泌尿器科腫瘍学における分子研究の展望: 発癌・転移機構 (精巣腫瘍)

KURENAI : Kyoto University Research Information Repository
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泌尿器科腫瘍学における分子研究の展望 : 発癌・転移機
構(精巣腫瘍)
野々村, 祝夫; 奥山, 明彦
泌尿器科紀要 (2001), 47(11): 803-807
2001-11
http://hdl.handle.net/2433/114642
Right
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Departmental Bulletin Paper
publisher
Kyoto University
泌 尿 紀 要47:803-807,2001
803
泌尿 器科腫瘍 学 における分子研 究の展 望:
発 癌 ・転 移 機 構(精
巣 腫 瘍)
大阪大学大学 院医学系研究科臓器 制御外科学(泌 尿器科学)(主 任:奥 山明彦 教授)
野 々 村 祝 夫,奥
山
明彦
A PROSPECT OF MOLECULAR BIOLOGY IN THE FIELD
OF UROLOGIC
ONCOLOGY : MECHANISMS
OF
CARCINOGENESIS
OR TUMOR DEVELOPMENT
IN TESTICULAR CANCER
Norio NONOMURA
and Akihiko OKUYAMA
From the Department of SpecificOrgan Regulation (Urology),
Osaka University Graduate Schoolof Medicine
Testicular germ cell tumor comprises about 1% of all the malignancies of males in Japan, and
occurs in only one over 100,000 males annually. A susceptibility gene may be located on the short arm
of the chromosome 12. Among the genes in this region, the expression of the KRAS2 mRNA was
increased in testicular cancer compared to the normal testicular tissue. By DNA typing, HLA-DR4
and 0405 allele in HLA-DRB1 showed high relative risk for testicular cancer.
We analyzed the expression of the WT1 gene, reported to be a growth promoter for leukemia, by
quantitative reverse transcription-PCR.
Relative expression of the WT1 gene was significantly
increased in high-stage cases than in low-stage cases, suggesting that WT1 could be useful as a tumor
marker for progression of testicular cancers.
Testicular germ cell tumors are usually very sensitive to chemotherapeutic agents such as cisplatin,
and p53 has been reported to play an important role in chemosensitivity. Therefore, mutations of the
p53 gene or other genes downstream may be responsible for their chemoresistance. The expression of
the GML (GPI-anchored molecule like protein) gene was examined in testicular cancers. Its
expression was not correlated with histology or stage. However, 4 refractory cases, 2 of which were
recurrent cases from stage I and the others were at high stages, showed no expression of the GML
mRNA. These interesting facts suggest that the expression of GML gene could be a good marker for
the prognosis of testicular germ cell tumors.
