前頭葉機能障害の認知リハビリテーション - 明星大学

展望
明星大学心理学年報 2012, No.30, 23―40
前頭葉機能障害の認知リハビリテーション
柴
崎 光
世
脳血管障害や外傷などを原因として脳の前頭前野を損傷されると,運動機能や標準的な知能検査で測
定される認知機能が保たれる一方で,柔軟性が極端に欠如した思 様式や衝動的行動,ののしりや暴力
的行為,あるいは動機づけの低下といった,個人の適応的な社会活動を阻害する一連の認知・行動障害
が出現することがある。近年の認知リハビリテーション(cognitive rehabilitation,以下認知リハ)に対する関
心の高まりとともに,従来から訓練対象とされてきた言語障害や記憶障害だけでなく,検査場面ではな
かなか捉えにくい前頭葉機能障害についても,その改善をねらいとした認知リハ的な介入が徐々に試み
られるようになった。本論文は,Stuss (2007,2009)の前頭前野機能に関する領域特異的アプローチの枠
組みに従いながら,これまで実施された前頭葉機能障害の認知リハを整理及び概観し,当該領域の今後
の研究課題について指摘した。
キーワード:脳損傷,前頭前野,認知リハビリテーション,領域特異的アプローチ
滑な社会復帰が妨げられることも少なくない。たとえ
1. 前頭葉機能障害
ば,先のゲージの症例では,事故から2ヶ月足らずで,
脳血管障害や外傷などに起因して脳が損傷されると,
手足の運動障害や感覚障害といった比
彼は前頭部の傷の治癒を主治医から宣言されたものの,
的低次の脳機
前頭葉損傷の後遺症として生じたパーソナリティ障害
能障害から,言語障害や記憶障害などの高次脳機能障
や問題行動が原因で鉄道会社から解雇されることとな
害まで,損傷された脳部位によって多様な脳機能障害
る。その後,ゲージは養馬場での仕事や馬車の御者な
が出現することが知られている。一方,脳の前頭前野
どさまざまな職に就くが,彼自身の気まぐれで職を辞
に損傷を受けると,運動障害や感覚・知覚障害は認め
めたり,あるいは,素行の悪さで解雇されたりを繰り
られず,言語や長期記憶も基本的に保たれ,標準化さ
返し,38歳で死亡するまで二度と定職に就くことはな
れた知能検査の結果にも影響があらわれにくい
かった。
(D Esposito & Gazzaley,2005,Fuster,1997 福居監訳 2006)
。
1-1. 遂行機能
そのため,一見すると,患者は病前と何ら変わりがな
前頭葉損傷者の社会復帰を難しくする前述の神経心
いように見えるが,鉄道工事中の事故により前頭前野
理学的症状は,どのような認知障害を基盤として生じ
に損傷を負ったフィネアス・ゲージの例(Damasio,1994
ているのだろうか。前頭葉と関係する高次脳機能障害
田中訳 2010)に明らかなように,柔軟性が極端に欠如し
としてもっともよく知られているのが遂行機能障害
た思
(executive dysfunction)
である。遂行機能(executive func-
様式や衝動的行動,ののしりや暴力的行為,ま
たは動機づけの低下といった,個人の適応的な社会活
tion)とは,個人が目標達成に向けて目的指向的に行動
動を阻害する一連の認知・行動障害が出現することが
するために必要な認知機能群を総称する用語で,私た
ある。こうした症状を示す患者は,日常生活で遭遇す
ちのもつ「もっとも高次の認知技能」(D Esposito & Gaz-
る問題解決場面や対人場面で頻繁にトラブルを引き起
zaley,2005)として位置づけられる。遂行機能を初めて
こし,結果として,学業復帰や職場復帰など患者の円
詳細に記述した Lezak(1982)によれば,遂行機能は,
1)目標の設定,2)プランニング,3)目的に向け
Correspondence concerning this article should be sent to :
M itsuyo Shibasaki, Department of Psychology, Meisei University, Hodokubo, Hino, Tokyo 191-8506, Japan (e-mail:
mitsuyo@psy.meisei-u.ac.jp)
明星大学人文学部
本 研 究 は 科 学 研 究 費 補 助 金(若 手 研 究 ,課 題 番 号:
21730566)による助成を受けた。
ての計画の実行,4)
効果的な遂行,の 4つのコンポー
ネントによって構成されており,これらのすべてが,
私たちが適応的で,社会的に責任のある,自己奉仕的
(self-serving)な成熟した個人としてのふるまいをなす
うえで不可欠となる。また,遂行機能の各コンポーネ
ントは,1)については,行動の開始や自己に対する
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心理学的,身体的,社会的気づき,2)については,
用いられる。しかし,遂行機能障害は,中毒性・代謝
将来に生じる変化の概念化,環境と自己との関係や環
性脳症やアルツハイマー病,多発性硬化症といった神
境自体の客観視,計画の選択,系統立てた思
経内科疾患や,統合失調症や双極性障害などの精神疾
,3)
については,一連の複雑な行動の開始と持続及び中止,
患においても,前頭葉損傷のときと同様に観察される
認知的構えの転換,4)については,モニタリング,
(Stuss,2009 )
。遂行機能は,そもそもは心理学の領域に
自己修正,行動のテンポや強度の調節,といった個々
おいて提唱され,発展してきた概念で,本来的には,
の認知機能とそれぞれ関連していると想定されている
必ずしも解剖学的部位との関連性を
(Lezak, Howieson, & Loring, 2004)
。
ないことに留意する必要がある(Stuss, 2007)。
Lezak(1982)から 30年が経った現在では,遂行機能
は言語や記憶,対象認知などと並ぶ代表的な高次脳機
1-2. 領域特異的アプローチ
慮した用語では
能の1つとしてすっかり定着した概念となっており,
Stuss(2007, 2009)は,前頭葉損傷に伴って生じる複
雑な神経心理学的症状を理解するためには,その第一
遂行機能という用語を表題に含む論文や書籍の数も多
歩として,前頭前野の解剖学的な部位との関連で個々
い。さらに,遂行機能障害が患者の予後に大きく影響
の認知機能を記述する必要があると
することから,高次脳機能障害の臨床現場では,ウィ
前頭前野を,背外側前頭前野,腹内側前頭前野,上内
スコンシンカード分類テスト(WCST)やトレイル・メイ
側前頭前野,前頭極の4つの領域に分割し,それぞれ
キング・テスト(TMT)といった従来から用いられてい
の領域と関連する領域特異的な次の4つの認知機能を
る神経心理学的検査や,BADS(Wilson,Alderman,Bur-
提唱した(Figure 1)。
えた。そして,
gess, Emslie, & Evans, 1996)のような遂行機能障害を測
1) 遂行的認知機能(executive cognitive functions):
定するために新たに開発された検査バッテリーを利用
低次の,より自動的な認知機能の制御と方向づけを担
しながら,患者が残存する遂行機能の積極的な評価が
う(具体的には, プランニング, 認知的構えの転換, 抑制など)。
試みられるようになっている。
「遂行機能」の一般的な意味合いにもっとも近いと思
ただ,複数の研究者が指摘するように,遂行機能は
われる概念で,この機能の障害は WCST や TM T,流
複雑な概念であり,その適用に研究者間での一貫性が
暢性検査などのいわゆる遂行機能検査において認知成
あまり認められない。たとえば,Lezak(1982)のよう
績の低下を引き起こす。遂行的認知機能は,前頭前野
に,目的指向的な行為の実現を重視した遂行機能の定
のうち,背外側前頭前野と関係すると想定されるが,
義もあれば,自己意識や自己モニタリングといったメ
背外側前頭前野の左右で,さらに機能が細分化される
タ認知的機能を遂行機能の中核機能として捉える見方
可能性がある(Stuss, 2009)。
もある(Kennedy,et al.2008 を参照のこと)。また,Norman
& Shallice(1986)の監督的注意システム(Supervisory
attention system)を,遂行機能を理解するための鍵概念
とする
え方や(Miotto, Evans, de Lucia,& Scaff,2009),
