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寄生虫の分類
第8回感染症リスクマネージメント
作戦講座
原虫症
平成25年12月26日
獨協医科大学越谷病院
臨床検査部・感染制御部
春木 宏介
感染模式図
ヒト
蠕虫 Helminth
 線虫 Nematoda 蟯虫 糞線虫
 条虫 Cestoda 有鈎条虫
 吸虫 Trematoda 横川吸虫 異形吸虫
原虫 Protozoa
 アメーバ赤痢 ジアルジア
外部寄生虫
 シラミ
 ダニ
 疥癬
一般
病原体
原虫学総論
増殖
あるいは
成長
増殖
?
ない
昆虫
食べ物
 原虫(protozoa):
 運動性のある従属栄養の動物性単細胞真核生物
 摂食、運動、代謝、生殖を単細胞で行う
 後生動物(metazoa):多数の細胞からなる
動物
その他
原虫の分類(人体寄生の主なもの)
原虫の基本構造
 根足虫類
 鞭毛虫類
 細胞膜(cell membrane)
 核(nucleus)
 外肉(ectoplasm)
 内肉(endoplasm):ミトコンドリア、ゴルジ体等
 胞子虫類
 有毛虫類
1
寄生虫の検査:腸管寄生
 腸管内
直接塗沫
高層塗沫
Kato-Katz 住血吸虫 EPG
集卵法
浮遊法 : 比重が軽い虫卵 鉤虫 東洋毛様線虫 原虫
嚢子
遠心沈殿法 比重が重い虫卵 回虫
その他
 スコッチテープ法 蟯虫
 濾紙培養法 鉤虫 糞線虫
 寒天平板法 糞線虫
 内視鏡: アニサキス
腸管外寄生
血清反応:オクタロニー法
抗原検出
抗体検出
PCR関連
病理検査
アメーバ赤痢
検査機関ではスクリーニング後陽性の場合研
究機関へ
研究機関は検査センターではない
2
症例
 28歳女性
 新宿K町にて風俗業に従事
 右季肋部痛
 発熱を主訴に来院
アメーバ性肝膿瘍
3
日本でのアメーバ赤痢は
海外からの輸入は
国内発症は性病
経口感染
問診が必要
赤痢アメーバ
 TECHLAB T5017-E.HISTOLYTICA II(便中の赤痢アメーバに
特異的な抗原を検出、 Entamoeba disperとの鑑別に有効)
 ゲル内沈降反応法(血清中の抗アメーバ抗体検出法)
 間接蛍光抗体法
 赤血球凝集反応法
 マイクロELISA法
 PCR法
自由生活アメーバ
 ネグレリア(Naegleria fowleri)
 沼などに自由生活
 脳髄膜炎の原因
 偶発的に感染
 人から人への感染なし
 アカントアメーバ(Acanthoamoeba culbertsoni、A. polyphaga,
A. castellanii)
 脳脊髄膜炎
 角膜炎の原因(コンタクトレンズ)
4
診断、治療法
 染色
 培養
 アカントアメーバは抗真菌薬とブロレン
トリパノソーマ(アフリカ)
Trypanosoma brucei.
gambiense,T.b. rhodesiense
 ツエツエバエによって媒介される
 嗜眠病の原因
 ツエツエバエをいかにコントロールするか
 黒いものに向かう習性
5
診断と治療法、予防
 髄液中にギムザ染色で虫を見つける
 スラミン、ペンタミジン、MelB(ヒ素)
 予防:ツエツエバエのコントロール
トリパノソーマ(アメリカ)
Trypanosoma cruzi
 シャーガス病の原因
 サシガメによって媒介される
 壁の割れ目や絵の裏に潜み吸血
 糞便から感染する
 急性期:ロマノ徴候、発熱、リンパ節腫大
 慢性期:心筋炎、巨大結腸など
6
診断と治療法
 Xenodiagnosis
 病理検査
 イムノクロマトキット
 ニフルチモックス
 ベンズニダゾール
Trypanosoma cruzi (Chagas
disease)
 商品名 Trypanosoma cruzi (Chagas disease) TcF,
Recombinant Maker Biodesign International
 Packing 1mg メーカーコード R9A150 定価 ¥117,000
 商品詳細 Rev.Date 2005-06-07
 抗原 Trypanosoma cruzi (Chagas) 蛋白名称 TcF 商品カテ
ゴリー Antigen/Protein
7
リーシュマニア
Leishmania spp
 内臓リーシュマニア アジア、アフリカに多い
 皮膚リーシュマニア アジア、アフリカ、中近東、ヨーロッパに多い
内蔵型リーシュマニア症
visceral leishmaniasis
Leishmania donovani Kala-azar
 スナバエ(サシチョウバエ)で媒介
 Phlebotomus spp (旧世界)
 Lutzomia spp (新世界)
 皮膚粘膜リーシュマニア 南米に多い
8
症状、診断、治療
 発熱 リンパ節腫脹、体重減少
 骨髄に浸潤して無効な抗体産生などをつうじて免疫機能を破壊
 骨髄標本などから診断
 アンチモン製剤
PKDL
(post Kala-azar dermal leishmaniasis)
Visceral Leishmania

 商品名 Visceral Leishmania IgG Celisa
Maker Cellabs
Pty Ltd 重松コード CL-030021 Packing 96 Test
 メーカーコード KL2 定価 ¥84,000
 商品詳細
Rev.Date 2003-05-23
 商品仕様 FORMAT ELISA

 HOST/SOURCE
 CLONE
 SUBCLASS Ab detection

 重松貿易(現在、感染症診断は子会社のバイロクエスト)
皮膚リーシュマニア
9
皮膚粘膜型リーシュマニア
10
アムフォテリシンB(アンビゾーム)
アンビゾームの内蔵型リーシュマニア
に対する効果
 Lopez-Dupla, et al. J Antimicrob Chemother 1993; 32:657-659
 http://www.ambisome.com/index2.php?section=about&page=monogr
aph
ランブル鞭毛虫
Giardia intestinalis
 旅行者下痢の15%程度を占める
11
診断、治療
 糞便内の栄養型検出
トリコモナス
Trichomonas spp
 メトロニダゾール
 腸トリコモナス
 膣トリコモナス
 口腔トリコモナス
診断、治療
イソスポーラ
Isospora belli
 原虫の証明
 慢性的な下痢
 他の感染症との合併注意
 パートナーの治療
12
診断、治療
クリプトスポリジウム
Cryptosporidium hominis
 浮遊法でオーシスト検出
 HIV患者では重症化して死亡することあり。
 ST合剤?
