骨髄の組織呼吸並びに解糖作用に関する研究 - 岡山大学学術成果

612.
419:〔612.
26+612396.
2〕
骨 髄 の 組 織 呼 吸 並 び に 解 糖 作 用 に 関 す る研 究
第2編
家 兎 骨 髄 の 組 織 呼 吸 作 用 に 及 ぼ す 浮 游 液 の影 響
岡山大学医学部平木 内科教室(主 任:平 木
副
手
清
水
紀
〔
昭和33年6月24日
内
第1章 緒
容
言
光
受稿〕
次
第4項 第2章 実 験材 料 並 び に実 験 方 法
1)実
目
潔教授)
第2節 小
括
各 種 水素 イオ ン濃 度 の食 塩 燐 酸 塩 液
験動 物
を浮游 液 と した場 合 の正 常 家 兎 骨髄
2)実
験材料 の 調製
の 呼 吸作 用
3)浮
游液
第1項 pH
6.3の 浮游 液 中に 於 け る呼 吸値
4)実
験装置
第2項 pH
6.8の 浮游 液 中に 於 け る呼 吸値
5)骨
髄 重 量並 びに 代 謝係 数
第3項 pH
7.1の 浮游 液 中に 於 け る呼 吸値
第3章 実験 成 績
第4項 pH
7.4の 浮游 液 中に 於け る呼 吸値
イ ロー ド液 並 び
第5項 pH
7.7の 浮游 液 中 に於 け る呼 吸値
に食 塩燐 酸塩 液 を浮 游 液 と した 場合
第6項 pH
8.0の 浮游 液 中に於 け る呼 吸値
の正 常 家 兎 骨髄 の 呼 吸作 用
第7項 小
第1節 リン ゲル 重 曹液,タ
第1項 リン ゲル 重 曹液 中 に於 け る呼 吸値
第2項 タ イロ ー ド液 中 に於 け る呼 吸値
第4章 括
総 括 並 び に考 按
第5章 結
論
第3項 食 塩燐 酸塩 液 中 に於 け る呼 吸値
を 比 較 し,前 者 が大 な る 呼吸値 を示 す こ と よ り,重
第1章 緒
Warburg検
言
曹 の 存在 が骨 髄 呼 吸作 用 を亢 進 せ しめ る もの と報 告
圧計 を もつ て 測 定 され る組織 呼吸 作
し,津 田40)は 食 塩 燐 酸 塩 液 と重 曹 を 含 まな い リン
用は浮游 液 の理 化学 的性 状 に よ り大 な る 影響 を蒙 る
ゲル 液 中 で家 兎 帽髄 の 呼吸作 用 を測 定 し,前 者 の呼
もので ある.検 圧容 器 内 で 取 扱 う組 織 は生 きた ま ま
吸 値 は低 下 す る も動揺 が少 な い と述 べ てい る.浮 游
の姿 で あるた め,生 体 に於 け る と 同様 の 環 境 が望 ま
液 の組 成 につ い て検 討を 試 み た の は叙 上 の二 者 のみ
し く,血 清 を 浮游 液 とす る 場合 に最 適 の呼 吸作 用 を
で あ るが,両 者 と も比 較的 細 胞傷 害 が 大 で あ る と考
示す ことは想 像 に難 くな い.然 し乍 ら,血 清 は採 取
え られ る細 分 懸 濁法 に よ り実 験 を行 つ た もので,切
個体 に よ り組 成 が 不均 一で あ り,骨 髄 の 呼 吸作 用 に
片法 に よ る実験 に は未 だ 接 せず,更 に 重曹 と燐 酸塩
対 し促進 的2)或 は抑 制 的20)に 作 用 す る場 合 も報 告
の共 存 す る 場合 の検 索 は未 だ な され て いな い.
さ吾 て お り,之 を浮游 液 と して常 用 す る こ とに は未
一 方 浮游 液 の 水素 イオ ン濃 度 に つ い てみ るに,抑
だ難 点が あ り,多 くの研 究 は組 成 の 明 らか な塩 類 浮
々 呼吸 作 用 は 細 胞機 能 維 持 に 要す るエ ネ ル ギ ー の産
游 液に よ りな され て い る現 況 で あ る.従 つ て組 織 呼
生 及 び細 胞 構 成 物質 の 合成 に 与 る酸 化 的 機構 に他 な
吸作用 の測定 上極 あて 重 要 な 基 礎 的事 項 として,塩
らず,こ の間 に 介在 す る酵 素 作 用 を 主体 とす る もの
類 浮游 液の影 響が 検 索 され ね ば な らな い が,他 の臓
で あ る こ とは言 うまで もな く,酵 素 は そ の作 用 を 最
器組織 に比 し骨髄 組 織 に 於 け る浮游 液 につ い て の 報
大 限 に発 揮 す る上 に至 適 の 水 素 イオ ン濃 度 を 必 要 と
告 は少 い.即 ちWarren161)は
リン ゲル 重 曹 液 と リ
し,之 が 影 響 につ い て の検 討 は必 要 に して欠 くべ か
ンゲル燐酸塩液 を浮游液 として家 兎骨髄の呼吸作用
ら ざ る もの に も拘 らず,遺 憾 な が ら未 だ 充分 解明 せ
2902
清
られ て い な い.即 ちBird
& Evans66)は
水
篩 を 通過
して攪 拌 した骨 髄 細 胞 懸 濁液 を用 い, pH 6.3∼7.7の
リン ゲル 重 曹 液 中で 酸素 消 費 量 を 測定 し, pH
6.9∼
7.3の
間 で最 大 の 値 を 得 た と述 べ , Thomas145)は
0.086mmの
方 形 の 網 目 を 通過 せ しめ
,遠 沈 後上 部
の 脂肪 層 を 除 去 した 骨髄 細 胞沈 渣 を, pH 7.0∼10.0
の リン ゲル 燐 酸 塩液 に懸 濁浮 游 した 場 合 の酸 素 消 費
量 は, pH
7.0∼8.5の 間 で は 大 な る変 化 を み な いが,
8.5以 上 で は 急 に 減 少 し,同
合 成 がpH
紀
光
線 状 刀 を 用 い て 限 界 厚 内 の 骨髄 切 片 を 作 製 した.即
ち 前 編 に 詳 述 し た 切 片 法 を 用 い た.
