2P2-31-038 人の特性を考慮した神経振動子による 倒立振子の動的安定化 Dynamic Stabilization of Inverted Pendulum by Neural Oscillator Considering Characteristics of Human 正 佐野明人 (名工大) 正 藤本英雄 (名工大) 水野文雄 (名工大) Akihito SANO, Hideo FUJIMOTO and Fumio MIZUNO Nagoya Institute of Technorogy, Nagoya, Aichi Key Word: Motor Skill, Inverted Pendulum, Neural Oscillator, Dynamic Stabilization 1 ui τ, τ w u0 はじめに モータスキルは運動技能であり,その性格上,暗黙知的 な側面が強く,本質的な意味での解明には時間を要する子 (1) .本研究では ,倒立振子の 安定化をタスクとし ,人に よる制御特性が , リズミカルな側面を有することに注目し て,神経振動子(2)による動的安定化を提案する.そし て, 得られた安定化特性が ,人間のそれに近いか 検証する. 2 : 膜電位 : 時定数 : 結合係数 : 持続入力 z1 = f1 max(0, θ) + f2 max(0, x˙ p ) z2 = −f1 min(0, θ) − f2 min(0, x˙ p ) ˙ + x˙ x˙ p = aθcosθ (9) (10) (11) f1 , f2 : フィード バック係数 x˙ p : 振子とスライダ の仮想的なジョイントから a の距離にある振子上の点の絶対速度 . NF いずれの場合も,神経ユニットに 興奮性の結合をさせる. また,a = 0.67 とした.これは ,撃力中心の位置に対応す る.Table 1 に神経振動子の諸元を示し ておく. 表 1: Values of parameters of neural oscillator . N K : 疲労度を表す変数 : 出力 : 疲労度係数 : 感覚情報フィード バック 感覚情報フィード バック シミュレーションモデル O νi yi β z1 ,z2 K Neural Oscillator O τ w u0 f1 excitatory inhibitory Fig.1: Neural ocillator / inverted pendulum system 図 1を提案する制御系とし ,関係する式を以下に示す. 3 3.1 0.08 0.865 10 600 τ β 0.22 2.5 f2 220 シミュレーション解析 動的安定化 0.6 倒立振子+スライダ 0.4 M m J x θ F : スライダ の質量 : 振子の質量 : 振子の慣性モー メント : スライダ の位置 : 振子の角度 : 操作力 Q l c x˙ θ˙ g (1) 0.2 θ [rad/s] (M + m)¨ x + Qx˙ + mlcosθθ¨ − mlsinθθ˙ = F 2 ¨ x=0 (J + ml )θ + cθ˙ − mglsinθ + mlcosθ¨ (2) 0 . −0.2 : スラ イダ の粘性摩擦係数 : 振子の重心までの距離 : 軸の粘性摩擦係数 : スラ イダ の速度 : 振子の角速度 : 重力加速度 −0.4 −0.1 −0.05 0 θ [rad] 0.05 0.1 Fig.2: Pendulum trajectory in phase space (Neural oscillator) 神経振動子 τ u˙ 1 = −u1 − wy2 − βν1 + u0 + z1 τ u˙ 2 = −u2 − wy1 − βν2 + u0 + z2 (3) (4) τ ν˙ 1 = −ν1 + y1 (5) τ ν˙ 2 = −ν2 + y2 (6) yi = f (ui ) f (ui ) = max(0, ui ) (i = 1, 2) (7) F = y1 − y2 (8) 本節では ,動的安定化に 関するシ ミュレ ーション 結果 を示す.初期条件に 関し ては θ = 0.035 rad 以外はすべて 0 とし た.まず,図 2に 位相面を示す.図からわか るよ う に ,きれ いな リミットサイクルに引き込まれている.図 3 に 示し た 人の 場合と 比較し てみると ,動作レンジ とし て は 近い挙動となっている.また ,図 4に 操作力 F (実線) と 角度θ(破線) の時間変化を示し た .この図から ,周期は 約 0.75s(1.3Hz) であり,ゲ イン (θ → F ) は 53.5dB,位相遅れ は 23.5 °であることがわかる. 