本邦各地の無降水継続日数の - 日本気象学会

55ヱ.577。22(52)’55ヱ.579
本邦各地の無降水継続日数の
RetumPeriodについて
正 務
章*,待 井 一 男**
1.1ましカζき
季の場合にも同様に取扱うことにする.
利水計画のように低水流量と関連の深い計画問題など
(iii)統計期問と解析した地点数:解析する地点は原
専こは,“一体,問題としている地域ではどれ位の期間引
則として1898年から1954年までの基礎資料がそろってい
続いて雨が降らないことがあるだろうか”というような
る所と’した.したがって観測期間がこれにみたない所は
いわゆる確率無降水継続日数とか,そのretum period
一応除外したが,特に地理的分布を調べるのに必要な岬
とかが基礎的な知織の一つとして知りたいことがあろ
などを含む十数地点ではそれぞれの観測開始年からの資
う.われわれはかような時の一助にでもなればと思い,
料について調査した.こうして実際に解析を行った地点
本邦の主要地点における夏季と冬季の無降水継続日数の
は総数72カ所である,
度数を調べ,簡略な度数解析法(1)を拡張して,種々の
retum periodに対する確率継続日数の地理的分布図を
5.解 析 法
作成’し,.そして本邦におけるその地域性などを明らかに
(i)無降水継続日数の度数分布とその正規化:確率無
しようとした.
降水継続日数,あるいは指定された日数に対応する
2.基礎資料
解析の基礎資料となる各地の夏季と冬季における無降
retum periodを推定する問題では,結局その度数分布
曲線の形を決定し,さらにそれをいかにして未経験域ま
で合理的に外挿するかということが問題になってくる.
水継続日数の日数別度数を求めるにあたって,われわれ
そして変量が正規型分布をするか,または適当な変数変
はまず次のような約束に従い,気象庁月報からすべての
換によって旨く正規化出来る時は,それ相応の確率紙を
資料を集めた.
(i)無降水継続目数の定義:無降水継続日数は降水が
用いてその上に度数をプロヅトすると,これらは直線状
に並ぶ.したがって実測点に当てはまる度数曲線の決定
なかった日,または降水があってもその日量が0.1mm
はもちろん,比較的客観的な外挿も容易となり簡略に取
に達’しなかった日が引続いているときの日数とする.た
扱い得るようになる.
だし.特に0.1mm以上の降水日の翌日では,たとえ日量
さて前節の約束に従って得られた各地の無降水継続日
が0・1mmに達qしなくとも降水現象さえあれば,その日
数のヒストグラムを画いてみると,いずれも逆J字型か
は降水日数の方に数え,反対に無降水日の後に連なって
それに近い顕著な非対称分布をしており,丁度日降水量
いる場合は,日量が0.1mmに達しない限り,降水現象
の度数分布などにみられるものと同型で,このままでは
があっても無降水日どして数えることにする.
取扱いにくい(第1図参照)・そこでわれわれは横軸を対
(ii) 調査季節とその始終期における継続目数の決め
数目盛,等間隔目盛,平方根目盛,立方根目盛,……など
方:7∼8月を夏季と『し,1∼2月を冬季とする.そ’し
に目盛った種々の確率紙を作り,これらの上にそれぞれ
て両季節に現われた無降水継続日数を一つ一つ決定’し
の累積相対度数をプロットして,それら分布の直線性の
て,それらの日数別の度数を調べる.その時無降水日が
優劣によっていかなる変数変換によるのが非対称性を取
6月より続き始めて7月まで連なっている場合や,8月
除く手段として一番優れているかを調べてみた.本邦各
から9月まで連続しているような時はいずれも夏季に含
地の資料について一つ一つ検討して得られた最適な変換
まれる一続きの継続日数として算入することに『した.冬
法は第1表の通りで,立方根変換が最も効果的である地
* 東京管区気象台調査課
**松本測候所
点が断然多くなっている.しかし無降水継続日数の度数
コ
分布が立方根正規型に従わねばならぬという確実な理由
102
日本気象学会創立75周年記念論文集(和文編)
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第1図(a) 各種確率紙上での無降水継続日数の度数分布例を示す図・括孤内の数はdataの数.