3)浮
游
液
リン ゲ ル 重 曹 液,タ
を 用 い た.食
7.4,
7.7,
イ ロ ー ド液 及 び 食 塩 燐 酸 塩 液
塩 燐 酸 塩 液 のpHは6.3,
8.0の6種
イ)リ
時 に測 定 せ るHemin
ン ゲル 重 曹 液
9.0g/l NaCl 1000.0cc
12.2g/l CaC12 20.0cc
11.5g/l KCl 20.0cc
13.0g/l NaHCO3…
第1液
又 は以 上 で急 激 に 下 降 す る こ と と関 聯 し て検 討す れ
8.0∼8.5の 間 に あ
7.1,
種浮
游 液 の 組 成 は 次 の 如 くで あ る.
8.0∼8.5の 間 で最 高 を示 し,こ れ 以下,
ば,至 適 水 素 イ オン 濃 度 はpH
6.8,
類 の も の を 使 用 した.名
… … … … … 第2液
る と報 告 した.骨 髄 呼吸 作 用 と水素 イ オ ン濃 度 との
関 係 につ い て現 在 まで に報 告 を行 つ た のは 叙上 の二
者 のみ で あ るが,彼 等 は い ず れ も骨 髄 懸 濁 液 に つ い
て実 験 を 行 い,切 片 と して用 い た 場合
比 し細 胞傷
使 用 前 第1液100ccと
第2液2.0coと
を混
和 す る.
ロ)タ
イ ロ ー ド液
40.0g/l NaCl 200.0cc
2.0g/l CaCl2 100.0cc
2.0g/l KCl 100.0cc
2.0g/l MgCl2 100.0cc
0.2g/l NaH2PO4 250.0cc
4.0g/l NaHCO3 250.0cc
使 用 前A液
とB液
害 甚 し く,従 つ て代 謝 の様相 も変 化 を 来 してい る も
A液
の と考 え られ,上 述 の如 き両 者 の至 適 水素 イ オン濃
度 に関 す る相 違 も又 こ こに 存 す ると見 るべ きで あ ろ
う.更 にBird
& Evans66)は
重 曹 緩 衝 系 を使 用 し
B液
て い るた め そ の報 告 に も見 られ る如 く,検 圧 中 に重
曹 分 解 に 基 きPHの
変 動 が 著 明 に 見 られ るも ので
あ り,又Thomas145)は
遠 沈 後 上部 の 脂 肪 層を 除 去
ハ)食
を 等 量 混 和 す る.
塩 燐 酸塩 液
した 点 で 正 常 骨 髄 組 成 と異 な る もの と見徹 され,共
に 正 確 な骨 髄 に つ い て の水 素 イ オ ン濃 度 の 影響 を検
Lison115)に
従 い 第2燐
の 割 合 を 第1表
酸 ソ ー ダ と第1燐
の 如 く変 え,
酸カリ
6種 の 燐 酸 緩 衝 液 を 作
討 した もの とは 言 い難 い.
以 上 の如 く骨 髄 に関 す る浮 游 液 の影 響 につ い ての
検 討 は い つ れ も不 充 分 な る謗 を免 れ な い,私 は 前編
に 於 て細 胞 傷害 が少 な く最 も適 当 な る方法 と判 明 し
製 し, 9.0g/l食
を10.0cc宛
塩 液240.0ccに
加 え,
6種 のpHを
これ ら燐 酸 緩 衝 液
有 す る 食 塩燐 酸
塩 液 を 作 製 し た.
た 切 片 法 を 用 い,正 常家 兎骨 髄 呼 吸作 用 の状 態 を,
第1表 燐 酸緩 衝液 の割 合
三種 類 の 異 る組 成 を もつ 浮 游 液 に つ い て比 較 し,且
つ 充 分 な る緩衝 能 を もつ 食 塩 燐 酸 塩液 中 に於 て水素
イ オ ン濃 度 の影 響 を 検 討 し,聊 か 知 見 を得 た の で本
編 に そ の成 果 を 発表 し,諸 家 の御 批 判 を仰 ぐもの で
あ る.
第2章 1)実
実 験 材 料 並 び に実 験 力 法
験動物
体 重2kg内
外 の雄 性 白色 家 兎 を 購 入 後7∼10日
間 一定 飼料 に て飼 育 し,環 境 及 び 飼 料 に馴 致 せ しめ
た 後,末 梢 血 液 を 検査 し,正 常 動揺 域 内 に あ る こ と
を 確 め て使 用 した.
2)実
HCO3は
溶 液 と し て お く と,気 相 中 のCO2
2NaHCO3〓NaaCO3+H2O+CO2↑
従 つ て用 に 臨 ん で 毎 回 新 調 し た.又Ca
験材 料 の 調製
家 兎 の 大 腿 骨 よ り0.9%食
尚Na
ガ ス と 平 衝 し次 式 の 如 き 可 逆 式 が 成 立 す る.
はK2CrO4を
塩 水 中 に 取 出 した 円 柱
状 骨髄 を,逆 に伏 せ た シ ヤ ー レ上 に てグ レー フ ェ氏
指 示 薬 と し, N/10
Ag
NO3溶
Cl2溶 液
液 をも
つ て 滴 定 し て 調 製 し た,
食 塩 燐 酸 塩 液 のpHは
調 製 後SHIMADZU
pH
骨髄 の組織呼吸 並びに解糖作 用に関す る研究
METER
MODEL
Gu
-1
No.
8300に
よ り確 認 し
KOH
0.3ccを
2903
容れ た.測 定 に 際 して は骨 髄 切 片 を.
主 室 内 に投 入 した.ガ ス交 換,恒 温 槽 の温 度,振 幅,
た.
