ジェネンテック事件の一判例①

ジェネンテック事件の一判例 ①
−大阪高裁平成8年3月29
−大阪高裁平成8年3月
29日−
日− 1
【判決文】
メインメニュー
メインメニュー
現代法サブメニュ
現代法
サブメニュー
ー
◆ジェネンテック事件①の物件目録
◆ジェネンテック事件②
◆ジェネンテック事件②の物件目録
◆ジェネンテック特許発明明細書等
−平成6年 (ネ)第3293号判決−
−平成6年(ネ)
第3293号判決−(原審
(原審:
: 大阪地方裁判所 平成元年
大阪地方裁判所 平成元年(ヨ)
(ヨ)第2888号)
第2888号)
大阪高等裁判所 平成8年3月29日
控訴人 : ジェネンテック
控訴人 :
ジェネンテック・
・ インコーポレイテッド
被控訴人:
被控訴人
: Y1製薬株式会社
【主文】
一 原判決を取り消す。
二 当裁判所は、 控訴人が被控訴人に対して、控訴人に本判決が送達された日から1か月以内に1
二 当裁判所は、控訴人が被控訴人に対して、
控訴人に本判決が送達された日から1か月以内に1
億円の担保を立てることを条件に、次のとおり命じる。
億円の担保を立てることを条件に、
次のとおり命じる。
1 被控訴人は、別紙目録一記載の形質転換されているチャイニーズ
1 被控訴人は、
別紙目録一記載の形質転換されているチャイニーズ・
・ハムスター卵巣細胞を用い
て組換ヒト組織プラスミノーゲン活性化因子を製造してはならない。
2 被控訴人は、
2 被控訴人は、別紙目録二記載の組換ヒト組織プラスミノーゲン活性化因子を製造し、
別紙目録二記載の組換ヒト組織プラスミノーゲン活性化因子を製造し、販売し、
販売し、
販売のために宣伝、広告してはならない。
販売のために宣伝、
広告してはならない。
3 被控訴人は、別紙目録三記載の方法を用いて同目録記載の組換ヒト組織プラスミノーゲン活性
3 被控訴人は、
別紙目録三記載の方法を用いて同目録記載の組換ヒト組織プラスミノーゲン活性
化因子を製造し、販売し、
化因子を製造し、
販売し、販売のための宣伝、
販売のための宣伝、広告してはならない。
広告してはならない。
4 被控訴人は、別紙目録四記載の粉末状注射用製剤を製造し、
4 被控訴人は、
別紙目録四記載の粉末状注射用製剤を製造し、販売し、
販売し、販売のために宣伝、
販売のために宣伝、広告
広告
してはならない。
5 被控訴人の占有する別紙目録一記載の形質転換されているチャイニーズ・
5 被控訴人の占有する別紙目録一記載の形質転換されているチャイニーズ
・ハムスター卵巣細胞、
同目録二記載の組換ヒト組織プラスミノーゲン活性化因子及び同目録四記載の粉末状注射用製剤
に対する被控訴人の占有を解いて、これを控訴人の委任する管轄地方裁判所所属の執行官の保管
に対する被控訴人の占有を解いて、
これを控訴人の委任する管轄地方裁判所所属の執行官の保管
に移す。
三 訴訟費用は、第一、
三 訴訟費用は、
第一、二審を通じ、
二審を通じ、被控訴人の負担とする。
被控訴人の負担とする。
【事実及び理由】
一 控訴人は主文同旨の判決を求め、
控訴人は主文同旨の判決を求め、被控訴人は控訴棄却の判決を求めた。
被控訴人は控訴棄却の判決を求めた。
二 本件記録によれば、
二 本件記録によれば、以下の事実が一応認められる。
以下の事実が一応認められる。
1 控訴人は、
控訴人は、次のA特許権とB特許権を育する。
次のA特許権とB特許権を育する。
(A特許権)
○発明の名称
○発明の名称 組換ヒト組織プラスミノーゲン活性化因子
組換ヒト組織プラスミノーゲン活性化因子
○出願日
○出願日 昭和58年5月6日
昭和58年5月6日(特願昭58−79205)
(特願昭58−79205)
○優先権主張
○優先権主張 ①1982年
①1982年(昭和57年)
(昭和57年)5月5日
5月5日
