京都市における 1,3-ブタジエン,ベンゼン及びホルムアルデヒドの 大気環境モニタリング結果 山本暁人*,三輪真理子*,友膳幸典*,小林博恭*,寺井洋一* Monitoring Results of Hazardous Air Pollutants (HAPs) 1,3-butadiene, Benzene and Formaldehyde in Ambient Air in Kyoto City Akito YAMAMOTO,Mariko MIWA,Yukinori YUZEN,Hiroyasu KOBAYASHI,Yoichi TERAI Abstract Levels of hazardous air pollutants in Kyoto City were monitored from April 1998 until March 2007. During the investigative period, 1,3-butadiene, benzene and formaldehyde tended to show high concentrations near to roadsides. From 2000, the concentrations of both 1,3-butadiene and benzene tended to decrease. This reduction is most likely due to the increased use of low-emission cars and the effect of stricter fuel regulations. The concentrations of formaldehyde however did not show a similar decrease. The levels of benzene in the locations where atmospheric levels of benzene were not directly measured, were estimated in the following. These were obtained through stepwise regression analysis using concentrations of the air pollutants Nitrogen Oxides (NOx), Nitric Oxide (NO), Nitrogen Dioxide (NO2), Carbon Monoxide (CO) and Non Methane Hydrocarbons (NMHC) obtained from the roadside air monitoring stations. This analysis suggested that concentrations of benzene decreased at all points across the city. As a future study, we would like to estimate more precisely the levels of benzene and other pollutants at both monitoring and non-monitoring locations. Key Words: 有害大気汚染物質 Hazardous Air Pollutants,揮発性有機化合物 Volatile Organic Compounds,自動車排出ガス Automobile Exhaust Gas,変数選択-重回帰分析 Stepwise Regression Analysis あり方に関する検討会」(2)では,2000 年度におけるモニ 1 はじめに 大気汚染防止法第 2 条第 3 項「継続的に摂取されてい タリングデータを用いて地域分類間の平均値の差を検定 る場合には人の健康を損なうおそれがある物質で大気の している。VOC(揮発性有機化合物)では 3 物質(1,3-ブ 汚染の原因となるもの」に該当する可能性がある物質中 タジエン,ベンゼン,ホルムアルデヒド)が沿道と一般環 で,有害性の程度や我が国の大気環境の状況等に鑑み, 境に差があるという結果が得られている。そこで本報で 健康リスクがある程度高いと考えられる有害大気汚染物 は,主に移動発生源からの影響が多いと考えられる 3 物 質を「優先取組物質」と位置付け,測定可能な 19 物質に 質について,基礎的な解析を行なうともに,PRTR(化学 ついて,国及び地方公共団体では,1997 年度からモニタ 物質排出・移動量届出)制度により公表されている 3 物 リングを実施している。有害大気汚染物質モニタリング 質の大気中への排出量との比較も行なった。