。
道銀,ロ大手銀と提携,極東進出を支援(D&A090122)
北海道銀行がロシア第 2 の
VTB(外国貿易銀行,株式の 75%をロシア政府が持ち,貸出残約 5 兆 8 千億円,預金残高
約 3 兆 7 千億円,全国に 190 店舗を持つ)と業務提携する。すでに VTB ハバロフスク視
点に口座を開設,3 月から極東を中心にロシアへのルーブル建て送金業務を始める。2 月
には商談会や取引先の紹介を通し,道内企業の極東進出を支援する。本年度内にユジノに
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駐在員事務所を開設予定。
ロ大統領,2 月,日ロ首脳会談を提案
(D090125)
メドベージェフ大統
領は,S2 の LNG 工場の完成記念式典に参加す
るため 2 月中旬,現地にやってくる。その際,
大統領は麻生首相を招待し,日ロ首脳会談をす
ることを電話で提案した(1/24 日)。大統領は
S2 事業における日本側の貢献を高く評価した
上で「2 国間のすべての問題について話し合い
たい」と述べ,北方領土問題についても協議し
たい考えを伝えた。
Ⅵ領土問題
北方領土、日本の TV とお別れ!?(D081014)(要約)
北方領土の現地では NHK・BS の天気
予報などを見ている人が多いが、デジタル放送になれば、受信にチューナーなどが必要に
なる。デジタル化で新たなロシア向け需要が期待できるが、高価なチューナーを購入して
まで見たい人がどれだけいるか。
北方領土渡航に露側「入国審査」 日本政府反発 (M81021)(要約)北方領土を訪れる日
本人のビザなし渡航について、ロシア外務省のウラジミール・ノソフ在ユジノサハリンス
ク外交代表は 20 日、根室市で会見し、来年以降、日本人に対し出入国カードの提出が求
められることになる可能性が高いとの見通しを明らかにした。代表は「ロシア連邦方の厳
格化ですべての外国人に入国審査の書類提出が義務付けられることになった。国境警備局
から要請があった」と述べた。川村官房長官は「91 年の日ソ外相の往復書簡で、渡航方式
は身分証明書と挿入紙のみで行われると決まっている」と反論した。
日ロ双方に譲歩促す(D081101)
〈解説〉ラブロフ外相が道新などとの会見で北方領土
問題について「昔のプリズムで見るべきでない」と強調した。従来の原則論の対立から両
国が脱却する必要があるとの認識を示したもの。メドベージェフ大統領は今年 7 月、国境
問題が未解決であることが日ロ関係発展を妨げていると表明、解決への意欲を示した。
「領土問題本気で解決」
(D081106)(要約)
ラブロフ外相は 11 月 5 日、東京都内で講演、
北方領土問題について「平和条約の問題を含め、本気で解決する気持ちがある。多面的な
協力の中で(交渉を)行うのがよい」と述べ、解決への意欲をあらためて強調。
領土問題、認識の差鮮明(D081106)(要約)
中曽根外相とラブロフ外相は 5 日、北方領土
問題解決に向け首脳レベルの協議を継続するとの、7 月日ロ首脳会談での合意を確認。プ
ーチン首相の年内来日に向け準備を加速することで一致。領土問題について「政治決断が
できるのは首脳。ロシアは金融危機などを受け、対日関係を重視している」会談では領土
問題をめぐり、中曽根氏が「かなり強い口調」で「経済分野に見あう進展を(政治分野でも)
図らねばならない」と迫ったが、ロシア側は四島返還で最終的な解決を図ろうとする日本
側に反論。ロシアはグルジア問題で欧米と対立している上、金融危機で経済状況が悪化。
このため外務省は「日本との戦略的な関係を強めるため、領土問題でも前向きなシグナル
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を出す可能性がある」と分析。今月の APEC の際の麻生首相とメドベージェフ大統領の会
談や、プーチン氏来日時の会談での、ロ側の一層の譲歩を待つ考え。
日ロ平和条約の未締結は不自然(D081122)
ロシア紙コメルサントは 21 日、APEC を前
に麻生首相とのインタビューを掲載。首相は、日ロの経済協力が順調に発展していること
を高く評価する一方で「領土問題が未解決なために平和条約がないのは不自然」と強調、
北方四島の帰属問題を解決して平和条約を締結する考えを表明。首相は 23 日にペルーの
リマでメドベージェフ大統領と会談する予定で、
「平和条約締結の問題を最終的に解決する
ために、メドベージェフ大統領と真剣に話し合う」と述べた。
大統領 北方領土解決意欲も 露の譲歩 望み薄 (Y81125)(要約)メドベージェフ大統
領は 11 月 22 日の麻生首相との会談で、北方領土問題の解決が必要との立場を確認したが、