2)行 動 的 情 動 的 自 己 調 整 機 能(behavioralemotional self-regulatory functions)
:情動処理や報酬処
理とかかわる認知機能で,個人の行動に対する情動的
な結果の理解や行動の自己制御を担う。この機能に障
臨床データとの関連性を意識した遂行機能のモデル化
害をもつ患者は,社会的に配慮の欠けた言動や攻撃行
をおこなった Mateer(1999)など,一口に遂行機能と
動などの問題行動を発現しやすく,また,より実験的
いってもそれが意味するところは研究者間で微妙に異
な場面では,刺激とそれに対する情動的報酬の連合・
なっている。これに加え,研究者によっては,ワーキ
逆転学習や(Rolls,2000),ギャンブリング課題の遂行に
ングメモリや展望的記憶といった高次脳機能も含めて
障害を示す。腹内側前頭前野と関与すると えられて
遂行機能について議論することがあり,用語の適用範
いる。
囲が場合によって極めて広くなってしまうことも,そ
の概念をわかりづらくしている一因と
えられる。
3)活 性 化 調 整 機 能(energization regulating functions)
:目的指向的行動の達成に向けて,あるいは,特
遂行機能障害は,前頭葉の局在性損傷の場合にもっ
定の状況内において行動を適切なレベルに活性化させ
とも顕著にあらわれることから,遂行機能と前頭葉と
る機能を担う。活性化調整機能は,個人が有するあら
のかかわりを指摘する文献は多く(D Esposito & Gaz-
ゆる認知機能を適切に働かせるために不可欠な機能と
zaley, 2005, Evans, 2009, Fuster, 1997 福居監訳 2006, 鹿島・加
えられ,これが障害されると,行動や心的過程の開
藤・本田, 1999,M ateer,1999,Solberg & Matter,2001 など)
,
始や維持が損なわれ,本邦で言うところの発動性障害
遂行機能は,前頭葉機能と同義の用語としてしばしば
(大東,2004)
に似た症状があらわれる。内側前頭前野の
柴崎:前頭葉機能障害の認知リハビリテーション
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Figure 1 前頭前野機能に関する領域特異的アプローチ(Stuss, 2009).
より上方の領域との関連が示唆されているが,とりわ
け,右内側前頭前野とのかかわりが強いようである
(Stuss, et al. 2005)
。
2. 前頭葉機能障害の認知リハビリテーション
前頭前野の損傷は,脳血管障害を原因とした場合だ
4)メタ認知過程(meta-cognitive process):自己の内
けでなく,若年層に多い交通外傷などの頭部外傷例に
的状況の理解(自己意識, 想起意識, 認知と情動の統合)と,
も頻繁に認められる。そのため,患者の社会復帰の問
それを基盤として生じる他者認知(心の理論)や社会的
題はより深刻で,その大きな阻害因となる前頭葉機能
認知を担う。この機能に障害をもつ患者は,社会的判
障害に対しては何らかの治療的介入が求められる。近
断を適切におこなうことができず,さらには,共感性
年の認知リハビリテーション(cognitive rehabilitation,以
の欠如,無関心,自己投影を必要とするユーモアの無
下認知リハ)に対する関心の高まりとともに,従来から
理解,といった症状を示す。前頭極(ブロードマンの 10 野)
訓練対象とされてきた言語障害や記憶障害だけでなく,
との関係が想定されている。
検査場面ではなかなか捉えにくい前頭葉機能障害につ
Stuss によれば,これらの4つの認知機能群は,機能
いても,その改善をねらいとした認知リハ的な介入が
的に互いに独立した関係にあり,たとえば,腹内側前
徐々に試みられるようになった。本章では,先に述べ
頭前野の限局病巣では,行動的―情動的自己調整機能
た Stuss(2007,2009)の前頭葉機能に関する領域特異的
の障害が観察されるのに対し,背外側前頭前野や前頭
アプローチの枠組みに従いながら,これまで実施され
極といった前頭前野のそのほかの領域と関連した認知
た前頭葉機能障害の認知リハについて整理及び概観し
機能の障害は認められないといったケースもありうる。
たい。
また,Stuss(2007, 2009)の理論においては,いわゆる
2-1. 遂行的認知機能
「遂行機能」に相当する遂行的認知機能は,あくまで
前頭葉機能の下位機能の一つにすぎず,しかも,その
Stuss の4つの前頭前野機能のうち,認知リハの対
象としてもっとも多く取り上げられているのが,プラ
機能の適用範囲は従来の「遂行機能」と比べてかなり
ンニング,認知的構えの転換,抑制などの遂行的認知
限定的と言ってよい点も特徴的である。
機能である。この領域の認知リハでは,遂行的認知機
臨床場面で患者が示す神経心理学的症状を的確に評
能の各認知機能を総動員して解決することが求められ
価・診断するためには,個々の高次脳機能障害の操作
る問題解決場面での遂行の改善をめざした介入と,遂
的定義と明確な分類が不可欠である。こうした意味に
行的認知機能の特定の1つの認知機能の改善に対象を
おいて,前頭葉機能を対応する解剖学的部位の違いか
絞った介入の2つに大別される。
ら細分化し,各下位機能やそれらの機能障害の明確な
問題解決訓練
定義を試みた Stuss の理論は,複雑な様相を呈する前
頭葉機能障害をより的確に理解するために,有益な枠
von Cramon, Matthes-von Cramon, & M ai(1991)
は,問題解決に至る認知過程を,1)問題への気づき,
組みを提供するものと
2)問題の定義づけ,3)代案の生成,4)意思決定,
えられる。
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5)解決策の妥当性の吟味,の5つの下位過程に分割
ている教育システムを利用して,患者の問題解決障害
し,個々の下位過程における課題に段階的に取り組ん
でいくことによって,問題解決の達成をめざす系統的
の評価と訓練を実施した Satish, Streufert, & Eslinger(2008)などがある。一方,穴水・加藤・斎藤・鹿島
な問題解決訓練法を
案した。そして,問題解決に困
(2005)は,右前頭葉損傷者に対して Tinker Toyテス
難を示す脳損傷者を2群に分け,一方の患者群には前
トとハノイの塔課題を用いた直接刺激法に基づく問題
述の問題解決方略,残りの患者群には視覚イメージ法
解決訓練をおこなった結果,訓練で使用した2つの問
などの記憶方略の使用を促進させる訓練を6週間に
渡ってそれぞれ実施したところ,問題解決訓練を受け
題解決課題のみでなく,BADS の行為計画や動物園地
図,また,WAIS-R の絵画配列や積み木模様において
た患者群では,ハノイの塔課題などの神経心理学的な
も訓練効果を認めた。
問題解決課題や日常場面での問題解決行動に関する評
動 を 通 し て 患 者 の 問 題 解 決 技 能 の 促 進 を は かった
特定の遂行的認知機能に対する訓練
目標管理 目的指向的行動を効果的に遂行するため
には,自身が達成すべき目標やそれに向けての下位目
標を適切に設定したり,維持したりすることが不可欠
となる。Levine,et al.(2000)は,脳損傷者に認められ
る組織化されていない行動には,目標管理の障害(目標
失認,Duncan,1986)が関与していると え,これを改善
するために,15名の頭部外傷者に対して Robertson
(1996)の目標管理訓練(goal management training,GMT)
を導入した。GM T は,1)中止(STOP ):課題への
方向づけと気づきの過程,2)主課題の定義:目標設
定の過程,3)段階のリスト化:目標を下位目標に分
割する過程,4)段階の学習:下位目標の符号化と維
持の過程,5)確認:モニタリングの過程,の5つの
過程からなる(Figure 2)。GMT の下位過程のいくつか
は,von Cramon, et al.(1991)の問題解決訓練の下位
過程と重複するが,GM T ではいかに問題を解決する
かということではなく,目標や下位目標の設定やそれ
らの維持に重点がおかれる点が特徴的である。Levine,
(2000)によれば,GM T を受けた患者群(GMT 群)
et al.
