自然堆積粘土における透水係数の異方性に関する研究(その2) - 土木学会

土木学会第66回年次学術講演会(平成23年度)
Ⅲ-197
自然堆積粘土における透水係数の異方性に関する研究(その2)
呉工業高等専門学校
学生員 ○佐藤 友彦
呉工業高等専門学校
正会員
森脇 武夫
1.はじめに
自然堆積粘土の透水性は,鉛直方向と水平方向で異なることが知られている.しかし,極めて透水性の低い
粘土の水平方向の透水係数を精確に測定する適当な方法がないため,設計や解析で水平方向の透水係数が必要
な場合は鉛直方向の値をそのまま用いるか何倍かして用いているのが現状である.しかし,海面埋立型廃棄物
最終処分場の遮水工として在来粘土層を利用する場合や,バーチカルドレーンが打設された地盤の圧密沈下挙
動を予測する場合には,精確な水平方向の透水係数が必要な場合がある.
そこで著者らは,粘土の水平方向の透水係数を求める方法として,バーチカルドレーンによる圧密を再現し
た三次元圧密試験機を用いて,軸対称内向き放射流れによる定ひずみ速度載荷圧密試験を行って,非排水面で
ある外周面での過剰間隙水圧を測定することによって水平方向の透水係数を,粘土の変形特性を仮定すること
なく算出する方法を提案している 1).本論文では,この方法と従来の定ひずみ速度載荷圧密試験により得られ
た結果を用いて鉛直水平両方向の透水係数を比較することに加え、鉛直と水平両方向に圧縮を行う一軸圧縮試
験を行い得られた結果を比較することで、透水性と強度・変形性における異方性の関係についても検討した。
2.水平方向透水係数の算出方法
図 1 に示す三次元圧密試験機において,中空円柱供試体の内周面を排水面,外周面と上下端面を非排水面と
し,内周面と外周面および下端面の変位を固定し,上端面を等鉛直変位条件で一定速度で圧縮する.このとき,
供試体の外周面(非排水面)で発生する間隙水圧 u e を測定すると,式(1)によって水平方向の透水係数 k h を算
出できる.式(1)の誘導に関しては参考文献 1 を参照されたい.
kh 
 w g
2u e
 r
1
 r
re 2 ln e  1   w
 rw 2   re