また,自動 の調査地点は,工場などの固定発生源と自動車などの移 車からの汚染物質の測定を目的とする自動車排出ガス測 動発生源別に把握できるように,一般環境,発生源周辺 定局(自排局)での測定対象物質(NOx,NO,NO2,CO, 及び沿道の 3 種類に区分している。「大気汚染防止法第 NMHC)を利用して京都市内 4 つの自排局でのベンゼン濃 22 条の規定に基づく大気の汚染状況の常時監視に関す 度の推計を試みた。 (1) る事務の処理基準」 (以下,事務処理基準。)の中で, 「沿道においては,自動車からの排出が予想されるアセ トアルデヒド,1,3-ブタジエン,ベンゼン,ベンゾ[a] * 2 調査期間,調査地点及び調査方法 ⑴ 調査期間と調査地点 調査期間は 1998 から 2006 年度までの 9 年間である。 ピレン,ホルムアルデヒド等について監視を実施する」 調査地点は年度ごとに異なり,一般環境では壬生局及 としている。また, 「有害大気汚染物質のモニタリングの び市役所局で,発生源周辺では久世工業団地,山ノ内 京都市衛生公害研究所 環境部門 浄水場及び羽束師ポンプ場で,沿道では自排大宮局, リン車が 77.6~82.0%で推移しほぼ横ばいである。ま 自排山科局及び自排西ノ京局のいずれかの地点であ た同期間の京都市内における交通量及び大型車混入 る。 率の大幅な変化はない(9)(10)。以上のことから,1,3-ブ ⑵ 調査方法 タジエンが減少傾向にある一因として,最新の排出ガ 「事務処理基準」及び「有害大気汚染物質測定方法 (3) ス規制適合車の普及が考えられる。 マニュアル」 に準拠して,毎月 1 回 24 時間連続して 地域分類間では,沿道の濃度が高く,一般環境と発 大気を採取したものを試料とし,アルデヒド類は固相 生源周辺での濃度に差はあまりみられなかった。そし 捕集-高速液体クロマトグラフ法により,その他ベン て,一般環境及び発生源周辺では,全国平均値と同程 ゼン等 VOCs は容器採取-ガスクロマトグラフ質量分 度であった。PRTR 集計結果(11)によると,2001~2004 析法により分析し,1 年間の濃度を年平均値として算 年における京都府内の 1,3-ブタジエンの大気中への 出した。 総排出量は自動車に係る排出量が 86.1~92.3%を占 3 結果と考察 め,大気中への排出量のほとんどが移動発生源である 1,3-ブタジエン と考えられる。また,星ら(12)は,東京都内の沿道から 1,3-ブタジエンは,主に自動車などの排出ガスの寄 後背地にかけての 1,3-ブタジエンなどの炭化水素濃 与が大きく,排出された 1,3-ブタジエンは主に大気中 度の減衰調査を行ない,その傾向として,道路沿道で で化学反応によって分解され,3~5 時間前後で半分の 最も高濃度を示し,沿道との距離が離れていくにした 濃度になるとされている。 がって濃度は減少し,150m 程離れた後はある一定濃度 ⑴ 図1-1に 1,3-ブタジエンの調査地点ごとの経年 (4) になると推測している。したがって,移動発生源から 変化を示し,同時期の全国平均値 も併せて示した。 の寄与が主である 1,3-ブタジエンについては,沿道か 調査地点は年度により変更されており,9 年間モニタ ら離れている一般環境と発生源周辺での差があまり リングが継続されたのは自排大宮局(沿道)のみであ なかったと考えられる。PRTR 法における排出量と大気 3 る。1,3-ブタジエンは,年平均値として「2.5μg/m 中の対象物質濃度の経年変化を比較するため,図2に 以下」の指針値が設定されている。本市においては, 京都府内(2002~2006 年)及び自排大宮局(沿道)及 いずれの地点においても指針値以下で,減少傾向がみ び自排山科局(沿道)を含む行政区ごと(2002~2004 (5) られた。村上ら は文献と実測により,ディーゼル車 年)の 3 物質の排出量を示した。PRTR データの排出量 及びガソリン車からの排出ガス中の 1,3-ブタジエン では中京区,山科区及び京都府内ともにほぼ横ばいで の対炭化水素比率(THC 比)を示している。これによる 推移しており,図1-1の 1,3-ブタジエンの経年変化 と,ガソリン車(THC 比 0.0~0.2%)に比べてディーゼ とあわなかった。例えば,PRTR の推計データでは,前 ル車(THC 比 1.5~3.1%)が高く,1,3-ブタジエンはデ 述したとおり,排出量の推計の際に走行量を使用する。 ィーゼル車からの寄与が大きいことがうかがえる。木 その基礎データの 1 つとなる道路交通センサスが,毎 (6) 下ら は,最新規制適合の使用過程車から排出される 年は更新されないなど,PRTR データの自動車に係る排 VOC を測定し,VOC 成分の総排出原単位が低減してい 出量と本モニタリング結果と比較するには,もう少し (7) ることを示している。また,野田ら も,ガソリン車 における VOC などの未規制有害物質の一般的な排出傾 長期間の傾向として捉える必要があると考える。 ⑵ ベンゼン 向として,規制物質に対する排出ガス浄化性能の優れ ベンゼンは,基礎化学原料として多方面の分野で使 た車では,多くの未規制物質に関しても排出ガスが少 われていて,発がん性のある物質である。環境中への ないことを示している。そして,PRTR 法における自動 排出のほとんどが自動車排出ガスに含まれていて,排 車に係る排出量の推計では,自動車の走行量(km/年) 出されたベンゼンは主に大気中で化学反応によって に対し,走行量あたりの排出計数(mg/km)を乗じる 分解され,7~13 日で半分の濃度になるとされている。 ことにより排出量(kg/年)を算出しているが,排出 図1-2に示した京都市におけるベンゼンの各調査 計数の設定に当たっては,排出ガス規制の強化による 地点における経年変化をみてみると,全体的に減少傾 排出量の変化を考慮している。一方,1998 年度から 向がみられた。地域区分では,沿道が高濃度を示す傾 2005 年度までの京都府内における燃料別自動車保有 向があった。特に,自排大宮局(沿道)では,2004 年 (8) 台数割合 は,ディーゼル車が 16.1~21.1%で,ガソ までベンゼンの大気の環境基準(年平均値 3μg/m3 以 全国平均値 自排大宮局(沿道) 自排山科局(沿道) 自排西ノ京(沿道) 壬生局(一般環境) 市役所局(一般環境) 久世工業団地(発生源周辺) 山ノ内浄水場(発生源周辺) 羽束師ポンプ場(発生源周辺) (μ/m3 ) 1.6 1.4 1.2 1 0.8 0.6 0.4 0.2 0 '98 '99 '00 '01 '02 '03 '04 '05 '06 (年度) 図1-1 京都市内及び全国の 1,3-ブタジエン濃度の経年変化 (μ/m3) 7 6 5 4 3 2 1 0 '98 '99 '00 '01 '02 '03 '04 '05 '06 (年度) 図1-2 京都市内及び全国のベンゼン濃度の経年変化 (μ/m3) 8 7 6 5 4 3 2 1 0 '98 '99 '00 '01 '02 '03 '04 '05 '06 (年度) 図1-3 京都市内及び全国のホルムアルデヒド濃度の経年変化 区(t/年) 府内(t/年) 40 400 中京区 30 300 山科区 京都府内 20 200 10 100 0 0 '02 '03 '04 '05 '06 '02 '03 '04 '05 '06 '02 '03 '04 '05 '06 1,3-ブタジエン ベンゼン ホルムアルデヒド 図2 京都府内,中京区及び山科区での PRTR データに基づく 3 物質の移動体からの排出量の経年変化 下)を超過していたが,2000 年度から減少傾向を示し 自動車やディーゼル車などである。大気中では光化学 ており,2005 年度以降環境基準を満たしている。一方, 反応により容易に分解され,10 時間程度で半分の濃度 一般環境と発生源周辺では,地域間に差はあまりみら になるが,一方で,同反応により大気中で生成する過 れず減少傾向を示している。また,両地域とも全国平 程もある。 均値と同様の値で推移している。PRTR 集計結果では, 図1-3に示した京都市における大気中のホルムア ベンゼンの大気中への総排出量は,自動車に係る排出 ルデヒド濃度の経年変化は,上記 2 物質と同様に,沿 量が 85.3~90.8%を占め,1,3-ブタジエンと同様に自 道が一般環境や発生源周辺に比べて高濃度を示して 動車などの移動発生源の寄与が大きいことが考えら いる。ホルムアルデヒドは,沿道において年間を通じ (5) れる。自動車の燃料種別の排出割合は,村上ら によ て一酸化炭素(CO)と有意な相関が認められ,自動車排 ると,ディーゼル車(THC 比 1.3~1.7%)に比べてガソ 出ガスの寄与が大きいことを既報(13)にて述べた。武田 リン車(THC 比 5.4%)が高く,ベンゼンはガソリン車 ら(14)は,沿道において春夏には自動車排出ガス以外の からの寄与が大きいことがうかがえる。ベンゼン濃度 発生源が存在することを示唆しており,ホルムアルデ の減少傾向の一因としては,1,3-ブタジエンと同様に ヒドに対する NOx 比の夏期(7~9月)上昇分を光化 前述した排出ガス最新規制適合車の普及の他に,大気 学反応による2次生成分と仮定すると,大気中濃度の 汚染防止法に基づく告示で,2000 年1月以降にガソリ 5 割以上が2次生成寄与分と考察している。京都市で ン中のベンゼン濃度が従来の 5 体積%以下から 1 体 は,沿道で Ox を測定していないが,一般環境では夏 積%以下に引き下げられたことによる自動車燃料の 期においてホルムアルデヒドと Ox 平均値並びに Ox 最 改善も寄与していることが考えられる。 高値と有意な相関が得られている(12)ことから,沿道に 図2の PRTR データと図1-2の大気中ベンゼン濃 おいても夏期に光化学反応の影響を受けて増加して 度の経年変化を比較したが,1,3-ブタジエンと同様に, いると考える。