Vol.4 No.1 - 日本機械輸出組合

environment Update
−海外環境関連情報誌−
第 19 号
Vol.4
No.1
(2002.5)
CONTENTS
WEEE& RoHS、EEE の最新動向
EU の WEEE
&
RoHS
指令制定化の動向
2
ブリュッセル短信
WEEE
&
RoHS
の欧州議会第二読会終了−JBCE の目標ほぼ達成−
NEC Europe Ltd. Br
ussel Of
fice 杉
山 隆
11
モニタリング
欧州
・連載 欧州環境規制動向
∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報
米国
⑳
18
・連載 米国における環境関連動向
∼在ワシントンコンサルタントによるモニタリング情
報
⑮
40
アジアにおけるリサイクル方針
∼中国、マレーシア、タイの概観∼.
50
組合員のページ
カシオのエコプロダクツについて ∼カシオCGP30∼
カシオ計算機株式会社 総務部企画調査グループ
瀬尾
環境・安全グループニュース
新刊図書のご案内
58
環境・安全グループ担当委員会活動の状況
事務局便り
60
62
悠
紀雄
55
EU の WEEE & RoHS 指令制定化の動向
WEEE & RoHS 指令法制化の動向
環境・安全グループ
WEEE & RoHS 指令案の審議について、組合ブラッセル事務所からの情報等を基に最近の動向を整理
すると次のとおり。
1. 欧州議会本会議(第二読会)の採決
WEEE & RoHS 指令案の審議は、昨年 12 月に正式に採択された理事会の見解を示す「共通の立場
(common position)
」のテキストに対して、既報のとおり去る 3 月 21 日の欧州議会・環境委員会
における修正案の採択に引き続き、4 月 9 -10 日の議会本会議(第二読会)において、修正案につき
審議、採決を行った。
これまで産業界などで主要な論点となっていた事項につき、採決の結果に基づき整理してみると、
概ね下表のとおりである。
この結果、残された主な論点は、次の事項があげられる。
<RoHS> 実施時期、リユースの適用除外、禁止以前に上市した製品のスペアパーツなど
<WEEE> 回収目標、再生率、費用負担方式、historical waste の定義、visible fee、孤児製品。
ユーザー/処理施設への情報など
なお、本会議における深夜に及ぶ時々刻々の報告やその裏話、そして消耗品の取扱いを巡る JBCE
のロビーイングの奮戦ぶりについては、当誌連載の杉山環境委員会委員長のブリュッセル短信
(11 ページ)を参照されたい。
<理事会採択の「共通の立場」と欧州議会の修正案比較>
本資料は、関連条項の規定文を独断的に短縮しているので、関連条項の解釈にあたっては原文を参照
されたい。
(アンダーラインは変更箇所)
<RoHS>
主な事項
理事会/共通の立場
欧州議会/第二読会修正意見
対象範囲
WEEE 付属書ⅠA のカテゴリーのうち、 (追加) 2006.1.1 以前に上市した電気電子機
cat.1,2,3,4,5,6,7,10 +電球、家庭用照明 器 or 構成部品のリユース、新製品の構成部品の
器具
リユースには適用しない
生産者の定義
(3 つの規定のうち)
(追加) 他の供給者により生産された機器を
他の供給者により生産された機器を自 自己ブランドで再販売する者。生産者のブランド
己ブランドで再販売する者
が機器に明示されている場合の再販者は生
産者と見なさない
特定物質の使用 鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、PBB、PBDE (変更) 2006.1.1 から
禁止と時期
の含有;遅くとも 2007.1. 1 から
(追加) 2006.1.1 以前に上市された製品のスペ
アパーツ、修理品には適用されない
(追加)他の有害物質の禁止は必要な科学的
データの入手次第に欧州議会と理事会が決定
適用除外リスト
(除外リスト例;9 項目のうち主要な論点に (追加/変更なし)←他の除外リストを含め理事会
案が生きている
なっていたもの)
・高融点ハンダに含まれる鉛(鉛 85%以
上の錫/鉛ハンダ合金)
・サーバー等に含まれる鉛(2010 まで)
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EU の WEEE & RoHS 指令法制化の動向
・スイッチ等に含まれる鉛
この他に、電子セラミック部品に含まれ
る鉛(例;ピエゾエレクトリック)など
科 学 的 / 技 術 的 材料/構成部品が技術的/科学的に不可 (変更) 除去/設計変更/代替が技術的/科学的
避 or 環境/健康への負の影響が便益を に不可能な場合、or 環境/健康/安全への負の
進歩への適用
上回る場合除外
影響が便益を上回る場合除外
見直し
・指令発効後 2 年以内に規定する措置、 (対象の追加提案は変更なし)
cat.8(医療機器)、cat. 9(監視制御機)
(追加)見直し作業で、追加物質の環境/健康
を対象に含める提案の提示
への影響に留意。委員会は代替可能性の調
・委員会は追加物質の調査/提案
査、欧州議会・理事会に追加物質の提案
罰則
加盟国は罰則を規定
(追加/変更なし)
(注)WEEE 付属書ⅠA: category.1=大型家電、cat.2=小型家電、cat.3=IT、cat.4= 民生電子機器、cat.5=
照明器具、cat.6=工具、cat.7=玩具、cat.8=医療機器、cat. 9=監視制御機、cat.10=自販機
<WEEE>
理事会/共通の立場
欧州議会/第二読会修正意見
対象範囲
・中小企業への費用負担の条項適用を (削除) ← 免除しない
5 年間猶予
消耗品
・廃棄時点において製品と一体である (変更なし)←全ての消耗品とする案は否決
構成部品、サブアセンブリ、消耗品を含む
生産者の定義
(3 つの規定のうち)
製品設計の定義
(追加) 機器に生産者ブランドが明示されてい
・他の供給者により生産された機器を る場合の販売者は生産者と見なされない←
RoHS と同じ
自己ブランドで再販売する者
・ 電気電子機器を加盟国に職業的に輸 (追加)---ファイナンス契約により加盟国のある
者が加盟国の別の者(first holder)に持ち込
入 or 輸出する者
んだ場合の first holder は職業的輸入者と
見なされる
(規定なし)
(追加) 機器/部品等の re-used、re-usable、
recycled が妨げられない方法で設計
回収
・加盟国は指令発効から 30 ヶ月以内に (追加) 指令発効後 30 ヶ月までに WEEE を未
無償返却可能な回収システムを構築(ギリ 分別の都市ゴミと分別回収
シャ、アイルランドは 24 ヶ月猶予)
指令発効から 30 ヶ月以内に無償返却可能な
回収システムを構築(2 カ国の猶予条件は残って
いる)
・指令発効から 36 ヶ月以内に 4Kg/人/ (変更) 遅くとも 2005.12.31 までに 6 ㎏/人/
年の分別回収達成を提示
年の分別回収達成を努力
・できるだけ速やかに強制的目標の確 (変更) 2007.12.31 までに 2008 以降の新目標
の確立
立
処理
・ 加盟国は生産者が個別 and/or 共同に (変更) 最先端の再生/リサイクル技術を用いて
よる WEEE の処理できるシステムを構築 WEEE の処理できるシステムを構築。システムは生産
者により共同 and/or 個別で構築されること
が可能
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EU の WEEE & RoHS 指令法制化の動向
・ 処理は全ての液体の除去と付属書Ⅱ (分離処理の規定の変更なし)←義務が残る
の分離処理
・ 健康/環境保護に少なくとも同様の水 (導入可能に関する処理技術の規定は変更な
準を確保できる処理技術は付属書Ⅱ し) ← 導入可能
の導入可能
・ 生産者あるいはその代理人は家庭以 (追加) 生産者は家庭以外の所有者からの
外からの廃棄物の回収について負担 WEEE の回収について負担しなければなら
ない
しなければならない
(追加) 生産者は自主的に家庭からの回収
システムを設立できる
再生
・ 加盟国は処理施設に送られた WEEE (変更)遅くとも 2005.12.31 までに再生・リ
が指令発効から 46 ヶ月以内に目標を サイクル率を達成しなければならない(2
ヶ国の猶予条件は残っている)
達成(GR、IRL24 ヶ月猶予)
再生率
・ カテゴリ-と目標値:再生率(熱回収を含 (変更) ← カテゴリ-の移動。再生率は 10%上乗
せ、リサイクル率は変更なし
む)/再使用・リサイクル率
-cat.1,10 ---------- 90/75%
-cat.1 --------------- 80/75%
-cat.3,4
------------ 85/65%
-cat.3,4 ------------- 75/65%
-cat.2,5,6,7,9----- 80/50%
-cat.2,5,6,7,9,10---- 70/50%
(ガス放電ランプは変更なし)
-ガス放電ランプ------なし/80%
・ 指令発効から 5 年後に議会/理事会は
委員会案に基づき全機器/ cat8(医療
機器)の再生率/再使用・リサイクル率を制
定
(変更) 議会/理事会は委員会案に基づき、
2008 年以降の全機器/ cat8(医療機器)の
再生率/再使用・リサイクル率を制定。再生/リサイク
ル技術の進歩や経験などを配慮
費用負担時期と範 ・ 指令発効から 30 ヶ月後に生産者は、 (変更なし)←家庭から回収拠点までの全部
少なくとも回収拠点に置かれた家庭 or 一部の費用負担を生産者に要求可とする
囲
からの WEEE の回収/処理/再生/処分 案は否決
の費用を負担
費用負担方式
・ WEEE の管理に係る費用負担は、個別 (変更) 個別システムを基本。加盟国は生産者の
and/or 共同システム方式。両選択者の間 費用負担に対する保証を準備
で不当な差別をしないこと
(追加)不釣り合いな高コストの場合は共同システム
も可能。回収/処理/処分コストは製品価格に内
部化。既存ファイナンス協定は指令発効から 10 年
間継続可能
Historical waste
(= HW)
の費用負担責任
・ 指 令 発 効 前 に 上 市 さ れ た 製 品 の (変更) 指令発効から 30 ヶ月後以前に上市さ
WEEE (= HW)ファイナンシング責任は発生 れた製品の WEEE ファイナンシング責任は、コスト発
時に存在する全生産者が均衡のとれ 生時に存在する全生産者が機種別市場シェア
た形で一つ or それ以上のシステムにより に応じて共同で分担
分担
Visible fee
(規定なし)
Orphan product
・コスト発生時に市場に存在しない/特定 (変更)孤児製品/タダノリ防止のため、上市時に
できない生産者からの WEEE は、生 生産者の保証金とマーキング制度を設ける
産者が共同で費用負担
(孤児製品)
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(追加) 指令発効から 10 年間を限度として製
品寿命に応じ、生産者は自主的に新製品に
HW に関する回収/処理/処分コストをユーザーに
明示して良い
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EU の WEEE & RoHS 指令法制化の動向
保証金は不明生産者の WEEE のファイナンスに使
用。保証金はリサイクルの保証形式/blocked 銀行
口座/ファイナンス制度の中で生産者参加による
運用が可能
税関は輸入者にEU通関時に保証金を徴収
する場合もあり得る
業務用 WEEE 費用 ・ 指令発効から 30 ヶ月後に生産者が費 (変更なし)
負担
用負担
・ HW の費用も生産者が負担。加盟国は
ユーザー負担の選択肢も規定可能。
・ 生産者とユーザーが取り決めることも可
能
ユーザーへの情報
・ ユーザーが利用できる返却/回収システム、再 (追加) 都市ゴミとの分別回収。
使用/リサイクル/再生へのユーザーの役割、シ 有害物質の存在
ンボルマークの意味
(変更) 生産者は、指令発効から 30 ヶ月後以
・ 指令発効から 24 ヶ月後、生産者は機 降に上市する機器/使用説明書にシンボルマーク
器/使用説明書にシンボルマークを表示
を表示
処理施設への情報 ・ 生産者は処理施設への構成部品と材 (変更) 生産者は、リユース、リサイクル施設に構成部
品と材料の情報を提供しなければならな
料の情報を提供しなければならない
い。
生産者は、メンテナンス、リユース、アップグレード、改装
のためのマニュアルを提供しなければなら
ない
執行
(規定なし)
(追加) 加盟国は、委員会が指令の遵守を
検証できるよう調査/監視インフラを整備
付属書Ⅱ
・ 廃アスベスト
(変更) アスベスト
・ CFC,HCFC,含有の機器:発泡剤/冷蔵回
路の中の CFC, HCFC は規則 2037/
2000 により、HFC、HC は正確/適切
に処理
オゾン層破壊物質 or 地球温暖化指数 15 超の
ガス。ガスは適切に取出し破壊、規則
2037/2000 により処理
規定
(変更なし)
罰則
2. 今後の予定
(1) 共同決定プロセス
・ 欧州議会が理事会の「共通の立場」に対する修正を提案したことにより、共同決定手続きに
従い、修正案は理事会と欧州委員会に送付される。
・ 欧州委員会はこれについて意見を述べる。
・ 理事会は伝達から3ヶ月以内に、
① 特定多数決(ただし欧州委員会が否定的な意見を述べた修正については全会一致の議決)で、
欧州議会の全ての修正を承認する ⇒ この場合、そのように「修正された共通の立場」の形で
採択、即ち指令が成立する
② 一つでも修正を承認しない場合には 6 週間(2 週間延長可能)以内に「調停委員会」を開催(理
事会議長と議会議長の合意)
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EU の WEEE & RoHS 指令法制化の動向
(2) 理事会(第二読会)
・ 本案を巡る理事会・第二読会の審議スケジュールは確認できていないが、6月に採決される可
能性は少ないとの情報がある。
・ RoHSについては、前述のとおり議会と理事会のポジションの差が小さいので、理事会が議会
のテキストを受け入れて、調停なしで指令が成立する可能性もあるとの見方もある。一方
WEEEについては、両者の間で違いが多くあるので、調停に入るのは間違いないといわれる。
・ これに関連して、RoHS 指令が先に成立するのではないかとの指摘もあるが、理事会は RoHS
のみを先に採択するのではなく両指令を同時に採決するものと専門家は見ている。
(3) 指令成立までのスケジュール
・ 「調停委員会」とは、理事会の構成員とそれと同数の欧州議会の代表で構成され、共同草案
の合意を目指し、欧州議会によって提案された修正を基礎として「共通の立場」を検討する。
そこでは欧州委員会は手続きに参加し必要な発議を行う。
・ 時間軸としては、調停委員会の開催から6週間(2週間延長可能)以内に共同草案を承認した
場合、その承認から6週間(2週間延長可能)以内に、①欧州議会は絶対多数、②理事会は「特
定多数決」によりそれぞれ採決を行う。いずれか一方が承認しない場合は廃案となる。
・ 従って、今後調停プロセスに入った場合(ELV=使用済み自動車指令は調停プロセスまで至
った)
、調停は本年 12 月頃に終了し、2003 年年初に両指令は正式に採択されるとの見通し
がある。
3. JBCE の動き
・ 4月10日の欧州議会本会議直後にJBCEは在ブラッセルの日系報道官易者に対しプレスリリー
スを発表し、活動の重点項目とその結果について説明している。
(別添1参照)
・ 5月21日JBCEは全加盟国に対し、WEEEとRoHSの欧州議会第二読会の結果を評価し、その内
容を全面的受け入れることによって調停に入らず指令を確定させることを要請する書簡を、
COREPER(常駐代表委員会;各構成国の大使クラスで構成しブラッセルに常駐、理事会の議
題の整理や利害の調整など、いわば理事会の前裁きを行う)宛に送付した。
(別添2参照)
・ JBCEは、必ずしも議会のポジションの全てを評価しているわけではないが、もし調停プロセ
スに入った場合、現在の第二読会の結果が改善される可能性よりも改悪となる可能性のほう
が高いと判断をしている。
EEE 指令案の動き:
環境配慮設計に関連する EEE 指令案の動きについては、本誌欧州モニタリング情報詳
細に紹介しているので(18 ページ)を参照されたい。
□
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EU の WEEE & RoHS 指令法制化の動向
別添 1
2002年4月11日
報道関係各位
Japan Business Council in Europe
(在欧日系ビジネス協議会)
交流・広報委員会 委員長 小出智清
環境委員会
委員長 杉山 隆
電気・電子機器リサイクル指令案、欧州議会第二読会終了
インクカートリッジなどの消耗品は含まれず
昨日(4月10日)、欧州欧州議会の本会議で、電気・電子機器リサイクル指令
案(WEEE&RoHS)に対する修正案への投票が行われ、第二読会が終了しま
した。本会議では、第一読会で採択されながら、欧州理事会の「共通の立場」
に反映されなかった修正要求を中心に投票に付され、採択された修正案は再度
修正要求として欧州理事会に送付されることになります。このあとの予定とし
ては、6月末をめどに欧州理事会が修正要求に対する見解を発表。すべての修
正要求を欧州理事会が受け入れた場合は、指令成立となります。しかし、欧州
議会と欧州理事会の意見がいくつかの条項で異なるため、コンシリエーション・
プロシージャと呼ばれる調整過程に入るものと思われます。この場合、もっと
も早い場合で今年末に調整作業が終了して指令が成立すると予想されます。な
おこの指令案は、廃電器・電子機器の処理を扱う WEEE Directive(EU Directive
on Waste from Electrical and Electronic Equipment)と、電気・電子機器に使われる
有害物質の使用規制の RoHS Directive(EU Directive on the Restriction of the use
of certain Hazardous Substances in electrical and electronic equipment)の2つに分
かれています。
在欧の日系企業を中心に結成された在欧日系ビジネス協議会(略称 JBCE)
は、これまで米欧の業界団体と連携を取りながらロビー活動行ってまいりまし
たが、第2読会では次の項目を重点目標にいたしました。
① 法律施行前に販売された製品のスペアパーツ、消耗品を有害物質使用禁止指
令の対象から外すという修正案を後押しする。
② 2006年から開始される有害物質の使用禁止について、加盟国は同年以前
にも禁止できるという修正案に反対する。
③ 新たな化学物質の禁止に際しては、欧州委員会が独自で決定するのではなく
欧州議会及び欧州理事会に提案、承認を得るという修正案を後押しする。
④ プリンターのインクリボン・カートリッジなどの消耗品を、WEEE 指令の対
象範囲に入れようとする修正案に反対する。
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EU の WEEE & RoHS 指令法制化の動向
⑤ 家庭から電気製品の廃棄物を回収する費用まで、企業に全額費用負担させ
ようとする修正案に反対する。
⑥ 法律施行前に販売された製品のリサイクル費用を、消費者から新製品購入
時に処理費用として徴収できる条項を加える修正案を後押しする。
⑦ 市場から撤退した企業の製品(孤児製品)のリサイクル責任を、他のメー
カーに押し付けようとする理事会案に反対する修正案を後押しする。
昨日の欧州議会本会議では、①、③、⑥、⑦の修正案が採択され、②、④
の修正案が否決されました。④の修正案が否決されたことにより、インクリ
ボンカートリッジなどの消耗品は指令の対象から外れました。また⑤の修正
案は本会議に付されることなく否決されたため、家庭からの廃棄物の回収費
用まで企業が全額負担をする義務は外されました。それ以外の採択された修
正案は欧州理事会に修正要求として送付されますが、欧州理事会がどこまで
修正に応じるかは調整過程を経なければ分からない状況です。
今回の投票の結果、JBCE がこれまで要請してきた修正提案の殆どが採用・
採択された形になり、より現実に即した、より環境に配慮した欧州指令作り
に大きく貢献したと自負しております。今後も、日本の優れた技術・経験に則
った提案を行い、欧州連合の法案作りに貢献していきたいと考えています。
尚、指令が本年末に発効した場合、電気・電子製品の廃棄物リサイクル指令が
実際に各国で施行されるのは指令発効後 18 カ月以内、すなわち 2004 年央ま
でとなります。また、有害物質の使用禁止指令は、2006 年にスタートするこ
とになると思われます。
以
上
本件のお問い合わせ先:
JBCE 事務局 衣笠(きぬがさ)Tel: (02) 230 69 92
環境委員会 委員長 杉山 Tel: (02) 534 21 42 (NEC)
MOBILE: 0475 60 68 64
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EU の WEEE & RoHS 指令法制化の動向
別添 2
21 May 2002
Mr./Mrs….
Proprosed Directive of Waste Electrical and Electronic Equipment
(WEEE) and Restrictions of Hazardous Substances
in Electrical and Electronic Equipment (ROHS)
Dear
The Japan Business Council in Europe, which represents the interests of Japanese
companies with business operations in European Member States, would like to express
its support for the text of both the WEEE Directive and the ROHS Directive resulting
from the European Parliament’s 2nd reading. The text is clearly the result of a delicate
process, aiming to take into account the opinions of all the stakeholders and operators
who will have to implement the provisions of the Directives.
JBCE has been involved in the debate about the WEEE and ROHS proposals since the
start of the procedure. Although we want to point out that the text of the Parliament’s
2nd reading position does not always deal with our concerns, we believe it will provide
a sufficiently strong basis for implementation within the Member States.
JBCE is of the opinion that any differences of opinion between the Council and the
European Parliament are insufficiently large to warrant conciliation. Therefore we
would encourage the Council to accept the European Parliament’s 2nd reading position.
It is time to end the debate and start the implementation. A conciliation procedure
would needlessly prolong the entry into force of especially the WEEE Directive, thus
further extending the period during which WEEE will not be collected separately and
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EU の WEEE & RoHS 指令法制化の動向
further extending the period during which WEEE will not be collected separately and
recycled in so many of the Member States.
Japanese companies operating in Europe are ready to take up the responsibilities that will
be imposed upon them by the WEEE and RoHS Directives. We would encourage the
Parliament and the Council to conclude the adoption process as soon as possible.
Yours sincerely,
Takashi Sugiyama
Chairman, Environment Committee
Japan Business Council in Europe
送付先:
CONDE DE SARO Francisco Javier
Ambassador Extraordinary and Plenipotentiary
Permanent Representative of Spain Chairman of the
Permanent Representatives Committee - Part 2
WOSCHNAGG Gregor
Ambassador Extraordinary and Plenipotentiary
Permanent Representative of Austria
CHRISTOFFERSEN Poul Skytte
Ambassador Extraordinary and Plenipotentiary
Permanent Representative of Denmark
SCHÖNFELDER Wilhelm
Ambassador Extraordinary and Plenipotentiary
Permanent Representative of Germany
AGATHOCLES Aristides
Ambassador Extraordinary and Plenipotentiary
Permanent Representative of Greece
KOSONEN Eikka
Ambassador Permanent Representative of Finland
VATTANI Umberto
Ambassador Permanent Representative of Italy
VALENTE Vasco
Ambassador Extraordinary and Plenipotentiary
Permanent Representative of Portugal
ANDERSON Anne
Ambassador Extraordinary and Plenipotentiary
Permanent Representative of Ireland
VIMONT Pierre
Ambassador Extraordinary and Plenipotentiary
Permanent Representative of France
BOT B.R.