日本機械学会[No.00-2]ロボティクス・メカトロニクス講演会’00講演論文集 [2000.5.12∼13,熊本] 2P2-31-038(1) 0.6 . h [m] θ [rad/s] 0.4 0.2 0 −0.2 −0.4 −0.6 −0.1 −0.05 0 θ [rad] 0.05 1.2 1 0.8 0.6 0.4 0.2 0 0 0.2 0.4 0.6 a [m] 0.8 1 1.2 0.1 Fig.6: Center of rotation Fig.3: Pendulum trajectory in phase space (Manual control by human) 0.6 0.1 15 0.05 0 0 −15 0.2 θ [rad/s] 30 −0.2 −0.4 −0.05 −30 14 15 Time [sec] 0 . θ [rad] Force [N] 0.4 −0.1 16 −0.1 0 θ [rad] 0.05 0.1 Fig.7: Pendulum trajectory in phase space Fig.4: Variations of force and angle (Disturbance: Fd =15N) (3) .そこには,遅れ ,サンプ リングレート,閾値など の特 性が考えられる.図 8に一例とし て,感覚情報のサンプ リ ングレートが 30Hz になった場合について,シミュレーショ ン 結果を示す.図からわかるように ,図 2よりも図 3の挙 動に近くなっている. 0.6 0.4 0.2 θ [rad/s] 次に ,図 5に 安定化の 様子を スティック線図で 示し た . ただし ,振子に 付いて いる○印は ,撃力中心の位 置を 示 し ている.感覚フィード バック情報が撃力中心の絶対速度 の水平成分であるにもかかわらず,回転中心はやや上方と なっている.そこで ,式 (11) に示し た長さ a を変えながら シ ミュレ ーション を行い,振子の回転中心を 求めてみる. ただし ,固定された回転中心は存在しないので,x 方向の 移動量が最も少ない点を見かけ上の回転中心と定義し ,そ の点の仮想ジョイントからの距離を h とする.得られた結 果を図 6に 示す.ただし ,フィード バックの点の位置を振 子先端の上方にも設定したので ,a の値が 1.2m までとなっ ている.まず,a が 0.6m 以下の場合は 安定化ができない. また ,a が 0.75m 近辺でフィード バックの点と見かけの回 転中心がほぼ 一致し ている. −0.05 0 . −0.2 −0.4 −0.1 −0.05 0 θ [rad] 0.05 0.1 Fig.8: Pendulum trajectory in phase space (Sampling rate of θ, x˙ p : 30Hz) 4 Fig.5: Stick diagram 図中の×印は ,人間の場合の結果である.実験では ,a の位置にマーカーを付け,意識的にそこを見るようにして 安定化を行った.図からわかることは ,人間の場合,回転 中心がほぼ 振子の先端付近にあり,神経振動子の場合より 高い位置にある.さらに ,a が 0.7m の 辺りまで 下が ると , 非常に立て難くなる. ここで ,周期アト ラクタの 安定性を 検証する .シ ミュ レ ーションでは ,引き込みが行われ定常状態になった時点 で ,15N の外乱を 0.15 秒間スライダに印加する.図 7に結 果を示す.ここで ,印加前を破線で ,印加後を実線で表し た.図からわかるように,外乱に対してのロバスト性が確 認でき,復帰後の軌道は ,元の閉軌道に一致し ている. 2 章で述べた感覚情報 θ ,x˙ pを人間がど のように得てい るかは ,本来,人間の感覚・知覚特性を考慮すべきである 結論 人のリズミカルな安定化動作に 着目し ,神経振動子を 用いた 動的安定化を 実現し た .得られ た 特性は ,いくつ かの点で人の場合と類似性があることがわかった.これに より,神経振動子によるリズム生成ならびに引き込み現象 が ,人間の制 御特性 (内部モデ ル ) をモデ ル 化で きる可能 性があり,モータスキルを解くカギになるのではと考えて いる. 参考文献 (1) 佐野明人, 藤本英雄, 松下和慶: “コーチング に よる モータスキルの伝達 ”, ロボティクス・メカトロニクス 講演会’99 講演論文集, CD-ROM, 1A1-73-103(1),(2) 1999. (2) G. Taga, Y. Yamaguchi and H. Shimizu: “Selforganized Control of Bipedal Locomotion by Neural OscBiological Cybernetics, Vol.65, pp.147–159 1991. (3) 大山正,今井省吾, 和気典二 編: “新編 感覚・知覚心 理学ハンド ブック,”, 誠信書房, 1994. 日本機械学会[No.00-2]ロボティクス・メカトロニクス講演会’00講演論文集 [2000.5.12∼13,熊本] 2P2-31-038(2)
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