ロシアは経済関係を軸とする対日関係の急拡大を歓迎しているものの、当面、領土問題で
日本に歩み寄る気配はない。首脳会談の直後、「ガスプロム」幹部は、LNG の対日輸出を
2 月に開始すると発表した。日本企業のロシア進出に加え、ロシアからのエネルギー供給
と、経済関係の拡大基調は続いている。
知事
北方 4 島訪問へ
有識者委設置も検討(090106)高橋はるみ知事は年等記者会見
で,今年のビザなし交流事業に参加し,北方 4 島を訪れる意向を表明した。4 島訪問は 05
年 5 月以降,4 年ぶり 2 回目となる。元島民の平均年齢が 75 歳を超え,後継者育成が課
題となっているので,今後の取り組みを議論する有識者委員会の設置を検討する方針であ
る。
Ⅶ オピニオン(今回は省略), Ⅷ 中国・北東アジア(今回は省略),
Ⅸ エネルギー 環境
東シベリア・サハ共和国
石油・ガスの宝庫(D090125)ロシア随一の資源埋蔵量を誇るサ
ハ共和国で,石油・天然ガスの開発プロジェクトが本格化している。この共和国は東シベ
リア・極東の原油・天然ガス埋蔵量の 35%,石炭の 47%を閉める。西シベリアの資源の
枯渇に伴い,採掘の中軸としてサハリンに続き浮上してきた。「2020 年までに域内 GDP
は 3 倍になり,17 万人の雇用が創設される。
39
編集後記:
☆
V.G.シュビドコ論文は,米オバマ新政権下でのロ米関係の修復には慎重な見方
だ。楽観的期待論が多い中,氏の論調は貴重である。寄稿に感謝するとともに,益々の健
筆を祈りたい。同氏には,本号の作成に際し重要な経済指標のオリジナル情報のウエブ上
での所在をしばしば示唆していただいた。
☆
本号では 2008 年の回顧と展望を特集した。経済情勢が急激に悪化するなか,肝心
の経済指標の公表が事態の変化に追いつかず,展望部分を書くのに苦心した。もう1つの
問題は,年単位の指標では,前半の高レベルと後半の低レベル値が打ち消しあって,事態
の深刻さを十分反映しないことだ。同様に 09 年も前半は悪く,後半持ち直すと考えられ,
平均すると案外悪くない数値になるかの知れない。現在では,分析は月単位で行ふ必要が
急速に高まった。
☆
景気の急上昇と急下降の原因の1つは,無数の投機筋がコンピュータに張り付いて,
コンピュータが指令する売り気配,買い気配に一斉に反応することにある。自動車に速度
規制があるように,株価,為替,原油などの資源価格,住宅,土地など投機筋が狙う経済
指標の変化率にも,規制枠を設け,枠限界に突き当たった場合は,市場取引を 1 時停止す
る措置の導入が必要ではないだろうか。
☆
最近の「双頭政治」は,経済危機と外交上のトラブルを背景に,政策に寛容さが失わ
れつつあるように見える。中古車輸入関税引き上げ反対運動に対する強硬な押さえ込み,
野党政党の翼賛政党化,マスコミへの締め付けなど,経済危機と政治反発が相乗作用を発
揮し始めると,政権にとって厄介な問題になる。4 月危機説も現れた。
☆
サハリン石油・ガス生産の軸足が東シベリア・極東へ移りつつある。これをテコにメ
ドベージェフ大統領は,極東重視と対日接近政策を展開している。日本にとっても懸案解
決のチャンスといえる。
☆
核持込みを巡る日米密約が,外務省が公開した外交文書で明らかになった。1965 年 1
月に訪米した佐藤栄作首相(当時)が,マクナマラ国防長官との間で(その 3 ヵ月まえに)
中国が実施した核実験を巡り,「(日中で)戦争になれば,米国が直ちに核による報復を行
うことを期待している」と表明,核戦争を容認していた。唯一の被曝国日本,それ故,核
廃絶運動の先頭に立つべき日本にとってこの事実は残念なことだ(A081222)。
☆健康に注意:日本人のガン発生率が世界一なのは何故?答えは世界一長寿だからだそう
だ。つまり,ガンが成長するには 30 年近くかかる。短命であれば,ガンが発症する以前
に人間が天国に行くからだそうだ。ガンは細胞分裂の際のプリントミスで生まれる。この
ミスは毎日 5000 個あり,それをガンキラー細胞が攻撃することで,ガン細胞の増殖が防
止される。体力が弱ると,この攻撃力が衰えガンの芽が生き残るとの事。世界金融危機で
の連鎖倒産の仕組みに似ている。世界経済システムがガンに侵されているようだ。
☆この号に掲載できなかった,データをパワーポインタにして,ホームページ上からダ
ーンロードできます。為替,株価,予備基金,国民福祉基金,国際収支,財政,貿易収支,
日ロ貿易,外生与件(株価下落,油価下落など)の時系列変化が,内生指標や政策に与え
る相関図(フローチャート)などを載せました。どうぞご覧ください。なお,今後も,会
報と HP が連携して,事態の変化を迅速にフォローする体制を創るつもりです。
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