平成25年度全国結核対策推進会議に参加して - 結核予防会結核研究所

平成25年度全国結核対策推進会議に参加して
長崎県県南保健所
長谷川 麻衣子
所長 はじめに
世界結核デーにちなみ, 3 月 7 日,恒例の全国結核
割分担と連携推進の重要性と,そのツールである地
対策推進会議がヤクルトホール(東京新橋)にて開催
長期治療が減少・治療成功率が上昇,地域医療機関
された。全国から約300人が参加し,結核対策の進展状
における結核治療が増加という効果があった。連携
況と最近の知見について,各地の特色ある取り組みに
パスを用いた結核の地域医療連携のための指針は結
ついて情報共有し意見を交換。今回の視点は①小児結
核病学会ホームページの治療委員会報告で入手可。
域連携パスの有用性について報告。パス導入により
核や接触者健診時の感染診断としてのIGRAの活用方
法,②結核医療の質と受診しやすさの向上をめざす地
域医療連携推進,③多職種連携による結核患者支援の
可能性の 3 点である。その概要を報告する。
シンポジウム
「多職種(機関)による地域連携で治す・防ぐ!」
杉並保健所保健師の佐々木夏枝氏はDOTS支援にお
ける薬局・薬剤師会との連携について報告。DOTS対
講演
1 厚労省結核感染症課の梅木和宣氏は,各自治体に
利用者のメリットは夕刻や土曜日・自宅近くで対応可
おける「予防指針に関する施策の進捗状況」調査結
など利便性が向上,薬局のメリットは住民の健康保持
果を報告。結果は厚生科学審議会結核部会の資料と
に協力できるということ。
してHPで公開中。
日本大学医学部附属板橋病院の小林広和氏は感染管
象者127人内 9 人が薬局DOTSを実施,年齢は30~70代。
2 結核研究所の加藤誠也氏はQFT-3GとT-SPOTにつ
理認定看護師の立場から報告。保健所のコホート検討
いて診断特性を比較し報告。 2 者に大きな違いはな
会で把握した“外来における治療判定評価のための喀
く,接触者健康診断等への適用は基本的に同様。ま
痰検査実施率が低い”という課題に対し,感染予防対
た,IGRA使用指針について,小児への適用や結果
策室が積極的に動き,院内各部署・保健所と連携し改
の変動等の課題も含め結核病学会予防委員会で精査
善策を取り,実施率向上という成果を得た。
中。年内に公表予定。
西神戸医療センター看護部の北川恵氏は,結核発症
国立病院機構南京都病院小児科の徳永修氏は小児
のリスク要因に栄養不良があり発症によりさらに栄養
結核感染診断におけるIGRAの有用性と限界につい
不良に傾くため,院内連携により栄養サポートチーム
て報告。IGRAは乳幼児を含む小児結核の発病例で
が介入した成果を報告。また,患者背景に食生活の問
は成人と同様に高い陽性頻度を示し,接触者健診例
題があることが多いため,院外連携の必要性とそのた
やコッホ現象例の結核感染診断に積極的に適用すべ
めのDOTSカンファレンスの活用を示唆した。
き。一方,低年齢小児の未発病感染例においては感
横浜市生活福祉部の横山翔太氏は簡易宿泊所の密集
度不良の可能性があり,特にIGRA陰性例の扱いは
地である寿地区におけるDOTS支援について報告。多
要注意。感染判断では,小児結核の特性(感染後の
職種チームで服薬を継続しやすい環境を整えるという
高発病率,早期発病,易重症化)を考慮し,IGRA・
共通視点で生活全般について考える住民支援ができて
ツ反結果,結核発病リスクを総合的に検討すること
いる。
が重要。
く発行の接触者健診の手引き(改訂第 5 版)につい
おわりに
結核罹患率の低下に向けてIGRAを活用したより積
て報告。主な変更点は,①複数のIGRAが普及して
極的な接触者健診の実施体制をとる方向性が示され
いる現状を踏まえた内容になる,②更に積極的な
た。結核感染症の地域連携パスは罹患率が減少してい
IGRAの活用を推奨(健診対象者が乳幼児の場合は
く中で必要な医療体制を確保するためのツールとして
IGRAとツ反の同時実施,高感染率集団にはIGRA再
他の疾患パスとは異なる役割があると考える。多職種
検査の実施など)③感染性期間の始期の推定方法,
連携により結核対策の枠組みの中で何ができるかはそ
④結核菌の分子疫学調査の推進。
れぞれの地域で多様な可能性があり,結核を切り口に
山形県健康福祉部・衛生研究所の阿彦忠之氏は近
3 国立病院機構東広島医療センターの重藤えり子氏
は,適正な結核治療の完遂のため結核医療体制の役
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枠組みを超えて健康な地域づくりへ活動展開できると
考える。
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