13
診断、治療
 浮遊法でオーシスト検出
 AIDS患者ではニタゾキサニド、パロモマイシン、アジスロマイシン
サイクロスポーラ
Cyclospora cayetenensis
 慢性的な下痢
診断、治療
 浮遊法にてオーシスト検出
 ST合剤
14
トキソプラズマ
Toxoplasma gondii
 急性感染症
 先天性トキソプラズマ症
網脈絡膜炎
水頭症
脳内石灰化
精神運動障害
 後天性トキソプラズマ症
トキソプラズマ脳炎(AIDS)
15
診断、治療
 虫体検出
 色素テスト
 ELISA等
 ST合剤、アセチルスピラマイシン、マクロライド等
Mal=悪い Aria=空気
ヒトマラリア
 よどんだ空気で起こる病気と考えられていた。
 イタリアの三日熱マラリアは沼地の近くで発生。
 よい空気は BuenosAires
 住血胞子虫類プラスモジウム科プラスモジウム属のうち4種に
よって引き起こされる感染症。感染症新法では新四類感染症に
分類。
 世界ではWHOの推計で3億人が感染し年間300万人が死亡して
いる。特に熱帯サハラ以南のアフリカで猛威を振るっている。
16
発熱発作を示す絵
ロンドン 1792年
子供の脾臓を触診する医者
マラリア患者と思われる人を診察するヒポクラテス
ロナルド ロス英国陸軍軍医少佐
はインドでマラリアが蚊によって伝播
することを発見(1897年8月20日)。
後に鳥マラリアで証明。
一方イタリアのグラッシはより科学的
方法でマラリアが人に蚊によって伝播
することを証明。
1902年ノーベル賞はロスに
与えられた。
フランス陸軍軍医ラベランが1880年にアルジェリアで死亡した兵士
から見つけ出したマラリア原虫のスケッチ。
中央ロナルド ロス、 左端スティーブンス
マラリアの分布
マラリアの分布は媒介蚊であるアノフェレス属の分布に一致。
マラリアリスクのある国あるいは地域であっても条件により伝播
のリスクは異なる。
マラリアの症状と徴候
1
2
3
4
5
6
発熱
貧血
黄疸
感冒様症状
下痢
意識障害など
第一次大戦での北アフリカ
におけるマラリア感染兵士
王立空軍熱帯病病理研究所
17
マラリアのサイクル
マラリアの種類
 Plasmodium falciparum
熱帯熱 悪性三日熱、
 Plasmodium vivax
三日熱 48時間周期に発熱
 Plasmodium malariae
四日熱 72時間周期に発熱
 Plasmodium ovale
卵形 48時間周期に発熱
マラリアの流行度
流行度
Hypoendemic
脾腫率
10%>
寄生率
10%>
Mesoendemic
11<<50
11<<50
意味
流行少ない
一般的
地誌的影響大
Hyperendemic 50<
50<
季節性変動
成人で25<
免疫は不完全
Holoendemic
75<
75<
常に流行し
成人で低い 0-11ヶ月 免疫は小児を
除き高い
2-9歳の小児における割合
熱帯熱マラリア
分布: 広く熱帯地方に分布 特にアフリカ
感染:幼弱赤血球から古い赤血球すべてに感
染
潜伏期:9-14日
薬剤耐性:クロロキン耐性が蔓延している
再燃(Recrudescence)あり
予後:非免疫患者の場合感染後数日で死亡す
ることもあり、注意が必要
コントロール方法は他のマラリアとほぼ同じ
マラリア流行の因子
一人のマラリア患者が一定期間のうちに媒介蚊に
よってどれぐらい吸血され、その蚊の中でどれぐら
い早く効率よくマラリアが発育し、その蚊が再度人
を刺す確率などを基に算出する。
ヒトの因子:寄生率
環境:高度、気温、湿度、雨量、植生など
蚊:嗜好性(ヒトのみか動物も刺すのか)習性
Endophilic Exophilic Endophagic
Endophilic
産卵場所など。
社会的因子:人口密度、人口移動、インフラ整備
農業など人工の生活因子、戦争など。教育レベル
や個人的防御なども含まれる。
熱帯熱マラリアの病態は
感染赤血球にKnobと呼ばれ
る突起物が生じそれが血管
内皮細胞に付着することに
よっておこる。(Sequestration)
このKnobは感染赤血球内の
マラリア原虫が成熟する
につれ出現する。
よって感染赤血球のうち未熟
なマラリアすなわち輪状体のみ
が末梢血に出現する。
成熟したマラリア感染赤血球
が末梢に出現するのは重症
か脾摘出患者。
18
マラリア感染
赤血球の変形と付着
溶血
Sequestration 肝脾腫
貧血
循環障害
低酸素、代謝異常
細胞障害
過剰な免疫応答
様々な症状
熱帯熱
マラリアの合併症
1
2
3
4
5
6
7
貧血
低血糖
肺水腫
腎不全
DIC様症状
ショック
脳症
RIP
熱帯熱マラリア
熱帯熱マラリア
Plasmodium falciparum ring form輪状体
Plasmodium falciparum Trophozoite 栄養体
比較的小型の原虫で一つの赤血球に複数感染が