したがって,季節によっては自動車排 5 年間の PRTR データとモニタリング結果の経年変化は 出ガスの影響以外の寄与も含まれるため,年平均値と あわなかった。 しては上記 2 物質とは異なる経年変化を示していると ⑶ ホルムアルデヒド 考える。 ホルムアルデヒドは,自動車排出ガスの中に含まれ 図2の PRTR データの経年変化では,特に山科区にお る炭化水素から発生するため,大部分が大気中へ排出 いて減少傾向を示している。図1-3の大気中ホルム (5) される。その排出割合は,村上ら によると,ガソリ アルデヒド濃度の経年変化と比較したが,上記 2 物質 ン車 (THC 比 0.1~0.3%)に比べてディーゼル車(THC と同様に,5 年間の PRTR データとモニタリング結果の 比 7.3~12.6%)が高く,その発生源のほとんどが大型 経年変化とあわなかった。 表1 沿道 2 地点におけるベンゼンの年平均濃度の実測値及び回帰式より求めた予測値 地 点 年度 自排大宮局 自排山科局 '03 '04 '05 '03 '04 '05 実測値 4.1 3.3 2.8 2.7 2.3 1.9 予測値 2年毎 1年毎 4.0 3.4 2.9 2.7 2.3 1.8 H15-H16 3.9 (-0.2) 3.5 (+0.2) - 2.5 (-0.2) 2.5 (+0.2) - (-0.1) (+0.1) (+0.1) (0) (0) (-0.1) H16-H17 - 3.3 (0) 3.0 (+0.2) - 2.1 (-0.1) 2.0 (+0.2) 3年 3.8 3.4 3.1 2.3 2.3 2.2 (-0.3) (+0.1) (+0.3) (-0.4) (0) (+0.3) びに 3 年間の全データを用いる方法では,誤差は ⑷ モニタリング実施していないベンゼン濃度の推計 京都市における大気中のベンゼン濃度はモニタリン -0.4~0.3 の範囲であった。 1 年ごとに回帰式を求 グ地点で環境基準を超過した。さらに広域の大気中濃 める方法では,-0.1~0.1 の範囲であった。また, 度を把握する必要があると考える。また,本モニタリ ベンゼン及び CO は自動車排出ガスからの寄与が大 ング調査地点の自排大宮局及び自排山科局は,大気汚 きいことが考えられるので,自動車排出ガス規制の 染の常時監視における自動車からの汚染物質の測定 強化による排出量の変化にも影響すると考えられる。 を目的で調査している。そこで,自排局の測定対象物 そこで,今回は,1 年ごとに回帰式を算出して,ベ 質(NOx,NO,NO2,CO,NMHC)濃度と同地点で測定し ンゼン濃度の推計を行った。 イ ベンゼン予測濃度の算出 たベンゼン濃度とを変数選択-重回帰分析をするこ 表2には,2003~2006 年度までの 1 年ごとの回帰 とにより,モニタリング調査地点である 2 つの自排局 以外の 4 つの自排局でのベンゼン濃度の推計を試みた。 式を示した。そして,その回帰式を用いてモニタリ ア 回帰式の算出 ング対象 2 地点では,ベンゼンの実測値と予測値を 回帰分析を行うにあたり,地点間による影響を小 示し,それ以外の 4 つの自排局(南局,上京局,西 さくするため,沿道で 2 地点測定を実施している ノ京局,桂局)でのベンゼン試料採取の期間(24 時 2003~2005 年の 3 年間について,月ごとのベンゼン 間)における CO の 1 時間濃度値の平均値から予測ベ 濃度を独立変数とし,その大気中試料を採取した自 ンゼン濃度を算出した結果を,また, 表3に示した。 排局の測定対象物質濃度を説明変数とし解析した。 ただし,2006 年度の南局は周辺工事の実施に伴い4 なお,説明変数である対象物質の濃度は,1 試料採 ~6月の 3 箇月間のみ測定が行なわれ,そのデータ 取の期間(24 時間)における 1 時間濃度値の平均値を を用いたため,括弧書きとした。推計したベンゼン 用いた。 濃度は,4 つの自排局とも減少傾向がみられ,前述 した要因が考えられる。また,2003 年度に 2 局と 2004 回帰式で用いるデータの組み合わせは,1 年ごと, 2 年ごと並びに 3 年間のデータを用いる方法が考え 年度 1 局にて,わずかではあるが環境基準値を超過 られる。変数減少法による重回帰分析を行ない,説 していた可能性が示唆された。 明変数が目的変数の予測に役立つかどうかは,偏回 帰係数をその標準誤差で割った 2 乗の値である F 値 表2 沿道における一酸化炭素によるベンゼンの 1 年ごと が 2 以上ならば有効な説明変数と判断した。 解析結果で得られた回帰式は,ほとんどが CO のみ を説明変数とするもので,一部 NOx も説明変数に組 み込まれていた。