米国特許出願374860号
②1982年(昭和57年)
②1982年
(昭和57年)7月14日
7月14日
米国特許出願398003号
③1983年(昭和58年)
③1983年
(昭和58年)4月7日
4月7日
米国特許出願483052号
−木村友久研究室−
ジェネンテック事件の一判例 ①
−大阪高裁平成8年3月29
−大阪高裁平成8年3月
29日−
日− 2
の各アメリカ合衆国特許出願に基づく優先権主張。
○特許登録日
○特許登録日 平成3年1月31日
平成3年1月31日
○登録番号
○登録番号 第1599082号
第1599082号
○特許請求の範囲
○特許請求の範囲
「一
「 一 ヒト細胞以外の宿主細胞が産生する、
ヒト細胞以外の宿主細胞が産生する、以下の特性
以下の特性:
:
1 プラスミノーゲンをプラスミンに変換する触媒能を有する
2 フィブリン結合能を育する
3 ボーズ(Bowes)
3 ボーズ
(Bowes)メラノーマ細胞由来のヒト組織プラスミノーゲン活性化因子に対
メラノーマ細胞由来のヒト組織プラスミノーゲン活性化因子に対
する抗体に免疫反応を示す
4 クリングル領域およびセリンプロテアーゼ領域を構成するアミノ酸配列を含有する
5 一本鎖または二本鎖タンパクとして存在し得るを有する、
5 一本鎖または二本鎖タンパクとして存在し得るを有する、ヒト由来の他のタンパクを含
ヒト由来の他のタンパクを含
有しない組換ヒト組織プラスミノーゲン活性化因子であって、以下の部分的アミノ酸配
有しない組換ヒト組織プラスミノーゲン活性化因子であって、
以下の部分的アミノ酸配
列を含んでいる活性因子:
列を含んでいる活性因子
:(注)
(注)特許請求の範囲には、
(注)特許請求の範囲には、ここに右の
ここに右の「以下の」
「以下の」に対応する原判決別紙目録六の69番か
に対応する原判決別紙目録六の69番か
ら527番までのとおりのアミノ酸配列が記載されている。
二
二 ヒト組織プラスミノーゲン活性化因子をコードしているDNAで形質転換されたヒト細
胞以外の宿主細胞を、該DNAの発現可能な条件下で培養して、
胞以外の宿主細胞を、
該DNAの発現可能な条件下で培養して、以下の特性
以下の特性:
:
1 プラスミノーゲンをプラスミンに変換する触媒能を有する
2 フィブリン結合能を有する
3 ボーズ(Bowes)
3 ボーズ
(Bowes)メラノーマ細胞由来のヒト組織プラスミノーゲン活性化因子に対
メラノーマ細胞由来のヒト組織プラスミノーゲン活性化因子に対
する抗体に免疫反応を示す
4 クリングル領域およびセリンプロテアーゼ領域を構成するアミノ酸配列を含有する
5 一本鎖または二本鎖タンパクとして存在し得るを有し、以下の部分的アミノ酸配列
5 一本鎖または二本鎖タンパクとして存在し得るを有し、
以下の部分的アミノ酸配列:
:
(注)特許請求の範囲には、
(注)特許請求の範囲には、ここに右の
ここに右の「以下の」
「以下の」に対応する原判決別紙目録六の69番か
に対応する原判決別紙目録六の69番か
ら527番までのとおりのアミノ酸配列が記載されている。
を含んでいる組換ヒト組織プラスミノーゲン活性化因子を産生させ、次いで該組換ヒト組織
を含んでいる組換ヒト組織プラスミノーゲン活性化因子を産生させ、
次いで該組換ヒト組織
プラスミノーゲン活性化因子を回収することを特徴とする、ヒト由来の他のタンパクを含有し
プラスミノーゲン活性化因子を回収することを特徴とする、
ヒト由来の他のタンパクを含有し
ない組換ヒト組織プラスミノーゲン活性化因子の製造方法。
三
三 ヒト細胞以外の宿主細胞が産生する、
ヒト細胞以外の宿主細胞が産生する、以下の特性
以下の特性:
:
1 プラスミノーゲンをプラスミンに変換する触媒能を有する
2 フィブリン結合能を有する
3 ボーズ(Bowes)
