佐賀県内における地下水汚染調査について

佐賀県環境センタ
ター所報
第 20 号(2011)
佐賀県
県内における
る地下水汚
汚染調査について
佐
佐賀県環境セ
センター
○犬
犬塚加代子、 龍尾一俊、
、矢幡良二(
(現薬務課)、
、吉牟田博子
子(退職)
1 はじめ
めに
これによると No95、
N
No133~1135 の地点における六価ク
T 地区の
の六価クロムに
による地下水汚染
染について、平成
成 22
年 5 月~7
7月に実施した
た調査結果を基に
に解析を行い、若干
の知見を得
得たので報告す
する。
ロム濃度が高く、
ロ
ら東方向に向かっ
って六価ク
その地点から
ロム検出井戸が分
ロ
分布している。
(2)
) 各イオン項目
目の相関
各イオン項目間
間の相関につい
いて、六価クロム
ム検出井戸
方法
2 調査方
と非
非検出井戸に区
区分して解析を行
行ったところ、ブロムイ
分析項目
目は、六価クロ
ロムのほか、pH
H、イオン成分
分、重
オンは低濃度なが
がら、すべての六
出井戸から
六価クロム検出
金属等を行
行った。表1に
に分析項目及び分
分析方法を示す
す。
とブロムイ
検出されており、その結果ナトリウムイオンと
表1
くなっていた。
オンの相関が高く
分
分析項目
分析方法
pH
JIS K 01
102 ガラス電極法
法
3) トリリニアダイアグラムに
による解析結果
果
(3
出井戸と非検出
出井戸との関係や
や、地下水
六価クロム検出
JIS K 01
102 イオンクロマトグララフ法
の水質特性を分類
の
類するために、イオン成分分析
析結果から
Na , NH4 , K , Mg , Ca
JIS K 01
102 イオンクロマトグララフ法
図2にトリリニダ
図
ダアグラムを作
作成した。
重炭酸イオ
オン(HCO3-
鉱泉分析
析法
-
-
-
-
3-
2-
F ,Cl ,Br ,NO3 ,PO4 , SOO4
+
+
+
2+
2++
六価クロム
ム(Cr6+)
Cd, Pb, Cu, Zn, B, As, Se
JIS K 0102 ジフェニルカルバジド
図2 トリリニアダイアグラ
ラム
吸光光度法
法
JIS K 01
102 ICP 質量分析
分析法
検体数:1147 件
結果
3 調査結
六価クロ
ロムは調査した
た 147 件の井戸の
のうち、11 件の
の井
戸で検出し
し(下限値:0.0
04mg/L)、うち 10 件の井戸か
から環
境基準(0.0
05mg/L)を超過
過する六価クロムを検出した。
(1) 六価ク
クロムの濃度分
分布
図1に六
六価クロムの濃
濃度分布を示す。
図1
Ⅰ:アルカリ土類
類非炭酸塩(化石水
石水・温泉水)
Ⅱ:アルカリ土類
類炭酸型塩(河川水
川水・浅層地下水)
Ⅲ:アルカリ炭酸
酸塩(停滞的環境
境の地下水)
Ⅳ:アルカリ非炭
炭酸塩(温泉水・海
海水)
Ⅴ:中間型(主に河川水)
これにより、この
こ
の地区の地下水
水はアルカリ土類
類炭酸塩型
領域
域(Ⅱ領域)と中
中間型領域(Ⅴ領
領域)に多く分布
布しており、
アル
ルカリ土類非炭酸
酸塩型領域(Ⅰ領
領域)とアルカリ炭酸塩
型領
領域(Ⅲ領域)には、若干分布し
していることが
がわかった。
六価クロム検出井
六
井戸は、浅層地
地下水と言われるⅡ領域に
分布
布しており、深層
層の停滞的環境
境の地下水と言われるⅢ領
域に
には、六価クロム
ムを検出した井
井戸はみられなかった。
佐賀県環境センター所報
4 まとめ
地下水調査結果より、六価クロムは 11 件の井戸で検出
し、そのうち環境基準を超過したのは 10 件であった。
特に No95、No133~135 の六価クロム濃度が高く、その地
点から東方向に向かって六価クロム検出井戸が分布して
いる。
トリリニアダイアグラムの結果から、六価クロム検出
井戸は浅層地下水と言われるアルカリ土類炭酸塩型領域
(Ⅱ領域)のみに分布し、アルカリ炭酸塩型領域(Ⅲ領域)
にはないことから、六価クロムは深層地下水には達して
いないと考えられる。しかし六価クロム非検出井戸もⅡ
領域に分布しており、トリリニアダイアグラムだけでは、
検出井戸と非検出井戸との間に明確な性状の違いはなか
った。
各イオン項目間の相関については、六価クロム検出井
戸において、ナトリウムイオンとブロムイオンの相関が
高くなっている。六価クロム検出井戸は、浅層地下水に
分布していることから、浅層地下水のいくつかの流れの
中でも、特にナトリウムイオンとブロムイオン比の相関
の高い流れに沿って、六価クロムが拡散していることが
推測される。
これらのさらなる解明のためには、井戸深度や地下水、
地層の状態等の詳細な調査が必要である。
引用文献
「平成 19 年度に判明した地下水汚染について」:福岡市報
告書トリリニアダイアグラム(東区下原)事例より
第 20 号(2011)