(Acta Urol. Jpn. 47 : 803-807, 2001)
Key words : Testicular cancer, Molecular biology, HLA, WT1, GML
緒
精 巣腫 瘍(精 巣 胚 細 胞 腫 瘍)は
悪性 腫 瘍 の約1%に
り約1人
で あ る1)精
告 な どが 散 見 さ れ る に過 ぎな い5・6)従 来 癌 抑 制 遺 伝
言
子 と して 単 離 され たWTlの
遺 伝 子 産 物 が 白血病 の増
日本 人 に お い て は全
殖 プ ロモ ー タ ー と して 作 用 す る こ とや 精 巣腫 瘍細 胞株
相 当 し,発 生 率 は人 口10万 人 当 た
で も発 現 して い る こ と は興 味 深 く7),精 巣 腫 瘍 臨 床検
巣 腫 瘍 に関 して は 遺伝 子 レベ ル
で の研 究 も早 くか ら進 み,ほ
と ん ど の症 例 で 第12番 染
色 体 短 腕 部 の 増 幅(isochromosome12p・i(12p)と
い
体 に お け るWT1遺
伝 子 産 物 の 発現 とそ の 増 殖
進展
に は何 らか の 関 連 が 期 待 され る.ま た,精 巣 胚 細 胞腫
瘍 は一 般 的 に抗 癌 剤 特 に シス プ ラチ ン に対 す る感 受性
う)が 存 在 す る こ とが 以 前 か ら報 告 され て お り,第12
が きわめ て 高 い.免 疫 組 織 染 色 にお い て は,精 巣 腫 瘍
染 色 体 短 腕 上 には 精 巣胚 細 胞 腫 瘍 の 責 任 遺 伝 子 が 存 在
細 胞 の 核 内 にp53蛋
す る 可 能 性 が あ る と考 え られ て きたが2・3),最 近,イ
p53の 遺 伝 子 変 異 は少 な い とい われ て い る8・9)
ギ リス の グ ル ー プ が精 巣胚 細 胞 腫 瘍 の 責 任 遺 伝 子 の1
白が 高 発 現 を示 す が,実 際 に は
本 論 文 で は,精 巣 腫 瘍 の 発 生 に 関 してHLA解
析
候 補 がXq27上
に存 在 す る と報 告 した4)
一方
,精 巣 腫 瘍 の進 展 や 治 療 反 応 性 に関 す る分 子 生
の研 究 成 果 を,精 巣 腫 瘍 の 進展 に関 してWTI遺
物 学 的 研 究 は 少 な い.細 胞 増 殖 に関 係 す るKi-67を
す る,ま た,腫 瘍 の抗 癌 剤 耐 性 に 関 して,p53遺
MIB-1抗
の 下 流 にあ る抗 癌 剤 感 受 性 に関 連 す る と い わ れて い る
体 で 染 色 し,臨 床 病 理 学 的 検 討 を行 っ た 報
のmRNA発
伝子
現 量 とstageと の 関連 の解 析結 果 を報 告
伝子
804
泌 尿 紀 要47巻11号2001年
GML(GPI-anchoredmoleculelikeprotein)艮o)遺
伝
と同一 患 者 の 正 常 精 巣 組 織(切
子 の 発 現 と化 学 療 法 に 対 す る 感 受 性 に つ い て の 検 討 結
常 部 分)に
お け るKRAS2遺
果 を 報 告 す る.
RT-PCRに
よ り測 定 した.
イ ピ ン グ=精
の つ い た 男 性52名
巣胚細胞 腫瘍の診断
の 末 梢 血 か らDNAを
抽 出 し,
HLA-DRお
比 べ てDR4が
険 率 は2.8倍
DRBに
とHLA-DRBのDNAタ
用 い てHLA-DR
イ ピ ン グ を 行 っ た.日
型 頻 度 を 用 い11),カ
probabilitytestに
イ ニ 乗 検 定 あ る い はFisher's
細 胞 腫 瘍 患 者(セ
巣腫 瘍組
定 量 に は ま ず,34名
の精巣胚
ミ ノ ー マ23例,非
の 凍 結 組 織 か らtotalRNAを
る 定 量RT-PCRを
セ ミ ノ ー マ11例)
抽 出 し,段
行 っ た12)ヒ
階希釈 によ
ト精 巣 腫 瘍 細 胞 株
お け るWTImRNAの
発 現 量 を1.0と
各 症 例 に お け る 発 現 量 を 数 値 化 した.Stageに
がhighstageで,25例
で,p値O.OOO4で
度 に 認 め ら れ,そ
0.00006で
有 意 に高 頻
の 相 対 危 険 率 は3.2倍
し て,
で,p値
あ っ た(Table2).
KRAS2mRNAの
比 は2.OIで
の相 対 危
あ っ た(Tablel).
関 し て はDRBIの0405alleleが
発 現:13例
中H例
にお いて正常
部 分 に 比 べ て 腫 瘍 部 分 で 高 発 現 を 示 し,そ
測 定 と 免 疫 組 織 染 色:精
織 中 のWTImRNAの
は,9例
の遺 伝
よ り有 意 差 検 定 を 行 っ た.
WTImRNAの
NEC8に
本人
が 報 告 した1,216名
常 コ ン トロ ー ル に
有 意 に 高 頻 度 に 認 め ら れ,そ
fragmentlengthpolymorphism)を
定量
果
よ びHLA-DRB:正
PCR-R.FLP(polymerasechainreaction-restriction
の 正 常 対 照 と し てAkazaら
伝 子 のmRNAを
結
材 料 と方 法
HLAのDNAタ
除組 織 内 に存 在 した正
の相 対 発現
あ っ た.