Ambassador Extraordinary and Plenipotentiary
Permanent Representative of the Netherlands
LUND Gunnar
Ambassador Extraordinary and Plenipotentiary
Permanent Representative of Sweden
SCHMIT Nicolas
Ambassador Extraordinary and Plenipotentiary
Permanent Representative of Luxembourg
van DAELE Frans
Ambassador Extraordinary and Plenipotentiary
Permanent Representative of Belgium
SHEINWALD CMG Nigel
Ambassador Permanent Representative of the
United Kingdom
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ブリュッセル短信
WEEE & RoHS の欧州議会第二読会終了
− JBCE の目標ほぼ達成 −
JBCE 環境委員会委員長
NEC Europe Ltd. Brussels Office
杉山 隆
WEEE & RoHS の欧州議会第二読会終了−JBCE の目標ほぼ達成−
4 月 10 日、電気・電子機器リサイクル指令案(WEEE & RoHS)の修正案が欧州議会本会議で
の採決に付され、第二読会が終了した。投票に先立って、前日の 9 日夜、指令案に対する討議が
行われた。本会議場での討議開始時間が夜 10 時半で、夜中の 11 時半まで討議が続いた。流石に
この時間帯になると発言者以外には殆ど出席者が無く、発言したあと途中で退席する議員もいた。
昼間に行われる討議でも、発言者と環境委員会など関係する議員だけが出席するのが恒例である
が、討議の模様はすべて欧州議会の中でテレビ放映されており、他の議員も部屋に備え付けてあ
るテレビを通して、議員と欧州委員のやり取りを聞くことができるようになっている。しかし夜
中の 11 時ごろになると、いくらなんでも部屋に多くの議員が残って討議を聞いているとも思え
ず、討論も迫力を欠いた物になっていた。最初に発言をしたラポーター(修正案をまとめる報告
者)のフローレンツ議員が
「このような重要な議題がこんな時間帯に討議されることに非常に不満をもっている。これで
は殆どの議員が討議に参加できないではないか」
と発言をしたら、議長が
「この議題をこの時間帯に回してほしいと要請してきたのは、各政党の事務局である。NATO
や中東和平がらみの案件が優先されたので、議長団に不満を述べられても何ともやりようが
無い」
と答えていた。
いずれにせよ前日の 6 時ごろには、各政党の中でどの修正案に賛成するか、反対するかという
話し合いは終了しており、この深夜の討議は本日の投票に殆ど影響を与えない物であったためか、
各発言者もここを先途とばかりに自分たちの主張を披露するのではなく、これまで修正案をまと
めてきたフローレンツ議員への謝辞を中心としたものに終始した。唯一面白い動きをしていたの
は英国社民党のボウ議員で、社民党の影のラポーターであるバンブレンプト議員が推し進める、
消耗品を WEEE の対象とすることと家庭からの回収費用を企業負担にするという修正案に、明確
に反対していた。噂では、英国社民党はこの 2 つの修正案には反対するよう英国政府からの指令
を受けているということで、英国の通産省にあたる DTI という組織の人が本会議場の後ろのほう
でボウ議員と打ち合わせをしていた。唯一気掛かりだったのは、これまで消耗品を WEEE の対象
に入れることに反対していた欧州委員会が、もし修正案が採択されたら受け入れるとしたこと。
これまでは、欧州理事会も欧州委員会も反対の立場だったので、修正案が採択されてしまったと
しても、最終段階で拒否されると踏んでいたのであるが、雲行きが怪しくなってしまった。夜風
に吹かれながらホテルまで歩いて帰ったのであるが、時計は 12 時を指していた。
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WEEE & RoHS の欧州議会第二読会−JBCE の目標ほぼ達成−
翌日の投票は 12 時から始まった。いくつかの案件が採決に付され、あっという間に WEEE と
RoHS の採決が始まった。まず WEEE では、環境委員会で採択された 67 の修正案のうち、保守党、
社民党、リベラルなどが一致して推すことにした 36 の修正案が一括して採択された。次に、各
党が異議を申し立てて個別採決を要求した修正案が矢継ぎ早に採決されていく。10 名以下の中小
企業の製品は対象から外そうという理事会の新しい提案を削除する修正案が 407 票で可決。次に、
インクカートリッジなどの消耗品まで指令の対象としようとする修正案が、賛成多数であったも
のの、獲得したのが 283 票で否決された。第二読会では賛成が議員総数の半分以上の絶対過半数
を取らないと修正案は否決される。絶対過半数は議員総数が 626 名なので、
314 票が必要である。
消耗品を指令の対象から外そうと最初に動いたのは JBCE なので、この修正案が否決されたのは
感慨深いものがあった。
次に採決に付せられたのは、リサイクル率のターゲットをそれぞれ 10%ずつ上げようという修
正案。これも 290∼299 票までしか獲得できず、賛成多数にもかかわらず否決。安堵の胸をなで
おろした。消費者が廃棄物を他のゴミと混ぜて捨てることを禁止する修正案は通ったが、それを
犯した消費者には罰金を科すという修正案は流石に通らなかった。手作業による分離処理を強要
する条項では、有害物質を含むもの全てを手作業で分離せよというむちゃくちゃな修正案も否決
された。プラスチックのリサイクルターゲットを 5%にしようという修正案も否決。廃棄物の集
積場所の設置費用を全て企業に課そうとする修正案も否決された。最後に、市場から撤退した企
業の製品(孤児製品)のリサイクル責任を、他のメーカーに押し付けようとする理事会案に反対
する修正案が賛成 525 反対 2 の圧倒的な多数で可決された。
つぎに RoHS の採決に入った。18 の修正案のうち各政党が一致して推したのは 5 個。その中に
は JBCE が提案した、新たな有害物質禁止の追加の際には、欧州議会と欧州理事会の承認を必要
とする修正案が入っている。当然一括で採択された。次に RoHS の開始時期を 2006 年とし、そ
れ以前にも各国で独自に禁止をできるという修正案のうち、2006 年に開始という部分は可決され
たが、それ以前に各国で禁止できるという付帯事項は否決された。
何れにせよ、JBCE としては要請した修正提案の大部分が採択されたことになり、今回の採決結
果はおおいに満足できるものであった。今回の指令案は、議会の中が殆ど真っ二つに分かれてし
まい、314 票という絶対多数を獲得するのが大変であった。更に、本会議の採決の場で、議員総
数 626 名中、530 名ほどしか議員が出席せず、100 名近くが欠席していたため、本来であればぎ
りぎりで通っていたと思われる修正案が否決されることになった。とくに、消耗品を対象とする
という修正案やリサイクル目標をそれぞれ 10%ずつ上げるという修正案などはあと 30∼40 名ほ
ど出席者が多ければ通過していたと思われる。復活祭直後の(学校はまだ休暇中)欧州議会であ
ったために、このような幸運にめぐり合えたのかもしれない。
このあと、第二読会を通過した修正案は、修正要求として欧州理事会に送られ、欧州理事会と
欧州議会の調整過程に持ち込まれて、来年 2 月ごろに成立すると思われる。これからは欧州理事
会にロビー活動の矛先が移る。今回、消耗品を対象に含ませないというロビー活動を採決の前日
まで展開して分かったことであるが、最後まで気を抜かないでフォローしたものだけが成果を出
した。手抜きをしないことが肝心であることを心に銘記して、今後のロビー活動を展開していく
予定である。
JMC environment Update
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Vol.4 No.1 (2002. 5)
WEEE & RoHS の欧州議会第二読会−JBCE の目標ほぼ達成−
WEEE ARE NOT CONSUMABLES
電気/電子製品の消耗品を WEEE の対象から外すことに費やされた業界の努力は並大抵の物で
はない。もともとこの指令案が欧州議会に提出される前、JBCE が発足して間もない頃から、イン
クリボンカートリッジをターゲットにして、消耗品を WEEE の範囲に入れようという動きが欧州
委員会の中にあった。JBCE の内部では、特にキヤノン、リコー、エプソンといったプリンターを
扱っているメーカーから、何とかしてこの消耗品を対象から外す方策はないかと相談が持ち込ま
れた。プリンターのカートリッジは、ある程度大きな物の場合は、メーカーが回収して再利用な
どを行っている。しかし、かなりの数のカートリッジが“詰め替え再販業者”によって回収され、
インクやトナーなどを再注入して、メーカーの販売している所謂“純正品”の 3 割から 4 割安い
価格で売られている。もちろん製品に彼らのブランドなどは付いていないので、もし消耗品が
WEEE の対象になってしまうと、これらの“詰め替え業者”の再販品もメーカーが回収してリサ
イクル処理をしなくてはならなくなる。“詰め替え再販業者”がどのようなインクやトナーを再注
入したか、もちろんメーカーが知る由もない。もしカドミウムイエローやカドミウムレッドなど
が再注入されていたら処理は大変である。“詰め替え再販業者”
をどう扱うかなどの規定の無いま
まに製造者にリサイクル責任が課せられたら片手落ちでもある。生まれたての JBCE はこの問題
を引っさげて欧州委員会と接触し、欧州議会に提出された最終版では、終に「製品の廃棄時に装
着されている消耗品は WEEE の対象品とする」という文言に変えてもらい、製品の使用中に交換
されて廃棄される消耗品は対象から外れることになった。JBCE が独自で獲得した修正の一つであ
る。
これに対してグリーン党やたびたび短信に登場するバンブレンプトを中心とした社民党の左
派が、<製品の廃棄時に装着されている>という部分を削除する修正案を提出してきた。この部
分がなくなると、自動的に消耗品は WEEE の対象となってしまう。この修正案は第一読会で過半
数の票を集め採択されてしまった。しかしながら、欧州委員会は消耗品を WEEE に入れるのに反
対しており、また欧州環境理事会も反対の声が高いという情報があった。そのような状況では、
修正案が欧州議会を通っても、欧州委員会が反対している場合は欧州環境閣僚理事会の全会一致
のサポートがなければ採用できない事になっているため、欧州委員会と欧州閣僚理事会の 1 カ国
でも押さえておけば、つぶれる確率が高いと踏んでいた。案の定、欧州理事会が第一読会後に修
正を加えた「共通の立場」ではこの部分は削除されなかった。
もちろん消耗品にこだわるバンブレンプト議員やグリーン党、左翼気味の英国リベラルのクリ
スデービス議員がこの修正案を諦めるはずはない。第二読会でも全く同じ修正案を出してきたば
かりか、クレバーチップなる新しい技術が出てきたということを唯一の論拠として、消耗品を一
括で WEEE の対象に含めてしまえという暴挙に近い修正案を出してきた。クレバーチップという
のは、インクリボンカートリッジのインクが無くなると電流が流れ、カートリッジについている
ヘッドの部分を自動的に破壊し、インクを再注入して再販しようとしても不可能にする物らしい。
これをカートリッジに装着されると、
“詰め替え業者”はあがったりになってしまう。危機感を覚
えた“詰め替え業者”は結束して「クレバーチップは、製品の再利用を促進しようとする WEEE
の精神に反する物である。何とかしてクレバーチップを阻止してほしい」とロビーイングをした
ようである。これに呼応したのが英国リベラルのクリスデービス議員で、グリーン党と組んで、
“消耗品やスペアパーツなど電気・電子製品に関わるすべての物を WEEE の対象とする”という
修正案を出してきた。
JMC environment Update
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Vol.4 No.1 (2002. 5)
WEEE & RoHS の欧州議会第二読会−JBCE の目標ほぼ達成−
第二読会に提出できる修正案というのは、2 種類しかない。一つは、第一読会の本会議で賛成
多数を獲得して通過したもののうち、欧州理事会が修正要求を受けて作成したコモンポジション
の中に反映されなかったもの。つまり、欧州議会が修正要求をしたにもかかわらず、各国の環境
大臣の集まりである欧州環境理事会がその修正要求に応じず、無視したもの。もう一つは、第一
読会後に出てきた新たな事実があった場合、それに呼応した修正案。クレバーチップなるものは、
第一読会の以前から問題になっていたかどうかが判断基準となる。当初、環境委員会の議長団は、
消耗品までを新たに対象とする修正案は、この修正案に関する欧州議会の規則に合っていないと
して、却下する方針のようであった。しかしながら、欧州委員会のクリンバルという役人が、ク
レバーチップは新たな事実として環境委員会で発言したため、結局は採決の対象となることにな
った。
環境委員会が終了した 3 月 21 日のあと、キヤノンの栗山氏、JBCE 事務局、小職で話し合い、
消耗品をなんとか WEEE & RoHS の対象から外すことを、第二読会に向けた JBCE の最後のロビ
ー活動にしようということになった。小職には、第一読会の採決の際、分離処理の修正案を通す
ため、前日に社民党、リベラル党、グリーン党に修正案支持を依頼するポジションペーパーを配
ったことが鮮烈に頭の中にあった。夜 8 時までかかって延々とコピーして配布したことが効を奏
して、保守、リベラル、グリーンの賛同を得て修正案は通過(バンブレンプトの社民党は反対)。
欧州理事会のコモンポジションにも反映された。消耗品を入れようとする修正案をつぶすには、
少なくとも、リベラルと社民党を分裂させなければならない。リベラルの代表であるクリスデー
ビス議員は英国リベラルであるが、リベラルとは名ばかりで、英国のリベラルはグリーン党と同
じようなスタンスを取っている。しかし他の国のリベラルはむしろ保守に近いので、中を割るの
はさほど難しくはない。社民党を割るのはなかなか難しいようである。唯一可能性があるのは英
国社民党で、現在の英国の政権党であるということもあって、現実的なアプローチを好む傾向に
ある。
もう一つ小職の頭にあったのは、消耗品を集めてカラー写真を取る事。消耗品と一言でいって
も、インクカートリッジだけではなく、掃除機のゴミ袋、コーヒー入れのフィルター、プリンタ
ー用の紙、CD、CD-ROM、カセット、果ては電気ドリルの刃先も消耗品である。これらのものを
一堂に撮った写真を載せたポジションペーパーを、欧州議員全員に配って、掃除機のゴミ袋まで
回収、リサイクルを電気製品のメーカーが受け持たなければいけないのはおかしいと、視覚に訴
えていったら可能性があるのではないかと考えた。ともかくもともとの欧州理事会のポジション
では消耗品は含まれていないのであるから、修正案を通過させなければそこで終了する。本会議
で 314 票を獲得できなければそれで OK なのである。理事会のポジションを変更するための修正
案では、まず 314 票を獲得しなければならず、更にそれが通過したあとでも、理事会が受け入れ
るようにするための工作が必要となる。その意味では、消耗品の戦いは焦点が絞りやすい。とも
かく、314 票に達しないように工作すればいいのである。
4 月 4 日にこれらの消耗品を集めて写真撮影。更に、本文のほうは、HP のミッシェルが非常に
いいタイトルを考え出してくれた。即ち、
「WEEE ARE NOT CONSUMABLES」(別掲)
である。ちょっと悪乗りとも思われるが、HP は更にウェブサイトまで作り出した。興味のある人
はアクセスしてみると面白い。
http://www.weeearenotconsumables.com
JMC environment Update
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Vol.4 No.1 (2002. 5)
WEEE & RoHS の欧州議会第二読会−JBCE の目標ほぼ達成−
4 月 8 日の朝までに、この配布物をカラープリンターで 630 枚作成し、その日の午後、ストラス
ブールの欧州議会の全議員の郵便ボックスに投函した。フォード議員にお会いしたら、
「もし、万が一この法案が通過してしまったら、産業委員会として、消耗品を含めることに対
する質問状を出すので、質問状を用意してほしい。」
実に頼りになる議員である。裏情報では、英国社民党は、欧州議会の社民党が提出している消耗
品を対象とするという修正案と、家庭からの回収費用も全て製造者が負担するという修正案に反
対するらしいとのこと。英国の通産省の DTI という所が指示を出しているらしい。実際、採決の
前日の討議の場では、DTI のダウンズという役人が(日本に居たことがあって、日本語が流暢な
人*)議会の最後尾の席に陣取っていて、英国社民党のボウ議員としきりに打ち合わせをしていた。
その後、ボウ議員は消耗品と家庭からの回収費用について修正案に反対する意見を述べた。
欧州議会本会議の採決では、消耗品の修正案は、283 票しか集められず、賛成多数ではあった
が、314 票に届かないということで却下された。あの、カラー写真入りの配布物が、何らかの形
の心理的な影響を与えたと思う。採決が終了したあと、エプソンのシェグラント、弁護士事務所
のポレ、藤井事務局長と、欧州議会にある喫茶店で、勝利のシャンパンを傾けた。
以上
*
編者注: 当組合 貿易と環境専門委員会は WEEE & RoHS 指令に関し、同氏との意見交換会を昨年 12 月に東京で開催した。
(詳細は本誌 Vol.3 No.5、p.6 ∼ p.12 を参照)
JMC environment Update
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Vol.4 No.1 (2002. 5)
WEEE & RoHS の欧州議会第二読会終了−JBCE の目標ほぼ達成−
EICTA
European
Industry
Association
Information Systems
Communication
Technologies
Consumer Electronics
WEEE ARE NOT CONSUMABLES
SSeeee w
m
maabblleess..ccoom
weeeeeeaarreennoottccoonnssuum
w..w
ww
ww
weebbssiittee w
“Consumables” examples could be: coffee bags, vacuum cleaner bags, drills, electronic tooth brush
heads, paper, audio tapes, gas/ glue/ or printer cartridges, CDs, etc.
WEEE Directive – Article 3, point (b)
Council common position
Text adopted by ENVI Committee, March
21
(b) ‘waste electrical and electronic
equipment’ or ‘WEEE’ means electrical or
electronic equipment which is waste within
the meaning of Article 1 (a) of Directive
75/442/EEC, including all components, subassemblies and consumables, which are part
of the product at the time of discarding;
(b) ‘waste electrical and electronic
equipment’ or ‘WEEE’ means electrical or
electronic equipment which is waste within
the meaning of Article 1 (a) of Directive
75/442/EEC, including all components, subassemblies and consumables;
VOTE NO!
JMC environment Update
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Vol.4 No.1 (2002. 5)
WEEE & RoHS の欧州議会第二読会終了−JBCE の目標ほぼ達成−
EICTA
European
Industry
Association
Information Systems
Communication
Technologies
Consumer Electronics
WEEE ARE NOT CONSUMABLES
SSeeee w
m
maabblleess..ccoom
weeeeeeaarreennoottccoonnssuum
w..w
ww
ww
weebbssiittee w
The European Parliament’s April 9 plenary vote will determine whether or not these "consumables" will be
added to the scope of the WEEE Directive.
We urge the Parliament to reject this amendment to the Council common position, for both environmentally and
economic considerations, because;
•
•
•
•
•
The inclusion of consumables in the WEEE directive (such as toothbrush heads, vacuum cleaner bags,
etc.) will not result in any environment gain. Existing waste collection and treatment systems are better
suited to deal with this waste stream.
The implication of the inclusion of consumables was not addressed in the Commission’s preparatory
studies while drafting this Directive. No consultation with stakeholders, cost-benefit analysis, or
proportionality study was carried out in relation to consumables, to define environmentally preferable
treatment.
The Commission did not include consumables that are being used during the life-time of an
electric/electronic appliance in the scope of its proposal.
Many of the provisions of the current texts of the WEEE Directive are inappropriate if applied to
consumables, e.g. recycling rates, labeling and financing mechanisms.
It is not justifiable that producers of electronic and electrical equipment should be made responsible for
the collection and treatment of consumables which are generally produced by companies of another
sector, e.g. video recorder producers should not be responsible for video cassettes.
VOTE NO!
JMC environment Update
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Vol.4 No.1 (2002. 5)
連載
欧州環境規制動向
∼ 在ブラッセル弁護士モニタリング情報 ⑳
I.
