高知県感染症発生動向調査(週報) 2010年第45週〔11月8日~11月14日〕 高知県衛生研究所 高知県感染症情報センター TEL:088-821-4961 FAX:088-825-2869 http://www.kenkou.med.pref.kochi.lg.jp/eiken/ E-mail:[email protected] 県内情報 ○ 患者情報総評 注意報発令疾患:なし ・ 週を通して晴れの日が続いたが,日によって寒暖の差が激しく,体調管理に注意が必要である. ・ ・ ・ ・ 感染性胃腸炎は安芸と高幡を除く地域で増加し,総数は先週に引き続き約1.5倍に増加した. 咽頭結膜熱(高幡:注意報,高知市:注意報,中央西:注意報)は再び増加に転じた. インフルエンザは今週はやや減少したが,全国的には増加が続いており,注意が必要である. 水痘(高幡:注意報)は例年11~12月にかけて増加し,6月頃まで流行がみられる疾患であり,今後 の推移が注目される. 上位疾患構成図 A群 溶 血 性 レ ン サ 球 菌 咽 頭 炎 咽頭 結膜熱 水痘 感染性胃腸炎 55 13 0% 10% 20% 30% 40% 50% その他 8 10 60% 70% 80% 14 90% 100% 地域別感染症注意報・警報発生状況 地域別感染症注意報・警報発生状況 第45報 第45報 (2010年11月8日~2010年11月14日) (2010年11月8日~2010年11月14日) 中央東 中央西 警報 咽頭結膜熱 注意報 高知市 安芸 咽頭結膜熱 高幡 マイコプラズマ肺炎 咽頭結膜熱 A群溶レン菌咽頭炎 水 幡多 痘 高知県 流行性耳下腺炎 感染性胃腸炎:今週4.13 (注意報値:12.00 警報値:20.00) 引き続き増加しており,今後の推移に注意が必要である. 人 28 感染性胃腸炎の週別推移(定点当たり) 警報基準値 24 平年値(過去10年) H17-18年 H18-19年 H19-20年 H20-21年 H21-22年 H22-23年 施設における集団発生多発 ノロウイルスが多い 20 ロタウイルスが多い 注意報基準値 16 12 8 4 0 27 30 7月 35 8月 40 9月 45 10月 50 11月 12月 1 5 1月 10 2月 15 3月 4月 20 5月 25 6月 咽頭結膜熱:今週0.73 (注意報値:1.00 警報値:3.00) 第36週をピークに減少傾向が続いていたが,今週は大幅に増加した.夏季に流行がみられる疾患で あるが,高幡,高知市,中央西で注意報値を超した. 咽頭結膜熱の週別推移(定点当たり) 人 平年値(過去10年) H17年 H18年 H19年 H20年 H21年 H22年 3.0 2.0 注意 報 基 準値 1.0 0.0 1週 5 10 1月 2月 15 3月 20 4月 25 5月 30 6月 35 7月 40 8月 45 9月 10月 50 11月 53 12月 ○ 検査情報 週 45 42 患者 地域 ウイルス,細菌の検出状況 11カ月 女 高知市 Mycoplasma pneumoniae 4歳 女 高幡 Adenovirus 3 臨床診断名 百日咳 咽頭結膜熱 ○ 全数報告の感染症情報 2類感染症:結核 2例(35歳男,82歳女)《高知市》(今年136例) 4類感染症:アメーバ赤痢 1例 (63歳男)《高知市》(今年2例) ○ 高知県の平均気温と湿度(週別) 気温℃ 40 湿度% 平均気温と相対湿度の週別推移 100 90 35 80 30 70 25 60 64.0% 20 50 40 15 30 2009気温 2010気温 2009湿度 2010湿度 10 5 13.5℃ 20 10 0 0 1 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25 27 29 31 33 35 37 39 41 43 45 47 49 51 53 週 ○ 定点からの地域ホット情報 幡多: 《さたけ小児科》:カンピロバクター腸炎 1例(2歳女) 《松谷内科》:A群溶血性レンサ球菌咽頭炎 1例(6歳女)は迅速キットで陽性 高幡: 《もりはた小児科》:アデノウイルス感染が続く 中央西: 《石黒小児科》:ヘルペス性歯肉口内炎 1例(1歳女) 《くぼたこどもクリニック》:マイコプラズマ肺炎 1例(9歳男) 高知市: 《福井小児科・内科・循環器科》:第43週のマイコプラズマ肺炎2例はいずれもクラリスロマイシンに抵抗 性で奏効せずミノマイシンで治癒した