WTImRNAの
発 現:組
織 学 的 分 類 で は,セ
ノ ー マ と 非 セ ミ ノ ー マ で はWTImRNAの
発 現 に有
意 差 は 認 め ら れ な か っ た.し
か し,highstage群
lowstage群
意 にhighstage群
を 比 較 す る と,有
発 現 症 例 が 多 く存 在 した(p<o.017)(Fig.1).高
関 して
がlowstageで
あっ
Table2.DRBIa1置e璽e丘equenciesinJapanese
た.免
疫 組 織 染 色 に は パ ラ フ ィ ン 包 埋 組 織 を3μmに
薄 切 し,抗
ヒ トWT1ウ
(SantaCruz社,100倍
希 釈)を
用 い て 染 色 し,LSAB
(labeledstreptavidin-biotin)法
GMLmRNAの
発 現 をRT-PCRに
KRAS2の
発 現 検 討:13例
記34例
細
No.ofPFAF
control
DRBlNo.of
allelepatients
PvalueRR.
OlOl
7
13.7
48
5.00.3683
l501
9
17.6
65
6,80.3762
1502
12
23.5
86
9.20.2817
1602
0
0.0
7
0401
4
7.8
18
0405
25
49.1
0410
0
0.0
10
1.0
0403
2
3.9
26
2.70.6774
0406
3
5.9
34
3.50.7842
1101
3
5.9
21
2.lO.5911
0.5325
1201
3
5.9
37
3.90.6725
0.00042.8
1202
0
0.0
20
2.0
1301
2
3.9
05493
1302
0
0、0
71
7.4
0.8443
1401
3
5.9
37
3.80.6725
につ い て
て 検 討 し た.
の 患 者 で,精
巣腫瘍組織
Table1.HLA-DRantigenfrequenciesin
Japanesepatientswithtesticular
germCelltumOr
。
轟
tumor
で 発 色 させ た.
発 現 検 討:上
GMLmRNAの
pat至entswithtesticulargermcell
サ ギ モ ノク ロ ー ナ ル 抗 体
いF騙AFPval・
・RR
1
7
13.5
4
34
65.4
7
0
8
11
21.2
223
13。3
9
12
23.l
218
13
96
363
22.8
7
0.0
5.5
0.4
115
7
0.7
L80.148
12.50.000063.2
0.70」824
10
1
L9
11
0.6
0。6612
1402
1
2.0
0
11
3
5.8
妬
2.6
0.8387
1405
2
3.9
17
12
3
5,7
121
0,1088
1403
1
2.0
15
L80.6633
13
2
3。5
135
7.8
0.0256
1406
1
2.O
17
7.30.5718
14
10
19、2
5.5
0.0572
0803
6
ll.8
70
0.40.6331
15
21
00.4
0.1945
0801
0
0.0
4
16
0
0.0
14
0.8
0802
5
9.8
37
0.00.532
17
0
0.0
4
0.2
0901
12
23.5
126
13.71.756
18
0
0.0
0
1001
1
Total
52
96
285
7
17.4
898
0
Total
2.0
51
9
493
PF:phenotypicfrequency=positiveallelenumber/total
PF:phenotypicfrequency・positiveallelenumber/total
patientnumber.contro1:byAkazaT,etal.(1994).
patientnumber.control:byAkazaT,etaL(1gg4).
AF:allelefrequency=1-(1-PF)藍/2RR:re正ativerisk=
AF:allelefrequency=ト(1-PF)1!2.RRlrelativerisk=
PF/AF.
PFIAF、
ミ
L8
L50。8609
3.8
0.90,9454
と
に高
発
野 々 村,ほ か:精 巣 腫 瘍
102
805
分子生物学
Table3,ExpressionoftheGMLgeneintestiCUIargUrmCelltUmOrS
GML(一)GML(十)
●
●
邑
LOWstage
7例
18例
Highstage
3例
6例
Seminoma
5例
18例
Nonseminoma
5例
6例
塁101
謹
●
●
●
誓
奎
き㌔ ・
:.
葦
遷
N.S.
N.S.=notsignificant・
:
一一 一一…
N.S.