は,GM T 群と同じ時間,運動技能訓練を受けた統制群
と対照的に,目標失認を評価するための各課題におい
て誤反応数が減少し,遂行時間が増加した。GMT 群に
おける訓練後の課題遂行の遅延は,患者の課題に対す
る注意や気づきの増加を示唆していると えられる。
続いて,Levine らは,脳卒中や脳炎など頭部外傷以外
の原因で脳損傷を受傷した患者や健常高齢者に対して
も GM T による前頭葉機能訓練を実施し,有意な訓練
効果を確認した(Levin,et al.2000,2007,2011,Schweizer,et
al. 2008)
。さらに,GMT は,Miotto, et al.(2009)や
(2004)
,手がかりの呈示,言語的フィー
M arshall,et al.
ドバック,モデリング,金銭による強化子といったさ
Spikman, Boelen, Lamberts, Brouwer, & Fassotti
(2010)においても,先の von Cramon, et al.(1991)
まざまな手法を用いて小集団による問題解決訓練をお
の 問 題 解 決 訓 練 と あ わ せ て 導 入 さ れ て お り,von
こなった Foxx, Martella, & Marchand-Martella
(1989 )
,そして,標準的な神経心理学的検査では障害の
Cramon らの問題解決訓練と並んで,GM T はこの領
域の認知リハのなかでもっとも代表的な介入法の1つ
検出が難しい前頭葉損傷者に対し,産業界で使用され
といえる。
価尺度,さらには,知能検査のいくつかの下位項目に
おいて目立った改善が確認されたのに対し,記憶訓練
を受けた患者群では,これらの測度においてわずかな
訓練効果を認めるか,訓練効果が認められなかった。
続いて,von Cramon らは,前頭葉症状のために職を
転々としていた医師の症例に同じ手法で問題解決訓練
を施し,病名の診断や医学的な報告書の作成といった
職業的な問題解決場面での遂行の改善を導いた。この
患者は,1年間の集中的な問題解決訓練の後に,援助
つき雇用(supported employment)の職を得ることに成功
している(von Cramon & Matthes-von Cramon,1994)。ま
た,Rath,Simon,Langenbahn,Sherr & Diller(2003)
は,頭部外傷者の問題解決障害の治療に焦点を当てた
訓練プログラムに von Cramon,et al.(1991)と同様の
系統的な問題解決訓練を導入し,WSCT や保続反応得
点,自己評価による問題解決測度などにおいて訓練後
の改善を認めた。ただ,Rath,et al.(2003)の訓練プロ
グラムでは,問題解決技能の獲得に先立って,衝動性
や過剰な情動反応を抑制するための自己調整訓練が実
施されており,患者の問題解決場面での遂行の改善に
は,問題解決を阻害するこうした要因の軽減も大きく
影響していると
えられる。
問題解決障害に対するこのほかのアプローチとして
は,文章の符号化や問題構造の理解を促す手がかりを
呈示することにより算術的操作を求める言語的な問題
解決課題の遂行を改善させた Fasotti, Bremer, &
Eling(1992)及び Delazer,Bodner,& Benke(1998),
問題解決者のモデルを担う治療者との相互作用的な活
柴崎:前頭葉機能障害の認知リハビリテーション
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構成される複雑な課題を遂行している脳損傷者に,非
周期的に呈示される聴覚アラートを進行中の作業内容
の確認と,セッションを通しての全体的な目標の振り
返りに利用するよう教示した。Manly,et al.(2002)に
よると,聴覚アラートが呈示されない条件では,患者
群の遂行成績が健常群より有意に低かったのに対し,
聴覚アラートが呈示された条件では,健常群と同等の
レベルまで患者群の遂行が改善した。
プランニング 旅行の計画を練ったり,新しい家具
を購入したりといった日々の問題を解決するためにプ
ランニングをおこなう際には,過去に体験した似た場
面でどう行動したかということについての自伝的なエ
ピソード記憶が重要な手がかりとなる。前頭葉損傷者
は自伝的記憶の想起に障害があることが知られており
(Baddeley& Wilson,1986)
,患者が日常生活場面で示す
プランニング障害には,プランニングの手がかりとな
る特定の自伝的記憶を使用することの失敗がかかわっ
ている可能性がある。この点に着目し,Hewitt,Evans,
& Dritschel(2006)は,10名の頭部外傷者を対象に,
日々の問題解決場面で,それと類似した状況での自身
の活動に関する自伝的記憶を手がかりとしてプランニ
ングすることを促す 30分間の訓練を実施した。
その結
果,こうした短時間のプランニング訓練をおこなった
患者群では,統制群の患者とは対照的に,プランの有
Figure 2 GM T におけるフローチャート.Levine,et
al.(2000)をもとに改変
効性やプランにおける段階の数,また,特定の自伝的
記憶を使用した数において有意な訓練効果が認められ
た。
他方,Webb & Glueckauf(1994)は,目標の設定や
維持を促進させる認知リハ的な介入の効果を,個人の
目標達成の状態を直接的に測定する評価測度(goal
Levinson(1997)は,脳損傷者のプランニング障害を
補償するために,NASA の人工知能技術を利用した外
的なプランニング補助装置 PEAT(The Planning and
attainment scaling,GAS,Kiresuk & Sherman,1968)を用い
Execution Assistant and Trainer)を開発した。PEAT は
て検討した。
研究に参加した 16名の頭部外傷者のうち
携帯情報端末(PDA)上で動作し,朝の身支度や料理な
8名の高訓練群に対しては,目標の優先順位を設定し
どの日常的な問題解決場面で患者がおこなうべき動作
たり,ワークシートと日記を使って目標をモニタリン
の手順を自動生成したり,個々の手順の実行や実行状
グしたりする訓練を8週間に渡って実施し,残りの8
況のモニタリングを視覚的あるいは聴覚的手がかりに
名の低訓練群に対しては高訓練群に用いた前述の手法
よって促進させたりする(Figure 3)。必要に応じて手順
を導入せずに,治療者による目標設定と維持の訓練を
を修正することも可能である。最近は,スマートフォ
高訓練群と同じ期間おこなった。その結果,高訓練群
ン上で動作する PEAT の開発が進められており,テレ
と低訓練群の両方において,訓練終了直後の GAS の
ビや新聞など各種メディアにおいて話題となっている。
得点に改善が認められたが,高訓練群については,低
訓練群と違って,訓練終了から2ヵ月後の GAS にお
PEAT の臨床効果については,現在,エビデンスが蓄
積されているところであるが,PEAT は,先端技術を
いても訓練効果が維持された。
利用したプランニング障害に対する新しいアプローチ
目標の維持に,それを促す外的手がかりの使用が効
果的に働く場合もある。M anly, Hawkins, Evans,
Woldt, & Robertson(2002)は,複数の下位課題から
として期待できる(PEAT の詳細については, http://www.
brainaid.com/を参照のこと)
。
構えの転換・認知的柔軟性 このカテゴリーの認知
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2012年 第30号
Figure 3 PEAT の操作画面(Levinson, 1997).