見られたり、ヘッドフォーンのようにクロマチン顆粒が
2つあるものもある赤血球は腫大しない。
モーラー(Maurer)斑点が見られることがある。
熱帯熱マラリア
熱帯熱マラリア
Plasmodium falciparum Schizont 分裂体
一般的に毛細血管に付着するため末梢血には
現れないが重症の場合や脾臓摘出後の患者では
出現する。メロゾイトの数は8-24個。
Plasmodium falciparum Gametocyte 生殖母
体
バナナの形をしている。オスはピンクで
メスは青である。感染回復期に見られることが多い。
蚊によって吸血され新たな感染源となる。免疫を
もったヒトでは無症状でも観察されることがある。
19
三日熱マラリア
Plasmodium vivax
 分布: 広く熱帯地方に分布 温帯にも存在
 感染:幼弱赤血球、網状赤血球に感染
 潜伏期:12-17日一部ロシア、中国では2年
 薬剤耐性:クロロキン耐性が一部に見られる
 再発(Relapse)あり Hypnozoiteの存在
 予後:良好
 合併症:脾臓破裂 タイービルマ戦争
世界における三日熱マラリア
Mendisら2001を改変
地域
三日熱:熱帯熱その他
南・東アジア・太平洋
1:1
東地中海
1:3
中米・カリブ
5:1
南米
2:1
中央アジア・コーカサス
三日熱のみ
アフリカ
ほとんどが三日熱以外
アフリカを除く全世界の合計
6:5
輸入マラリア
2:1
Plasmodium vivax 、ring form 輪状
体
感染赤血球は腫大。リングは熱帯熱に比べやや大きい。
シュフナー(Schueffner)斑点が見られる(やや成熟すると)。
Plasmodium vivax
(Amoeboid) Trophozoite栄養体
アメーバ状となりシュフナー斑点
がはっきりする。
Plasmodium vivax
Schizont 分裂体
メロゾイト数は12-24個
20
Plasmodium vivax
Gametocyte生殖母体
四日熱マラリア
Plasmodium malariae
分布: 主にアフリカに分布
感染:成熟赤血球に感染
潜伏期:18-40日
薬剤耐性:耐性なし
再燃( Recrudescence )あり Hypnozoiteな
し
予後:良好
合併症:小児の糸球体腎炎(予後不良)
Plasmodium malariae
Trophozoite 栄養体
バンドフォームが見られたら容易に診断がつく。
三日熱マラリアの発熱パターン
四日熱マラリア
Plasmodium malariae ring form 輪状体
成熟赤血球に感染。感染赤血球の腫大はない。
Plasmodium malariae
Schizont 分裂体
メロゾイトはやや少なく6-12個。
21
Plasmodium malariae
Gametocyte 生殖母体
卵形マラリア
Plasmodium ovale
分布: 主にアフリカに分布、ミャンマーなど
感染:幼弱赤血球に感染
潜伏期:16-18日
薬剤耐性:耐性なし
再発( Relapse)あり Hypnozoiteあり
予後:良好
合併症:脾臓破裂は三日熱に比べ少ない
三日熱に準ずるが4種のなかでもっとも弱い
卵形マラリア
Plasmodium ovale ring form 輪状体
Plasmodium ovaleTrophozoite 栄養
体 卵型の栄養体は三日熱に似ている。
ここには生殖母体も見られている。
感染赤血球の腫大はあるものもあるが
三日熱ほど顕著ではない。すべてではないが
卵形をするものが多い。シュフナー斑点(James斑点ともいう)が
見られるが三日熱より弱い。
卵形マラリア
Plasmodium ovaleSchizont 分裂体
Plasmodium ovale
Gametocyte 生殖母体
卵形のメロゾイトは8-12個で三日熱より少ない
事が多い。
22
形態のまとめ1
どこに注意するか
小型の輪状体のみが多数見られ感染
赤血球の拡大なく複数感染、ウォーク
マン型があれば熱帯熱。バナナ状の
生殖母体で決まり。
多くのステージが見られ、(三、四、卵)
感染赤血球が腫大あり、(三)なし(四、
卵)、バンドフォームで四。卵の形、辺
縁がシャギーで卵形。シェフナーは三、
卵。
混合感染注意
マラリアの診断 方法
1
2
3
4
5
臨床診断:いわゆるClinical Malaria
染色法:ギムザ、フィールド染色など
抗体検出法:IFAT,ELISAなど
抗原検出法:ディップスティック
PCR
形態のまとめ
2
ステージ
輪状体のみ
あるいはバナナ
補助:原虫サイズや数
熱帯熱
様々
バンドフォーム
感染赤血球サイズ大
シュフナーあり
四日熱
三日熱あるいは卵形
アメーバ様
卵の形
分裂体内
分裂体内メロゾイト
メロゾイト12-24 8-12
混合感染に注意
卵形(感染赤血球の
腫大は三日熱ほどではない)
直接診断
ギムザ染色 バッファーのpHに注意(7.2-7.