EU
欧州委員会によると、同委員会が独立の専門機関
1. 欧州委員会、電気自動車のカドミウム
電池の使用禁止に関する規則を提案
の支援により実施した分析の結果、カドミウムの
欧州委員会は、2002 年 3 月 6 日、2005 年までに
動車市場に混乱を生じさせることなく、2005 年
代替物質は「すでに市販されているので、電気自
12 月までにカドミウムを使用しない電気自動車
電気自動車のカドミウム電池使用を禁止し、重金
への移行を完了することができる」という。
属をより安全な代替物質に置換える規則を提案し
た。
また、カドミウムという重金属は動植物に必要不
可欠なものではなく、ヒトの腎臓障害の原因物質
自動車用電池へのカドミウム使用を禁止する同規
として知られているという。
則は、EU の使用済み自動車(ELV)指令のフォロ
ーアップを意図したものである。同法は 2000 年
に採択され、
適用除外規定に規定する用途を除き、
2003 年までに鉛、水銀、カドミウム、六価クロム
一方、ニッケル水素電池は、カドミウム電池の代
替電池としてすでに利用可能である。さらに委員
会によると、リチウムイオン電池も近い将来には
の全面禁止を求めている。
利用可能になるという。
今回のカドミウムに関する委員会提案が、EU の審
今回の提案は今後、EU 廃棄物枠組み指令に基づき
議プロセスを経た後に承認された場合、EU 自動車
設立された規制委員会(regulatory committee)に
業界にとっては、前述の ELV 指令に規定するカド
送付され、審議される。規制委員会は加盟国の代
ミウム禁止措置への適合期限の 2 年間の延長が認
表により構成され、欧州委員会が議長を務めてい
められることになる。
る。
「ELV 指令を実施することにより、2005 年までに
規制委員会が特定多数決により同案を支持した場
自動車用電池に含まれるカドミウムを取り替えな
合、欧州委員会が正式にその決定を採択する。そ
ければならないというメッセージを明確に伝える
つもりである」と、ヴァレストレム(M. Wallström)
環境委員は述べている。「このような電池が電気
うならなかった場合には、閣僚理事会が 3 ヶ月以
内に決定を下すが、
決定に至らなかった場合には、
欧州委員会が同案を採択する。
自動車に使用されていること、また当然ながら、
かかるゼロエミッション車の市場拡大を何よりも
2. 欧州議会議員(MEPs)、WEEE 指令を
強化する意向
確実なものにしたいという願いから、利用できる
代替物質への移行が電気自動車市場に弊害を及ぼ
さないようにすることが重要である。」さらに、
年間 600 万トンの割合で増加しているコンピュー
「私達の提案は、電気自動車の利用拡大を保証し
ター、ヘアドライヤー、調理器、トースターなど
つつ、このようなカドミウムの使用を中止させよ
の廃電気電子機器回収等管理制度の財源は、各製
うとする試みである」と、述べている。
造業者が負担しなければならない。これは共同決
定手続に基づき、議会の環境委員会が 2002 年 3
JMC environment Update
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Vol.3 No.5 (2002. 1)
欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑳
月 21 日に全会一致で、ラポーターのフローレン
止し、当該製品の強制的回収目標を一世帯につき
ツ(K. Florenz)議員、による第二読会の修正案を
年間に一人当たり 6 キログラムに設定する修正案
採択した際の見解である。欧州議会議員(MEPs)
を承認した。そして、検査およびモニタリング設
は、廃電気電子対策を目的として、理事会の「共
備を設け、規則違反には罰則を課せられるように
通の立場」
という形式で採択された最新指令案と、
するなど、同修正を補完したいとしている。目標
この種の機器に含まれる有害物質を制限する
の達成期限は 2005 年 12 月 31 日。
閣僚理事会は、
(RoHS)指令案の内容を強化する決意である。
わずか年間 4 キログラムという自主目標を設定し
ている。達成期限は、同指令の施行後 36 ヶ月以
環境委員会は、第一読会で要求した各製造業者の
内である。これは、消費者が毎年廃棄する平均量
責任を義務付けることを再度要求している。この
の僅か 4 分の 1 である。
要求は閣僚理事会の共通の立場では拒否されたが、
代わりに共同責任制度あるいは個別責任制度の何
理事会が大半の種類の機器について定めている目
れかを選ぶという選択肢を製造業者に与えている。
標と比べて、再生、再利用およびリサイクル目標
を 10%引き上げた。また、冷蔵庫や冷凍庫に限ら
同議員は環境委員会の承認を受け、自社製品の廃
ず、オゾン枯渇ガスを含むすべての機器から同ガ
棄に関する将来的な財源を予め生産者が負担する
スを除去したいとし、廃棄製品のプラスチック構
ことを義務付けるよう加盟国に要求している。こ
成部品について、最低 5%をリサイクルするとい
れは、無責任な生産者が市場から消えてしまい、
う要件を導入しようとしている。
その他の修正は、
残された環境に有害な WEEE の処理費用を他の生
新ルールに関するユーザー向け情報に関する規定
産者に負担させるような事態を防ぐための措置で
の強化、そして今後市販する製品には廃棄を禁止
ある。閣僚理事会は、当該製造メーカーが存在し
する表示を義務付ける内容となっている。
なくなった「孤児製品(orphan products)
」の処
理費用は、その時点において市場に存在する生産
また、電子電気製品の製造に使用される有害物質
者が共同で負担することを義務付ける新たな条項
を規制するという関連指令(RoHS 指令)につい
を挿入している。
ての共同決定要件に従い、フローレンツ議員によ
るもう一つの修正案を全会一致で採択した。これ
論議を呼んでいる「historical waste」問題に関し
により、
より安全な代替物質が利用できない場合、
ては、環境委員会も理事会と同じ立場を取り、生
および禁止措置の施行前に販売されたスペアパー
産者が分からない製品も含めて、新法の施行前に
ツについては除外規定を設けながらも、重金属お
市場の製品の廃棄費用については、生産者間で共
よび難燃剤の使用禁止日程については 2006 年 1
同負担すべきであるとしている。しかしながら理
月 1 日に前倒しした。
事会は、複数の制度の下、生産者の均等拠出によ
る費用負担を求めている一方、環境委員会は生産
二つの指令に関する理事会の共通の立場について、
者が市場占有率に応じて共同負担すべきだと主張
全部で約 80 の修正を成立させた。その多くは、
している。そして、既存のいくつかの方式の継続
第一読会の内容を再び盛り込んだものである。し
を最長 10 年間認めている。
また生産者は historical
かしながら、一部の修正については多数決といっ
waste の処理費用を新製品販売時点で表示するこ
ても僅差であったため、4 月に予定されている本
とができる
(いわゆる visible fee)
。
しかしながら、
会議の第二読会で必要な 314 票を獲得することは
閣僚理事会案の中小企業を対象とする 5 年間の特
難しいかもしれない。
例措置については、新指令から削除した。理事会
が挿入した軍事用機器を対象とする新除外規定は、
わずか 2 票差でそのまま残った。
3. ステークホルダー、EEE の環境適合設計
に関する提案を批判
産業界および NGO をそれぞれ代表するステーク
圧倒的多数(40 票対 10 票)により、消費者が一
ホルダーは、電気電子機器(EEE)が環境に及ぼ
般の家庭ゴミと一緒に WEEE を廃棄することを禁
JMC environment Update
19
Vol.4 No.1 (2002. 5)
欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑳
す影響に関する将来の提案を求める欧州委員会の
いう。この法律により、中小製造業者にも自社製
計画を非難している。
品の設計段階での環境を考慮させ、エコデザイン
および「エコイノベーション(エコロジーとエコ
企業総局のウェブサイトに公表された産業界およ
ノミーの両立を目指した技術革新)
」
を向上させる
び NGO のコメントによると、作業ペーパーに示
ことになる。
1
された提案に対する反発が強まっている 。企業総
局がビジネス・インパクト調査を開始したのに伴
EEE 指令案では、生産者は以下の事項を実施しな
い、このような非難が出現してきている。同調査
ければならない。
は秋まで引き続き実施される。
・ 環境に影響を及ぼす要因を特定するための影響
委員会関係者は、委員会として進めていくのかど
評価を実施し、かかる要因を製品設計の段階で
うか、そしてステークホルダーによるこのような
低減できるようにする。
否定的な反応にどう対処していくのかについて、
・ 同評価を利用して、経済的・技術的要件の均衡
コメントを拒否した。
をはかりつつ、
「高水準の環境保護」を保証する。
・ 製品のライフサイクルを通じて、「関連する環
EEE すなわち「トリプル E」指令案はまだ作業ペ
境情報」をステークホルダーに提供する。
ーパーの段階にある。ステークホルダーとの協議
は 2002 年を通して続けられる見込みであり、そ
同案は、法律に関するいわゆる「ニューアプロー
の後正式案が公表される。第 1 案が発表されたの
チ」を基準としている。これは 1985 年に初めて
は 2000 年 4 月であるが、否定的なコメントの対
導入されたものである。ニューアプローチは、通
象となったのは 2001 年 2 月の案である。
常の EU 法とは異なり、製品に関する規範的規則
を定めるのではなく、基本的な安全およびパフォ
EEE 指令案は、持続可能な開発という目標および
ーマンス、あるいは EEE 指令の場合には環境など
他の政策分野への環境要因の統合に即して、環境
を網羅して、幅広く「必須要求事項」を定め、格
に与える「総体的な影響」を低減するために電気
電子機器の設計の改善を目指すものである。
また、
域内市場における電気・電子製品の自由な移動の
確保を目指している。
によって埋めるというものである。
その目的は、企業の競争力を阻害することなく、
また技術革新および技術移行を妨害することなく、
同局は、この戦略により、持続可能な製品に関す
一般市民を保護することである。このニューアプ
る技術革新が促進され、欧州産業界の競争力が長
ローチは、現在委員会によって見直し作業が進め
期的に強化されると見ている。
られている。
同案の範囲としては、構成部品も含め、家庭用お
よび商業用機器の双方を対象とする。EU において、
EEE は製造業界の中でも急速な成長分野の一つで
ニューアプローチは「環境影響が製品の製造、意
図された使用、および/またはライフサイクルの
終了に関連し、製品に対して具体的な環境要件を
ある。WEEE 問題は、別途、WEEE 指令案により
導入する必要がある場合には」貴重であると考え
取扱われている。
ている。
企業総局によると、大手製造業者は自社製品が環
また同案は、委員会にとってのみならず、業界に
境に及ぼす影響を低減するために多大な努力を講
とっても「文化的変貌」
、すなわちエコデザインお
じているが、中小製造業者の多くは遅れていると
1
差の部分は欧州標準化委員会(CEN)の自主基準
よび「ライフサイクル思考」への移行を意味する
という。これは、包括的製品政策(IPP)に関する
コメントについては、下記サイトを参照のこと。
http://europa.eu.int/comm/enterprise/electr_equipment/ee
e/comments.htm
JMC environment Update
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Vol.4 No.1 (2002. 5)
欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑳
グリーンペーパーに深く反映されている考え方で
とになる。同法により中小企業は破綻を余儀なく
ある。
される可能性があるという。UEAPME は、中小お
よび零細企業に対する教育および技術支援を提供
委員会には利害関係者から 11 件の回答の提出が
するため、準備対策が加盟国レベルで講じられた
あり、
企業総局のウェブサイトに公開されている。
場合に限り、同提案を受入れることになろう。
AeA、EIA、NEMA および SIA(米国電子協会・電
同団体は、同法が中小企業に除外措置を適用する
子工業会・電気工業会・半導体工業会)
場合、最低 8 年間の移行措置期間および小量生産
米国の EEE 業界を代表する 4 主要団体は、同指令
に対する一連の免除規定を求めている。
案の全面的撤回を求めている。同団体は、企業総
ドライン」など、規制というアプローチに代る代
EICTA
欧州情報通信技術製造者協会(EICTA)は、ICT
替策を求めている。
「環境適合設計に関する指令」
ビジネスには環境面が十分に統合され、製品は世
は不要であるという主張である。
代ごとに小型化し、エネルギー効率が向上してい
局に対し、「業界主導による自主的な国際的ガイ
ると主張している。
同団体は、WEEE および有害物質の規制(RoHS)
指令案、ならびに IPP に関するイニシアチブおよ
しかし、
「国内および地域別製品規格の急増」
を懸
び持続可能な開発に関する戦略(SDS)などを考
念している。
「かかる規格の急増は技術革新、
新製
慮して、
「重複する法律」
に対する警告を発してい
品開発を著しく阻み、単一市場を歪めるものであ
る。WEEE および RoHS 指令は双方とも業界にと
る」というのである。
って費用負担が極めて大きなものになると主張し
EICTA もまた、自主的アプローチを支持している。
ている。
作業ペーパーの文言については「解釈にかなりの
そして、
「設計の柔軟性を阻害するものであり、
製
幅」があり、ライフサイクル思考の適用というよ
品の技術革新を妨げるもの」になる可能性がある
り、本格的な LCA が必要であることを示唆してい
という。さらに、施行が極めて難しいと考えてい
る。本格的な LCA を実施しても、
「技術革新およ
る。同 4 団体は、同局がこの EEE 案によりどのよ
び製品の環境パフォーマンスの向上を刺激するの
うな環境問題を解決しようとしているのか理解で
に必要な創造的基盤」に繋がるものではない。
きないと述べ、ライフサイクル・アセスメント
(LCA)は要件ではなく、一つのツールであるべ
さらに、同指令の範囲に構成部品を対象とするこ
きだという意見を表明している。
とに懸念を抱いている。個々の構成部品に関する
詳細情報の入手は難しく、企業秘密情報の開示に
繋がる可能性があると主張している。EU にとって
UEAMPE
中小企業を代表する同団体も作業ペーパーに否定
も、この要件を施行するのは難しい。
的な反応を示しており、その方針を表明したペー
パーの中の、同案が中小企業にもたらす問題に焦
EICTA が同指令を支持するかどうかについて、企
点を当てている。つまり、零細企業および小規模
業への影響評価が「決定要因」となる。
企業の場合、環境がこれまで優先事項であったこ
とはなく、環境方針を持たないところが大半であ
デンマーク EPA
るという。このような企業のほとんどが緊急の日
デンマーク環境庁(EPA)は、同作業ペーパーに
常的問題に対処する必要から、極めて短期的な計
ついてコメントしている唯一の国家取締機関であ
画しかもっていないという。
るが、IPP の枠組み内でのイニシアティブを歓迎
するという。同作業ペーパーは、かかる枠組みの
IPP および LCA の概念は、
「一夜にして実現でき
範囲内にある初の具体的な立法例であり、
従って、
るはずもない重大な文化的変貌」を必要とするこ
JMC environment Update
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Vol.4 No.1 (2002. 5)
欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑳
同案にとって「正しい道筋」を見出すことが必要
ップについては政治的責任事項であり、標準化機
不可欠である。
構に任せるべきではないとしている。
EPA によると、多くの製品は環境に様々な影響を
及ぼしており、環境を改善するためにはどの影響
4. 欧州委員会、エアコンのラベル表示に
関する提案を上程
をまず低減すべきか、あるいはどの影響を最も低
欧州委員会は 2002 年 3 月 22 日、家庭用エアコン
減すべきかを決定しなければならないという。ま
のエネルギー表示ラベルに関する指令案を提出し
た、
十分に高い環境保護基準を設定することは
「政
た。本指令は、家電製品のエネルギーラベル表示
治的優先順位の問題であり、適切な政治的かつ民
に関する指令 92/75/EC の適用に追加される。そ
主的な管理をしないまま標準化機構にまかせるべ
の目的は、販売時点でラベル表示をすることによ
きではない」と主張している。
り、消費者にエネルギー消費量の少ない家電製品
の購入を奨励することである。同指令は、委員会
さらに LCA については、
「専門家のツール」であ
が特定の家電製品に関する指令の実施を採択する
り、認められた方針に従って初めて利用されるべ
場合に備えたものである。冷蔵庫、洗濯機、食器
きものであるとして、その使用に反対している。
洗い機、および照明器具に続いて今後はエアコン
詳細な基準もないまま LCA を使用した場合、
「基
も同指令の適用対象に入る。
準が曖昧なため信頼性の高い結果は得られず、最
悪の場合にはユーザーが求める結果が得られない
欧州委員会によると、共同体における家庭用エネ
可能性もある…かかる曖昧な定義は指令として不
ルギー総需要に占めるエアコン電気消費量は「か
適切である」と主張している。
なりの割合を占める」
、さらに、かかる家電製品の
エネルギー消費量の削減余地は大きいとしている。
ANEC、BEUC および EEB
そこで、同指令案は、欧州規格 EN 255-1、EN 814-1、
ANEC(標準化における消費者代表の連絡調整を推
あ る い は 欧 州 標 準 化 委 員 会 ( CEN ) が 指 令
進する欧州の団体)
、消費者団体 BEUC、および環
98/34/EC に基づき採択した整合規格に定義され
境保護団体 EEB も同案を不服としている。WEEE
ている電源式の家庭用エアコンに適用される。同
指令を補完する考えは原則的に支持するとしなが
案は、他のエネルギー源も使用可能な機器、
らも、環境パフォーマンスのレベルを決定するの
air-to-water 型および water-to-water 型の機器、
は製造業者自身であるとして、企業総局の提案は
あるいは出力(冷却力)が 12 キロワットを超え
「不十分な手段」であるとしている。
る機器には適用されない。
同 3 団体は、現在の文書では「高水準の環境保護
同案は、家電製品をエネルギー効率によって A か
を保証することはできない」と主張している。さ
ら G に分類し、技術文書としてサプライヤーに関
らに、「曖昧な文言は…解釈および施行を完全に
する情報、モデルの説明書、設計上の特徴に関す
不可能にするものである」としている。本指令案
る情報、測定テストの結果報告および取り扱い説
は、業界の自由にさせるということであり、それ
明書を要求する。
は「いずれにしろ業界が取る行動」と変りないと
5. EU 閣僚、環境賠償責任法を強化
いう。
輪番制の EU 議長国を現在務めるスペイン政府に
ANEC、BEUC および EBB は、環境問題の専門家が
よると、2002 年 3 月 4 日に開催された閣僚理事
実現可能性調査(feasibility study)を策定する必
要があると指摘し、同案策定には一層の「専門性」
が必要であると述べた。さらに、EEE 指令案に関
する手続について性急に進めるべきではないと警
強化を支持したという。
議長国スペインは、加盟国に 3 つの問題提起をし
告し、
「原則段階から実行段階へ」
という次のステ
JMC environment Update
会で、EU 加盟国の大多数が環境責任法の枠組案の
た。a) 指令の範囲、特に遺伝子組換え組織(GMO)
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Vol.4 No.1 (2002. 5)
欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑳
による生物多様性への被害を適用範囲に含めるこ
局が実際の汚染者より大きな負担を抱えなければ
と、b) 事業体に認められる除外規定および/ある
ならい事態を回避したいとしている。フランスの
いは免除規定、c)補完すべき、あるいは補完でき
コッシェ(Y. Cochet)環境・国土整備相は、除外
る保険および他の財政保証制度、ならびにかかる
規定を廃止する修正案を提出している。除外規定
制度に強制力を持たせるかどうか、
の 3 点である。
とは、事業者が許認可を受けているという理由だ
各国代表は正式案の考え方を基本的には歓迎して
けで責任を免除させるものであるという。
いるが、同案に対する非難がないということでは
第 3 点目は、保険制度を義務付けるかどうか、そ
ない。
して財政保証の必要性の問題である。意見の相違
まず指令の範囲という問題に関して、特に(ヒト
は見られるが、不平等な条件を生み出さないよう
や物に対する)従来の被害を適用範囲に含めるの
にすることでは全員一致している。共通の強制的
か含めないのかという点については、補完性の原
制度を強く支持している国は、アイルランド、オ
則(subsidiary principle)を適用する、すなわち第
ランダ、ギリシャ、ルクセンブルグとイタリアで
三者責任に関する国内法で十分であるというイタ
ある。オーストリアも同じ陣営に属するが、同政
リアの意見に賛成する国はほとんどない。他の国
府は、
かかる決定が正確に何を意味するかを巡り、
はすべて、GMO による被害を適用範囲に含めるこ
保険業界と広範囲にわたる交渉を持つことを強く
とに対して強化の方向で対策を講じるべきだと考
求めている。ドイツはどちらかというと慎重であ
えている。同指令案は、現段階において、EU の
り、強制的な制度を支持してはいるが、それは加
GMO 販売承認に対する事実上のモラトリアム一
盟国が自由に手続を決定できる制度をということ
時的禁止について、さらに柔軟な対応を加盟国に
である。他に躊躇を示している国はフランスであ
認めるものではない。アイルランド、オーストリ
る。昨年ツールーズで発生した工場事故をきっか
アおよびルクセンブルグは、遺伝子工学による潜
けとして、強制的な保険制度の導入を計画してい
在的被害と共に、原子力産業による損害を指令の
る。スウェーデンは、加盟国には、事例ごとに決
範囲に含めるべきであると考えている。アイルラ
定できるよう十分な自由裁量が与えられるべきで
ンドの閣僚は、
パリ条約およびウィーン条約など、
あると考えている。
フィンランドとデンマークは、
かかる問題に及ぶ国際条約の存在を指摘し、原子
かかる制度は強制的なものでなければならないと
力産業の責任を縮小すべき理由はないとしている。
指摘しているが、いくつかの詳細な共通ルールを
いずれにしろ加盟国によると、同指令の適用範囲
策定することには利点があると考えている。
に該当する被害については、かなり詳細かつ正確
な定義が必要であるという。
6. 欧州委員会、43 種類の CMR 物質につい
て一般販売を禁止の提案
各国代表は免除規定についても大筋で同意してい
委員会は、EU における発癌性、変異原性(ヒトの
る。加盟国は、特定の活動を対象とする許認可に
遺伝子に危険を及ぼす)または生殖毒性化学品
ついて、企業が「汚染し放題(licence to pollute)
」
(CMR)と分類される物質に関する規則の強化を
程度の解釈しかしないことを警戒している。ベル
提案した2。
ギーのアルブット(M. Alvoet)環境・保健相は、
「このようなことではやがて深刻な状況に陥るこ
CMR と分類される物質に対する制限は 1994 年の
とになりかねない」という。各国代表は、潜在的
EU 化学物質規制法に初めて盛り込まれた。委員会
な除外規定を最小限に留め、明確な定義を確立し
は、2002 年 2 月 20 日、同法の現行の CMR 物質リ
たいとしている。また、汚染者を特定できない場
ストに 43 種類の化学物質を追加する修正案を提
合であれ、汚染者が支払不能を補償できないとい
出した。同修正案は、危険と見なされる物質の
う場合であれ、大半の代表は、指令案が「汚染者負
担原則」を揺るがすものとして意見が一致してお
2
り、政府当局が事業体の非を埋め合せしなければ
ならなくなることを警戒している。
そして、政府当
JMC environment Update
23
同案により禁止化学物質リストは下記サイトの付属書に収
録。
http://europa.eu.int/eur-lex/en/com/pdf/2002/
en_502PC0070.pdf
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欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑳
一般使用を禁止するために、委員会が行っている
栄養管に関しては取り外したときに硬化している
化学物質の分類および管理手続の一環をなすもの
という報道がある。つまり、ポリ塩化ビニール
である。
(PVC)の軟化剤であるフタレートが乳児の体内
に溶出したことを意味する。科学委員会は、この
一般使用が禁止される 43 物質は、一部の塗料、
報道が正確かどうか、正確な場合にはその溶出量
印刷用インク、ニスおよび接着剤に使用されてい
と、さらに重要なこととして当該乳児に及ぼす潜
る。委員会案によると、当該物質は、2003 年 4
在的リスクを立証しなければならない。
月 1 日より一般消費者への販売が禁止されるが、
産業および専門ユーザーが含有製品を購入するこ
環境ニューズレターによると、欧州委員会は現在
とは合法とされる。
のところ禁止措置は検討していないということで
ある。さらに、専門家の助言によると、当該機器
また、大半の製造業者はすでに当該物質を消費者
に代るものがないということである。しかしなが
向け製品から引き揚げているという。委員会筋の
ら、どうやら BASF 社の報告書に男性生殖器から
推定によると、業界の関連費用は低いということ
検出された DEHP に関する指摘があったことから
である。
問題の提起に至ったという。科学委員会は、この
証拠を検証しなければならない。
同法は、委員会の企業総局の提案によるが、共同
体のガン撲滅行動計画の一環として、消費者保護
科学委員会は、質問表および報告書を受け取る前
だけでなく EU 域内市場の調和の確保も目的とし
の 2002 年 1 月 18 日に会合を開いたが、委員はす
ている。
でに DEHP 問題に関して同機器部門からアプロー
チがあることを了解していたので、暫定的に作業
委員会は修正案の採択に先立ち、業界団体 CEFIC
部会のメンバーとして 5 人を選出した。同委員会
(欧州化学工業連盟)および Eurométaux(欧州
が同機器部門から正式に質問表と報告書を受理し
の非鉄産業界を代表するロビー組織)と協議を持
てはじめて任命が確定することから、担当者 5 名
ったことから、業界が同案に対して除外規定を要
の氏名を公表しようとしなかったが、同作業部会
求することはないと思われる。
の構成は、当の問題自体に大いに左右されるとし
て、他の科学委員会が関与を望む場合もあると説
7. EU 科学委員会、乳児用医療機器に使用
されるフタレート類の安全性を検討
明した。
EU では、新生児および乳幼児用医療機器に使用さ
姉妹関係にある毒性・生態毒物性・環境科学委員
れるフタル酸ジ-(2-エチルヘキシル)
(DEHP)の
会(CSTEE)は、幼児向け玩具に使用されるフタ
安全性が科学者によって検討されている。委員会
レート類に関する作業および一般的なフタレート
の医療機器担当部門は、当該物質の溶出を懸念し
の安全性評価に関する作業に深く関わってきたこ
ているオーストリアの圧力を受け、医薬品および
とから、DEHP に関する作業への参加を望むこと
医療機器科学委員会に DEHP の安全性評価を依頼
はほぼ確実である。
した。同部門は、オーストリア、フィンランドお
問リストを科学委員会に渡している。そして、す