リハとしては,Stablum,Umilta,M azzoldi,Pastore,
し,訓練期やその後の観察期で患者が産出した単語や
& M agon(2007)と今村・佐藤・安間(2002)の2つの
直接刺激法による介入が挙げられる。このうち,Stab-
図形には既出のものが多く含まれており,患者の反応
lum,et al.(2007)は,脳損傷者の内発的な課題の転換
2-2. 行動的―情動的自己調整機能
(endogenous task shift)を促進させるために,10名の重
の質的側面には訓練による変化があまり生じなかった。
行動の自己制御や情動処理とかかわる行動的
情動
度頭部外傷者と8名の軽度頭部外傷者に対して,文字
的自己調整機能の障害は,攻撃行動や保続行動,不穏
に対する判断と数字に対する判断の切り替えが規則的
などの行動障害や情動障害をしばしば引き起こす。こ
に要求されるコンピュータ化された訓練課題を用いた
の領域の認知リハは,患者のリハビリテーションや社
反復訓練を1週間に渡って実施した。その結果,重度
会生活を阻害するこれらの行動及び情動障害の修正や
頭部外傷群において,課題の切り替えが求められる同
制御をねらいとして実施される。
様の評価課題の遂行が訓練後に有意に改善し,こうし
行動修正
た訓練効果は4ヵ月後のフォローアップ期でも維持さ
れた。Stablum,et al.(2007)は,プラセボ治療をおこ
Alderman らは,脳損傷者の行動障害を修正するた
めに,学習理論に基づくさまざまな行動療法的手法を
なった重度頭部外傷者では,介入後の再評価の際に遂
駆使した一連の事例研究をおこなった。
行の改善が認められないことを明らかにしたうえで,
反復訓練を受けた重度頭部外傷群でみられた訓練後の
(1991)
まず,Alderman
では,頻繁に大きな叫び声を
あげるという症状によってリハビリ活動のほとんどが
評価課題の改善は,単純に評価課題を2回実施したこ
妨げられていた 24歳の頭部外傷者に,
飽和法と負の訓
とによるものではないと述べている。さらに,構えの
練を利用した治療が試みられている。Alderman は,1
日につき2回実施される 30分の個人セッションで,次
転換について反復訓練をおこなった頭部外傷群では,
Pased Auditory Serial Addition Task(PASAT)や
BADS,二重課題といった各指標において,訓練効果の
の4段階からなる訓練を導入した。1)患者自身の叫
般化が観察された。
ヘッドホンで聴かせる。2)叫び声のテープを聴きな
び声を繰り返し録音したテープをセッションの間中
今村他(2002)は,前交通動脈瘤破裂後の前頭葉機能
がら,安定が良く,かつ,患者が叫んだときの異常な
障害と関連して,流暢性課題に遂行障害を示した症例
声のトーンが最小となるような姿勢で車椅子に座る練
を対象に流暢性訓練を実施した。語想起課題と図形想
習をおこなう。3)1分間の休憩をはさんで 2,3分叫
起課題を訓練課題として,週に1回の頻度で各課題に
ぶ訓練を繰り返しおこなう。4)ワードロープに服を
つきそれぞれ 20週程度の反復訓練を実施したところ,
掛けたり,靴を履き替えたりといった日常的な課題を
いずれの課題においても,訓練期には産出語数または
叫びながらおこなう。これらの4つの介入を段階的に
産出図形数が徐々に増加する傾向が認められた。しか
実施した結果,患者の叫びの頻度と持続時間はベース
柴崎:前頭葉機能障害の認知リハビリテーション
ライン期や薬物療法のみを実施した時期と比
して有
意に減少した。さらに,続いて実施されたグループセッ
29
Alderman & Knight(1997)によると,この効果は,
訓練後 18ヶ月の時点においても維持された。
ションにおいても,自身の叫び声に長時間さらすこと
患者の示す行動障害のなかには,行動障害をあらわ
や叫び声をあげることの積極的な促しが,患者の症状
す度に治療者や介護者の注意が得られることが強化の
の軽減に長期的な効果を与えることが確認された。患
役割を果たしているものもある。このような場合は,
者は,この治療を受けた後に,院内のリハビリ活動に
患者が問題行動を示してもそれに対する強化子となり
参加することができるようになり,身体的及び機能的
える状況を取り除く time-out-on-the-spot(TOOTS)
な利益を得たとのことである。
による介入が効果的と
一方,Alderman らは,前頭葉機能障害のために繰り
返しの発話を頻回に呈した脳炎患者に対して,レスポ
外傷例において,患者が問題行動を起こしても,それ
えられる。Alderman(2003)
は,他者の会話を妨げるという問題行動を呈した頭部
ンスコストと認知的過剰学習による治療をおこなった
に対して治療者が注意を払わないといった単純な介入
(Alderman & Ward,1991)
。この研究では,訓練セッショ
方法が問題行動の減少に非常に有効であったと述べて
ンの冒頭に患者に金銭(50 ペンス)が渡され,患者が繰
り返しの発話をおこなう度に,治療者に1ペンスを与
(1997)
いる。また,Manchester,Hodgkinson,& Casey
は,攻撃行動や叫びといった問題行動を示した前頭葉
え,それと同時に「私は繰り返してはいけない」と1
損傷者に対し,消去や分化強化,トークンエコノミー
分間繰り返し述べるよう教示される。15分間の訓練
などの行動療法的手法にあわせて,患者が叫びだした
セッションの終了時に 46ペンス以上が残っていたら,
ら別の場所に連れて行き,しばらく一人にしておく
患者は好物のチョコレートと交換できる。このような
訓練を 30セッション実施した後,
患者の問題行動の生
TOOTS を加えた認知リハを実施し,患者の行動障害
の改善を導いた。一方,患者によっては TOOTS によ
起頻度は,ベースライン期や過剰学習を加えずにレス
る介入があまり効果的でない場合も報告されており
ポンスコストのみの訓練を施した訓練期と比
して,
(たとえば, Alderman, et al. 1995)
,その適用にあたって
有意に減少した。ただ,Alderman & Burgess(1994)
は,問題行動の発現機序に関する詳細な分析が不可欠
や Alderman, Fry & Youngson(1995)によれば,レ
スポンスコストだけを単独に使用した訓練も,前頭葉
となる。
機能障害に伴う行動障害の治療に有効と
M edd & Tate(2000)は,頭部外傷者の怒りの制御
を目的として,認知行動療法的な手法に基づくグルー
えられる。
実際,前述の Alderman & Ward(1991)では,レスポ
ンスコストのみを単独に用いた訓練によっても,認知
情動の制御
的過剰学習をあわせた場合ほどではないが,ベースラ
プ研究をおこなった。M edd & Tate(2000)の介入は,
1)心理教育:脳損傷の原理や脳損傷に由来する怒り
イン期と比べて患者の問題行動が改善した。
の制御障害の生起メカニズムを学ぶ,2)怒りへの気
問題行動の発生頻度が非常に高い場合は,低頻度分
づき:怒りが最初に生じたときに起こる認知的,身体
化強化(differential reinforcement oflow rates ofresponding,
的,感情的変化を知ることによって,自身の怒りへの
DRL)が効果的である(Alderman & Knight,1997;Watson,
気づきを増加させる,3)怒りを処理するための方略
Rutterford, Shortland, Williamson, & Alderman, 2001)