2 





(1)
ここに,  w は水の密度, g は重力加速度,  は(鉛直)ひずみ速度, re は供試体外周面の半径, rw は供試体
内周面の半径である.
3.測定結果
載荷ピストン
1)透水係数の異方性
図 2 に広島港、真砂、宇品、五日市、羽田
ピストンガイド
固定ボルト
上板
補強リング
空気圧供給口
の五種類の粘土における正規圧密領域での
Oリング
水平と鉛直の透水係数比(k h /k v )と間隙比の
圧密リング
補強リング
Yリング
圧密リング
Oリング (内径 60mm,
高さ 20mm)
Yリング
Oリング
においてはその差が 3 倍程度となっている。
また、図 2 において圧密が進行し間隙比が減
中央上部給排水口
ガイドリング
アクリルセル
のと同じように水平方向の透水係数が鉛直
方向のものよりも高い値を示し、広島港粘土
載荷板
支柱
関係を示す。図 2 の圧密初期段階において、
全ての粘土において一般的に言われている
Oリング
Oリング
供試体
圧力計へ
供試体
Oリング
Oリング
中央下部
給排水口
リングフィルター
コアフィルター
(φ12mm)
リングフィルター
ドーナツフィルター
圧力計へ
少するとそれに伴って一旦透水係数比も減
底 板
少していくが、さらに圧密が進行していくと
図 1 三次元圧密試験機
キーワード 透水係数,異方性,定ひずみ速度載荷圧密試験,一軸圧縮強さ、粘土
連絡先
〒737-8506 広島県呉市阿賀南 2-2-11 呉工業高等専門学校 環境都市工学科 TEL:0823-73-8478
-393-
Oリング
底板
給排水口
土木学会第66回年次学術講演会(平成23年度)
Ⅲ-197
透水係数比が増加に転じるという傾向が四種類の粘土において観測された。これは圧密圧力が圧密降伏応力に
達し粘土の初期構造が破壊されることによって異方性がある程度解消された後、さらに圧密が進行すると再び
3.5
ているのではないかと考えられる。加えて、粘土の初期構
3
造の破壊による透水係数比の減少の度合いには個体差が
見られる。
2)透水性と強度・変形の異方性の相関
図 3 に圧縮強さ比と透水係数比の関係を示す。図 3 では
透水係数比(kh/kv)
粘土の構造がより配向構造へと移行していくことを示し
広島港
真砂
宇品
五日市
羽田
2.5
2
1.5
1
0.5
縦軸に一軸圧縮強さの比(quh/quv)を、横軸には透水係数
0
0.9
比(kh/kv)をそれぞれ算術目盛でプロットし、5 種類の粘土
における圧縮強度の異方性と透水係数の異方性の関係を
図 2
表したものである。図 3 においては圧縮強さの比が低い
がみられる。これはつまり圧縮強さの異方性が大きくな
ると、透水係数の異方性が大きくなるということであり、
それは粘土の初期構造の異方性に由来すると考えられる
が、圧縮強さの異方性と透水係数の異方性におけるこの
0.9
圧縮強さ比(quh/quv)
値を示すと、透水係数の比が大きい値を示すという傾向
ような関係性が他の粘土においても見られるか試料の種
1)不撹乱試料において鉛直方向と水平方向の透水係数を
比較した場合、一般的に言われているのと同様に水平方
向透水係数の方が大きい値を示し、本研究で用いた試料
透水係 数比と間隙比の 関係
広島港
真砂
宇品
五日市
羽田
0.6
0.5
0.4
図3
0.5
1
1.5
透水係数比(kh/kV)
2
2.5
圧縮強さ比と透水係数比の関係
1.2
変形係数比(Eh/Ev)
/kv)をそれぞれ算術目盛でプロットしており、変形係数の
4.まとめ
1.9
0.3
縦軸に変形係数の比(Eh50/EV50)を、横軸に透水係数比(kh
関は得られなかった。
1.7
0.7
図 4 に変形係数比と透水係数比の関係を示す。図 4 では、
変形係数の異方性と透水係数の異方性との間に明確な相
1.5
間隙比 e
試験後の供試体
0
図 4 においては、両者の間に一定の傾向は認められず、
1.3
0.8
類を増やして検討していく必要がある。
異方性と、透水係数の異方性の関係を表したものである。
1.1
1
0.8
広島港
真砂
宇品
五日市
羽田
0.6
0.4
0.2
0
0
図4
0.5
1
1.5
透水係数比(kh/kV)
2
2.5
変形係数比と透水係数比の関係
の場合は最大で 3 倍程度であった。
2) 圧密圧力が圧密降伏応力に達すると粘土の初期構造が破壊されることによって異方性が解消されることに
より一度透水係数比は減少するが、さらに圧密が進行すると再び粘土の構造がより配向構造へと移行してい
くことによって、透水係数比は増加していく。
3)一軸圧縮強さの異方性と、透水係数の異方性の間には、圧縮強さの異方性が大きくなると、同様に透水係
数の異方性が大きくなるというような一定の相関関係が見られた。
今後は得られた透水性の異方性と強度の異方性の相関関係についてより試料の数を増やして検討すること
に加えて、他の指標と透水性の異方性との相関についても同様に検討していくことが望まれる。
参考文献
1)森脇武夫,佐藤友彦:定ひずみ速度載荷圧密試験による粘土の水平方向透水係数の測定法,第 44 回地盤工
会研究発表会概要集,pp.219-220,2009.
-394-