挿入の図は同じdataを等問隔のヒストグラムで示したもの
105
本邦各地の無降水継続日数のRetum Perio4について
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第1図(a) に同じ。
第1表 目本各地における無降水継続日数の累積度数分布を確率紙上で直線化するため変数変換法の度数
「\\_ 方法
季節
夏
冬
対数変換
t l l
算術変換
平方根変換
0
3
1
立方根変換
1
4乗根変換 5乗根変換
総 数
56
7
5
72
56
4
6
72
は今のところ見当らない.したがって少数ながら実在す
に無降水継続日致が刀になるか,またはζれ以上になる
るこれ以外の根あるいは対数による正規化の手段を実用
確率をFとすると・一般にE亙Tpの間には次式の
していけないという理由もないであろう・これら各分布
関係が昂ると考えられる;
型のいくつかを例示したのが第1図で・同図中には参考
1
F≡一 …も・一…一・・……………①
のため同じ資料に基いたヒストグラムも挿入してある・
2V・Tp
次にか》る正規化法の地理的分布(第2図参照)をみ
したがって前項のようにして実灘点の分布を旨く直線
ると,夏季のものには特に指摘するような地域性は認め
状にする最適の確率紙を選ぴ,その上で実測点を満足さ
られない.’しかし冬季のものには?関東から山梨の地域
すように決定して外挿レた度数分布曲線とこの(1)式と
にかけて5乗根正規型や4乗根正規型のような高次の根
を併用すると,Tpを与えれば簡単にそれに対する確率
によって旨く変換出来る地点が集中しているのが特に目
無降水継続日数が得られ,また継続日数が指定されれば
につくように思われる.
(ii) 度数解析の簡略法とその適用結果:今1単位季
かような簡略法を用いて・夏季ξ冬季の本邦各地にお
節中の無降水繊続日数の平均出現度歎を罵ある無降水
継続日数(%)に対するretum periodをTp年・該季節
それに応ずるretum periodも推定出来る.
ける種々のretum period(20・50・100・200年)に対
する確率無降水継続日数を求めた結果が第2表である.
喰04
日本気象学会創立75周年記念論文集(和文編),
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第2図 無降水継続日数の度数分布の正規化法の地理的分布乙
◎,資,○,@,×,△は夫々対数,算術,平方根,立方根,4乗根,5乗根変換を示す
夏
冬
return perio(1
retumper童od
第2表本邦各地の確率無降水継続日数
観測所
観測所
冬
夏
retumperiod retumperiod
(年)
(年)
稚内
網走
旭川
根室
札幌
帯広
釧路
寿都
浦河
函館
青森
秋田
盛岡
宮古
水沢
石巻
山形
福島
小名浜
新潟
高田
伏木
輪島
金沢
福井
18
15
22 25 28
1938∼1954
5 106 117 138 1898一)1954
7 11 12
8 179 19 21 1899∼1954
1898∼1954
10
8
6
9
〃
19 22 25 27
11
18 21 23
21 24 27
13 15 16 14
18
22 25 27
11
14
18
9 11
19 22
18
16
16
12
18
13
25 28
25 30 36
19 22 24
21 24 26
20 24 27 30
17
14
17
15
14
16
14
17
21
17
19
21
20 23 25
18 20 22
17
19
21
20 22 24
22 25 27 1898∼1954
6 7 8 /ク
5
1927∼1954
8 10 11 12
7 8 9 10 1898∼1954
4 5 6 7 /ク 4 5 116 127 /ク
1924∼1954
8 9
20 24 27 30 1898∼1954
8 10 12 13 1907∼1952
15 18 20 22 1898∼1954
5 6 7 8 ノク
12 14 16 17
19 21
ノグ
20 23 25 22 26 30 32 1911∼1954
25 28 31 3 4 5 5 1898∼1954
17
20 25 29 33
24 26 29
18 21 24 26
20 24 27 30
19 22 25 27
・20
1899∼1654
19
3
4
3
4
4
3
5
4
4
5
4
5
5
5
6
4 1923∼1954
6 1898∼1954
5 1930∼1954
6 1898∼1954
6 ノク
(年)
統計期間
20 50 100 200 20 50 100 200
統計期間
20 50 100 200 20 50 100 200
(年)
宇都宮
11
前橋
水戸
熊谷
銚子
東京
横浜
富崎
長野
松本
飯田
甲府
沼津
浜松
高山
岐阜
名古屋
13
15
14
津
彦根
京都
八木
大阪
和歌山
潮岬
神戸
豊岡
境
13
15
18
16
15
17
27
34
21 23 26
18 20 39
23 28 32 35 17
32
48
20
22 25
20 24 27
27 34 39
19 23 26
17 20 23
19 23 27
16
18
16
19
27
30
44
29
26
30
32
41
