(4) 新潟市における放射能検査の現況について(PDF形式 1265 - 新潟県

新潟市における放射能検査の現況について
新潟市衛生環境研究所
2.新潟市の放射能検査結果
(1)土壌
市内各区役所庁舎や小中学校,保育園の土壌
52 地点について検査した結果,放射性物質 3 物
質(ヨウ素 131,セシウム 134,セシウム 137)
は検出されませんでした(10Bq/kg 以下)
。
(2)水田土壌
市内 52 地点の水田土壌について検査した結
果、31 地点から放射能が検出され,最大値は
16Bq/kg でした。いずれもセシウム 137 のみが
検出され、福島原発事故以前の放射性物質によ
る影響が示唆されました。
(3)指標生物
放射能監視では,容易に採取でき環境の状況
をよく反映する生物を指標生物として用います。
新潟市では松葉と柳葉を指標生物とし測定して
おり,松葉では微量ですがセシウム 134 と 137
が検出され、福島原発事故の影響が考えられま
した。
(4)大気浮遊じん
ろ紙に捕集した粉じんを 3 か月分をまとめて
測定し,その結果,過去 2 回の測定では放射性
物質 3 物質は検出されませんでした(0.0001Bq/
㎥以下)。
(5)降下物
平成 24 年 1 月より毎月測定を行っています。
結果はセシウム 134 と 137 がともに検出された
ことから,福島原発事故による放射能の影響が
考えられました。
副主査
阿部秀人
3.福島原発事故の放射能の影響
全国の都道府県で行われている降下物の放射
能濃度の測定結果から各地における放射能の影
響を検討したところ,原発事故直後の 3 月 20
日前後にセシウム 137 が検出された地区、4 月
20 日前後に検出した地区,検出しなかった地区
の 3 つに分けられました(図 1)。
図1事故後 137Cs の濃度ピークによる区分
今回、チェルノブイリ事故と福島原発事故の
セシウム 137 濃度を比較し,各地の影響につい
て検討しました。その結果, 4 月 20 日前後に
セシウム 137 が検出された地域では,チェルノ
ブイリ事故より福島原発事故による放射能の影
響が少ないことが分かりました(新潟県の比は
新潟市で 0.32)
。
一方、一時間あたりの空間放射線量では、県
内 6 地点(阿賀町、新発田市、新潟市西区、長岡
市、南魚沼市、上越市)で測定が行われており、
その結果は、阿賀町や南魚沼市で直後に上昇が
見られたものの、その後は 6 地点とも通常の測
定範囲(0.00016mSv/h 以下)で推移していまし
た(図 2)。
0.0006
0.0005
空間放射線量率(mSv/h)
1.はじめに
平成 23 年 3 月 11 日の東日本大震災により発
生した福島第一原子力発電所(以下,福島原発
という)の事故を受けて、その影響について新
潟市でも平成 24 年 1 月から放射能検査を開始
し、食品をはじめ土壌や大気中のちり(大気浮
遊じん)などに含まれる放射性物質の測定を実
施しています。今回は,その現況と事故後の放
射能の影響について報告します。
環境科学室
阿賀町
0.0004
新発田市
0.0003
新潟市
西区
長岡市
0.0002
南魚沼市
0.0001
上越市
0
3/12
4/1
4/21
5/11
5/31
測定日時
図 2 新潟県内の空間放射線量(H23.3∼5)
本日の内容
` 放射能の基礎
` 新潟市の放射能モニタリング
` 福島原発事故の放射能の影響
新潟市における放射能検査の現況について
新潟市衛生環境研究所
1
環境科学室
平成24年度 新潟県市合同発表会
阿部秀人
2012/11/27
2
放射能の基礎-電球で例えると
平成24年度 新潟県市合同発表会
放射能の基礎-放射性物質とは
光
=
=
電球
放射性物質とは,
放射線を出す物質
放射線
放射性物質
単位:
Sv(シーベルト)
光を出す能力 = 放射線を出す能力(放射能)
単位:W(ワット)
単位:Bq(ベクレル)
3
平成24年度 新潟県市合同発表会
2012/11/27
4
主な放射性物質
カリウム40
ラドン222
ヨウ素131
コバルト60
バ ト
ストロンチウム90
セシウム137
ラジウム226
プルトニウム239
ウラン238
平成24年度 新潟県市合同発表会
2012/11/27
放射能の基礎-放射線の種類
放射能の基礎-半減期について
α線を止める
例:セシウム134 100Bq
半減期とは
β線を止める
γ線を止める
中性子線を止める
アルファ(α)線
放射性物質が
半分になる期間
100Bq
2012/11/27
ベータ(β)線
ガンマ(γ)線
(γ)
(エックス線)
中性子線
50Bq
半減期
放射性物質
半減期
半減期
セシウム134 2.1年
25Bq
12.5Bq
セシウム137 30.2年
半減期
5
2.1
年
出典:日本アイトソープ協会HP
4.2
年
6.3
年 平成24年度
出典:資源エネルギー庁「エネルギー2010」
新潟県市合同発表会
2012/11/27
6
平成24年度 新潟県市合同発表会
2012/11/27
放射能の基礎-身の回りの放射線
放射能の基礎-放射能関係の単位
放射線量
2.4
(1.26)
(0.48)
(0 39)
(0.39)
(0.29)
6.9
0.6
0.05
???