考
1;
察
一 精 巣 腫 瘍 の 発 生 に関 す る分 子研 究一
i●
10・1
精 巣 腫 瘍 は 白人 に多 く,有 色 人 種 に少 な い傾 向 が あ
●●
る.白 人 にお け る罹 患 率 は黒 人 にお け るそ れ の 約5倍
LowstageHlghstage
(n25)(n=9)
で あ る とい わ れ て い る12)そ
Fig,1.RelativeexpressionoftheWTIgcne
し て,世 界 的 に み る と
そ の 頻 度 は過 去40年 の 間 に約2倍
mRNAintesticulargermcelltumors
accordingtotumorstage.Thelevel
以 上 に 増 加 して い
る13).わ が 国 で も,最 近 の調 査 で,過 去9年
間 に約
1.35倍 に 増 加 した こ とが 明 ら か に な っ た14)Cytoge-
oftheWTImRNAexpressionin
NEC8cellswasdefinedasl.The
neticな 解 析 に よ り,精 巣 胚 細 胞 腫 瘍 は組 織 型 に か か
cut-offpointof1.Oismarkedbyasterisk.
わ らず,そ
の細 胞 内 に少 な くと も1つ 以 上 のX染 色 体
とY染 色 体 を有 して い る こ とが わ か って い る.そ
ヅ多儀
て,ほ
B..・e
し
とん どす べ て の精 巣 腫 瘍 細 胞 に12番 染 色 体 短 腕
の 重 複(12pisochromosome=i(12p))が
見 られる こ
と も明 らか に され て い る2'3)i(12p)は,12番
染色 体
の 長 腕 上 の癌 抑 制 遺 伝 子 あ る い は12番 染 色 体 短 腕 上 の
難1
餓 叢
Fig.2.
癌 遺 伝 子 の存 在 を予 測 させ る.こ の重 複 す る12番 染 色
体 短 腕 上 の癌 遺伝 子 と して 同定 され て い る もの の 中 に
KRAS2遺
伝 子 やcyclinD2な
ど が 存 在 す る15・16)
KRAS2は
そ れ 自身 癌 遺 伝 子 と して 知 ら れて い る.わ
れわれ の検討 で は同一患者 の精巣 腫瘍組 織 にお ける
属'.
一繭却5
.一
一
KRAS2mRNAの
発 現 量 は正 常 の精 巣 組 織 に お け る
そ れ の2倍 以 上 で あ っ た.こ れ が 単 に12番 染色 体 短腕
ImmunohistochemicalstainingofWTl
proteins.Sectionwasprobedwith
の重 複 を意 味 して い るの か,KRAS2遺
polyclonalantibodyagainstWTI(1:
瘍 発 生 へ の 関与 を意 味 して い る のか は不 明 で あ る.
100).Scalebarrepresents40μm.
伝 子 の精 巣腫
癌 の発 生 に は主 と して,単 一 の遺 伝 子(癌 抑 制 遺 伝
A=Seminomawithhighexpressionof
WTIprotein.B:Seminomawithout
子 や癌 遺 伝 子)が
関与 す る と考 え られ るが,そ れ らの
expressionofWTIprotein・
遺伝 子 以 上 の生 じやす さな どが 多 くの遺 伝 子 に よ って
現 症 例 で はWTIタ
ン パ ク も 高 発 現 し て い た(Fig.
GMLmRNAの
に,ま
た,lowstage25例
中 の18例
中6例
に発 現 を認
は 有 意 差 を認 め な か っ
織 学 的 に は セ ミ ノ ー マ23例 中 の18例
ノ ー マ11例
生 じ る相 対 危 険率 を算 出 す る こ とが 可能 とな り,将 来
発 現:GMLはhighstageの9例
め,highstageとlowstageで
た.組
ト遺 伝 子
の 中 に存 在 す る多 くの 多型 を解 析 して特 定 の表 現 系 が
2).
中6例
規定 され て い る可 能性 が あ る.最 近 で は,ヒ
に 認 め ら れGMLの
に,非
セ ミ
陽性 率 はセ ミ
の 遺 伝 子 診 断 や い わ ゆ るオ ー ダー メ イ ド医療 へ つ な が
る もの と期 待 され て い る.HLAtypingも
検 索 の 一種 で あ り,特 定 のHLAの
遺伝子 多型
型 を有 す る個 体
の特 定 の 疾 患 に対 す る な りや す さ を検 討 す る こ とが で
ノ ー マ と非 セ ミ ノー マ で 有 意 な 差 を 示 さ な か っ た
き る.わ れ われ は,精 巣 腫 瘍 患 者 のHLA-DRお
よび
(Table3).し
HLA-DRBIに
示す
か し,stageIの
して 治 療 に 難 渋 し た2例
難 治 性 に な っ た2例
た.
