1 オーガニックナノチューブの 製造方法と期待される応用分野 ー徐放性医薬、健康食品などへの産業応用に道を開くー (独)科学技術振興機構 CREST, SORST (独)産業技術総合研究所 界面ナノアーキテクトニクス研究センター センター長 清水 敏美 界面ナノアーキテクトニクス研究センター 紹介する技術内容のポイント 有機ナノチューブからなる白い粉末状固体:約100グラム 分子が液相中で自発的に集まって(自己集合して)形成する 有機ナノチューブを迅速、簡便、大量に合成できる手法を開発した。 2 界面ナノアーキテクトニクス研究センター 従来技術とその問題点 有機ナノチューブを製造するには、これまで • • • • 水溶媒を大量に必要とした(例:100g/2000L)。 高加熱操作を必要とした(例:100℃で2時間)。 自己集合に数日~数週間かかった。 乾燥に真空乾燥で数日以上必要とした。 ●技術的に量産化(100g以上)は困難 ●種々の実際的な応用展開に限界 これまでの製造例( 5mg/100mL) 3 界面ナノアーキテクトニクス研究センター 新技術の特徴・従来技術との比較 1. 油/水界面を自己集合の反応場とすることで 時間が短縮・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (製造方法1) 2. 水溶媒の代わりに、エタノールなどの有機溶媒を利用 することで収率が1000倍以上向上、溶媒量が1/1000 以下・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (製造方法2) 3. 温加熱操作で充分・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (製造方法2) 4. 乾燥時間が数時間で完了・・・・・・・・・・・・・ (製造方法2) 5. 100g/L(従来は50mg/L)の製造が可能となる。 ・・・・・・・・・・・・・・・ (製造方法2) 4 5 有機ナノチューブ (オーガニックナノチューブ) とは? 界面ナノアーキテクトニクス研究センター 10nm内径のナノチューブのいろいろ 化学 物理 1~10 nm 2~20 nm ~10 nm 生物 40~50 nm 15 nm 25 nm by R. Iwaura 多層カーボン ナノチューブ 脂質ナノチューブ 微小管 (産総研・清水) (NPACI提供資料より) (NEC提供資料より) 炭素原子 両親媒性分子 チューブリン タンパク質 6 界面ナノアーキテクトニクス研究センター 両親媒性分子とは? 親水部 汚れ、油 疎水部 両親媒性分子 石けん分子もその一つ + Na-OOC 7 界面ナノアーキテクトニクス研究センター 両親媒性分子の形と集まり方 球状 ミセル a0 < 0.33 v lc 0.33~0.50 球状 べシクル a0 x lc 円筒状 ミセル 0.5~1.0 ~1.0 逆ミセル P= v 平面 二分子膜 > 1.0 J.N. Israelachvili (1985) 8 界面ナノアーキテクトニクス研究センター 白い、もう一つのナノチューブ 肉眼 共焦点レーザー走査顕微鏡 共焦点レーザー走査顕微鏡 2000〜2005 科学技術振興機構CRESTプロジェクト 2005〜現 在 同 SORSTプロジェクト 1 cm HO HO OH O O OH 透過電子顕微鏡写真 両親媒性分子の自己集合で 有機ナノチューブ(2000) 9 界面ナノアーキテクトニクス研究センター 有機ナノチューブの構造と特徴 両親媒性分子 親水部 疎水部 二分子膜構造 • 多層CNTと同等サイズ • 分子が液相中で集まってできる • 層状構造 • 内径は10〜200nm • 外径は40〜1000nm • 長さは数〜数百μm • ある限られた両親媒性分子のみ • 水中への分散性は大きい • 中空部へ機能性物質を取り込み可能 10 11 これまでの有機ナノチューブ 製造上の問題点と 解決策の具体的事例 界面ナノアーキテクトニクス研究センター 従来の有機ナノチューブの調製方法 有機合成 上澄除去 凍結乾燥 遠心分離 固体粉末を 有機溶媒に 加えて溶解 溶媒を減圧 除去 水を加えて 加熱、還流 溶解(分散) 徐冷放置 12 界面ナノアーキテクトニクス研究センター 調製時の実際イメージ HO HO OH O OH ゲルー液晶 相転移温度 (71℃) H N O N-(11-cis-octadecenoyl)-β-D-glucopyranosylamine 1)両親媒性分子5 mg/100 ml の分散水を100℃で2時間加熱還流 2)室温で自然に冷却 → 生成 72℃ 66℃ 13 