4)
フィールド染色 迅速 A液3秒 水洗5秒 B
液1秒
アクリジンオレンジ蛍光染色 スクリーニング
ギムザ染色
血液を一滴たらしスライドグラス
の角でまぜる。(固定しない)
血液を一滴たらし
スライドグラスで
引く。
乾燥させ、メタノール
にて固定。
pH7.2-7.4の燐酸バッファー
で希釈したギムザ液
(2-10%)で染色。
洗浄後観察。
補助診断
ディップスティック法
ICTMalaria p.f/P.v
血中のHRP2を検出。簡便。陰性化
に時間。
OptiMAL
血中のpLDHを検出。やや複雑。病
状に一致。
23
ICT Malaria P.f/P.v (オーストラリアAMRAD ICT社)
補助診断
ICT Malaria P.f/P.v (オーストラリアAMRAD ICT社)
ディップスティック法
ICTMalaria p.f/P.v
血中のHRP2を検出。簡便。陰性化に時
間
OptiMAL
血中のpLDHを検出。やや複雑。病状に
一致
多くは熱帯熱とその他のマラリアの鑑
別:重症化するかが問題
24
コントロールを含めた
三本の線が出れば
熱帯熱、
二本ならばその
ほかのマラリアと判断。
コントロール
OptiMAL pLDHを検出
感染状態も把握可能。
各種マラリア迅速診断キットの外観(川合原図)
1) OptiMAL-IT
4) SD Malaria Ag Pf/Pan
2) Entebe MC
5) Pan-R MC
3) SD Malaria Ag
6) BinaxNow
各種診断キットの検出抗原と判定方法(川合原図)
診断キット
検出抗原
判 定
1) OptiMAL-IT
Pf pLDH / pan pLDH
Pf / non-Pf
2) Entebe MC
Pf HRP-II / Pv pLDH
Pf / Pv
3) SD, Ag
Pf pLDH / pan pLDH
Pf / non-Pf
4) SD, Ag Pf/Pan
Pf HRP-II / pan pLDH
Pf / non-Pf
5) Pan-R MC
Pf specific antigen
/ pan malaria antigen
Pf / non-Pf
6) BinaxNow
Pf HRP-II / pan pAldolase
Pf / non-Pf
Pf:熱帯熱マラリア
原虫
Pv:三日熱マラリア
原虫
Malaria RDT(Rapid Diagnostic
Test)
の使用について
 pLDH(Plasmodium Lactate Dehydrogenase)
 生存する原虫量に比例
 少数寄生では感度低下
 治癒判定に使用可能
 HRP2(Histidin Rich Protein)
 生存する原虫量と無関係
 少数寄生でも感度は保たれる
 治癒判定に使用不可
25
マラリアRapid diagnostic test結果
2009
マラリアRTDによる全国規模の調査
 Entebe MC
施設
陽性
陰性
都立A病院
3
2
B市立総合医療センター
5
0
D市民病院
1
0
E大学病院
0
1
合計
9
3
 SD, Ag
 SD, Ag Pf/Pan
 BinaxNow Malaria
Malaria RDTの今後の課題
pLDH とHRP2タイプの使い分け
HRP2で診断しpLDHでフォロー
P. knowlesi への対応可能なキット選択
研究用試薬から保険適応へ
どのキットが適正かを判断する
キットはあくまで補助として用いる
ギムザ染色は必須
場合によってはPCR
形態のまとめ
ステージ
輪状体のみ
あるいはバナナ
補助:原虫サイズや数
熱帯熱
様々
バンドフォーム
感染赤血球サイズ大
シュフナーあり
四日熱
三日熱あるいは卵形
アメーバ様
卵の形
分裂体内
分裂体内メロゾイト
メロゾイト12-24 8-12
混合感染に注意
卵形(感染赤血球の
腫大は三日熱ほどではない)
テスト
26
第5の人マラリア
Plasmodium knowlesi
サルマラリア
1932年に発見
Knowles R, Das Gupta BM: A
Study of Monkey Malaria and its
experimental transmission to man.
Indian Medical Gazette 1932,67,
301-320.
サルマラリアの人への実験的感
染
Plasmodium knowlesi の特性(川合原図改変)
自然宿主:
カニクイザル(Macaca fascicularis )
P. knowlesi のヒト自然感染症例報告 川合まとめ
1965
Peninsular Malaysia
blood passage ( 1 )
1971
Peninsular Malaysia
serology ( 1 )
2004
Malaysian Borneo
nested-PCR assay (120 )
2004
Thailand
sequencing of SSU rRNA ( 1 )
分布範囲:東南アジア、森林地域
2006
Northern Myanmar
nested-PCR assay (120 )
発育環:赤血球内発育は24~28時間
2008
Malaysian Borneo
nested-PCR assay ( 266 )
2008
Malaysian Borneo
nested-PCR assay ( 41 )
2008
Peninsular Malaysia
nested-PCR assay ( 5 )
2008
Palawan, the Phlippines
nested-PCR assay ( 5 )
ブタオザル (M. nemestrina )
肝臓内休眠体を作らない
媒介蚊: Anopheles leucophyrus
カニクイザル
写真:京大霊長類研、霊長類図鑑
人獣共通感染症:近年東南アジアの広い地域でヒト感染例が報告
2008
Singapore
nested-PCR assay ( 1 )
2008
Finland
nested-PCR assay ( 1 )
2009
Sweden
nested-PCR assay ( 1 )
2009
USA
nested-PCR assay ( 1 )
27
P. knowlesi のヒト感染症例の概要(川合原図改変)
症
・
・
・
・
状:
24時間周期のスパイク状発熱(39~40℃)⇒ “2日熱マラリア”
血小板の減少、軽度の貧血
寄生率は通常 1~2% 、 しかし10%以上に達した例もある
死亡例の報告(4例:マレーシア・ボルネオ島、2004年)
診 断:
・ 血液塗抹検査により「四日熱マラリア」または「熱帯熱マラリア」
と誤診されることが多い
・ nested PCRによる確定診断
P. MalariaeとP. knowlesiの形態比較
P. Malariae
感染赤血球
P. knowlesi
大きさ
拡大せず
拡大せず
形
球形
球形
斑点
特殊染色であり
成熟原虫:不規則にあり
リングフォーム
クロマチンは単
*コンパクト、ダブルクロマ
チンあり、複数感染あり
後期ー成熟栄養体
バンドフォーム
バンドフォーム、非アメー
バ型
分裂体
メロゾイト6-12
メロゾイト16まで
生殖母体
球形、成熟栄養体に類似
球形、成熟栄養体に類似
寄生虫
治 療:クロロキン等で対応可能
Lee KS,et al 8,73 Malaria Journalより改変
(川合原図)
Asexual blood stage of P. knowlesi
young
trophozoite
0hr
各種診断キットによる
人獣共通感染性サル・マラリアの判定結果(川合原図)
P. knowlesi
P. cynomolgi
P. inui
1) OptiMAL-IT
Pf
non-Pf
non-Pf
2) Entebe MC
Pv
Pv
Pv
3) SD, Ag
non-Pf
non-Pf
non-Pf
4) SD, Ag Pf/Pan
non-Pf
non-Pf
non-Pf
5) Pan-R MC
non-Pf
non-Pf
weak Pf
6) BinaxNow
non-Pf
non-Pf
non-Pf
Pf:熱帯熱マラリア
原虫
Pv:三日熱マラリア
原虫
mature
trophozoite
6hr
schizont
24hr
12hr
各種診断キットの検出抗原と判定方法(川合原図)
診断キット
診断キット
growing
trophozoite
(川合原図)
検出抗原
判 定
1) OptiMAL-IT
Pf pLDH / pan pLDH
Pf / non-Pf
2) Entebe MC
Pf HRP-II / Pv pLDH
Pf / Pv
3) SD, Ag
Pf pLDH / pan pLDH
Pf / non-Pf
4) SD, Ag Pf/Pan
Pf HRP-II / pan pLDH
Pf / non-Pf
5) Pan-R MC
Pf specific antigen
/ pan malaria antigen
Pf / non-Pf
6) BinaxNow
Pf HRP-II / pan pAldolase
Pf / non-Pf
Pf:熱帯熱マラリア
原虫
Pv:三日熱マラリア
原虫
28
マラリア迅速診断キットによる判定(川合原図改変)
pan-R MC
P. Knowlesi およびヒトマラリア原虫4種のLDHに関するアミ
ノ酸シークエンスの比較
(川合原図)
Neg.