表1には,それぞれの重回帰式か の回帰式 '03 '04 '05 '06 Y=2.71×CO+0.793 Y=3.05×CO+0.168 Y=3.39×CO-0.371 Y=2.15×CO+0.421 ら算出した予測値及び実測値を示した。2 年ごと並 (R *2 =0.853) (R *2 =0.910) (R *2 =0.959) (R *2 =0.850) 表3 一酸化炭素より推定した予測値及び実測値の大気中ベンゼン濃度の年平均値 年度 '03 '04 '05 '06 大宮局 実測値 予測値 4.1 4.0 3.3 3.4 2.8 2.9 2.4 2.4 山科局 実測値 予測値 2.7 2.7 2.3 2.3 1.9 1.8 1.7 1.8 南局 予測値 3.6 3.4 2.8 (2.4) 上京局 予測値 2.9 2.4 2.0 2.0 (μg/m3) 西ノ京局 桂局 予測値 予測値 3.2 2.7 2.6 2.2 2.1 1.6 1.9 1.7 今後,モニタリング調査地点を増やしてデータ数 次報告) ,東京都環境科学研究所年報,25-31(2006) を増加させ,バックグラウンド地域と考えられるデ ⑺ 野田明,坂本高志,他:自動車から排出される未規 ータを用いるなどしてより推計精度を高めていき, 制有害物質の実態解明と排出抑制技術に関する研究, また,自動車排出ガスの寄与が大きい他の物質を中 交 通 安 全 環 境 研 究 所 , 受 託 研 究 成 果 集 , 5-1 - 心にモニタリング調査地点以外での広域な大気中の 5-25(2001) 濃度推計を検討していきたい。 5 まとめ 1998 年度から 2006 年度まで 9 年間の有害大気汚染物 ⑻ 京都市:京都市の環境(別冊資料編) ,48(平成18 年度) ⑼ 京都市都市計画局交通政策室:平成17年度全国道 質モニタリング結果を用いて,調査地域ごとの,主に移 路交通情勢調査,http://www.city.kyoto.jp/html/ 動発生源からの影響が大きいと考えられているベンゼン tokei/trafficpolicy/census/index.html など 3 物質の基礎的な解析を行なうとともに,環境基準 ⑽ 京都市環境局,騒音規制法第 17 条,第 18 条に係る が設定されているベンゼンのより広域での大気中濃度の 自動車騒音及び振動規制法第 16 条に係る道路交通振 推計を試みた。 3 物質とも全調査期間を通じて,道路沿道で濃度が高 くなる傾向が確認された。1,3-ブタジエン及びベンゼン 動の調査報告書,平成10-17年度 ⑾ 環境省:PRTR インフォメーション広場,http:// www.env.go.jp/chemi/prtr/risku0.html は,2000 年度以降,最新の排出ガス規制適合車の普及や ⑿ 星純也,天野冴子,佐々木裕子:道路沿道および後 燃料規制による効果と考えられる減少傾向を示している 背地における炭化水素成分の組成と濃度分布,東京都 が,ホルムアルデヒドについては同様の傾向は認められ 環境科学研究所年報,85-93(2004) なかった。また,ベンゼンについては,自動車排出ガス ⒀ 山本暁人,松本正義,友膳幸典,他:京都市におけ 測定局の大気汚染濃度(NOx,NO,NO2,CO,NMHC)を用 る大気中アルデヒド類の測定,京都市衛生公害研究所 いて,変数選択-重回帰分析により,市内の道路沿道に 年報,69,137-141(2003) おける大気中のベンゼン濃度を推計し,いずれの地点に おいても減少傾向が示唆された。 今後,推計精度を高めていき,また,他の物質につい てもモニタリング調査地点以外での大気中の濃度推計を 検討することにより京都市内の大気汚染の実態把握に役 立てていきたい。 6 参考文献 ⑴ 環境省:大気汚染防止法第 22 条の規定に基づく大気 の汚染状況の常時監視に関する事務の処理基準,平成 13年5月 ⑵ 株式会社エックス都市研究所:有害大気汚染物質大 気汚染物質のモニタリングのあり方に関する検討会報 告書,平成15年3月 ⑶ 環境庁大気保全局大気規制課(環境省環境管理局大 気 環境課):有害大気汚染物質測定方法マニュアル, 平成9年2月及び平成15年2月 ⑷ 環境省,地方公共団体等における有害大気汚染物質 モニタリング調査結果について,平成10-17年度 ⑸ 村上雅彦,横田久司,他:自動車排出ガス中の炭化 水素類の排出実態及びリスク評価試算,東京都環境科 学研究所年報,97-104(2003) ⑹ 木下輝昭,横田久司,他:最新規制適合の使用過程 車から排出される揮発性有機化合物(VOC)の実態(年 ⒁ 武田麻由子,阿相敏明:神奈川県の大気環境におけ るホルムアルデヒドの濃度分布と二次生成寄与分の推 定 , 神 奈 川 県 環 境 科 学 セ ン タ ー 研 究 報 告 , 29 , 110-111(2006)
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