。
の訓練:リラクゼーションや気をそらすといった怒り
Alderman & Knight(1997)は DRL による介入が行動
を低減させるための方略を患者に指導し,訓練させる,
障害の治療に有効であった3例の脳損傷者について記
述しており,このうち,症例1は交通事故による頭部
の3つの段階からなる。Medd らは,怒りの制御に問題
のある8名の患者に,このような治療プログラムを6
外傷の後,物を投げたり叫んだり,あるいは,異性に
週間から8週間に渡って実施したところ,治療群の患
対して性的なコメントや悪口を言ったりという種々の
者では,自身の怒りのモニタリングを同じ期間おこ
問題行動を示すようになった。これに対して,Alder-
なった統制群の患者と比べて,怒りの評価測度におけ
man らは,問題行動の生起頻度が目標値より少なけれ
ば強化子を与えながら,患者の問題行動の生起頻度の
る有意な改善が認められた。この効果は,治療の2ヵ
減少に伴って目標値を徐々に減らしていく DRL によ
したが,自尊感情や不安,うつ,自己への気づきの程
る介入を試みたところ,標的となった4つの問題行動
度を調べる各測度においては,訓練効果の般化が認め
(物を投げる, 叫ぶ, 性的コメントをする, 悪口を言う)のすべ
られなかった。
ての生起頻度がベースライン期より有意に減少した。
月後におこなわれたフォローアップ期においても持続
30
明星大学心理学年報
2012年 第30号
外的補助・環境調整
外的補助や環境内の手がかりを利用した介入が前頭
葉機能障害者の行動制御の促進に時として有効な場合
がある。Burke, Zencius, Wesolowski, & Doubleday
(1991)は,頭部外傷による前頭葉機能障害のために,
特定の女性に対して露出行為を繰り返していた患者を
対象に,セルフモニタリングノートを用いた認知リハ
を導入した。患者は,はじめに,露出行為に対する強
い衝動や感情をすべてノートに記録するよう求められ,
続いて,自身を露出したくなったときにはいつも,そ
の衝動をノートに書き込むよう指導された。これに加
えて,女性をデートに誘ったり,女性との会話を始め
たりなどのデートにかかわる技能をロールプレイに
よって獲得する訓練もあわせておこなった結果,患者
の露出行為はわずかな例外を除いて消失した。
ところで,前頭葉損傷者においては,熟 を要する
意思決定場面で論理的思 に基づく行動が阻害される
のとは対照的に,意思決定を伴わない慣習的で自動的
な行動は保持される。また,Karnath, Wallesch, &
Zimmermann(1991)によれば,前頭葉損傷者は,慣習
的動作を引き起こすためのきっかけとなる環境的な手
がかりによって容易に妨害される。このことは,逆に
えると,前頭葉損傷者が環境内の手がかりを特定の
行動と関連づけることが可能であることを示しており,
したがって,環境手がかりとそれに対応する目的指向
的行動の関連性を患者に新たに学習させることによっ
て,特定の行動(熟 を要さずに環境手がかりにより自動的に
始動する行動)の発現を促進できる可能性がある。Lengfelder & Grollwitzer(2001)はこの点に着目し,20名
の前頭葉損傷者を対象に,実行意図(implementation
も述べるように,前頭葉損傷者の刺激依存性を逆手に
intentions, A が出現したら, 行動 B をおこなうといった行動パ
ついて検討したところ,いずれの標的行動についても
ターン)の形成を利用した行動制御を試みた。画面上に
呈示された数字に対して反応し,文字に対しては反応
NeuroPage の使用によって行動の開始が促進された。
さらに,
同じ患者を対象とした 10年後のフォローアッ
しない GoNogo 課題において,特定の数字 ⑶ に対し
プ 研 究 に お い て も,患 者 の 日 常 生 活 動 作 の 開 始 が
ては特に速く反応するようカードと自己教示を用いた
NeuroPage の再導入によって劇的に改善したことが
示された(Fish,Manly,& Wilson,2008)。Fish,Manly,&
訓練をおこなったところ,前頭葉損傷者は前頭葉以外
に損傷をもつ脳損傷者と同様に,訓練された特定の数
字に対する反応が促進された。さらに,特定の数字へ
の反応促進が生じた事態では,同時に実施された追跡
取ったこのような介入法は,より実際的な場面での患
者の行動制御に応用できる可能性があり,期待できる。
2-3. 活性化調整機能
行動の開始と維持の障害,または,自発性や動機づ
けの低下など,活性化調整機能の障害によって生じる
神経心理学的症状の治療については,ドーパミン作用
薬を使用した薬物療法が中心となる(Levine,Turner,&
Stuss,2008)
。他方,数はそれほど多くないものの,認知
リハ的な介入が活性化調整機能の改善に効果的である
ことを示唆する研究もある。
行動開始の障害
Burke,et al.(1991)は,行動開始に障害のある 3名
の頭部外傷者に対し,チェックリストを利用した治療
的介入を試みた。食事の際のトレイの準備や台所の掃
除など患者がおこなうべき日常的課題がリストアップ
されたチェックリストを用いて,個々の課題を自発的
に始めるよう訓練した結果,訓練に参加した3名の患
者のすべてが他者からの言語的な促しがなくても,
チェックリストを使って自発的に課題を始めることが
できるようになった。こうした訓練効果はチェックリ
ストの使用を中止した後も維持された。
Evans, Emslie, & Wilson(1998)は,知的機能や記
憶機能が保たれているにもかかわらず,日常生活動作
の開始に問題のあった前頭葉損傷者の治療に,患者の
持つポケットベルに適切なタイミングでリマインダー
を送信するポケットベルシステム(NeuroPage)を導入
した。この研究では,朝夕の服薬,植物への水遣り,
下着の洗濯の3つの日常生活動作を標的行動として設
定し,それぞれに対する NeuroPage の導入の効果に
Wilson(2008)によると,NeuroPage による訓練効果
はチェックリストを使用した場合と比べて大きいと
課題の難易度の影響を受けないことが明らかになり,
えられる。NeuroPage は,一般に,記憶障害(特に展望
的記憶の障害)を補償する外的補助システムとして用い
実行意図により,一旦,刺激と行動の対応関係が学習
られるが(Wilson,Emslie,Quirk & Evans,2001,Fish,Manly,
されると,その行動の実行に際しての心的負荷が減少
Emslie, Evans, & Wilson, 2008)
,Evans et al.(1998)や
することが確認された。この研究は,実験的な場面で
の実行意図の形成による前頭葉損傷者の反応促進を示
Fish, Manly, & Wilson(2008)の研究は,活性化調整
機能の障害の結果として生じる行動開始の問題にも
したものであるが,Lengfelder& Grollwitzer(2001)
NeuroPage が適用できる可能性を示している。
柴崎:前頭葉機能障害の認知リハビリテーション
このほかに,行動開始の障害に関しては,行動開始
31
を促す手がかりカード(Sohlberg, Sprunk, & Metzelaar,
指導し,その使用を促進させる,3)
TPM 方略の適用
と維持:ラジオの音声など課題と無関連な妨害刺激が
)
1988)や行動のきっかけとなる自己教示(“Just do it!”