Pf
malaria
Non Pf or Pv
malaria
Pf
Pv
P. knowlesi
P. cynomolgi
Pf
P. inui
Pk: P. knowlesi, Pf: P.falciparum, Pv: P. vivax, Po: P. ovale, Pm: P. malariae
プロカルシトニンの特徴
マラリアの鑑別診断
1
2
3
4
5
6
7
8
熱性疾患:チフス、デング、出血熱など
肝炎
レプトスピラ
感染性腸炎
脳炎
敗血症
白血病などの悪性腫瘍
膠原病
白血球などの血球成分からは産生されない
よって白血球減少症やステロイド、抗がん剤の
影響なし
炎症性サイトカインの上昇にやや遅れるが感
染症発症後約3時間で上昇しCRPより早期に
立ち上がる
半減期は約22時間
細菌感染症治療判定の指標
抗菌薬投与の指標
抗菌薬適正使用への寄与
耐性菌の抑制?
29
プロカルシトニン偽陽性
 新生児
 ARDS
 熱帯熱マラリア
 全身真菌感染症
 重症外傷
 外科的侵襲
 重度熱傷
 熱中症
 化学性肺炎
 成人型スティル病
 ホルモン産生腫瘍
 サイトカインストーム状態
プロカルシトニン偽陰性
感染の急性期
軽症感染
局所感染
亜急性心内膜炎
JID 2001;183 (1 April)
マラリアとプロカルシトニン
 The serum levels of procalcitonin (PCT) in Plasmodium
falciparum malaria were evaluated for clinical significance in 66
nonimmune and semi-immune patients. Of the 66 patients, 36
had uncomplicated malaria, 24 had severe and complicated
malaria, and 6 had fatal malaria (5 from previous studies).
Pretreatment PCT concentrations were closely correlated with
parasitemia.
 Concentrations were lowest in semi-immune patients with
uncomplicated malaria, compared with those in nonimmune
patients (geometric mean concentrations [GMCs], 1.07 and 2.37
ng/mL, respectively), and were highest in severe and
complicated cases (GMC, 10.67 ng/mL; P ! .001 among all
subgroups). Six of 7 patients with PCT concentrations 125
ng/mL died. PCT concentrations decreased on day 2 of
treatment in survivors but not in patients with fatal outcome.
Thus, repeated PCT measurements may provide useful
prognostic information, especially in medical centers that are
not experienced in parasite density determination.
 CONCISE COMMUNICATION
 Procalcitonin as a Parameter of Disease Severity and
Risk of Mortalityin Patients with Plasmodium falciparum
Malaria
 Collins Batsirai Chiwakata, Christoph Manegold,
 Lars Bo¨ nicke, Inge Waase, Claudia Ju¨ lch,
 and Manfred Dietrich
 Department of Medicine, Bernhard Nocht Institute for Tropical
 Medicine, Hamburg, Germany
 Figure 1. Pretreatment
procalcitonin (PCT)
serum concentrations
 in falciparum malaria
patients. A,
uncomplicated malaria in
semi-immune
 patients (n p 20); B,
uncomplicated malaria in
nonimmune patients
 (n p 16); C, severe
malaria (n p 30).
Horizontal bars and nos.,
 geometric mean
concentrations; m, 6
patients who died.
Differences
 between all subgroups
are significant (P ! .001).
30
 Procalcitonin as a biomarker for severe Plasmodium falciparum
disease: a critical appraisal of a semi-quantitative point-of-care
test in a cohort of travellers with imported malaria
 Dennis A Hesselink1, Jan-Steven Burgerhart2, Hanna
 Bosmans-Timmerarends2, Pieter Petit3 and Perry JJ van Genderen*2
1Department of Internal Medicine, Erasmus MC, Rotterdam, the
Netherlands, 2Department of Internal Medicine, Harbour Hospital and
 Institute for Tropical Diseases, Haringvliet 2, 3011 TD Rotterdam, the
Netherlands and 3Department of Microbiology, Vlietland Hospital,
 Schiedam, the Netherlands
 Email: Dennis A Hesselink - d.a.hesselink
 Malaria Journal 2009, 8:206
 Procalcitonin (PCT)
levels on admission in
relationto parasite load
in 71 patients with
falciparummalaria. Bars
represent the median
value of each group.