8. 閣僚理事会、京都議定書批准に関する
法律文書を採択
べての機器に使用されるフタレート類あるいは
環境閣僚理事会は、2002 年 3 月 4 日、京都議定
DEHP の一般的安全性など幅広い問題を扱うので
書を批准するために必要な法律文書を採択した。
よびドイツの化学製品会社 BASF 社の報告書と質
はなく、栄養管などの新生児および乳幼児用の機
器に使用される DEHP の安全性について限定的に
京都議定書では、2008 年∼2012 年までに温室効
取組むよう、同委員会に依頼している。
果ガス(GHG)排出量を 1990 年の水準比 5%の削
減を先進工業国に義務付けている。EU はこの削減
量のうち、1998 年の「共同負担協定」に則り加盟
JMC environment Update
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欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑳
国間で 8%の削減を分担する。今回の理事会決定
スウェーデン
スペイン
英国
欧州共同体
出典: 欧州委員会
により、共同負担協定は法的拘束力を有すること
になる。
EU は、今年の秋に開催される持続可能な開発に関
する世界サミット(WWSD)までに、京都議定書
+ 4%
+ 15%
- 12.5%
- 8%
9. EU、ブッシュ政権の気候変動計画を拒絶
を発効させることを目標としている。その実現に
ヴァレストレム環境委員および議事長国スペイン
向けて、加盟国およびその他の国々or 非加盟国は
のマタス(J. Matas)環境大臣は 2002 年 2 月 20
6 月 1 日までに同議定書を批准し、WWSD の 90
日に公表された共同声明の中で、気候変動対策に
日前までにニューヨークの国連に送付しなければ
関するブッシュ米大統領の新提案に対する EU の
ならない。
懸念を表明した。グリーンピースや Friends of the
Earth などの環境 NGO もかかる批判および懸念を
これまでのところ、批准の準備が整っているのは
デンマーク、フランス、ルクセンブルグおよびポ
持っている。EU 加盟国がこの状況の評価とともに
ルトガルだけである。グリーンピースは、5 月末
合意の可能性を探っていくことは確実である。し
かし、EU の京都議定書批准を考慮すると難しいこ
という期限の達成が期待される、残る 11 加盟国に
とである。
対して、引き続き圧力をかけていくことを公言し
ている。
ブッシュ大統領案の公表後にすでに懸念と不満を
表明しているヴァレストレム委員と、マタス大臣
京都議定書は、1990 年時に二酸化炭素排出量の少
にとって、この対策案は国内を意識したものにほ
なくとも 55%を排出した先進国を含め、最低 55
ヶ国の国連気候変動枠組み条約締約国による批准
かならず、米国の排出量の実質的削減をもたらす
から 90 日後に発効となる。
のに十分な内容ではない。
欧州の専門家の中には、
「GDP 単位当たりの GHG 排出量目標(intensity
ヴァレストレム環境委員は、「気候変動がもたら
target)
」案は排出絶対量を増大させ、実質的な気
す厳しい結末を防ごうとするなら、京都議定書が
候変動対策として不十分なことは明らかであり、
定める目標は最初の一歩にすぎない」と認めてい
通常の経済成長率を維持しながら温室効果ガス
(GHG)の排出量削減を先進国に義務付ける 1997
る。
年京都議定書に定められた目標に反するものであ
環境閣僚、委員会および環境保護主義者は理事会
ると指摘する声すらある。EU を代表して同委員と
決定を「歴史に残る」ものと認める。
同大臣は、米国は国連気候変動枠組条約の締約国
であり、同条約では最初のステップとして、先進
1998 年共同負担協定
加盟国
削減目標(1990
年水準比の%)
- 13%
オーストリア
- 7.5%
ベルギー
- 21%
デンマーク
0%
フィンランド
0%
フランス
- 21%
ドイツ
+ 25%
ギリシャ
- 6.5%
イタリア
+ 13%
アイルランド
- 28%
ルクセンブルグ
- 6%
デンマーク
+ 27%
ポルトガル
JMC environment Update
国に自国の GHG を 1990 年基準に安定化させるこ
とが義務付けていると指摘した。米国の新提案で
は、この第一のステップが達成できなくなるばか
りではなく、排出量が増大するはずであると、EU
の声明文で厳しく指摘されている。
専門家の推定によると、
同大統領は、
過去数年間、
米国の GHG 排出量は GNP 比で減少していること、
そして経済活動が現在のテンポで進めばこの傾向
は単純に継続するという事実に根拠をおいている
という。しかしながら米国の排出量は、現在の推
定によると、2012 年までに 1990 年比で 39%増加
する可能性があると専門家は指摘する。GDP 単位
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Vol.4 No.1 (2002. 5)
欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑳
当たりの GHG 排出量(intensity)の改善により、
際のところ対処できない。EU とその加盟国は、
増加量が約 33%程度にまで下がったとしても、こ
1979 年 「 長 距 離 越 境 大 気 汚 染 条 約 ( LRTAP:
の割合では排出絶対量が大幅に増加することに変
Convention on Long-Range Transboundary Air
Pollution)
」にはすでに締約しているが、1999 年
りない。
11 月 30 日にイエーテボリで採択された「酸性
EU も、対策案が純粋に自主的性格のものであるこ
化・富栄養化・地表レベルオゾン低減のための議
と、かかる措置の効果に関する見直しが 2012 年
定書」には締約していない。
までに予定されていないことに懸念を抱いている。
また、
他の汚染物質に有益と思われるアプローチ、
「イエーテボリ議定書」は、イオウ、酸化窒素
即ちキャップ・アンド・トレード(cap & trade−
、揮発性有機化合物(VOC)およびアンモ
(NOx)
上限を決めた上で取引を認める形式のこと)プロ
ニアの 4 種類の汚染物質に関して、2010 年までに
グラムが、電力業界が排出する CO2 の排出に拡大
排出ガス制限を達成するよう定めている。欧州委
適用されていない点も注目される。EU はその意見
員会によると、同議定書が本格的に実施された場
の中で、キャップ・アンド・トレード制度は環境
合、1990 年比で欧州のイオウ排出量は少なくとも
面の成果を保証するとともに、最低コストで排出
63%、NOx 排出量は 41%、VOC 排出量は 40%お
量を削減する柔軟性を合わせもつ、費用対効果の
よびアンモニアは 17%削減されるはずであると
高い排出量削減措置であると述べている。
いう。
それにも拘らず、米国政府が自己分析を進め、気
また、特定の排出源に対して制限を定めている。
候変動対策に関する独自の政策を徐々にまとめて
例えば発電用燃焼プラント、
ドライクリーニング、
いるという事実については評価している。そして
自動車およびトラックなどである。また、塗料お
大統領案が正しい方向への第一歩となり、事業者
よびエアゾールを発生源とする VOC 排出量の削
に排出管理への貢献が求められる内容になること
減の他に、農家はアンモニア排出量の管理対策を
を願っている。しかしながら、大統領案に基づく
講じなければならなくなる。
取組が、他の先進諸国が京都議定書に基づいて実
施する取組に匹敵するものとなるかを評価するに
かかる対策により、EU では高濃度のオゾンを記録
は、排出量のモニタリングおよび報告を義務付け
する日数が半減するのと同時に汚染への曝露を原
る、一貫性のある体制が企業レベルで必要になる
因とする死亡者が著しく減少する見込みである。
と主張している。欧州では引き続き専門家による
米国案の検証が行われると、同委員および同大臣
カナダ、ロシア、米国と同様に、ブルガリア、チ
は強調している。
両者はまた、
この問題について、
ェコ、ハンガリー、ラトビア、ポーランド、ルー
いつでも米国との継続的対話に応じる用意がある
マニア、スロバキア、スロベニア、リヒテンシュ
ことを明らかにしている。
タイン、ノルウェー、およびスウェーデンは、各
EU15 加盟国とともにすでに同議定書に調印して
10. EU、越境大気汚染に関する議定書の実施
を予定
いる。提案によると、共同体は一つのブロックと
して同議定書に調印することになる。
委員会は、酸性化、富栄養化、地表レベルオゾン
委員会は、
EU が非 EU 諸国の排出ガス削減により、
の削減を目的とする議定書に関する EU 承認につ
3
大きな便益を享受することになるという。同議定
いて、理事会決定案を公表した 。
書の発効には締約 16 ヶ国の批准を必要とするが、
酸性化、富栄養化および地表レベルオゾンなど越
2001 年 9 月までに批准したのはルクセンブルグ
境大気汚染問題は、国際的対策を講じなければ実
だけであった。
3
2001 年 10 月 23 日に採択された国家排出量上限
詳細については、下記のサイトを参照のこと。
http://europa.eu.int/eur-lex/en/com/pdf/2002/
en_502PC0044.pdf
JMC environment Update
(NEC)に関する EU 指令および大規模燃焼プラ
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Vol.4 No.1 (2002. 5)
欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑳
ント(LCP)の排出削減に関する EU 指令により、
・ 共同体で禁止あるいは厳しく制限されている化
イエーテボリ議定書が義務付ける制限より「多く
学物質について、輸出前に輸入側の明確な同意
の場合厳しい制限および少なくとも同等の制限」
を要求する。
が設定されていることから、同議定書を遵守する
・ 共同体で禁止されている特定の化学物質および
ことで EU に何ら問題が生じることはないはずで
商品について、輸出禁止措置の可能性を規定す
ある。
る。
・ すべての危険な化学物質について、輸出する場
11. 欧州委員会、国際貿易における有害化学
物質関するロッテルダム条約の批准を
提案
・ 輸入国が国際 PIC 手続に基づく輸出側の通知ま
委員会は 2002 年 2 月 5 日、EU が国際貿易におけ
て、禁止あるいは厳しく規制されている化学物
る有害化学物質の通知に関する国際条約を批准す
質を輸出する場合には事前に輸入国の明確な同
るよう提案した。
意を得るという概念を導入する。
合に適切なラベル表示を義務付ける。
たは輸入側の回答への対応を怠った場合に備え
EU 執行部は、国際貿易における特定の有害化学物
「このような追加的要件は、同条約の核となる規
質および殺虫剤について事前の情報に基づく同意
定の円滑な機能を妨げるものではない。当事者に
手続を定めた 1998 年ロッテルダム条約の批准を
一層厳しい措置を講じる権利を認めるものである。
求めている。
但し、かかる措置が同条約に整合し、国際法に準
拠するものであることを条件とする」と、委員会
委員会は同時に、同条約の規定の実施に関する新
のスポークスマン Pia Ahrenkilde は述べている。
規則を提案した。これは、危険な化学物質の輸出
また、
「委員会のアプローチは、
グローバルなレベ
入に関する EU の現行の協定を修正するものであ
ルで、危険な化学物質の国際貿易および使用にお
る。
ける適正かつ効果的な管理を保証しようとする
EU のコミットメントを再確認するものである。
」
ヴァレストレム委員は、
「新規制の提案は、
同条約
を厳密に移行するだけに留まらない委員会および
同条約は 1998 年 9 月に採択され、全加盟国と欧
加盟国の意欲が反映している」という。
州共同体が調印した。これまでに 73 ヶ国が調印
し、18 ヶ国が批准している。そして同条約の発効
には 50 ヶ国の批准が必要である。
同条約は、輸入側の「事前の情報に基づく同意
(PIC: prior informed consent)
」がある場合に限
り化学物質の輸出を認めている。PIC 手続のもと
最終的には、国連環境計画(UNEP)と国連食糧農
では、輸入国の明確な同意がない限り、特定の有
業機関(FAO)が共同管理する自主的 PIC 手続に
害化学物質を輸出することができない。
取って代わるものである。
同条約の目的は、かかる化学物質の有害な影響が
同自主手続には 160 ヶ国が参加しているが、EU
及ばないように、ヒトの健康および環境を保護す
ではすでに特定危険化学物質の輸出入に関する理
るために、確実に輸出入国に共同で責任を負担さ
事会規則 2455/92 に基づき、法的拘束力を有する
せることである。
ものとして実施されている。
ロッテルダム条約の範囲を超える委員会案の内容
を以下に示す。
12. 欧州委員会、環境技術の持続可能な開発
への貢献について概略を提示
・ 輸出通知に関する要件の範囲をより幅広い化学
委員会は 2002 年 3 月 14 日、欧州、環境技術がど
のように持続可能な開発に貢献できるかを示す報
物質にまで拡大する。
JMC environment Update
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Vol.4 No.1 (2002. 5)
欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑳
告書を提出した4。クリーン技術は、経済を活性化
させるとともに環境の保護を可能にする。また、
行動計画の内容を以下に示す。
環境への影響と経済成長との関係の「切り離し
・ 主要な環境問題の取扱いが有望な技術を調査す
(de-coupling)」を可能にする。クリーン技術の
利用は、
「誰もが得する(win-win)
」状況を生み、
その結果、環境を損なうことなく経済的便益が得
る。
・ ステークホルダーと協力して、特定技術の開発
および利用を阻害している市場および制度上の
られる。しかしながら、市場障壁およびその他多
障害を特定する。
くの障害により、環境技術の可能性が十分に生か
・ かかる障害に関して重点的対策パッケージを特
されていないのが現実である。したがって委員会
定するとともに、既存の手段を改善する。
は、環境技術を推進するための行動計画をステー
クホルダーと協力して策定する意向である。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
委員会の採択を歓迎してヴァレストレム委員は、
「新しい革新的な環境技術の開発は持続可能な開
発を達成するために必要不可欠である。だからこ
II.
そ私達は、成長と環境に貢献するクリーン技術の
1. ドイツ政府、環境監査改正案を採択
推進を目指し、行動計画を策定するのである」と
ドイツ
政府は新環境監査法案を採択した。トリッティン
宣言した。
(J. Trittin)環境相は、この措置により、監査の
質が高まり、「企業の環境保護が新たに刺激され
「私達は、EU および EU 加盟候補国双方における
る」ことを期待している。
産業界、調査団体、NGO および政府を代表するス
テークホルダーと協力していく。協力を通じて、
同案は、EU 環境管理・監査スキーム(EMAS)の
環境技術への投資を抑制する障壁と、その対策措
改定規定に法環境を適応させるものである。
EMAS
置を特定する。環境技術の革新、開発および利用
は 2001 年 4 月より施行されている。同改定規定
を支援することは、経済にも環境にも刺激を与え
は旧 EMAS を強化する内容となっている。
ることになる。
」
例えば、同改訂および実施案では、EU 各地に立地
委員会は、2001 年 6 月イエーテボリで開催された
する企業は一括して「組識」登録できる。これに
欧州理事会で、
欧州、
「環境技術がどのように成長
より、大企業および(または)多国籍企業はかな
と雇用を促進するかについて評価する」報告書の
り EMAS に参加しやすくなり、コストも著しく削
策定を求められた。委員会の報告書「持続可能な
減される。しかしながら、やはり立地に関する基
開発のための環境技術」はこの要請に応えたもの
準が重要な役割を果たすことになる。
で、将来の行動計画策定のたたき台となる。
環境専門家およびその組識によるモニタリングが
行動計画は、環境技術分野に影響するあらゆる問
強化される。EU 規則の規定によると、ドイツの改
題を厳しく検証し、EU 加盟 15 ヶ国および加盟候
訂案では、かつての同国のスキームが 3 年毎とし
補国の産業界、調査団体、NGO および政府を代表
ていたいわゆる「定期的監督」を 2 年毎にするこ
するステークホルダーと幅広く協議した上で策定
とを要求している。また、企業がエコ管理規定を
される。目標は、現在および将来の拡大 EU 域内
厳格に遵守する場合に限り企業の EMAS 登録簿へ
および発展途上国において、その成長に貢献でき
の記載・維持を保証するなど、以前よりも措置が
る環境技術の革新、開発および利用を支援するこ
強化される。
とである。
この改訂案により、
産業のみならず、
サービス業、
4
行政、建設業および農業分野の企業も同スキーム
欧州委員会の報告書については以下のサイトを参照のこと。
http://europa.eu.int/comm/environment/
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Vol.4 No.1 (2002. 5)
欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑳
に参加することができる。今後は、例えば処分お
超えてはならない。これは約 7 リットルの暖房用
よび輸送による影響など、生態系への間接的な影
オイルあるいは 7 立方メートルの天然ガスに相当
響も考慮されなければならない。
銀行の監査には、
する。古いビルも新要件を満たすために改築が必
クレジット取引による環境への影響が含まれる。
要である。例えば、1979 年以前に設置された 200
万台のボイラーは 2006 年までにすべて交換が必
同相は EMAS について、
「企業に競争優位を与え
要である。最上階は 2005 年までに断熱が必要で
るものであり、コスト削減および責任問題に関す
ある。EnEV の施行により、断熱または暖房など
るリスクを最小化する経済的機会である」と絶賛
に関するいくつかの指令が統合された。したがっ
した。欧州にある拠点の大半がドイツで登録され
て、建築家および開発業者は今後、例えば特殊断
ている。2001 年 12 月現在、ドイツに登録されて
熱、
改良型窓、
パッシブソーラーエネルギー利用、
いる企業は 2671 社であり、欧州全域における登
インテリジェント暖房あるいは画期的温水ヒーテ
録事業所数の約 4 分の 3 に相当する。
イング戦略など、どの方法を採用して新要件を満
たすのかを決定することができる。EnEV はドイ
2. 政府と携帯電話メーカー、電磁波放射
表示ラベルに関する交渉が難航
ツ国家気候保護戦略の一部を構成する。政府はま
ドイツ連邦政府および携帯電話メーカー間で、電
進する施策の導入を計画している。
た、低利の融資を提供するなど、住居の断熱を推
磁波放射品質表示ラベルを巡る交渉が膠着状態に
事項に対して関心はないと主張している。電話メ
4. 連邦議会および連邦参議院、新自然保護
法を採択
ーカーは、他のあらゆる技術データの中でも、電
連邦議会および連邦参議院は、26 年前に施行され
波の比吸収率(SAR: specific absorption rate)に
た旧連邦自然保護法(Bundesnaturschutzgesetz)
関する情報公開を希望している。実際にはマニュ
の改正について最終的合意に達した。つまり、今
アルの中に記載のあるデータである。一方連邦環
後農業は、一段と環境との調和を図らなければな
境省は、包装の外側にラベル印刷する案を支持し
ら な い 。 同 改 正 に よ り 、 経 済 水 域 ( Exclusive
ている。「A」から「E」ランクまであるエコラベ
Economic Area: 海岸から 12 海里以内と 200 海里
ルのエネルギー分類に類似した品質ランキングを
以内)における法的条件を明らかにし、オフショ
表示する案である。消費者アドバイザーおよび連
ア風力エネルギーの活用に道筋をつけた。トリッ
邦医療協会は政府案を支持している。消費者アド
ティン環境相はすでに、主として北海での風力エ
バイスセンターは、業界ではなく同センターに消
ネルギー利用のための広大なエリアを地図に描い
費者からの携帯電話の SAR 値の問合せがあると
て い る 。 農 家 は 、「 倫 理 的 職 業 慣 行 ( good
して、業界の主張を拒絶している。さらに、業界
professional practice)
」という明確な要件を導入し
に SAR 値に関する問合せがあまりないのは、単に
ている。例えば、肥料は控え目に利用しなければ
消費者が信用していないからではないかと疑って
ならない。侵食しやすい草原および牧草地は耕地
いる。新世代の携帯電話は、デザインの小型化に
として利用してはならない。また、殺虫剤および
より、ユーザーの頭部に放出される電磁波が多く
肥料の使用に関する証拠書類を提出しなければな
なる傾向である。
らない。新自然環境法は、2002 年 4 月 4 日に施
ある。業界は、顧客にはこのような技術的な詳細
行された。
3. 省エネルギー指令を施行
5. 政府、EU 廃棄物埋立施設指令の実施に
向けて前進
2002 年 2 月 、 新 省 エ ネ ル ギ ー 指 令 ( EnEV:
Energieeinsparverordnung)が施行された。新築
ビル建設にあたっては今後、以前より 30%低いエ
政府は、2002 年 3 月 14 日、廃棄物の埋立施設に
ネルギー要件を満たさなければならない。つまり
関する新規則案を承認した。この法令により、
1 平方メートルの居住スペースを暖房するのに要
1999 年発令の EU 廃棄物埋立施設指令の国内実施
するエネルギー消費量は年間 70 キロワット時を
が完了し、2002 年中に最終的に採択されれば、EU
JMC environment Update
29
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欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑳
指令に定める期限より一年遅れて施行される可能
1999 年に導入された同プログラムは、雇用を創出
性がある。
しながら環境を保護することを目的としていた。
同環境相によると、将来の世代に環境負担をかけ
同相は今後、
同プログラムを発展させる場合には、
ないことを目的として、廃棄物埋立処分場の管理
環境目標および環境にやさしい輸送目標と密接に
に関する詳細な技術、運用および組識に関する要
連動させ、税金を環境目標に使用しなければなら
件が定められているという。すべての廃棄物埋立
ない、と述べている。
施設経営者は、運営する廃棄物集積所のアフター
ケアのために保証金を用意しなければならない。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
各州は廃棄物管理問題に対して大きな権限を有し
ており、政府の提案は上院の承認を得なければな
III. 英国
らない。同法令はすでに承認を求めて提出されて
1. 34 社、英国排出量取引制度への入札に
成功
いるが、2001 年の埋立て廃棄物に関する法令に関
連するものとなる。これは、焼却プラントの場合
と同様に、機械的手段および生物学的手段による
政府の国内排出量取引制度に参加するための 2 日
事前処理の継続を可能にするために、埋立て廃棄
間にわたる入札が 2002 年 3 月 12 日に終了し、全
物の有機物含有量に関する 2005 年の厳しい制限
部で 34 社が入札に成功した。
を軽減したものである。
同制度は 2002 年 4 月 1 日に運用を開始し、今後
5 年間にわたり参加企業は、GHG の年間排出量を
6. 政府、殺生剤に関する政令の遵守に向け
て前進
、
NO2 400 万トン以上(炭素換算で約 110 万トン)
すなわち 2000 年∼2010 年の間に同国が予定する
政府は、殺生剤の分類、導入および使用に関する
詳細な基準を定める法令を承認した。
同法令では、
総削減量の約 5%ほど削減することを誓約したの
殺生剤を定義し、規制当局による殺生剤の許可に
である。
関する基準を定め、そして殺生剤に代る代替物質
政府のビジネスと環境に関する諮問委員会
がない場合には、
「適切かつ専門的な方法」
で使用
( ACBE: Advisory Committee on Business and
しなければならないと定めている。さらに、すべ
ての殺生物性製品に安全性に関する警告を表示す
the Environment)委員長 Dr. Chris Fay は、今回の
るよう義務付けている。これは、木材防腐剤、殺
入札について、「大成功である…同スキームの意
菌剤、防汚船舶塗料などを含むが、これらに限定
図の正当性を実証するものであり、排出権取引市
されるものではない。
場を歓迎する企業の意志が表われている」と述べ
ている。
同政令により、正式な実施期限からほぼ 2 年遅れ
そして入札参加企業のために、奨励金として今後
で、1998 年 EU 殺生剤の使用禁止指令が実施され
ることになる。
5 年間にわたり 2 億 1,500 万ポンド(1 億 6,300
7. エコ税制度を改革
り 100 ポンド(86.39 ユーロ)で開始された奨励
万ユーロ)を用意した。3 月 11 日に、1 トン当た
金支給の入札は 30 分毎にじりじりと下がり、1 ト
与党の社会民主党(SPD)の副議長は、今年の秋
ン当たり 53 ポンドで終了した。どの企業が他の
の選挙で政権を取戻した場合にはエコ税改革プロ
企業より多く購入したかなど、詳細情報はほとん
グラムを大きく変更すると、国内最大手新聞で示
ど公開されていないが、化学メーカーイネオス・
唆した。ミュラー(Müller)経済相は、将来的に
フロロ(Ineos Fluor)社は、1 社に認められる最
エネルギー税による税収は環境のために支出すべ
高額インセンティブ(支給総額の 20%)すなわち
きであると述べている。
JMC environment Update
4,300 万ポンド(7,009 万ユーロ)を受け取った。
30
Vol.4 No.1 (2002. 5)
欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑳
である。各参加企業は、排出量を削減するか、他
実は、同社は今回の入札で、
、今後どれだけ排出量
の参加企業から余剰排出量を購入して目標を達成
を削減するかという誓約に対してではなく、すで
することができる。
に実現した排出削減量に対しての奨励金を獲得し
たので、この件は今後かなりの論争を引き起こす
どの参加企業も、政府が提供する奨励金の自社分
ことになる。環境保護主義者は、取引市場のテコ
の取得条件として、5 年間各年度の目標を達成し
入れ政策である奨励金の 5 分の 1 を、産業汚染管
なければならない。同スキームに基づく将来の年
理法に適合した結果として早期対策を果たした企
間目標のために排出量の使用を控えることも、ま
業に与えるべきではないと主張している。同社は
た、同スキーム期間の終了後も京都議定書の公約
反論しており、基準期間に実現した削減分につい
期間である 2008 年∼2012 年まで、企業独自の削
ては、罰するのではなく報酬を与えるべきである
減分を積立てておくことも可能である。
と主張し、明らかに政府の支持を得たのである。
市場における排出量相場が、入札価格および実際
入札によって GHG 目標を約束した団体は、最低
の排出削減コストと比較して、どのようなところ
コストで目標を達成するための手段として、4 月
に落ち着くかは今後を待たなければならない。
2 日から同スキームに基づく排出量の取引が可能
入札した 34 社
Asda Sotres Ltd
Barclays Bank plc
Battle McCarthy Carbon Club
Blue Circle Industries plc
British Airways plc
British Sugar plc