アデノウイルス陽性 3例 (2,3歳男) 《けら小児科・アレルギー科》:インフルエンザの1例はA型陽性 帯状疱疹 1例(5歳男) 咽頭結膜熱の5例はアデノウイルス陽性 マイコプラズマ肺炎 2例 (1歳男,2歳女) カンピロバクター腸炎 1例(15歳女) 中央東: 《あけぼの小児クリニック》:アデノウイルス咽頭炎 2例(1歳女) カンピロバクター腸炎 2例(4歳女,38歳男:親子) 《野市中央病院小児科》:病原大腸菌O-18 1例(2歳女) 安芸: 《田野病院小児科》:マイコプラズマ肺炎 1例(7歳女:高知市在住) 全国情報第43週(10/25~10/31)( http://idsc.nih.go.jp/index-j.html ) 2類感染症:結核326例 3類感染症:細菌性赤痢8例、腸管出血性大腸菌感染症38例(有症者29例、うちHUS 4例)、腸チフス1例 4類感染症:A型肝炎3例、つつが虫病7例、デング熱5例、日本紅斑熱1例、マラリア1例、レジオネラ症8例、レ プトスピラ症1例 5類感染症:アメーバ赤痢11例、ウイルス性肝炎(B型)2例、急性脳炎1例、後天性免疫不全症候群15例 (AIDS 5例、無症候10例)、ジアルジア症2例、梅毒9例、破傷風1例、バンコマイシン耐性腸球菌感 染症3例、風しん1例、麻しん3例 報告遅れ:細菌性赤痢2例、E型肝炎2例、デング熱1例、日本紅斑熱1例、レジオネラ症3例、急性脳炎2例、 劇症型溶血性レンサ球菌感染症2例、バンコマイシン耐性腸球菌感染症2例、風しん1例 ◆インフルエンザ インフルエンザ(Influenza)は、インフルエンザウイルスを病原体とする急性の呼吸器感染症で、毎年世 界中で流行がみられている。インフルエンザは、1~4日間の潜伏期間を経て、突然に発熱(38℃以上の高熱)、 頭痛、全身倦怠感、筋肉痛・関節痛などが出現し、鼻水・咳などの呼吸器症状がこれに続く。通常は1週間前後 の経過で軽快するが、いわゆる「かぜ」と比べて全身症状が強いのが特徴である。 主な感染経路はくしゃみ、咳、会話等で口から発する飛沫による飛沫感染であり、他に接触感染もあるとい われている(CDCホームページ:http://www.cdc.gov/flu/about/disease/spread.htm)。 インフルエンザの感染対策としては、飛沫感染対策としての咳エチケット、接触感染対策としての手洗い の徹底が重要であると考えられるが、たとえインフルエンザウイルスに感染しても、全く無症状の不顕性感 染例や臨床的にはインフルエンザとは診断し難い軽症例が存在する。従って、特にヒト-ヒト間の距離が短 く、濃厚な接触機会の多い学校、幼稚園、保育園等の小児の集団生活施設においてインフルエンザの集団発生 をコントロールすることは困難であると思われる。2009年4月に新型インフルエンザ〔パンデミック (H1N1)2009〕の発生が明らかとなり、世界各国で大きな流行をもたらしたことは記憶に新しい。日本でも 2009年の5月に最初の国内患者発生報告があり、同年第48週をピークとした大きな流行に発展したが、その後 新型インフルエンザの流行は鎮静化し、最近ではAH1pdmの他にAH3亜型やB型インフルエンザウイルスも国内 のインフルエンザ発生例から継続的に検出されている。 感染症発生動向調査では、全国約5,000カ所(小児科定点約3,000、内科定点約2,000)のインフルエンザ定 点からの報告に基づいてインフルエンザの発生動向を分析している。2010年第43週のインフルエンザの定点 当たり報告数は0.15(報告数728)となり、2週連続で増加がみられた。都道府県別では北海道(1.06)、沖縄 県(1.02)、岐阜県(0.49)、青森県(0.42)、宮崎県(0.36)、宮城県(0.20)、千葉県(0.17)、茨城県 (0.16)、群馬県(0.16)、長崎県(0.16)の順となっている。特に北海道、青森県、岐阜県、宮崎県、沖縄県の 増加が目立つ。 2010年第36~43週までの8週間で国内では218検体のインフルエンザウイルスの検出が報告されており 、 AH1pdm 65件(29.8%)、AH3亜型(A香港型)144件(66.1%)、B型9件(4.1%)とAH3亜型が最多を占めている。 インフルエンザの発生動向調査が現在と同じ5,000カ所のインフルエンザ定点によるサーベイランス体制 となった1999年以降でみると、2010年第36~43週の定点当たり報告数の推移は、新型インフルエンザが流行 した昨年を除けば、例年と比較して流行の開始が早かった2007年に次ぐ高い水準である。