4)実
験装 置
Warburg検
振 盪 回数,及 び そ の間 の手 技 に つ い ては 既 に前 編 に
圧 計 を使 用 し直 接 法 に よつ た.検 圧 容
器 は内 容約20ccの
円 錐状 器 を用 い,浮 游 液2ccを
主 室 に 容 れ 発 生 炭 酸 ガ ス 吸 吸 の た め副 室 に10%
第2表 第3表 致 死 後45分 間 に一 定 した.
測 定 容器 内容 を 要約 し,第2表
水 素 イ オ ン 濃 度 の 影 響 測 定 容 器
家 兎 骨髄 酸 素 消 質 量 は個 体 差 が甚 しきた め,一 連
率 は110.8%で
あ る.毎10分
髄 重 量及 び代 謝係 数
酸 素 消 費 量 につ い て み
る に 時 間 の 経 過 と と も に 漸 次 減 少 し,前30分
し 後30分 値 は13.9%の
を使 用 した.
第3項 pH
低 下 を 示 す.
7.4の
食 塩 燐 酸 塩 液 中 に於 け る
第6表 に 示 す 如 くQo2は
第1節 第1項 値 に対
呼 吸値
前編 と同様 に行 つ た.
第3章 及 び第3表 に示 す.
浮 游 液 の 影 響 測 定 容 器
の浮游液 中 に浮游 せ しめ る切 片 に総 て 同一 家 兎 骨髄
5)骨
述 べ た 通 りで あ る.予 備 振盪 開始 まで の 時 間は 家 兎
実 験 成 績
リン ゲ ル 重 曹液,タ
15例 の 著
平均 は4.57±0.63と
イロ ー ド液 並
揺 率 は87.1%で
最 大7.08,最
な り,平
あ る.毎10分
小3.10で
均 値 に 対 す る動
酸 素 消 費 量 につ い て み
び に食 塩 燐 酸 塩 液 を 浮游 液 と した
る に 時 間 の 経 過 と と も に 漸 次 減 少 し,前30分
場 合 の 正整 家 兎骨 髄 の呼 吸作 用
し 後30分 値 は11.1%の
リン ゲル 重 曹液 中 に於 け る呼 吸値
第4表 に示 す如 くQo2は 最 大7.38,最
小3.53で,
15例 の平均 は5.06±0.61と な り,平 均 値 に対 す る動
揺率 は76.1%で あ る.毎10分
酸素 消 費 量 に つ い て み
第4項 Qo2の
小
低 下 を 示 す.
括
平 均 値 は リン ゲ ル 重 曹 液 中 に 於 て 最 も高 く,
次 い で 食 塩 燐 酸 塩 液,タ イ ロ ー ド液 の 順 と な つ た.之
を 推 計 学 的 に 比 較 検 定 を 行 う と,リ
ン ゲル 重 曹液 と
るに時間的 経過 に 伴 う減 少 は 極 め て僅 少 で,前30分
タ イ ロ ー ド液 中 のQo2の
値 に対 し後30分 値 は1.6%の
リン ゲ ル 重 曹 液 と食 塩 燐 酸 塩 液 中 のQo2の
低 下 を 示 す に す ぎ な い.
第2項 タ イ ロー ド液 中 に 於 け る 呼吸 値
第5表 に示 す 如 くQo2は
最 大7.92,最
小2.89で,
15例の平均 は4.54±0.71と な り平 均 値 に対 す る動 揺
値 に対
Fs:Z2/U2N=29.1と
間 で はFs:Z2/U2N=12.9,
な り, α=0.005の
で あ る こ と よ り,夫
々0.5%以
差 を 認 め る こ とが 出 来 る.
間 では
と きF114=11.06
下 の 危険 率 で 有意 の
2904
清
水
紀
光
第4表
第5表
しか しタ イ ロー ド液 と 食 塩 燐 酸 塩 液 中のQo2の
間 で はFs=0.156と
な り,有 意 の差 を認 め る こ とは
出来 な い.
で あ る.
又 各 々 の毎10分 酸 素 消 費 量を 比 較 すれ ば第2図 の
更 に各 浮游 液 中の 平 均 値 に対 す る最 大 及 び最 小 値
の 動 揺 率 を比 較 す れ ば第1図
髄 を 測定 した に も拘 らず リン ゲル 重 曹液 に於 て最小
の如 くで,同 一家 兎骨
如 くで,リ ン ゲル 重 曹 液 中 に於 て最 も安 定 した経過
が認 め られ る.
骨髄 の組 織 呼 吸 並 び に 解糖 作 用 に 関 す る研 究
2905
第6表
第1図 Qo2の 最 大 及 び最 小値 の平 均 値 に 対 す
第2図 毎10分 酸 素 消費 量 の 時間 的 経 過
る動 揺率
揺 率 は105.9%で
あ る.毎10分
酸 素 消費 量 に つ い て
み る に 時 間 の 経 過 と と もに 漸 次 減 少 し,前30分
対 し 後30分 値 は21.3%の
第2項 第8表
pH
低 下 を 示 す.
6.8の 浮 游 液 中 に 於 け る 呼 吸 値
に 示 す 如 くQo2は
例 の 平 均 は2.88±0.50と
率 は122.2%で
値に
最 大4.95,最
小1.43で13
な り,平 均 値 に 対 す る 動 揺
あ る.毎10分
酸 素 消 費 量 につ い て み
る に 時 間 的 経 過 に 伴 う 軽 度 の 低 下 が 認 め ら れ,前30
分 値 に 対 し 後30分 値 は8.0%の
第3項 pH
7.1の 浮 游 液 中 に 於 け る呼 吸 値
第9表 に 示 す 如 くQo2は
第2節 各 種 水 素 イ オン濃 度 の食 塩 燐 酸 塩
第1項 pH
減 少 を 示 す.