 Arrow heads indicate the
patients with severe
falciparummalaria.
Statistical analysis showed
an overall statistically
significantdifference
between the various PCT
groups on admission (p =
0.0012). Post-hoc groupto-group analysisshowed
significant differences in
parasite load (identified
bythe asterix sign *)
between various PCT
groups (Normal vs
moderate, p = 0.0044;
normal vs high, p =
0.0013; and low vshigh, p
= 0.0403, respectively).
 Table 2: Procalcitonin (PCT) levels on admission in relation to
causative Plasmodium species.
 PCT
Non-P. falciparum malaria
falciparum malaria
 Normal
4
27
 Low
5
21
 Moderate
14
38
 High
6
14

29
100
Uncomplicated P. falciparum malaria
Severe P.
23
0
16
0
22
2
4
65
4
6
 Non-P. falciparum vs uncomplicated P. falciparum p = 0.004
 Non-P. falciparum vs severe P. falciparum p = 0.031
 Uncomplicated P. falciparum vs severe P. falciparum p < 0.001
イラク周辺の蚊の分布
マラリアの伝播
蚊を介した感染が主である。
マラリアを媒介する蚊はAnopheles属である。
世界で430種おりそのうち約70種がマラリアを
伝播すると考えられている。
主に40種が重要である。
海抜2,500m以上には生息しない。が流行地
などから交通機関によって運ばれる場合があ
る。
5. Mediterranean
A. (A.) atroparvus
A. (A.) claviger
A. (A.) labranchiae
A. (A.) messeae
A. (A.) sacharovi
A. (C.) hispaniola
A. (C.) superpictus
8. Indo-Iranian
A. (A.) sacharovi
A. (C.) aconitus
A. (C.) annularis
A. (C.) culicifacies
A. (C.) fluviatilis
A. (C.) jeyporiensis
A. (C.) minimus
A. (C.) philippinensis
A. (C.) pulcherrimus
A. (C.) stephensi
A. (C.) sundaicus
A. (C.) superpictus
A. (C.) tessellatus
A. (C.) varuna
31
中東におけるマラリア流行地
イラクに生息するマラリア媒介蚊
主要媒介蚊
•An. sacharovi
-ヒトと動物嗜好性、屋内・屋外吸血性
-10km以上飛翔
-4月から11月の流行の原因種
•An. superpictus
イラクでの流行地
・北東部
・イランとの国境
・南部地域
-ヒトと動物嗜好性、屋内・屋外吸血性
-短~中程度飛翔、まれに5km
-年中ただし4~5月と8~9月がピーク
•An. stephensi
-ヒトと動物嗜好性、屋内・屋外吸血性
-短距離飛翔、まれに0.5km
-年中ただし4~5月と8~9月がピーク
•An. pulcherrimus
-動物嗜好性、屋外吸血性、飛翔距離不詳
蚊の止まりかたで見分ける。
マラリア媒介蚊はお尻を
挙げる。
Anopheles stephensi
頭部のパルプは通常
メスでは短いがアノフェレス
では長い。
羽にまだら模様がある。
ぼうふらは水面に平行で
サイフォンを欠く。
通常室内吸血、室内休息。
マラリアの予防(公衆衛生学的)
1 幼虫コントロール
 1環境
 2化学的
 3生物学的
Dr Stephens
2成虫コントロール
 1化学的
 2個人的予防
32
環境・化学的コントロール
ベトナム、ソンベ省
のゴム園近くのアノフェレス
生息地。
Anopheles minimus
幼虫に対して
Impoundment:道路補修などの水溜り対策や
ドレナージ、ダムの水草対策、川の流れの
変更、湖岸あるいは川岸の植生変更など
成虫に対して
殺虫剤の散布、残留噴霧など ULV
マラリアの予防 蚊成虫
個々の家に
殺虫剤を噴霧
する方法
大規模な噴霧
殺虫剤
航空機を利用した噴霧
ULV
生物学的コントロール
有機塩素 DDT,HCHなど
有機リン Malathion,Fenthionなど
カーバメート Carbaryl,propoxurなど
ピレスロイド Permethrin, Deltamethrinなど
