症例検討Ⅱ 「乳腺穿刺吸引細胞診における 鑑別困難例の本質に迫る

症例検討Ⅱ 「乳腺穿刺吸引細胞診における
鑑別困難例の本質に迫る」 症例4
患
者 :52歳、女性
主
訴 :特記事項なし
既 往 歴 :特記事項なし
臨床所見
ドックの触診にて腫瘤を指摘され,当院を紹介受診.
触診では,左AB領域に小結節.MMGは異常なし.
USにて,左AB領域に6×6×5mmの線維腺腫が疑わ
れる腫瘤があり,エコー下穿刺吸引細胞診を施行.
採取処理法 :直接吹付け標本(1枚)
済生会新潟第二病院 病理診断科
画像(MMG)
CC
MLO
異常なし。
済生会新潟第二病院 病理診断科
画像(US)
左乳腺AB領域に,線維腺腫が疑われる境界明瞭な分葉状腫瘤
済生会新潟第二病院 病理診断科
背景の状態
済生会新潟第二病院 病理診断科
大型細胞集塊①
済生会新潟第二病院 病理診断科
大型細胞集塊②
済生会新潟第二病院 病理診断科
小型集塊①
済生会新潟第二病院 病理診断科
小型細胞集塊②
済生会新潟第二病院 病理診断科
穿刺吸引細胞診の見直し
済生会新潟第二病院 病理診断科
細胞判定
判定区分:検体適正 鑑別困難
推定組織像:
良性→ 良性乳頭状病変,乳管上皮過形成など
悪性→ 非面疱型の非浸潤性乳管癌疑い
画像診断
MMG:異常なし
US:境界明瞭な分葉状腫瘤,(線維腺腫)の疑い
*細胞診と画像診断の推定組織像が異なっていたため
↓
腫瘤摘出術を施行
済生会新潟第二病院 病理診断科
マクロ像(腫瘤摘出術)
病理組織診断⇒Adenomyoepithelioma spindle cell type
(腺筋上皮腫 紡錘細胞型)
左A領域, 8mm大,断端ー
A
B
A
B
C
C
D
D
済生会新潟第二病院 病理診断科
症例5 マクロ像(腫瘤摘出術)
済生会新潟第二病院 病理診断科
弱拡像
済生会新潟第二病院 病理診断科
強拡像①(嚢胞形成部分)
済生会新潟第二病院 病理診断科
強拡像②(圧排性発育部分)
済生会新潟第二病院 病理診断科
強拡像③(偽浸潤様の部分)
済生会新潟第二病院 病理診断科
免疫染色結果①
HE
αSMA
S100
済生会新潟第二病院 病理診断科
免疫染色結果②
HE
P63
Ki67
済生会新潟第二病院 病理診断科
細胞診との比較①
済生会新潟第二病院 病理診断科
細胞診との比較②
済生会新潟第二病院 病理診断科
細胞診との比較③
済生会新潟第二病院 病理診断科
細胞判定
判定区分:検体適正 鑑別困難
推定組織像:良性→良性乳頭状病変,乳管上皮過形成など
悪性→非面疱型の非浸潤性乳管癌疑い
鑑別困難とした理由
①背景の所見
強い血性であったが泡沫化した組織球が少数みられ,嚢胞
内容由来あるいは拡張乳管由来の所見と判定した.
②細胞集塊の解釈
紡錘形を呈する細胞集塊を血管間質からなる茎,または膠
原線維の集塊と判定し,乳頭状病変を考えていた.
③個々の細胞所見
紡錘細胞を腫瘍性筋上皮細胞と認識していなかった.
(核内細胞質封入体を探していなかった.)
済生会新潟第二病院 病理診断科
典型例との比較①
本例
典型例
×40
×40
×40
×40
済生会新潟第二病院 病理診断科
典型例との比較②
本例
典型例
×40
済生会新潟第二病院 病理診断科
典型例との比較③
本例
典型例
×100
×100
済生会新潟第二病院 病理診断科
乳腺穿刺吸引細胞診にて
鑑別困難と判定されやすい症例
①アポクリン化生細胞が出現してくる症例
アポクリン腺症、乳管腺腫、アポクリン癌など
②粘液様物質が出現してくる症例
線維腺腫、若年性乳頭腫症、mucocele-like tumor、粘液癌など
③上皮増生を伴う症例
・乳頭状病変
乳管内乳頭腫、非浸潤性乳管癌(嚢胞内乳頭癌など)
・乳腺症型線維腺腫
④腫瘍性筋上皮細胞が出現してくる症例
多形腺腫、腺筋上皮腫、悪性筋上皮腫など
⑤壊死を伴う症例
梗塞壊死を伴う乳管内乳頭腫、面疱型の乳頭腺管癌など
済生会新潟第二病院 病理診断科