自然からの放射線(年間)
大気から
自然による
大地から
もの
宇宙から
食物から
CT(1回)
人工による 胃のX線(1回)
もの
胸のX線(1回)
原発事故の影響
出典:原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)2008年報告など
7
放射性物質
放射線
新潟市食育花育推進キャラクター
まいかちゃん
ベクレル(Bq)
シーベルト(Sv)
人が放射線を受けた時の
影響の程度を示す単位
放射性物質が放射線を
だす強さを表す単位
ミリシーベルト
平成24年度 新潟県市合同発表会
2012/11/27
放射能の基礎-ベクレルとシーベルトの関係
8
平成24年度 新潟県市合同発表会
2012/11/27
放射能の基礎-放射能の人体への影響
放射性物質に近づくとシーベルトは高くなる
放射性物質
放射線による遺伝子の障害
放射能
100ベクレル
放射線
遺伝子の修復機能により
問題ない
放射性物質から遠ざかるとシーベルトは低くなる
修復できなかったり,修復を誤ると・・・
放射性物質
放射能
100ベクレル
突然変異
放射線
放射性物質からの距離が2倍になれば,影響は1/4になります
衛生環境研究所での放射能検査(環境関係)
10
発がんの可能性
平成24年度 新潟県市合同発表会
2012/11/27
検査の流れ
試料採取
測定実績(平成23年度)
堆肥等,水田土壌,焼却灰等,
放流水,大気粉じん
↓
前処理
堆肥等,水田土壌,焼却灰等,
放流水,大気粉じん
測定計画(平成24年度) 地下水等,海水浴場水,海水,
河川水,底質,松葉,柳葉,
稲わら,もみ殼,土壌
11
平成24年度 新潟県市合同発表会
2012/11/27
試料の処理(裁断/ふるい 他)
測定容器への封入
試料重量測定
↓
測定
12
ゲルマニウム半導体検出器
平成24年度 新潟県市合同発表会
2012/11/27
容器
前処理
試料の処理(裁断/ふるい 他) → ポリ手袋着用
測定容器への封入
試料重量測定
マリネリ(2L)
U-8(100mL)
(
)
マリネリ(2L)
13
平成24年度 新潟県市合同発表会
U-8(100mL)
2012/11/27
14
2012/11/27
平成24年度 新潟県市合同発表会
測定結果(1)土壌(区役所・小学校・保育園)
ゲルマニウム半導体検出器
γ線を測定し、エネルギー毎に解析し,放射能を算出する装置
測定項目:ヨウ素131,セシウム134,セシウム137
測定期間:
区役所庁舎 平成23年9月1日,平成24年7月6日
小中学校 平成23年8月31日,平成24年7月6日
保育園 平成23年10月13日~12月13日
検出しない
検出しない
検出しない
市内全体 52件
検出しない
検出しない
検出しない
検出しない
測定放射性物質 主にヨウ素131,セシウム134,セシウム137を解析
測定時間 1000秒~80000秒
通常自然には存在せず,
今回大量に放出されたもの
15
平成24年度 新潟県市合同発表会
2012/11/27
測定結果(2)水田土壌
16
検出しない
2012/11/27
平成24年度 新潟県市合同発表会
測定結果(3)指標生物
測定項目:ヨウ素131,セシウム134,セシウム137
測定期間:平成24年3月26日~4月19日
市内全体 52件
指標生物とは
検出しない
検出あり
その地域で容易に採取でき,環境の状況をよく反映する生物
検出しない
31件 検出あり
最大値 16Bq/kg
q g
(いずれの地点もセシ
ウム137のみが検出)
検出しない
検体の種類
検出あり
福島原発事故以前の
放射性物質の可能性
検出あり
調査期間
検出あり
調査結果(Bq/kg)
ヨウ素131
セシウム134 セシウム137
松葉
平成23年12月22日 検出しない
1.3
1.6
柳葉
平成24年7月12日 検出しない
検出しない
0.56
福島県伊達郡川俣町(福島原発より45Km地点)
検出あり
調査期間
検出あり
平成24年9月20日
調査結果(Bq/kg)
ヨウ素131 セシウム134 セシウム137
検出しない
7,230
11,300
福島原発事故による
放射性物質の可能性
出典:環境試料の測定結果(松葉)
17
平成24年度 新潟県市合同発表会
2012/11/27
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平成24年度 新潟県市合同発表会
2012/11/27
測定結果(4)大気浮遊じん
測定結果(5)降下物
チェルノブイリ事故の
あった昭和61年度の
セシウム137濃度は,
最大値が0.067Bq/㎥
調査場所:新潟市中央区
白山浦庁舎 2号棟屋上(地上高11m)
調査場所:新潟市中央区 白山浦庁舎 2号棟屋上(地上高11m)