界面ナノアーキテクトニクス研究センター 製造方法1 :改良された製造方法 有機合成 上澄除去 凍結乾燥 遠心分離 油水界面 作成 固体粉末を 有機溶媒に 加えて溶解 油相 溶媒を減圧 除去 生成時間の短時間化 配向集積化 水を加えて 加熱、還流 溶解(分散) 水相 14 界面ナノアーキテクトニクス研究センター 水中(従来法)と油水界面(今回)で比較 *同時に作成した ものを3日後に 撮影 水相 界面 油相 水中 水/四塩化炭素の界面 油/水界面の縁に白い生成物が集積 15 界面ナノアーキテクトニクス研究センター TEM像による生成物の確認 微分干渉光学顕微鏡像(60倍) 微分干渉光学顕微鏡像(60倍) 水相 油相 透過型電子顕微鏡像(30,000倍) 透過型電子顕微鏡像(30,000倍) 油/水界面に集積した 白い生成物 有機ナノチューブ! 16 界面ナノアーキテクトニクス研究センター 本数 [本/観測領域**] 長さの比較を示すヒストグラム 油水界面 水中 数倍! *界面生成後10分で5μl採取 **140μm x 185μm 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 ナノチューブの長さ [μm] 長さ10μm以下のナノチューブが短時間に効率的に生成 17 界面ナノアーキテクトニクス研究センター 製造方法2 :改良された製造方法 有機合成 上澄除去 凍結乾燥 遠心分離 固体粉末を 有機溶媒に 加えて溶解 溶媒を減圧 除去 水を加えて 加熱、還流 溶解(分散) 徐冷放置 18 界面ナノアーキテクトニクス研究センター 簡単な分子構造 + 低コストで安全な原料 食品や化粧品で用いられている糖やペプチド 親水部 両親媒性分子 OH HO HO O O OH OH D(+)-グルコース 4Kg/8,500円 (Wako) HO H N NH 2 O グリシルグリシン 500g/22,000円 (Wako) 19 界面ナノアーキテクトニクス研究センター 簡単な分子構造 + 低コストで安全な原料 疎水部 食品や化粧品に用いられている 再生可能な植物資源 両親媒性分子 O O HO HO HO O オレイン酸 500ml/1,400 円(Wako) オリーブ油が原料 ラウリン酸 500g/2,350円 (TCI) ココナッツ油が原料 ミリスチン酸 500g/2,900円 (Wako) パーム油が原料 20 界面ナノアーキテクトニクス研究センター N-グリコシド型糖脂質からナノチューブ ブトウ糖とオレイン酸 OH HO HO O H N OH KNT-1 O FE-SEM TEM アルコール類に溶解させ、その後溶媒を減圧除去することにより、 容易に有機ナノチューブを合成できる。 21 界面ナノアーキテクトニクス研究センター グリシルグリシン脂質からナノチューブ O HO O H N O O HO N H MKNT-1 MKNT-2 O H N O N H グリシルグリシンとラウリン酸 又はミリスチン酸 FE-SEM TEM アルコール溶媒類に溶解させ、その後溶媒を減圧除去することにより、 容易に有機ナノチューブを合成できる。 22 界面ナノアーキテクトニクス研究センター 自己集合(組織化)のイメージ 親水部 疎水部 自己集積性分子 Copyright©Nanotechnology Research Institute, AIST 23 24 考えられる用途と目処 有機ナノチューブの内径サイズ分布 Adv. Mater. (2001) Langmuir (2004) 25 Nature(1996) CNT 内径1 nm 内径10 nm 内径100 nm 内径1000 nm 100 101 102 103 CNT 左から、 Prof. Vekilov (CMMR), Prof. Goddard (Caltech), Dr. Pijkerk (RIVM)から 許可を得て引用 (nm) 有機ナノチューブ 球状タンパク質 高分子微粒子 (直径12nm) (径5〜数十nm) ノロウィルス (直径27nm) 金属微粒子 (直径50〜100nm) Copyright©Masa-NARC, AIST 26 OH H O OH O 6-8 OH 金属微粒子 タンパク質 0.6~ 0.9 nm シクロデキストリン ウイルス OH H O OH O 6-8 OH 高分子微粒子 DNA 10~100 nm ・デンプンから酵素を用いてつくる ・光や熱に不安定な物質を安定化 ・医薬や香料をゆっくりと放出 ・いやな臭いやタバコのヤニなどを吸着する ・水に溶けにくい物質を溶解させる ・食品分野、医療分野、化粧品分野、家庭用品、農業分野など ・日本で年間4000トンを生産 界面ナノアーキテクトニクス研究センター 10nm径の粒子やタンパク質を包接する ナノチューブ内径 = 30-50 nm 外径 = 1-3 nm ナノチューブ内径 = 60 nm 外径 = 15-20 nm 外径 = 12 nm N-グリコシド型糖脂質有機ナノチューブ(30~60nm)が1~20nm程度の N-グリコシド型糖脂質有機ナノチューブ(30~60nm)が1~20nm程度の 大きさをもつ金ナノ粒子や直径12nmの球状タンパク質フェリチンの包接する。 