31 37
28 34
17 20 22.24 1922∼1954
7 188
15
14
15
17 19 21 36 45
20 24 29 32 23 28
20 24 27 30 22 26
14
17
19
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21
21
24
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30
34
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29
32
24
25
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17 20
18 22
21 26
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18
21
22 2Z
18
21
26
32
34
39
25
27
32
35
26
31 34
21 24 27
28 35 41 46
3640 1898∼1954
4753 /ク
3742 ノグ
5663 ノク
2325 〃
4349 /ク
3944 〃
5 6
13
16
15
18
20 25
6 137
11
13
15
22 28
14
19
18
17
22
23
4 4
4 5
99 1898∼1954
2123
1820 〃
!ク
5285 〃
3253 !ク
3033 ノク
67
1900∼1954
1719 1898∼1954
2022 !ク
2932 ノク
78 /ク
ノグ
1517
1719
3338
1921
1898∼1953
1898∼1954
ノク
1913∼1954
2527
2732 .1898∼1954
56
1・925∼1954
55’ 1898∼1954
本邦各地の無降水継続日数のRetum Periodについて
105
(1942年),宮崎;34日(1942年)。
夏
観測所
冬
(b)冬季:一札幌;12日(1907年),宮古132日(1930
retumperiod retumperiod
(年)
(年)
統計期間
20 50 100 200 20 50 100 200
浜 田
岡 山
呉
広 島
多度津
徳 島
松 山
21
25
30
23
27
23
22
高知
16
室戸岬
21
21
清
水
下
厳
福
佐
大
長
能
宮
関
原
ノヤヤヤ
岡
賀
分
崎
本
崎
鹿児島
名 瀬
24 26
31 35
37 42
27 31
33 38
28 32
27 31
20 23
26
26
24 29
21 25
18
17
22・
20
20 24
19 23
17 20
18 22
16
13
28
39
47
34
42
35
34
25
30 34
31 35
33 37
29 32
25 27
22 24
28 31
26 29
23 25
25 28
5
23
21
17
17
16
14
24
18
19
10
17
10
14
17
19
273134
252831
202326
202326
192123
161820
29』32・35
原128日(1918年),佐賀;23日(1940年),熊本;25日(1918
1898∼1954
10
15
21
/ク
/ク
ノク
ノク
〃
13 14 1899∼1954
20 23 25 1898∼1954
17
13
19
14
12
17
14
15
20 22
25 28 31
12
13
14
4.確率無降水継続目数の地域牲と季節変化
〃
11
11
年),宮崎132日(1918年).
、〃
22 24 27 1921∼1954
22 25 28 1931∼1954
21
22 26 29 32
20 23 25 10
15
6 6 7
年),高田15日(1948年),津145日(1945年),大阪148日
1945年)・神戸;46日(1945年)・岡山;41日(1945年),厳〉
前節の解析結果に基いて季節別に種々の retum pe−
riod の確率継続日数の地理的分布図を画くと第3図及
び第4図のようになる.
まず第3図に示『した夏季の地理的分布をみると次のよ
!ク
〃
〃
〃
ノク
うな点が注意されよう.
(a)夏季における地域差は冬季のものに比べると顕
薯でない.
/ク
(b)無降水継続日数の最も長い地域は,瀬戸内海中
ノク
5 6 7 8 1899∼1940
部沿岸域より山陰中部の地域を中心とした中国・四国地
方である.これについで房総半島を中心域とし,関東沿
海部から東海地方に拡がる地域および北陸地方北部より
これらの結果は経験値のrecurrence interva1,その他
東北地方の日本海沿岸部にわたる地域で長い.
と比較検討’したところではだいたい妥当な数値となって
かかる夏季における特性に比べ,第4図に示した冬の
いる所が多いように思われる.しかし冬季一般に無降水
状態はかなり対しょう的である.すなわち,
継続期間の短い裏日本各地におけるこの種の解析には,
(a)裏日本と表日本との差は著しく,中でも日本列
ここで用いたような日単位のあらい標本では不充分で,
島の中央部でその対比が極めて顕薯である.また同じ太
もっと良質の資料によってこまかに求めることが必要で
平洋側の地方でもかなりの地域差がみられる.
