事務所の“5S”の進め方 - SMBCコンサルティング

編集・発行 三井住友銀行グループ・SMBCコンサルティング株式会社
2013.5.15 第 1273 号
SMBC経営懇話会
TEL:フリーダイヤル 0120-7109-49
FAX:(03)5255-5564
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事務所の“5S”の進め方
~5S による時間/スペース/経費の節約を実現する方法~
一般社団法人中部産業連盟
上席主任コンサルタント
山崎 康夫
1.生産現場のみならず管理部門での 5S を含めた全社的な意識改革が必要です。
2.管理部門の「物の見える化」により業務改善を実現するために、全員参加による事務所の
5S に取り組むことが有効です。
3.書類の廃棄基準や個人の机の管理基準を設け、書類・事務用品の整理を徹底します。
1.事務所の 5S の必要性
厳しい経営環境が続く昨今。企業が生き残り、発展していくためには生産現場の改善だけではなく、管理部
門を含めた全従業員の意識を改革していくことが重要です。しかし、事務現場をどこから改善し、 従業員をど
のように教育すれば良いかは難しい問題です。そこで、具体的に改善・改革していく方策をご紹介します。
最初に取り組みたいのは「物の見える化」です。それを実践する具体策が、全員参加による事務所の 5S
(整理・整頓・清掃・清潔・躾)です。5S は工場の製造現場の活動であると思われがちですが、事務所におい
ても 5S が仕事の基本であり、事務所こそ 5S の徹底が必要です。事務所でも、机の上や下に書類やファイル
が山積み、引出しの中には作成日の古い仕掛書類や用済みのメモ用紙、伝票などが膨大に入っており、業
務の進捗状況がわからないということが多々あります。また、机の引出しの中に多種類の事務用品が複数個
ずつ入っているなど、経費のムダ、探す時間のムダ、在庫・スペースのムダが発生しています。さらに、事務
所で作成、保管されている書類やデータは機密情報や個人情報が多数含まれているにもかかわらず、紛失
の恐れがある場所に置いてあると、非常にリスクの高い職場環境であるといえます。
2.5S による「物の見える化」
● 写真 1(共有事務用品置き場の物の見える化)
事務所に置かれた物は、管理・間接業務を行う
ために必要な物です。管理・間接業務を的確に、
効率よく行うために、どの業務で何がいくつ必要
であるのか、それがどこに保管されているのかを、
誰もが一目でわかるように管理された状態が「物
の見える化」です。5S を推進することによって、要
る物、要らない物を区分けして、業務に必要な物
が、いつでも、誰でも使用できるように、置き場所
を定置化し、すぐに取り出し活用できるような置き
方を定め、元の場所へ戻せるように徹底的に表示
をすることによって「物の見える化」が実現でき、探
すムダが排除できます(写真1)。
(次頁に続く)
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3.書類整理の徹底
ムダな書類が保管されているために必
要以上に探すムダが発生するのです。用
済み、不要な書類、重複保管の書類、陳
腐化した書類は即廃棄し、管理が必要な
書類は、事務所での保管期間、倉庫での
保存期間を設定します。その期限満了に
なった書類は定期的に廃棄することを習
慣化することが必要です(図表 1、2)。
今までの実績では、多くの企業の管理・
間接部門で 5S によって書類整理を実施す
ると、概ね 50%の書類が廃棄処分できてい
● 図表 1(書類の即廃棄基準)
(1)用済み・不要なもの
◯メモで用済みのもの
◯回答などで用済みのもの
◯清書済みの原稿
◯年賀状、暑中見舞い、礼状
◯ワープロの原稿
案内状など
◯新聞、2 年以上経過した雑誌、読み捨てられた雑誌
(2)重複保管のもの
◯2 部以上あるカタログ ◯再生が簡単にできる文書
◯重複して保管している文書
(3)陳腐化したもの
◯差し替えられた資料の古いもの
◯所定の保存期間を過ぎた文書
◯5 年以上経過した統計書籍
● 図表 2(書類の所定廃棄基準)
ます。その結果、キャビネットが余剰になり
撤去され、有効な作業スペースが確保でき
るようになります。
4.個人の机の 5S
書類分類
1 契約
2 規定
個人の机の上に書類が山積み、引出し
の中や机の下には、仕掛書類や業務に使
用するファイルが雑然と保管され、事務用
3 企画・
計画
4 実績
5 予算
理・間接部門の「物の見える化」は、見えな
いところ、気づかないところに入っている物
まで見えるようにすることです。従って、も
っとも見えない個人の机から見える化を実
代理店契約
販売契約
雇用契約
人事・就業
旅費
職務基準
職務権限
文書管理
勤怠カード、残業表
中・長期計画
事業計画
製品開発計画
◯
◯
◯
◯
◯
◯
◯
◯
◯
◯
◯
◯
販売実行計画
◯
◯
個人の机は自分しか使用しないから 5S
の対象外と思われるかも知れませんが、管
書類名
共有化
部
課
管理 管理
◯
品や私物が膨大に置かれているということ
はありませんか。
(例)
6 決算
7 統計
販売実績
商談記録
進行管理表
年間予算書
受注・売上・経費
設備投資
損益計算書
貸借対照表
経費明細書
経営指標
業績推移
業界統計
◯
◯
◯
◯
◯
◯
◯
◯
◯
◯
◯
◯
◯
(例)
保管・保存・廃棄基準
保管期間
原本
原本
原本
写
原本
写
原本
写
原本
原本
原本
原本
原本
原本
原本
原本
原本
原本
原本
2年
2年
2年
改廃
改廃
改廃
改廃
改廃
1年
3年
1年
3年
1年
2年
1年
3年
1年
3年
3年
2年
2年
2年
2年
2年
2年
10年
3年
3年
保存期間
即廃棄
5年
5年
5年
旧版
旧版
旧版
旧版
旧版
原本
原本
原本
4年
3年
4年
原本
3年
原本
4年
原本
原本
原本
原本
原本
原本
原本
原本
原本
原本
原本
4年
4年
3年
3年
3年
3年
3年
3年
3年
3年
3年
写し
写し
写し
個人配
写し
個人配
写し
個人配
写し
写し
写し
写し
写し
写し
写し
写し
写し
写し
写し
施していくことがポイントになるのです。
また、個人の机の 5S は、決められたルールをきちんと守るというよう
に、一人一人の意識を変えることができます。個人の机の上、引出し
● 写真 2
(個人机の引出しのワンベスト姿絵置き)
の中に何を置くのかということを明確にした「個人の机の管理基準」を作
成し、机の引き出しの中には、事務用品、業務を円滑に進めるための参
考書類、私物のみを置くことにします。また、事務用品はワンベスト原則
(※)に従って事務用品を姿絵置きで配置することにより、余剰の事務用
品を置かないようにします(写真 2)。余剰として抽出されたリサイクル事
務用品を活用して、約二年間分の経費が節約された企業もあります。
また、机の引出しの中に入っている業務で使用するファイルは、全て
共有キャビネットに移動し、属人化した書類の管理から情報の共有化を
図ります。フロッピーや CD、MO 等の情報メディアは、施錠可能なキャビ
ネットで一括管理をします。個人の机は、出来るだけリスクを低減した状
態にすることが情報セキュリティの管理を徹底する上からも必要です。
(※) ワンベスト原則: 業務の効率化を実現するために、各種の業務を「ワン」
すなわち 1 枚・1 回・1 本・1 ヶ所等で遂行できるようにすること。
【本稿に関するご照会窓口】 SMBCコンサルティング・法人サービス開発部 TEL:0120-7109-49