大きさをもつ金ナノ粒子や直径12nmの球状タンパク質フェリチンの包接する。 27 界面ナノアーキテクトニクス研究センター 期待できる用途 シクロデキストリンでは不可能な、吸着、包接、分離、徐放効果のある 新しい有機ナノチューブコンテナーや有機ナノチューブキャリヤーとして、 (1)農業用(プリオン除去、徐放性肥料など) (2)食品(脂肪排出、機能性ファイバーなど) (3)健康(脱毛予防、アレルゲンフィルターなど) (4)医療(標的ドラッグデリバリシステム、血液浄化、 ウイルス捕捉、インシュリン投与・噴霧など) (5)環境(金属微粒子除去など) (6)その他(女性、高齢者用の健康食品添加用材料など) 28 想定される幅広い業界 29 吸着、包接、徐放、分離、消臭、着香、抗菌、特異形状などの幅広い機能 メディカル メディカル オーラルケア オーラルケア 食品 食品 脂溶性食品 脂溶性食品 水溶化 水溶化 遺伝子治療 遺伝子治療 インシュリン投与 インシュリン投与 歯磨き 歯磨き 洗口剤 洗口剤 ハウスホールド ハウスホールド 消臭、抗菌剤 消臭、抗菌剤 ヘルスケア ヘルスケア 健康食品 健康食品 < 1オーガニック nm スキンケア スキンケア 化粧品 化粧品 ナノチューブ テクノロジー OH H O OH O 6-8 OH ヘアケア ヘアケア 10~100 nm ヘアカラー、発毛剤 ヘアカラー、発毛剤 脱毛予防 脱毛予防 薬品 薬品 新DDS、発布剤 新DDS、発布剤 農業 農業 プリオン除去 プリオン除去 徐放性肥料 徐放性肥料 ファブリック ファブリック 衣類用製品 衣類用製品 ペットケア ペットケア 化学品 化学品 消臭、塗料、 消臭、塗料、 環境浄化 環境浄化 肥満防止 肥満防止 機能性フード 機能性フード 界面ナノアーキテクトニクス研究センター 実用化に向けた課題と企業への期待 1. 有償によるサンプル提供(1~100g規模)を準備中 (産総研イノベーションズ) 2. 金ナノ粒子、球状タンパク質などの包接化は実証済み。 種々のナノ物質の包接化とその効果を検討する必要あり。 3. 目的別徐放性能に関する特性見極めは今後の課題。 4. 例えば、ファインケミカル工業分野に関連する企業との共 同研究を希望。 5. また、徐放性医薬や素材、あるいは健康食品を開発中の 企業、健康医療分野への新規展開を考えている企業には、 本技術の導入が有効と思われる。 30 界面ナノアーキテクトニクス研究センター 本技術に関する知的財産権 z z z z z 発明の名称 : 有機ナノチューブの製法 出願日 : 2003年2月25日 特許番号 : 特願2003-047169(2003年2月25日) 発明者 : 由井宏治、澤田大祐、神谷昌子、澤田嗣郎 出願人 : 科学技術振興機構 z z z z z 発明の名称 : 有機ナノチューブの製法 出願日 : 2003年2月25日 特許番号 : 特願2003-047169(2003年2月25日) 発明者 : 由井宏治、澤田大祐、神谷昌子、澤田嗣郎 出願人 : 科学技術振興機構 上記の他、その他に、CREST-JST(2000~2005年度) ●領域名:「分子複合系の構築と機能」 ●プロジェクト名:「一次元孤立微小空間構造の組織化と機能発現」の 研究成果として、科学技術振興機構と産業技術総合研究所との共同 出願による“有機ナノチューブ”に関する数多くの関連特許がある。 31 界面ナノアーキテクトニクス研究センター お問い合わせ先 ■技術的内容 (独)産業技術総合研究所 界面ナノアーキテクトニクス研究センター センター長 清水 敏美(又は、主任研究員 浅川 真澄) TEL 029-861-4544(4679) FAX 029-861-4545 e-mail [email protected] ■技術の育成及び特許の取扱等 (独)科学技術振興機構 産学連携推進部 技術移転プランナー 坂本 和夫 TEL 03-5214-7515 FAX 03-5214-7517 e-mail [email protected] 32
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