AH3亜型ウイルスが インフルエンザ流行の主流となったのは2006/07シーズンが最近であり、過去3シーズンはAH1亜型(Aソ連型) か又はAH1pdmが流行の主流であったことから、AH3亜型ウイルスに対して罹患経験がないかまたは感染機会 の減少によって免疫が維持されず、感染した場合にインフルエンザを発症する者の割合は国内において少な くはないと思われる。今シーズンのインフルエンザの定点当たり報告数は、11月中にも全国的な流行開始の 指標である1.0を上回る可能性があり、比較的早期にインフルエンザの流行が開始する事が予想される。 従って、インフルエンザワクチンの接種を必要とし、まだ実施していない場合は早期に接種することが望 まれる。インフルエンザの発生動向には、今後更に注意深い観察が必要である。 定点 医療圏 名 疾病名 安芸 医療圏 中央医療圏 中央東 高知市 内科・ イ ン フ ル エ ン ザ 小児科 中央西 高幡 医療圏 幡多 医療圏 9 咽 頭 結 膜 熱 A群溶血性レンサ 球 菌 咽 頭 炎 計 前 週 高知県(45週末累計) H22/1/4~H22/11/14 9( 0.19 ) 15 ( 0.31 ) 942 ( 0.20 ) 2,582 ( 53.79 ) 14 3 5 22 ( 0.73 ) 4( 0.13 ) 675 ( 0.22 ) 386 ( 12.87 ) 4 10 1 4 19 ( 0.63 ) 29 ( 0.97 ) 3,490 ( 1.15 ) 929 ( 30.97 ) 感 染 性 胃 腸 炎 7 20 45 11 4 37 124 ( 4.13 ) 85 ( 2.83 ) 16,111 ( 5.31 ) 水 1 6 14 3 4 1 29 ( 0.97 ) 33 ( 1.10 ) 2,879 ( 0.95 ) 1,747 ( 1( 0.03 ) 1,078 ( 0.36 ) 3,226 ( 107.53 ) 手 痘 足 口 病 小児科 伝 染 性 紅 斑 1 突 発 性 発 疹 百 日 1 4 1 1 1 7,868 ( 262.27 ) 58.23 ) 1( 0.03 ) 1( 0.03 ) 919 ( 0.30 ) 231 ( 7.70 ) 6( 0.20 ) 13 ( 0.43 ) 1,564 ( 0.52 ) 562 ( 18.73 ) 2( 0.07 ) 76 ( 0.03 ) 71 ( 2.37 ) 223 ( 0.07 ) 1,026 ( 34.20 ) 咳 ヘルパンギーナ 2( 0.07 1( 0.03 6( 0.20 ) 12 ( 0.40 ) 3,324 ( 1.10 ) 236 ( 7.87 ) 1( 0.03 ) 11 ( 0.37 ) 1,436 ( 0.47 ) 800 ( 26.67 ) 6 ( 0.01 ) 2( 0.67 ) 398 ( 0.59 ) 74 ( 24.67 ) 細 菌 性 髄 膜 炎 9 ( 0.02 ) 11 ( 1.57 ) 無 菌 性 髄 膜 炎 15 ( 0.03 ) 18 ( 2.57 ) 274 ( 0.60 ) 84 ( 12.00 ) 12 ( 0.03 ) 23 ( 3.29 ) 流行性耳下腺炎 2 RS ウ イ ル ス 感 染 症 1 3 1 急性出血性結膜炎 眼科 流行性角結膜炎 3 3( 1.00 ) 1( 0.33 ) 基幹 マイコプラズマ肺炎 3 3( 0.43 ) 1( 0.14 ) クラミジア肺炎 (オウム 病は除 く) 計 (小児科定点当たり人数) ( 前 週 (小児科定点当たり人数) ( 9 31 107 4.50 ) ( 4.43 ) ( 13 18 8.93 ) ( 31 6.00 ) ( 10.50 ) ( 94 6.50 ) ( 4.32 ) ( 11 7.99 ) ( 21 20 3.67 ) ( 10.00 ) ( 39 7.80 ) 225 ( 7.19 ) 40 209 ( 8.00 ) 定点当たり 6.71 ) 33,431 19,876 ( 623.19 ) 第45週 定点 医療圏 名 疾病名 安芸 医療圏 中央医療圏 中央東 内科・ イ ン フ ル エ ン ザ 小児科 高知市 中央西 高幡 医療圏 幡多 医療圏 0.56 咽 頭 結 膜 熱 A群溶血性レンサ 球 菌 咽 頭 炎 計 前 週 全国(44週) 0.19 0.31 0.20 1.27 1.00 2.50 0.73 0.13 0.22 0.57 0.91 