13例 の 平 均 は3.62±0.55と
最 大5.04,最
な り,平
液 を浮 游 液 と した 場 合 の正 常 家 兎
揺 率 は94.5%で
骨髄 の 呼 吸作 用
る に 時 間 の 経 過 に 伴 い 軽 度 の 低 下 が 認 め られ,前30
6.3の 浮 游 液 中に 於 け る 呼吸 値
第7表 に示 す如 くQo2は
最 大3.98,最
小11.2で
13例 の平均は2.70±0.48と な り,平 均 値 に 対 す る動
あ る.毎10分
小1.62で
均 値 に対 す る動
分 値 に 対 し 後30分 値 は6.4%の
第4項 pH
酸 素 消 費量 につ い て み
減 少 を 示 す.
7.4の 浮 游 液 中 に 於 け る 呼 吸 値
第10表 に 示 す 如 くQo2は
最 大5.63,最
小2.17で
2906
清
水
紀
光
第7表
第8表
13例 の 平 均 は3.77±0.52と
揺 率 は91.8%で
な り,平
あ る,毎10分
均 値 に対 す る動
酸 素 消 費 量 につ いて み
る に 時 間 の 経 過 に 伴 う 低 下 は 梢 々 強 く,前30分
対 し 後30分 値 は11.5%の
第5項 第11表
pH
7.7の 浮 游 液 中 に 於 け る 呼 吸値
13例 の 平 均 は3.36±0.37と
あ る,毎10分
最 大5.06,最
値 に 対 し後30分 値 は14.4%の
第6項 第12表
減 少 を 示 す.
に 示 す 如 くQo2は
揺 率 は72.6%で
値 に
る に 時 間 の 経 過 に 伴 い 低 下 す る傾 向 が あ り,前30分
小2.62で
な り,平 均 値 に 対 す る 動
酸 素 消 費 屋 につ い てみ
pH
8.0の 浮 游 液 中 に 於 け る 呼 吸 値
に 示 す 如 くQo2は
13例 の 平 均 は3.08±0.42と
揺 率 は90.9で
減 少 を 示 す.
あ る.毎10分
最 大4.24,最
な り,平
小1.44で
均 値 に 対 す る動
酸 素 消 費 量 に つ い てみ
る に 時 間 の 経 過 と と もに 低 下 す る 傾 向 は 著 明 で,前
30分 値 に 対 し後30分 値 は20.9%の
減 少 を 示 す.
骨髄 の組 織 呼 吸 並 び に 解 糖作 用 に 関 す る研 究
2907.
第9表
第10表
第7項 Qo2の
>pH
小
括
平 均 値 はpH
7.1>pH
に 於 け るQo2を
7.4に 於 て 最 も 高 く, pH
7.7>pH
8.0>pH
6.8>pH
7.4
6.3の
順 に 漸 次 減 少 し,浮 游 液 が ア ル カ リ性 又 は 酸 性 に 傾
くと き に は い つ れ もQo2は
抑 制 せ ら れ る が,ア
ル
6.3と
26.1,
推 計 学 的 に 比 較 検 定 す る に,
の 間 で はFe=87.6,
pH
で はFs=10.5,
α=0.005の
7.1と
pH
の 間 で はFs=0.99,
pH
8.0と
と きF112=11.75,
9.33で
制 度 は 少 な い.而
を 認 め る こ と は 出 米 な い が,
7.4を 中 心 と し て 各pH
あ る こ と よ り,
の 間 で はFs=
pH
の 間 で はFs=18.8と
カ リ性 に傾 く と き は 酸 性 に 傾 く と き に 比 し て そ の 抑
し てpH
6.8と
α=0.01の
pH7.1と
pH
7.7と
の 間
な る.
と きF112=
の 間 には 有 意 の 差
pH
7.7と
の 間 で は1%
2908
清
水
紀
光
第11表
第12表
以 下 の危 険 率 で, pH
との間 で は0.5%以
6.3, pH
6.8,及
びpH
8.0
下 の 危 険率 で 夫 々有 意 の差 を 認
又 各 水素 イ オ ン濃 度 浮游 液 中 の平 均 値 に対 す る最
大 及 び 最 小 値 の動 揺 率 を 比 較 す れ ば第3図
7.7に 於 て最 小 で,酸
7.1に 於 て は 比 較 的に安定
で あ るが,こ れ よ りア ル カ リ性 側或 は酸 性 側に偏す
るに従 つ て不 安定 とな り,時 間 の経 過 と ともに減少
め る こ とが 出来 る.
pH
ば 第4図 の 如 くで, pH
の如 く
性 側 に 於 て大 とな る傾 向
が み られ る.又 各 々 の 毎10分 酸 素 消 費 量を比 較す れ
す る傾 向 が 認 め られ る.
骨 髄 の組 織 呼 吸 並 びに 解 糖作 用 に関 す る研 究
第3図 各水 素 イ オン濃 度 液 中 に 於 け るQo2
pH
2909
7.4に 於 て最 高 値 を 示 し,之 よ りアル カ リ性 側
の最 大 及 び最 小 値 の平 均 値 に 対 す る
或 は酸 性 側 に傾 くときは 抑 制 を 認 め,特 に 酸性 側 に
動 揺率
傾 く とき に著 明 で あつ た.推 計学 的 にpH
心 と し て 他 のpHに
pH 6.3, pH
6.8, pH
危険 率 で, pH
於 け るQo2を
7.4を 中
比 較 す る と,
8.0と の 間 で は0.5%以
7.7と の間 では1%以
有意 の差 が 認 め ら れ た が, pH
下の
下 の危 険率で
7.1と の間 で は 有意
の 差 を 認 め る こ とが 出来 なか つ た.更 に平 均値 に対
す る動揺 率 はpH
7.7に 於 て最 も小 さ くpH
6.8に
於 て最 も大 で あつ た.又 時 間 的経 過 に 伴 う酸 素 消 費
量 の減 少 はpH
7.1に 於 て最 も軽 微 で,之 よ りアル
カ リ性 側 或 は 酸性 側に 偏 す るに従 つ て強 く認 め られ
た.