<出典:新潟市環境白書>
調査期間
ろ紙
ハイボリュームエアサンプラー装置
流量:1m3/min
調査結果(Bq/㎥)
調査期間
ヨウ素131
セシウム134 セシウム137
調査結果(Bq/m2)
ヨウ素131
セシウム134 セシウム137
平成24年1月1日~2月1日
検出しない
0.23
0.24
平成24年2月1日~3月1日
平成24年2月1日
3月1日
検出しない
検出しない
0 15
0.15
平成24年3月1日~4月2日
検出しない
1.1
1.5
平成24年4月2日~5月1日
検出しない
0.57
0.86
平成24年5月2日~6月1日
検出しない
0.11
0.16
平成24年6月1日~7月2日
検出しない
0.14
0.2
平成24年1月・2月・3月
検出しない
検出しない
検出しない
平成24年7月2日~8月1日
検出しない
検出しない
0.091
平成24年4月・5月・6月
検出しない
検出しない
検出しない
平成24年8月1日~9月3日
検出しない
検出しない
0.074
福島原発事故
による放射性
物質の可能性
検出限界濃度は0.0001Bq/㎥程度
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平成24年度 新潟県市合同発表会
2012/11/27
20
平成24年度 新潟県市合同発表会
2012/11/27
福島原発事故の放射能の影響
福島原発事故の放射能の影響
全国の定時降下物測定結果(平成23年3月19日から5月末)
国や県による放射能測定結果
月間降下物量(Bq/m2)
3月20日前後
新潟市で整理・検討
4月20日前後
検出しない
新潟市への影響
21
福島原発事故と
チェルノブイリ原発事故の比較
月間降下物中の
セシウム137濃度のピーク時の比
1以上
1未満
データなし
23
測定月日
平成24年度 新潟県市合同発表会
2012/12/10
セシウム137(Bq/m2)
福島
チェルノブイリ
岩手県
山形県
99.9
福島県
162.8
茨城県
122.1
埼玉県
141.34
栃木県
群馬県
千葉県
140.6
東京都
177.6
神奈川県
222
山梨県
静岡県
177.6
北海道
48.1
青森県
99.9
秋田県
310.8
新潟県
103.6
石川県
318.2
福井県
170.2
岐阜県
愛媛県
51.8
高知県
170.2
1100
10000
3340000
17000
5300
5700
4700
4900
8100
3400
170
540
5.7
63
130
33
10
29
9.7
4.9
34
22
福島/チェ
ルノブイリ
2012/12/10
平成24年度
文部科学省 新潟県市合同発表会
都道府県別環境放射能水準調査結果より作成
文部科学省 都道府県別環境放射能水準調査結果より、新潟市衛生環境研究所で作成
新潟県(新潟市)の降下物中のセシウム137濃度
100
20516
139
38
35
46
15
3
0.12
0.63
0.42
0.32
0.03
0.17
0.09
0.20
平成24年度
新潟県市合同発表会 2012/12/10
文部科学省 都道府県別環境放射能水準調査結果より、新潟市衛生環境研究所で作成
文部科学省
都道府県別環境放射能水準調査結果より作成
24
文部科学省
都道府県別環境放射能水準調査結果より作成
平成24年度
新潟県市合同発表会 2012/12/10
県内の空間放射線量(H23.3月~5月)
震災後の空間放射線量
県内の空間放射線量率の平均値
阿賀町
新発田市
新潟市
西区
長岡市
南魚沼市
0.0664
0.0589
0.0493
0.0497
0.0634
0.0486
H23.5~12
0.0584
0.0577
0.0528
0.0478
0.0504
0.0446
新潟県放射線測定結果より算出
(マイクロシーベルト/h)
(マイクロシ
ベルト/h)
※ミリシーベルトの千分の1
福島県内
(相双)
H23.3~5
1.1289
H23.5~12
0.4424
(マイクロシーベルト/h)
福島県 環境放射能測定結果より算出
まとめ
`
新潟市による放射能調査では,水田土壌と指標生物および
降下物から放射性物質が検出された。
`
新潟県(新潟市)では,福島原発事故後降下物中のセシウム
137濃度に高い値が見られたが,チェルノブイリ事故後に比
べ値は小さく影響は少なかった。
`
ご清聴ありがとうございました
新潟県内では福島事故直後に空間放射線量が上昇した地
点も見られたが,その後は通常の範囲で推移していた。
27
平成24年度 新潟県市合同発表会
2012/11/27
上越市
H23.3~5
28
平成24年度 新潟県市合同発表会
2012/11/27