0.33 2.00 0.63 0.97 1.15 感 染 性 胃 腸 炎 3.50 2.86 4.09 3.67 2.00 7.40 4.13 2.83 5.31 水 0.50 0.86 1.27 1.00 2.00 0.20 0.97 1.10 0.95 手 痘 足 口 病 小児科 伝 染 性 紅 斑 突 発 性 発 疹 百 日 0.09 0.50 0.36 0.50 0.03 0.36 0.03 0.03 0.30 0.20 0.43 0.52 0.07 0.03 0.07 0.03 0.07 0.20 0.40 1.10 0.03 0.37 0.47 咳 ヘルパンギーナ 眼科 全国(44週) 0.14 0.09 流行性耳下腺炎 0.18 RS ウ イ ル ス 感 染 症 0.09 1.50 0.20 急 性 出 血 性 結 膜 炎 0.01 流行性角結膜炎 3.00 1.00 0.33 0.59 細 菌 性 髄 膜 炎 0.02 無 菌 性 髄 膜 炎 0.03 基幹 マイコプラズマ肺炎 0.60 0.43 0.14 ク ラ ミ ジ ア 肺 炎 (オウム病は除く) 計 (小児科定点当たり人数) 前 週 (小児科定点当たり人数) 0.60 0.03 4.50 6.50 4.43 8.93 6.00 10.50 7.80 4.32 7.99 3.67 10.00 8.00 7.19 6.71 2010年週報推移(定点当たり) 2.50 2.00 1.50 安芸 中央東 高知市 中央西 高幡 幡多 県 2.50 A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の週報推移 A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の週報推移 第41週 第42週 2.00 第43週 第44週 1.50 1.00 1.00 0.50 0.50 第45週 0.00 0.00 第41週 3.00 第42週 第43週 2.00 安芸 第45週 水痘の週報推移 安芸 中央東 高知市 中央西 高幡 幡多 県 2.50 第44週 中央東 3.00 高知市 中央西 高幡 幡多 水痘の週報推移 県 第41週 第42週 2.50 第43週 2.00 1.50 1.50 1.00 1.00 0.50 0.50 第44週 第45週 0.00 0.00 第41週 3.00 第42週 第43週 第44週 安芸 中央東 高知市 中央西 高幡 幡多 県 2.00 1.50 中央東 3.00 流行性耳下腺炎の週報推移 2.50 安芸 第45週 高知市 中央西 高幡 幡多 県 高幡 幡多 県 流行性耳下腺炎の週報推移 2.50 第41週 第42週 2.00 第43週 第44週 1.50 第45週 1.00 1.00 0.50 0.50 0.00 0.00 第41週 3.00 第42週 第43週 第44週 第45週 3.00 咽頭結膜熱の週報推移 2.50 1.50 0.50 0.00 安芸 中央東 高知市 中央西 高幡 幡多 計 第42週 第43週 第44週 第45週 第41週 6.00 第43週 3.00 2.00 1.00 1.00 高知市 中央西 高幡 幡多 計 幡多 計 感染性胃腸炎の週報推移 第44週 5.00 0.00 中央東 第42週 2.00 第45週 0.00 第41週 0.90 第42週 第43週 第44週 第45週 安芸 中央東 高知市 0.90 インフルエンザの週報推移 0.80 0.40 第45週 7.00 3.00 0.50 第44週 8.00 感染性胃腸炎の週報推移 4.00 0.60 第42週 安芸 4.00 0.70 第41週 0.00 第41週 5.00 咽頭結膜熱の週報推移 1.50 0.50 6.00 中央西 第43週 1.00 7.00 高知市 2.00 1.00 8.00 中央東 2.50 安芸 中央東 高知市 中央西 高幡 幡多 計 2.00 安芸 0.80 安芸 中央東 高知市 中央西 高幡 幡多 計 中央西 高幡 インフルエンザの週報推移 第41週 第42週 0.70 第43週 0.60 第44週 第45週 0.50 0.40 0.30 0.30 0.20 0.20 0.10 0.10 0.00 0.00 第41週 第42週 第43週 第44週 第45週 安芸 中央東 高知市 中央西 高幡 幡多 計
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