あろう.また統計期間中に経験された無降水継続日数を
(b)関東内陸部より山梨地方に拡がる地域を中心と
その長さ順に並べた表と第2表を比較するとき,この解
析結果から統計期間に予期される継続日数よりも,極め
の地方に連なる沿海の千葉県の太平洋沿岸域ではずっと
てretum periodの長い極値の現われている地点がいく
継続期間が短くなっているのは面白い.また関東内陸部
して冬季極端に無降水の続く特性がみられる.しかしこ
つか存在しているのも特に目につく.そしてかかる場合
には及ばないが,瀬戸内海沿岸域や四国南岸地方および
の極値はその順位表でみると一般にそこの第2位の経験
九州東部にも乾燥域が拡がっている.
値などよりとびはなれて長いことの多いのが注目され
(c) 一般に季節風に対する山脈の風上側の地域で確
る.したがってこの極値のような値こそいわゆるそこに
率無降水継続日数は短く,風下地方で長い傾向がよくう
おける“異常無降水継続日数”と呼んでしかるべきもの
かがわれる.すなわちこれらの分布は,当然ながら冬の
と考える.
地形性降水の分布と全く対しょう的になっており,季節
この統計期間にかような異常継続日数が現われた地点
風気候に及ぼす地形効果の地域性がよく現われているよ
は次のような所で,ある程度地域的にも時期的にもまと
うに、思、われる.
まって現われている傾向がみえるようである.
次に同じretum period.に対する夏と冬の確率継続
(a)夏季:.一網走1.24日(1928年),青森133日(1928
日数の地理的分布図を地べてみると,夏に長い地域と冬
年),秋田134日(1928年),輪島;27日(1945年),前橋125
日(1904年),飯田131日(1909年),名古屋;35日(1909年),
に長続きするところとがある.これは例えばretum
period5α年の冬季における継続日数に対する同じ
浜田;30日(1923年),松山135日(1923年),大分134日
retum periodの夏季における継続日数の比(α)の分
日本気象学会創立75周年記念論文集(和文編)
106
一
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勿敵
愛
欝
ぱノフ
鋤
Sゐoγ¢
,5α耽彿eγ
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ひ ノえド
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儲
1,心 磁一
L・20 尺P=ノ00γ臥
の
δ湯 ・5聯
R.ρ:200γ流
第3図 夏季の確率無降水継続日数の地理的分布
布図(第5図参照)を作るとよくわかる.すなわち
また夏季における本邦第一の早天継続域である瀬戸内
魂>1の地域は一般に冬季より夏季に早天が続くところ
であり,α<1の地域では冬の方が夏より無降水日が長
続きする。前者の中心域は北陸より山陰東部にわたる裏
海中部沿岸地方における夏・冬の確率継続日数の較差
日本気咲区の中央部で,後者は山梨より関東内陸部に拡
がる地域を中心とし,さらに東北地方の太平洋岸から北
海道南東部につづく帯状の地域にまとまっている.
と,冬季における早天の最大継続域である関東内陸部の
それとを比較すると後者の方ではるかに大ぎくなつでお
り,顕著な季節変化をしている.
本邦各地の無降水継続日数のRetum Periodについて
107
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¥ w乙磁εγ
57砂 R.ρ・3100γη
ρ
勿
\
w乙冠θγ ’
58ρ 船2・0γ流
第4図 冬季の確率無降水継続日数の地理的分布
5.要 約
判った.しかし少数とはいえ,これ以外の根または対数
変換の方がより有効である地点も実在している.
.以上の調査結果を要約すると次のとおりである.
(i)本邦各地の無降水継続日数の度数分布は逆J字型,
(ii)かかる変数変換による正規化性を利用して,適
当な確率紙上でその度数曲線を直線化して確定し,さら
またはそれ礁近いいちじるしい非対称分布をする.そし
にそれを未経験域までgraphica1に外挿したものと(1)
て継続日数の立方根変換を行えば,本邦の大多数の地点
式とを併用qして簡略に無降水継続日数の度数解析を行っ
においては,この非対称性は効果的に取除かれることが
た.
108
日本気象学会創立75周年記念論文集(和文編)
(iii)本邦の72地点について解析した結果に基き,
窃O
aワ 2ゆ
驚辮
retum period20,50,100,200年に対する夏と冬の確
率無降水継続日数の地理的分布図を作製した.
(iv)そしてその地域性と季節変化の模様を明らかに
穿 ’ ノ
尻 ノ
した.
艦聾
参 考 交 献
(1)正務章・草間宗三,1955:松本の確率雨量につい
て,研究時報,7.No.5.
鴫㌦ .
緬\,
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第5図 係数α(冬季の確率無降水継続日
数と夏季のそれとの比)の地理的分布。