BP plc
Budweiser Stag Brewing Company Ltd
Dalkia plc
Dana UK Holdings Ltd
Dupont (UK) Ltd
EGNI(Wales)Ltd
First Hydro Company
Ford Motor Company Ltd
General Domestic Appiances Ltd
GKN(UK)plc
Imerys Minerals Ltd
Ineos Fluor Ltd
Kirklees Metropolitan Council
Land Securities plc
Lend Lease Real Estate Investment Services Ltd
Marks & Spencer plc
Mitsubishi Corporation UK plc
Motorola GTSS
The Natural History Museum
Quantum Gas Management
Rhodia Organique Fine Ltd
Rolls-Royce plc
Royal Ordnance plc
Shell UK Ltd
Somerfield Stores Ltd
Tesco Stores Ltd
UK Coal Mining Ltd
Wates Group
2. 英国パネル、エネルギー効率改善住宅
および再生可能エネルギー利用拡大を
支持
生可能エネルギーによって調達するという英国の
内閣府の政策評価・革新部門(PIU)が新たに公
現在の目標を 2 倍にし、2020 年までに 20%を調
表した報告書には、エネルギー効率改善住宅と再
達するよう政府に求めている。
ー政策の基本に据えるべきであると述べられてい
る5。PIU はまた、2010 年までに電力の 10%を再
生可能エネルギー利用拡大を将来の英国エネルギ
5
JMC environment Update
31
同報告書については以下のサイトを参照すること。
http://www.cabinetoffice.gov.uk/innovation/2002/energy/r
eport
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欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑳
供給確保および気候変動に関する目標の達成方法
き直されたのか」など、PIU の結論を詳細に検討
として、
効率化は最も安価な手段であることから、
していく。
今回の見直しでは、英国の住宅の効率を 40%改善
することが提言されている。このような背景の中
現在、英国のエネルギー供給量のうち再生エネル
で、
「すべてのエネルギーユーザー」
に炭素排出コ
ギーと分類されているのはわずか 2.8%である。
ストについて「十分納得してもらう」ためには、
ブレア首相は、昨年の PIU によるエネルギー見直
「経済的手段」を一層広範に利用することが必要
しを開始したときに、地球温暖化対策、および「競
不可欠となる。
争力ある価格で、安全で、多様な、ならびに信頼
性の高いエネルギー供給」の確保を検討するもの
今回の結論は、報告案の原稿が昨年 12 月に漏洩
になることを期待していた。閣僚がこの分析結果
した時点とほとんど変わっておらず、環境団体は
にどのように対応を示すかは今後を待たなければ
複雑な対応を示した。省エネルギートラスト(EST:
ならない。
Energy Saving Trust)は、現行の断熱および機器
に関するオプションにより、すべての消費者が住
英国は、今後数年間で天然ガスの純輸入国(net
宅および暖房システムのエネルギー効率を高める
importer)に近づいていくため、供給確保に関す
という点を強調し、歓迎の意を表した。
る懸念が高まっている。2020 年までに、同国の輸
入ガス依存度は 70%となる見込みである。現在は
英 国 風 力 エ ネ ル ギ ー 協 会 ( The British Wind
電力供給の 40%が輸入ガスに依存している。
Energy Association)は、再生エネルギーに関する
目標があまりにも控え目であり、この目標ではグ
同首相は、今回の見直しに続き、協議期間を設け
リーンエネルギーに関する利害関係の面で、他の
ることを公約している。その後、秋に、英国政府
EU 諸国に大きく遅れたままになると強調した(デ
はエネルギー白書を公表する。
ンマークおよびフィンランドは 2000 年までに
3. 欧州委員会および英国、旧型冷蔵庫の
CFCs 除去をめぐり論争
30%を再生可能エネルギーで調達することを計
画している)
。
英国で激しい論争が行なわれている。新聞のコラ
Friends of the Earth(地球の友)も、再生可能エ
ムは、旧型冷蔵庫、特に冷蔵庫に含まれるオゾン
ネルギーに関する目標には意欲が感じられないと
枯渇物質(CFCs: クロロフルオロカーボンと断熱
し、今回の報告書がクリーンな石炭への投資拡大
剤)を回収する仕組みおよび規定の欠如を指摘す
を排除しなかったことに苦言を呈した。
る記事で溢れている。ミーチャー(Meacher)環
境相は 2002 年 1 月 31 日、政府が EU 規則を実施
下院の環境監査委員会も、議会が休会に入る前日
できない理由について下院で発言した。そして個
の閣僚の声明もなく、うっかり報告書の内容を明
人的見解として、同規則の規定は工業用冷蔵機器
らかにしたとして、内閣府を非難した。同委員会
にしか適用できず家庭用冷蔵庫には適用できない
の John Horam 委員長は、今回の見直しでは、内
と指摘し、これはすべて同規則の解釈をめぐる問
閣府環境汚染委員会に対する回答となるはずであ
題であると主張した。さらに、曖昧かつ不正確な
った原案の概要説明がなかったことを示唆した。
措置であるとの自身の見解を述べ、委員会に真っ
環境汚染委員会は昨年、不可逆的な気候変動を回
向から対立する姿勢を示した。
避するために、2050 年までに排出量を 60%削減
することを求めていた。同委員長はまた、今回の
反対に、ヴァレストレム環境委員は、同規定は明
見直しは、目的および目標の達成方法を規定して
確であると指摘し、これを完全に否定している。
いないことを示唆し、さらに、環境監査委員会と
さらに、英国の代表は作業グループおよび他の委
して持続可能なエネルギーに関する調査に着手し
員会の会合にもすべて参加しており、そこでかか
たことを認めた。
この調査を通じて、
「政治的干渉
る措置が明確化され、規則の実施に関する取決め
の結果、今回の報告書が後半においてどの程度書
も規定されたと述べている。
JMC environment Update
32
Vol.4 No.1 (2002. 5)
欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑳
この問題の明確化するために、委員会は、2000
4. 携帯電話アンテナ、有害レベルの電磁波
を示すテスト結果はなし
年 6 月の採択時に、2002 年 1 月以降は冷蔵庫か
政府の資金提供により、学校あるいは学校周辺に
ら CFCs を回収することを定めた規制、および
設置された約 100 台の英国製携帯電話アンテナに
2000 年 10 月以降 CFCs を含む冷蔵庫を EU から輸
ついてテストが実施されたが、有害レベルの電磁
出することを禁止した規定も含め、英国が規則
波が放出されていることを示す証拠は示されなか
2037/2000 に合意したことを指摘している。
また、
2000 年 10 月の管理委員会で、加盟国が旧型冷蔵
った7。電磁波への曝露による健康へのリスクに関
する不安が市民の間に広がっていることから、ア
庫のコンプレッサーだけではなく断熱剤からも
ンテナの調査が実施された。調査されたアンテナ
CFCs を回収することについて実現可能性を検討
の多くは、1998 年に非電離線保護に関する国際委
した時に、技術的および商業的に実現可能である
員会が公表した安全基準の少なくとも 250 分の 1
こと、そしてドイツ、イタリア、デンマークなら
という低いレベルを示した。同基準は 1999 年に
びにスウエーデンがいずれにしろ定期的に実施し
EU 勧告として欧州で採択されている。また、電磁
ているという発言が一部の加盟国からあったこと
波のレベルが安全基準の 1000 分の 1 というケー
を強調している。2001 年 3 月、このような結論が
スもあり、市民の電話アンテナに関する不安は根
英国および他の加盟国に提示された。かかる政策
拠のないものであることが示された。
を実施するための仕組みを持たない英国のような
5. 英国、バイオディーゼル燃料税を引下げ
国は、その整備および適切な手段を講じるよう強
く求められた。英国はごく最近になって同規則の
英国は、道路輸送に使用されるバイオディーゼル
目的を達成するための対策を講じたが、冷蔵庫に
混合燃料あるいは純粋なバイオディーゼルに低い
関する限り、
同環境委員にとって朗報である。
「英
税率を適用することの承認を求めている。委員会
国が講じた対策を歓迎する。これにより英国は、
が 3 月 18 日に明らかにした提案によると、英国
コミットメントを達成できるはずで、これは環境
はかかる燃料に対し、超低イオウ混合ディーゼル
にとって朗報である。
」
に適用される税率より低い、1 リットル当たり 20
ペンスの税率の適用が可能になる。後者は、現行
さ ら に 、 イ ギ リ ス ・ ウ ェ ー ル ズ 環 境 局 ( the
税率で 1 リットル当たり 25.82 ペンス(41.4 ユー
Anglo-Welsh Environment Agency)は 2002 年 3
ロセント)の消費税に相当する。減税の結果、税
月 19 日、冷蔵庫および冷凍庫の処分前に、オゾ
収減は年間で 1,000 万ポンド(1,630 万ユーロ)
ン枯渇物質(CFC および HCFC: ハイドロクロロフ
から 1,500 万ポンド(2,445 万ユーロ)になる。
ルオロカーボン)を回収するための基準案を公表
但し、バイオディーゼルの販売を決定する事業者
した。同基準案には、適切な機器と健全な環境慣
の数に影響される。
行だけを使用しオゾン枯渇物質(ODSs)を除去し
なければならないのであるが、その方法が記述さ
問題のバイオディーゼルとは、「バイオマスある
れている 6 。環境局の環境保護担当責任者 Alan
いは天ぷら油を道路用燃料として使用する燃料」
James 氏は、同基準案が冷蔵庫および冷凍庫の
のことである。製造コストは、通常のディーゼル
ODSs の処理に適用すべき環境保護手段を明確に
の製造コストを上回るので、その小売価格は減税
したものであることを宣言した。短期間の公開協
がないと競争力を持てない。この差別的税率は、
議の後に、明確な基準および要件を満たすことが
製造時点あるいは輸入時点での純粋なバイオディ
できる事業者には、未処理の旧型冷蔵庫の処理が
ーゼルに適用されることになる。そしてその後、
許可される。
純粋な燃料として使用するか、EN590 規格に従っ
て容積比最大 5%までディーゼル燃料とブレンド
することができる。
6
同基準案については以下のサイトを参照のこと。
www.environment-agency.gov.uk/business/wasteman/
fridges
JMC environment Update
7
33
同報告書については以下のサイトを参照のこと。
www.radio.gov.uk/topics/mpsafety/school-audit/audit.htm
Vol.4 No.1 (2002. 5)
欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑳
テージに比例する該当税率により計算される。英
7. 環境・食糧・農村地域省、1979 年重金
属に関する長距離越境大気汚染条約の
1998 年議定書実施に向けて意見を諮問
国は、毎年化石燃料と比較しながら、菜種価格の
環境・食糧・農村地域省(DEFRA)は、1998 年重
動向と合わせバイオディーゼルの製品コスト、特
金属に関する議定書を実施するための戦略案に関
に菜種メチルエーテルおよび再生した植物ベース
する意見を求めている。同議定書は、1998 年 6
の炭化水素の製造コストを検討するとともに、過
月 24 日、英国がイングランドにおいて、英国の
剰な補助が生じないようにする。
その他の地域における所管行政機関と協力して調
英国当局は、現行税率での国内生産の上限はディ
印したものである8。同戦略案は議定書の要件を述
べ、同国がかかるコミットメントを達成するため
ーゼル総売上の 1%と考えている。また、国内で
の対策を提案している。スコットランド行政府、
はバイオディーゼルの商業生産はないと主張して
ウェールズ議会、北アイルランド環境省は、個々
いる。政府は、パイロットプロジェクトの一環と
の協議文書を公表する予定である。
輸入混合製品に適用される税は、成分のパーセン
して、一部の燃料について減税あるいは免税の適
用を計画している。しかしながら、バイオディー
1998 年議定書は、カドミウム、鉛、水銀の 3 種類
ゼルは、その開発がプロジェクト段階を終えてい
の重金属排出を重視している。同議定書の調印国
るので、その対象にはならない。バイオディーゼ
の主要な要件は、当該物質の大気中への年間排出
ルの生産技術はいくつかの試みを経て、すでに既
量が 1990 年水準を下回るように削減することで
知のものとなっている。
ある。利害関係者およびステークホルダーは、
2002 年 6 月 11 日まで協議文書に関する意見を提
6. 環境庁、包装廃棄物に関する新たな年次
目標を発表
出することができる。
環境庁は、2002 年 3 月 19 日、企業が再生あるい
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
はリサイクルしなければならない包装廃棄物の割
合を引き上げる新たな目標を発表した。ミーチャ
ー環境相は、企業は包装規則に基づき、包装廃棄
IV. フランス
物の再生率 59%、マテリアル・リサイクル率 19%
という目標を達成しなければならないと示唆した。
この目標値は、2001 年に掲げた再生率 56%、マ
1. 諮問委員会、フランスの大気浄化枠組法
の適正化を提言
テリアル・リサイクル率 18%に取って代わる。同
権威ある政府諮問委員会が 2002 年 1 月 23 日に公
相によると、
「2001 年は、EU 包装および包装廃棄
表した新報告書によると、フランスは大気汚染枠
物指令に基づき、少なくとも再生率 50%、リサイ
組法を改革し、汚染ピーク時に対応する現行政策
クル率 25%、マテリアル・リサイクル率 15%を
からヒトの健康に最大のリスクを呈している日常
達成しなければならなかった。英国は 2001 年に
的汚染に対し積極的に対応するアプローチへと切
かかる目標を達成し、必要とされる 460 万トンを
替えるべきであるという。
再生したという前提に基づき、本日発表する目標
により、2002 年には約 500 万トンの包装廃棄物
国家大気委員会は、それ自体が大気質法に基づき
を再生することになる。…政府は 2002 年度の再
設立された諮問機関であるが、報告書の前文の中
生目標を 59%、マテリアル・リサイクル目標を
で、同法が大気汚染にほとんど効果を与えていな
19%と決定した。これは、チャレンジングな国内
いと述べている。
リサイクル目標、そしておそらく同じように一段
と引き上げられる欧州目標の達成に寄与するもの
である。
」
8
JMC environment Update
34
同協議文書については以下のサイトを参照のこと。
http://www.defra.gov.uk/environment/consult/
airheavymetal/index.htm
Vol.4 No.1 (2002. 5)
欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑳
そして、大気質法、すなわち 1996 年 12 月 30 日
に施行された大気およびエネルギーの合理的利用
同委員会は、このような日常的な汚染に関する傾
に関する法律(No.96-1236)の実施および適用に
向を変えるため、微粒子、ダイオキシン、および
ついて、15 ヶ月間調査した後に報告書を発表した。
フランに関して日単位の最大基準をモニタリン
大気質法により、大気質の評価・管理に関する EU
グ・システムに加えるなど、フランスは大気質法
指令 96/62/EC に規定された主要な対策が実施さ
を改革するべきであると提言した。
れた。同指令は、大気質のモニタリングに関する
原則を規定している。
また、汚染警報発令基準となるオゾン濃度の最低
濃度を引下げ、ナンバープレートに基づく車両運
また、すべての市民は「きれいな空気を吸う」権
行規制計画を一層活用すべきだという。
利の他に、大気質およびヒトの健康と環境に及ぼ
す影響に関する情報を知る権利があると規定して
最後に、政府は、汚染度が最も高い日に運行が認
いる。
められるいわゆるクリーン自動車を示す「グリー
ンディスク(green disk)
」ステッカーを電気、燃
同委員会によると、都市部の大気質は 1990 年か
料電池および天然ガスを燃料とする自動車に制限
ら 1999 年にかけて低下していったという。都会
すべきだという。現在、グリーンディスクステッ
の大気中に含まれる鉛は 10 年前より現在の方が
カーは、EU の最も厳しい排ガス基準を満たす触媒
少ないが、二酸化イオウ(SO4)の濃度は予測通
コンバーターを装備した新車には、事実上、すべ
りには低下していないし、オゾン濃度、粉塵、殺
てついている。
虫剤の残留物も上昇している。
コッシェ(Y. Cochet)環境・国土整備相は、委員
さらに、このように結果が悪いのは、大気質法の
会の助言に秘められた見識を受入れながらも、
中に産業および輸送部門に対する厳しい目標がな
2002 年 1 月 31 日の記者会見で、
「フランスの大
いこと、また目標を達成していない企業や個人に
気汚染問題は、規制だけですべて解消するもので
対する制裁措置がないからであるとしている。
はない」
と述べた。
同相は緑の党の政治家であり、
再生可能エネルギーおよび公共交通機関を長年推
大気質法の短所は、1990 年代半ばの支配的であっ
進してきた人物であるが、特に自家用車利用に関
た政策に端を発している。その頃フランスでは、
する「個人の行動の変化」も、大気汚染低減の取
シラク大統領に忠実な、企業寄りの中道右派連立
組みにとって重要であると述べている。
政権が政権の座にあった。当時の政府は、強硬な
企業団体の反感を招かぬよう大気質法のモニタリ
2. 仏首相、世界環境機関の新設を提案
ングは強化したが、規制は緩くしたのである。
ジョスパン(L. Jospin)首相は、2002 年 2 月 22
日、
「過度に」
経済に重点を置く多国間システムの
同法はこうして全国的な大気質モニタリング・ネ
一層の均衡を図るために世界環境機関の創設を提
ットワークの確立を規定した。大気質に関する警
案した。
告を定期的に通知することを義務付け、自家用車
利用の減少、公共交通システムの開発、そして低
「環境のためにまた別の組識を作るという問題で
公害排ガス燃料を原動力とする
「クリーン自動車」
はない」と、同首相は述べた。そうではなく、
「既
利用の実現を目的とする新都市交通計画の策定を
存のものから、国際的システムの慢性的に欠けて
地方自治体に強制した。
いる要素を構築すること」が目的とならなければ
ならない。
委員会の報告書では、このような対策は汚染ピー
ク時の予測および対応をめざす当局にとっては大
提案の世界環境機関というのは、増加の一途にあ
いに助けとなるが、日常的な都市部大気汚染対策
る多国間環境協定を中心的に管理する機関であり、
としては非常に効果が薄いと述べている。
JMC environment Update
35
Vol.4 No.1 (2002. 5)
欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑳
国連環境計画という枠組みに基づいて設立し、8
防の原則」を利用することを擁護した。これは、
月 26 日∼9 月 4 日までヨハネスブルグで開催され
米国との間で論争が長期化している問題である。
る持続可能な開発に関する世界サミットで立ち上
げることができると説明した。
3. 政府、企業報告義務に関する法令を公表
同相のスピーチは、リオンで開催された持続可能
した待望の行政制令を公表した。これは、2003
な開発に関する国際フォーラムに参加した環境保
年から国内資本市場の上場企業全社に適用される。
政府は、2002 年 2 月 22 日、環境報告義務を規定
護団体および企業の代表を前にして行われたが、
4 月および 5 月に予定される大統領選挙立候補を
同法令(No.2002-221)は、2001 年 5 月に議会を
2 月 20 日に正式に発表して以来、初の環境に関す
通過した新経済規制法に盛り込まれてている環
る重要なスピーチであった。
境・社会報告義務のパラメーターor 制限を制定し
ている。
シラク(J. Chirac)大統領は、今後の選挙運動で
同首相の最大のライバルとなるが、近年、ジュネ
同報告書制令は、仏証券取引所に上場している約
ーブに本拠を置く世界貿易機関(WTO)の権限の
950 社に適用される。どの企業も、2003 年中に公
均衡を図ることができる国際的な環境機関の必要
表する、2002 年暦年度または会計年度の年次報告
性を訴えてきた。同首相のスピーチの内容は、こ
書に、特定の環境開示データを掲載するよう義務
れを繰り返すものであった。
付けられる。
環境機関の新設提案の他に、スピーチの中で、多
開示が強制となる事項を以下に示す。
くの国際的環境問題について触れている。早急に
・ エネルギー、原材料および水の消費量。さら
気候変動対策を講じるようすべての国に呼びかけ
に、資源消費量の削減および再生可能なエネ
るとともに、今年後半に予定されているヨハネス
ルギー源への切替え努力に関する情報の補完。
ブルグでの会議前に国連気候変動枠組条約の京都
・ 大気、土壌および水中への排出量、および排
議定書を批准すると述べた。
出削減の取組。
・ 自然および生物多様性への影響制限に講じて
カナダ、日本、ロシアに対して、できるだけ早急
いる対策。
に条約を実施し、2002 年中に施行できるようにす
ることを強く求めた。また、最近発表された米国
・ 環境に関する従業員の研修および啓蒙、再生
の温室効果ガス排出削減案を激しく非難した。米
可能なエネルギーの利用拡大、ならびにリス
国提案は、地球温暖化問題に「対処できるもので
ク軽減を目的とする社内対策。
はない」と述べた。
・ エコ管理プログラムの認証あるいは評価取得、
または現行法規への整合を評価するために講
同首相は「水資源サービスに関する国際憲章」の
じている対策。
策定を支持した。これは地球上の水資源への国際
・ 環境保護、環境リスク保険、裁判所の支持に
的なアクセスを保証するというものである。砂漠
よる浄化または回復、および被害に関する年
化対策、生物多様性保存、さらに多国間知的所有
間支出。
権法を、バイオテクノロジーなど環境と相関性を
・ 特に、市民との話合い、リスク管理および立
有する新分野に適応させるための取組を強化する
地選定など、近隣コミュニティに透明性を保
よう呼びかけた。
証するための現行の取組。
最後に、遺伝子組換生物組織(GMO)が及ぼす影
GHG 排出も含めて、大気、土壌および水中への放
響について科学的不確実性がある場合に、EU が
出に関する具体的な開示リストが、
現在、
経済省、
「必要不可欠な公共政策策定ツール」として「予
JMC environment Update
環境省、産業省、法務省および労働省で準備され
36
Vol.4 No.1 (2002. 5)
欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑳
ている省庁間横断的な新法令に盛り込まれる。同
VI. スウェーデン
法令は、数週間のうちに公表される予定である。
1. スウェーデン政府、新自然保護方針を説
明
仏企業の多くはすでに独自の環境報告書を公表し
政府は、2002 年 3 月 21 日に議会に提出された新
ているか、年次報告書に財務情報とともに多少の
自然保護方針報告書について詳しく説明した。同
環境情報開示を実施しているが、同法令は、歴史
報告書の主な内容は、自然保護を市民にとって身
的な操業(historical operations)に関連する長期
近なものにすること、および地方自治体の自然保
的汚染浄化責任を隠蔽したい企業にとっては問題
護への投資に関するものである。政府は、保護地
となる可能性がある。
域について、環境および市民双方が保護による恩
恵を受けるべきであるとして、管理および市民の
新経済規則に関する法も、開示法令も、一部の環
ためのアクセスの改善が必要であると強調した。
境団体が要求しているような環境報告の自主監査
を義務付けていないが、いずれも企業が公認会計
士事務所を雇い、開示内容を点検させることは認
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
める。
4. 新車の自動車効率に格付け
VII. オランダ
フランス市場で市販されている 3,643 種類の新車
すべてについて、燃料効率および CO2 排出量に関
する消費者への指針が、
環境庁により公表された。
この消費者向けガイドは、同国の自動車効率およ
1. 専門委員会(Export Panel)
、2005 年
までに CO2 取引スキーム開始を提言
オランダが GHG 排出目標を達成するには、EU 全
び排ガスラベル表示に関する 1999 年 EU 指令の実
域における排出量取引制度が最もコスト効率の良
施の一環をなすものである。同庁によると、ディ
い方法であるが、同プロセスには数年を要する可
ーゼル新車の 24%およびガソリン新車の 8%につ
能性がある。その間、GHG 排出量削減のために、
いては、1998 年に自動車メーカーと EU が自主協
2005 年までに独自の排出量取引制度を開始すべ
定として定めた CO2 排出量 1 キロメートル当たり
きであると、同国の特別委員会は 2002 年 1 月 15
140 g という目標をすでに下回っているという。
日に発表した報告書の中で判断を示している9。
専門委員会のフォフトランダー(P. Vogtlander)
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
委員長は「CO2 排出削減には当然費用がかかるが、
取引制度が利用できない場合は、そうでない場合
V.
と比較して削減コストがかなり高くなる」と説明
デンマーク(省略)
した。
(2002 年 2 月∼3 月の間、関連する環境政策の進
また、プロンク(J. Pronk)環境相によって 2001
展が見られなかった。
)
年 7 月に設置された CO2 排出量取引委員会は、EU
排出量取引スキーム案が理想的な内容とは言えな
いとして、より良い EU 制度を構築するための実
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
施可能な一連の提言をまとめた。
9
JMC environment Update
37
「環境改善のための取引制度−オランダにおける CO2 排出
権取引の実現可能性」と題する同報告書の内容は現在以下
のサイトで公開されている。
http://www.co2handel.nl
Vol.4 No.1 (2002. 5)
欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑳
しかしながらその一方で、2005 年までに独自の排
を区別するというものである。同スキームは、一
出量取引入札制度を開始させなければならないと、
部入札制度を基準とすることになる。
この通称フォフトランダー委員会は「環境改善の
ための取引制度 − オランダにおける CO2 排出量
国際競争の必要なエネルギー集約型産業は化学お
取 引 の 実 現 可 能 性 ( Trading for a Better
よび金属、石油精製、ならびに製紙などの業界で
Environment, Feasibility of CO2 Emission Trading
in the Netherlands)
」と題する報告書の中で述べ
あると、フォフトランダー委員会は述べている。
ている。
医療、金融などの業界であるという。
同委員会は 2002 年 1 月 15 日、ヨリツマ(A.
