GK-TKスキームの促進に期待~平成24年不動産特定共同事業法改正

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May 2012
GK-TK スキームの促進に期待
~平成 24 年不動産特定共同事業法改正
平成 24 年 2 月 28 日、不動産特定共同事業法(平成 6 年法律第 77 号。以下
「不特法」といいます。)の一部を改正する法律が閣議決定されました。現
在法案は国会で審議中です。今回の改正は不動産流動化の代表的手法である
GK-TK スキームの促進・発展が期待される注目すべき内容となっています。
従来、合同会社(GK)が匿名組合契約(TK)を通じて投資家から資金を調
達し、不動産取得に充てるという GK-TK スキームは、資産の流動化に関する
法律(平成 10 年法律第 105 号)に基づく特定目的会社(TMK)を使ったいわ
ゆる TMK スキームと異なり、資産の追加取得について柔軟性があるという
メリットが存した反面(TMK スキームでは不動産信託受益権での追加取得か
保有不動産と密接関連性を有する現物不動産の追加取得に限られるという限
界があります)、ごく一部の例外を除いて不動産信託受益権の形で取得せざ
るを得ないという限界が実務から指摘されていました。これは従来の不特法
では、匿名組合型のファンドを通じて資金調達をして不動産を取得する場合、
相当程度の資本等を有する事業会社を想定した不動産特定共同事業の「許
可」を受けた業者のみが現物不動産の取得を許容され、GK に代表されるよう
な倒産隔離を図った特別目的会社(SPC)による現物不動産取得が事実上で
きなかったという事情によるものでした。
今回の改正により、かかる「許可」の規制が大幅に緩和され、一定の不動産
特定共同事業者に不動産取引にかかる業務を全部委託し、「届出」を行えば、
例え SPC であっても匿名組合型のファンドを通じて資金調達を行い、現物不
動産を取得できるようになりました。この点は、国土交通省が法改正の背景
として、「建築物の耐震化など都市機能の向上に民間資金の導入を促進する
ため、倒産隔離型の不動産特定共同事業を可能と」させようと説明している
ところであり、今後、不動産証券化のマーケットに大きな影響を与えること
が見込まれます。
改正法案によると、合同会社のような特別目的会社(SPC)は次の要件に適
合する場合、「特例事業者」として、届出のみによって、かかる現物不動産
を対象資産とする匿名組合型ファンドを行うことができるようになります
(「特例事業」)。
① 不動産特定共同事業を専ら行うことを目的とした法人であること。
② 不動産取引にかかる業務を不動産特定共同事業者(第 3 号事業者)に委
託すること。
③ 匿名組合契約等の不動産特定共同事業契約の締結の勧誘業務を不動産特
定共同事業者(第 4 号事業者)に委託すること。
④ 銀行、信託会社その他不動産に対する投資に係る専門的知識及び経験を
有すると認められる者又は資本金の額が一定の金額以上の株式会社
(「特例投資家」)を事業参加者とすること。
⑤
その他事業参加者の利益の保護を図るために必要な主務省令で定める要
件に適合すること。
改正法は、上記の「特例事業」の制度を創設するために、不動産特定共同事
業者として、新たに第 3 号事業者と第 4 号事業者の類型をあわせて創設して
います。まず、「特例事業者」となる SPC の委託を受けて不動産特定共同事
業契約に基づく不動産取引に係る業務を行う行為を「第 3 号事業」としてい
ます。第 3 号事業者は、GK-TK スキームのアセットマネージャーに相当する
役割を担うものと思われます。次に、「特例事業者」となる SPC のために匿
名組合契約等の不動産特定共同事業契約の締結の代理又は媒介をする行為を
「第 4 号事業」としています。第 4 号事業者は、GK-TK スキームの TK 持分
を募集する際に関与する金融商品取引業者に相当する役割を担うものと思わ
れます。これらはいずれも不動産特定共同事業者に該当しますので、事前に
主務大臣の許可を受ける必要があります。また、改正法は匿名組合の事業参
加者となる銀行、信託会社等のその他不動産に対する投資に係る専門的知識
及び経験を有する者として、「特例投資家」の概念もあわせて創設しました。
この点について、国土交通省は年金や生損保等の機関投資家からの資金調達
方法の検討を行う旨の説明をしていますが「特例投資家」の具体的な範囲・
要件や事業参加者の利益の保護を図るために必要な要件の具体的な内容等に
ついては、今後、国土交通省の制定する施行規則を待つ必要があります。少
なくとも、このような新たな「特例事業者」や「特例投資家」の類型の創設
によって、改正法は、不動産に関わる事業会社や機関投資家等にとっても、
新たな不動産ビジネスの拡大の機会を提供していると思われます。
また、従前の GK-TK スキームでは、投資対象が投資適格不動産に限られてい
ましたが、今後、投資対象として投資不適格不動産を取得し、これをリ
ニューアルするという再生型の案件も事実上可能となると考えられます。現
物不動産を対象資産とする倒産隔離型の不動産証券化の手法としては、前述
の TMK スキームによる選択肢がありますが、同スキームでは現物不動産の
取得について資産流動化計画において事前に特定が必要であったり、追加取
得や処分の方法において制限があり、案件組成に時間等もかかるという限界
があります。これに対し、GK-TK スキームは資産の取得の側面で柔軟性があ
り、またさらに今回の改正法で投資対象が現物不動産に拡大されたことは、
GK-TK スキームの促進・発展が期待できる点であると言うことができます。
以上
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図 1. 従前の GK-TK スキーム(信託受益権)
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図 2. 改正法による新スキーム(現物不動産)
合同会社 SPC(特例事業者)
現物不動産
ノンリコースローン
貸付人
匿名組合出資 A
匿名組合出資者
匿名組合出資 B
匿名組合出資者
所有権
出資(資本金)
媒介
不動産取引の委託
不動産特定共同事業者
不動産特定共同事業者
(第 4 号事業)
(第 3 号事業)
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ます。同じく、「オフィス」とは、かかるいずれかの法律事務所のオフィスを指します。
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