その他
Etofenprox(ピレスロイドに入ってはいるが一部
に別の構造を持つ)
マラリアの予防 蚊成虫
(個人)
 1 蚊の対策
線虫を用いた方法
細菌を用いた方法
ぼうふらを用いた方法
魚を用いた方法など
がある。
無生殖蚊
居住環境
エアーコンディショニング
網戸
蚊帳
服装
昆虫忌避剤
殺虫剤
 2 予防薬内服
33
蚊帳と服装
家の中で蚊帳を張る場合
事前に殺虫剤を噴霧して
おく。
DEET
N,N-diethyl-3-methylbenzamide
様々な%のものが流通。日本ではおおむね10%
以下。海外では100%まである。
50%以上の濃度では効果の増強はない。
汗により効果が薄れるため3-4時間ごとに塗る必
要がある。
蚊帳はしっかりベットの下にもぐりこませる。
できればピレスロイド系の殺虫剤に浸す。
穴は縫わずにテープなどを張る。
まれに神経症状が出現。
長期使用で皮膚の色素沈着。
マラリアの予防内服
1 クロロキン(300mg塩基:2錠)週1回+プ
ログアニール(200mg:2錠)毎日1回
2 メフロキン(250mg塩基:1錠)週1回
3 マラロン(プログアニール100mg+アトバコ
ン250mg)毎日1回
4 ドキシサイクリン100mg毎日
5 ピリメタミン(12.5mg)+ダプソン(100mg)
週1回
マラリアの治療薬
1
2
3
4
5
マラリアの治療
1 対症療法
輸血
血糖
補液
呼吸管理
腎不全対策など
2 抗マラリア薬
Atovaquone
Tafenoquine
Tafenoquine
スポロゾイト
組織型(赤外型)
栄養体からシャイゾント(赤内型)
ガメトサイト
ヒプノゾイト
Tafenoquine
Atovaquone
Tafenoquine
Quinine,Mefloquine,Chloroquine,Amodiaquineは熱帯熱以外の生殖母体を殺す。
34
マラリア薬の種類
アリルアミノアルコール:キニーネ、メフロキン、ハ
ロファントリン、ルメファントリン
4アミノキノリン:クロロキン、アモディアキン
スルフォンアミド:ダプソン、スルファドキシン
葉酸拮抗薬:プログアニール、クロルプログア
ニール
ジアミノピリミジン:ピリメサミン
8アミノキノリン:プリマキン、タフェノキン
セスキテルペンラクトン:アルテミシニン、アルテ
メーター、アルテスネート
ナフトキノン:アトバコン
抗生物質:ドキシサイクリン、クリンダマイシン
熱帯熱の合併症のない場合と種
の同定が不可能の場合
メフロキン15-25mg/kg2回に分けて投与(6
-8時間あける)。
例 体重60kgで25mg/kgの場合合計1,500m
g塩基。
1錠250mgなので初回4錠、8時間後2錠。
 マラロン アトバコンプログアニール1日4錠1回を3日
間
 リアメット アルテメタールメファントリン1日4錠2回を3
日間
 キニーネ 600mg塩1日3回14日
 ラップダップ クロルプログアニール2mg/kg
ダプソン2.5mg/kgを1日1回3日
 ファンシダール 3錠1回
熱帯熱の
合併症のある場合 2
アーテスネート:プラスモトリム(アー
テスネート200mg)経口あるいは坐
薬。初日1錠以後1日1錠で5日。
アルテメター:初回3.2mg/kg筋注翌
日より 1.6mg/kg筋注最低3日
マラリアの治療
(三日熱、四日熱、卵形の場合に加え熱
帯熱であってもクロロキン感受性があると確認されている地域の場合)
原則として経口薬。
クロロキン塩基初回600mg翌日600mg翌々
日300mg(初回後6時間で300mg翌日300mg
翌々日300mgという投与方法もある)
プリマキン1日量15mg塩基を4-17日あるい
は週45mgを8週間。肝細胞内の原虫を殺し再
発を抑える。日本では15mg14日が奨励され
ている。G6PD欠損に注意するが日本人には
少ない。生殖母体にも効果あり。
熱帯熱の
合併症のある場合 1
キニーネ 20mg/kgを初回量とし 5%500ml
ブドウ糖液に溶かし4時間以上かけて点滴投与、
ついで8時間後に10mg/kgを4時間以上かけて投
与を繰り返す。
Qunimax 250mg/2ml アンプルを(塩
240mg/2ml) 8.3mg/kgとして5%ブドウ糖500ml
に溶かして4時間かけて投与。8時間ごと。
キニーネは低血糖に注意すること。
抗マラリア薬の有害作用
アレルギー:すべて
神経症状:メフロキン
心伝導障害:メフロキン、キニーネ
スティーブンスジョンソン症候群:ファンシダー
ルなどのスルフォン系薬剤
胃腸障害:プログアニール
網膜症:クロロキン長期
35
注意事項
貧血
輸血
低血糖 頻回の血糖検査
出血傾向 ヘパリン禁忌
肺水腫 呼吸管理
腎不全 透析考慮
脳症 ステロイド禁忌
脳性マラリア
除脳硬直
オピストトーヌス
髄膜炎と鑑別がつかない
こともありこの場合抗生物質
の投与も必要となる。
交換輸血が有用なこともある。
マラリアの診断を迅速かつ的確
に。
抗マラリア薬の適正選択と使用。
抗マラリア薬の有害作用に注
意。
マラリアの予後
1 三日熱、卵形で再発
2 熱帯熱、四日熱で再燃
3 四日熱による小児の糸球体腎炎
4 小児で治療後約10%の神経障害
(熱帯熱)
5 非免疫患者での死亡(熱帯熱)
6 免疫患者でのキャリアー化
診断用キットではなく研究用?