3 ボーズ
(Bowes)メラノーマ細胞由来のヒト組織プラスミノーゲン活性化因子に対
メラノーマ細胞由来のヒト組織プラスミノーゲン活性化因子に対
する抗体に免疫反応を示す
4 クリングル領域およびセリンプロテアーゼ領域を構成するアミノ酸配列を含有する
5 一本鎖または二本鎖タンパクとして存在し得るを有し、
5 一本鎖または二本鎖タンパクとして存在し得るを有し、以下の部分的アミノ酸配列
以下の部分的アミノ酸配列:
:
(注)特許請求の範囲には、
(注)特許請求の範囲には、ここに右の
ここに右の「以下の」
「以下の」に対応する原判決別紙目録六の69番か
に対応する原判決別紙目録六の69番か
ら527番までのとおりのアミノ酸配列が記載されている。
を含み、ヒト由来の他のタンパクを含有しない組換ヒト組織プラスミノーゲン活性化因子の
を含み、
ヒト由来の他のタンパクを含有しない組換ヒト組織プラスミノーゲン活性化因子の
冶療上有効量を、薬剤上許容し得るキャリヤーと混合して含有する血栓症治療剤。
冶療上有効量を、
薬剤上許容し得るキャリヤーと混合して含有する血栓症治療剤。」
(B特許権)
○発明の名称
○発明の名称 ヒト組織プラスミノーゲン活性化因子をコードしているDNAを発現し得る組
ヒト組織プラスミノーゲン活性化因子をコードしているDNAを発現し得る組
換え発現ベクターで形質転換された宿主細胞
○出願日
○出願日 昭和58年5月6日
昭和58年5月6日(特願昭61−185427)
(特願昭61−185427)
(特願昭58−79205の分割出願)
○優先権主張
○優先権主張 A特許権と同じ
A特許権と同じ
○特許登録日 ○特許登録日 平成6年6月21日
平成6年6月21日
○登録番号
○登録番号 第1852721号
第1852721号
○特許請求の範囲
○特許請求の範囲
「形質転換された細菌、酵母または哺乳動物細胞中に於いて、
「形質転換された細菌、酵母または哺乳動物細胞中に於いて、下記のアミノ酸配列1∼527
下記のアミノ酸配列1∼527
を有するヒト組織ブラスミノーゲン活性化因子をコードしているDNAを発現し得る組換え発
−木村友久研究室−
ジェネンテック事件の一判例 ①
−大阪高裁平成8年3月29
−大阪高裁平成8年3月
29日−
日− 3
現ベクターで形質転換された細菌、 酵母または哺乳動物細胞:
現ベクターで形質転換された細菌、酵母または哺乳動物細胞
:」
(注)特許請求の範囲には、
(注)特許請求の範囲には、ここに右の
ここに右の「以下の」
「以下の」に対応する原判決別紙目録六の1番から52
に対応する原判決別紙目録六の1番から52
7番までのとおりのアミノ酸配列が記載されている。
2 被控訴人は、
被控訴人は、英国法人Z1リミテッドから組換DNA技術の導入を受け、
英国法人Z1リミテッドから組換DNA技術の導入を受け、業として別紙目録一
業として別紙目録一
記載の細胞(イ号細胞)を培地で培養して同目録三記載の方法
記載の細胞(イ号細胞)
を培地で培養して同目録三記載の方法(イ号方法)
(イ号方法)を用いて同目録二記
を用いて同目録二記
載の組換組織プラスミノーゲン活性化因子(イ号物件)
載の組換組織プラスミノーゲン活性化因子
(イ号物件)を製造し、
を製造し、これを販売すること及び同目
これを販売すること及び同目
録四記載の血栓症冶療用製剤である粉末状注射用製剤(イ号製剤)
録四記載の血栓症冶療用製剤である粉末状注射用製剤
(イ号製剤)を製造、
を製造、販売することを企図
販売することを企図
して、ST化学工業株式会社の愛媛工場内に動物細胞大量培養タンクを建設し、
して、
ST化学工業株式会社の愛媛工場内に動物細胞大量培養タンクを建設し、組換DNA技術
組換DNA技術
を利用するに当たって医薬品等の晶質及び製造上の安全性を確保するために厚生省の定めた指針