第 1 のグループ、すなわち「保護されていない」
また、
国際競争力に左右されないのは、
サービス、
Jorritsma-Lebbink)経済相および環境省の代表者
部門は、生産単位当たりの CO2 放出量をベースと
に委員会報告書を提出した。同報告書とその提言
するパフォーマンス基準を遵守しなければならな
内容は、社会経済委員会の勧告書とともに、今後
くなる。保護されていない企業が CO2 基準を上回
内閣による審議を経なければならない。議会の両
っている場合には、超過分を相殺するために入札
院は、2003 年に、同提言実施の法審議に着手する
で排出量を購入しなければならなくなる。このグ
見込みである。
ループに属する企業は、許容レベルより CO2 排出
量が少ない場合には、残りをクレジットとして売
同環境相は、国家 CO2 排出量取引制度の実現可能
却することができるようになる。パフォーマンス
性調査を専門委員会に委託した。同委員会は、企
基準の設定については、政府と企業の合意が必要
業、エネルギー業界、環境保護の団体および学会
である。
の代表者によって構成された。
第 2 のグループ、すなわち「保護されている」エ
排出量取引制度は、先進国が削減目標達成のため
ネルギー使用量の少ない部門は、CO2 排出量の入
に利用できる共同実施およびクリーン開発メカニ
札で排出量をすべて購入しなければならなくなる。
ズムに並ぶ 3 種類の柔軟なメカニズムの一つであ
るが、まだ構築されていない。しかし、GHG 排出
政府は、売却可能な排出量の最大量を定め、排出
削減のための手段をすでに講じており、一層の
上限が設定される。企業と各種団体は、CO2 入札
GHG 削減はますますコスト高になると、同委員長
で入手できる一定量の排出量を求めて入札するこ
は記者会見で述べた。
とになる。
同制度は、海外から排出量削減クレジットを購入
このシナリオの場合、
政府が定める上限によって、
できるようにするため、同国の GHG 削減目標達
オランダにおける CO2 排出量を管理することにな
成には極めて重要である。同委員長は、EU 制度で
り、市場勢力が排出量の配分と値段を決定するこ
は同国がクレジット輸入国になると予測した。
とになる。
同経済相は、内閣がこの調査結果を受けて、今後
同委員長の推定によると、1t 当たりの CO2 排出コ
数ヶ月検討に入ると発言した。さらに、委員会の
ストは 20∼80 ユーロ(17.20 ドル∼68.60 ドル)
提言は、国家割当計画の策定およびブラッセルで
になるという。
の今後の EU 取引指令の討議にも有用であると述
同経済相は、利益が参加者に還元される点を強調
べた。
した。
同大臣は、
「政府の収入を生み出すための手
段ではない」と述べた。
委員会は、国際競争力を考慮し、同国が二段階の
国家制度を構築することを提言した。二段階の排
出取引権制度とは、国際競争の必要なエネルギー
同委員長は、記者会見で、このオランダの制度案
集約型産業と、そうでないエネルギー集約型産業
を 2005 年からエネルギー企業に適用することを
JMC environment Update
38
Vol.4 No.1 (2002. 5)
欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑳
提案した。その後、他の業界が 2008 年までに参
による禁止措置が正当化されると、政府は述べ
ている。しかしながら、FR-720 製造を申請して
いる Broomchemie 社が当該難燃剤の安全性に
関する肯定的な判断を可能とするに十分な情
報を提供すれば、禁止措置は解除される可能性
がある。
加する。
また、エネルギー集約度に関する基準は定められ
ていないと述べた。しかしながら、委員会は、大
規模エネルギーユーザーと小規模エネルギーユー
ザーの境界線として 5%基準を討議したと述べた。
今日に至るまで、家庭用プラスチック製配管お
よびキッチンのオーブンやコンロ上部に設置
された換気扇ファンの耐火性のために、大量の
FR-720 が使用されている。
この基準の場合、企業のエネルギー使用量が総生
産コストの 5%を超えた場合に、エネルギー集約
型企業と見なされる。しかし、同委員長も記者会
見で認めているように、「悪魔はディテールに潜
む」のである。
3. 環境相、CFC 回収および廃棄を奨励
委員会の調査および提言に対する政府および環境
同環境大臣は、2,300 万ユーロ規模のスキームを
団体の反応はいずれも良好であった。
発表した。同スキームに基づき、国連モントリオ
ール議定書により規制されているハロンおよび
世界自然保護基金(WWF)およびオランダ自然環
CFC の国家レベルの回収、保存および廃棄制度が
境 協 会 ( Dutch
and
確立される。同スキームは、成層圏オゾン層の保
Environment)は、1 月 15 日、共同声明文の中で、
護に関する EU 規則の遵守を保証するための制度
欧州取引制度の方が国内制度より望ましいと述べ
で、その目的は 2004 年 1 月 1 日の期限までに重
た。しかし、欧州全域の排出量取引制度がうまく
要性のないハロンの使用をすべて中止することで
スタートしなかった場合には、両環境団体は、同
ある。オランダ環境省(VROM)と業界は、ハロ
委員会が提案する国家取引制度を支持すると述べ
ンおよび CFC の回収および廃棄の財源を共同で出
た。
資する。
新スキームの影響を主に受ける業界には、
Society
for
Nature
防火業界、廃棄物回収業者および冷蔵庫製造業者
2. 環境相、予防的配慮により難燃剤を禁止
などがある。
プロンク環境相は、臭素系難燃剤テトラブロモビ
□
スフェノール A(tetrabromobisphenol A, Bis また
は FR-720)の輸入、製造および使用の禁止を発表
した。同相によると、予防的配慮による禁止措置
<本弁護士情報は、競輪の補助金を受けて実施
は、昨年合意に達した国家化学物質政策に沿った
したものです>
ものであるという。同政策は、すべての「既存」
および「新」物質に関する入手可能な安全情報の
量および質の改善について厳しい期限を規定して
いる。その全体目標は、2020 年までに、化学物質
がオランダ国民に与えるリスクを「ほぼゼロ」水
準にまで軽減することである。国立公衆医保健環
境研究所(RIVM)の助言にもとづき、オランダ政
府は、FR-720 に関する既存のデータは、環境およ
びヒトの健康に影響を及ぼすと考えられるリスク
の性質すら十分に示すものではないと判断した。
当該難燃剤の安全性を実証する入手可能な情
報が少なすぎるとして、結果的に、予防的配慮
JMC environment Update
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Vol.4 No.1 (2002. 5)
米国における環境関連動向∼在ワシントンコンサルタントによるモニタリング情報⑮
連載
米国における環境関連動向
∼在ワシントン/コンサルタントによるモニタリング情報 ⑮
【今月号のまとめ】
米国では水銀汚染に関する市民の意識が高まりつつあり、水銀汚染率の高いニューイング
ランド地方を中心として、地方自治体および市民団体による活発な動きが見受けられる。同
地域においては州政府による水銀対策法の制定が進んでおり、中でも 1) 大気汚染、2) 水銀
含有製品の廃棄物回収、3) 水銀含有製品のラベル化、などを中心に法整備が行われている。
このような法整備の背景には、北東部の 8 州が結束した NEWMOA(Northeast Waste
Management Officials' Association)のような機関の働きがあり、例えば水銀規制におけるモデ
ル法を作成しメンバー州を支援している。しかし、バーモント州の例にあるように、水銀ラベ
ル化法をめぐってメーカーが州政府を相手取って訴訟を起こすなど、産業界と自治体および市
民団体とが激しく決裂するケースも出ている。メイン州では、全米で初めて自動車メーカーに
対する水銀スイッチの回収義務化が制定されると同時に、“拡大生産者責任(EPR: Extended
Producer Responsibility)”と呼ばれる概念が全米に広がる構えを見せており、今後米国メーカ
ー側にとっては予断を許さない状況となっている。
1. 米国における水銀汚染状況
米国においては、重工業・商業地域が密集する
るようになり、同地域の州・地方政府は住民によ
ニューイングランド地方とカナダ国境周辺地を含
る淡水魚の摂取量を制限するなど、対応に追われ
む五大湖地域にかけての北東部における水銀汚染
ている。従って、後述の NEWMOA のように、ニ
が最も進んでいる(図表 1)
。北東部地域における
ューイングランド地方を中心にして環境保護に従
淡水魚から抽出される水銀のレベルが他の地域に
事する政府機関および市民団体が活発に水銀対策
比べて高い、という報告が 1970 年代よりなされ
を講じているのを見受けることができる。
図表 1: 米国における水銀堆積率の状況
出典:”New Hampshire Mercury Reduction Strategy”, New Hampshire Department of Environmental Services
http://www.des.state.nh.us/nhppp/merc20.htm
JMC environment Update
40
Vol.4 No.1 (2002. 5)
米国における環境関連動向∼在ワシントンコンサルタントによるモニタリング情報⑮
図表 2 に、連邦政府 EPA が作成した、米国におけ
の他にも土壌汚染や水質汚染が問題視されている。
る 1999 年発表の水銀排出量の状況を示す。1995
図表 3: カテゴリー別 水銀による大気汚染の源
年に米国で排出された水銀の量をカテゴリー別に
地方自治体
廃棄物焼却
8%
見てみると、石炭発電所ボイラー(51.6 トン)
、
地方自治体廃棄物焼却(29.6 トン)、有害廃棄物
製造業
1%
医療・有害
廃棄物焼却
11%
焼却(7.1 トン)
、道路上の車両(5 トン)となっ
ている。
発電
62%
産業
ボイラー
18%
図表 2: カテゴリー別 米国における水銀排出量
単位:トン
1990
1995
石炭発電所ボイラー
51.0
51.6
地方自治体廃棄物焼却
41.7
29.6
出典: 1998-99 DAQ and Local Program Emissions Inventories,
1999 EPA Information Collection Request を元に
ワシントンコアにて作成
医療廃棄物焼却
50.2
16.0
米国において問題となる水銀含有産業製品として
塩素生産
10.0
7.1
は、温度計、サーモスタット、蛍光灯、圧力計、
有害廃棄物焼却
5.7
7.1
体温計、スイッチ、継電器、ボタン型電池、歯科
道路以外の車両
6.8
6.8
道路上の車両
5.0
5.0
Portland Cement
4.0
4.0
たり、あるいは埋立てた場合には土壌汚染を引き
産業ボイラー
2.1
2.1
起こす可能性があるとして、警告が発せられてい
パルプ、紙
1.9
1.9
る。しかし現在、米国では廃棄処理の技術が改善
動物焼却
1.7
1.7
電灯破損
1.5
1.5
石油精製
1.4
1.4
されていることから、水銀含有製品の販売停止、
地熱発電
1.3
1.4
販売・流通の禁止を求める市民団体の声が年々高
住宅暖房
1.3
1.4
まっており、各政府機関は対応を迫られている。
商用暖房
1.1
1.1
水銀を含有する主な産業製品の例:
研究所活動
0.8
1.1
下水汚泥焼却
1.8
1.0
その他
9.2
6.8
198
149
合 計
用備品などが代表的なものと考えられている。こ
のような産業製品を固形廃棄物として焼却する場
合には含有された水銀は蒸発して大気に放出され
され以上のような問題は大幅に減少している。一
方、水銀を使用しない代替品が次々と開発されて
いるにも関わらず水銀含有製品が今だ生産・販売
配線機器、スイッチ(サーモスタット等)
Wiring Devices & Switches including Thermostats
[現在、産業製品中、最も多くの水銀を含有する。
中でも水銀中継器の水銀使用量が最も高い]
• 自動車のトランクやボンネットに取り付け
られる電灯のスイッチ
出典: ”Draft report Mercury Sources and Regulations, 1999”,
United States Environmental Protection Agency を元に
ワシントンコアにて作成
米国自動車メーカーによると年間 1,220 万
器の水銀電灯スイッチが自動車に搭載され、
それらスイッチの水銀含有量は年間 8.5メト
リックトンになるという。
水銀汚染の原因と見られているのが、例えば大気
汚染では図表 3 にあるように、発電、産業ボイラ
ー、医療・有害廃棄物焼却、地方自治体廃棄物焼
却、製造業など産業処理の過程で流出するものや、
冷蔵庫内の照明灯のスイッチ 1 個につき 1
グラムの水銀が含まれている。ガスレンジの
水銀含有製品の廃棄物処理の過程で流出するもの
が主となっている。水銀汚染に関しては大気汚染
JMC environment Update
• 冷蔵庫の照明灯やガスレンジのパイロット
ランプのスイッチ
41
Vol.4 No.1 (2002. 5)
米国における環境関連動向∼在ワシントンコンサルタントによるモニタリング情報⑮
パイロットランプで 1 つのスイッチに、2 グ
ラムほどの水銀が含まれているものもある。
• サーモスタット(自動温度調節器)
2. 代表的な団体による水銀対策活動
【NEWMOA】
米国では産業廃棄物に含まれる水銀による公害を
サーモスタットのリサイクルを進める非営
利 環 境 団 体 「 Thermostat Recycling
Corporation」によると、米国には約 5,000 万
器の水銀を含んだサーモスタットが一般家
庭で使用されており、サーモスタット 1 つに
つき 2∼ 4 グラムの水銀が使用されていると
いう。
防ぐために様々な試みが行われており、例えば北
東部の複数の州が共同参加して設置された
Northeast Waste Management Officials' Association
(NEWMOA)などがリーダーシップを取り、地域
ぐるみでの取組みを行っている。
◆ NEWMOA とは
電灯
Electric Lighting
Northeast Waste Management Officials' Association
(NEWMOA)とは米国北東部1の州政府団体であり、
• 蛍光灯
National Electrical Manufacturers Association
(NEMA)によると 1999 年の時点で約 120
センチメートルの蛍光灯に 11.6 ミリグラム
の水銀が含まれているという。
コネチカット、メイン、マサチューセッツ、ニュ
ーハンプシャー、ニュージャージー、ニューヨー
ク、ロードアイランド、バーモントの 8 州がメン
バー州となって
計測器・制御装置
Measuring Devices & Control Instruments
いる(図表 4)
。
メンバー州の
• 体温計
EPA ディレクタ
水銀体温計には約 0.5∼ 1 グラムの水銀が含
まれている。
ーが集まり、有
害廃棄物処理や
• 気圧計
廃棄場浄化、環
水銀気圧計には 1 器につき約 500 グラムの
水銀が含まれている。
境汚染防止など
Northeast Waste Management
Officials’ Association
129 Portland Street, 6th Floor
Boston, Massachusetts
02114-2014
www.newmoa.org
環境問題解決のために各州の基準統一を目指して
• 研究用温度計
おり、メーカー側が遵守しやすい規制・法律を州
研究用温度計には約 3 グラムの水銀が含ま
れている。
が制定できるよう活動を行っている。NEWMOA の
使命は、メンバー州における環境保護法施行の促
• 圧力計
進であり、州内の関係業者間および州間、連邦環
水銀圧力計には約 355 グラムの水銀が含ま
れている。
境保護庁との協力体制の樹立を通し、様々な活動
を行っている。
歯科用備品
Dental Supplies
また NEWMOA は、前回紹介した NEPSI(National
• 充填材
Electronics Product Stewardship Initiative)にも参
歯科の充填材に使用される混合物は、約
50%が水銀、25%が銀、25%が銅・亜鉛・
錫となっている。ひとつの充填材に約 327∼
982 ミリグラムの水銀が含まれている。
加しており、ニュージャージー州とマサチュー
セッツ州を除く 6 州を代表して、エレクトロニク
ス関連機器の廃棄物回収・リサイクルに関わるメ
ボタン型電池
Button Cell Batteries
ーカー側との対話にも積極的に関与している(ニ
• 補聴器、腕時計等に使用される電池
NEWMOA を通さずに NEPSI に直接参加している)
。
ュージャージー州とマサチューセッツ州は
さらに NEWMOA は、他州および地方政府機関の
ボタン型電池には約 5∼ 25 ミリグラムの水
銀が含まれている。軍隊や病院などで使用さ
れる水銀電池にはこれより多くの水銀が含
まれている。
1
出典: New England Zero Mercury Campaign によるデータを
元にワシントンコアにて作成
JMC environment Update
42
NEWMOA の加盟州は、ニューイングランド地方(コネチカ
ット、メイン、マサチューセッツ、ニューハンプシャー、
ロードアイランド、バーモント)6 州に、ニュージャージー
とニューヨークの 2 州を合わせた 8 州となっている。
Vol.4 No.1 (2002. 5)
米国における環境関連動向∼在ワシントンコンサルタントによるモニタリング情報⑮
NEPSI 参加を促進すべく「Product Stewardship
で、
“Product Stewardship”
(製品の社会的責任)
Institute(PSI)
」を通して活動を行っている。PSI
をめぐる州・地方政府による試みを全米に拡大す
とは University of Massachusetts-Lowell の関連 NPO
ることを目的に活動を行っている。
図表 4: NEWMOA 加盟 8 州
出典:NEWMOA によるデータを元にワシントンコアにて作成
さらに NEWMOA 加盟 8 州は、地球温暖化をもたらす
を提示している。同モデル法を基に、主にニューハ
大気汚染に取組む「Northeast States for Coordinated Air
ンプシャー、メイン、ロードアイランドの 3 州が水
Use Management(NESCAUM)
」も設置しており、積
銀規制州法の制定を進めており、同 3 州以外のメン
極的な環境政策の導入に努めている。
バー州に関しても今後州法の採択が進められるとみ
られている。
◆ NEWMOA『水銀プログラム』
数々の活動の中でも NEWMOA は、
「Mercury Program」
図表5に各州によるNEWMOAモデル法の採択状況を
を設置し、水銀汚染防止に関する活動も活発に行っ
示すが、ロードアイランドがほとんどの条項を採択
ている。同プログラムを通して「Mercury Reduction
し水銀規制の整備が最も進んでいることが分かる。
and Education Model Legislation」と呼ばれるモデル法
その後をニューハンプシャーとメインが追っている
を 2000 年に作成し、メンバー州が水銀の取締りを行
形となっている。
う際、参考とできるような法律の体系など
図表 5: NEWMOA モデル水銀法の採択状況 2001 年
CT
ME
MA
NH
製造業者、配給業者、輸入業者による水
銀含有製品に関する通知義務付け
›
★
›
州間の情報交換センターの設立
›
★
特定の水銀含有製品の販売・配給の禁止
›
装飾品、装身具、玩具などに関する規制
NY
RI
VT
★
›
★
›
›
★
›
★
›
★
›
★
›
★
›
›
★
›
★
›
★
›
体温計に関する規制
›
★
›
★
›
★
›
圧力計に関する規制
›
★
›
★
›
★
›
水銀元素、水銀合成物、水銀含有機器の
学校における使用の禁止
›
★
›
›
›
★
›
10mg 以上の水銀を含む製品の段階的
除去(免除含む)
›
★
›
›
›
★
›
JMC environment Update
43
NJ
›
›
Vol.4 No.1 (2002. 5)
米国における環境関連動向∼在ワシントンコンサルタントによるモニタリング情報⑮
水銀含有製品の表示義務化
›
★
›
›
›
★
★
水銀含有固形廃棄物投棄の禁止
›
★
›
›
›
★
›
水銀含有廃棄物の収集システム確立
›
★
›
›
›
★
›
病院における水銀含有製品の内容の
明示義務化
›
★Ô
›
›
›
★Ô
›
水銀元素の販売規制
›
★
›
★
›
★
›
啓蒙活動
›
★
›
★
›
★
›
廃棄に関する統一規制の設置
›
★
›
州調達に関する規制
›
›
›
›
★
›
★:法案通過 ›:発案済み
Ô:討議過程で大幅改正
:既存の法律・規制内で対応
出典:NEWMOA によるデータ(http://www.newmoa.org/Newmoa/htdocs/)を元にワシントンコアにて作成
また、NEWMOA は 2001 年に「Interstate Mercury
石油などの燃料の燃焼から」となっている。同団
Education and Reduction Clearinghouse (IMERC)」
体は以下の 5 項目による水銀汚染撲滅の目標を掲
と呼ばれる水銀公害削減のための州間情報交換セ
げており、ニューイングランド各州政府に対し環
ンターを設置し、上記のモデル法採択州に対する
境改善の提言を行っている。
情報提供などの支援を行っている。IMERC の 2002
• 一般消費財に使用される水銀を段階的に無く
年度の活動目標は以下のようになっている。
す
• 法的枠組みの構築
• 歯の充填に使用される水銀を削減?する
• 水銀含有製品の通知を行う共通窓口の設置
• 石油など化石燃料の燃焼から排出される水銀
• 水銀含有製品に関する情報システムの構築
の量を減らす
• NEWMOA モデル法の採択状況や水銀含有製品
• 人体に対する水銀被害を減らす
• 連邦政府に対し水銀規制法を採択するよう働
きかける
情報などを掲載したウェブサイトの構築
• 一般ユーザーからの電話、電子メールなどを介
する質問への対応
同時に同団体はニューイングランド各州政府の水
• 水銀含有製品の表示義務施行の支援
銀問題への取組みに対し「成績表」を発行し、政
• 啓蒙活動の支援
府に対し改善策の早急な採択を迫っている。例え
• IMERC 会議の開催
ば 2001 年夏に出版された報告書によると、図表 6
のような厳しい採点が行われており、環境保護団
【New England Zero Mercury Campaign】
体と産業界との間に現状認識においてギャップが
また、ニューイングランド 6 州における環境保護
存在することを物語っている。
団体が「New England Zero Mercury Campaign」を
図表 6: 成績表
結束し、州と協力
関係を築きながら
ニューイングラン
ド地方における水
銀汚染の撲滅を目
指し活動を行って
いる。同団体によ
ると、ニューイン
グランド地方にお
出典: ”A Failure to Eliminate: A Report Card on Mercury
Elimination in New England”, New England Zero Mercury
Campaign,
http://www.nwf.org/cleantherain/pdfs/zmc2.pdf
ける水銀流出の源の約 60%が「一般消費財の使用
および焼却から」
、残りの約 30%が「石炭および
JMC environment Update
44
Vol.4 No.1 (2002. 5)
米国における環境関連動向∼在ワシントンコンサルタントによるモニタリング情報⑮
3. 各州による水銀規制における取組みの例
同州法は、Jeanne Shaheen 州知事自らがスポンサ
以下に、水銀規制が進んでいるとみられているニ
ーとなり、大手環境市民団体
ューハンプシャー、メイン、バーモントのニュー
との協力を得たことから実
イングランド 3 州による取り組みの概要を紹介す
現した。同法の施行にあたり
Shaheen 州知事は、
「環境問
る。
題には州境はなく、他の州お
【ニューハンプシャー州】
よび連邦政府は全米での取
ニューハンプシャー州環境サービス課
組みを行うべき」と、全国に
(Department of Environ- mental Services)は、公
先駆け同州が標準を示すこ
害防止プログラム(Pollution Prevention Program)
Jeanne Shaheen
NH 州知事
民主党
とに意欲を示すと同時に他州の協力を呼びかけて
を設けその中に「ニューハンプシャー州水銀削減
いる2。
戦 略 ( New Hampshire Mercury Reduction
Strategy)
」を設置し水銀汚染問題に取組んでいる。
同法により、同州の公益事業者であ る Public
同戦略は、以下の 7 分野における水銀の環境流出
Service Company of New Hampshire 社(以下 PSNH
を防ぐことを目的に活動を行っている。
社)が所有する 3 つの発電所は、2006 年までに
① 地方自治体レベルにおけるゴミ焼却炉
SO2 の排出量を 75%、NOx を 70%、CO2 を 10%削
減し 1990 年の排出レベルに引き戻すことが義務
② 一般家庭および地方自治体レベルでの固形
付けられる。また水銀の削減レベルも、現在の排
廃棄物
出量が測定された後に州が設定することになって
• 電池
いる。
PSNH 社は同法の施行に合意を示しており、
• 水銀含有電灯
廃棄物削減を行うと同時に“排出量クレジット
③ 病院・医療関連焼却炉
(Emission Credit)
”を購入することにより目標を
④ 公益事業・非公益事業のボイラー
達成して行く、と発表している。
⑤ 工業排水および汚泥
⑥ 歯の充填物
しかし、この“排出量クレジット”こそが同法に
⑦ 工業処理
関して依然として議論を巻き起こしている点であ
以上のような目標を掲げるニューハンプシャー州
り、今後も環境保護団体による批判は避けて通れ
はまた、2001 年 11 月に全米に先駆け「New
ないとみられている。この“排出量クレジット”
Hampshire Clean Power Act」と呼ばれる工場から
とは、排出ガス削減の目標を各プラントに設け、
の水銀排出規制法を制定し注目を浴びている。同
もしあるプラントが目標以上の削減を行った場合、
州は水銀体温計の販売禁止法を最初に制定した州
その分を“クレジット”として他のプラントに売
でもあり、ニューイングランド地方における水銀
却することができる、というシステムである。こ
対策のリーダー的存在となっている。今回の水銀
れにより、ある特定のプラントはクレジットを他
排出規制法は、二酸化硫黄(SO2)および窒素酸
のプラントから購入することで目標以上の排出を
化物(NOx)、二酸化炭素(CO2)、水銀の 4 大公害
行うことが可能となる一方で、排出削減が目標以
物質の工場からの排出量削減を狙ったもので、こ
下のプラントも出てくるため、地域および国全体
のような州法の採択は全米でも初めてとなり注目
の排出量が減る、という理論となっている。今回、
を浴びている。特に地球温暖化の原因とされてい
同法が比較的スムースに採択された背景には、