キットで診断できるか 法的意味から
キットで診断を間違ったら
精度管理
研究所、大学は検査センターではない
好意、好奇心からの検査
キットでスクリーニングし陽性に出た場合
しかるべき機関に依頼する
現病歴
症例
43歳ナイジェリア人男性
生来健康
日本滞在10年以上
既往歴:小児期にマラリアに複数回感染
主訴:発熱、全身倦怠感
2005年6月20日より7月20日までナイ
ジェリアを訪問していた。7月18日に発熱、
口内炎、下痢が出現し現地の医療機関
を受診しマラリアとの診断で点滴治療を1
回受けた(内容不明)。7月20日帰国した。
同23日発熱が持続するためXXXクリニッ
ク受診 となった。
36
経過1
7月23日、感冒の診断でLevofloxacin
600mg/dayを3日間投与したが発熱は持
続していた。同28日に行ったスメアー検査
にてマラリア原虫陽性との連絡を検査セン
ターから受けたためメフロキン6錠(初回4
錠、8時間後2錠)にて治療した。経過中嘔
吐を認めたが追加投薬は行わなかった。マ
ラリアの種の鑑別および追加治療の必要
性の有無についてコンサルテーションと
なった。
コントロールを含めた
三本の線が出れば
熱帯熱、
二本ならばその
ほかのマラリアと判断。
マラリア原虫
治療前の血液塗抹標本ではバナナ型のガメトサイト
(0.3%)と正常赤血球とほぼ同じ大きさの円形のガメ
トサイトを認めた(0.05%)。形態から熱帯熱マラリア
ともう一種のマラリアの混合感染と考えた。感染赤血
球が腫大していないこと、辺縁がスムースであること
より四日熱マラリアを疑った。補助診断として患者血
清を用いたOptiMalでは3本線が認められ、熱帯熱
マラリアは陽性であった。
コントロール
経過2
卵形マラリアの除外診断とプリマキ
ンによる根治療法の必要性を確認
するため岡山大学において18S
rRNAに対するPCRを行った 。
結果:P.falciparum +
P.ovale +
37
経過3
考察
診断:熱帯熱マラリアおよび卵形マラリア
卵形マラリアの形態学的診断が難しかった
理由としてナイジェリアにおける抗マラリア薬
による治療を受けていたこと、ニューキノロン
投与によるマラリア原虫の形態への影響が考
えられた。簡易キットであるOptiMalでは混合
感染の判断は不可能であり、様々な原因で形
態学的に変化が現れ、診断に苦慮する場合に
PCRは非常に有用な診断方法であると考えら
れた。
治療方針:熱帯熱に関してはメフロキン投与がなされ
ており経過観察。卵形に関してはG6PD欠損症の確
認後再発予防のためプリマキン投与。
G6PD検査では欠損は認められず(自治医大松岡教
授)、プリマキン(15mg base/day 14日) 投与を行った。
有害作用もなく現在まで再発、再燃は見られていな
い。
経
渡航者におけるマラリア対策の課題
-脳マラリアの症例から-
吉田 敦1,菊池 仁2,千原晋吾1,党 雅子3,
千種雄一4,春木宏介3
1 獨協医科大学感染制御センター,感染制御・臨床検査医学
講座
2 同 救命救急センター
3 獨協医科大学越谷病院臨床検査部
Dokkyo Medical
4 獨協医科大学熱帯病寄生虫学講座
University, 2011
過
概
要
【75歳・男性】
⽇
備考
⽇
備考
⽇
備考
-29
ローマ
-14
ローマ
1
関⻄
臨床症状
他
2
帰栃
発熱36℃台
帰国
3
栃⽊
38℃台発熱近医受診
栃⽊
⼣⽅:悪寒・⾷欲不振
-28
ナイジェリア
-13
-27
ベナン
-12
-26
トーゴ
-11
4
-25
ガーナ
-10
5
栃⽊
再度40℃台発熱
-24
ガーナ
-9
6
栃⽊
発熱40℃台近医
⇒本院・熱帯熱マラリアの診断
-23
ガーナ
-8
7
本院
-22
ブルキナファソ
-7
8
本院
-21
マリ
-6
9
本院
-20
マリ
-5
10
本院
-19
マリ
-4
11
本院
-18
マリ
-3
12
本院
13
本院
-17
セネガル
-2
関⻄
-16
ガーナ
-1
関⻄
-15
ローマ
死亡
<入院時現症>
GCS E2V3M5,血圧 115/63 mmHg,脈拍 105/分・整,
呼吸数 30回/分,体温 38.5℃.
眼瞼結膜に貧血・出血なし.眼球結膜に黄疸なし.
咽頭に異常所見なし,胸部異常なし.
腹部平坦,軟.肝脾腎触れず.浮腫,皮疹なし.
⾚道
<血液生化学>
WBC 12,600 (Neutro 69.4%, Ly 23.3%),Hb 11.2,Plt
1.5万AST 66,ALT 50,LDH 455,TB 2.2,TP 4.6,CK
210,
BUN 54,Cr 1.14,CRP 6.81,プロカルシトニン 21.53 ,
PT INR 1 37 AT III 37 D dimer 26 3
38
治療前
寄⽣率=12.0%
←薄層塗抹標本
P. falciparum
・輪状体
・ロゼット形成
・寄⽣率は
12.0%
P.f P C
治療前
Quinine gluconate div
Artesnate坐薬(Plasmotrim)
Clindamycin
Mefloquine
寄⽣率=12.0%
治療開始48時間後
Rapid diagnostic
test→
P.f (P. falciparum)陽性
寄⽣率=6.0%
治療開始8時間後
PCR
P. falciparumのみ陽性
寄⽣率=1.0%
原虫数は低下し,一旦呼吸状態は良くなったが,
急性腎不全,DIC,肝不全が進行した.破砕赤血球と
死亡原虫の除去を目的として血漿交換も行ったが,
意識状態はあまり改善しなかった.その後脳浮腫が
進行し,脳死状態となり,入院8日目に死亡した.
入院7日目のCT
入院7日目のCT
考察
<本例での問題点と重症化要因>
・マラリアの予防内服:医療機関受診の勧めなし
・発症から診断までの時間:6日
→改善を目的とした教育,啓蒙が強く望まれる
白質の
点状出血
(脳紫斑病)
Dürck
granuloma
毛細血管内の
マラリア原虫
剖検所見
脳組織標
本
<課題と改善への取り組み>
1.旅行業者や渡航者の教育・啓蒙
2.予防内服薬・治療薬へのよりよいアクセス
3.迅速キットの普及・保険収載
4.早期診断を目指した一般医科へのアナウンス
総合的な対策を早急に推し進める必要あり
39
注意する点
PCTはマラリアの重症度判定に用いるこ
とができる。
現在の重症度を決定するクリティカルな
濃度は25ng/mlと考えられる。
寄生虫の専門家は必要!
寄生虫学講座の減少
診断のネットワーク
検査方法の開発
研究への見返り
保険収載
基礎医学と臨床医学のさらなる提携
臨床検査部のはたすべき役割
国際的に通用する検査室
Nglectされない努力も必要
患者の状態は?
どこに旅行したか?
ひとつの原虫で判断しない!
混合感染は?
血小板、変形した白血球に注意!
他の感染症も考える!
検体は危険!
キットはあくまで補助として用いる!
場合によってはPCR!
国内未承認薬の使用も含めた熱帯病・
寄生虫の最適な診療体制の確立
に関する研究班
http://www.med.miyazakiu.ac.jp/parasitology/orphan/in
dex.html
40
ご清聴
ありがとうございました
41