呈示されるより難しい条件下での TPM 方略の適用を
の使用(Evans,2003),あるいは,モデリング(本田,1997)
促す,の3つの段階によって構成される。研究に参加
を利用した認知リハ的な介入が試みられており,いず
した 22名の頭部外傷者のうち,12名の患者に対して
れも肯定的な結果を得ている。一方,前田他(2009)
は TPM による訓練,残りの 10名の患者に対しては記
は,発動性障害を呈した脳炎後遺症者の復職をねらい
憶方略に関する訓練を3週間程度ずつそれぞれおこ
とした興味深いアプローチを報告した。この研究にお
なったところ,2つの患者群ともに,呈示されたビデ
いては,患者が復職に向けてすべき行動を自分自身で
オの内容の書き取りを求める評価課題の遂行が訓練後
え,自発的に行動することを促すために,最初から
に向上したが,TPM を受けた患者群(TPM 群)では記
患者に対して具体的な行動を提案するのではなく,ま
憶訓練を受けた患者群(統制群)より訓練効果が大きく
ずは,復職に関する漠然とした質問を患者に投げかけ,
それに対して答えが得られない場合にはより具体性の
なった。また,TPM 群では,統制群と対照的に,情報
処理のスピードや記憶に関する別の神経心理学的測度
ある質問,それでも答えが得られない場合には「○を
において,訓練効果の般化が認められた。
してみてはどうか」と提案するという段階的な介入が
2-4. メタ認知過程
採用された。こうした介入の結果,訓練開始2週目以
メタ認知過程の障害は,自己の内的状態の理解やそ
降から,治療者からの提案は必要としたものの,提案
れを基盤として生じる他者認知及び社会的認知の障害
された内容を患者自らが工夫しておこなう様子が観察
を生じさせる。この領域の認知リハでは,自身の障害
され,訓練開始1ヶ月半後には,具体的な提案がなく
に対する全般的気づきや自己モニタリングなど前者の
ても,患者自ら主治医や上司と連絡を取り,復職後の
自己認知にかかわるものがほとんどを占めており,後
業務内容について相談するなど自発的な行動が出現す
者の社会的認知を標的とした治療的介入はわずかしか
るようになった。この患者は発症後5ヶ月で自宅退院
おこなわれていない。
障害への気づき
情報処理の遅延
脳損傷後の自身の障害への気づきを促進させる認知
(2009 )が指摘するように,活性化調整機能の障
リハ的な手法の1つに,患者が特定の課題に取り組む
Stuss
害は,情報処理の全般的な遅れも引き起こす。Fasotti,
前にそれに対する自らの遂行を予測させ,課題実施後
(
)
2
0
0
0
は,脳損傷の結果,
に予測と実際の遂行成績とのギャップを患者に自覚さ
Kovacs,Eling,& Brouwer
情報処理の遅れを示した頭部外傷者を対象に,日常生
せることを通して,患者の自己意識の修正を促すもの
活におけるタイムプレッシャーを処理するための内的
がある。Youngjohn & Altman(1989)は,自身の障害
補償訓練(time pressure management, TPM )を実施した。 への気づきが低下した脳損傷者を対象に,前述の手法
誤反応と障害の気づき:自身の情報処理
を利用したグループ介入をおこなった。この研究では,
TPM は,1)
の遅れと課題遂行との関係についての気づきを促す,
はじめに患者が取り組むべき課題(自由再生課題または計
算課題)のサンプル問題を呈示し,それに対する自身の
2)TPM 方略の受容と獲得:TPM 方略(Table 1)を
し,その後,復職した。
Table 1 TPM 方略(Fasotti, et al. 2000)
教示
主な目的
1. 充分な時間がない状況で,同時におこなうべき2つ以上の課題がありますか そ 目前の課題におけるタイムプレッシャーを認
うであるならば第2段階へ,そうでなければ単にその課題をおこないなさい
識する
2. 課題を始める前に,すべきことに関する短いプランを立てなさい
タイムプレッシャーをできるだけ避ける
3. 時間が足りなくなった場合におこなう緊急プランを立てなさい
で き る だ け 速 く,効 果 的 に タ イ ム プ レッ
シャーを処理する
4. プランと緊急プランの準備ができましたか では,それを適切に使用してみま TPM 方略を使用している間の自己モニタリ
しょう
ングを促す
32
明星大学心理学年報
2012年 第30号
遂行レベル(記憶課題の再生数または計算問題の正答数)を予
わせた 10週の訓練プログラムを自己意識に障害のあ
測するようおのおの患者に求める。各患者が予測した
る4名の脳損傷者に実施した。その結果,4名の患者
成績は個々の患者の名前とともに黒板に示され,その
全員において訓練後の自己への気づきが改善したが,
後,課題が実施される。課題終了後は黒板にある個々
これに伴って,すべての患者の不安も増加した。この
の患者の予測値の隣に実際の成績が記され,予測と実
ことから,患者の障害への気づきの改善をめざした認
際の成績の不一致について患者どうしで議論を交わす
知リハにおいては,治療者が訓練中の患者の感情状態
よう求められた。こうした手続きを自由再生課題と計
を常に把握しておくことが重要と えられる。また,
算課題の各課題で2試行ずつ繰り返したところ,2つ
の課題ともに,1試行目では予測値が実際の成績より
Fleming,et al.(2006)が指摘するように,気づきに対
する介入の導入にあたっては,介入の利益がそれによ
大きく上回っていたのに対し,2試行目では予測と実
る損失(不安の増加)を上回るか否かを注意深く検討する
際の成績のギャップが1試行目よりも小さくなり,患
必要がある。
自己モニタリング・誤反応の自己修正
M eichenbaum & Goodman(1971)は,通常は内的
予測の改善は,患者の自己の認知障害に対する気づき
におこなわれる自己モニタリング過程を代償する内的
の増加を示唆していると えられる。
補償方略の1つとなる自己教示法を 案した。自己教
患 者 が お こ なった 遂 行 の 予 測 と 実 際 の 遂 行 と の
示法は,内言による行動調整を重視した Luria(1981)
ギャップは,行動療法的な介入によっても改善される。 の理論を基盤としたもので,これを用いた訓練では,
課題遂行中の患者にその実行手順を逐次明瞭に外言化
Rebmann & Hannon(1995)は,自身の記憶障害への
気づきが欠けた3名の脳損傷者を対象に,患者が予測
させることから始まり,訓練経過ともに徐々に外言化
(1987)
した記憶課題の成績と実際の成績との差異が小さけれ
を弱め,内言化を導いていく。Cicerone& Wood
ば,言語的賞賛とロトチケットによる強化を与える介
は,ロンドン塔課題を使用した前頭葉損傷者の認知リ
入を試みたところ,すべての患者において,介入期に
ハに自己教示法による8週間の訓練を導入した結果,
は遂行の予測の精度がベースライン期より増す傾向が
患者の誤反応数は劇的に減少し,備品のビーズで遊ぶ
観察された。さらに,Cheng & Man(2006)や Gover- など課題無関連な行動もあわせて改善した。これに加
えて,
訓練効果の日常生活への適用を促す 12週間の般
over, Johnston, Toglia, & Deluca(2007)は,日常的
な課題を用いたグループ研究を実施し,予測と実際の
化訓練を実施したところ,患者の日常生活行動に訓練
遂行とのギャップを患者に自覚させるこのようなアプ
効果の般化が観察された。続いて,Cicerone らは,プ
ローチが,障害への気づきを直接的に測定する評価測
ランニングや自己モニタリングに障害をもつ6名の脳
度においても改善を導くことを明らかにした。ただ,
損傷者を対象に追試研究を実施し,6名中5名の患者
において,自己教示法による介入がロンドン塔課題の
Goverover,et al.(2007)によれば,こうした手法が自
己への気づきに及ぼす影響は限定的なようである。
遂行の改善を導くことを再度確認した(Cicerone &
Giacino,1992)
。自己教示法は,そもそもは多動児の療育
Goverover らの研究に参加した頭部外傷者では,日常
生活上の困難に関するメタ認知を測定する測度(selfの現場で開発された介入法であったが,Cicerone らの
regulation skills interview, SRSI)においては訓練後の改
研究を契機に,脳損傷後遺症に対する認知リハの領域
善が示されたが,脳損傷に伴って生じた身体的・認知
においても,自己モニタリングや方略の内在化を促す
的・行動的変化への全般的な気づきを測定する測度
代表的な自己モニタリング方略として,さまざまな文
(awareness questionnaire)においては訓練効果が認めら
脈で利用されている(たとえば, Fasotti, et al. 2000, 坂爪・
本田・上久保・中島・南雲, 2002, von Cramon & Matthes-von
れなかった。なお,認知リハ的な介入が SRSI 上にあら
Cramon, 1994 など)
われる自己への気づきの改善を促すことは,患者の障
。
害への気づきを促進させる 16週のワークショップに
自己モニタリング訓練が前頭葉機能障害によって生
よる介入をおこなった Ownsworth, McFarland, &
じる行動障害の治療に有効であることを示唆する研究
もある。Alderman et al.(1995)は,脳損傷後に繰り返
Young(2000)においても確認されている。
しの発話を呈するようになった脳炎患者の自発的な自
Fleming,Lucas,& Lightbody(2006)は,遂行の予
測,予測と実際の遂行の差異についての自己評価,
己モニタリングを促進させるために,デジタルカウン
フィードバック,脳損傷教育など多様な手法を組み合
ターを使って問題行動の生起頻度を患者自身に数えさ
者の予測の精度が有意に上昇した。Youngjohn & Altman(1989)において観察されたこのような課題遂行の
柴崎:前頭葉機能障害の認知リハビリテーション
せる自己モニタリング訓練を試みた。その結果,自身
33
の問題行動に対する患者の自己モニタリングの精度は
先の Ownsworth, et al.(2006)では,メタ認知訓練に
より患者の誤反応への気づきが増加した後でも,自身
訓練に伴って改善し,また,自己モニタリング訓練に
の障害全般に対する患者の気づきについては大きな変
加えて DRL による介入が導入された後は,問題行動
化が認められなかった。したがって,特定の課題条件
の生起頻度も減少した。さらに,自己モニタリング訓
下での誤反応への気づきが認知リハ的な介入によって
練による患者の行動障害の改善は,訓練を終了してか
促進されても,そのことが患者の抱える障害全般に対
ら5ヶ月が経過した後も,同じ病院内で実施されてい
する気づきへと発展していくのは難しいように思われ
る別の治療場面において観察された。Alderman et al.