る CO2 に関しては、他州と比べ温暖化が急激に進
Shaheen 州知事が排出量クレジットの使用を
んでいることから、同州の主要収入源となってい
PSNH 社に認めた点が大きく影響しているとも考
るスキーや紅葉、マス釣り、メープルシロップな
えられている。と同時に、PSNH 社がクレジット
どの産業に大打撃を与えており、何らかの対策を
2
打つことが州民より希求されていた。
JMC environment Update
45
連邦レベルにおいては、Jim Jeffords バーモント州選出上院
議員と Joe Lieberman コネチカット選出上院議員が中心と
なり「Clean Power Act of 2001」と呼ばれる法案を上院に提
出している。
Vol.4 No.1 (2002. 5)
米国における環境関連動向∼在ワシントンコンサルタントによるモニタリング情報⑮
を購入する場合、北東部の州から購買した方が安
同州法の施行を積極的に支援してきたのが、環境
価になるような条項が盛り込まれており、同州の
保護団体と車両リサイクル企業との連立で構成さ
環境改善が最終的にもたらされるよう配慮した内
れる団体「Partnership for Mercury-Free Vehicles3」
容となっている。
であり、同団体は今回の同州法の施行に対し絶対
的な支持を示している。廃車リサイクル産業団体
【メイン州】
の「Institute for Scrap Recycling Industries」は「水
メ イ ン 州 は 、 環 境 保 護 課 ( Department of
銀のような有害物質の使用を決めたのはメーカー
Environmental Protection)が中心となり環境対策
であり、今回メーカー側の責任を明らかにしたの
の施行を行っており、水銀対策に関しても 2002
は評価すべき」と同州法の全面的支持を明らかに
年 2 月に「Mercury in Maine, A Status Report」と
している。また鉄鋼リサイクル産業団体の「Steel
題された報告書を作成し、同州における水銀被害
Recycling Institute」も、
「米国における鉄鋼リサイ
の状況をまとめると同時に、州が講じるべき対
クル産業の繁栄を持続させるためには、今回のメ
策・目標を定めている。かかる目標に従い同州で
イン州法が米国の規範となるべき」と他州がメイ
は、水銀サーモスタットの段階的削減や、歯の充
ン州に習って同様の州法を制定するよう呼びかけ
填物としての水銀使用禁止、自動車における水銀
ている。
含有部品の除去など、様々な法案が議会に提出さ
◆ 自動車メーカー側の反応
れ議論が行われている。
しかしながら同州法で多大な負担を負うことにな
◆ 自動車メーカーに対する水銀処理義務化法
る自動車メーカーは、
「水銀スイッチの処理に関わ
中でも自動車における水銀含有部品の撤去に関し
る責任は、リサイクル業者と消費者が負うべき」
て同州では、2002 年 4 月に「自動車メーカーに対
として同法案に激しく反対し、法的措置に訴える
し、自動車に使用された水銀含有部品の除去およ
ことも辞さない構えをみせている。ビッグ 3 4やト
び処分を義務付ける」とした法案(同法案につい
ヨタを含む 13 の自動車メーカーを代表する業界
ては前回 3 月号で紹介)を通過させ、Angus King
団体「Alliance of Automobile Manufacturers」は、
メイン州知事が法案に署名
「スイッチ除去にかかる費用は、リサイクル業者
を行い、同法案が法制化され
が事業を行う上で派生するコストである。よって
た。メーカー側の責任を追求
リサイクル業者が負担するべき」として同法に反
し、その負担を全面的に要求
対を表明しており、関係者によると、メーカー側
するこのような州法は前例
は今後の対応として法的手段に訴えることも選択
がなく、米国最初となるため
肢に入れているという。
各方面より注目を浴びてい
る。また同様の法案を提出中
のマサチューセッツ、ニュー
Angus King
メイン州知事
無所属
同法の制定は、環境保護市民団体および財政的に
逼迫している州が、自動車メーカー側に対し長期
ヨーク、バーモント、ロードアイランドなどの州
的な“製品の社会的責任(Product Stewardship)
”
に対して大きな影響を与えるものとみられている。
を取るよう圧力をかけ続けた成果とも言える。こ
の一連の動きは、欧州で盛んに取り入れられてい
同法により自動車メーカーは、使用済みになった
る“拡大生産者責任(EPR: Extended Producer
自動車から水銀を含有するスイッチなどの部品を
Responsibility)”と呼ばれる概念に基づいており、
除去するための施設を設置・管理し、水銀スイッ
従来の地方自治体による廃棄物処理の責任をメー
チ 1 個につき最低 1 ドルの処理費をリサイクル業
者に対して支払う義務を負う。
また 2003 年より、
3
水銀を含有するスイッチを搭載した車両の販売も
禁止される。
4
JMC environment Update
46
メンバー団体は、Automotive Recyclers Association、Clean Car
Campaign、Clean Production Network、Ecology Center in Ann
Arbor、Environmental Defense、Great Lakes United、Institute
for Scrap Recycling Industries、Mercury Policy Project、Steel
Manufacturers Association、Steel Recycling Institute となって
いる。
General Motors、Ford、Daimler-Chrysler
Vol.4 No.1 (2002. 5)
米国における環境関連動向∼在ワシントンコンサルタントによるモニタリング情報⑮
カー側にシフトすることにより、メーカー側が製
団体および同州の逆転勝利として受け入れられ、
品に対する長期的な視野を持つことを促し、原料
環境団体の「Mercury Policy Project」は「消費者の
の選び方、製品の製造工程などにおける環境への
水銀含有製品を知る権利が保証された画期的な判
影響を製造段階で考慮させることにより経済発展
決」と評価した。
と環境保護を両立させる、というものである。こ
同法は、以下の 11 州の検事総長が 1999 年の「電
の EPR を導入しようとする動きは全米で広まりつ
灯製造業者のラベル義務免除」裁判所命令の否決
つあり、その一環として、e-waste インターネッ
を求める同州の支持を表明するなど、同地域にお
トによる廃棄物処理に関わるセクター間の協力体
ける他州を巻き込んだ地域的な動きとなった。特
制を促進する NEPSI も活動を開始している。しか
に NEMA 側の「複数の州による統一されないラベ
し一方で、自動車メーカー側はこのような動きに
ル義務により、メーカー側に不当な負担がかかる」
警戒心を強めており、今回のメイン州法がきっか
とした主張に対し、周辺州の協力を得、
「他州はバ
けとなり欧州型の厳しい EPR が米国で浸透する恐
ーモント州法と一致した州法を制定する予定であ
れがあるとして、反対キャンペーンを展開してい
る」とした証拠を法定に提出し、勝訴に持ち込ん
くものとみられている。
だ。
【バーモント州】
ニューヨーク
カリフォルニア
コネチカット
メイン
バーモント州は全米に先駆け 1998 年に「水銀含
有製品を製造するメーカーに対し、その製品およ
び包装材が水銀を含むことを買い手に通知するこ
マサチューセッツ
ニューメキシコ
ミネソタ
オクラホマ
ニューハンプシャー アラスカ
ニュージャージー
とを義務付ける」とした画期的な州法を制定し注
現在ニューイングランド地方では、少なくとも 4
目を浴びた。同法はまた、
「水銀含有製品および包
つの州が同様の水銀ラベル法案を議会で討議・提
装材の廃棄処分禁止」も定めており、同法の対象
出しているとみられており、かかる州に大きな影
となる製品には蛍光灯や電池などが含まれること
響を与えるものとして関係者の注目を浴びている。
となった。しかし「全米電気製造業者協会(NEMA:
また、NEMA の訴訟によって水銀ラベル法の導入
National Electrical Manufacturers Association)は、
を敬遠する州が出てきていたことから、今回の判
同協会のメンバーである電灯製造業者らを代表し、
決が突破口となり水銀ラベル法の制定が全米で進
5
「同法は憲法修正第 1 条(First Amendment )に
むものと考えられている。
違反している」とし、連邦地方裁判所において同
州を相手に訴訟を起こした。NEMA 側の主張は、
【各州の水銀規制法制定状況概要】
同法が「憲法によって保証されている“製品の情
米国においては 2001 年度に約 50 もの水銀関連州
報を明かさない”という電灯製造業社の権利が侵
法案が提出されており、2000 年 8 月∼2001 年 8
している」
「過度の財政負担を強いられる」という
月の間に 6 つの州において約 10 の法案が議会を
ものであった。
通過した。2002 年度議会においても州レベルにお
ける数多くの関連法案が提出されており、図表 5
1999 年、連邦地方裁判所は NEMA 側の主張を全面
に最近の主な動きをまとめる。
的に受け入れ「水銀含有製品のラベル表示義務か
ら電灯製造業者を免除にする」とした判決を下し、
メーカー側の勝訴となった。これに対し同州は控
訴し、2001 年 11 月、ニューヨークの連邦控訴裁
判所は NEMA 側の主張を退け、1999 年の裁判所命
令を無効とし、電灯製造業者に対し水銀ラベル表
示の義務付けを言い渡した。この判決は環境保護
5
議会が宗教・言論・集会・請願などの自由に干渉すること
を禁じた条項
JMC environment Update
47
Vol.4 No.1 (2002. 5)
米国における環境関連動向∼在ワシントンコンサルタントによるモニタリング情報⑮
図表 5: 米州政府における水銀規制法をめぐる主な動き
• 体温計や自動車のスイッチ、装飾品・服飾品、電池、学校備品などで水
銀が含有されるものの販売を禁止する州法が制定された。
カリフォルニア州
コネチカット州
[数件の関連法案が提出されたが 2001 年度に州法化されたものは皆無で
あった。]
インディアナ州
• 水銀含有の体温計や装飾品・服飾品の販売禁止、水銀含有備品の学校に
よる購入の禁止などを定めた州法が制定された。
メイン州
• 体温計など水銀含有消費者製品の販売を禁止、水銀含有製品の通知義務
付けなどを盛り込んだ州法が制定された。
• 歯科の充填物で水銀を含有するものに関する規制法が制定された。
• 2002 年、全米に先駆け自動車メーカーに水銀処理を義務付ける州法を
制定した。
• 水銀含有の体温計の販売禁止、小学校における水銀含有備品の使用禁止
などを定めた州法が制定された。
メリーランド州
[数件の関連法案が提出されたが 2001 年度に州法化されたものは皆無で
あった。]
マサチューセッツ州
• 2004 年までに学校における水銀含有備品の使用禁止を定めた州法が制
定された。
• 水銀含有の体温計の販売禁止を定めた州法が制定された。
ミシガン州
ミネソタ州
[同州は 1992 年より数々の水銀規制法を制定しており「水銀規制モデル
州」と位置付けられている。]
[水銀含有の体温計の販売禁止を定めた法案が棄却された。]
ネブラスカ州
ニューハンプシャー州
• 水銀含有の体温計の販売禁止を定めた州法を制定した最初の州。
• 2001 年、全米に先駆け工場からの水銀排気量を規制する州法を制定し
た。
ニュージャージー州
[水銀含有の体温計の販売禁止を定めた法案を審議中]
ニューヨーク州
[水銀汚染削減を定めた法案を審議中]
オレゴン州
• 水銀を含有する体温計や自動車のスイッチ、装飾品・服飾品の販売を禁
止する州法が制定された。
ロードアイランド州
• 水銀含有の体温計の販売禁止を定めた州法が制定された。
• 水銀含有製品の段階的削除、ラベル表示義務化など盛り込んだ総合的な
法案が議会を通過。
テキサス州
バーモント州
[水銀含有製品の販売禁止を定めた法案が棄却された。]
• 水銀含有製品のラベル表示義務化および水銀含有製品の廃棄禁止など
を定めた州法が 1998 年に施行された。
ワシントン州
[水銀汚染削減を定めた法案を審議中]
ウィスコンシン州
[工場からの水銀排出規制法案を審議中]
出典:Mercury Policy Project からのデータを元にワシントンコアにて作成
JMC environment Update
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Vol.4 No.1 (2002. 5)
米国における環境関連動向∼在ワシントンコンサルタントによるモニタリング情報⑮
<前号の訂正>
以下の箇所を補足・訂正させて頂きますと同時にお詫び致します。
5. ブッシュ大統領による京都議定書代替案の概要と評価
65 ページ「◆ブッシュ大統領『Clean-Skies Initiative』の主な項目」を以下のように補足・訂正致しま
す。
◆ ブッシュ大統領による京都議定書代替案
Clean Skies Initiative
• 二酸化硫黄を現在の 1,100 万トンから 2010 年には 450 万トン、
2018 年には 300 万トンに削減
• 酸化窒素を現在の 500 万トンから 2008 年には 210 万トン、2018
年には 170 万トンに削減
• 水銀を現在の 48 トンから 2010 年には 26 トン、2018 年には 15
トンに削減
Global Climate Change
• 温暖化ガスを 10 年間で 18%削減
<本弁護士情報は、競輪の補助金を受けて実施したものです>
JMC environment Update
49
Vol.4 No.1 (2002. 5)
アジアにおけるリサイクル方針
∼ 中国、マレーシア、タイの概観 ∼
はじめに
アジアの諸国が重大なゴミ問題に面しているが、外資導入を妨げる懸念から生産者責任を問う法
律を施行している国は少ない。この報告書は中国、マレーシアおよびタイを扱っている。中国が
世界貿易機構(WTO)への新たな参加と最近の Basel Action Network の報告書からくる政治圧力
のため、その微小な強制力にもかかわらず、電気電子製品の輸入に介入し新たな規制を推進して
いることに注目すべきである。
1.
中 国
中国の法律体制は立法機関による成文法、そ
れを施行するため具体化した行政機関の各法
律、そして不文法ではあるが、いわゆる「命令」
が絡んだ複雑な混合体である。さらに世界市
場経済の要求に添うため国家法令近代化努力
も加わって、より一層錯雑になっている。現在
環 境 法 令 案 約 49 が 環 境 立 法 計 画
( Environmental Legislative Plan (1998 –
2003))に基づいて計画されている。増大す
る国内産業を賄うため輸入している中古素材
のため、この国はリサイクル分野では勢力国
になりつつある。2008 年に開催される北京オ
リンピックおよび最近の WTO 参加を機会に、
現在中国は環境問題に非常に積極的に取り組
んでいる。
中国の環境青写真である第 10 次 5 年計画
(Tenth Five – Year Plan (2002 – 2006))が
2001 年 12 月に発表され、2002 年 1 月に内閣
によって承認された。中央政府は前代未聞の
総額 7 千億元にのぼる予算を国家環境保護局
( SEPA: State Environmental Protection
Administration)の地方支局に配分することを
承認した。その計画の概要は公害問題、特に危
険ゴミの廃却、製品の環境安全表示化、そして
製造業者と輸入業者の責任を増す包装材規制
などが含まれている。
JMC environment Update
SEPA は実際に法律を布告することによって
投資候補者を敬遠させるよりも、企業側から
の自発的な同意を求める方向に動いているよ
うである。地方支局は各地区独自の問題に対
する回答案を提出することになっており、中
央 SEPA の承認を得た後、2001 年 6 月に統一
意見書を発表する予定である。
2002 年 3 月上旬、Basel Action Network (BAN)
が率いる国際市民団体連合が、中国の僻地に
て輸入電化廃品からかなり劣悪な状態で素材
回収がされていることを暴露した報告書を発
表した * 。報告書は“Exporting Harm: The
High-Tech Trashing of Asia(危害を輸出:高
技術がアジアをゴミ化する)”と題され、米国
が電化製品廃品の 50%∼80%を開発途上国
に輸出していることや、ヨーロッパや日本か
らの輸出も名指ししている。報告書にはプラ
スチックや電線の屋外焼却、川岸での金採取
酸化作業、そして含鉛陰極線管の粉砕と廃棄
の現場を載せている。中国の法律専門家はこ
れら殆どの作業は不法行為であると述べてい
る。
この BAN の報告書で面目を失った中国政府は
種々の不法電化製品廃品輸入の取締りを試み、
新たな規則を制定した。(以下電化製品参照)
* 編集者注:本誌 Vol.3 No.6、p.62∼p.63、◆「サイバー
時代の悪夢」を参照のこと。
50
Vol.4 No.1 (2002. 5)
アジアにおけるリサイクル方針∼中国、マレーシア、タイの概観∼
済み携帯電話用電池を新品として市場に流す
詐欺商法の温床でもある。
包装
Solid Waste Act(固形廃棄物法)によると、
「製品の包装は回収や再利用がしやすく、廃
棄の際環境問題を生せず、自然崩壊する材料
を選ぶべきである。また製造者、販売者、お
よび全ての消費者が関係当局の示す規定に
従って包装材の回収と再利用に携わるべきで
ある。」またその法律は、危険廃棄物の貯蔵、
運搬に使われた包装材は再利用の前に洗浄処
理すべきである、とも述べている。しかしこ
の法を施行するための具体的な規則が書かれ
るまでは、これが生産者の責任を問うている
法と解釈すべきかは判断がつきかねる。中央
政権は各地方政府に小売段階での発泡スチ
ロール包装使用を制限する命令を出している
が、それは食品包装にのみに限られている。
電化製品
2000 年 4 月、中国は中古コンピューターおよ
びその部品、ビデオカメラ、電話機、テレビ
と陰極線管、ビデオゲームセット、電気炊飯
器、複写機、エアコン、電子レンジなどの輸
入を禁止した。しかし中古品を更新して再輸
出するための輸入は免除された。Tao Co. 日
本社は日本で回収した中古モニターを持ち込
み中国でリサイクルする免許を得た。
部分的に施行された輸入禁止は 2001 年突然
取り除かれた。SEPA は多数のリサイクル工場
を見回る取締官が不足し、またある中国筋に
よると、国境検査官をリサイクル用の中古品
を通過させるために買収するのが日常茶飯事
であるという。ある米国のリサイクル業者の
話では、中国は電化製品の新品の生産を好む
傾向があるので、かなりの量の修理可能製品
が拒否されたという。しかし同時にかなりの
故障電化製品も通過して僻地の小企業に頻繁
に到着する。殆どの米国リサイクル業者は適
正に電化製品の仕分けをするが、中には怠る
者もいる。中国においてはこの混同した荷を
処理することが最も危険作業である。ここで
注目すべき点は、銅が電化製品から取り出す
金属では特に価値があることと、その銅精錬
所が米国内には 1 ヶ所もないことである。
多くの先進国と同様に、運搬包装規定は一般
に大まかで詳細には触れていない。中国の危
険 物 運 搬 管 理 法 ( Hazardous Goods
Transportation Management Regulations
(1996))は有害廃棄物を含めた危険物の移動
に際する運搬包装と安全処置の非常に基本的
な指導を施しているに過ぎない。
電池
輸出入取引きの電池は、2002 年 1 月現在、政
府の登録が義務付けられ、水銀含有量も制限
されている。電池は非水銀か、含んでいても
0.0001%以下でなくてはならない。2005 年の
1 月以降は水銀含有量 0.0001%以上のアルカ
リ性亜鉛やマンガン電池も禁止される。また
全ての電池は、水銀含有量を表示しなくては
ならない。表示に関する限りではこの法は施
行強制されている。
中国は世界の 3 分の 1 の電池を生産している。
2002 年 2 月、電池のリサイクルを促進するた
め SEPA は生産者に全ての電池回収を義務付
ける規則を提起した。その結果、リサイクル
工場が 2 件設立され、電池回収箱が公共の場
に設置された。2002 年 4 月現在、生産者の負
担義務や料金の情報は入っていない。また、
偽造製品で有名な中国は業者が回収した使用
JMC environment Update
51
2002 年 3 月、BAN とその他のアジア環境活
動団体が、中国への不法電化製品輸出につい
て毀損的な報告書を発表した直後、中国政府
当局は入港口にて種々の中古電化製品を押収
し始め、新たな規制を発表した。今後もより
多くの規制が推測される。一方、米国の環境
団体は電化製品くずの輸出禁止を呼びかけて
いるが、それが実現する見込みはおそらくな
い。
同じく 2002 年 3 月下旬、中国検定資格認定
省 ( CAAC: Certification and Accreditation
Adiministration of China)が同年 5 月より検
定を強制することを発表し、国内および外国
Vol.4 No.1 (2002. 5)
アジアにおけるリサイクル方針∼中国、マレーシア、タイの概観∼
の貿易にかかわる企業に“中国強制認定
(CCC: China Compulsory Certificate)”印の
表示がない製品の輸出入を禁ずると伝えた。
企業が製品を検定に出すのに 1 年間の猶予を
与えたが 2003 年 5 月以降はこの認定方式は
厳格に施行される。認定方式は応用する技術
の規定、製品基準とその準拠検査過程、統一
標識および課税表などが含まれている。認定
印は China Compulsory Certificate の英単語 3
語から成り立っている。
ンロなどのいわゆる「白物製品」をリサイク
ルし始め、かかる製品から貴金属を回収した。
電動工具や他の電化製品から回収するアルミ
に、1 キログラム当たり 1.2 マレーシアリン
ギットという国内市場では最高値がつけられ
ている。また、使用済みプラスチック包装材は
1 キログラム当たり 0.15 マレーシアリンギッ
ト、ダンボールは 0.09 マレーシアリンギット
で売られている。
最近数々のリサイクル法が承認、あるいは承
認されつつあるがそれが、施行されるのはま
た別問題である。
政府はとりあえずこの認定を受けるべき製品
群を発表した。その 132 群の中に含まれるの
は電気工具、家庭電化製品、パソコン、テレ
ビ、ビデオなどの視聴覚機、一部の医療器、
オートバイ等である。猶予期間終了時点では
この項目に挙げられた全ての製品に以前使用
された Great Wall(万里の長城)印や CCIB
印に変わってこの新認定印がつけられる*。
包装材
1999 年マレーシア内閣により 2 つのリサイ
クル関連の法が承認されたが、経済危機のた
めその履行は進展していない。かかる 2 つの
法とは包装材政令(Packaging Ordinance)と
物質循環政令(Close Substance Cycle)で、
双方ともドイツの法律を基にしたものである。
包装材法は包装材の使用を最小限に留めるべ
く規制するもので、製造業者は多重包装など
の不必要な包装を避けなくてはならない。包
装材の引取り規定は実施されていない。同国
ではこれといって使用や輸入を禁止している
特定の素材はない。
新しい法律はまた、製造者、販売者および消
費者にこれらの認定商品の使用とリサイクル
の責任を負わせている。中古電化製品リサイ
クルの規定はそれらを随意に廃棄する者を罰
し、環境友好的製品を開発する製造者を奨励
することを含んでいる。
2.
マレーシア
電化製品リサイクル法
マレーシアで電化製品および包装材のリサイ
クルが行われているのは、法に従うというよ
りも経済的な理由が主である。リサイクルに
関する法律はある程度存在するが強制施行さ
れていないため、リサイクルは単独事業に
なっている。
類似物質循環法では、廃電化製品の最終処分
のための回収責任は政府ではなく製造業者に
義務付けるとしている。しかし施行はされて
いない。
統計によると、現在国民 1 人当たり年間平均
250 キログラム程度の固形廃棄物を産出し、
このうち僅か 2%程がリサイクルされている。
リサイクルされる主な製品は車のバッテリー
と包装材である。1990 年代の後半、ある企業
が一般家庭および産業界および商業施設から
排出された使用済み冷蔵庫、洗濯機、大型コ
*
しかし法律は、貿易・経済団体からの圧力のた
め、必ずしも厳しく施行されてはいない。企業
編者注: 「中国強制認証(CCC)セミナー」を来る 7 月 8 日
(東京)、9 日(大阪)で開催予定。詳細は当組合 HP
(http://www.jmcti.org)を参照。
JMC environment Update
その他にもあまり知られていないが、1996
年改訂の環境質法(Environmental Quality Act
1996 – amended)という法があり、それによ
ると特定の製品の製造業者および/または輸
入業者に公害税が課せられる。この税金で得
た収益は、惨事や原油漏れなどの事故の処理、
ならびに一般の環境認識向上を図る環境基金
にあてがわれることになっている。
52
Vol.4 No.1 (2002. 5)
アジアにおけるリサイクル方針∼中国、マレーシア、タイの概観∼
は単に、かかる方針に従うよう奨励されてい
るだけである。
「総理大臣ハイビスカス賞」が
毎年、適切な電化製品リサイクルを行ってい
る企業に授与される。今後予想されるその他
の「恩恵」は、その製品がリサイクル可能と証
明するための「Good Product Mark(優秀製品
マーク)」である。
最近エネルギー消費、公害およびゴミ産出を
縮減する、自発的な工夫を促進するための奨
励企画が提案された。タイ政府はまた、科学
技 術 環 境 省 ( MOSTE: Ministry of Science,
Technology and Environment)に公の環境計
画案を作成するよう命令し、2002 年の上旬に
提案される予定である。
電池リサイクル法
一般ゴミの大部分は、12 の地方自治区と保健
管理区の経営するゴミ埋立地に運搬されるが、
現存の施設は容量が限界に達している。焼却
炉建設は費用がかかり大規模な計画が必要な
ので、新たな埋立地やゴミ捨て場が国内のあ
ちこちに出現している。世論一般のニンビー
(NIMBY: Not-in-my-Back-Yard – ごみ処理場
など不快なものを近所に作ることに反対す
る)姿勢と大気汚染の認識が深まって、焼却
炉派と埋立地派の熱い議論を呼んでいる。
マレーシアでは電池のリサイクルを強制する
法は存在しない。しかし数々のリサイクル業
者は鉛を取りだすため乾電池を回収している。
車 のバ ッ テ リ ー製 造 に 携 わる 大 手 会 社 Tai
Kwong-Yokohama Bhd(タイ・クオンーヨコ
ハマ有限会社)が 1997 年に、マレーシアで
初めてリサイクル工場を設立した。
科学技術環境省は現在、消費者が新製品を購
入する際にデポジット制を設け、その製品を
リサイクルできるよう返品すればデポジット
が払い戻しされるという新しい法律を草案中
で あ る 。 現 在 の 固 形 廃 棄 物 管 理 案 ( Solid
Waste Management Bill)の修正条項として今
年中に上程される予定である。
3.