に基づいて、製造に利用する設備、
に基づいて、
製造に利用する設備、装置及びその運営管理方法等
装置及びその運営管理方法等(製造計画)
(製造計画)が該指針に適合し
が該指針に適合し
ていることの確認を厚生大臣に申請し、申請を審議した厚生省中央薬事蕃議会は、
ていることの確認を厚生大臣に申請し、
申請を審議した厚生省中央薬事蕃議会は、厚生大臣に対
厚生大臣に対
して、右確認申請に係る製造計画が右指針に適合する旨の答申を行った。
して、
右確認申請に係る製造計画が右指針に適合する旨の答申を行った。被控訴人が右製造計画
被控訴人が右製造計画
において、製造に利用しようとする設備及び装置は右動物細胞大量培養タンクである。
において、
製造に利用しようとする設備及び装置は右動物細胞大量培養タンクである。被控訴人
被控訴人
は平成7年5月19日、イ号製剤の市販を開始した。
は平成7年5月19日、
イ号製剤の市販を開始した。
3 被控訴人は、
被控訴人は、A,
A,B発明の本件特許権には無効事由があると主張するが、
B発明の本件特許権には無効事由があると主張するが、そのようには認めら
そのようには認めら
れず、被控訴人のt−PAはA、
れず、
被控訴人のt−PAはA、B発明のt−PAと均等のものと一応認められる。
B発明のt−PAと均等のものと一応認められる。
そして、イ号物件がA発明のうち特許請求の範囲一に記載の発明の、
そして、
イ号物件がA発明のうち特許請求の範囲一に記載の発明の、イ号方法がA発明のうち
イ号方法がA発明のうち
特許請求の範囲二に記載の発明の、
特許請求の範囲二に記載の発明の、イ号製剤がA発明のうち特許請求の範囲三に記載の発明の
イ号製剤がA発明のうち特許請求の範囲三に記載の発明の、
、
イ号細胞がB発明の、それぞれ技術的範囲に属するものとすべき他の構成要件の具備については、
イ号細胞がB発明の、
それぞれ技術的範囲に属するものとすべき他の構成要件の具備については、
被控訴人も明らかに争わないものと認められるので、右の各イ号はそれぞれの特許発明の技術的
被控訴人も明らかに争わないものと認められるので、
右の各イ号はそれぞれの特許発明の技術的
範囲に属するものと一応認められる。
なお、被保全権利に関する当裁判所の判断の詳細は、
なお、
被保全権利に関する当裁判所の判断の詳細は、本判決と同日に言い渡した平成6年
本判決と同日に言い渡した平成6年(ネ)
(ネ)
第3292号特許権侵害予防控訴事件の判決に示したとおりである。
4 したがって、
したがって、控訴人の被保全権利は疎明がある。
控訴人の被保全権利は疎明がある。
三 右のとおり、
右のとおり、被控訴人が、
被控訴人が、イ号細胞を培地で培養し、
イ号細胞を培地で培養し、イ号方法を用いてイ号物件を製造、
イ号方法を用いてイ号物件を製造、販売
販売
しようとし、イ号製剤を製造、
しようとし、
イ号製剤を製造、販売していて、
販売していて、これらの被控訴人の行為がA、
これらの被控訴人の行為がA、B発明の特許権を
B発明の特許権を
侵害するものである以上、本件保全の必要性も疎明されているものと認められる。
侵害するものである以上、
本件保全の必要性も疎明されているものと認められる。
四 よって、
よって、本件仮処分申請を却下した原判決を取り消してこれを認容すべく、
本件仮処分申請を却下した原判決を取り消してこれを認容すべく、主文のとおり判決
主文のとおり判決
する。
大阪高等裁判所 第8民事部
裁判長裁判官 上野茂
裁判官 竹原俊一
裁判官 塩月秀平
メインメニュー
メインメニュー
現代法サブメニュ
現代法
サブメニュー
ー
◆ジェネンテック事件①の物件目録
◆ジェネンテック事件②
◆ジェネンテック事件②の物件目録
◆ジェネンテック特許発明明細書等
−木村友久研究室−