(1995)は,自己モニタリング訓練による訓練効果は比
る。
的ゆっくりとあらわれるものの,TOOTS やレスポ
ンスコストといった行動療法的手法と違って,他の環
Cicerone& Tanenbaum(1997)は,交通事故に伴う
前頭眼窩野損傷の後に,他者の発話をさえぎったり,
境への訓練効果の般化が起こりやすいと述べている。
自分の要求がすぐに満たされないと文句を言ったりと
一方,Dayus & van den Broek(2000)は,くも膜下
いった社会的行動障害をきたすようになった症例に対
出血後に長期に渡って作話を呈した患者に対しても自
して,患者の障害への気づきと自身の問題行動の社会
己モニタリング訓練による治療的介入が効果的である
的影響の理解を促進させることを目的とした認知リハ
ことを報告した。この研究においても,患者の日常生
を実施した。この患者の主要な問題は他者と相互作用
活場面に訓練効果の般化が生じている。
をおこなっているときに生じる繊細な社会的情報をコ
Ownsworth, Fleming,Desbois,Strong,& Kuipers
(2006)は,自己意識に障害のある頭部外傷者を対象
ミュニケーションに利用できない点にあり,このこと
に,患者の誤反応への気づきと誤反応の自己修正の改
Cicerone& Tanenbaum(1997)は,患者の行動に対す
る患者自身の自己評価と客観的評価の不一致の理解や
善をねらいとしたメタ認知訓 練 を 実 施 し た。Own-
社会的認知
が患者が社会的判断を誤る大きな原因となっていた。
sworth,et al.(2006)では訓練課題として調理課題が使
用されており,介入期では,まず,患者の母親が調理
自身の行動に対しての自己モニタリングを促すために,
をし,患者がベースライン期で犯したのと同じタイプ
像をフィードバックとして与える介入を実施したとこ
の失敗をおこなうのを患者に観察させる役割交換法
ろ,訓練された環境においては,患者は自身の行動の
(role-reversal technique)
が用いられる。患者は母親が誤
不適切さを認識できるようになり,これに伴い問題行
りを犯したら,母親を止めて,彼女の誤りを説明し,
動の速やかな修正がおこなわれた。しかし,訓練場面
正しい行動に修正するよう求められる。続いての治療
と異なる新しい環境では,患者の社会的行動障害は依
セッションでは,ベースライン期で患者自身が調理を
然として残ったままであった。
おこなっている場面をビデオで観察し,ビデオの中で
最近,Bornhofen らの研究グループは,頭部外傷者
の他者の感情状態に対する知覚障害の改善を標的とし
患者が誤りを犯したら,前の治療セッションと同様に,
誤りを同定し,修正するよう求められた。これらにあ
患者が他者とかかわっている場面を撮影したビデオ映
わせて,タイマーを用いて3分おきにレシピを確認さ
た治療的介入を試みている。Bornhofen & M cDonald
(2008a, b)は,社会的問題を抱える頭部外傷者を対象
せたり,調理後に患者の調理行動についてフィード
に,患者に誤反応をさせずに適切な行動を学習させる
バックする時間を設けたりといった介入を 8週間に
誤りなし学習(Wilson,Baddeley,Evans,& Shiel,1994)や,
渡って実施したところ,介入期には患者の調理課題に
問題解決過程のモニタリングを促す自己モニタリング
おける誤反応の生起頻度が減少し,誤反応の自己修正
方略を導入した全部で 25時間の感情知覚訓練をおこ
の頻度が増加した。調理行動におけるこのような訓練
なった。その結果,治療群の頭部外傷者では,訓練後
効果は,介入を終えた4週間後も維持され,さらに,
に,写真やビデオで呈示される人物の感情状態の判断
患者のメタ認知を促す同様の介入が,調理行動だけで
が求められる評価課題の成績が有意に改善することが
なく,ボランティア活動の改善を標的とした別の認知
示された。Bornhofen & McDonald(2008b)によれば,
誤りなし学習と比べて自己モニタリング方略を用いた
リハにおいても効果的であることが示された。Ownsworth, Quinn, Fleming, Kendall, & Shum(2010)に
よると,メタ認知訓練は反復訓練よりも誤反応への気
づきや誤反応の自己修正の改善に有効である。他方,
場 合 が よ り 効 果 的 と の こ と で あ る。続 い て,
McDonald, Bornhofen, & Hunt(2009)は,特定の情
動状態があらわれやすい顔の特徴(目と口)に注意を向
明星大学心理学年報
34
2012年 第30号
ける方略と,他者の表情の模倣をおこなう方略のおの
績 が 低 下 す る こ と を 報 告 し た。さ ら に,Shamay-
おのの利用が頭部外傷者の他者の感情状態の知覚にど
のように影響するかを検討したところ,注意方略より
Tsoory,Tomer,Berger,Goldsher,& Aharon-Peretz
(2005)によれば,前頭前野の腹内側領域に損傷をもつ
もどちらかというと模倣方略を用いたときに感情知覚
患者では,失言や皮肉の理解など情動的な心の理論課
が促進された。
題に対する遂行障害が目立つとのことである。種々の
3. 今後の研究課題
心の理論課題の遂行障害によって明らかとされる前頭
葉損傷者の社会的認知の障害は,患者の円滑な社会活
前章では,Stuss(2007, 2009)の前頭葉機能に関する
領域特異的アプローチの枠組みに従いながら,これま
動を妨げる重大な阻害因となっており,M cDonald,et
al.(2009)が指摘するように,認知リハ的な介入の重要
で実施された前頭葉機能障害の認知リハを整理及び概
な標的として位置づけられる。こうした意味において,
観した。Stuss が分類した4つの前頭前野機能のそれ
ぞれに対する認知リハ的な介入の総数に着目すると,
最近の Bornhofen らのグループによる社会的認知障
遂行的認知機能に関しては,比 的多くの治療的介入
これからの研究動向が大いに注目されるところである。
害に対する一連の治療的アプローチは非常に興味深く,
がおこなわれているのに対し,活性化調整機能やメタ
次に,訓練効果の評価に関して,前章で概観した前
認知過程に含まれる社会的認知については認知リハ的
頭葉機能障害の認知リハでは,標的とする前頭葉機能
な取組みが全般に少なくなっていることに気づく。こ
を測定する評価課題や行動尺度などの行動測度上の
のうち,活性化調整機能に関しては,重症例では自発
データが介入の前後でどう変化するかといった観点か
性や動機づけが極端に低下するため,患者を訓練にの
ら介入の効果について主に検討されていた。一方,昨
せること自体が困難で,三好・石井(1999)が述べるよ
今の科学技術のめざましい発展に伴い,機能的 M RI
うに,場合によっては,回復訓練の適用をあきらめざ
(fMRI)やポジトロン CT(PET)
,近赤外分光法(NIRS)
るをえないケースもありえる。ただ,長期に渡る活性
など,脳の神経活動を非侵襲的に測定できる技術の開
化調整機能の障害は患者の予後を著しく阻害するだけ
発が飛躍的に進歩し,多様な研究領域への活用が進ん
でなく,筋萎縮や全般的認知機能の低下などの廃用症
でいる。このような脳機能測定装置は,脳機能リハビ
候群を引き起こす危険性もあるので,可能な限り,何
リテーションの領域にも積極的に利用されており,運
らかの治療的介入を試みる必要がある。前章で触れた
動麻痺や失語症については,これらの自然回復過程を
ように,外的補助システムの導入やモデリングによる
支える脳内機序が徐々に明らかにされつつある(加藤・
介入など,認知リハ的な介入がこの種の患者に効果的
武田,2009, 三原・矢倉・畠中・服部・宮井,2010,Mimura,et al.