症 例 の う ち,後
と,highstage9例
で はGMLの
に再 発
の うち の
発 現 を認 め な か っ
関 して検 討 して み た.Table1に
ご と く,HLA-DRは
精 巣 腫 瘍 患 者 に お い てDR4が
有 意 に高 頻 度 に み られ た.ま た,Table2の
DRBIで
は0405allclcを
ご と く,
有 す る もの が 有 意 に高 頻 度
806
泌 尿 紀 要47巻11号2001年
で あ っ た.こ
れ ら のHLAの
タイ プが精巣 腫瘍 の発
生 と 関 連 が あ る と い う こ と を 示 唆 し て い る.し
現 在 ま でHLAlocusの
か し,
結
近傍 に精 巣 腫 瘍 の発 生 と関 連
の あ り そ う な 遺 伝 子 の 報 告 は な い.
巣 腫 瘍(特
語
精 巣 腫 瘍 の 発 生,進 展,予 後 に 関 す る 分 子研 究 に よ
一 精 巣 腫 瘍 の進 展 や予 後 に 関す る分 子 研 究 一
以 前 か ら,精
う か.
る知 見 を 紹 介 し た.発 生 に つ い て はKRAS2遺
にnon-seminoma)の
予後
やHLA-DR,HLA-DRBIの0405aUeleカs'関
連 して
規 定 因 子 と し て 脈 管 内 の 細 胞 浸 潤,embryonalcarci-
い る可 能 性 が 示 唆 され た.進 展 に はWTi遺
nomaの
の 関 与 が 示 唆 され た.さ
含 有 率17'19),Ki-67の
発 現5・6)な ど に つ い て
臨 床 病 理 学 的 な 検 討 が な さ れ て い た が,分
子生物学的
ル で の 検 討 も行 わ れ る よ う に な っ た20)
1)細
白 血 病 に お い て 増 殖 の プ ロ モ ー ター と考 え ら れ た
WTIは
精 巣 腫 瘍 に も 発 現 し て お り,そ
highstage症
文
発 現 に関 す る分 子 レベ
例 で 高 く,lowstageで
の発 現量 は
低 い 傾 向 を示 し
木
茂,古
関 与 が 示 唆 さ れ た.
献
武 敏 彦:精
巣(睾
丸)腫
尿 器 科 腫
瘍 学.小
泌 尿 器 科 学
講 座,泌
井
島 伸 一 編.第1版,pp147-158,メ
カ ル
勝,大
ビ ュ ー 社,東
伝子 産物
ら に,抗 癌 剤 耐 性 に 関 して は
p53遺 伝 子 の下 流 に あ るGMLの
手 法 の 進 歩 と 普 及 に 伴 っ て,E-cadherinやMMP
〈matriXmetalloproteinase)の
伝子
瘍.新
図 説
柳 知 彦,村
ジ
京,1999
2)RodriguezE,MathewS,ReuterV,etal.:Cytoge-
た(Fig.1).し
か も,高
発 現 症 例 に お い て はWTIが
neticanalysisof124prospectivelyascertainedmale
タ ンパ ク レベ ル で も高 発 現 して い る こ と が 証 明 さ れ,
タ ンパ ク と し て の 何 ら か の 働 きが 示 唆 さ れ て い る
(Fig.2)21)し
か し,実
際 にWT1が
精巣腫瘍細胞 に
お い て増 殖 促 進 因子 とな っ て い るか 否 か は まだ 明 らか
に は さ れ て い な い.精
巣 腫 瘍 細 胞 株 にWTl遺
伝子 を
germcelltumors.CancerRes52:2285-2291,
1992
3)ChagantiRSK,RodriguezEandBosl(}J:Cytogeneticsofmalegerm-celltumors.UrolClinNorth
Am20:55-66,1993
4)RapleyEA,Crockf()rdGP,TeareD,etal.:Locali-
導 入 す る か あ る い はWTIのantisenseoligonucleotideを
zationofXq270fasusceptib量litygenefortesticular
導 入 す る こ と に よ っ て 証 明 す る 必 要 が あ る.