扨 て骨髄 の組 織 呼 吸作 用 に 及 ぼ す 浮游 液 の組 成 で
大 な る影 響 を 及 ぼす も のは 重 曹 で あ ろ う.即 ち 緒言
に於 て触 れ た如 く, Warren161)はguinea
pigの 肝,
ratの 肝 ・腎 並 びに 家 兎 の腎 ・骨 髄 の 組織 呼吸 作用
第4図 毎10分 酸 素 消 費 量 の 時間 的経 過
を リン ゲル 重 曹液 と リンゲ ル燐 酸 塩 液 で比 較検 定 し,
家 兎腎 を 除 く他 の 臓 器,特 に 骨髄 では リンゲ ル重 曹
液 中 で高 値 を 示す こ とを 認 め た.更 に彼 は ガス腔 に
炭酸 ガ ス を 欠 き,実 験 中 に 重 曹 濃 度 が 低 下す る
Warburg直
接 法 に依 つ て も こ の 傾 向 を認 め,最 大
の効 果 を 発揮 せ しめ る重曹 量 は 実 験 の 初 め に3mM
あれ ば そ の後 に重 曹濃 度 が 低 下 して も呼吸値 に変 化
第4章 を 認 め な い こ とよ り,亢 進 した 呼 吸作 用 を維 持 す る
総括 並び に 考 按
安 定 した物 質 が 骨髄 組 織 内 に 於 て形 成 され る もの と
敍上 の成 績 を総括 す れ ば 次 の 如 くで あ る.
1)リ
ンゲ ル重 曹液,タ
イ ロ ー ド液 及 び食 塩 燐 酸
塩液の3種 の 浮游 液 に,夫 々 同一 家 兎 の 大 腿 骨骨 髄
を切片 と して浮游 した 場 合 のQo2は,リ
ン ゲ ル重
曹液中 に於て最高 値 を示 し,次 い で 食 塩 燐 酸 塩 液,
タ イロー ド液 の順 にな つ た.推 計学 的 に リング ル 重
曹液中 のQo2と
他 の二 者 との 間 に は0.5%以
下の危
険率で有意 の差 が 認 め られ たが,食 塩 燐 酸 塩 液 とタ
イロー ド液 中 のQo2と
の 間 で は 有 意 の差 を 認 め る
想 像 した.本 実 験 に よつ て も リンゲル 重 曹 液 中 に於
け る呼 吸値 は食 塩 燐 酸塩 液 中に 於 け るもの よ り推 計
学 的 に有 意 の 差 を もつ て高値 を示 す ことが 認 め られ,
Warren161)に 一 致 す る成 績 を 得 た.然
し乍 ら,同
時 に 比 較 検 討 を 行 つ た タ イ ロ ー ド液 は 重 曹 を
11.9mM含
む に もか か わ らず,食
塩 燐 酸 塩 液 中の
呼吸 値 との間 に有 意 の差 が な く,且 つ リン ゲル 重 曹
液 中の 呼 吸 値 よ り 有 意 の差 を もつ て低 値 を 示 し,
Warren161)の
述 べ た 重 曹 の 骨髄 呼 吸促 進 作 用 は み
ことが 出来 なかつ た .更 に平 均 値 に 対 す る動 揺 率 は
られ ない.こ の こ とは タ イ ロー ド液 中 に 含 まれ る燐
リンゲル重 曹液 中に 於 て最 も小 さ く,食 塩 燐 酸 塩液,
酸 塩 の 影 響 か と考 え られ る.抑 々浮游 液 中 の燐 酸 塩
タイロー ド液 の順 に大 で あつ た .又 リンゲ ル重 曹液
が 組 織 呼 吸に 及 ぼす 影響 に 関 して は,種 々 の臓 器 組
中に於 て酸 素消 費 量 は安 定 した 経 過 を 示 した が,タ
織 に つ い て 検 索 さ れ て い る ところ で あ る.即 ち
イロー ド液 及 び食 塩 燐 酸 塩 液 中 に 於 て は,時 間 の経
Wada153)Yamamoto166)は
過 に伴 い酸素消 費 量 の漸 次 減 少 す る傾 向 が 明 らか に
口55)は 海 〓 腎 で は 稀 濃 度 で促 進 を,高 濃 度で 却 つ
認められ た.
て抑 制 を 認め, Chang等74)は
2)
pH
6 .3, pH
6.8,
pH
7.1,
pH
7.4,
pH
家 兎 腎 で 促 進 を み,山
蛙 末 梢 神経 で 促 進 を
み, Kisch107)は 牛 及 び 羊 網 膜 で 著 明 な促 進 を,
7.7, pH 8 .0の6種 の食 塩燐 酸塩 液 に 夫 々 同 一家 兎
Ratte腎
で は 抑 制 を, Ratte心
の 大腿骨骨髄 を切 片 と し て浮 游 した場 合 のQo2は
Ratte肝
では 高 濃 度 で 抑 制 を認 め,出 田3)は 家 兎
筋 で は 著 変 な く,
2910
清
網 膜 で 抑 制 を み,田
島38)は
脳 で は 稀 濃 度 で 促 進 を,高
家 兎 大 脳,延
水
髄 及 び間
濃 度 で 抑 制 を 認 め,促
進
紀
光
揺 範 囲 内 で は 殆 ん ど 影 響 は 認 め られ ぬ と報 告 し た.
Kiach
u.
Leibowitz108)は
的 な も の ほ ど 時 間 の 経 過 と と も に 低 下 す る傾 向 が 著
7.1∼7.4,猫
明 で あ る と報 告 し て い る.骨
pH
髄 に比 較 的 関聯 の深 い
末 梢 血 球 に つ い て み る に, Michaelis
u. Salomon120)
の 腎 はpH
7.7∼8.1が
Kisch106)は,至
よ り異 な る が,同
鼠 で は7.2∼7.5,牛
球 に つ い てKeibl
Spitzy103)は
燐 酸 塩液 中で は
種 動 物 の 臓 器 間 に は 差 が な く,白
で は7.2,猫
で は7.5∼8.0で
あ
る と報 告 し て い る.本
邦 に 於 て も 報 告 は 多 く山 口55)
重 曹 緩 衝 液 中 に 比 し 呼 吸値 が 低 下 す る こ と を 認 め た
は 海 〓 の 腎 で はpH
7.3>pH
が,台35)は
5.4の 順 に 呼 吸値 は 低 下 し,酸
∼4時
u.