に作用することを示唆する研究が数は少ないながらも
1998, Pizzamiglio, Galati, & Committeri, 2001, 横山・長田,
いくつか存在しており,筆者自身も,反応促進をねら
2004)
。これに対し,認知リハ的な介入によって引き起
いとした実験心理学的な訓練課題による反復訓練が,
こされる脳活動の変化に関しては,視覚機能訓練や注
前頭葉損傷者の発動性機能の改善を導くことを体験し
意訓練が患者の脳内に可塑的変化をもたらすことを示
ている(柴崎・豊田,2009,Shibasaki& Toyota,2010)。今後,
した Julkunen,et al.(2006)及び Kim,et al.(2009)が
活性化調整機能の不全に対して認知リハ的な働きかけ
あるものの,これについて検討した研究は少なく,さ
を積極的に進めていくうえで,その有効性を裏づける
らに,前頭葉機能障害に関連する認知リハに対象を絞
エビデンスのますますの蓄積が望まれる。
ると,前述の Levine et al.(2000)の GMT を組み入れ
また,メタ認知過程と関連する社会的認知に関して
た注意制御訓練による脳内の変化を fM RI データを用
も,同じメタ認知過程に含まれる自らの障害への気づ
きや自己モニタリングといった自己認知にかかわる認
いて検討した Chen, et al.(2011)以外にほとんど研究
が見当たらない。Chen,et al.(2011)においては,介入
知リハと比 すると,介入の数が極端に少なくなって
に伴う前頭前野活動の変化パターンが患者間で一貫し
いる。他方,自閉症スペクトラムと同様に,前頭葉損
なかったが,今後は,行動データをもとにした訓練効
傷者が他者の心的状態の推測が求められる心の理論課
果の評価はもちろんのこと,これにあわせて,脳活動
題の遂行に障害を示すことはよく知られており,たと
データを利用した効果測定を進めることにより,前頭
えば,Gregory,et al.(2002)は,前頭葉異型性の前頭
葉機能障害に対する認知リハ的な介入が,前頭葉やそ
側頭型認知症患者では,誤信念課題,社会的失言課題,
のほかの脳領域の活動にどのような可塑的変化をもた
まなざしによる感情知覚課題のすべてにおいて認知成
らすかを検討していく必要がある。
柴崎:前頭葉機能障害の認知リハビリテーション
35
最後に,前頭葉機能障害の在宅での認知リハの話題
disorders. In B. A. Wilson (Ed). Neuropsy-
について言及したい。一般に,認知リハは病院や施設
内で治療者の指導のもと実施される。しかし,自宅退
chological Rehabilitation : Theory and Practice.
Lisse :Swets & Zeitlinger. pp.171-196.
院した患者のなかには,居住地が病院や施設から離れ
Alderman, N., & Burgess, P. (1994). A compari-
ていたり,患者自身あるいは介護者の身体的問題など
son of treatment methods for behaviour disorder
で定期的な通院・通所が難しく,提供されているサー
following herpes simplex encephalitis. Neuropsychological Rehabilitation, 4, 31-48.
ビスを充分に受けられない者が少なからず存在する。
こうした場合に,患者が在宅のまま受けることが可能
な認知リハサービスの提供があれば非常に便利である。
Alderman, N., Fry, R. K., & Youngson, H. A.
(1995). Improvement of self-monitoring skills,
近年の情報機器やインターネット環境の普及は,こう
reduction of behavioral disturbance and the
した患者のニーズを後押しするもので,本邦において
dysexecutive syndrome :Comparison of response
cost and a new programme of self-monitoring
も,福山大学の橋本らの研究グループによってイン
ターネットを介した在宅での認知リハシステム「いつ
でもどこでも認知リハ」の開発が進められている(研究
成果の一部は既にインターネット上で公開されているので参
training. Neuropsychological Rehabilitation, 5,
193-221.
Alderman,N.,& Knight,C. (1997). The effective-
とされたい)
。ただ,ここで留意すべきなのが治療者不在
ness of DRL in the management and treatment of
で実施される認知リハの訓練効果にまつわる問題であ
severe behaviour disorders following brain injury.
Brain Injury, 11, 79-101.
る。認知リハの治療効果について 2000年から継続的に
メタ分析をおこなっている Cicerone らによると(Cice-
Alderman, N. & Ward, A. (1991). Behavioural
rone, et al. 2000, 2005, 2011)
,注意障害や言語障害を対象
treatment of the dysexecutive syndrome :Reduc-
とした場合には,治療者からの介入がない状態で実施
tion of repetitive speech using response cost and
されるコンピュータを用いた機能回復訓練は推奨され
cognitive overlearning. Neuropsychological
Rehabilitation, 1, 65-80.
ない。一方,問題解決障害に関しては,治療者が患者
のそばについて直接指導する従来型の認知リハや,遠
隔地に居る治療者の制御のもとでコンピュータによる
訓練が進められる介入の場合と同様に,患者が単独で
穴水幸子・加藤元一郎・斎藤文恵・鹿島晴雄 (2005).
右前頭葉背外側損傷に対する遂行機能リハビリテー
ション 認知リハビリテーション 2005, 51-58.
コンピュータに向かって自身のペースで訓練を進めて
Baddeley, A. D., & Wilson, B. (1986). Amnesia,
いく訓練プログラムを実施したときにも,患者の問題
autobiographical memory and confabulation. In
解決技能が訓練後に改善したことを示す研究がある
D. C. Rubin (Ed.), Autobiographical memory.
(Soong,Tam,Man,& Hui-Chan,2005,Man,Soong,Tam,&
Hui-Chan,2006)
。前頭葉機能障害に対する在宅での認知
Cambridge : Cambridge University Press. pp.
225-252.
リハの訓練効果について直接的に扱った研究は,前章
Bornhofen, C., & M cdonald, S. (2008a). Treating
で述べた PEAT や NeuroPage などの外的補助装置
deficits in emotion perception following trau-
を使用した認知リハを除いて,現在のところあまりお
matic brain injury. Neuropsycholgical Rehabilitation, 18, 22-44.
こなわれていないが,Soong らの研究結果は,前頭葉
機能障害の在宅認知リハの可能性や有効性についての
Bornhofen, C., & Mcdonald, S. (2008b). Compar-
示唆を与えるものであり,この領域におけるより一層
ing strategies for treating emotion perception
の資料の蓄積が待たれる。
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