ま た,精
germ-celltumours.NatGenet24:197-200,2000
巣 腫 瘍 は シ ス プ ラ チ ン を は じめ と す る 抗 癌
剤 に 対 す る感 受 性 が 非 常 に 高 く,p53遺
低 頻 度 で あ る と い わ れ て い る.し
伝 子 の 異常 が
か し,シ
ス プ ラチ ン
治 療 に 対 し て 抵 抗 性 を示 す 精 巣 腫 瘍 で は や は りp53
5)HeidenreichA,sesterhennIAandMoulJw:
Prognosticriskfactorsinlowstagetesticulargerm
celltumors.Cancer79:1641-1645,1997
6)AlbersP,BierhoffE,NeuD,etal.:MIB-l
immunohistochemistryinclinicalstageInonsemi-
遺 伝 子 の 異 常 が み ら れ る と い う報 告 が あ り,p53遺
伝
子 は 本 腫 瘍 の 薬 剤 感 受 性 に 関 して 重 要 な 位 置 を 占 め る
と考 え ら れ る9)し
た が っ て,p53遺
伝 子 の上 流 や 下
流 に 存 在 す る 遺 伝 子 の 異 常 も薬 剤 耐 性 に 関 し て 重 要 な
nomatoustesticulargermcelltumorspredicts
patientsatlowriskformetastasis.Cancer79:
1710-1716,1997
7)InoueK,SugiyamaH,OgawaH,etal.=WTIasa
役 割 を=果た し て い る 可 能 性 が あ る.GML(GPI-an-
newprognosticfactorandanewmarkerf()rthe
choredmolecule-likeprotein)はp53の
detectionofm{nimalresidualdiseaseinacute
下 流 に存 在
leukemia.Blood87:3071-3079,1994
し,抗
癌 剤 や 放 射 線 に よ る 刺 激 に 対 して 細 胞 にapop8)PengH-Q,HoggD,MalkinD,etal.:Mutationsof
tosisを 実 行 さ せ る 働 き を 有 し て い る と考 え ら れ て い
る.ま
た,GMLは
正 常 組 織 で は 精 巣 に か な り特 異 的
に 発 現 し て い る10)わ
れ わ れ の 検 討 で は,GMLの
発 現 は 組 織 型 やstageと
し,stagelの
し た が,こ
れ ら2例
はGMLを
9)SchenkmannNS,SeterhennIA,WashingtonL
aL:Increasedp53proteindoesnotcorrelatetoP53
は そ の後 治 療 に難 渋
genemutationsinmicrodissectedtesticulargerm
発 現 し て い な か っ た.
例9例
し た が,こ
もGMLの
れ ら2例
こ れ ら の 事 実 はGMLが
現 し て い て,抗
の う ち2例
発 現 を 示 さ な か っ た.
も と も と精 巣 に 特 異 的 に 発
癌 剤 に対 す る感 受 性 を担 って い る分 子
で あ る こ とを考 え る と非 常 に興 味 深 い
し て の,今
は 難 治性 で死 亡
症 例 数 を増 や
後 の 系 統 だ っ た 研 究 が 待 た れ る,抗
癌剤抵
が,抗
π やMDRな
ど の 関 与 も考 え られ る
癌 剤 感 受 性 に 関 し て は や は りp53と
その下 流
の遺 伝 子 が 中心 的 な役 割 を担 って い るの で は な い だ ろ
,etaL;Isolationof
anovelGPI-anchoredgenespecificallyregulatedby
p53;correlationbetweenitsexpressionandanticancerdrugsensitivity.Oncogene13:1965-1970
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抗 性 に はGST一
,et
celltumors.JUrol154:617-621,1995
10)FuruhataT,TokinoT,UranoT
ま た,highstage症
.Cancer
Res53:3574-3578,1993
か
は 関 連 を 示 さ な か っ た.し
う ち 再 発 し た2例
thep53genedonotoccurintestiscancer
12)DanielsJLJr,stutzmanREandMcLeodDG:A
comparisonoftesticμlartUmorsinblackandwhit
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Received
on
September
18,
2001
Accepted
on
September
18,
2001