之 を 認 め て い る .白 血
に
適 水 素 イ オン濃 度 は 動物 の種 別に
Deutsch
Wagenfeld81)も
兎並 びに野 兎 の腎は
至 適 で あ る と 述 べ て い るが,後
は 人 赤 血 球 で は 高 濃 度 で 抑 制 的 に 作 用 す る と報 告 し,
u.
白 鼠 及 び 犬 の 腎 はpH
7.4,家
燐 酸 塩 な き 浮 游 液 中 で は 実 験 開 始 後3
間 過 ぎ る頃 よ り呼 吸値 が 著 明 に減 少 す る こ と
よ り,燐
酸 塩 は 白 血 球 呼 吸作 用 に 重 要 な る関 係 を 有
す る と報 告 し て い る.骨
髄 に つ い て 津 田40)は 重 曹
8.1>pH
6.1>pH
性 側 で は 時間 の経過
と と も に 漸 次 減 少 す る の に 反 し,ア
ル カ リ性 側
で は か か る 傾 向 を み な い と 述 べ,宮
崎63)は 蟇
の 筋 肉 で はpH
7.21が
至 適 で あ る と し, Okabe
を 含 まな い リ ン ゲ ル 液 中 よ り食 塩 燐 酸 塩 液 中 で 呼 吸
Kodama126)は
値 が 低 値 を 示 す こ とは燐 酸塩 の抑 制 作 用 に 基 くもの
は 水素 イ オン 濃 度 に反 比 例 して呼 吸値 は増 加す ると
と 推 定 し て い る.即
報 告 して い る.浜
ち燐 酸 塩 の 影 響は 臓 器 組 織 の差
に よ り異 な る も の で あ る が,骨
髄 並 び に 之 と関 聯 あ
家 兎 の 腎 はpH
6.8∼8.0が
中46)は
6.72∼7.68の
&
白 鼠 の 大 脳 皮 質 はpH
至 適 で あ る が,こ
の 範 囲 外 で も 影 響 は比
る 末 梢 血 赤 血 球 で は 抑 制 的 に 作 用 す る もの の 如 く で
較 的 軽 微 で あ る に 反 し,腎
あ る.斯
の 範 囲 外 で は 呼 吸 値 は 低 下 し,ア
く先 人 の 業 績 を 照 合 す れ ば 重 曹 の 促 進 作 用
も 然 る こ と な が ら,燐
酸 塩 の 抑 制 作 用 も明 ら か に 存
す る も の と 思 わ れ る.特
に本 実験 成 績 で両 者 の共 存
で はpH
7.4が 至 適 で こ
ル カ リ性 側 よ り酸
性 側 に 偏 す る と き に 抑 制 度 が 強 く,同 種 動 物 で も臓
器 に よ り受 け る 影 響 は 異 る と 報 告 し,先 のKisch106)
す る タ イ ロ ー ド液 中 で の 呼 吸 値 が リン ゲ ル 重 曹 液 中
の 報 告 に 異 論 を 説 え て い る.又Nomura124)は
よ り 低 値 を 示 す こ と,及
日 鼠 の 肝 はpH
び毎10分 酸 素 消 費 量 の 時 間
範 囲で
5.50∼7.44の
二十
範 囲 で は ア ル カ リ性
的 推 移 が 食 塩 燐 酸 塩 液 と タ イ ロ ー ド液 で は 漸 次 減 少
側 に 偏 す る と と も に 呼 吸 値 は 増 加 し,家 兎 の 腎 で も
す る 傾 向 に あ る こ と よ り,明
略 々 同 様 の 傾 向 が あ る と述 べ,榊
らか に骨 髄 の 呼 吸作 用
に 燐 酸 塩 は 抑 制 作 用 を 有 す る も の と考 え ら れ る.
くの 報 告 は 著 し く 酸 及
7.98附 近 が 至 適 で あ る と し, Yamamoto166)は
の 腎 はpH
7.02∼7.42の
び ア ル カ リに 偏 す る と き に は 抑 制 を 認 め て い る が,
報 告 し た.更
最 大 呼 吸値 が 得 られ る至適 水 素 イ オ ン濃度 につ い て
∼7.88の
は 諸 説 相 異 つ て い る.
吸 値 は 増 加 し, pH
即 ちElliager
pH
u.
8.5∼5.75の
Landsberger85)は
間 で 測 定 し,水
鵞 鳥 血 球を
素 イ オ ン濃 度 の増
加 と と も に 呼 吸 値 の 上 昇 を み,特
にpH
8.25∼
6.5の 間 で は 直 線 的 に 増 加 す る と 述 べ, Hese
Ryffel95)は
海3,鳩
u.
及 び蛙 の 筋 肉 の至 適 水 素 イオ
ン 濃 度 はpH
9∼10で
あ る と 報 告 した.
u. Grafe68)は
白 鼠 の 肝 はpH5∼9の
Biichner
間 で は著 変
を み な い が,こ
の 範 囲 外 で は 呼 吸 値 は 減 少 す る と報
告 し, Koehler
&
はpH
7.4∼7.5が
Reitzel110)は
至 適 で, pH
家 兎 の 筋 肉 及 び肝
4.5以
下 或 はpH
10以 上 で は 全 く 酸 化 作 用 を 認 め ぬ と述 べ,
Moller86)は
蛙 の 筋 肉 の 酸 化 作 用 はpH
至 適 で あ る と し, Reinwein
肝 及 び 腎 はpH
8.0∼8.4が
フェニー
ル ヒ ドラ ヂ ン 注 射 家 兎 及 び 家 鶏 の 赤 血 球 で はpH
次 に 浮 游 液 の 水 素 イ オ ン濃 度 が 組 織 呼 吸 作 用 に 及
ぼ す 影 響 に つ い て み る に,多
原26)は
Eseen-
7.8∼7.9が
家兎
範 囲 で は 影 響 を 認めず と
にOyama128)は
家 兎 の 網 膜 はpH
6.88
範 囲 で は ア ル カ リ性 側 に 偏 す る と と も に呼
8.0∼8.5が
田 島39)は 家 兎 の 脳 はpH
至 適 で あ る と述 べ,
7.41∼7.88が
至 適 で,ア
ル カ リ性 よ り も酸 性 側 に 偏 す る と き.に著 明 な 抑 制 を
認 め,武
田 訂)は 家 兎 の 卵 巣 はpH
適 で あ る と し,古
至 適 で あ る がpH
と述 べ,吉
7.37∼7.81が
賀22)は 家 兎 の 子 宮 はpH
6.83∼7.88の
至
7.41が
範 囲 で は著 変なし
村56)は 家 兎 の 網 膜 はpH
7.583が 至適
で あ る と報 告 し て い る.