素材再生業は伝統的には現地語で“Salengs”
と呼ばれる屑集め下層労務者が近辺やゴミ捨
て場を漁り、再利用できる品や素材を民間の
リサイクル業者に運んでいた。この慣習は今
もって多くの地域で行われているが、首都バ
ンコックではこの“Salengs”の車の使用を禁
止している。
タ イ
タイでは一日約 38,170 トンのゴミを排出し、
そのうち 17,177 トンは資源再生可能ゴミで
ある。しかし 2001 年に最終的に再生処理さ
れたのは 5,344 トンに過ぎない。その量は一
般ゴミの約 13%で、2000 年までに 15%を処
理するという目標に達しなかった。公害管理
局(PCD: Pollution Control Department)は、
第 9 次経済発展計画の一部として処理率を
2006 年までに 30%に上げる目標を定めてい
る。
この国は深刻なゴミ問題を抱え、その主なも
のは、ゴミ埋立地が急速に不足しつつあるに
も関わらず、住民の反対にあうため政府がゴ
ミ焼却地設定に難航していることである。そ
れと同時に、政府がその地域の外資投資を阻
むのを懸念して、厳しいリサイクル強制を躊
躇していることでもある。
JMC environment Update
バ ン コ ッ ク 首 都 圏 組 合 ( BMA: Bangkok
Metropolitan Association)は現在、全てのゴ
ミ種を一括して処理する廃棄物管理方法を呼
びかけ、大企業、病院、土地開発業者からの
ゴミ回収やゴミ焼却工場建設等の事業の民営
化を目指している。予算 700 万バーツの工場
第 1 号が市によって調達されることになり、
その費用の 75%は日銀の海外協力事業から
の融資金である。工場は 5 年計画で現在 2 ヶ
所のゴミ埋立地に建設されゴミのリサイクル、
堆肥化、焼却および埋立施設が含まれている。
また、投資委員会(BOI: Board of Investment)
はリサイクル業を BOI 奨励特権有資格事業の
一つに加えると発表した。役員の話によると、
その事業の建設地選定に何の制限も加わらな
くなると言っている。
53
Vol.4 No.1 (2002. 5)
アジアにおけるリサイクル方針∼中国、マレーシア、タイの概観∼
包装材リサイクル
現在包装材リサイクルは強制されていない。
PCD は再生素材使用包装などに対する減税を
可能にするいわゆる「公害権」方式を考慮し
ている。Philips Semiconductors Thailand など
の少数の企業が ISO 14001 の認定証を受け、
自発的に包装材縮減に努めている。
しかし、PCD の新法案によると、包装材への
新たな課税が見込まれる。2002 年包装法案
(Packaging Law Bill 2002)は 2002 年 3 月、
国家環境委員会(NEB: National Environment
Board)に承認され現在最終承認を得るため
内閣に提出されている。同様に、各家庭がゴ
ミの回収と廃棄の費用を支払う提案が近々発
表される予定である。この新法案は、製造業
者のリサイクルし難い包装材の使用と生産の
縮減を奨励し、タイ・グリーンラベルを志望
する動機を促成している。
提案されている物品税は
プラスチック 1 トン当た
り 4,100 バーツ、紙 1 ト
ン当たり 800 バーツ、ガ
ラス 1 トン当たり 500
バーツ、金属および金属くずは 1 トン当たり
1,700 バーツとなっている。ある一定の製品
は高率の対象となり、それらにはビールビン
1 本当たり 1 バーツ、プラスチック取っ手付
き買い物袋 80 サタン等がある。
この新法案によると、生産者はビンやプラス
チック容器などの自社製品廃棄物を一定量回
収すれば税金の払い戻しを要求できることに
なっている。プラスチックおよび発泡包装材
廃棄物は、その処分に一番費用がかかる。施
行 2 年後に政府はこの税率を半減する予定で
ある。この譲歩案が取り入れられたのは、こ
の動きが将来の資本投資を敬遠させる憂いが
あるとみた内閣の一部が、2001 年末の最初の
決議の際、この税率案を拒否したからである。
危険化学物質廃棄物に関するの輸送用包装材
命令は 2001 年 11 月に起草されたが、これは
9 月の危険廃棄物輸送にまつわる事故を受け
たものである。そして計画は 2002 年初頭に
完全に実施の運びとなる
電池および電化製品
電化製品廃棄物リサイクルを強制する法は存
在しないが、電池には 10%の消費税がかけら
れている。オートバイを含む自動車メーカー
には、回収した際リサイクル電池に 5%、新
品に 10%の払い戻しが許可されている。
PCD によると、新デポジット制度の下生産者
使用済み電池回収を義務付ける提案がされて
いるが、ここ数年実現する可能性はないと見
ている。アルカリ性および非アルカリ性乾電
池はタイ・グリーンラベル適用できる。PCD
にとっては、電池が危険廃棄物として正しく
取り扱われ、適切な廃棄施設に送られている
ことを保証することが現在集中すべき課題で
ある。
記載報告の詳細については Recycling Laws International の発行者
Raymond Communications, Inc.まで
Web site: http://www.raymond.com
E-mail: [email protected]
リポーター: Ee Lin Wan
邦訳: 相堀 美鈴
JMC environment Update
54
Vol.4 No.1 (2002. 5)
寄 稿
カシオのエコプロダクツについて
∼ カシオ CGP30 ∼
カシオ計算機株式会社
総務部
企画調査グループ
瀬尾 悠紀雄
事業の基本が元来環境適応型
カシオ計算機はモノづくりの基本姿勢を「常に独創的な商品開発で新しい市場を創造し、社会に貢献
する」というところに置いています。特にコンシューマ製品分野においては「軽・薄・短・小」のキ
ーワードを従来からカシオの製品開発での重要なコンセプトにしていますが、環境の時代に入りこれ
に「省電力」という言葉を加えて環境に配慮した製品開発への方向性が確固としたものになっていま
す。
カシオでは副社長の委員長のもと、毎年上期と下期に各 1 回、全社の環境会議が開催されます。上期
には年間の具体的環境行動目標が幾つか提示されて全社方針として採択されます。下期には採択され
た各行動目標の進捗度合いの報告、あるいは達成目標時期の前倒しや、新規目標の採用などがありま
す。国内からは生産拠点はじめグループ各社の社長が出席しますが、海外拠点については全員招集が
困難なため各事業部からの通達で方針の伝達を行っています。
行動目標は製品面と事業所面の二つのカテゴリーで複数掲げています。製品面の目標には「CGP30:
カシオグリーンプロダクツ 30」というのがあります。これは 2003 年度にはグリーン商品の売上比率
30%を目指す、というもので 2001 年に採択され現在実行期間中です。この数値目標は開発部門・販
売部門双方にとってかなりハードルが高いと感じられることと思います。しかしカシオの製品開発は
前記のようなコンセプトにあるために、元来省資源型・省電力型に向かっており、全社員が納得して
取り組んでいます。
CGP30 を支える仕組み
グリーン商品を開発していく上でこれを担保する仕組みを動かすことが必要です。第 1 の仕組みとし
て「グリーン商品開発ガイドライン」を制定しました。これは何をもって「グリーン商品」とするか
の社内定義づけをまず行い、実行の仕方を①環境設計度を向上させる②環境商品度を向上させるとい
った二つの切り口で取り組んでもらいます。
JMC environment Update
55
Vol.4 No.1 (2002. 5)
カシオのエコプロダクツについて∼カシオ CGP30∼
①環境設計度とは基本的な環境対策を取っているかを評価するもので、本体については材料表示や分
解性向上、包装材については材質表示、単一分別・分解、再生資源使用など全部で 11 項目あります。
各項目には配点されているのでその対応度合いで点数が決まります。②一方、環境商品度とは鉛フリ
ー化などの有害物質の不使用、画期的な省電力技術など先進的な環境対策を採用しているかを評価す
るもので、本体、包装、調達の 3 つの側面で合計 5 項目定め、その対応度合いを評価するものです。
この二つの評価システムの項目の中にはさらに選択可能な細目事項が設定されていて、事業部製品に
マッチした対応策を選択し、さらに事業部によって製品の特性があるためにこの仕組みをガイドライ
ンとして踏まえながらそれぞれ独自の評価項目及び細目を加えて配点のウエイト変更することも可、
としています。
環境設計度では 100 点満点中 90 点以上、環境商品度要求 5 大項目中 2 項目以上対応した場合に「グ
リーン商品」としての認定をします。これは半期ごとに開催される環境会議において委員長ほか経営
TOP 及び開発技術系全役員の前で各事業部から発表させるので自然と競争原理が働き、全社的には良
い方向に向かいます。コストを掛ければある程度の対応は可能ですが、モデルチェンジの早いコンシ
ューマ情報機器は消費者からの価格要求が強いため、開発コストの低減は至上命令であり安易な方法
は許されません。そこに機構部品の構造や電子デバイス、材質の知恵を働かせることになります。ま
た平時でも各事業部が一同に会して開発技術情報発表会や展示会を行っているので、新しい技術情報
が 1 事業部内にストックされることは無く、互いに活用可能な機会を設けています。
グリーン調達の推進
グリーン商品の開発に欠かせないのが部品レベルでの評価です。これはどこのセットメーカでも仕組
みづくりには最もパワーと神経を使うものです。カシオの場合は次のようなステップで導入を始めま
した。対象は国内の取引先様で、まず「お取引先へのご案内」→「評価シートへ記入評価」→「一定
の評価点数以上」→「グリーン取引先として評価」続いて「そのお取引先様のグリーン部品評価」→
「一定の評価点数以上」→「優先調達」という方法です。
この中でグリーン取引先とは ISO 14001 認証を取得していれば 100 点、1 年以内取得予定ならば 90
点。または具体的な自主的取組みをしている場合には各評価項目を用意し回答によって評価します。
これらの点数が 70 点以上であれば「グリーン取引先」とする。グリーン部品評価とは 1 項目 10 点の
環境対策項目を 10 項目用意し、まずは導入初期ということで、70 点以上満たしたものを「グリーン
部品」とします。
製造の海外移転が進んでいる現在、本来ならば海外が重点になるべきですが、カシオではまず国内向
けに 2000 年度に第 1 回調査に入り、
2001 年度には第 2 回調査とデータベース構築を行いました。
2002
年度には業界の動きを見つつデータベースのブラッシュアップと本格運用を予定しています。同時に
海外の取引先にも調査開始という段階になりました。このグリーン調達の現在の行動目標は当面
「2003 年度国内取引先のグリーン調達率 80%」としています。
カシオのグリーン商品の例
次にカシオの製品で過去から現在進行中のグリーン商品について紹介したいと思います。基本的スタ
ンスとしては日本のエコマーク、ドイツのブルーエンジェルマーク(BAM)など公的な認証を得る方
向で進めていますが、手続きに要する時間、コストも掛かるためにカシオ独自の政策との併用という
ことが出来ます。
JMC environment Update
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カシオのエコプロダクツについて∼カシオ CGP30∼
1. 電卓
過去の事例では 1996 年に関数電卓でソーラーバッテリー導入でドイツ
の BAM を取得したのがエコマーク取得では第一号といえます。その後手
帳タイプ電卓も取得しました。この時期はまだ社内的にはグリーン商品
化の仕組みが無く海外市場特に欧州地域ではすでに同業他社が環境配慮
型製品を販売商品ラインに加え、事業戦略の一つに組み込んでいること
がわかり対応したものです。その後日本国内市場向け製品には可能な限
りエコマークを取得する方針が出されて、1999 年から 2000 年にかけて
事務用電卓で一気に 14 モデルで取得しました。この間 BAM 取得モデル
も 3 モデル増加しました。主要な対策としてはソーラーバッテリーと再
生材やバカス材のパッケージングですが鉛フリー半田の使用も徐々に始
まりました。
2. 電子文具
電子文具の分野ではファイルの背表紙などに貼るテープを作成するラベルライター(当社製品名:ネ
ームランド)は 1999 年にインクリボンカセットの詰め替え構造でエコマークを取得し、その後再生
材料を使用したプラスチック製品という類型で全ネームランドテープで同マークを取得しました。電
卓同様これらのモデル数は少ないですが 1 モデルあたりの生産出荷数量は毎月数千台という大量であ
り、また消費者と直結した製品であるためにメーカーとしての環境責任も伴います。
3. 電子キーボード楽器
この分野ではエコマーク認定ではありませんが、外装筐体に 100%再生樹脂を採用したモデルが 1999
年から 2000 年の間に 8 機種になり、順次増加させていきます。再生樹脂はご存知のようにその色合
いが黒になる傾向があるために、ボディ色としてマッチする電子キーボードには早いうちから採用し
ました。
このほかパソコンやプリンタではエネルギースター基準への準拠、電子ウオッチではソーラーの採用
や着色での有害物質不使用など、取扱い製品の全体に亘ってグリーン商品化を進めています。以上述
べ ま し た こ れ ら の イ メ ー ジ は 「 カ シ オ 環 境 報 告 書 2001 」( http://www.casio.co.jp/env/pdf/
report_2001.pdf)に写真が掲載されていますのでご参照ください。
カシオ計算機は今後も「軽・薄・短・小・ローパワー(省電力)
」を合言葉にお客様に環境配慮を理解
される、そして価格面でも満足される商品づくりに邁進して参ります。
(了)
〔当組合、環境問題対策委員会副委員長〕
JMC environment Update
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Vol.4 No.1 (2002. 5)
新刊図書のご案内
環境・安全グループでは、今般次の 3 冊の書籍を刊行しました。
1. 地球温暖化問題による企業活動への影響に関する調査
1997 年に合意した「京都議定書」により、先進国を中心に地球温暖化の原因となっている温
室効果ガスの削減義務が定められた。その後議定書の具体的な運用ルールに関する国際交渉が行
われ、米国の離脱表明など難航が続いたものの 2001 年 11 月の COP7 においてようやく法文書
が採択された(マラケシュ合意)
。
当組合「貿易と環境専門委員会」(委員長:松藤 洋治 氏、キヤノン㈱ 環境技術センター主席)
では、議定書の運用ルールに関連して、欧州諸国および我が国において既に排出量取引の具体的
な制度の動きが出始めていることに鑑み、組合員企業における関連スキームへの参加の是非の検
討に資するため、内外諸国の制度の検討・運用状況などについて専門調査機関に調査を委託し、
この度標記書籍として刊行した。
体
裁 :
A4 判 70 頁程度
内
容 :
1.京都議定書の概要(京都メカニズム、発効目処)
、2.マラケシュ・アコ
ードの概要(京都メカニズム、CDM プロジェクトへの参加、JI プロジ
ェクトへの参加、排出量取引への参加、マラケシュ・アコードの定量的
な評価)
、3.諸外国における国内政策の検討状況(英国、デンマーク、オ
ランダ、EU、米国の代替案)
、我が国における国内政策の検討状況(政
府、企業の先行的な取組事例)
、4.参考資料、略語集、など
販売価格 :
3,000 円 (組合員割引価格 1,000 円)
(消費税込み、送料別)
2. 世界主要国における製品関連化学物質規制の解説
∼エレクトロニクス製品関連を中心に∼
最近内外主要国において化学物質の有害性に係る法規制が整備されつつあり、これまでの化学
物質そのものの管理・規制から、製品や部品の構成材料にまで及ぶ有害化学物質の含有・重金属
の使用に関する法規制が定められつつある。
本書は、当組合「環境法規専門委員会」(成 13 年度委員長:瀬尾 悠紀雄 氏、カシオ計算機 ㈱
総務部企画調査 GL)の平成 13 年度活動の一環として、海外の主要な製品関連の化学物質規制を
調査し、特にエレクトロニクス製品メーカー各社がその事業展開においてそれぞれの規制に対し
て適切な対応をとるための参考として、その内容を冊子に取り纏めたものである。
体
裁 :
A4 判 90 頁程度
内
容 :
1.有害化学物質規制(EU、ドイツ、デンマーク、オランダ、スイス、米
国、カナダ、中国、韓国、フィリピン、オーストラリア)
、2.その他の関
連規制(EU の ELV、電池、包装材、米国の電池)など
販売価格 :
JMC environment Update
5,000 円 (組合員割引価格 2,000 円)
(消費税込み、送料別)
58
Vol.4 No.1 (2002. 5)
新刊図書のご案内
3. 日欧相互承認ガイドブック
監修:経済産業省産業技術環境局認証課
欧州の CE マーキングについては、製品安全制度のグローバル・スタンダードとして世界各国
に影響を及ぼしている一方で、欧州共同体と各国の間の相互承認協定締結への足がかりともなっ
ており、我が国においても、2001 年 4 月に「日欧相互承認協定」
(MRA: Mutual Recognition
Agreement)が締結され、2002 年 1 月より発効している。
本書は、この協定に基づく相互承認の内容をわかり易く解説したガイドブック作成を目指し、
当組合「基準・認証問題専門委員会の下に「MRA WG」
(主査: 岡本和比古氏 三菱電機㈱情報技
術総合研究所 EMC 技術センター長)を設置し、原稿の検討及び作成を実施し、さらに経済産業
省の監修を得て、刊行することとなった。
内
容 : 相互承認に関する国際的動向、日欧相互承認の解説、日欧相互承認の日本
の法律の解説など
体
裁 : A4 判 185 頁程度
販売価格 : 4,000 円 (組合員割引価格 2,000 円)
(消費税込み、送料別)
既にお知らせしました以下の 5 冊のご注文も引き続き承ります。購入ご希望の向きは当組合ホーム
ページ(http://www.jmcti.org/publication/indexout.php3)にアクセスして下さい。
ニューアプローチ・グローバルアプローチに基づく指令の実施ガイド〔対訳版〕
中国・韓国・台湾の製品安全基準・認証制度調査報告書
中東欧主要国と米国の製品安全基準・認証制度調査報告書
−ハンガリー・ポーランド・チェコ・米国−
CE マーキングガイドプック 追補版
− R&TTE(無線機器および通信端末機器)指令の解説−
EU の製品安全管理レポート
JMC environment Update
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環境・安全グループ担当委員会の活動状況
1.貿易関連環境問題対策委員会
<平成 13 年度 第 5 回 通算第 68 回委員会(3/29:組合会議室)>
・
「内外の化学物質政策の動向」について
―― 経済産業省製造産業局化学物質管理課 課長補佐 飯田陽一氏より化学物質管理政策の
現状と国際的な動向について講演を伺った後、意見交換ならびに質疑応答を実施した。
・
「EU 電池指令の動向と業界の対応」について
―― 社団法人電池工業会 国際担当部長 藤本謹也氏より欧州電池指令案の現状と欧州産業
界の対応について講演を伺った後、意見交換ならびに質疑応答を実施した。
・
「JBMA 静脈物流プロジェクト委員会活動概要」について
―― 社団法人 日本事務機械工業会総務企画部 企画グループ担当部長 河口洋徳氏より
JMBA 静脈物流プロジェクト委員会活動について講演を伺った後、意見交換ならびに質
疑応答を実施した。
2.貿易と環境専門委員会
<平成 13 年度 第 11 回委員会(3/25:組合会議室)>
・最近の米国における環境政策と業界の対応状況について
―― 松下電器産業 ㈱ 環境本部 環境審査グループ参事 蛇抜信雄氏より米国における環境
規制動向と対応について講演を伺った後、意見交換ならびに質疑応答を実施した。
<平成 14 年度 第 1 回委員会(4/23:組合会議室)>
・地球温暖化問題による企業活動への影響に関する調査について
―― ㈱ 野村総合研究所 国土・環境コンサルティング部 地球環境グループマネージャー上席
研究員 水野 勇史 氏より「地球温暖化問題による企業活動への影響に関する調査」に
ついて講演を伺った後、意見交換ならびに質疑応答を実施した。
3.環境法規専門委員会
<平成 13 年度 第 10 回委員会(3/28:組合会議室)>
・EU の WEEE & RoHS 指令制定化、米国のリサイクル州法の動きなどについて情報交換した。
・活動報告書作成について
―― 「世界主要国における製品関連化学物質規制報告書」の進捗について説明した。
<平成 14 年度 第 1 回委員会(4/18:組合会議室)>
・WEEE & RoHS 指令制定の動きについて情報交換を実施した。
4.環境問題関西委員会
<平成 13 年度 第 10 回委員会(3/20:輸出繊維会館第二会議室)>
・
「カシオ計算機の環境への取組み」について
―― カシオ計算機(株)総務部 企画調査グループ グループリーダー 瀬尾悠紀雄氏(当組
合の貿易関連環境問題対策委員会 副委員長、環境法規専門委員会 委員長)より、環
境問題への対応の経緯、情報収集の体制、グリーン調達のしくみ、エコマークへの対策
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環境・安全グループ担当委員会の活動状況
等について講話を伺い、質疑応答を行った。
・欧米の動向について
―― 欧州の化学物質規制の動き、米国での水銀規制、州レベルでのリサイクル法制化の動き
等について情報交換した。
・委員長の選任について
―― 委員長より去る 3 月 7 日の幹事会の結果をふまえ諮った結果、新たに渋谷健三氏(ダイ
キン工業 ㈱ 地球環境室 室長)が選任された。
5.基準・認証問題専門委員会
<(3/26:大阪支部会議室)>
8. 「ニューアプローチ・グローバルアプローチに基づく指令の実施ガイド(対訳版)
」作成等
の平成 13 年度事業の完了について報告を行うと共に、意見交換を行った。
6.CE マーキング対策委員会
<(4/25:NTT 関連諏訪施設「鵞湖荘」
)>
―― 平成 14 年度製品安全関連事業について全会一致で承認を得ると共に、㈱ エーペック
ス・インターナショナル第一業務部長 奥野克幸氏を招き、
「中国の新認証制度」につい
て講演があった。
7.CE マーキング関連施設見学会
<(4/26:セイコーエプソン(株)塩尻事業所>
―― 時計等製造工程見学を行うと共に、意見交換を行った。
8.CE マーキング関連セミナー
<(5/13:虎ノ門パストラル(東京)
、5/14:大林ビル(大阪)>
―― 「CE マーキングガイドブック追補版/ R & TTE 指令の解説」の完成に伴って、基準認証
問題専門委員会アドバイザー、仲野孚氏より、R & TTE(無線機器及び通信端末機器)指
令の最近の動向について講演があると共に、(財)日本品質保証機構 都留電磁環境試験所
主査 三枝 英一氏より、EU 官報に掲載された整合規格の適用における EMC 試験項目の
解説について講演があった。
□
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事務局便り
◇ environment Updateも 4 年目を迎え表紙も新しくなりました。創刊当時から毎度取り上げ
てきた WEEE & RoHS 指令制定の動きもいよいよ大詰めを迎え、理事会(第二読会)が議会の
修正提案を受入れるか否かという段階にきました。仮に受入れなくて両者の調停プロセスを
経たとしても今年の年末から来年にかけて成立しそうです。
◇ 両指令の審議制定過程において、在欧日系企業の立場から積極的にかつ効果的に関係先への
働きかけや欧米系関係団体との協調などを行ってきた「JBCE」の活動については当誌でも適
宜お伝えしていますが、去る 5/20 の朝日新聞の経済欄にカラー写真付きで「日系ロビイス
ト奔走中」と題し紹介されていましたので、お気づきになった方も多かったと思います。因
みに、JBCE の事務局は当組合ブラッセル事務所内にあり、スタッフは組合駐在員が兼務し
ています。そしていつものように JBCE の杉山環境委員会委員長の「ブラッセル短信」では
これまで知り得なかった欧州議会の採決の模様や、ロビーイングに実務が手に取るようにわ
かります。
◇ 新年度から新たな企画としてアジアにも目を向けることとなりました。昨年 9 月まで当グル
ープにいた k 職員が当組合香港事務所駐在員として活躍中ですが、アジア諸国における今後
の環境政策の展開とその実施の重要性に鑑み、中国を中心にこれらの動きを専門機関に委託
してモニタリングすることとなりました。今回は一部新聞にも報じられた「廃棄家電リサイ
クル法案」制定の動きに関しその背景となる環境政策を「第 10 次 5 ヶ年計画」に基づきリ
サイクルの立法化について体系的に説明されています。
◇ また米国の専門調査機関に委託して中国、マレーシア、タイにおけるリサイクルの動向を整
理してもらいました。アジアの情報は中国を含めなかなか東京からは把握しづらいのですが
試みた次第です。読者の感想、意見、希望等を事務局にお寄せ下さい。これからの調査活動
の参考にさせていただきます。
◇ 前回休みとなりました組合員企業のページは、現在「貿易関連環境問題対策委員会」副委員
長で、平成 13 年度末まで「環境法規専門委員会」委員長も兼務されていたカシオ計算機(株)
の瀬尾悠紀雄様に「カシオのエコプロダクツ」についてご紹介いただきました。これからも
組合員企業の積極的な投稿をお待ちしています。
◇ K職員の赴任後、派遣会社から当グループに配属となった H 氏は 5 月 17 日をもって勤務終
了となりました。大変お世話になりました。その席は 6 月上旬までしばらく空席が続くよう
で、5 月末の今、当誌の編集のみならず、その他の報告書作成、委員会運営など業務が重な
り、風邪まで引いたりして全くのてんてこ舞いです。
◇ ところで、連休の前半は八甲田山に山スキーにいってきました。予想通り東北の山々も残雪
量は極端に少なく、全体にいつもの白い山が緑の山といった景色でスキーより登山という趣
です。第 1 日には高田大岳から谷地温泉への超急斜面の滑降を堪能しましたが、終盤は斑模
様の雪で軽いやぶこぎも強いられる始末。それでもスキーヤーは少しでも雪を探して踏みな
がら歩いて進みますが、同行のボーダーは歩く訳にはいかず板を完璧に外して背負うという
ハイキング状態。例年なら 6 月までまだまだ雪を求めて山に入るのですが今シーズンはこれ
でおしまいとなりました。(TI)
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