以 上 諸 家 の 成 績 を 通 覧 す る に,水
素 イ オ ン濃 度 が
組 織 呼 吸 作 用 に 及 ぼ す 影 響 は 多 彩 で あ り,至 適 水 素
イ オ ン 濃 度 も 動 物 の 種 別 に よ り又 臓 器 の 差 に よつ て
異 り,更
に 同 一 の 臓 器 で も検 索 者 に よつ て 異 説 が み
ら れ る.け
だ し材 料 調 製 法 の 差,及
び 浮游 液 の緩 衝
海〓 の
性 が 異 る こ と に 起 因 す る も の で あ ろ う.し か し多 く
至適 で あ る が 生 理 的 動
の 報 告 は 至 適 水 素 イ オ ン 濃 度 は 略 々弱 ア ル カ リ性 に
u. Singer133)は
骨髄 の組 織 呼 吸並 びに 解 糖作 用 に 関 す る研 究
2911
位 し,酸 性 側 に傾 く と き は ア ル カ リ曲 側 に 傾 く と き
第5章 よ り も 著 明 な 呼 吸 作 用 の 抑 制 を 認 め て い る.
Thomas145)の
言 に 述 べ た 如 くBird
& Evans66)及
二 報 告 が あ る が,前
7.3の 範 囲 に,後 者 はpH
者 はpH
び
6.9∼
8.0∼8.5の 範 囲 内 に あ る
とし,両 者 の値 は 著 る し く隔 絶 して い る.既 に 前 編
に於 て骨髄 の 懸濁 浮游 法 で は細 胞 傷 害 が 比 較 的大 で
論
正 常 家 兎 大腿 骨 骨髄 の酸 素 消 費 量 を リンゲ ル 重 曹
骨髄 の呼 吸作 用 に対 す る浮游 液 の 至 適 水 素 イ オ ン
濃 度 は,緒
結
液,タ
pH
イ ロー ド液 及 びpH
7.4, pH 7.7, pH
6.3, pH
6.8, pH
7.1,
8.0の 食 塩燐 酸 塩 液 中 に て 切
片 法 を 用 い て測 定 し,骨 髄 の呼 吸作 用 に 及 ぼ す 浮游
液 の影 響.につ い て次 の如 き結 論 を得 た.
1)
Qo2は
リン ゲル 重 曹液 中 に 於 て最 高 値 を示 し,
あ り,代 謝 の 様相 も可 成 り変 化 す る こ とを明 らか に
タ イ ロー ド液 及 び食 塩燐 酸 塩 液 中 に 於け る もの との
した が,敍 上 の二 者は 骨髄 細 胞 の懸 濁 液 を検 圧 材 料
間 に 推 計 学 的 に有 意 の 差 を認 め た.
としてい るた め そ の成 績 に 差 異 を 生 じた もの で あ ろ
う.又Bird
& Evsns 66)は 測 定 中 に 水素 イ オ ン濃
2)測
定 中 時間 の 経過 に 伴 う酸 素 消 費 量 の 減 少傾
向 は リン ゲ ル重 曹液 に於 て最 も軽 微 で あ り,又,最
度 の変動 を 示 す 重 曹緩 衝 系 を 用 い た こ とに も一 因 が
大 及 び最 小Qo2の
ある と思わ れ る.従 つ てか か る点 を 考慮 し,細 胞 傷
ル 重 曹液 に於 て最 も小 で あ つた.
害 の軽微 で あ る切 片法 に よ り,又,浮
游 液 は 充分 な
3)名
平 均値 に対 す る 動 揺 率 も リン ゲ
水素 イ オン 濃 度 の 食 塩 燐 酸 塩液 に於 け る
る緩衝 能 を有 す る燐 酸 塩 液 を 用 い た本 実 験 で は,
Qo2はpH
Qo2はpH
は推 計学 的 に 有意 の差 を 認 め な いが,そ の他 の もの
7.4に 於 て最 高 値 を示 し,之
よ り酸 或 は
7.4で 最 高 値 を示 し, pH
7.1と の 間 に
アル カ リ性 側 に偏 す る と きに は 抑制 を認 め,特 に酸
との 間で は 夫 々有 意 の 差 を認 め た.即 ちpH
性 側に偏 す る ときに 著 明 で あ つ た.即 ち抑 制 の傾 向
中心 と し て これ よ り酸 或 は アル カ リ性 側 に 偏 す るに
は他 の多 くの 臓器 に 於 け る成 績 と略 々一 致 す る もの
従 いQo2は
で ある.而 してpH
す る方 が抑 制 は梢 々強 く認 め られ た.
7.1に 於 け るQo2はpH
7.4
の場合 と比 較 し推 計学 的 に 有意 差 は な く,且 つ 時間
4)各
減 少 し,ア ル カ リ性 側 より酸性 側 に偏
水素 イ オン濃 度 の食 塩 燐 酸 塩液 に於 け る酸
的経過 に伴 う酸素 消 費 量 の 減少 が最 も軽 微 で あ り,
素 消 費 量 の時 間 的経 過 に伴 う減 少 傾 向 はpH
又, pH
於 て最 も軽微 で あ り,又,最
7.7に 於 け るQo2はpH
し,推 計学 的 に1%以
7.4の 場 合 と比 較
下 の 危険 率 で有 意 の 差 が 認 め
7.4を
均値 に対 す る動揺 率 はpH
7.1に
大 及 び 最 小Qo2の
平
7.7に 於 て 最 も小で あつ
られ るが,そ の動 揺 率 が 最 も小 で あ る こ とよ り,骨
て.こ れ よ り酸或 は アル カ リ性 側 に偏 す る に従 つ て
髄 の至 適 水 素 イ オ ン 濃 度 はpH
著 明 な減 少 傾 向 及 び動 揺率 の増 大 が 認 め られ た.
pH
7.4を 中心 と して
7.1∼7.7の 範 囲 に 存す るも の と考 え られ る.骨
即 ち骨髄 の 呼 吸作 用 測定 に は リン ゲ ル重 曹液 を浮
髄 を絶 えず灌 流 し,之 と不 可 分 の関 聯 を 有 す る末 梢
游 液 とす るの が最 も適 当 で あ り,浮 游 液 中 の燐 酸塩
血液の 水素 イ オ ン濃度 に略 々一 致 す るの は 誠 に興 味
は骨 髄 の 呼 吸作 用 に抑 制 的 に 作 用す る もの と考 え ら
あ るこ とで あ る.斯
れ る.又 骨髄 の 呼吸 作 用 に対 す る浮游 液 の至適 水素
く骨髄 の呼 吸作 用 は 浮游 液 の 水
素 イ オン濃 度 に よ り影 響 を 受 け, pH
7.4に 於 て最
イ ォ ン〓
はpH
7.4を 中 心 と してpH
7.1∼pH
高 の呼 吸値が 得 られ るに も拘 らず,先 に述 べ た 如 く
7.7の 間 に あ る も の と 思 われ,こ の 範 囲外 では 呼 吸
pH
作 用 は 当 初 よ り抑制 され,且 つ酸 素 消費 量 は 時 間 の
7.4の 食 塩燐 酸 塩 液 中 の呼 吸 値 よ り も実 験 中 に
水素 イオン濃 度 が変 動 す る リンゲ ル 重曹 液 中 の呼 吸
経過 と ともに 漸 次 減 少を 来 す もの で あ る.
値 は一層高 値 を示 す もの で あ る.即 ち リン ゲル 重 曹
液 に於 て変 動 す る 水素 イ オ ン濃 度 の 影響 よ り燐 酸 塩
の抑制作用 の 方が 強 い もの と考 え られ る.更 に毎10
分 酸素 消 費量 の時 間 的 経 過 をみ るに リンゲ ル重 曹液
中が最 も安定 で,各 水素 イ オ ン濃 度 の 食 塩燐 酸 塩 液
及びタイ ロー ド液 中 の如 き漸 次 減 少 す る傾 向 は認 め
られず,骨 髄 の呼 吸作 用 測 定 に は リンゲ ル重 曹 液 が
適 当で あ ると思 わ れ る.
擱 筆 に 臨 み 御指 導御 校 閲 を賜 つ た 恩 師 平木 教 授 に
衷 心 よ り感 謝 の誠 を捧 げ る とと もに 御 教示 御 援 助 を
頂 い た 上 原講 師 に 深 甚 の 謝意 を 表 す.
本 論 文 の 要 旨は 第10回 日本 内 科 学 会 中 国 四国 地 方
会 に 於 て 発表 した.
(文
献
後
掲)
2912
清
Studies
on the
Oxygen
水
紀
Consumption
Marrow
Part
2.
The
Effect
光
Glycolysis
in Bone
Tissue
of Suspension
Consumption
and
of Rabbit
Solutions
Bone
on the Oxygen
Marrow
By
Norimitsu
Shimizu
Department of Internal Medicine Okayama University Medical School
(Director: Prof. Kiyoshi Hiraki)
By suspending slices of hone marrow tissue of normal rabbit obtained from the femur
in such solutions as Ringer's solution, Tyrode's solution or physiological saline solution, at pH
6.3, 6.8, 7.1, 7.4, 7.7 and 8.0, and by measuring oxygen consumption,
the author studied
the effect of suspension solutions on the respiration of the bone marrow.
The results are as
follows:
1.
In Ringer's solution Qo2 was highest,
and stochastically
there was significant diffe
rence in Qo2 values in the case of the Tyrode's or the physiological saline solution.
2.
The decreasing tendency in the oxygen consumption with lapse of time in the course
of measuring was least in Ringer's solution, and likewise the variations in the average values
of the maximum and the minimum Qo2 were least in Ringer's solution.
3. As for the physiological
saline solution at various ranges of pH, Qo2 showed the
greatest value at pH 7.4.
Although
there was no significant
difference
between the value
at pH 7.4 and that at pH 7.1 stochastically,
but there was significant
difference between
the value at pH 7.4 and those of other pH. Namely, pH 7.4 as the starting point, if the
concentration
leans either
to acidic side or to alkaline
side, Qo2 tends to decrease,
and
moreover, the inhibition of Qo2 is somewhat stronger on the acidic side than on the alkaline
side.
4. In the physiological saline solution at various ranges of pH, the decreasing tendency of
Qo2 with the lapse of time is least at pH 7.1;
and the rate of variations
in the averages
of the maximum and the minimum oxygen consumption is least at pH 7.7; and as the pH
turns to more to alkaline
side from this pH the decreasing tendency of Qo2 is marked and
also the increase in the rate of variation can be observed.
In other words, for the determiration
of the respiration
in bone marrow Ringer's solution
is the most suitable one as the suspension solution;
and it seems that the phosphate contained
in the solution acts as to inhibit the respiration
of bone marrow. And the optimal pH seems
to lie in between pH 7.1 and pH 7.7 with pH 7.4 as an anchor concentration.
Outside this
range of pH the respiration
of bone marrow is inhibited from the beginning and also the
oxygen consumption decreases gradually
along with the lapse of time.